特許第6596473号(P6596473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596473
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/033 20060101AFI20191010BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20191010BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20191010BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20191010BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   G03F7/033
   G03F7/027 502
   G03F7/004 501
   G03F7/027 515
   H05K3/28 D
   C08F2/46
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-166718(P2017-166718)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-45608(P2019-45608A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2018年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】津留 紘樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 博喜
【審査官】 塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−139127(JP,A)
【文献】 特開2016−180880(JP,A)
【文献】 特開2016−153891(JP,A)
【文献】 特開2016−069625(JP,A)
【文献】 特開2014−199415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 − 7/18
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)ブロック共重合体と、(C)光重合開始剤と、(D)反応性希釈剤と、(E)エポキシ化合物と、を含有し、
前記(B)ブロック共重合体が、(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体と、(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体と、(b3)ジブロック共重合体と、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体が、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、4.0質量部以上13質量部以下含有する請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体100質量部に対して、前記(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体と前記(b3)ジブロック共重合体が、合計、30質量部以上400質量部以下含有する請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)ブロック共重合体が、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、10質量部以上20質量部以下含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(D)反応性希釈剤が、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレートを含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(E)エポキシ化合物が、グリシジルエステル型エポキシ樹脂を含む請求項1乃至5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を塗布したことを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、特に回路基板の絶縁被膜として有用な感光性樹脂組成物及び感光性樹脂組成物を光硬化して得られた皮膜を有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、基板の上に導体回路のパターンを形成し、そのパターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けにより搭載するために使用され、そのはんだ付けランドを除く回路部分は保護皮膜としてのソルダーレジスト膜で被覆される。これにより、プリント配線板に電子部品をはんだ付けする際に、はんだが不必要な部分に付着するのを防止すると共に、回路導体が空気に直接曝されて酸化や湿度により腐食されるのを防止する。
【0003】
また、プリント配線板の配線密度の細密化にともない、保護皮膜として塗布される感光性樹脂組成物も高解像性、高精度化が要求されているが、近年、プリント配線板の設置環境も厳しくなってきており、さらに、熱履歴や熱の負荷による保護皮膜の劣化防止も要求されている。
【0004】
そこで、熱履歴による黄変を抑えるために、カルボキシル基含有感光性樹脂と、熱分解法により製造された二酸化ケイ素粉末及び/または金属酸化物粉末と、光重合開始剤と、希釈剤と、エポキシ化合物と、酸化チタンとを含有する感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【0005】
一方で、プリント配線板の保護皮膜には、熱衝撃耐性、すなわち、保護皮膜が、低温雰囲気と高温雰囲気に繰り返し曝されても、クラックが発生することを防止できる特性、及びはんだ耐熱性のさらなる改善が要求される場合がある。しかし、特許文献1では、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性が十分ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−133670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、塗膜硬度、アルカリ現像性、塗膜外観等の基本諸特性を損なうことなく、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性に優れた硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
本発明の態様は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)ブロック共重合体と、(C)光重合開始剤と、(D)反応性希釈剤と、(E)エポキシ化合物と、を含有し、
前記(B)ブロック共重合体が、(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体と、(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体と、(b3)ジブロック共重合体と、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0009】
本発明の態様は、前記(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体が、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、4.0質量部以上13質量部以下含有する感光性樹脂組成物である。
【0010】
本発明の態様は、前記(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体100質量部に対して、前記(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体と前記(b3)ジブロック共重合体が、合計、30質量部以上400質量部以下含有する感光性樹脂組成物である。
【0011】
本発明の態様は、前記(B)ブロック共重合体が、前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、10質量部以上20質量部以下含有する感光性樹脂組成物である。
【0012】
本発明の態様は、前記(D)反応性希釈剤が、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレートを含む感光性樹脂組成物である。
【0013】
本発明の態様は、前記(E)エポキシ化合物が、グリシジルエステル型エポキシ樹脂を含む感光性樹脂組成物である。
【0014】
本発明の態様は、上記感光性樹脂組成物を塗布したことを特徴とするプリント配線板である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(B)ブロック共重合体として、(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体と、(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体と、(b3)ジブロック共重合体と、を含むことにより、塗膜硬度、アルカリ現像性、塗膜外観等の基本諸特性を損なうことなく、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体が(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して4.0質量部以上13質量部以下含有することにより、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性をバランスよく向上させることができる。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体100質量部に対して、(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体と前記(b3)ジブロック共重合体が合計30質量部以上400質量部以下含有することにより、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性をバランスよく向上させることができる。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(B)ブロック共重合体が(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して10質量部以上20質量部以下含有することにより、さらに優れた熱衝撃耐性とはんだ耐熱性を得ることができる。
【0019】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(D)反応性希釈剤がε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレートを含むことにより、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性をより確実に向上させることができる。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(E)エポキシ化合物がグリシジルエステル型エポキシ樹脂を含むことにより、優れたはんだ耐熱性を損なうことなく、熱衝撃耐性をより確実に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の感光性樹脂組成物について、以下に説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)ブロック共重合体と、(C)光重合開始剤と、(D)反応性希釈剤と、(E)エポキシ化合物と、を含有し、前記(B)ブロック共重合体が、(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体と、(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体と、(b3)ジブロック共重合体と、を含む。
【0022】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
カルボキシル基含有感光性樹脂は、特に限定されず、例えば、カルボキシル基を含有し、感光性の不飽和二重結合を1個以上有する樹脂が挙げられる。カルボキシル基含有感光性樹脂として、例えば、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸やメタクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」ということがある。)等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて、エポキシ(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基に多塩基酸又はその無水物を反応させて得られる、多塩基酸変性エポキシ(メタ)アクリレート等の多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0023】
前記多官能性エポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂であればいずれでも使用可能である。多官能性エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されないが、1500以下が好ましく、1000以下がより好ましく、100〜500が特に好ましい。多官能性エポキシ樹脂には、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、о−クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂にBr、Cl等のハロゲン原子を導入したものを使用してもよい。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸などを挙げることができ、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法に特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸とを適当な希釈剤中で加熱することにより反応させることができる。
【0026】
多塩基酸又は多塩基酸無水物は、前記エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応により生成した水酸基に反応し、樹脂に遊離のカルボキシル基を導入するためのものである。多塩基酸又はその無水物は特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。多塩基酸には、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、3−エチルテトラヒドロフタル酸、4−エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、3−エチルヘキサヒドロフタル酸、4−エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられ、多塩基酸無水物としてはこれらの無水物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0027】
本発明においては、上記した多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂もカルボキシル基含有感光性樹脂として使用できるが、必要に応じて、上記した多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のカルボキシル基に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有するグリシジル化合物を反応させることにより、ラジカル重合性不飽和基を更に導入し、感光性をより向上させたカルボキシル基含有感光性樹脂としてもよい。
【0028】
この感光性をより向上させたカルボキシル基含有感光性樹脂は、前記グリシジル化合物の反応によって、ラジカル重合性不飽和基が、多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂骨格の側鎖に結合するため、光重合反応性が高く、優れた感光特性を有することができる。1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリメタアクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、グリシジル基は1分子中に複数有していてもよい。上記した1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、特に限定されないが、その下限値は、確実なアルカリ現像の点から30mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/gが特に好ましい。一方、酸価の上限値は、アルカリ現像液による露光部の溶解防止の点から200mgKOH/gが好ましく、硬化物の耐湿性と電気特性の劣化防止の点から150mgKOH/gが特に好ましい。
【0030】
また、カルボキシル基含有感光性樹脂の質量平均分子量は、特に限定されないが、その下限値は、硬化物の強靭性及び指触乾燥性の点から3000が好ましく、5000が特に好ましい。一方、質量平均分子量の上限値は、円滑なアルカリ現像性の点から200000が好ましく、50000が特に好ましい。
【0031】
(B)ブロック共重合体
本発明の感光性樹脂組成物では、(B)ブロック共重合体として、(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体と(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体と(b3)ジブロック共重合体とを配合することにより、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。
【0032】
(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体
カルボキシル基含有トリブロック共重合体には、例えば、[a]−[b]−[a]構造のブロック共重合体を挙げることができる。[a]の重合体ブロックは、ガラス転移温度が[b]の重合体ブロックよりも高く、よって、相対的にハードブロック構造を有する。[a]のガラス転移温度は、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性の点から100℃以上が好ましく、120℃以上が特に好ましい。[a]の重合体ブロックとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートとカルボキシル基を有する共重合成分(アルキル(メタ)アクリレートではない)との共重合体を挙げることができる。従って、[a]の重合体ブロックは、カルボキシル基を有している重合体ブロックである。モノマー原料であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。モノマー原料であるカルボキシル基を有する共重合成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。[a]の重合体ブロック中におけるアルキル(メタ)アクリレートの割合は、特に限定されないが、50〜90質量%が好ましい。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC法)によって測定することができる。
【0033】
[a]の重合体ブロックも、[a]の重合体ブロックと同様に、ガラス転移温度が[b]の重合体ブロックよりも高く、よって、相対的にハードブロック構造を有する。[a]のガラス転移温度は、[a]と同様に、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性の点から100℃以上が好ましく、120℃以上が特に好ましい。[a]の重合体ブロックとしては、例えば、[a]の重合体ブロックと同じく、アルキル(メタ)アクリレートとカルボキシル基を有する共重合成分(アルキル(メタ)アクリレートではない)との共重合体を挙げることができる。モノマー原料であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、[a]の重合体ブロックと同じく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。モノマー原料であるカルボキシル基を有する共重合成分としては、例えば、[a]の重合体ブロックと同じく、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。[a]の重合体ブロック中におけるアルキル(メタ)アクリレートの割合は、特に限定されないが、50〜90質量%が好ましい。
【0034】
[b]の重合体ブロックは、ガラス転移温度が[a]の重合体ブロック及び[a]の重合体ブロックよりも低く、よって、相対的にソフトブロック構造を有する。[b]のガラス転移温度は、硬化物に柔軟性を付与することで熱衝撃を受けてもクラックの発生を防止する点から−10℃以下が好ましく、−30℃以下が特に好ましい。[b]の重合体ブロックとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートの重合体を挙げることができる。従って、[b]の重合体ブロックは、カルボキシル基を有さない重合体ブロックである。モノマー原料であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0035】
カルボキシル基含有トリブロック共重合体における[b]の重合体ブロックの含有量は、特に限定されず、例えば、硬化物の硬度、はんだ耐熱性及び熱衝撃耐性をバランスよく向上させる点から20〜55質量%が好ましく、35〜50質量%が特に好ましい。また、カルボキシル基含有トリブロック共重合体の質量平均分子量は、特に限定されず、例えば、その下限値は、10000が好ましく、20000が特に好ましい。一方、その上限値は、200000が好ましく、150000が特に好ましい。
【0036】
(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体の含有量は、特に限定されないが、その下限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性をバランスよく向上させる点から2.0質量部が好ましく、はんだ耐熱性をさらに向上させる点から4.0質量部がより好ましく、6.0質量部が特に好ましい。一方で、その上限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、はんだ耐熱性の低下を確実に防止する点から30質量部が好ましく、塗膜外観をより向上させる点から15質量部がより好ましく、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性をさらにバランスよく向上させる点から13質量部が特に好ましい。
【0037】
(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体
カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体には、例えば、[a]−[b]−[a]構造のブロック共重合体を挙げることができる。[a]の重合体ブロックは、ガラス転移温度が[b]の重合体ブロックよりも高く、よって、相対的にハードブロック構造を有する。[a]のガラス転移温度は、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性の点から60℃以上が好ましく、90℃以上が特に好ましい。[a]の重合体ブロックとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートの重合体、アルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートではないカルボキシル基を有さない他の共重合成分との共重合体等を挙げることができる。モノマー原料であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。モノマー原料であるカルボキシル基を有さない他の共重合成分としては、例えば、ジメチル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0038】
[a]の重合体ブロックも、[a]の重合体ブロックと同様に、ガラス転移温度が[b]の重合体ブロックよりも高く、よって、相対的にハードブロック構造を有する。[a]のガラス転移温度は、[a]と同様に、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性の点から60℃以上が好ましく、90℃以上が特に好ましい。[a]の重合体ブロックとしては、例えば、[a]の重合体ブロックと同じく、アルキル(メタ)アクリレートの重合体、アルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートではないカルボキシル基を有さない他の共重合成分との共重合体等を挙げることができる。モノマー原料であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。モノマー原料であるカルボキシル基を有さない他の共重合成分としては、例えば、ジメチル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。[a]の重合体ブロック中におけるアルキル(メタ)アクリレートの割合は、特に限定されないが、50〜90質量%が好ましい。
【0039】
カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体中における、カルボキシル基を有さない他の共重合成分の割合(原料換算)は、特に限定されないが、5〜20質量%が好ましく、10〜15質量が特に好ましい。
【0040】
[b]の重合体ブロックは、ガラス転移温度が[a]の重合体ブロック及び[a]の重合体ブロックよりも低く、よって、相対的にソフトブロック構造を有する。[b]のガラス転移温度は、硬化物に柔軟性を付与することで熱衝撃を受けてもクラックの発生を防止する点から−10℃以下が好ましく、−30℃以下が特に好ましい。[b]の重合体ブロックとしては、例えば、ポリn−ブチル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。
【0041】
カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体における[b]の含有量は、特に限定されず、例えば、硬化物の硬度、はんだ耐熱性及び熱衝撃耐性をバランスよく向上させる点から20〜65質量%が好ましく、40〜55質量%が特に好ましい。また、カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体の質量平均分子量は、特に限定されず、例えば、その下限値は、5000が好ましく、10000が特に好ましい。一方、その上限値は、100000が好ましく、50000が特に好ましい。
【0042】
(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体の含有量は、特に限定されないが、その下限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性をバランスよく向上させる点から2.0質量部が好ましく、3.0質量部が特に好ましい。一方で、その上限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、はんだ耐熱性の低下を確実に防止する点から20質量部が好ましく、10質量部が特に好ましい。
【0043】
(b3)ジブロック共重合体
ジブロック共重合体には、例えば、[a]−[b]構造のブロック共重合体を挙げることができる。ここで、[a]の重合体ブロックは、ガラス転移温度が[b]の重合体ブロックよりも高く、よって、相対的にハードブロック構造を有する。[a]のガラス転移温度は、硬化物の硬度とはんだ耐熱性の点から60℃以上が好ましく、90℃以上が特に好ましい。[a]の重合体ブロックとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0044】
[b]の重合体ブロックは、ガラス転移温度が[a]の重合体ブロックよりも低く、よって、相対的にソフトブロック構造を有する。[b]のガラス転移温度は、硬化物に柔軟性を付与することで熱衝撃を受けてもクラックの発生を防止する点から−10℃以下が好ましく、−30℃以下が特に好ましい。[b]の重合体ブロックとしては、例えば、ポリn−ブチル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。
【0045】
ジブロック共重合体における[b]の含有量は、特に限定されず、例えば、硬化物の硬度、はんだ耐熱性及び熱衝撃耐性をよりバランスよく向上させる点から20〜70質量%が好ましく、40〜65質量%が特に好ましい。また、ジブロック共重合体の質量平均分子量は、特に限定されず、例えば、その下限値は、10000が好ましく、20000が特に好ましい。一方、その上限値は、200000が好ましく、100000が特に好ましい。
【0046】
(b3)ジブロック共重合体の含有量は、特に限定されないが、その下限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性をバランスよく向上させる点から2.0質量部が好ましく、3.0質量部が特に好ましい。一方で、その上限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、はんだ耐熱性の低下を確実に防止する点から20質量部が好ましく、10質量部が特に好ましい。
【0047】
(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体と(b3)ジブロック共重合体の総計と(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体との割合は、特に限定されないが、(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体と(b3)ジブロック共重合体の総計は、(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体100質量部に対して、はんだ耐熱性と熱衝撃耐性をバランスよく向上させる点から30質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、はんだ耐熱性をさらに向上させる点から80質量部以上が特に好ましい。一方で、(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体と(b3)ジブロック共重合体の総計は、(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体100質量部に対して、はんだ耐熱性と熱衝撃耐性をバランスよく向上させる点から500質量部以下が好ましく、400質量部以下がより好ましく、はんだ耐熱性をさらに向上させる点から160質量部以下が特に好ましい。
【0048】
(B)ブロック共重合体の含有量は、特に限定されないが、その下限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、はんだ耐熱性と熱衝撃耐性をバランスよく向上させる点から10質量部が好ましく、12質量部が特に好ましい。一方で、その上限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、はんだ耐熱性と熱衝撃耐性をバランスよく向上させる点から30質量部が好ましく、20質量部が特に好ましい。
【0049】
(C)光重合開始剤
光重合開始剤は、一般的に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン‐n‐ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2‐ジメトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、2,2‐ジエトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−(N,N−ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニルプロパン‐1‐オン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)フェニル‐2‐(ヒドロキシ‐2‐プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p‐フェニルベンゾフェノン、4,4′‐ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2‐メチルアントラキノン、2‐エチルアントラキノン、2‐ターシャリーブチルアントラキノン、2‐アミノアントラキノン、2‐メチルチオキサントン、2‐エチルチオキサントン、2‐クロルチオキサントン、2,4‐ジメチルチオキサントン、2,4‐ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P‐ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0050】
光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5〜30質量部が好ましく、7〜20質量部が特に好ましい。
【0051】
(D)反応性希釈剤
反応性希釈剤とは、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは1分子当たり少なくとも2つの重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の光硬化を十分にして、耐酸性、耐熱性、耐アルカリ性などを有する硬化物を得るために使用する。
【0052】
反応性希釈剤は、上記化合物であれば特に限定されず、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、フェノキシエチルメタクリレート、ジエチレングルコールモノメタクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピルアクリルレート、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0053】
これらのうち、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性をより確実に向上させることにも寄与する点から、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレートが好ましい。
【0054】
反応性希釈剤の含有量は特に限定されず、例えば、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、2.0〜300質量部が好ましく、10〜100質量部が特に好ましい。
【0055】
(E)エポキシ化合物
エポキシ化合物は、硬化塗膜の架橋密度を上げて十分な強度の硬化塗膜を得るためのものであり、例えば、エポキシ樹脂を添加する。エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型など)、ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られたビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂、さらにシクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレート、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂(例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等)等を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0056】
このうち、優れたはんだ耐熱性を損なうことなく熱衝撃耐性をより確実に向上させることにも寄与する点から、グリシジルエステル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0057】
エポキシ化合物の含有量は、特に限定されないが、硬化後に十分な強度の塗膜を得る点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、10〜70質量部が好ましく、20〜60質量部が特に好ましい。
【0058】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記した成分(A)〜成分(E)の他に、必要に応じて、種々の成分、例えば、フィラー、顔料、各種添加剤、溶剤などを含有させることができる。
【0059】
フィラーは、感光性樹脂組成物の塗膜の物理的強度を上げるためのものであり、例えば、タルク、硫酸バリウム、疎水性シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、マイカ等を挙げることができる。フィラーの含有量は、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、10〜70質量部が好ましく、20〜60質量部が特に好ましい。
【0060】
顔料は、特に限定されず、例えば、白色着色剤である酸化チタンや、白色以外の着色剤として、フタロシアニングリーン及びフタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、アントラキノン系、並びにアゾ系等の有機顔料や、カーボンブラック等の無機顔料を挙げることができる。
【0061】
各種添加剤には、例えば、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等の消泡剤、シラン系、チタネート系、アルミナ系等のカップリング剤、三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)並びにポリアミン等の潜在性硬化剤、アセチルアセナートZn及びアセチルアセナートCr等のアセチルアセトンの金属塩、エナミン、オクチル酸錫、第4級スルホニウム塩、トリフェニルホスフィン、2−メルカプトベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、イミダゾリウム塩類並びにトリエタノールアミンボレート等の熱硬化促進剤、ポリカルボン酸アマイド等のチキソ剤などを挙げることができる。
【0062】
溶剤は、感光性樹脂組成物の乾燥性を調節するためのものである。溶剤には、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロプレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及び上記グリコールエーテル類のエステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類等を挙げることができる。
【0063】
上記した本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されないが、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温にて三本ロールにより混合分散させて製造することができる。また、必要に応じて、前記混合分散前に、攪拌機にて予備混合してもよい。
【0064】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例を説明する。ここでは、本発明の感光性樹脂組成物を、プリント配線板に塗工して、ソルダーレジスト膜等の絶縁被膜を形成する方法を例にして説明する。
【0065】
プリント配線板に、所望の厚さ、例えば5〜100μmの厚さで、上記のように製造した本発明の感光性樹脂組成物を塗布する。塗工の手段としては、公知の手段をいずれも使用でき、適宜選択可能であるが、例えば、スクリーン印刷、バーコーター、スプレー塗工、アプリケータ、ブレードコータ、ナイフコータ、ロールコータ、グラビアコータ等を挙げることができる。塗工後、必要に応じて、感光性樹脂組成物を熱風炉または遠赤外線炉等で予備乾燥し、感光性樹脂組成物から溶剤を揮発させて塗膜の表面をタックフリーの状態にする。予備乾燥の温度は60〜80℃、予備乾燥の時間は15〜60分が、それぞれ、好ましい。その後、塗布した感光性樹脂組成物上に、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、その上から紫外線を照射させる。そして、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより塗膜が現像される。現像方法には、例えば、スプレー法、シャワー法等が用いられ、希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5〜5質量%の炭酸ナトリウム水溶液を使用することができる。次いで、130〜170℃の熱風循環式の乾燥機等で20〜80分間ポストキュアを行うことにより、プリント配線板上に目的とするパターンを有する絶縁被膜を形成させることができる。
【実施例】
【0066】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1〜9、比較例1〜4
下記表1、2に示す各成分を下記表1、2に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1〜9(表1に示す)、比較例1〜4(表2に示す)にて使用する感光性樹脂組成物を調製した。そして、調製した感光性樹脂組成物を以下のように塗工して試験片を作製した。下記表1、2中の数字は質量部を示す。また、下記表1、2中の空欄は配合なしを意味する。
【0068】
なお、表1、2中の各成分についての詳細は以下の通りである。
【0069】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
・リポキシSP−4621:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸を反応させて、エポキシアクリレートを得、生成した水酸基に多塩基酸を反応させて得られる構造である、多塩基酸変性エポキシアクリレート。固形分65質量%、昭和電工(株)。
【0070】
(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体
・SM4032XM10:[a]−[b]−[a
(式中、[a]はメタクリル酸メチルとカルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合成分との共重合体(ガラス転移温度120℃〜140℃)、[b]はポリブチルアクリレート(ガラス転移温度−54℃)、[a]はメタクリル酸メチルとカルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合成分との共重合体(ガラス転移温度120℃〜140℃)、[a]と[a]の質量の合計/[b]の質量=3/2)。質量平均分子量130000、アルケマ社。
【0071】
(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体
・Nanostrength M52N:[a]−[b]−[a
(式中、[a]はN,N−ジメチルアクリルアミドが共重合したポリメチルメタクリレート(ガラス転移温度120℃〜140℃)、[b]はポリブチルアクリレート(ガラス転移温度−65℃〜−45℃)、[a]はN,N−ジメチルアクリルアミドが共重合したポリメチルメタクリレート(ガラス転移温度120℃〜140℃)、[a]と[a]の質量の合計/[b]の質量=1/1)。トリブロック共重合体の総質量に対してN,N−ジメチルアクリルアミドの重合割合は10〜15質量%(原料換算)、質量平均分子量15000、アルケマ社。
【0072】
(b3)ジブロック共重合体
・LA1114:ポリメチルメタクリレート−ポリブチルアクリレートのジブロック共重合体、片末端PMMA、ブチルアクリレートの含有量は60質量%以上、質量平均分子量80000、酸価OmgKOH/g、(株)クラレ。
【0073】
(C)光重合開始剤
・イルガキュア369:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社。
・SPEEDCURE TPO:日本シイベルヘグナー社。
・KAYACURE DETX:日本化薬(株)。
【0074】
(D)反応性希釈剤
・KAYARAD DPCA−60:日本化薬(株)。
・DPHA:東亞合成(株)。
(E)エポキシ化合物
・jER871、YX−4000HK:三菱化学(株)。
・EPICRON N−695:DIC社。
【0075】
フィラー
・硫酸バリウムB−34:堺化学工業(株)。
・FH105:富士タルク(株)。
・AEROSIL♯2000:日本アエロジル(株)。
顔料
・ファーストゲングリーン:DIC社。
添加剤
・メラミン:日産化学工業(株)。
・DICY−7:ジャパンエポキシレジン社。
・アンテージMB:川口化学工業(株)。
・BYK−405:ビックケミー社。
溶剤
・EDGAC:三洋化成品(株)。
【0076】
試験片作製工程
基板:プリント配線基板(ガラスエポキシ基板「FR−4」、板厚1.6mm、導体(Cu箔)厚50μm)
基板表面処理:バフ研磨
塗工:スクリーン印刷
DRY膜厚:20〜25μm
予備乾燥:80℃、20分
露光:感光性樹脂組成物上300mJ/cm(オーク社製「HMW−680GW」)
アルカリ現像:1質量%Na2CO3、液温30℃、スプレー圧0.2MPa、現像時間60秒
ポストキュア:150℃、60分
【0077】
評価・測定項目は以下の通りである。
(1)熱衝撃耐性
上記試験片作製工程にて作製した試験片100枚について、熱衝撃試験機(日立アプライアンス(株)製、日立ヒートショック試験装置「ES−76LMS」)にて、−65℃/30分〜125℃/30分を1サイクルとして1000サイクルの試験を行った。その後、顕微鏡(×200)にてプリント配線基板の塗膜を観察して、塗膜のクラック発生率を以下の基準にて評価した。塗膜の観察位置は、露出したCu箔(2.0mm角パット)の周りを囲むように正方形状(2.4mm角)にアルカリ現像された塗膜の各角部とした。
◎:クラック発生率が10%以下
○:クラック発生率が11〜30%
△:クラック発生率が31〜50%
×:クラック発生率が50%以上
【0078】
(2)はんだ耐熱性
上記試験片作製工程にて作製した試験片の硬化塗膜を、JIS C−6481の試験方法に準拠して、260℃のはんだ槽に30秒間浸せき後、セロハン粘着テープによるピーリング試験(剥離試験)を1サイクルとし、これを1〜3回繰り返した後の塗膜状態を目視により観察し、以下の基準にて評価した。
◎:3サイクル繰り返し後も塗膜に変化が認められない
○:3サイクル繰り返し後に塗膜に変化が認められる
△:2サイクル繰り返し後に塗膜に変化が認められる
×:1サイクルにて塗膜に変化が認められる
【0079】
(3)塗膜硬度
上記試験片作製工程にて作製した試験片の、Cu箔上の塗膜について、鉛筆硬度をJIS K−5600−5−4の試験方法に従って評価した。
【0080】
(4)アルカリ現像性
上記試験片作製工程の予備乾燥後の塗膜を、0.2MPaのスプレー圧にて現像(30℃、1質量%の炭酸ナトリウム現像液を使用)するのに必要な時間をブレークポイントとし、該時間を測定した。評価は、以下の3段階で行った。
○:ブレークポイント30秒未満
△:ブレークポイント30秒以上60秒未満
×:ブレークポイント60秒以上
【0081】
(5)塗膜外観
上記試験片作製工程にて作製した試験片の塗膜状態を目視により観察し、以下の基準に従って評価した。
○:塗膜に異常なし
△:塗膜に若干白化あり
×:塗膜表面が失沢
【0082】
実施例1〜9の評価結果を下記表1、比較例1〜4の評価結果を下記表2に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
上記表1に示すように、(B)ブロック共重合体として、(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体と、(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体と、(b3)ジブロック共重合体と、を含む各実施例では、塗膜硬度、アルカリ現像性、塗膜外観を損なうことなく、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性に優れた硬化塗膜を得ることができた。特に、(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体100質量部に対して、(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体と(b3)ジブロック共重合体の合計が100質量部以上150質量部以下の範囲にある実施例1、2では、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性ともにさらに向上した硬化塗膜を得ることができた。
【0086】
実施例1と実施例7、9の対比から、エポキシ化合物としてダイマー酸ジグリシジルエステルを配合すると、熱衝撃耐性の向上にも寄与した。実施例1と実施例8、9の対比から、反応性希釈剤として、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのアクリレートを配合すると、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性の向上にも寄与した。
【0087】
一方で、上記表2に示すように、(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体が配合されていない比較例1では、はんだ耐熱性が得られなかった。また、(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体は配合されているものの、(b3)ジブロック共重合体が配合されていない比較例2では、熱衝撃耐性が得られなかった。また、(b1)カルボキシル基含有トリブロック共重合体は配合されているものの、(b2)カルボキシル基を含有しないトリブロック共重合体が配合されていない比較例3では、合格レベルの熱衝撃耐性は得られたものの、はんだ耐熱性が得られなかった。(B)ブロック共重合体が配合されなかった比較例4では、合格レベルのはんだ耐熱性は得られたものの、熱衝撃耐性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の感光性樹脂組成物は、塗膜硬度、アルカリ現像性、塗膜外観等の基本諸特性を損なうことなく、熱衝撃耐性とはんだ耐熱性に優れた硬化物を得ることができるので、例えば、プリント配線板の分野で利用価値が高い。