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特許6596430近赤外分光法および拡散相関分光法のデバイスおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596430
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】近赤外分光法および拡散相関分光法のデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20191010BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20191010BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   A61B10/00 E
   A61B5/1455ZDM
   A61B5/026 120
【請求項の数】22
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-546527(P2016-546527)
(86)(22)【出願日】2015年1月14日
(65)【公表番号】特表2017-508496(P2017-508496A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】US2015011444
(87)【国際公開番号】WO2015109005
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2018年1月9日
(31)【優先権主張番号】61/927,371
(32)【優先日】2014年1月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】中路 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】フランセッシーニ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ボアス デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】バックリー エリン
(72)【発明者】
【氏名】リン ペイイー
(72)【発明者】
【氏名】カープ ステファン
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−504092(JP,A)
【文献】 特開2006−218013(JP,A)
【文献】 特開2010−240298(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0312533(US,A1)
【文献】 特開平08−038460(JP,A)
【文献】 Nedege Roche-Labarbe et al.,Noninvasive Optical Measures of CBV, StO2, CBF Index, and rCMRO2 in Human Premature Neonates' Brains in the First Six Week of Life,Human Brain Mapping,2010年,31,341-352
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/026
A61B 5/1455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積デバイスであって、
第1の波長の光を組織に向けて送るように構成された第1の光導波路と、
ここで、前記第1の光導波路は第2の波長の光を前記組織に向けて送るように構成されるか、又は、前記デバイスは前記第2の波長の光を前記組織に向けて送るように構成された第2の光導波路を含み、
前記第1および第2の波長、並びに、吸光分光法用に構成された他の波長の光の其々はSO光と称され、
前記SO光の波長とは異なる第3の波長の光を前記組織に向けて送るように構成された第3の光導波路と、
ここで、第3の波長の前記光はCBF光と称され、前記第3の波長は前記SO光の波長の個々よりも長いか短いかのどちらかであり、
前記組織から散乱した1以上のSO光を伝達するように構成された第4の光導波路と、
前記組織から散乱した前記CBF光を伝達するように構成された第5の光導波路と、
前記第1、第2(存在するなら)、第3、第4及び第5の光導波路(全ての導波路)のそれぞれの前記遠位端に結合されたプローブチップと、
ここで、全ての導波路の前記遠位端は、前記プローブチップにおいて実質的に一列を形成するように配列されており、
を備え、
前記集積デバイスは、前記SO及びCBF光を同時に検出す
ことを特徴とする集積デバイス。
【請求項2】
前記第1及び第2の波長は、660〜910nmの範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項3】
前記第4の光導波路と光通信を行い、前記SO光を検出するように構成された第1の検出器と、
前記第5の光導波路と光通信を行い、前記組織から散乱した前記CBF光を検出するように構成された第2の検出器と、をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項4】
前記第2の検出器により検出された光における時間的な強度変動を数値化するように適合されたプロセッサをさらに備える
ことを特徴とする請求項に記載の集積デバイス。
【請求項5】
前記第1の光導波路および前記第2の光導波路は、共に、少なくとも2つの異なる波長の光を前記組織に向けて送るように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項6】
前記第2の光導波路は、前記第1の光導波路により運ばれたものと同じ波長の光を送るように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項7】
前記組織から散乱した1以上のSO光を伝達するように構成された第6の光導波路をさらに備える
ことを特徴とする請求項に記載の集積デバイス。
【請求項8】
前記第1の導波路は少なくとも8つの波長の光を伝達する
ことを特徴とする請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項9】
前記プローブチップの中心線は、最も広い直径(dwide)を有する前記光導波路の前記中心と、直径dwideを有する前記光導波路を伴う光源‐検出器の対を形成する前記光導波路と、の間として規定され、
前記中心線から前記第1、第2、第3、第4および第5の光導波路の各々の前記中心までのオフセットは、1/2・dwideと等しい又はそれより小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項10】
全ての光導波路のそれぞれの前記中心は、前記中心線から、1/2・(dwide導波路直径)と等しい又はそれより小さい距離で離れている
ことを特徴とする請求項に記載の集積デバイス。
【請求項11】
前記第1の光導波路の前記遠位端と前記第4の光導波路の前記遠位端との間の前記分離と、前記第3の光導波路の前記遠位端と前記第5の光導波路の前記遠位端との間の前記分離とは、660〜910nmの間の波長を有する散乱光の浸透の深さを最適化するように選ばれる
ことを特徴とする請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項12】
前記第1の光導波路の前記遠位端と前記第4の光導波路の前記遠位端との間の前記分離は、4.0cmまでであり、前記第3の光導波路の前記遠位端と前記第5の光導波路の前記遠位端との間の前記分離4.0cmまでである
ことを特徴とする請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記SO光および前記CBF光の解析から得られたデータを用いて酸素消費量を決定することが可能である
ことを特徴とする請求項に記載の集積デバイス。
【請求項14】
前記酸素消費量は、
血液テストにより決定されたヘモグロビン濃度、
前記CBF光の測定により決定された血流量のインデックス、
パルスオキシメータを用いて決定された動脈血酸素飽和度、及び
前記SO光の測定により決定された組織酸素飽和度
のパラメータを用いて決定される
ことを特徴とする請求項13に記載の集積デバイス。
【請求項15】
前記酸素消費量(CMRO)は、
の式を用いて決定され、
ここで、
HGBはヘモグロビン濃度であり、
CBFは脳血流量のインデックスであり、
SaOは動脈血酸素飽和度であり、
StOは組織酸素飽和度であり、
MWHbは前記ヘモグロビンの分子量であり、及び、
βは、前記ヘモグロビン酸化の測定の前記静脈の区画の前記パーセント濃度である
ことを特徴とする請求項14に記載の集積デバイス。
【請求項16】
前記相対酸素消費量(rCMRO)は、
の式を用いて決定され、
ここで、
HGBはヘモグロビン濃度であり、
CBFは脳血流量のインデックスであり、
SaOは動脈血酸素飽和度であり、
StOは組織酸素飽和度であり、及び、
前記下付きの“о”は前記基準である
ことを特徴とする請求項13に記載の集積デバイス。
【請求項17】
集積デバイスであって、
660〜910nmの範囲内の第1の波長および660〜910nmの範囲内の第2の波長(SO光)を少なくとも有する1以上の光源(第1の光源)と、
前記SO光を組織に向けるように構成された1以上の導波路と、
前記組織から伝達したSO光を検出するように構成された1以上の検出器(第1の検出器)と、
前記SO光の前記波長のそれぞれより大きい第3の波長(CBF光)を有する第2の光源と、
前記CBF光を組織に向けるように構成された導波路と、
前記第の波長で前記組織から散乱した光を検出するように構成された第2の検出器と、
検出されたCBF光における時間的な強度変動を数値化するように適合されたプロセッサと、を備え、
前記集積デバイスは、前記SO及びCBF光を同時に検出す
ことを特徴とする集積デバイス。
【請求項18】
前記第の光源は、前記SO光の前記平均光強度よりも大きい平均光強度を有する
ことを特徴とする請求項17に記載の集積デバイス。
【請求項19】
前記第1の光源は複数のレーザダイオードを備え、前記第2の光源はレーザを備える
ことを特徴とする請求項17に記載の集積デバイス。
【請求項20】
脳組織酸素飽和度(StOを測定するように適合されたプローブと、脳血流量のインデックス(CBFを測定するように適合されたプローブとをさらに備え、前記StOのプローブは、組織に向かう前記SO光を検出する前記1以上の導波路と、前記第1の検出器とを備え、前記CBFのプローブは、組織に向かう前記CBF光を検出するために向けられた前記導波路と、前記第2の検出器とを備え
ことを特徴とする請求項17に記載の集積デバイス。
【請求項21】
対象者の組織における脳組織酸素飽和度(StO)および脳血流量のインデックス(CBF)を同時に測定する方法であって、
前記対象者の前記組織におけるStOを決定する工程と、
ここで、該工程は、
660〜910nmの範囲内の少なくとも2つの異なる波長を有する少なくとも2つの光(SO光)を前記組織に伝達するための光源を備えるデバイスを与える工程であって、前記デバイスは該光をそれが前記組織を通過した後検出する検出器を更に備える、工程と、
前記少なくとも2つの異なる波長のそれぞれにおいて前記伝達した光と前記検出された光との強度の前記差異を決定するプロセッサを用いる工程と、
StOを取得するように減衰における前記差異を決定する工程と、を含み、
前記対象者の前記組織におけるCBFを決定する工程と、
ここで、該工程は、
前記SO光の前記波長のそれぞれよりも大きい第3の波長を有する第3の光を前記組織に伝達するための光源を備えるデバイスを与える工程であって、前記デバイスは前記第3の波長で前記組織から散乱した光の強度の量の検知する検出器を更に備える、工程と、
前記組織から散乱したCBF光の強度の量に基づいて前記CBFを決定するプロセッサを用いる工程と、を含み、
を有し、
StOおよびCBFは同時に決定される
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
同時検出するためのデバイスであって、
第1の波長の光を組織に向けて送るように構成された第1の光導波路と、
第2の波長の光を組織に向けて送るように構成された第2の光導波路と、
第3の波長の光を組織に向けて送るように構成された第3の光導波路と、
前記第1および第2の波長で前記組織から散乱した光を伝達するように構成された第4の光導波路と、
前記第1および第2の波長で前記組織から散乱した光を伝達するように構成された第5の光導波路と、
前記第3の波長で前記組織から散乱した光を伝達するように構成された第6の光導波路と、
前記第1、第2、第3、第4、第5及び第6の光導波路(全ての導波路)のそれぞれの前記遠位端に結合されたプローブチップと、
ここで、全ての導波路の前記遠位端は、前記プローブチップにおいて実質的に一列を形成するように配列されており、
前記第4の光導波路と光通信を行い、前記第1および第2の波長の光を検出するように構成された第1の検出器と、
前記第5の光導波路と光通信を行い、前記第1および第2の波長の光を検出するように構成された第2の検出器と、
前記第6の光導波路と光通信を行い、前記第3の波長で前記組織から散乱された光を検出するように構成された第3の検出器と、
前記第2の検出器により検出された光における時間的な強度変動を数値化するように適合されたプロセッサと、を備える
ことを特徴とするデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体が本明細書に参照によって組み込まれる2014年1月14日出願の米国仮特許出願第61/927,371号の優先権の利益を主張する。
【0002】
連邦政府によりサポートされたリサーチに関する声明
本願は、国立衛生研究所により認められたEB001954およびHD042908の下の政府のサポートを伴って為された。政府は、本発明における所定の権利を有しうる。
【0003】
発明の分野
本願は、一般に、医療機器および方法に関連し、特に、近赤外分光法(NIRS(Near−Infrared Spectroscopy))および拡散相関分光法(DCS(Diffuse Correlation Spectroscopy))を組み合わせたデバイス、並びに、その利用に関連する。
【背景技術】
【0004】
背景
近赤外分光法(NIRS)は、組織における酸素飽和度(oxygensaturation)の測定に用いられうる。例えば、NIRSは、酸素飽和度(SO)における変化を検出することによって、脳機能の評価(assessment)に用いられうる。SOは、脳酸素消費量の代用になる(surrogate)ので、この測定は、迅速且つ非侵襲のルート(quick and non-invasive route)を介した脳機能に関する情報を提供しうる。しかしながら、NIRSによって測定された酸素飽和度は、脳酸素消費量と比べて、脳機能との相関が高くないことがある。更に、SO測定は、脳損傷が発生してから数時間後に該測定が起きた場合には、常にとりわけ感度が高いわけではない。これは、急性事象(acute event)が起きた後に酸素消費量および運搬(delivery)が平衡状態に達するためである。
【0005】
よって、脳機能の評価には、単にSO評価を用いる代わりに、酸素消費量を用いると良い。ニューロンのエネルギー消費は、組織の酸化的代謝(oxidative metabolism)に大きく由来し、神経系の活動過剰(多動性(hyperactivity))および細胞死は、脳酸素代謝(CMRO)として測定されうる酸素消費量における変化をもたらす。よって、CMROの測定は、ニューロンの生存能力(neuronal viability)を反映し、重大な診断に関する情報を提供するため、CMROは脳の健康の測定のための理想的なターゲットである。酸素消費量は、拡散相関分光法(DCS)システムを用いて測定されうる血流(血流量(blood flow))を含むパラメータと組み合わせてNIRSにより測定された酸素飽和度から計算される。
【0006】
NIRS及びDCSシステムの組み合わせの測定の手順は、患者の脳の前頭部、側頭部および頭頂部の領域における位置を測定することを含む。この測定のプロセスは、Lin,P.Y.他(J.Vis.Exp.(73),e4379,2013)により記載され、その全体が本明細書に参照によって組み込まれる。まず、患者の髪は分けられ、患者の頭皮の部分(セクション(section))を露出させる。それから、プローブが患者の頭に取り付けられ、NIRSシステムの光源(light source)および検出器(detector)がONになる。SO測定を取得するため、NIRS測定は16秒間にわたって取得された。NIRSシステムの光源および検出器がOFFになった後、DCSシステムの光源および検出器がONになった。Lin P.Y.他により記載されたプローブシステムについて、DCSのための光源(ソース(source))および検出器ファイバは、NIRSの光源および検出器ファイバと同じプローブ上であった。しかしながら、DCSの光源および検出器ファイバは、NIRSの光源および検出器ファイバと分けてかつ別の場所に配された。よって、患者の頭の同一位置におけるデータを取得するため、プローブは、DCS測定前に、わずかにシフトされる必要があった。DCS測定のデータは10秒間にわたって取得された。Lin,P.Y.他により記載されたように、NIRSおよびDCS測定の双方を行うことを含むこのプロセスは、該頭の前頭部、側頭部および頭頂部の位置のそれぞれにおいて、3回、繰り返された。
【0007】
同じ位置で測定するためプローブがシフトされなければならないことや、NIRSおよびDCS検出器が異なる信号の間で区別できず、測定が得られる時に2つのテクニックの光源および検出器の双方が二者択一的にOFFになる必要があること、を含む幾つかの理由のため、このデザインは、NIRSおよびDCSの同時測定(一度に測定(simultaneous measurement))を可能にしない。よって、NIRSおよびDCS測定は、同時に(一度に(simultaneously))実行(操作)され得ない。
【0008】
NIRSおよびDCSを組み合わせたシステムは、Peyman Zirak他(Biomedical Optics Express,Vol.1,No.5,pp.1443−1456,2010)によっても報告された。このシステムは、0.5秒のNIRS測定に続く3秒のDSC測定を記載し、前頭部の両側に配された2つのプローブからの測定が同時に実行された。各プローブにおいて、該プローブにおけるNIRSの光源および検出器ファイバの間の線は、DCSの光源および検出器ファイバの間の線と交差され、測定は、おおよそ同じ組織容量(tissue volume)で実行される。しかしながら、全てのファイバを含む領域は非常に大きい。よって、Peyman Zirak他により記載されているようなプローブは、毛髪が存在している患者の頭皮には適用され得ない。これは、患者の頭皮の部分は狭すぎて前述のプローブが適合(fit)しないからである。このプローブのサイズは、幼児のNIRSおよびDCS測定を試みるときに、特に問題である。さらに、NIRSおよびDCSの同時測定は可能ではない。
【0009】
よって、脳酸素代謝を数値化(定量化(quantify))する非常に高度な方法が求められる。このようなシステムは、改良された検出、例えば、脳の健康、脳の発達、並びに、治療反応、特に、新生児における改良された検出、を伴う定量化可能な結果を提供するであろう。好適には、このシステムは、医師(physician)または助手(technician)によって、より有効なものになるであろう。装置および方法であって、取得時間(acquisition time)、及び、いくつかの機器のいずれかの必要性、又は、該方法を実行している間に異なる光源および検出器をON及びOFFにする必要性を低減するための装置および方法もまた求められる。NIRS及びDCS測定を同時に実行することができる装置が更に求められる。
【発明の概要】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態によると、第1の波長の光を組織に向けて送るように構成された第1の光導波路を備える集積デバイスが提供され、前記第1の光導波路は第2の波長の光を前記組織に向けて送るように構成されるか、又は、前記デバイスは前記第2の波長の光を前記組織に向けて送るように構成された第2の光導波路を含む。前記第1および第2の波長、並びに、吸光分光法用に構成された他の波長はSO光と称される。前記デバイスは、更に、前記SO光の波長とは異なる第3の波長の光を前記組織に向けて送るように構成された第3の光導波路を備え、第3の波長の前記光はCBF光と称される。前記第3の波長は前記第1の波長および第2の波長の双方より長いか短いかのどちらかである。第4の光導波路は、前記組織から散乱した1以上のSO光を伝達するように構成され、第5の光導波路は、前記組織から散乱した前記CBF光を伝達するように構成されている。前記デバイスは、更に、前記第1、第2(存在するなら)、第3、第4及び第5の光導波路(全ての導波路)のそれぞれの前記遠位端に結合されたプローブチップ(プローブ端(probe tip))を備え、全ての導波路の前記遠位端は、前記プローブチップにおいて線形に配列されている。この集積デバイスは、前記SO及びCBF光を同時に検出することが可能である。
【0011】
少なくとも一実施形態によると、660〜910nmの範囲内の第1の波長および660〜910nmの範囲内の第2の波長(SO光)を少なくとも有する1以上の光源(第1の光源)と、前記SO光を組織に向けるように構成された1以上の導波路と、前記組織から伝達したSO光を検出するように構成された1以上の検出器(第1の検出器)と、前記SO光の前記波長のそれぞれより大きい第3の波長(CBF光)を有する第2の光源と、前記CBF光を組織に向けるように構成された導波路と、前記第4の波長で前記組織から散乱した光を検出するように構成された第2の検出器と、検出されたCBF光における時間的な強度変動(temporal intensity fluctuation)を数値化するように適合されたプロセッサと、を備える集積デバイスが提供される。この集積デバイスは、NIR光及びCBF光を同時に検出することが可能である。
【0012】
対象者の組織における脳組織酸素飽和度(StO)および脳血流量のインデックス(CBF)を同時に測定する方法もまた提供される。前記対象者の前記組織におけるStOを決定する工程は、
660〜910nmの範囲内の少なくとも2つの異なる波長を有する少なくとも2つの光(SO光)を前記組織に伝達する工程と、
前記組織を通過した後の光を検出する工程と、
前記少なくとも2つの異なる波長のそれぞれにおいて前記伝達した光と前記検出された光との強度の前記差異を決定する工程と、
StOを取得するように減衰における前記差異を決定する工程と、を含む。
前記対象者の前記組織におけるCBFを決定する工程と、
前記SO光の前記波長のそれぞれよりも大きい第3の波長を有する第3の光を前記組織に伝達する工程と、
前記第3の波長で前記組織から散乱した光の強度の量の検知する工程と、
前記CBFを決定する工程と、を含む。
この方法は、StOおよびCBFが同時に決定されるため特に有利である。
【0013】
同時検出(一度に検出(simultaneous detection))するためのデバイスもまた提供され、前記デバイスは、第1の波長の光を組織に向けて送るように構成された第1の光導波路と、第2の波長の光を組織に向けて送るように構成された第2の光導波路と、第3の波長の光を組織に向けて送るように構成された第3の光導波路と、前記第1および第2の波長で前記組織から散乱した光を伝達するように構成された第4の光導波路と、前記第1および第2の波長で前記組織から散乱した光を伝達するように構成された第5の光導波路と、前記第3の波長で前記組織から散乱した光を伝達するように構成された第6の光導波路と、前記第1、第2、第3、第4、第5及び第6の光導波路(全ての導波路)のそれぞれの前記遠位端に結合されたプローブチップと、ここで、全ての導波路の前記遠位端は、前記プローブチップにおいて線形に配列されており、前記第4の光導波路と光通信を行い、前記第1および第2の波長の光を検出するように構成された第1の検出器と、前記第5の光導波路と光通信を行い、前記第1および第2の波長の光を検出するように構成された第2の検出器と、前記第6の光導波路と光通信を行い、前記第3の波長で前記組織から散乱された光を検出するように構成された第3の検出器と、前記第2の検出器により検出された光における時間的な強度変動を数値化するように適合されたプロセッサと、を備える。
【0014】
本発明の更なる特徴は、添付図面の参照と共に例示的な実施形態の以下の記載から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の更なる目的、特徴および利点は、本発明の具体例を示す添付図面と併用したときに以下の詳細な記載から明らかになるだろう。
図1図1は、オキシヘモグロビン(酸化血色素(oxyhemoglobin))およびデオキシヘモグロビンの吸収スペクトルを提供する。
図2図2は、NIRSおよびDCS信号の例示的な波長の配置(arrangement)を描く。
図3A図3Aは、例示的なNIRSおよびDCSシステムの模式図(配線図(schematic diagram))である。
図3B図3Bは、NIRSおよびDCSシステムのための例示的なコンピュータシステムの、より詳細な模式図である。
図4図4は、Lin P.Y.他に記載されたプローブであって、新生児のためのNIRSおよびDCSシステムを組み合わせた装置に用いられたプローブの模式図である。NIRSおよびDCSファイバは、並んで配されている。
図5図5は、Peyman Zirak他に記載されたプローブであって、NIRS線およびDCS線が交差するNIRSおよびDCSを組み合わせた装置に用いられたプローブの模式図である。
図6図6は、NIRSおよびDCSファイバが全て単一の線の中であるNIRSおよびDCSを組み合わせた本発明のプローブの例示的な模式図である。
図7図7は、NIRSおよびDCSファイバが全て単一の線の中であるNIRSおよびDCSを組み合わせた本発明のプローブの他の例示的な模式図である。
図8図8は、NIRSおよびDCSファイバが全て単一の線の中であるNIRSおよびDCSを組み合わせた本発明のプローブの他の例示的な模式図である。
【0016】
以下の記載において、開示された発明が実践されうる実施形態を示す添付図面に、参照符号が示される。しかしながら、当業者は、本開示の新規性および趣旨から逸脱することなく、他の構造上および機能上の変更を開発しうることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、近赤外分光法(NIRS)および拡散相関分光法(DCS)の組み合わせのための装置および方法を提供する。
【0018】
<近赤外分光法および組織の酸素飽和度>
近赤外分光法(NIRS)は、電磁スペクトルの近赤外領域を用いる分光法である。NIRSの医学的応用は、ヘモグロビンの量および酸素含有量の非侵襲的測定(non-invasive measurement)である。NIRSは、脳機能の評価について広く用いられる。
【0019】
ヘモグロビンは、血球(blood cell)中の、酸素を運搬する金属タンパク質(metalloprotein)である。ヘモグロビンは、肺において酸素を獲得(ピックアップ)し、それから、該酸素を肺から組織に運んで解放(リリース)する。オキシヘモグロビンは、付加的な酸素分子(additional oxygen molecule)を有するヘモグロビンである。デオキシヘモグロビンは、酸素と結合していないヘモグロビンである。
【0020】
赤血球は、オキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンの異なる濃度を有する。血液の吸収スペクトルは、この濃度差を反映する。NIRSシステムは、オキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンの吸収スペクトルを利用することにより、酸素飽和度を測定する。近赤外波長域におけるオキシヘモグロビンの吸収スペクトルはデオキシヘモグロビンのそれとは異なるため(オキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンの吸収スペクトルを示す図1参照、http://omlc.ogi.edu/spectra/hemoglobin/index.html参照)、約660nmから約910nmの波長帯は、オキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンの異なる濃度を区別し、血液中の酸素含有量を決定するのに特に有利である。約660nmから約830nmの波長帯もまた特に熟考される。とはいえ、250nmから1.5μmの間等、約660nmから約910nmの波長帯の外の波長を用いることは可能である。さらに、波長が赤外領域へ及び830nm、850nmないし910nmを超えて移動すると、PMT検出器等の検出器は散乱光を集める効率を低減する。よって、より大きいIR効率の検出器が用いられない限り、より長い波長を使用することは好ましくない。
【0021】
NIRSを用いて血液の吸収スペクトルを測定するため、多数の(多様な(multiple))波長の光源を用いることが好ましい。例えば、異なる波長を有する8つのレーザダイオードがLin P.Y.他により用いられた。他の実験では、Grant,P.E.他(J.Cerebral Blood Flow&Metab.(2009)29,1704−1713)は、血液の吸収スペクトルを測定するのに8つの波長および互いに異なる波長の8つのレーザダイオードを用いた。
【0022】
多数の光源‐検出器の距離は、このシステムに伴う吸収および散乱係数を数値化するのに用いられうる。これらの光源‐検出器の分離のされ方は、NIR放射(NIR radiation)の浸透深さを最適化するために選択されうる。例えば、1cm、1.5cm、2cm及び2.5cmの光源‐検出器の分離が、新生児の大脳皮質(cerebral cortex)を含む吸収および散乱係数を数値化するために選択される。他の例では、例えば、1.5cm、2cm、2.5cm、3.0cm、3.5cm及び4.0cmの2以上の光源‐検出器の分離が選ばれる。いくつかの実施形態では、3.0cm又はそれより小さい光源‐検出器の分離が好ましい。他の実施形態では、より少ない又は多くの光源‐検出器の分離が、NIRSを行うのに用いられる。
【0023】
選ばれた各波長における血液の吸収係数(μ(λ))は、組織306から来たSO光のパワー(強度(power))および組織306に入射したSO光のパワーから計算される。オキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビン、並びに、総ヘモグロビン(total hemoglobin)の濃度は、その後、以下の式を用いて算出される:
・・(1)
・・(2)
・・(3)
ここで、
μ(λ)は、波長の関数としての血液吸収係数(blood absorption coefficient)であり、
εоxy−(λ)及びεdeоxy−(λ)は、波長の関数としてのオキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンの吸収係数であり、
εwater−(λ)は、波長の関数としての水の吸収係数であり、
[оxyHb]は、オキシヘモグロビンの濃度であり、
[deоxyHb]は、デオキシヘモグロビンの濃度であり、
[tоtalHb]は、総ヘモグロビンの濃度であり、
[Water]は、水の濃度である。
【0024】
組織の酸素飽和度は、オキシヘモグロビンと総ヘモグロビンの濃度の間の比である:
・・(4)。
【0025】
よって、酸素飽和度は、NIRSを用いて決定される。
【0026】
<拡散相関分光法および脳血流量のインデックス>
いくつかのケースでは、酸素飽和度は、脳機能の評価に対して反応しにくいことがある。この問題を解決するため、拡散相関分光法(DCS)システムは、NIRSシステムと組み合わせられうる。この測定の組み合わせは、脳機能および脳の健康のための重要な指標である脳酸素消費量(CMRO)の計算を可能にする。CMROは、脳機能を測定するのにStOよりも反応性が高く、NIRSおよびDCSの組み合わせのシステムにより測定されたパラメータである。上述のとおり、NIRSシステムは、組織における酸素飽和度を測定する。一方、DCSシステムは、血流速度を測定する。DCSは、スペックル変動が赤血球の動きに依存する組織における、近赤外拡散光のスペックル変動を測定する。よって、DCSは、深い組織における血液速度を非侵襲的に測定することができ、よって、脳血流量のインデックス(CBF)を提供する。とはいえ、DCSは、有効ブラウン拡散係数(effective Brownian diffusive coefficient)を測定する。有効ブラウン拡散係数の単位(unit)は血流の単位とは異なるが、その変化は血流の変化と関連がある(相関する)[Boas,2011]。例えば、動脈(artery)又は静脈(vein)の代わりとしての毛細血管(capillary)における血液の測定では、その断面は変わらないと考えられる。なぜなら、毛細血管は一般に平滑筋(smooth muscle)を有しないからである。DCS測定は、例えば、その全体が本明細書に参照によって組み込まれる米国特許第6,076,010号に記載されている。
【0027】
皮質の上方で見られる軟膜静脈(pial vein)等、大脳皮質以外のソースから測定された血流が、CMROの計算において寄与することが考えられる。例えば、補正係数(correction factor)は、より正確な脳血流測定を得るため、信号の軟膜の汚染(pial contamination)を除去するのに用いられうる。その全体が本明細書に参照によって組み込まれる、Gagnon他のNeuriomage 2012;59(4) 3933−3940、を参照されたい。或いは、脳および軟膜または他の血流の相対的な含有量は、異なる光源‐検出器の分離における測定に起因し得、非大脳濃度(non-cerebral concentration)及びこの考えはCMROの計算に際して考慮される。その全体が本明細書に参照によって組み込まれる、Strangeman,Li,and Zhang,(201)PLOS One,8(8) e66319、を参照されたい。
【0028】
<酸素飽和度>
本明細書で提供されるデバイスおよび方法は、NIRS及びDCSの双方の測定から得られたデータを用いて予め決定されることよりも正確に算出されうる酸素消費量の決定を可能にする、という点で特に有利である。酸素飽和度は、ヘモグロビン濃度(hemoglobin concentration)、血流量のインデックス(blood flow index)、動脈血酸素飽和度(arterial oxygenation)および組織酸素飽和度(tissue oxygenation)を用いて決定される。上述のとおり、組織酸素飽和度は、NIRS測定により決定され、血流量のインデックスはDCS測定で決定される。他の被検体由来のパラメータもまた、酸素消費量の決定において用いられうる。血液テストにより決定されうるヘモグロビン濃度、および、パルスオキシメータ(酸素濃度計(pulse oxymeter))を用いて決定されうる動脈血酸素飽和度もまた測定される。
【0029】
よって、CMROは、以下の式を用いて算出されうる:
・・(5)
ここで、
HGBは、血液テストにより測定されたヘモグロビン濃度であり、
SaOは、パルスオキシメータにより測定された動脈血酸素飽和度であり、
StOは、NIRSにより測定された組織酸素飽和度(tissue oxygen saturation)であり、
MWHb=64,500[g/mоl]は、ヘモグロビンの分子量であり、
β(≒0.84)は、ヘモグロビン酸化の測定に対する静脈の区画(venous compartment)の寄与率(percent contribution)である。CBFは、DCSにより測定された脳血流量のインデックスである。よって、CMROは、StOのNIRS測定およびCBFのDCS測定の組み合わせにより、推定され(見積もられ)うる。Lin P.Y.他のJ Vis Exp(73):e4379、を参照されたい。
【0030】
計算されたCMROは相対酸素消費量(rCMRO)でもあり得、以下の式を用いて算出されうる:
・・(6)
ここで、パラメータの個々は上に規定され、下付きの“о”は基準値(reference value)である。Nadege Roche−Labarbe他のJournal of Cerebral Blood Flow&Metabolism (2012)32,481−488、を参照されたい。
【0031】
<プローブの設計(デザイン)>
図3Aは、NIRSおよびDCSの組み合わせのシステム(300)の例示的な実施形態を示している。この例では、8つの異なる波長を有するレーザダイオード(302)がNIRS測定に用いられる。多数の波長の光源(302)から出力された光は光ファイバ(304)を通って運ばれ、その光ファイバ(304)はプローブチップ(308)を介して組織(306)に接続されている。組織(306)に照射された光は組織において散乱される。該散乱された光の一部は、プローブチップ(308)において光ファイバ(310)により集光され、コリメータレンズ(collimating lens)(314)及びローパスフィルタ(316)を含む光学レンズシステムを通った後、NIRS検出器(312)として用いられる光電子増倍管(photomultiplier tube)に入力される。
【0032】
DCS測定のための光源(322)は、図3Aに例示されるように、NIRS測定のためのそれとは異なる。DCSレーザ光源(322)のコヒーレント長は、DCS測定が多数の散乱光の干渉を利用するため、長い。DCS光源(CBF光源(322))から発光された光は、光ファイバ(324)により運ばれる。CBF光は、組織(306)に照射され、組織に散乱される。該散乱されたCBF光の一部は、光ファイバ(326)により集光され、DCS測定のためのアバランシェフォトダイオード検出器(APD)(328)に入力される。付随的に、光路は、コリメータレンズ(330)およびハイパスフィルタ(332)を有するレンズシステムを含む。
【0033】
散乱されたSO光は、光ファイバ(310)及び(326)の双方に入力する。散乱されたCBF光は、光ファイバ(310)及び(326)の双方に入力する。しかしながら、PMT前のフィルタ(316)は、SO光のみを通し、CBF光の強度(intensity)を減衰させる。結果として、図3Aに示された実施形態では、SO光はPMTに入力される。フィルタ(332)がAPD前に配置されると、フィルタ(332)はCBF光のみを通し、SOの強度を減衰させる。結果として、CBF光がAPDに入力される。よって、NIRS光源がONになっている間、DCSの光をOFFにする必要がない。
【0034】
NIRSにより測定された酸素飽和度およびDCSにより測定された血流によりCMROが算出されるので、NIRS及びDCS測定は略同時に且つ略同じ位置で実行されるとよい。そうするために、プローブの構成は重要である。
【0035】
図3Bに示されるように、コンピュータシステム350は、CPU351、ストレージ/RAM352、I/Oインタフェース353および検出器インタフェース354を含む。また、コンピュータシステム350は、1以上のデバイスを備える。例えば、あるコンピュータは構成要素(コンポーネント)351、352及び353を含み得、他のコンピュータは構成要素354を含みうる。
【0036】
CPU351は、ストレージ/RAM352に格納されたコンピュータが実行可能な命令(instruction)を読み、実行する。コンピュータが実行可能な命令は、本明細書に記載の方法(method)及び/又は計算を実行するためのものを含みうる。例えば、CPU351は、CBF光について検出器により検出された光に基づいて時間的な強度変動としての近赤外拡散光のスペックル変動(speckle fluctuation)を算出する。或いは、CPU351は、SO光およびCBF光の解析から得られたデータを用いて、酸素消費量として、CMROを算出する。
【0037】
ストレージ/RAM352は、コンピュータが読取可能な及び/又は書込可能な1以上のメディアを含み、例えば、電磁ディスク(例えば、ハードディスク)、光ディスク(例えば、DVD、ブルーレイ)、光磁気ディスク、半導体メモリ(例えば、不揮発性メモリカード、フラッシュメモリ、半導体ドライブ、SRAM、DRAM)、EPROM、EEPROM等を含みうる。ストレージ/RAM352は、コンピュータが読取可能なデータ、及び/又は、コンピュータが実行可能な命令を格納しうる。コンピュータシステム350の構成要素は、バスを介して通信する。
【0038】
I/Oインタフェース353は、キーボード、ディスプレイ、マウス、印刷装置(printing device)、タッチスクリーン、ライトペン、光学記憶装置(optical storage device)、スキャナ、マイクロフォン、カメラ、ドライブ、通信ケーブルおよびネットワーク(有線または無線のいずれか)を含みうるデバイスを入力および出力する通信インタフェースを提供する。
【0039】
検出器インタフェース354は、また、光電子倍増間(PMT)312、アバランシェフォトダイオード検出器(APD)328を含みうるデバイスを入力および出力する通信インタフェースを提供する。また、検出器の機能は、ストレージ/RAM352に記録されたコンピュータが実行可能な命令(例えば、1以上のプログラム)により実現されうる。
【0040】
<プローブチップの配置>
図4は、Lin他に記載されたプローブ(40)のチップ(端(tip))を示している。図4に示された表面は、頭部の上に配される。図4に示されたファイバの配置の特徴は、NIRS光源(41)および検出器ファイバ(42)が、NIRS光源(43)および検出器ファイバ(44)から異なる線上に配列(align)されていることである。よって、同一の位置においてデータを取得するために、プローブは、僅かにシフトされる。これはNIRS線(45)およびDCS線(46)が物理的に分離されているためである。この実施形態では、該分離は5mm程度である。よって、NIRSおよびDCS測定が同一の位置において為されるどんな測定についても、NIRSおよびDCS測定は同時には実行され得ない。
【0041】
図5は、Peyman Zirak他により用いられたプローブ(50)を示す。NIRSおよびDCS測定を一度に実行するために、NIRS光源(51)及び検出器ファイバ(52)間の線(55)は、DCS光源(53)及び検出器ファイバ(54)間の線(56)は交差している。Peyman Zirak他において、3つのレーザ光源が1つのファイババンドル(繊維束(fiber bundle))(51)に結合され、2つのNIRS検出器(52)が2.5cmの単一の光源‐検出器の分離(55)を伴って用いられる。図5にしたがう2つのプローブは、オキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンの濃度を測定するために、成人患者の額(forehead)の上に対称的に配された。
【0042】
全てのファイバを含む領域が大きいので、事前に開示された図4又は図5のいずれかに示されたプローブを髪が存在する部位に適用するのは難しい。髪は、光を強く散乱する。よって、もし光ファイバおよび組織の間に髪が挿入されると、光の強度が低減し、測定の有効性が低減する。本明細書に記載された方法を実践するのに際して、患者の髪は、好適には、プローブが頭皮に付された部位にコーマされる(とかしつけられる(comb))。しかしながら、それ故に該部位により露出された頭皮の領域は狭い。そこで、全てのファイバを含むプローブ領域は、狭くなくてはならない。狭いプローブを用いれば、プローブは頭の上に配され得、NIRS及びDCS測定の双方が、プローブ位置を調整する必要なしに、同時に又は順に、のいずれかで為されうる。
【0043】
よって、本明細書に記載される多様な実施形態では、光照射のための光ファイバおよびNIRS及びDCSの双方のための検出器は単一線(single line)に配置される。図6に例示されるように、例示的なプローブは、同時測定に特に有用なNIRS及びDCSの組み合わせについて示される。この実施形態では、光源および検出器プローブのそれぞれの間の直線的配置(線状配列(linear arrangement))が示される。よって、DCS光源(602)はDCS検出器(608)と共に一直線に(一列に(in line))存在し、NIRS光源(606)はNIRS検出器(604)と共に一直線に存在し、そして、NIRS及びDCS光源の双方並びに検出器は単一の線形の一直線(610)上に位置する。図6に示されるように、この配置は、NIRS光源/検出器の対の間の複数の異なる間隔(L1、L2、L3及びL4)を提供する。1つの例において、これらの長さは、L1=30mm、L2=25mm、L3=20mm、及び、L4=15mmである。DCS光源/検出器の対の間隔L5も示されており、1つの例において20mmである。
【0044】
図7は、同時測定に特に有利なNIRS及びDCSの組み合わせについての他の実施形態を示している。この実施形態では、4つのプローブのそれぞれの間の直線的配置が示される。よって、DCS光源(702)はDCS検出器(708)と共に一直線に存在し、NIRS光源(706)はNIRS検出器(704)と共に一直線に存在し、そして、NIRS及びDCS光源の双方並びに検出器は単一の線形の一直線(710)上に位置する。
【0045】
図8は、プローブの個々の間の直線的配置を有するNIRS及びDCSの組み合わせについて、さらに他の実施形態を示している。よって、DCS光源(802)はDCS検出器(808)と共に一直線に存在し、NIRS光源(806)はNIRS検出器(804)と共に一直線に存在し、そして、NIRS及びDCS光源の双方並びに検出器は単一の線形の一直線(810)上にみられる。図8に例示されたプローブは、4×1.5×2cmの寸法を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、多様な光ファイバが、線形に配列され、それらが実質的に列を形成するように配列される。いくつかの実施形態では、プローブチップ上における異なる光ファイバの位置は、以下のように決定される:まず、最も広い直径を有する光ファイバを選択する。それから、当該最も広い直径(Dwide)を有する光ファイバと、当該最も広い直径を有する光ファイバと対を形成する光ファイバとの中心間の線をひく。例えば、もしNIRS検出器ファイバの直径が最も広いなら、NIRS検出器と光源ファイバとの中心間に線がひかれる。他のファイバの個々の遠位端(遠心端(distal end))は、直線的配置でプローブチップ上に配され、ある位置に、この線上又はその近くにそれらが配されるように存在する。いくつかの実施形態では、プローブ本体(probe body)は、90度の角度で曲げられたファイババンドルを含有する。他の実施形態では、ファイババンドルは、90度より大きく又は小さく、例えば45度より大きく、曲げられている。
【0047】
よって、いくつかの実施形態では、光ファイバの個々は、ファイバが線状に配列される(それらが実質的に列を形成する)ように配される。光ファイバの個々は、上述の線上において、中心になり得、又は、実質的に中心になりうる。或いは、異なる光ファイバは、中心線からオフセットし得ても、最も広い直径の光ファイバと同じくらい広い幅の線を有するものとして規定された一直線上に位置する。例えば、直径Dを有するファイバについての線の中心からの最大オフセットは、1/2・(dwide−d)である。他の実施形態では、光ファイバは、ファイバ領域の少なくとも半分が線幅の範囲内になるように、上述の線の中心線からオフセットしうる。例えば、直径dを有するファイバについての線の中心からの最大オフセットは、1/2・dwideである。
【0048】
実際、DCS及びNIRS光源並びにDCS及びNIRS検出器が同じ位置になるように構成されたプローブチップは、組織をサンプリングする観点から、最適形態(optimal configuration)である。この設計の実現は機器構成の観点から困難(チャレンジング(challenging))ではありうるが、本開示は、フィルタリング方法(filtering strategy)を用いてこの構成を有するプローブチップを製造するのに最適の手段を提供する。ここで、DCS波長(例えば、第3の波長)は、NIRS波長(例えば、少なくとも第1および第2の波長)よりも長いか、短いか、のいずれかである。いくつかの実施形態では、1以上または更には全ての光導波路は、プローブチップ近傍で曲げられる。このことは、より容易な製造を提供しうる。
【0049】
好適には、プローブチップは、組織のサンプルと相互作用する実質的に平坦な表面を有する。このことは、より正確なサンプリングを可能にする。製造を補助し、デバイスを使用するため、プローブは、光ファイバでありうる導波路がプローブの側面(side)から約90度で出るように設計されうるが、これにより頭または他の組織に対して配された場合のプローブの高さを低く保てる。
【0050】
多様な数の光源および検出器、並びに、それ故に光源‐検出器の距離は、本発明の趣旨の範囲内で用いられうる。いくつかの実施形態では、プローブチップにおいてNIRS光について2以上の光源‐検出器の距離がある。よって、第1および第2の導波路は、第4の光導波路から少し離れて位置する。或いは、第1の導波路は、第4の光導波路と、組織から散乱したSO光を伝達する(送る)他の導波路との双方から少し離れて位置する。第1および第2の導波路(並びに、付随的な他の導波路)のそれぞれは、単一の又は複数の波長の光を伝達する。
【0051】
いくつかの実施形態では、プローブチップにおいてNIRS光について4以上の光源‐検出器の距離がある。よって、第1および第2の導波路は、第4の光導波路から、及び、組織から散乱したSO光を伝達する少なくとも1つの他の導波路から、少し離れて位置する。第1および第2の導波路(並びに、付随的な他の導波路)のそれぞれは、単一の又は複数の波長の光を伝達する。
【0052】
いくつかの実施形態では、プローブチップにおいてDCS光について2以上の光源‐検出器の距離がある。2以上の光源‐検出器の距離を有することは、短および長分離の双方が必要なとき、特に、小児または成人の患者において、利益(恩恵(benefit))がある。よって、いくつかの実施形態では、プローブチップにおいて第3の光導波路から少し離れた異なるところに位置する、第5の光導波路および組織から散乱したCBF光を伝達する他の光導波路がある。さらに他の実施形態では、CBF光を組織に送る他の光導波路があり、ここで、該他の光導波路は、プローブチップにおいて第3および第4の導波路の間の距離より異なる光源‐検出器の距離に位置する。
【0053】
したがって、本発明は、NIRS及びDCS測定が同じ位置において同時に為されうるという点で、周知技術に対する長所を提供し、そして、NIRS及びDCS測定の間でプローブを動かす必要がない。
【0054】
さらに、プローブのキャリブレーション(較正)の間、NIRS及びDCS部分の双方は、プローブを移動しないで、較正され得、また、同時に較正されうる。
【0055】
これら光源‐検出器の分離は、DCS測定のための多様な浸透深さを最適化するのに選ばれうる。いくつかの例では、例えば、1.5cm、2cm、2.5cm、3.0cm、3.5cmおよび4.0cmの光源‐検出器の分離が選ばれる。いくつかの実施形態では、3.0cm又はそれより小さい光源‐検出器の分離が好適である。
【0056】
いくつかの実施形態では、集積デバイスは、第3の光ファイバの遠位端とプローブチップとの間に光散乱体(optical scatterer)を含む。これは、皮膚表面の連続的な露出のために安全となるレベルまでCBF光を減衰するのに特に有用である。例示的な光散乱体は、薄いテフロン(登録商標)ディスクなど、テフロン(登録商標)のピース(piece)である。
【0057】
<波長>
以前は、785nmであるCBF光のための単一の波長と共に、SO検出のために、660から830nmの波長範囲内の8つの異なる波長が用いられた。8つのSO光は、光ファイバライトガイド(fiber optics light guide)を介して、光電子増倍管(PMT)により検出される。以前のこの言及(reference)は、NIRSデータが得られた後にDCSが実行される、DCSデータの付加的な測定を記載している。CBF光は、シングルモードファイバ(SMF)を介して、フォトンカウンティング(光子計測)アバランシェフォトダイオード(APD)により検出される。SMFの結合効率(coupling efficiency)は光ファイバライトガイドのそれよりも小さいため、DCSの検出効率は、NIRSのそれよりも小さい。よって、組織に対するCBF光の入射光量は、SO光のそれよりも高い。例えば、組織に対するSO光の入射光量は約3mWであり、CBF光のそれは約20mWである。いくつかの実施形態では、SO光は、例えば110MHZの周波数で、変調される。
【0058】
CMROは、NIRSにより測定されたStOおよびDCSにより測定されたCBFから推定される。高時間分解能(high temporal resolution)を有するCMROを算出するため、StOおよびCBFは同時に測定されるべきである。しかしながら、Lin他において、DCS測定(CBF光)に用いられた波長は、NIRSの範囲(SO光)内に設定された。それ故、DCS及びNIRSの双方の同時刻での測定は不可能である。
【0059】
高時間分解能を有するCMROを取得するため、NIRSおよびDCS測定は同時に為されるべきである。そうするため、CBF光の波長は、SO光の波長範囲外に設定される。例えば、CBF光の波長は、SO光の個々の波長よりも、大きくても(長くても)又は小さくても(短くても)よい。一実施形態では、CBF光は、SO光から分離され、NIRS波長の個々よりも長い波長である。
【0060】
よって、一実施形態において、8つのSO光の波長は、660、670、690、705、730、780、808及び830nmであり、CBF光の波長は850nmである。他の実施形態では、CBF光の波長は670nmであり、SO光は690、705、730、780、808及び830nmである。これらの実施形態の個々において、より少ない又は多いSO光が用いられうる。いくつかの実施形態では、8つのSO光は8つのSO光源から生じる。或いは、より少ない光源が用いられてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、CBF光は、SO光の波長より大きい波長を有する。このことは、DCSは一般にシングルモードファイバに用いられ、より少ない光が検出器ファイバのなかに結合されうるので、特に有利である。よって、CBF光について、より大きい散乱効率を伴う波長、又は、より長い波長の光を選ぶことは有利である。
【0062】
いくつかの実施形態では、CBF光は、SO光からスペクトル的に(spectrally)分離される。例えば、CBF光は、いかなるSO波長よりも大きい、少なくとも10nm、少なくとも15nm、又は、少なくとも20nmである。他の例では、CBF光は、いかなるSO波長よりも短い、少なくとも10nm、又は、少なくとも15nm、又は、少なくとも20nmである。
【0063】
CBF光を減衰させ、NIRS測定に実質的に影響を与えることからCBF光を防ぐため、光ファイバは、NIRS測定のための検出器の前に配されうる。例えば、8つのSO光の波長が660、670、690、705、730、780、808及び830nmであり且つCBF光の波長が850nmであるところで(図2)、850nm又はそれ以上の光をブロックするローパスフィルタが用いられうる。或いは、ノッチフィルタ(notch filter)が用いられてもよい。
【0064】
同様に、1以上のNIRS波長のSO光を減衰させ、NIRS測定に実質的に影響を与えることからSO光を防ぐため、光ファイバは、DCS測定のための検出器の前に配されうる。
【0065】
いくつかの実施形態では、光ファイバに加え、又は、それに代えて、信号処理を用いて信号がフィルタ処理される。
【0066】
いくつかの実施形態では、デバイスは、プローブチップとDCS検出器との間の位置するフィルタを含まない。この実施形態は、CBF光の光強度がSO光の個々の光強度に比べて大きい例では、特に有用である。例えば、一実施形態では、CBF光は、SO光のいずれよりも少なくとも10倍は強力であり、CBF光をブロックするフィルタは、SO光を解析するのに設置された検出器の前にみられ、及び、CBF光を解析するのに設置された検出器の前にフィルタは存在しない。
【0067】
本明細書で用いられるように、“実質的に”という文言は、光を実質的に減衰させることとの文脈において用いられたとき、光の強度が、少なくとも70%、又は、より好適には少なくとも80%、又は、より好適には少なくとも85%、又は、より好適には少なくとも50%、又は、より好適には少なくとも95%、又は、より好適には少なくとも97%、又は、より好適には少なくとも99%、低減されることを意味する。
【0068】
いくつかの実施形態において、集積デバイスは、それぞれ少なくとも1つのSO光を組織に送る第1および第2の導波路を備える。デバイスはファイババンドルを備え得、ファイババンドル内で2つの異なる波長が2つの異なるファイバを介して運ばれる。SO光の多様な付加的な波長も、ファイババンドル内でファイバを介して運ばれうる。いくつかの実施形態では、第1および第2の導波路の双方は少なくとも2つの波長を運び、ここで、該2つの導波路は共に同一波長を伝達しうる。例えば、第1の導波路は、660から910nmの範囲内の4つの波長を伝達し、また、第2の導波路は、660から910nmの範囲内の4つの波長を伝達し、ここで、8つの固有のNIRS波長が存在する。他の一例では、第1の導波路は、660から910nmの範囲内の4つの波長を伝達し、第2の導波路は、同じ4つの波長を伝達する。他の例では、各導波路は、3、5、6、7、又は8つの異なる波長を送る。
【0069】
他のいくつかの実施形態では、集積デバイスは、少なくとも2つのSO光を組織に送る第1の導波路を備える。光の2つの異なる波長は、光学スプリッタまたはカプラー、光学結合器(optical combiner)、光スイッチを介して、又は、当技術分野で公知の他の手段であって2以上の異なる波長を単一の光導波路に結合するための手段によって、1つの導波路に結合され(be combined)うる。
【0070】
図3は、NIRS及びDCS測定システムの模式図を示している。8つのSO光は、レーザダイオードから発光され、光ファイババンドルを介して組織に入射する。長いコヒーレント長のレーザシステムは、DCS光源のために用いられる。CBF光は、光ファイバを介して組織に入射する。それらの光は組織において散乱される。該散乱されたSO光の一部は、光ファイバライトガイド(optical fiber light guide)により集光される。光学ショートパスフィルタ(optical shortpass filter)は、CBF光を減衰させるため、光ファイバライトガイドとPMTとの間に挿入される。ショートパスフィルタのカットオフ波長は、SO光の最長の波長およびCBF光の波長の間に設定される。該散乱されたCBF光の一部は、シングルモードファイバにより集光される。光学ロングパスフィルタ(optical longpass filter)は、SO光を減衰させるため、シングルモードファイバとAPDとの間に挿入される。ロングパスフィルタのカットオフ波長は、SO光の最長の波長およびCBF光の波長の間に設定される。もし、CBF光の入射光量がSO光のそれよりも十分に高いなら、DCS測定のためのAPDの前の光学ロングパスフィルタは必要とされない。
【0071】
NIRSを実行するため、いくつかの波長が用いられる。一方、DCS測定において1つの波長が必要である。NIRSおよびDCS信号を同時に取得するため、2つの様式(modality)のために用いられる波長は異なるべきである。CBF光の波長は、NIRS波長の範囲の外に配される。一実施形態では、CBF光の波長は、SO光の波長よりも長い。
【0072】
いくつかの実施形態では、DCS励起源(DCS excitation source)からの不必要な光を除去するためのフィルタは、DCS励起または散乱からの光がSO光のための検出器にヒットするのを防ぐため、NIRSのための検出器の前に配される。このフィルタは、例えば光学ショートパスフィルタでありうる。好適には、光学ショートパスフィルタのカットオフ波長は、SO光の最長の波長およびCBF光の波長の間に設定される。
【0073】
<HGB濃度>
ヘモグロビン濃度は、標準的な血液テストのような当技術分野で公知のいかなる手段によっても測定されうる。[HGB]は、最も一般的に為される血液テストの1つであり、通常、全血球算定(complete blood count)の一部である。
【0074】
<動脈血酸素飽和度(Arterial Oxygenation)>
SaOは、動脈血酸素飽和度である。SaOは、血流において酸素に占めれた、ヘモグロビン結合部位(hemoglobin binding site)の割合(percentage)を与える。この変化量は、当技術分野で公知のいかなる手段によっても測定されうる。一実施形態では、パルスオキシメータが用いられる。パルスオキシメータは、酸素飽和度を測定するために飽和ヘモグロビンの吸光特性(light absorption characteristics)を測定する。パルスオキシメータは、本明細書に記載されているように、デバイスに組み込まれてもよいし、又は、医師または助手によって共通に用いられる分離デバイスであってもよい。
【0075】
<定義>
本明細書で用いられるように、“同時に(一度に(simultaneous))”という文言は、同時に測定することに関連して用いられたとき、その測定が、1回の心拍の期間内で、及び、それ故に酸素飽和度(酸素供給)が実質的に変化する期間内で為されることを意味する。いくつかの実施形態では、同時に、とは、5秒より短い、4秒より短い、3秒より短い、2秒より短い、1秒より短い、500msecより短い、又は、200msecより短いことを意味する。更に他の実施形態では、同時測定(simultaneous measurement)は、SO光およびCBF光に双方が対象者(subject)の組織に同時に入射することを意味し、ここで、CBF光は、SO光を用いた測定を行うためにブロックされておらず又はOFFになっておらず、逆も同様である。
【0076】
いくつかの実施形態では、同時検出(simultaneous detection)は、第1の検出器が第1及び/又は第2の波長の光を、第2の検出器が第3の波長の光を検出するのと同時に、検出することを意味する。このことは、CBF光をOFFに切り替えることなく、為されうる。よって、同時という文言は、CBF光源およびSO光源の双方が同時にONになる実施形態を含む。
【0077】
本明細書で記載された組織などの基板から伝達した光は、散乱され、及び/又は、反射された光の全体の量のみであることが理解されるべきである。散乱され、及び/又は、反射された光の多くは、本明細書で記載された装置によって捕獲されないだろうし、測定されない。
【0078】
本明細書で用いられるように、“時間分解能(temporal resolution)”は、時間に関する測定の正確さを参照する。酸素飽和度および血流は、時間経過で変化する。より正確な酸素消費量を推定するため、酸素飽和度は、血流と共に同時に測定されるべきである。本発明を用いると、時間分解能は、Lin他により示されたものと比べて低減されうる。
【0079】
本明細書で用いられるように、“ピーク強度より大きい(greater than the peak intensities)”という表現は、いかなる瞬間的なピーク強度でもなく、ピーク強度の平均よりも値が大きいことを意味する。信号の強度において変動(揺らぎ(fluctuation))が生じうること、及び、このような変動はピーク強度のためのより安定した値を与えるために平滑化されうることが理解される。
【0080】
記載の参照において、具体的な詳細は、開示された例の完全な理解を提供するために示される。他の例では、本開示を不必要に長くすることがないように、周知の方法、手段、構成要素、及び、回路は、詳細には記載されていない。
【0081】
一要素または一部が他の要素または部分について“上にあること(on)”、“対すること(against)”、“接続されること(connectedto)”又は“結合されること(coupled to)”として本明細書で参照される場合、それは、直接的に、該他の要素または部分について、上にあってもよいし、対してもよいし、接続されてもよいし、又は、結合されてもよいし、或いは、介在する要素または部分が存在してもよい、ということが理解されるべきである。例えば、一要素が他の要素または部分について“直接的に上にあること(directly on)”、“直接的に接続されること(directly connected to)”又は“直接的に結合されること(directly coupled to)”として参照される場合、介在する要素または部分は存在しない。“及び/又は”という文言は、用いられた場合、関連の列挙された項目の、もしそのように与えられたならば、1以上の如何なる及び全ての組み合わせを含む。
【0082】
“下(under)”、“下位(beneath)”、“下方(below)”、“低い(lower)”、“上方(above)”、“上(upper)”、“近位(proximal)”、“遠位(distal)”等の空間的な相対的用語(spatially relative term)は、一要素を規定するための記載、又は、多様な図面に示されるように他の要素もしくは特徴に対する特徴的関係を容易にするのに、本明細書で用いられうる。しかしながら、該空間的な相対的用語は、図に描かれた方向性に加え、使用ないし実行の際のデバイスの異なる方向性を包含することを意図する、ということが理解されるべきである。例えば、もし図中のデバイスがひっくり返されたなら、他の素子または特徴の“下方”又は“下位”として記載された素子は、該他の素子または特徴の“上方”に方向付けられるであろう。よって、“下方”のような相対的な空間的用語(relative spatial term)は、上方および下方の双方の方向性を包含しうる。デバイスは、他の方法で方向付けられて(90度または他の向きに回転されて)もよく、本明細書で用いられた空間的な相対的記載はそれに応じて解釈されたい。同様に、相対的な空間的用語“近位”及び“遠位”もまた代替可能であり得、ここで適用されうる。
【0083】
本明細書で用いられるように“約(およそ(about))”の用語は、値の0及び10%の間、より好適には0及び値の0及び5%の間を意味する。
【0084】
第1(first)、第2(second)、第3(third)等の用語は、多様な要素、構成要素(コンポーネント)、領域、部分、及び/又は、区分(セクション(section))を記載するのに本明細書で用いられうる。これらの要素、構成要素、領域、部分、及び/又は区分は、これらの用語に限定されるべきではないことが理解されるべきである。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、部分または区画を、他の領域、部分または区画から区別するためにのみ用いられた。よって、以下に議論される第1の要素、構成要素、領域、部分または区画は、本明細書での示唆から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、部分または区画と言及されてもよい。
【0085】
本明細書で用いられる専門用語(terminology)は、特に実施形態を記載するためのみに用いられ、限定することを意図するものではない。本明細書で用いられるように、“1つの(単一の(a,an))”および“該(当該(the))”の単数形は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形を含むことを意図している。“含む(include)”及び/又は“含んでいる(including)”という用語は、本明細書で用いられたとき、言及された特徴、整数(integer)、工程(ステップ)、実行(オペレーション)、要素、及び/又は、構成要素の存在を特定することも理解されるべきであるが、明確に言及されていない1以上の他の特徴、整数、工程、実行、構成要素、及び/又は、それらのグループの存在または付加を排除するものではない。
【0086】
例示的な実施形態は、いくつかの図を参照しながら記載され、ここで、参照番号は、いくつかの図および実施形態を通して同一または対応する部分を指定する。したがって、同様の参照番号を有するこのような部分の記載は、多数の図に対して繰り返されない。
【0087】
図に描かれた例示的な実施形態を記載するのに、明確性のために特定の専門用語が使用される。しかしながら、本明細書の開示は、そのように選択された特定の専門用語に限定されることを意図するものではなく、また、特定の要素の個々は、同様の方法で動作する全ての技術的に均等のものを含むことが理解されるべきである。
【0088】
<例>
例1のハイブリッドFDNIRS−DCS機器(instrument)
【0089】
ハイブリッドFDNIRS−DCS機器は、約23インチ(l)×18インチ(w)×9インチ(h)の寸法を有して建設された。機器のFDNIRS部分は、670〜830nmの8つの異なる波長の範囲で動作し且つ16のラジオ周波数(110MHz)で変調されたレーザダイオードと、ヘテロダイン検出のための2つの光電子増倍管検出器(PMT)と、を有する(ISS社のImagentに類似)。機器のDCS構成要素は、長いコヒーレント長の852nmレーザと、4つの低暗計測(low dark-count)カウントフォトンカウンティング(光子計測)アバランシェフォトダイオードと、カスタムメイド256タウ相関器ボードと、を有する。ノッチフィルタは、FDNIRS PMTの前に配された。
【0090】
更に、この機器を満期新生児(full-term neonate)に使用するのにカスタマイズするのに、図8のリジッドリニア(rigid linear)光プローブチップが用いられた。この実施形態におけるプローブ本体は、90度の角度で曲がり且つFDNIRSのための4つの光源‐検出器の分離(1.5、2.0、2.5及び3.0cm)を提供する4つのFDNIRSファイババンドルを含む。DCSについて、2.0cmだけ離れた2つの直角プリズムが、組織の表面への/からの光を運びおよび集めるのに用いられうる。DCS検出プリズムにおいて、4つのシングルモードファイバはまとめられており、それらの信号は信号対雑音比を向上するために平均化される。
【0091】
このシステムは、自社設計のソフトウェアと共にFDNIRS/DCS同時測定を可能にする。使用の際、FDNIRS構成要素は、35dB(FDNIRS電圧が光量に比例するとして、10lоg10)のダイナミックレンジを有する。550VのPMT利得、例えば、診療所で実行するのに例示的な利得において、最小検出限界は、10pWの信号レベルにおいて、0.35°/√Hzフェーズノイズを伴う0.032pW/√Hzである。60分以上で、AC振幅は0.7%範囲内に安定しており、フェーズは0.2°範囲内に安定している。
【0092】
FDNIRSおよびDCSを同時に実行している間、PMTの前のノッチフィルタの使用のおかげで、2つの様式(modality)の間にわずかなクロストークしかなかった。DCS強度およびベータ(コヒーレンス因子)はFDNIRSレーザの影響をうけるが、FDNIRSレーザが、測定された血流量のインデックスに与える影響はごく僅かである。
【0093】
<例示的な関連文献>
David A. Boas, Handbook of BiomedicalOptics, CRC Press, 2011.
【0094】
Durduran, T., et al., Diffuse opticsfor tissue monitoring and tomography. Reports on Progress in Physics, 2010. 73(7):43.
【0095】
Franceschini M.A., et al., Assessment of infant brain development with frequency-domain near-infrared spectroscopy. Pediatric Research 2007. 61: 546-551.
【0096】
Grant, P.E., et al., Increasedcerebral blood volume and oxygen consumption in neonatal brain injury. Journalof Cerebral Blood Flow and Metabolism 2009. 29: 1704-1713.
【0097】
Lin, P. Y., Roche-Labarbe, N., Dehaes,M., Carp, S., Fenoglio, A., Barbieri, B., et al. Non-invasive OpticalMeasurement of Cerebral Metabolism and Hemodynamics in Infants. J. Vis. Exp.(73), e4379, doi:10.3791/4379, 2013.
【0098】
Peyman Zirak et al., Effects ofacetazolamide on the micro- and macro-vascular cerebral hemodynamics: a diffuseoptical and transcranial Doppler ultrasound study, Biomedical Optics Express,Vol. 1, No. 5, pp. 1443-1456, 2010.
【0099】
Roche-Labarbe, N., et al.,Near-infrared spectroscopy assessment of cerebral oxygen metabolism in thedeveloping premature brain. Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism 2012.32: 481-488.
【0100】
Gagnon et al., Neuriomage 2012; 59(4)3933-3940.
【0101】
Strangeman, Li, and Zhang, (201) PLOSOne, 8(8) e66319.
【0102】
Nadege Roche-Labarbe et al., Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism (2012) 32, 481-488.
【0103】
本発明は例示的な実施形態を参照して記載されたが、発明は、開示された例示的な実施形態に限られるものでないことは理解されるべきである。発明の範囲は、全てのそのような修正、並びに、均等の構造および機能を含むように、最も広い解釈がされるべきである。
【0104】
よって、我々は、ここで、個別に、又は、如何なる特徴の組み合わせで、如何なる構造で、記載された如何なる特徴をも備えるデバイスを請求し、また、さらに、ここで記載された如何なる様式を用いて、如何なる順序で、記載された如何なるプロセスをも含む使用方法を請求する。
【0105】
以下の請求項2〜26に記載された特徴の個々は、請求項27に記載された集積デバイスに関連し、また、請求項27と組み合わせて考えられる。以下の請求項2〜26及び28〜32に記載された特徴の個々は、請求項33の方法に記載された集積デバイスの使用に関連し、また、このように、これらの特徴は、請求項33に記載された方法と組み合わせて考えられる。以下の請求項2〜26及び28〜32に記載された特徴の個々は、請求項34の方法に記載された集積デバイスに関連し、また、請求項34と組み合わせて考えられる。
【0106】
以下の請求項は、さらに発明の側面(aspects)を記載する。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8