特許第6596415号(P6596415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6596415注射デバイスから吐出される薬剤の量を記録するための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596415
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】注射デバイスから吐出される薬剤の量を記録するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20191010BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20191010BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   A61M5/31 520
   A61M5/168 530
   A61M5/31
   A61M5/315 550A
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-522615(P2016-522615)
(86)(22)【出願日】2014年7月3日
(65)【公表番号】特表2016-526424(P2016-526424A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2014064155
(87)【国際公開番号】WO2015001008
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2017年6月19日
(31)【優先権主張番号】13175219.8
(32)【優先日】2013年7月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・キューン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シャーバッハ
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−521963(JP,A)
【文献】 特表2009−530002(JP,A)
【文献】 特表2013−506466(JP,A)
【文献】 特表2013−521832(JP,A)
【文献】 特表2008−516709(JP,A)
【文献】 特表2013−506447(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/120777(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/168
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイスから吐出される薬剤の量を記録するための装置であって:
一次センサおよび二次センサからの情報を受信するように連結された処理装置と;
メモリとを含み:ここで、
一次センサは、前記注射デバイスによって表示または生成される情報を検出し、情報に対応する出力を生成するように構成され、
二次センサは、前記注射デバイスからの薬剤の吐出を検出するように構成され、
処理装置は、一次センサによって生成された出力を処理し、二次センサから受信された情報に基づいて、所定のゼロでない閾値量を超える薬剤が吐出されたかどうかを決定するように構成され
ここで、処理装置は、所定のゼロでない閾値量を超える薬剤が吐出されたと処理装置が決定したときにのみ、前記注射デバイスから吐出される薬剤の量を示す情報をメモリに記録するようにさらに構成される前記装置。
【請求項2】
二次センサは、前記注射デバイスから薬剤が吐出される間に移動する前記注射デバイスの一部分の位置を感知し、前記位置に対応する情報を処理装置に提供するように構成され;
処理装置は、前記部分が閾値距離よりも大きく移動したと処理装置によって決定されたときに、一次センサによって生成された出力を処理し、前記注射デバイスから吐出された薬剤の量を示す情報をメモリに記録するように構成される
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
二次センサは、前記注射デバイスから薬剤が吐出される間に移動する前記注射デバイスの一部分の位置を感知し、前記部分が閾値距離よりも大きく移動したことを示す信号を、そのような事象が生じたと検出されたときに処理装置に提供するように構成され;
処理装置は、二次センサからの前記信号を受信したとき、一次センサによって生成された出力を処理し、前記注射デバイスから吐出された薬剤の量を示す情報をメモリに記録するように構成される
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記注射デバイスの部分は最終用量ナットである請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記注射デバイスの部分はペン親ねじである請求項2または3に記載の装置。
【請求項6】
前記注射デバイスの部分は支承部である請求項2または3に記載の装置。
【請求項7】
二次センサは光センサである請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
二次センサは音響センサである請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
二次センサは金属検出器である請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
二次センサは光センサであり、前記部分は、前記注射デバイスに提供された窓を通して見える最終用量ナットである請求項2または3に記載の装置。
【請求項11】
装置と前記注射デバイスは互いに連結される請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
装置と前記注射デバイスは一体である請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
一次センサが、注射デバイスによって表示または生成される情報を検出して、該情報に対応する出力を生成する工程と、
二次センサが、前記注射デバイスからの薬剤の吐出を検出する工程と、
処理装置が、二次センサから受信された情報に基づいて、所定のゼロでない閾値量を超える薬剤が前記注射デバイスから吐出されたと決定する工程と、
所定のゼロでない閾値量を超える薬剤が吐出されたと処理装置が決定したときにのみ、処理装置が、一次センサによって生成された出力を処理し、前記注射デバイスから吐出された薬剤の量を示す情報をメモリに記録する工程と
を含む方法。
【請求項14】
二次センサが、薬剤が前記注射デバイスから吐出される間に移動する前記注射デバイスの部分の位置を感知し、前記位置に対応する情報を処理装置に提供する工程と、
処理装置が、前記部分が閾値距離よりも大きく移動したと処理装置によって決定されたときに、一次センサによって生成された出力を処理し、前記注射デバイスから吐出される薬剤の量を示す情報をメモリに記録する工程と
をさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
二次センサが、前記注射デバイスから薬剤が吐出される間に移動する前記注射デバイスの一部分の位置を感知し、前記部分が閾値距離よりも大きく移動したことを示す信号を、そのような事象が生じたと検出されたときに処理装置に提供する工程と、
処理装置が、二次センサからの前記信号を受信したとき、一次センサによって生成された出力を処理し、前記注射デバイスから吐出された薬剤の量を示す情報をメモリに記録する工程と
をさらに含む請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射デバイスから吐出される薬剤の量を記録するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の注射による定期的な治療を必要とする様々な疾病が存在する。そのような注射は、医療従事者または患者自身によって行われる。一例として、1型および2型糖尿病は、1日に1回または数回のインスリン用量の注射によって患者自身が治療することができる。投与された用量に関する情報を記録するための補完デバイス(supplemental device)をインスリン注射デバイスに連結することが知られている。補完デバイスは、インスリンが投与された様々な時間、およびそのような各時間に投与されたインスリンの量などの用量履歴情報を記録するために使用される。
【0003】
用量履歴情報の電子的な記録は、手動でそのような情報を不正確に記録してしまうという問題に対処するが、患者が自分自身で薬剤をどれだけ実際に注射したかを誤って表すという欠点を有する。特に、注射を投与する前、患者は、注射針内部から空気を除去するために、いわゆるプライミングショット(prime shot)で少量の薬剤を吐出することがある。注射デバイスから吐出された薬剤の量を記録するように構成された補完デバイスは、患者に実際に注射された薬剤の量に加えて、プライミングショット中に吐出された薬剤の量も記録する。したがって、注射デバイスから吐出された薬剤の量を記録するだけでは、実際に患者に注射された薬剤の量が正確に決定されないことを理解されたい。そのような情報を許容範囲内で分かっていないと、どれだけの薬剤が前に注射されたか不正確な理解に基づいて後から患者が薬剤を過剰にまたは過小に処方された場合、重大な帰結を引き起こすおそれがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、注射デバイスから吐出される薬剤の量を記録するための装置であって:
一次センサおよび二次センサから情報を受信するように連結された処理装置と;
メモリとを含み:ここで、
一次センサは、前記注射デバイスによって表示または生成される情報を検出し、その情報に対応する出力を生成するように構成され、
二次センサは、前記注射デバイスからの薬剤の吐出を検出するように構成され、
処理装置は、二次センサから受信された情報に基づいて、所定量を超える薬剤が吐出されたと処理装置が決定したときにのみ、一次センサによって生成された出力を処理し、前記注射デバイスから吐出される薬剤の量を示す情報をメモリに記録するように構成される装置が提供される。
【0005】
これは、プライミングショット(すなわち、所定量未満の薬剤しか吐出されないとき)に関連する情報がメモリに記録されないようにすることができる。特に、そのようなプライミングショット中に吐出される薬剤の量を示す情報は、ユーザが任意のさらなる操作を行わなくても、メモリに記録されない。これは、注射デバイスから吐出された薬剤の総量を記録する従来提案されている補完デバイスに関連付けられる欠点に対処する。特に、プライミングショットに関連付けられる情報を記録しないことによって、メモリに記憶される情報は、実際に患者に注射された薬剤の総量のより正確な表現を与える。そのような記録される情報の質をこのようにして改良することによって、これは、患者への処方に、その患者が前に注射された薬剤の量の理解が必要であるとき、患者が薬剤を過剰にまたは過小に処方される可能性を少なくすることを理解されたい。
【0006】
二次センサは、薬剤が注射デバイスから吐出される間に移動する前記注射デバイスの一部分の位置を感知し、その位置に対応する情報を処理装置に提供するように構成され;処理装置は、その部分が閾値距離よりも大きく移動したと処理装置によって決定されたときに、一次センサによって生成された出力を処理し、前記注射デバイスから吐出された薬剤の量を示す情報をメモリに記録するように構成される。
【0007】
処理装置は、前記部分の位置を連続的に監視することができるので、処理装置は、注射が行われているとき、すなわち前記部分が閾値距離よりも大きく移動したと決定されたときを容易に決定することができる。注射中に前記部分が閾値距離よりも大きく移動しなかったと決定された場合、処理装置は、プライミングショットが行われたという決定を下すことができる。異なるユーザがプライミングショット中に異なる量を吐出することがあることを理解されたい。したがって、所定の距離は、プライミングショット中に予想される前記部分の動きの大きさに応じて構成される。例えば、所定の距離は、ユーザによって手動で設定可能であり、または製造中に予め設定される。
【0008】
二次センサは、薬剤が注射デバイスから吐出される間に移動する前記注射デバイスの一部分の位置を感知し、前記部分が閾値距離よりも大きく移動したことを示す信号を、そのような事象が生じたと検出されたときに処理装置に提供するように構成され;処理装置は、決定二次センサからの前記信号を受信したとき、一次センサによって生成された出力を処理し、前記注射デバイスから吐出された薬剤の量を示す情報をメモリに記録するように構成される。
【0009】
二次センサは、前記監視される部分の小さな動きが感知されないような感度レベルを有してもよい。例えば、二次センサは、プライミングショット中の前記部分の動きが感知されないように構成される。したがって、プライミングショット中に吐出される用量の量を示す情報は、メモリに記録されない。
【0010】
前記注射デバイスのその部分は、最終用量ナット(last−dose nut)とすることができる。前記注射デバイスのその部分は、ペン親ねじ(pen lead screw)でもよい。前記注射デバイスのその部分は、支承部でもよい。前記注射デバイスの部分が具現化するもののこれらの例は、単に例示にすぎない。前記部分は、注射デバイスから薬剤が吐出されるときのみに移動する注射デバイスの任意の部分を含むことができることを理解されたい。
【0011】
したがって、この装置は、既に市販されているいくつかのタイプの注射デバイスと共に使用することができる。
【0012】
二次センサは、光センサとすることができる。二次センサは、音響センサでもよい。二次センサは、金属検出器でもよい。二次センサは、監視すべき前記注射デバイスの選択された部分の位置を監視するのに適した任意の他のタイプのセンサとすることができる。
【0013】
二次センサは光センサとすることができ、前記部分は、前記注射デバイスに提供された窓を通して見える最終用量ナットとすることができる。
【0014】
装置と前記注射デバイスは、互いに連結することができる。これは、ユーザが、通常行うように注射デバイスを使用しながら、この装置の機能から利益を得ることができるようにする。
【0015】
装置と前記注射デバイスは一体でもよい。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、
一次センサが、注射デバイスによって表示または生成される情報を検出して、その情報に対応する出力を生成する工程と、
二次センサが、前記注射デバイスからの薬剤の吐出を検出する工程と、
処理装置が、二次センサから受信された情報に基づいて、所定量を超える薬剤が前記注射デバイスから吐出されたと決定する工程と
所定量を超える薬剤が吐出されたと処理装置が決定したときにのみ、処理装置が、一次センサによって生成された出力を処理し、前記注射デバイスから吐出された薬剤の量を示す情報をメモリに記録する工程と
を含む方法が提供される。
【0017】
これは、プライミングショット(すなわち、所定量未満の薬剤しか吐出されないとき)に関連する情報がメモリに記録されないようにすることができる。特に、そのようなプライミングショット中に吐出される薬剤の量を示す情報は、任意のさらなる操作を行わなくても、メモリに記録されない。
【0018】
この方法は、二次センサが、薬剤が前記注射デバイスから吐出される間に移動する前記注射デバイスの部分の位置を感知し、前記位置に対応する情報を処理装置に提供する工程と;処理装置が、前記部分が閾値距離よりも大きく移動したと処理装置によって決定されたときに、一次センサによって生成された出力を処理し、前記注射デバイスから吐出される薬剤の量を示す情報をメモリに記録する工程とをさらに含むことができる。
【0019】
この方法は、二次センサが、前記注射デバイスから薬剤が吐出される間に移動する前記注射デバイスの一部分の位置を感知し、前記部分が閾値距離よりも大きく移動したことを示す信号を、そのような事象が生じたと検出されたときに処理装置に提供する工程と;処理装置が、二次センサからの前記信号を受信したとき、一次センサによって生成された出力を処理し、前記注射デバイスから吐出された薬剤の量を示す情報をメモリに記録する工程とをさらに含むことができる。
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、単に例として本発明の実施形態を述べる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来技術の注射デバイス100の分解図である。
図2】使用中の本発明の一態様による補完デバイス200を示す図である。
図3】注射デバイス100に連結される前の補完デバイス200を示す図である。
図4】注射デバイス100に連結された状態での補完デバイス200の内部概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、インスリン注射デバイスを参照しながら本発明の実施形態を述べる。しかし、本発明は、そのような用途に限定されず、他の薬剤を吐出する注射デバイスまたは他のタイプの医療デバイスと共に等しく採用することもできる。
【0023】
図1は、注射デバイス100の分解図であり、注射デバイス100は、例えば、SanofiのSolostar(登録商標)インスリン注射ペンとすることができる。
【0024】
注射デバイス100は、充填済みの使い捨て注射ペンであり、ハウジング102を含み、インスリン容器104を含み、容器104に注射針106を取り付けることができる。注射針は、内側注射針キャップ108および外側注射針キャップ110によって保護され、外側注射針キャップ110は、キャップ112によってカバーすることができる。注射デバイス100から吐出予定のインスリン用量は、用量ノブ(dosage knob)114を回転させることによって選択することができ、次いで、選択された用量が、例えばいわゆる国際単位(IU)の倍数で用量窓116を通して表示される。ここで、1IUは、約45.5マイクログラム(1/22mg)の純粋な結晶性インスリンの生物学的等量(biological equivalent)である。図1に示されるように、用量窓116内に表示される選択された用量の一例は、30IUとすることができる。選択された用量は、例えば電子ディスプレイによって別の様式でも同様に良く表示することができることに留意されたい。
【0025】
用量ノブ114を回転させることで、機械的なクリック音が生じ、音響フィードバックをユーザに提供する。用量窓116内に表示される数字は、スリーブ118(図4参照)に印刷されており、スリーブ118は、ハウジング102内に含まれ、インスリン容器104内部のピストンと機械的に相互作用する。注射針106が患者の皮膚部分に穿刺され、次いで注射ボタン120が押されるとき、表示窓116内に表示されたインスリン用量が注射デバイス100から吐出される。注射ボタン120が押された後に特定の時間にわたって注射デバイス100の注射針106が皮膚部分に留まるとき、用量の高いパーセンテージが患者の体内に実際に注射される。インスリン用量の吐出も機械的なクリック音を引き起こし、しかし、これは、用量ノブ114を使用するときに発生される音とは異なる。
【0026】
注射デバイス100は、インスリン容器104が空になるか、または注射デバイス100の有効期限(例えば、最初の使用後28日)に達するまで、数回の注射プロセスにわたって使用することができる。
【0027】
さらに、最初に注射デバイス100を使用する前に、インスリン容器104および注射針106から空気を除去するためにいわゆるプライミングショットを行う必要があり得る。これは、2IUのインスリンを選択し、注射針106を上に向けた状態で注射デバイス100を保持しながら注射ボタン120を押すことによって実現される。
【0028】
図2を参照すると、注射デバイス100の状態および/または使用に関する情報を記録する目的で、補完デバイス200が注射デバイス100(上述したものなど)に解放可能に取り付けられる。特に、補完デバイス200は、用量履歴情報(例えば、特定の注射が行われたとき、およびそのような各注射中に吐出されたインスリンの量)を内部メモリに記録および記憶するために使用される。
【0029】
図3は、注射デバイス100から取り外されたときの補完デバイス200を示す。補完デバイス200は、ハウジング202を含み、ハウジング202は、注射デバイス100のハウジング102を抱えるための嵌合ユニット204を設けられる。特に、嵌合ユニットは、後でデバイス200を注射デバイス100から取り外すことができるように、注射デバイス100のハウジング102にスナップ嵌合(snap−fit)するように構成される。しかし、嵌合ユニット204はスナップ嵌合型である必要はなく、ストラップなど、補完デバイス200を注射デバイス100に連結させるのに適した他の構成を代わりに使用することもできる。
【0030】
補完デバイス200は、注射デバイス100から情報を収集するための複数のセンサを設けられる。注射デバイス100から収集された情報、またはそこから決定される用量履歴情報は、補完デバイス200の内部メモリに記憶することができる。適切なタイプのセンサの一例は光センサであり、これを使用して、注射デバイス100の用量窓116内に表示された情報を収集することができる。そのような光センサを有する補完デバイス200は、図2および4に示されるように、連結されるときに注射デバイス100の用量窓116を覆うようにされる。
【0031】
注射デバイス100から情報を収集するために使用することができる適切なセンサの別の例は、音響センサである。同じまたは異なる種類のセンサの様々な組合せをこの目的で使用することができることを理解されたい。
【0032】
図4は、注射デバイス100に連結された状態での補完デバイス200の内部概略図を示す。補完デバイス200のハウジング202内部に、様々な構成要素が位置される。これらの構成要素は処理装置208によって制御され、処理装置208は、例えば、マイクロプロセッサ、デジタル信号処理装置(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などとすることができる。
【0033】
補完デバイス200は、ROM210などの不揮発性メモリ、RAM212などの揮発性メモリ、およびフラッシュメモリ213などの書き込み可能な不揮発性メモリを含む。ROM210は、ソフトウェアおよび/またはフォームウェアを記憶するように構成される。このソフトウェア/ファームウェアは、処理装置208の動作を制御することができる。処理装置208は、ROM210に記憶されているソフトウェア/ファームウェアを実行するためにRAM212を利用する。処理装置208は、用量履歴情報を記憶するためにフラッシュメモリ213を利用する。
【0034】
補完デバイス200は、一次センサ214を設けられる。一次センサ214によって収集された情報は、(以下で説明するようなプライミングショット中ではなく)注射中に注射デバイス100から吐出されるインスリンの量を決定するために処理装置208によって使用される。
【0035】
一例では、一次センサ214は、注射デバイス100のスリーブ118に提供された情報を用量窓116(図4参照)を通して読み取るための光センサとすることができる。そのような情報は、スリーブ118に設けられた数字または他のマーキングを含むことがあり、これらは、ダイヤル設定されている、またはさらに投薬されるべき用量の量を示す。より具体的には、光センサは、光学文字認識(OCR)リーダを含むことがあり、OCRリーダは、現在選択されている用量が表示されている用量窓116の画像を捕捉することが可能である。さらに、そのようなOCRリーダは、捕捉された画像から文字(例えば数字)を認識することが可能であり、この情報を処理装置208に提供するように構成される。しかし、代替として、光センサは、単に、画像を捕捉して、そのような画像に対応する情報を処理装置208に提供するように構成されることもある。そのような構成では、光センサはカメラとすることができ、処理装置208は、捕捉された画像に対して上述したOCRを行うように構成される。
【0036】
上述したOCRリーダは、ダイヤル設定された薬剤の用量を検出するように動作可能な用量ダイヤル設定検出器(dose dialled detector)を構成することができる。また、OCRリーダは、薬剤の用量が送達されたと決定するための用量送達決定装置(dose delivery determiner)を構成することもできる。OCRリーダと処理装置208は、一体となって、送達された(および/または、ダイヤル設定された用量の量を送達された量と比較することによって、(もしあれば)さらに送達予定の)薬剤の量を決定するための量決定装置(quantity determiner)を構成することもできる。処理装置208は、現在の時間を決定するように構成されたクロックの機能を提供する。
【0037】
別の例では、一次センサ214は、代替として、注射デバイス100によって発生される音を検出するための音響センサを含むことができる。処理装置208は、そのような音響センサからの信号を制御および/または受信するように構成される。音は、例えば、注射ボタン120を押すことによって注射デバイス100から用量が吐出されるときに生じる。したがって、音響センサによって収集された情報を分析することによって、処理装置208は、注射中に吐出されるインスリンの量を決定することが可能であることを理解されたい。
【0038】
再び図4を参照すると、補完デバイス200は、さらに二次センサ216を設けられる。二次センサ216から収集された情報は、インスリンが注射デバイス100内部から患者に注射されているときを決定するために処理装置208によって使用される。インスリンが注射されていると検出されたとき(すなわち、二次センサ216からの出力に基づいて、閾値量を超えるインスリンが吐出されたと処理装置208によって決定されたとき)にのみ、一次センサ214によって収集された情報が、用量履歴情報を決定するために処理され、その後、例えばフラッシュメモリ213に記録される。すなわち、二次センサ216からの出力に基づいて、閾値量を超えるインスリンが注射デバイス100から吐出されたと処理装置が決定したときにのみ、一次センサ214からの出力に基づいて決定された用量履歴情報が記録される。
【0039】
二次センサ216は、補完デバイス200が注射デバイス100に連結されるとき、インスリンが吐出されているときにのみ移動する注射デバイス100の一部分の位置を二次センサ216が感知することができるように構成される。したがって、二次センサ216によって収集された情報は、そのような部分が移動しているときを決定するために処理装置208によって分析することができ、それにより、インスリンが実際に注射されているときを処理装置208が決定できるようにする。
【0040】
二次センサ216が動きを感知するように構成される注射デバイス部分のいくつかの例は、ペン親ねじ、支承部、または最終用量ナットを含む。例えば、補完デバイス200が、米国特許出願公開第2012/0283648号で述べられている駆動機構を有する薬物送達デバイスの一部分の動きを追跡する場合、二次センサ216は、最終用量ナット(要素21として示されている)の位置を感知するように構成することができる。薬剤が吐出されるとき、最終用量ナットは、薬物送達デバイス(その内部に最終用量ナットが提供されている)内部で直線運動するので、最終用量ナットの動きを検出する二次センサ216は、直線運動検出器またはポールパルス検出器(pole impulse detector)と呼ばれることもある。
【0041】
Solostar(商標)タイプの注射デバイス内部の最終用量ナットはデバイスの外面に近いので、その位置を感知する様々な方法がある。例えば、そのような最終用量ナットの位置を感知するために使用される二次センサ216は、音響センサ(超音波センサまたはソナー検波器(sonar detector)など)を含むことができる。代替として、最終用量ナットが金属(または金属化合物)から形成される場合、二次センサ216は金属検出器を含み、それにより、そのような最終用量ナットの位置の電磁的決定を可能にする。さらに、注射デバイス100は窓を設けられ、窓を通して最終用量ナットが見え、それにより、二次センサ216が光センサを含むことを可能にする。
【0042】
最終用量ナットは、吐出予定の薬剤の量が抜き出される(exhausted)につれて注射デバイスの長さに沿って徐々に移動するように構成される。すなわち、カートリッジ内部から薬剤が吐出されるとき、そのような薬剤を吐出するために使用される注射デバイスの最終用量ナットは、薬剤が吐出されるにつれて注射デバイスの長さに沿って徐々に移動する。Solostar(商標)タイプの注射デバイスの特定の場合には、最終用量ナットは、デバイス100内部の薬剤カートリッジが徐々に抜き出されるにつれて注射デバイス100の長さに沿って移動する。
【0043】
注射デバイス100は、所定量未満のインスリンしか吐出されないときには、最終用量ナットが閾値量未満しかシフトしないように構成される。
【0044】
いくつかの実施形態では、そのような最終用量ナットの位置を感知するように構成された二次センサ216は、最終用量ナットの位置を連続的に監視することを可能にする高解像度センサとすることができる。処理装置208は、二次センサ216から出力を受信し、最終用量ナットの位置が特定の時間枠内に前述の閾値距離よりも大きく移動したと処理装置208によって決定されたときに、注射が行われていると決定する。最終用量ナットが閾値距離移動されるとき、所定量の薬剤が注射デバイス100から吐出されることを理解されたい。したがって、最終用量ナットが閾値距離よりも大きく移動されるとき、所定量を超える薬剤が注射デバイス100から吐出される。
【0045】
上の例では、指定の時間枠内に最終用量ナットが閾値距離未満しかシフトしなかったと処理装置208によって決定された場合(すなわち、所定量未満のインスリンの吐出時)、その特定の吐出は、プライミングショットとみなされ、その注射に関係する用量履歴情報は記録されない。しかし、指定の時間枠内に最終用量ナットが少なくとも閾値距離シフトしたと処理装置208によって決定された場合(すなわち、少なくとも所定量のインスリンの吐出時)、その特定の吐出は、注射とみなされ、その注射に関係する用量履歴情報が記録される。
【0046】
より具体的には、上記の例での処理装置208は、二次センサ216から出力された情報に基づいて、2分の1秒など指定の時間枠(または別の指定の時間枠)内に最終用量ナットが少なくとも4mm(または他の所定の距離)移動したと決定されたときに、注射が行われていると決定することができる。有利には、これは、任意のさらなる操作を行わなくても、プライミングショット(この例では、最終用量ナットを4mm未満だけ移動させるプライミングショット)中に吐出されるインスリンを用量履歴情報から除外することを可能にする。指定の時間枠内に少なくとも所定量のインスリンが吐出される場合(この例では、2分の1秒以内に最終用量ナットが少なくとも4mm移動される場合)、処理装置208は、二次センサ216からの出力に基づいて、注射が行われている(すなわち、インスリンが患者に注射されている)と決定し、一次センサ214から出力された情報の処理を開始して、用量履歴情報を決定し、その後、例えばフラッシュメモリに記録する。特に、そのような用量履歴情報は、特定の検出された注射中に患者に注射される薬剤の量、および注射の時間に関係し得る。
【0047】
また、補完デバイス200は、バッテリ220(図4参照)を有し、バッテリ220は、電源222によって、補完デバイス200の処理装置208および他の構成要素に電力供給する。
【0048】
補完デバイス200は、患者の用量履歴情報を、そのような情報が記憶される遠隔デバイス(例えば、コンピュータまたはスマートフォンなどのモバイルデバイス)に送信するために使用することもできる。そのような実施形態では、補完デバイス200は、通信ポート217を設けられる。そのような通信ポート217は、電子デバイス(この場合には、補完デバイス200と別の電子デバイス)間で情報を転送するための当業者によく知られている多くの構成要素の1つを含むことができる。例えば、通信ポート217は、とりわけ、USBポート、送受信機などのワイヤレスユニット、または光ファイバ接続ポートを含むことができる。
【0049】
上述した実施形態は例示にすぎず、本発明の範囲を限定しないことを理解されたい。他の変形形態および修正形態は、本出願を読めば当業者に明らかであろう。
【0050】
いくつかの実施形態では、二次センサ216は、所定量未満のインスリンしか吐出されないときには、注射デバイス100の最終用量ナットが二次センサ216の検出限度未満の距離しかシフトしないように構成される。例えば、二次センサ216は、例えば4mmの閾値距離未満の動きを検出することが可能でない。そのような実施形態では、最終用量ナット(または注射デバイスの任意の他の監視される部分)を閾値距離未満の距離しか移動させないプライミングショットは検出されない。有利には、これにより、任意のさらなる操作を行わなくても、そのような検出可能でないプライミングショット中に吐出されるインスリンが用量履歴情報から除外される。しかし、検出可能な量のインスリンが吐出される場合(この例では、注射中に最終用量ナットが少なくとも4mm移動される場合)、処理装置208は、最終用量ナットの検出された動きに応答して二次センサ216から出力された信号に基づいて、注射が行われている(すなわち、インスリンが患者に注射されている)と決定する。次いで、処理装置は、一次センサ214から出力された情報の処理を開始して、用量履歴情報を決定し、その後、例えばフレッシュメモリ213に記録する。そのような用量履歴情報は、特定の検出された注射中に患者に注射される薬剤の量、および注射が行われた時間に関係し得る。
【0051】
最終用量ナットの位置の監視に関する前述の例は、最終用量ナット以外の注射デバイスの任意の他の部分が監視される場合にも、薬剤が注射デバイスから吐出されるときにのみそのような監視される部分が移動するという前提の下で同様に当てはまる。
【0052】
いくつかの実施形態では、補完デバイス200と注射デバイス100は、(例えば解放可能なスナップ嵌合機構によって)互いに解放可能に取付可能である。他の実施形態では、それらは、(例えば解放可能でないスナップ嵌合機構によって、または接着連結によって)互いに固定可能に取付可能である。他の実施形態では、装置は、補完デバイス200と注射デバイス100の両方の機能を含むことができる。すなわち、補完デバイス200と注射デバイス100の両方の機能が同じ装置に組み込まれる。そのような装置では、補完デバイス200の機能を具現化する部分が、注射デバイス100の機能を具現化する部分と一体であってもよい。
【0053】
前述したように、いくつかの実施形態では、二次センサ216は、薬剤が吐出されているときのみに移動する注射デバイス100の部分(例えば最終用量ナット)の位置を感知するように構成される。二次センサ216は、その部分の位置を連続的に監視することが可能な高解像度センサとすることができる。処理装置208は、監視される部分の位置を示す二次センサ216からの出力を受信し、その位置が特定の時間枠内に閾値距離よりも大きく移動したと処理装置208によって決定されたときに、注射が行われていると決定する。しかし、他の実施形態では、二次センサ216は、監視される注射デバイス100の部分(例えば最終用量ナット)が所定の時間量内に閾値距離だけ移動するときを決定するように構成される。これが生じていると二次センサ216によって決定されるとき、二次センサ216は、信号を処理装置208に出力する。処理装置208によるこの信号を受信したとき、処理装置は、注射が行われていると決定し、一次センサ214によって生成された情報の処理を開始する。
【0054】
本発明の範囲は、注射デバイスの1つまたはそれ以上の状態および/または用法(usages)に関係する情報を検出するための光センサまたは音響センサを有する補完デバイスに限定されない。そうではなく、本発明の範囲は、注射デバイスの1つまたはそれ以上の状態および/または用法に関する情報を検出するための任意の適切なセンサまたはセンサの組合せを設けられた補完デバイスを含むことまで網羅する。さらに、インスリンを吐出するように構成された注射デバイスに関連付けて本発明の態様を述べてきたが、本発明の範囲は、注射デバイスが吐出するように構成された薬物の種類に関係なく、任意の種類の注射デバイスと共に使用するための補完デバイスを含むことまで網羅する。特に、本発明の態様による補完デバイスは、インスリン以外の薬剤を吐出するように構成された注射デバイスと共に使用することができる。
【0055】
最後に、本出願の開示は、本明細書で明示的または暗示的に開示する任意の新規の特徴もしくは任意の新規の特徴の組合せ、またはそれらの任意の一般化を含むものと理解すべきであり、本出願または本出願から導出される任意の出願の手続き中、新規の特許請求の範囲は、任意のそのような特徴および/またはそのような特徴の組合せを網羅するように定めることができる。
図1
図2
図3
図4