(54)【発明の名称】地熱発電システム、地熱発電装置、地熱発電方法又は媒体移送管、その媒体移送管を利用した地熱発電装置及び地熱発電方法並びに破砕帯に媒体移送管を設置する方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
媒体を下降させる下降領域及び上昇させる上昇領域を有し、地熱帯に開口を有さない二重管を有する媒体移送管と、前記媒体移送管に前記媒体を送出する高圧循環ポンプと、地熱の熱によって加熱された前記媒体から蒸気を取り出す蒸気発生器と、
前記媒体移送管の周囲に形成されている地熱水を受領する生産井と、少なくとも1つの気水分離器を含んでなり、前記地熱水から蒸気を取り出す気水分離器と、
前記蒸気発生器から取り出された蒸気及び前記気水分離器から取り出された蒸気によって発電する発電機と、
を備えていることを特徴とする地熱発電システム。
媒体を下降させる下降領域及び上昇させる上昇領域を有し、地熱帯に開口を有さない二重管を有する媒体移送管と、前記媒体移送管に前記媒体を送出する高圧循環ポンプと、地熱の熱によって加熱された前記媒体から蒸気を取り出す蒸気発生器と、
地熱水を受領する生産井と、少なくとも1つの気水分離器を含んでなり、前記地熱水から蒸気を取り出す気水分離器と、
前記蒸気発生器から取り出された蒸気及び前記気水分離器から取り出された蒸気によって発電する発電機と、
を備え、
前記媒体の少なくとも一部は、前記気水分離器で分離された地熱水によって熱交換され加熱された状態で前記高圧循環ポンプによって前記媒体移送管に送出されることを特徴とする地熱発電システム。
媒体を下降させる下降領域及び上昇させる上昇領域を有し、地熱帯に開口を有さない二重管を有する媒体移送管と、前記媒体移送管に前記媒体を送出する高圧循環ポンプと、地熱の熱によって加熱された前記媒体から蒸気を取り出して発電する媒体用発電設備と、を有する第1地熱発電設備と、
地熱水を受領する生産井と、少なくとも1つの気水分離器を含んでなり、前記地熱水から蒸気を取り出して発電する地熱水用発電設備と、を有する第2地熱発電設備と、
を備え、前記媒体の少なくとも一部は、前記気水分離器で分離された地熱水によって熱交換され加熱された状態で前記高圧循環ポンプによって前記媒体移送管に送出されることを特徴とする地熱発電システム。
前記気水分離器内には、前記気水分離器によって分離された地熱水の熱を前記媒体に交換するための熱交換器を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の地熱発電システム。
前記地熱水用発電設備はフラッシャーを備えており、前記フラッシャー内には、前記媒体に熱を交換するための熱交換器を備えていることを特徴とする請求項3に記載の地熱発電システム。
媒体を下降させる下降領域及び上昇させる上昇領域を有し、地熱帯に開口を有さない二重管を有する媒体移送管と、前記媒体移送管に前記媒体を送出する高圧循環ポンプと、地熱の熱によって加熱された前記媒体から蒸気を取り出す蒸気発生器と、
前記媒体移送管の周囲に形成されている地熱水を受領する生産井と、熱交換の完了した前記地熱水の少なくとも一部を還元する還元井と、少なくとも1つの気水分離器を含んでなり、前記地熱水から蒸気を取り出す気水分離器と、
前記蒸気発生器から取り出された蒸気及び前記気水分離器から取り出された蒸気によって発電する発電機と、
を備えており、
媒体移送管の周囲に設けられた生産井の地熱水から取水して、前記地熱水から蒸気を取り出し、
媒体移送管から媒体を取水して、前記媒体から蒸気を取り出し、
地熱水の蒸気及び媒体の蒸気によりタービンで発電することを特徴とする地熱発電方法。
媒体を下降させる下降領域及び上昇させる上昇領域を有し、地熱帯に開口を有さない二重管を有する媒体移送管と、前記媒体移送管に前記媒体を送出する高圧循環ポンプと、地熱の熱によって加熱された前記媒体から蒸気を取り出す蒸気発生器と、
地熱水を受領する生産井と、熱交換の完了した前記地熱水の少なくとも一部を還元する還元井と、少なくとも1つの気水分離器を含んでなり、前記地熱水から蒸気を取り出す気水分離器と、
前記蒸気発生器から取り出された蒸気及び前記気水分離器から取り出された蒸気によって発電する発電機と、
を備えており、
前記媒体の少なくとも一部は、前記気水分離器で分離された地熱水によって熱交換され加熱された状態で前記高圧循環ポンプによって前記媒体移送管に送出されることを特徴とする地熱発電方法。
媒体を下降させる下降領域及び上昇させる上昇領域を有し、地熱帯に開口を有さない二重管を有する媒体移送管と、前記媒体移送管に前記媒体を送出する高圧循環ポンプと、地熱の熱によって加熱された前記媒体から蒸気を取り出して発電する媒体用発電設備と、を有する第1地熱発電設備と、
地熱水を受領する生産井と、熱交換の完了した前記地熱水の少なくとも一部を還元する還元井と、少なくとも1つの気水分離器を含んでなり、前記地熱水から蒸気を取り出して発電する地熱水用発電設備と、を有する第2地熱発電設備と、
を備えており、
前記媒体の少なくとも一部は、前記気水分離器で分離された地熱水によって熱交換され加熱された状態で前記高圧循環ポンプによって前記媒体移送管に送出されることを特徴とする地熱発電方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、従来技術にかかる熱交換器をさらに発展させ、さらに熱効率のよい地熱発電システム、地熱発電装置及び地熱発電方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、第1の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0024】
本発明にかかる地熱発電システムは、媒体を下降させる下降領域及び上昇させる上昇領域を有し、地熱帯に開口を有さない二重管を有する媒体移送管と、前記媒体移送管に前記媒体を送出する高圧循環ポンプと、地熱の熱によって加熱された前記媒体から蒸気を取り出す蒸気発生器と、
前記媒体移送管の周囲に形成されている地熱水を受領する生産井と、少なくとも1つの気水分離器を含んでなり、前記地熱水から蒸気を取り出す気水分離器と、
前記蒸気によって発電する発電機と、
を備えていることを特徴とする。
【0025】
本発明にかかる地熱発電システムは、閉鎖循環型の媒体地熱井の周囲に生産井を有しているので、媒体移送管の周囲は、熱交換用地熱井近傍の媒体によって冷やされた地熱水が常に新しい加熱された地熱水と交換され常に地熱によって加熱された地熱水が媒体移送管に接触することになり、より効果的に媒体を加熱することができる。なお、熱交換の完了した前記地熱水の少なくとも一部を還元する還元井を有していても良い。
【0026】
本発明にかかる地熱発電システムは、媒体を下降させる下降領域及び上昇させる上昇領域を有し、地熱帯に開口を有さない二重管を有する媒体移送管と、前記媒体移送管に前記媒体を送出する高圧循環ポンプと、地熱の熱によって加熱された前記媒体から蒸気を取り出す蒸気発生器と、
地熱水を受領する生産井と、熱交換の完了した前記地熱水の少なくとも一部を還元する還元井と、少なくとも1つの気水分離器を含んでなり、前記地熱水から蒸気を取り出す気水分離器と、
前記蒸気によって発電する発電機と、
を備え、
前記媒体の少なくとも一部は、前記気水分離器で分離された地熱水によって熱交換され加熱された状態で前記高圧循環ポンプによって前記媒体移送管に送出されることを特徴とする。
【0027】
本発明にかかる地熱発電システムによれば、媒体移送管に送出する媒体の温度を加熱することによって、より高温、高圧の媒体を取水することができ、発電出力を向上させることができる。
【0028】
本発明にかかる地熱発電システムは、媒体を下降させる下降領域及び上昇させる上昇領域を有し、地熱帯に開口を有さない二重管を有する媒体移送管と、前記媒体移送管に前記媒体を送出する高圧循環ポンプと、地熱の熱によって加熱された前記媒体から蒸気を取り出して発電する媒体用発電設備と、を有する第1地熱発電設備と、
地熱水を受領する生産井と、熱交換の完了した前記地熱水の少なくとも一部を還元する還元井と、少なくとも1つの気水分離器を含んでなり、前記地熱水から蒸気を取り出して発電する地熱水用発電設備と、を有する第2地熱発電設備と、
を備え、
前記媒体の少なくとも一部は、前記気水分離器で分離された地熱水によって熱交換され加熱された状態で前記高圧循環ポンプによって前記媒体移送管に送出されることを特徴とする。
【0029】
かかる発明によれば、前述した発明の効果に加え、第1地熱発電設備の媒体は、第2地熱発電設備の地熱水とは全く異なる閉鎖系になるので、第1地熱発電設備によって取り出される媒体には、地熱帯特有の硫黄その他の不純物が含まれていないため、スケールとなって熱井戸、配管類又はタービン等に付着することがなく、長期間の使用が可能となる。
【0030】
さらに、本発明にかかる地熱発電システムにおいて、前記生産井は、前記媒体移送管の周囲に形成されていることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、媒体移送管の周囲の地熱水は、媒体移送管の周囲の地熱水が流れているため、熱交換用地熱井近傍の媒体によって冷やされた地熱水が常に新しい加熱された地熱水と交換され常に地熱によって加熱された地熱水が媒体移送管に接触することになり、より効果的に媒体を加熱することができる。
【0031】
また、本発明にかかる地熱発電システムにおいて、前記気水分離器内には、前記気水分離器によって分離された地熱水の熱を前記媒体に交換するための熱交換器を備えていることを特徴とするものであってもよい。媒体を加熱する手段として、第2地熱発電設備の気水分離器によって気水分離された熱水を利用して媒体を加熱することにより、効果的に媒体を加熱することができる。
【0032】
さらに、本発明にかかる地熱発電システムにおいて、前記地熱水用発電設備は、フラッシャーを備えており、前記フラッシャー内には、前記媒体に熱を交換するための熱交換器を備えていることを特徴とするものであってもよい。第2地熱発電設備として、ダブルフラッシュ方式を採用した場合に、フラッシャー内で熱交換することによって、効果的に媒体を加熱することができる。
【0033】
さらに、本発明にかかる地熱発電システムにおいて、前記媒体用発電設備は、復水器を有し、前記復水器で冷却された媒体を前記第2地熱発電設備側に送出することを特徴とするものであってもよい。媒体を加熱するに際して、発電に使用した後の復水器の媒体を第2地熱発電設備側に送出して加熱することによって、媒体を循環させることができる。
【0034】
さらに、本発明にかかる地熱発電システムにおいて、前記生産井は、前記媒体移送管の周囲に形成されていることを特徴とするものであってもよい。媒体移送管の周囲の地熱水は常に新しい加熱された地熱水と交換される上、媒体移送管の周囲の地熱水が流れているため、常に地熱によって加熱された地熱水が媒体移送管に接触することになり、より効果的に媒体を加熱することができる。
【0035】
さらに、本発明は、以下の地熱発電方法をも提供する。
【0036】
本発明にかかる地熱発電方法は、下降領域及び上昇させる上昇領域を有し、地熱帯に開口を有さない二重管を有する媒体移送管と、前記媒体移送管に前記媒体を送出する高圧循環ポンプと、地熱の熱によって加熱された前記媒体から蒸気を取り出す蒸気発生器と、
前記媒体移送管の周囲に形成されている地熱水を受領する生産井と、熱交換の完了した前記地熱水の少なくとも一部を還元する還元井と、少なくとも1つの気水分離器を含んでなり、前記地熱水から蒸気を取り出す気水分離器と、
前記蒸気によって発電する発電機と、
を備えており、
媒体移送管の周囲に設けられた生産井の地熱水から取水して、前記地熱水から蒸気を取り出し、
媒体移送管から媒体を取水して、前記媒体から蒸気を取り出し、
地熱水の蒸気及び媒体の蒸気によりタービンで発電することを特徴とする。
【0037】
また、本発明にかかる地熱発電方法は、媒体を下降させる下降領域及び上昇させる上昇領域を有し、地熱帯に開口を有さない二重管を有する媒体移送管と、前記媒体移送管に前記媒体を送出する高圧循環ポンプと、地熱の熱によって加熱された前記媒体から蒸気を取り出す蒸気発生器と、地熱水を受領する生産井と、熱交換の完了した前記地熱水の少なくとも一部を還元する還元井と、少なくとも1つの気水分離器を含んでなり、前記地熱水から蒸気を取り出す気水分離器と、
前記蒸気によって発電する発電機と、
を備えており、
前記媒体の少なくとも一部は、前記気水分離器で分離された地熱水によって熱交換され加熱された状態で前記高圧循環ポンプによって前記媒体移送管に送出されることを特徴とする。
【0038】
さらに、本発明にかかる地熱発電方法は、媒体を下降させる下降領域及び上昇させる上昇領域を有し、地熱帯に開口を有さない二重管を有する媒体移送管と、前記媒体移送管に前記媒体を送出する高圧循環ポンプと、地熱の熱によって加熱された前記媒体から蒸気を取り出して発電する媒体用発電設備と、を有する第1地熱発電設備と、
地熱水を受領する生産井と、熱交換の完了した前記地熱水の少なくとも一部を還元する還元井と、少なくとも1つの気水分離器を含んでなり、前記地熱水から蒸気を取り出して発電する地熱水用発電設備と、を有する第2地熱発電設備と、
を備えており、
前記媒体の少なくとも一部は、前記気水分離器で分離された地熱水によって熱交換され加熱された状態で前記高圧循環ポンプによって前記媒体移送管に送出されることを特徴とする。
【0039】
さらに、本発明にかかる地熱発電方法は、
(1)媒体を下降させる下降領域及び上昇させる上昇領域を有し、地熱帯に開口を有さない二重管を有する媒体移送管から加熱された媒体を取水する工程、
(2)取水した前記媒体から媒体の蒸気と媒体の液体に分離する工程、
(3)分離された蒸気を使用して発電する工程、
(4)生産井から地熱水を取水する工程、
(5)取水した地熱水を地熱水の蒸気と地熱水の液体に分離する工程、
(6)媒体の液体を地熱水の液体によって加熱する工程、
(7)加熱された媒体の液体を前記媒体移送管に送出する工程とを含むことを特徴とする。
【0040】
さらに本発明は、第2の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0041】
地熱帯の熱によって熱せられた熱水を熱源として発電する地熱発電装置であって、外側に地熱帯へ前記熱水を移送する媒体注入管と、その媒体注入管の内側に前記地熱帯の熱によって熱せられた前記熱水を取り出す媒体取出管とを備えた媒体移送管と、低温である地熱帯の領域では熱伝導率の低い断熱構造を設けた前記媒体取出管と、高温である地熱帯の領域では熱伝導率の高い吸熱構造を設けた前記媒体注入管と、を設け、地熱帯により熱を吸収した高温の前記熱水を、蒸発曲線よりも高い圧力で移送されるように地上加圧ポンプによって圧力を制御し、蒸気を発生しないように液体の状態で地上にある蒸気発生器まで移送し、前記蒸気発生器にて減圧し沸騰させることで蒸気を発生させ、その蒸気によって発電を行う加圧水発電装置と、地上へ移送された前記熱水のうち蒸気とならなかった熱水を熱源として使用し、前記熱水よりも沸点の低い作動媒体を蒸気化して発電を行うバイナリー発電装置と、前記加圧水発電装置に設けられる蒸気タービンへ送られる蒸気を加熱して過熱蒸気を生成し、前記バイナリー発電装置によって得られた電力によって駆動する加熱部と、を備えたことを特徴とする。
【0042】
以上の構成によって、地中から得られた熱を、水を媒体として熱変換するため、スケールによる伝熱阻害あるいは熱交換性能の低下や管の詰まり等の装置への影響を考える必要もなく、またスケール除去等による汚染や地中からの有害物質による障害も考えることはない。
熱水および蒸気の凝縮水が混入すると、タービンの熱効率は、乾き蒸気で作動する場合に比べて、効率が著しく低下する、いわゆる湿り損失が生じることが知られている。また、蒸気中の水滴が高速で回転するタービン動翼あるいは配管内壁に衝突することにより、エロージョンを受け、さらなる効率の低下のみならず機器損傷を引き起こす原因となる。本発明では、地上の蒸気発生器(フラッシャー)にて蒸気を生成するため、地中で蒸気を生成する場合に比較して熱効率よく地上に熱水を移送した後、減圧沸騰させ蒸気を発生させるため、エロージョンや効率低下という問題を解決することができる。
また、蒸気とならなかった熱水を再利用して過熱蒸気を生成する加熱部を設けたことによって余剰の熱水を効率よく利用することができ、電力量をさらに増加させることが可能である。
【0043】
地熱帯の熱によって熱せられた熱水を熱源として発電する地熱発電装置であって、外側に地熱帯へ前記熱水を移送する媒体注入管と、その媒体注入管の内側に前記地熱帯の熱によって熱せられた前記熱水を取り出す媒体取出管とを備えた媒体移送管と、低温である地熱帯の領域では熱伝導率の低い断熱構造を設けた前記媒体取出管と、高温である地熱帯の領域では熱伝導率の高い吸熱構造を設けた前記媒体注入管と、を設け、蒸発曲線よりも高い圧力で移送されるように地上加圧ポンプによって圧力を制御し、蒸気を発生しないように液体の状態で地上にある第1蒸気発生器まで移送し、前記第1蒸気発生器にて減圧し沸騰させることで高圧の第1蒸気を発生させ、その第1蒸気によって発電を行うと共に、前記熱水のうち蒸気とならなかった熱水を再度、第2蒸気発生器にて減圧し沸騰させることで低圧の第2蒸気を発生させ、その第2蒸気によって発電を行う加圧水発電装置と、地上へ移送された前記熱水のうち第2蒸気発生器で蒸気とならなかった熱水を熱源として使用し、前記熱水よりも沸点の低い作動媒体を蒸気化して発電を行うバイナリー発電装置と、前記加圧水発電装置に設けられる蒸気タービンへ送られる蒸気を加熱して過熱蒸気を生成し、前記バイナリー発電装置によって得られた電力によって駆動する加熱部と、を備えたことを特徴とする。
【0044】
以上の構成によって、地中から得られた熱を、水を媒体として熱変換するため、スケールによる伝熱阻害あるいは熱交換性能の低下や管の詰まり等の装置への影響を考える必要もなく、またスケール除去等による汚染や地中からの有害物質による障害も考えることはない。
熱水および蒸気の凝縮水が混入すると、タービンの熱効率は、乾き蒸気で作動する場合に比べて、効率が著しく低下する、いわゆる湿り損失が生じることが知られている。また、蒸気中の水滴が高速で回転するタービン動翼あるいは配管内壁に衝突することにより、エロージョンを受け、さらなる効率の低下のみならず機器損傷を引き起こす原因となる。本発明では、地上の蒸気発生器(フラッシャー)にて蒸気を生成するため、地中で蒸気を生成する場合に比較して熱効率よく地上に熱水を移送した後、減圧し沸騰させ蒸気を発生させるため、エロージョンや効率低下という問題を解決することができる。
また、蒸気とならなかった熱水を再利用して過熱蒸気を生成する加熱部を設けたことによって余剰の熱水を効率よく利用することができ、電力量をさら増加させることが可能である。
さらに、熱水よりも沸点の低い作動媒体によって発電可能であるため、その作動媒体の沸点まで、地下から移送された高圧の熱水は蒸気とならなかった熱水を減圧することで複数回の蒸気を発生させることが可能であり、発電量を増やすことが可能である。
【0045】
蒸気発生器は、減圧し沸騰させると共に微小気泡を含んだ蒸気を発生させる蒸気発生ノズルを備えたことを特徴とする。
【0046】
以上の構成によって、蒸気量を増やすことが可能である。蒸気量を増やすことによって、水を移送する速度を落としても充分な蒸気量を確保できるため、地熱帯Sの熱吸収領域での水の滞在時間を多くとることができ、水が熱を吸収する時間が取れ高温の熱水とすることができる。
【0047】
また、地熱帯の熱によって熱せられた熱水を熱源として発電する地熱発電装置であって、外側に地熱帯へ前記熱水を移送する媒体注入管と、その媒体注入管の内側に前記地熱帯の熱によって熱せられた前記熱水を取り出す媒体取出管とを備えた媒体移送管と、低温である地熱帯の領域では熱伝導率の低い断熱構造を設けた前記媒体取出管と、高温である地熱帯の領域では熱伝導率の高い吸熱構造を設けた前記媒体注入管と、を設け、地熱帯により熱を吸収した高温の前記熱水を、蒸発曲線よりも高い圧力で移送されるように地上加圧ポンプによって圧力を制御し、蒸気を発生しないように液体の状態で地上にある蒸気発生器まで移送し、前記蒸気発生器にて減圧し沸騰させることで蒸気を発生させ、その蒸気によって発電を行う加圧水発電装置と、地上へ移送された前記熱水のうち蒸気とならなかった熱水を熱源として使用し、前記熱水よりも沸点の低い作動媒体を蒸気化して発電を行うバイナリー発電装置と、を備えたことを特徴とする。
【0048】
以上の構成によって、地中から得られた熱を、水を媒体として熱変換するため、スケールによる熱の温度低下や管の詰まり等の装置への影響を考える必要もなく、またスケール除去等による汚染や地中からの有害物質による障害も考えることはない。
熱水および蒸気の凝縮水が混入すると、タービンの熱効率は、乾き蒸気で作動する場合に比べて、効率が著しく低下する、いわゆる湿り損失が生じることが知られている。また、蒸気中の水滴が高速で回転するタービン動翼あるいは配管内壁に衝突することにより、エロージョンを受け、さらなる効率の低下のみならず機器損傷を引き起こす原因となる。本発明では、地上の蒸気発生器(フラッシャー)にて蒸気を生成するため、地中で蒸気を生成する場合に比較して熱効率よく地上に熱水を移送した後、減圧沸騰させ蒸気を発生させるため、エロージョンや効率低下という問題を解決することができる。
また、蒸気とならなかった熱水を再利用することで発電量を増量させることが可能である。
【0049】
地熱帯の熱によって熱せられた熱水を熱源として発電する地熱発電装置であって、外側に地熱帯へ前記熱水を移送する媒体注入管と、その媒体注入管の内側に前記地熱帯の熱によって熱せられた前記熱水を取り出す媒体取出管とを備えた媒体移送管と、低温である地熱帯の領域では熱伝導率の低い断熱構造を設けた前記媒体取出管と、高温である地熱帯の領域では熱伝導率の高い吸熱構造を設けた前記媒体注入管と、を設け、地熱帯により熱を吸収した高温の前記熱水を蒸発曲線よりも高い圧力で移送されるように地上加圧ポンプによって圧力を制御し、蒸気を発生しないように液体の状態で地上にある第1蒸気発生器まで移送し、前記第1蒸気発生器にて減圧し沸騰させることで高圧の第1蒸気を発生させ、その第1蒸気によって発電を行うと共に、前記熱水のうち蒸気とならなかった熱水を再度、第2蒸気発生器にて減圧し沸騰させることで低圧の第2蒸気を発生させ、その第2蒸気によって発電を行う加圧水発電装置と、地上へ移送された前記熱水のうち第2蒸気発生器で蒸気とならなかった熱水を熱源として使用し、前記熱水よりも沸点の低い作動媒体を蒸気化して発電を行うバイナリー発電装置と、を備えたことを特徴とする。
【0050】
以上の構成によって、地中から得られた熱を、水を媒体として熱変換するため、スケールによる伝熱阻害あるいは熱交換性能の低下や管の詰まり等の装置への影響を考える必要もなく、またスケール除去等による汚染や地中からの有害物質による障害も考えることはない。
熱水および蒸気の凝縮水が混入すると、タービンの熱効率は、乾き蒸気で作動する場合に比べて、効率が著しく低下する、いわゆる湿り損失が生じることが知られている。また、蒸気中の水滴が高速で回転するタービン動翼あるいは配管内壁に衝突することにより、エロージョンを受け、さらなる効率の低下のみならず機器損傷を引き起こす原因となる。本発明では、地上の蒸気発生器(フラッシャー)にて蒸気を生成するため、地中で蒸気を生成する場合に比較して熱効率よく地上に熱水を移送した後、減圧し沸騰させ蒸気を発生させるため、エロージョンや効率低下という問題を解決することができる。
また、蒸気とならなかった熱水を、再利用することで発電量を増量させることが可能である。
さらに、熱水よりも沸点の低い作動媒体によって発電可能であるため、その作動媒体の沸点まで、地下から移送された高圧の熱水は、減圧することで複数回の蒸気を発生させることが可能であり、発電量を増やすことが可能である。
【0051】
蒸気発生器は、減圧し沸騰させると共に微小気泡を含んだ蒸気を発生させる蒸気発生ノズルを備えたことを特徴とする。
【0052】
以上の構成によって、蒸気量を増やすことが可能である。蒸気量を増やすことによって、水を移送する速度を落としても充分な蒸気量を確保できるため、地熱帯Sの熱吸収領域での水の滞在時間を多くとることができ、水が熱を吸収する時間を確保することができることで高温の熱水とすることができる。
【0053】
本発明は、上述の第3の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0054】
加圧ポンプによって液体を地熱帯から蒸気発生器まで移送する経路を備え、前記地熱帯まで移送され前記地熱帯の熱によって加熱された前記液体を蒸気化することによって発電する地熱発電装置であって、前記地熱発電装置は、蒸気化するまでの間に微小気泡を生成する微小気泡生成装置を備え、前記微小気泡を溶存させた前記液体を蒸気化して発電することを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。
【0055】
前記加圧ポンプ(加圧給水ポンプ)の圧力によって前記微小気泡を生成する前記微小気泡生成装置を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大している。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。また、微小気泡を乱流境界層中に注入することにより、壁面の摩擦抵抗を低減することも可能である。このため、経路の抵抗が少なくなり圧力損失の低減を行うことが可能である。そして、加圧ポンプの負担を少なくすることができる。
【0056】
蒸気化した後に残った液体又は使用された蒸気を再び液体に戻した後の液体を貯留する貯留タンクを備え、前記貯留タンクに前記微小気泡生成装置を備えたことを特徴とする。このように構成することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。また、微小気泡を乱流境界層中に注入することにより,壁面の摩擦抵抗を低減することも可能である。このため、経路の抵抗が少なくなり圧力損失の低減を行うことが可能である。そして、加圧ポンプの負担を少なくすることができる。
【0057】
熱せられた前記液体を減圧沸騰させることで蒸気化する前記蒸気発生器は、前記微小気泡生成装置を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、さらに蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。
【0058】
前記蒸気発生器は、蒸気を発生するノズルに前記微小気泡生成装置を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。
【0059】
地熱帯に前記液体を移送する前記加圧ポンプは、前記微小気泡生成装置を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を乱流境界層中に注入することにより,壁面の摩擦抵抗を低減することが可能である。このため、経路の抵抗が少なくなり圧力損失の低減を行うことが可能である。そして、加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。
【0060】
使用された蒸気を再び液体に戻した後の前記液体を、前記貯留タンクに移送する循環ポンプの圧力によって前記微小気泡を生成する前記微小気泡生成装置を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を乱流境界層中に注入することにより,壁面の摩擦抵抗を低減することが可能である。このため、経路の抵抗が少なくなり圧力損失の低減を行うことが可能である。そして、加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。
【0061】
前記微小気泡生成装置は、地熱帯へ移送する経路の前に設けられていることを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。また、微小気泡を乱流境界層中に注入することにより,壁面の摩擦抵抗を低減することが可能である。このため、経路の抵抗が少なくなり圧力損失の低減を行うことが可能である。そして、加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。
【0062】
前記微小気泡生成装置は、地熱帯へ移送する加圧水注入管の上部に設けられ、前記加圧水注入管の内周に沿って設けられていることを特徴とする。
このように構成することによって、前記加圧水注入管の内周に沿って前記液体が遠心力を伴って抵抗なく導入され深部に移送されるので、圧力損失なく移送され加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。
【0063】
加圧ポンプによって液体を地熱帯まで移送し、前記地熱帯の熱によって熱せられた前記液体を蒸気発生器まで移送し、蒸気化するまでの間に微小気泡を生成し、前記微小気泡を溶存させた前記液体を前記蒸気発生器で蒸気化して発電する方法を特徴とする。
このような方法を使用することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。
【0064】
本発明は、第4の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0065】
地熱帯の熱によって熱せられた媒体を蒸気化することによって発電する地熱発電装置に使用され、前記媒体を移送する媒体移送管であって、前記媒体移送管は、外側に地熱帯へ前記媒体を移送する媒体注入管と、その媒体注入管の内側に前記地熱帯の熱によって熱せられた前記媒体を取り出す媒体取出管とを備え、前記媒体移送管は、前記媒体取出管の外周に前記媒体の流れる方向を制御する整流部を設け、前記整流部は、環状に形成された胴体部に前記媒体の流れる方向を制御する複数の板状の整流片を設けたことを特徴とする。
【0066】
このように構成することによって、旋回流が発生し、遠心力によって外側の流量が増えるので、外管(媒体注入管)を下降する際に、外管断面においてあまり熱交換をしたくない内管(媒体取出管)側には流量を少なくし、熱交換(受熱)したい外側(地中側)に流量が多く流れるようにすることができる。また、外管と内管との関係においても、旋回流を発生させることで、遠心力によって外管断面おいて、熱回収が必要な外管側の流量のほうが熱損失の生ずる内管側の流量より多くなって下降する。そのため旋回流を発生させない場合と比較して、媒体に回収した地中熱をより少ない損失で輸送することができ、地中エネルギー回収効率を上昇させることができる。また、前記媒体注入管の内周に沿って前記媒体が遠心力を伴って抵抗なく導入され深部に移送されるので、圧力損失なく移送され加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。また、地熱帯で熱せられた熱水の逆流を防いでいる。さらに、流路全体に螺旋状の経路を設ける場合に比較して、流路の一部に板状の整流片を複数設置することで軽量化しながら媒体を流入させる方向を制御することが可能である。また製造作業や設置作業が簡単であり、製造コストが安価となる。
【0067】
前記整流部は、前記媒体取出管の中心軸との垂線に対して45度から75度の間の傾斜を形成した前記整流片を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、より効率良く、旋回流が発生し、遠心力によって外側の流量が増えるので、外管を下降する際に、外管断面においてあまり熱交換をしたくない内管側には流量を少なくし、熱交換(受熱)したい外側(地中側)に流量が多く流れるようにすることができる。また、外管と内管との関係においても、旋回流を発生させることで、遠心力によって外管断面おいて、熱回収が必要な外管側の流量のほうが熱損失の生ずる内管側の流量より多くなって下降する。そのため旋回流を発生させない場合と比較して、媒体に回収した地中熱をより少ない損失で輸送することができ、地中エネルギー回収効率を上昇させることができる。前記媒体注入管の内周に沿って前記媒体が遠心力を伴って抵抗なく導入され深部に移送されるので、圧力損失なく移送され加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。また、地熱帯で熱せられた熱水の逆流を複数箇所で防いでいる。さらに、整流片の傾斜に沿って螺旋状に媒体を流入させることが可能である。
【0068】
前記整流部は、前記媒体取出管の中心軸との垂線に対して60度の傾斜を形成した前記整流片を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、さらに効率良く、旋回流が発生し、遠心力によって外側の流量が増えるので、外管を下降する際に、外管断面においてあまり熱交換をしたくない内管側には流量を少なくし、熱交換(受熱)したい外側(地中側)に流量が多く流れるようにすることができる。また、外管と内管との関係においても、旋回流を発生させることで、遠心力によって外管断面おいて、熱回収が必要な外管側の流量のほうが熱損失の生ずる内管側の流量より多くなって下降する。そのため旋回流を発生させない場合と比較して、媒体に回収した地中熱をより少ない損失で輸送することができ、地中エネルギー回収効率を上昇させることができる。前記媒体注入管の内周に沿って前記媒体が遠心力を伴って抵抗なく導入され深部に移送されるので、圧力損失なく移送され加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。また、地熱帯で熱せられた熱水の逆流を複数箇所で防いでいる。さらに、整流片の傾斜に沿って螺旋状に媒体を流入させることが可能である。
【0069】
環状のリング部を上下に配置し、そのリング部同士の間は空間を設け、前記リング部同士を前記整流片で接続固定した前記胴体部を備えたことを特徴とする。
このように構成することによっても、前述した効果と同様の効果を得ることができる。また、軽量化が可能であると同時に前記媒体注入管の内周に沿って前記媒体が遠心力を伴って抵抗なく導入され深部に移送されるので、圧力損失なく移送され加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。また、地熱帯で熱せられた熱水の逆流を防いでいる。
【0070】
前記媒体取出管の外周に沿って棒を螺旋状に巻き付け形成した前記整流部を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、軽量化が可能であると同時に前記媒体注入管の内周に沿って前記媒体が遠心力を伴って抵抗なく導入され深部に移送されるので、圧力損失なく移送され加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。また、整流部の傾斜に沿って螺旋状に媒体を流入させることが可能である。
【0071】
前記媒体取出管の外径よりも大きな内径を設け、上方から前記媒体注入管に挿入可能に形成した前記胴体部を設けたことを特徴とする。このように構成することによって、上方から媒体取出管に整流部を挿入するため施工が容易である。
【0072】
前記媒体取出管同士を繋ぐ接続管を設け、前記胴体部は、前記接続管の外径よりも小さく形成した前記内径を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、固定具等を必要とせずに上方から媒体取出管に整流部を挿入固定するため施工が容易である。
【0073】
前記胴体部は、前記媒体取出管同士を接続する螺合溝を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、固定具等を必要とせずに上方から媒体取出管に整流部を固定するため施工が容易である。また、軽量化が図られる。
【0074】
地熱帯の熱によって熱せられた媒体を蒸気化することによって発電する地熱発電装置に使用され、前記媒体を移送する媒体移送管であって、前記媒体移送管は、外側に前記地熱帯へ前記媒体を移送する媒体注入管と、その媒体注入管の内側に前記地熱帯の熱によって熱せられた前記媒体を取り出す媒体取出管とを備え、前記媒体移送管は、前記媒体取出管の外周に棒を螺旋状に巻き付け形成し前記媒体の流れる方向を制御する整流部を備えたことを特徴とする。
【0075】
このように構成することによって、旋回流が発生し、遠心力によって外側の流量が増えるので、外管(媒体注入管)を下降する際に、外管断面においてあまり熱交換をしたくない内管(媒体取出管)側には流量を少なくし、熱交換(受熱)したい外側(地中側)に流量が多く流れるようにすることができる。また、外管と内管との関係においても、旋回流を発生させることで、遠心力によって外管断面おいて、熱回収が必要な外管側の流量のほうが熱損失の生ずる内管側の流量より多くなって下降する。そのため旋回流を発生させない場合と比較して、媒体に回収した地中熱をより少ない損失で輸送することができ、地中エネルギー回収効率を上昇させることができる。また、前記媒体取出管の外周に沿って前記媒体が遠心力を伴って抵抗なく導入され深部に移送されるので、圧力損失なく移送され加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。また、地熱帯で熱せられた熱水の逆流を防いでいる。さらに、流路全体に螺旋状の経路を設ける場合に比較して、軽量化しながら媒体を流入させる方向を制御することが可能である。
【0076】
地熱帯の熱によって熱せられた媒体を蒸気化することによって発電する地熱発電装置に使用され、前記媒体を移送する媒体移送管であって、
前記媒体移送管は、外側に前記地熱帯へ前記媒体を移送する媒体注入管と、その媒体注入管の内側に前記地熱帯の熱によって熱せられた前記媒体を取り出す媒体取出管とを備え、前記媒体移送管は、前記媒体注入管の内周に溝を螺旋状に形成し前記媒体の流れる方向を制御する整流部を備えた整流部を備えたことを特徴とする。
【0077】
このように構成することによって、旋回流が発生し、遠心力によって外側の流量が増えるので、外管(媒体注入管)を下降する際に、外管断面においてあまり熱交換をしたくない内管(媒体取出管)側には流量を少なくし、熱交換(受熱)したい外側(地中側)に流量が多く流れるようにすることができる。また、外管と内管との関係においても、旋回流を発生させることで、遠心力によって外管断面おいて、熱回収が必要な外管側の流量のほうが熱損失の生ずる内管側の流量より多くなって下降する。そのため旋回流を発生させない場合と比較して、媒体に回収した地中熱をより少ない損失で輸送することができ、地中エネルギー回収効率を上昇させることができる。また、前記媒体注入管の内周に沿って前記媒体が遠心力を伴って抵抗なく導入され深部に移送されるので、圧力損失なく移送され加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。また、地熱帯で熱せられた熱水の逆流を防いでいる。さらに、流路全体に螺旋状の経路を設ける場合に比較して、軽量化しながら媒体を流入させる方向を制御することが可能である。
【0078】
前記媒体注入管の外周に沿って棒を螺旋状に巻き付け形成し前記媒体の流れる方向を制御する整流部を備えたことを特徴とする。
このように構成することによって、上記の効果に加え流路全体に螺旋状の経路を設ける場合に比較して、軽量化しながら媒体を流入させる方向を制御することが可能である。
【0079】
前記溝と前記棒とは対面して螺旋状を形成することを特徴とする。このように構成することによって、旋回流が発生し、遠心力によって外側の流量が増えるので、外管(媒体注入管)を下降する際に、外管断面においてあまり熱交換をしたくない内管(媒体取出管)側には流量を少なくし、熱交換(受熱)したい外側(地中側)に流量が多く流れるようにすることができる。また、外管と内管との関係においても、旋回流を発生させることで、遠心力によって外管断面おいて、熱回収が必要な外管側の流量のほうが熱損失の生ずる内管側の流量より多くなって下降する。そのため旋回流を発生させない場合と比較して、媒体に回収した地中熱をより少ない損失で輸送することができ、地中エネルギー回収効率を上昇させることができる。さらに前記媒体注入管の内周や前記媒体取出管の内周に沿って前記媒体が遠心力を伴って抵抗なく導入され深部に移送されるので、圧力損失なく移送され加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。また、地熱帯で熱せられた熱水の逆流を防いでいる。さらに、流路全体に螺旋状の経路を設ける場合に比較して、軽量化しながら媒体を流入させる方向を制御することが可能である。
【0080】
地熱帯の熱によって熱せられた媒体を蒸気化することによって発電する地熱発電装置に使用され、前記媒体を移送する媒体移送管であって、前記媒体移送管は、外側に前記地熱帯へ前記媒体を移送する媒体注入管と、その媒体注入管の内側に前記地熱帯の熱によって熱せられた前記媒体を取り出す媒体取出管とを備え、前記媒体移送管は、前記媒体注入管の内周に棒を螺旋状に巻き付け形成し前記媒体の流れる方向を制御する整流部を備えたことを特徴とする媒体移送管。
【0081】
このように構成することによって、旋回流が発生し、遠心力によって外側の流量が増えるので、外管(媒体注入管)を下降する際に、外管断面においてあまり熱交換をしたくない内管(媒体取出管)側には流量を少なくし、熱交換(受熱)したい外側(地中側)に流量が多く流れるようにすることができる。また、外管と内管との関係においても、旋回流を発生させることで、遠心力によって外管断面おいて、熱回収が必要な外管側の流量のほうが熱損失の生ずる内管側の流量より多くなって下降する。そのため旋回流を発生させない場合と比較して、媒体に回収した地中熱をより少ない損失で輸送することができ、地中エネルギー回収効率を上昇させることができる。また、前記媒体注入管の内周に沿って前記媒体が遠心力を伴って抵抗なく導入され深部に移送されるので、圧力損失なく移送され加圧ポンプ等の負担を少なくすることができる。また、地熱帯で熱せられた熱水の逆流を防いでいる。さらに、流路全体に螺旋状の経路を設ける場合に比較して、軽量化しながら媒体を流入させる方向を制御することが可能である。
【0082】
前記棒は、先端に接続された環状の接続環が前記媒体注入管同士の接続部に固定されることを特徴とする。このように構成することによって、環状の接続リングが強固に固定されると共に、中に前記媒体取出管が容易に挿入可能となる。
【0083】
さらに、本発明は、地熱帯の熱によって熱せられた媒体を蒸気化することによって発電する地熱発電装置に使用され、媒体を移送する媒体移送管であって、
前記媒体移送管は、外側に地熱帯へ前記媒体を移送する媒体注入管と、その媒体注入管の内側に前記地熱帯の熱によって熱せられた前記媒体を取り出す媒体取出管とを備え、
前記媒体注入管の下端部に、両側端部開口が媒体注入管内に配置された前記媒体移送管より細い管からなる伝熱管が設けられていることを特徴とする媒体移送管を提供する。
【0084】
このように構成することで、より細い管に媒体を通過させることができるので、地熱帯の熱を効率よく媒体に伝熱させることができる。
【0085】
前記伝熱管は、一方端部が前記媒体取出管と媒体注入管の間に配置され、他方端部が前記媒体取出管の下方側に配置されていることを特徴とする。
【0086】
このように構成することで、一方端部近傍は、媒体が下方方向に流れているので正圧がかかり伝熱管内に媒体が流れやすくなり、他方端部近傍は、媒体が上昇しているので、開口付近が負圧となり媒体が取り出される方向に力がかかるため、効率よく媒体を伝熱管内に流すことができる
【0087】
前記伝熱管の他方端部は、前記媒体取出管の中まで延設されていることを特徴とする。このような構成を採用することで、さらに効率よく媒体を伝熱管内に流すことができる。
【0088】
前記伝熱管の一部は、前記媒体注入管の外周より外側に配置されていることを特徴とする。このように構成することでより伝熱管を長く設けることができ、伝熱効率を向上させることができる。
【0089】
前記伝熱管の外周側に伝熱管を保護する保護壁を備えていることを特徴とする。このような構成を採用することにより、伝熱管を保護することができ、破損する可能性を低減することができる。
【0090】
さらに、本発明は、媒体移送管設置方法を提供する。本発明にかかる媒体移送管設置方法は、地熱帯の熱によって熱せられた媒体を蒸気化することによって発電する地熱発電装置に使用され、前記媒体を移送する媒体移送管を少なくとも地熱帯に存在する乾燥破砕帯又は液体で充填していない破砕帯に設置する媒体移送管設置方法において、
前記乾燥破砕帯又は液体で充填していない前記破砕帯に水又は泥水等の液体を流入し、前記媒体移送管の設置領域周辺に破砕帯の岩石を含む貯水領域を形成し、
前記貯水領域に前記媒体移送管を設置してなることを特徴とする。
【0091】
このように構成することで、地熱セメントCの下方側の全部又は一部において、媒体移送管1110は液体に接することになるため、熱効率を高める。また、水又は泥水等の液体を破砕帯Fに流入することで破砕帯Fの地耐圧を向上させる効果を有する。
【0092】
前記破砕帯に到達又は破砕帯に到達する手前から水掘削又は泥水掘削による掘削を行なうことによって、掘削とともに破砕帯に貯水領域を形成することを特徴とする。このような方法を採用することで、改めて液体を破砕帯に流入する手間を省くことができる。
【0093】
ダイナマイト等の爆発物、水圧破砕その他の人工的破砕によって地熱帯の坑井に人工破砕帯を形成し、
前記人工破砕帯に水又は泥水等の液体を流入し、前記媒体移送管の注入領域周辺に破砕帯の岩石を含む貯水領域を形成してなることを特徴とする。
【0094】
このような方法を採用することで、破砕帯が存在しない部位にも貯留領域も設けることができる。
【0095】
また、前記乾燥破砕帯、液体で充填していない前記破砕帯又は人工破砕帯は、温度勾配のある地熱帯に形成されることを特徴とする。かかる構成を採用することによって、貯水領域を対流させ、熱回収の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0097】
本発明にかかる地熱発電システム100の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。また、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。なお、
図1においてα、βは冷却水の流れを指し、γは補給水の流れを指す。
【0098】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかる地熱発電システム100の概念図が
図1に示されている。
図1の実線の矢印は後述する熱交換用の媒体の液体の流れを示し、点線の矢印は蒸気の流れを示している。第1実施形態にかかる地熱発電システム100は、主として、媒体を下降させる下降領域及び上昇させる上昇領域を有し、地熱帯Sに開口を有さない二重管を有する媒体移送管20と、媒体移送管20に媒体を送出する圧力制御することが可能な高圧循環ポンプ30と、地熱の熱によって加熱された媒体から蒸気を取り出す蒸気発生器41と、地熱水を受領する生産井61と、熱交換の完了した地熱水の少なくとも一部を還元する還元井62と、少なくとも1つの気水分離器71を含んでなり、地熱水から蒸気を取り出す気水分離器71と、蒸気によって発電する発電機45と、を備えている。
【0099】
媒体は、大気圧において沸点が150℃以下、例えば、水、アンモニアが溶解した水等の低沸点液体を使用することが好ましいが、これらに限定するものではない。
【0100】
媒体移送管20は、媒体を地熱帯Sまで運搬し、地熱帯Sで熱交換し加熱された媒体を地上まで運搬する機能を有する。媒体移送管20は、媒体取出管21とこの媒体取出管21の外側に配置される媒体注入管22とを有する二重管の地熱交換器で構成される。媒体注入管22は、下端が閉塞して作製されている。媒体取出管21は、最下端が媒体注入管22の下方で開放して形成されており、最下端において媒体取出管21の内側の内側領域と媒体取出管21と媒体注入管22の間の外側領域とが連通して形成されている。このため、内側領域又は外側領域のいずれかを下降してきた媒体を他方の外側領域又は内側領域に移動させて上昇させることができる。すなわち、外側領域を下降領域とした場合には、媒体は外側領域を加熱されながら下降していき、最下端で媒体取出管21の内側領域内に導入されて、内側領域内を上昇して地上まで運ばれる。一方、内側領域を下降領域とした場合には、媒体は内側領域を加熱されながら下降していき、最下端で媒体取出管21の外側領域内に導入されて、外側領域内でも加熱されながら上昇して地上まで運ばれる。地熱帯領域においては、媒体取出管21と媒体注入管22との間に空気や断熱材等による断熱層を設けとよい。地熱帯でない場所は、媒体取出管の外側に設けられた外側断熱層を構成するものとしてもよい。外側断熱管は三重管構造として空気層を設けても良いし、断熱材を設けても良い。
【0101】
媒体移送管20は、複数のパイプを接続して作製されている。使用するパイプとしては、油井管等の金属管の他、セラミック系複合材料、炭素系材料又は樹脂系材料等のパイプを使用することもできる。また、媒体注入管22の外表面は、地熱帯Sから熱を受領しやすくするために、パイプの表面に凹凸を設けたり、銅等の金属をメッキ又は溶射したりして熱伝導面積を大きくしてもよい。また、媒体注入管22の最下端は、媒体がスムーズに移動することができるように、半球体又は半楕円球体のように形成してもよい。
【0102】
高圧循環ポンプ30は、媒体を媒体移送管20に送出するための装置である。好ましくは、高圧循環ポンプを使用するとよい。
【0103】
生産井61は、地熱水を取り出すための坑井であり、熱水と蒸気が混じって噴出する熱水卓越型のタイプを使用することが好ましい。発電に必要な地熱水を得ることができる坑井であれば、特にその構成は限定するものではない。生産井61は、媒体移送管20の外周に設けられる。
【0104】
還元井62は、地中から取り出した地熱水の一部又は全部、その他の水を地中に戻すための坑井である。この還元井62の構成も特に限定するものではなく、種々の構成のものを使用することができる。
【0105】
本地熱発電システムには、媒体移送管20から取り出された媒体及び高温の蒸気を含む地熱水から電力を得るための設備を有しており、媒体を主として処理するための蒸気発生器(減圧器)41、フラッシャー42、高圧循環ポンプ30による媒体を貯めておく高圧循環ポンプ用タンク43等を備え、地熱水を処理するための気水分離器71と、第2フラッシャー72とを備え、これらから得られた蒸気によって発電するための第1タービン44a及び第2タービン44bからなる多段式のタービン44、発電機45及び発電が終わった蒸気、媒体及び地熱水を処理する復水器46、復水器46によって凝縮された凝縮水を貯水する貯水タンク47等を備えている。
【0106】
以上のように構成された設備は、以下のようにして使用される。まず、媒体移送管20側で地熱の熱によって熱せられた媒体が取水され、蒸気発生器41で減圧沸騰させて高温・高圧の蒸気を発生させる。分離された高温・高圧の蒸気は、第1タービン44aに送られ、気水分離された液体はフラッシャー42に送られて気水分離された後、分離された高温、高圧の蒸気も第1タービン44aへ送られ、第1タービン44aの回転によって発電機45で発電する。一方、高温の蒸気を含む地熱水は、気水分離器71で蒸気と分離し、分離した蒸気は第2タービン44bへ送られる。さらに任意に第2フラッシャー72によって二次蒸気を得て同様に第2タービン44bへ送られ、第2タービン44bの回転によって発電機45で発電する。タービン44で消費された蒸気は復水器46で復水され、復水された地熱水又は媒体は、冷却排水又は冷却されて復水器46の冷却水として使用されたり、還元井62によって地熱帯Sに還元されたり、再び高圧循環ポンプ用タンク43へ貯められ、再度、高圧循環ポンプ30によって媒体移送管20へ送られて地熱を受領し、再度、発電に使用されたりする。なお、本実施形態にかかる地熱発電システム100は、上述した構成に限定するものではなく、その他の構成機器を他の機器で置換しても構わないし、追加で設けても構わない。
【0107】
かかる構成を採用することによって、閉鎖循環型の媒体移送管20の周囲に生産井61を有しているので、媒体移送管20の周囲の地熱水は、媒体移送管の周囲の地熱水が流れているため、媒体移送管20の近傍の媒体によって冷やされた地熱水が常に新しい加熱された地熱水と交換され常に地熱によって加熱された地熱水が媒体移送管20に接触することになり、より効果的に媒体を加熱することができる。
【0108】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかる地熱発電システム100の概念図が
図2に示されている。
図2の実線の矢印は後述する熱交換液、地熱水の液体の流れを示し、点線の矢印は蒸気の流れを示している。第2実施形態にかかる地熱発電システム100は、主として、媒体を下降させる下降領域及び上昇させる上昇領域を有し、地熱帯Sに開口を有さない二重管を有する媒体移送管20と、媒体移送管20に媒体を送出する高圧循環ポンプ30と、地熱の熱によって加熱された媒体から蒸気を取り出す蒸気発生器41と、少なくとも1つのフラッシャー42と、を含んでなり、また、地熱水を受領する生産井61と、熱交換の完了した地熱水の少なくとも一部を還元する還元井62と、地熱水から蒸気を取り出す気水分離器71と、蒸気発生器41及び気水分離器71によって発生した蒸気によって発電する発電機45と、を備えている。
【0109】
媒体、媒体移送管20及び高圧循環ポンプ30は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0110】
生産井61は、地熱水を取り出すための坑井であり、熱水と蒸気が混じって噴出する熱水卓越型のタイプを使用することが好ましい。発電に必要な地熱水を得ることができる坑井であれば、特にその構成は限定するものではない。生産井61は、前述した媒体移送管20に隣接して又は近傍に設けられる。
【0111】
還元井62は、地中から取り出した地熱水の一部又は全部、その他の水を地中に戻すための坑井である。この還元井62の構成も特に限定するものではなく、種々の構成のものを使用することができる。
【0112】
媒体移送管20から取り出された媒体及び高温の蒸気を含む地熱水から電力を得るための設備を有しており、媒体を主として処理するための蒸気発生器(減圧器)41、フラッシャー42、高圧循環ポンプによる媒体を貯めておく高圧循環ポンプ用タンク43等を備え、地熱水を処理するための気水分離器71と、第2フラッシャー72とを備えている。さらに、これらから得られた蒸気によって発電するための第1タービン44a及び第2タービン44b、発電機45及び発電が終わった蒸気、媒体及び地熱水を処理する復水器46,復水器46によって凝縮された凝縮水を貯水する貯水タンク47、凝縮された凝縮水を還元井に62に送出する低圧循環ポンプ48等を有している。
【0113】
さらに、気水分離器71及び第2フラッシャー72内のいずれか又は両方には、フラッシャー42によって分離された地媒体を加熱するため、媒体用の熱交換器76が設けられている。熱交換器76は、例えば、気水分離器71又は第2フラッシャー72によって分離された熱水側に細長いパイプを通して形成されている。媒体の一部又は全部は、この熱交換器76を通ることによって加熱された状態で第1地熱発電設備10側に戻される。なお、第2実施形態では、ダブルフラッシュ方式を図示しているが、シングルフラッシュ方式でも構わない。
【0114】
以上の設備は、以下のようにして使用される。まず、媒体移送管20側で地熱の熱によって熱せられた媒体を取水して、蒸気発生器41で減圧沸騰させて高温・高圧の蒸気を発生させる。分離された高温・高圧の蒸気は、第1タービン44aに送られ、気水分離された液体はフラッシャー42に送られて気水分離された後、分離された高温、高圧の蒸気も第1タービン44aへ送られ、第1タービン44aの回転によって発電機45で発電する。フラッシャー42で分離された液体の地媒体は、熱交換器76に運ばれ加熱された後、媒体移送管20に送出され、再度、発電に使用される。一方、高温の蒸気を含む地熱水は、気水分離器71で蒸気と分離し、分離した蒸気は第2タービン44bへ送られる。さらに任意に第2フラッシャー72によって二次蒸気を得て同様に第2タービン44bへ送られ、第2タービン44bの回転によって発電機45で発電する。タービン44で消費された蒸気は復水器46で復水され、復水された地熱水又は媒体は、冷却されて排水処理されたり、又は復水器46の冷却水として使用されたり、還元井62によって地熱帯Sに還元されたりするのに使用される。なお、地熱水用発電設備70は、上述した構成に限定するものではなく、その他の構成機器を他の機器で置換しても構わないし、追加で設けても構わない。
【0115】
かかる構成を採用することによって、媒体移送管20に送出される熱交換液
は、あらかじめ、熱交換器76によって加熱されているので、加熱されていない媒体を送出する場合と比較してより高温の媒体を取り出すことができ、エネルギー効率を向上させることができる。
【0116】
なお、第2実施形態においては、フラッシャー42で気水分離された媒体を熱交換器76に送出しているが、
図2の2点鎖線に示すように、復水器46で復水された地熱水又は媒体を低圧循環ポンプ48によって気水分離器71内の熱交換器76に送って、加熱された地熱水又は媒体を高圧循環ポンプ30によって媒体移送管20へ送って地熱を受領し、再度、発電に使用してもよい。
【0117】
(第3実施形態)
第3実施形態にかかる地熱発電システム100の概念図が
図3に示されている。
図3の実線の矢印は後述する熱交換液、地熱水の液体の流れを示し、点線の矢印は蒸気の流れを示している。第3実施形態にかかる地熱発電システム100は、第1地熱発電設備10と第2地熱発電設備50とを備えている。第1地熱発電設備10は、熱を地中から受領する媒体を地熱帯Sに放出したり、地熱帯Sの熱水を取水したりすることなく、媒体を略閉鎖系で循環させるタイプの地熱発電設備である。第2地熱発電設備50は、地中の熱水を取水する生産井61と、地熱帯Sから産出された熱水を発電に利用し、発電を終えた蒸気の凝縮水やその他の水を地下に戻す還元井62とからなる地熱発電設備である。なお、第1実施形態と同様の設備には同様の符号が付されている。
【0118】
第1地熱発電設備10は、媒体を地熱帯Sとの間で循環させて熱エネルギーを取り出す設備であり、主として、媒体移送管20と、高圧循環ポンプ30と、媒体用発電設備40と、を備えている。
【0119】
媒体、媒体移送管20及び高圧循環ポンプ30は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0120】
媒体用発電設備40は、高温の圧力水として媒体移送管20から取り出された媒体から電力を得るための設備であり、例えば、蒸気発生器(減圧器)41、フラッシャー42、高圧循環ポンプ30による媒体を貯めておく高圧循環ポンプ用タンク43、タービン44、発電機45、復水器46、復水器46によって凝縮された凝縮水を貯水する貯水タンク47、凝縮された凝縮水を第2地熱発電設備50に送出する低圧循環ポンプ48等を備えている。これらの機器を有する媒体用発電設備40は、地熱によって熱せられた媒体を媒体移送管20から取水して、蒸気発生器41で減圧沸騰させて高温・高圧の蒸気を発生させる。分離された高温・高圧の蒸気は、タービンに送られる。気水分離された液体の媒体はフラッシャー42に送られて気水分離された後、分離された高温、高圧の蒸気もタービン44へ送られ、タービン44の回転によって発電機45で発電する。タービン44で消費された蒸気は復水器46で復水され、熱交換器76に運ばれ加熱された後、再度、媒体移送管20に高圧循環ポンプ30によって送出される。本実施形態においては、媒体と地熱水が混合することがないので再利用することが可能である。勿論、排水処理したり、又は、還元井に送出したりしてもよい。一方、フラッシャー42で分離された液体の地媒体は、熱交換器76に運ばれ加熱された後、媒体移送管20に送出され、再度、発電に使用される。このように本発明にかかる第1地熱発電設備10は、媒体を循環させて地熱を取り出す閉鎖循環型の地熱発電設備である。そのため、取り出された蒸気と熱水に地熱帯S特有の硫黄その他の不純物が含まれておらず、スケールの問題が解消され、不純物が装置に付着することがなく長期間の使用が可能にある。なお、媒体用発電設備40は、上述した構成に限定するものではなく、その他の構成機器を他の機器で置換しても構わないし、追加で設けても構わない。例えば、発生した蒸気を加熱する加熱器をさらに設置したり、ダブルフラッシュ型のフラッシャーをさらに追加したりしても構わない。
【0121】
次に第2地熱発電設備50について説明する。第2地熱発電設備50は、主として、地熱水を受領する生産井61と、熱交換の完了した地熱水その他の水を還元する還元井62と、地熱水から蒸気を取り出して発電する地熱水用発電設備70と、を有している。
【0122】
生産井61及び還元井62は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0123】
地熱水用発電設備70は、高温の蒸気を含む地熱水を取水して、この地熱水から電力を得るための設備であり、主として、気水分離器71、第2フラッシャー72、タービン73、発電機74、復水器75等を備えている。なお、
図3においては、地熱水用発電設備70としてダブルフラッシュ方式を図示しているが、シングルフラッシュ方式でも構わない。地熱水用発電設備70は、地熱によって熱せられた地熱水を取水して、気水分離器71で蒸気を分離し、分離した蒸気はタービン73へ送られる。さらに任意に第2フラッシャー72によって二次蒸気を得て同様にタービン73へ送られ、タービン73の回転によって発電機64で発電する。タービン73で消費された蒸気は復水器75で復水され、復水された地熱水は、冷却排水又は冷却されて復水器75の冷却水として使用されたり、還元井62によって地熱帯Sに還元されたりして使用される。シングルフラッシュ方式の場合における気水分離器71で分離された熱水、ダブルフラッシュの場合におけるフラッシャーで分離された熱水は、還元井62から地熱帯Sに還元される。なお、地熱水用発電設備70は、上述した構成に限定するものではなく、その他の構成機器を他の機器で置換しても構わないし、追加で設けても構わない。
【0124】
さらに、第2地熱発電設備50は、第1地熱発電設備10側の貯水タンク47から低圧循環ポンプ48によって送られた媒体を加熱するため、気水分離器71及び第2フラッシャー72内のいずれか又は両方に媒体用の熱交換器76が設けられている。熱交換器76は、例えば、気水分離器71又は第2フラッシャー72によって分離された熱水側に細長いパイプを通して形成されている。媒体の一部又は全部は、この熱交換器76を通ることによって加熱された状態で第1地熱発電設備10側に戻される。
【0125】
かかる構成を採用することによって、第1地熱発電設備10において媒体移送管20に送出される媒体は、あらかじめ、熱交換器76によって加熱されているので、加熱されていない媒体を送出する場合と比較してより高温の媒体を取り出すことができ、エネルギー効率を向上させることができる。
【0126】
なお、第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、復水器46で復水された地熱水又は媒体を低圧循環ポンプ48によって気水分離器71内の熱交換器76に送って、加熱された地熱水又は媒体を高圧循環ポンプ30によって媒体移送管20へ送って地熱を受領し、再度、発電に使用してもよい。
【0127】
(第4実施形態)
第4実施形態にかかる地熱発電システム100が
図4に示されている。第4実施形態にかかる地熱発電システム100は、第2地熱発電設備50の生産井61の位置が第3実施形態と異なる。その他の点は第3実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0128】
第4実施形態にかかる第2地熱発電設備50の生産井61は、第1地熱発電設備10の媒体移送管20の周囲に設けられている。すなわち、第1地熱発電設備10の媒体移送管20を加熱する地熱水と第2地熱発電設備で取り出す地熱水とは同じ領域の地熱水を使用している。
【0129】
かかる構成を採用することによって、媒体移送管20の周囲の地熱水は、第2地熱発電設備50によって取水されるため、常に新しい加熱された地熱水が周囲の地熱帯Sから流れ込んでくることになる。そのため、常に地熱によって加熱された高温の地熱水が媒体移送管20に接触することになるので、より効果的に地熱井の媒体を加熱することができる。また、第2地熱発電設備50によって取水する地熱水の取水位置を媒体移送管20の底面よりも上方に配置することによって、下方の高温の地熱水を上方に上昇させることができるので、生産井61がない場合と比較して、上方側の地熱水の温度を高くすることができる。そのため、より効果的に媒体を加熱することができる。
【0130】
なお、第4実施形態においても、第2実施形態と同様に、復水器46で復水された地熱水又は媒体を低圧循環ポンプ48によって気水分離器71内の熱交換器76に送って、加熱された地熱水又は媒体を高圧循環ポンプ30によって媒体移送管20へ送って地熱を受領し、再度、発電に使用してもよい。
【0131】
(第5実施形態)
第5実施形態にかかる地熱発電システム100の概念図が
図5に示されている。
図5の実線の矢印は後述する熱交換液、地熱水の液体の流れを示し、点線の矢印は蒸気の流れを示している。第5実施形態にかかる地熱発電システム100は、第1地熱発電設備10と第2地熱発電設備50とを備えている。第1地熱発電設備10は、熱を地中から受領する媒体を地熱帯Sに放出したり、地熱帯Sの熱水を取水したりすることなく、媒体を略閉鎖系で循環させるタイプの地熱発電設備である。第2地熱発電設備50は、地中の熱水を取水する生産井61と、地熱帯Sから産出された熱水を発電に利用し、発電を終えた蒸気の凝縮水やその他の水を地下に戻す還元井62とからなる地熱発電設備である。なお、第1実施形態と同様の設備には同様の符号が付されている。
【0132】
第1地熱発電設備10は、媒体を地熱帯Sとの間で循環させて熱エネルギーを取り出す設備であり、主として、媒体移送管20と、高圧循環ポンプ30と、媒体用発電設備40と、を備えている。
【0133】
媒体、媒体移送管20及び高圧循環ポンプ30は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0134】
媒体用発電設備40は、高温の圧力水として媒体移送管20から取り出された媒体から電力を得るための設備であり、例えば、蒸気発生器(減圧器)41、フラッシャー42、高圧循環ポンプによる媒体を貯めておく高圧循環ポンプ用タンク43、タービン44、発電機45、復水器46、復水器46によって凝縮された凝縮水を貯水する貯水タンク47、凝縮された凝縮水を第2地熱発電設備50に送出する低圧循環ポンプ48等を備えている。これらの機器を有する媒体用発電設備40は、地熱によって熱せられた媒体を媒体移送管20から取水して、蒸気発生器41で減圧沸騰させて高温・高圧の蒸気を発生させる。分離された高温・高圧の蒸気は、タービンに送られ、気水分離された液体の媒体はフラッシャー42に送られて気水分離された後、分離された高温、高圧の蒸気もタービン44へ送られ、タービン44の回転によって発電機45で発電する。タービン44で消費された蒸気は復水器46で復水され、熱交換器76に運ばれ加熱された後、再度、媒体移送管20に高圧循環ポンプ30によって送出される。本実施形態においては、媒体と地熱水が混合することがないので再利用することが可能である。勿論、排水処理したり、又は、還元井に送出したりしてもよい。一方、フラッシャー42で分離された液体の媒体は、熱交換器76に運ばれ加熱された後、媒体移送管20に送出され、再度、発電に使用される。タービン44で消費された蒸気は復水器46で復水されて排水処理されたり又は、還元井に送出されたりして使用される。
【0135】
このように本発明にかかる第1地熱発電設備10は、媒体を循環させて地熱を取り出す閉鎖循環型の地熱発電設備である。そのため、取り出された蒸気と熱水に地熱帯S特有の硫黄その他の不純物が含まれておらず、スケールの問題が解消され、不純物が装置に付着することがなく長期間の使用が可能にある。なお、媒体用発電設備40は、上述した構成に限定するものではなく、その他の構成機器を他の機器で置換しても構わないし、追加で設けても構わない。例えば、発生した蒸気を加熱する加熱器をさらに設置したり、ダブルフラッシュ型のフラッシャーを、さらに追加したりしても構わない。
【0136】
次に第2地熱発電設備50について説明する。第2地熱発電設備50は、主として、地熱水を受領する生産井61と、熱交換の完了した地熱水その他の水を還元する還元井62と、地熱水から蒸気を取り出して発電する地熱水用発電設備70と、を有している。
【0137】
生産井61及び還元井62は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0138】
地熱水用発電設備70は、高温の蒸気を含む地熱水を取水して、この地熱水から電力を得るための設備である。主として、生産井61の地熱水が流れる第1流通経路と、第1地熱発電設備10からの媒体が流れる第2流通経路と、地熱水の熱を受領して発電する発電用液体が流れる発電用経路と、を備えている。
【0139】
第1流通経路は、主として、生産井61から得られた地熱水を気水分離する気水分離器71、気水分離器71で得られた蒸気を使用して発電用液体に熱を交換する第1熱交換装置77、気水分離器71で分離された液体の熱を利用して発電用液体及び媒体に熱を交換する第2熱交換装置78と、を有している。第1熱交換装置77の構成は特に限定するものではないが、気水分離器71で得られた蒸気雰囲気内に、発電用液体が通過する細いパイプを通すことで蒸気の熱を発電用液体に交換することができる。第2熱交換装置78は、気水分離器71で分離された高温の液体中に発電用液体が通過する細いパイプを通すことで蒸気の熱を発電用液体に交換することができる。熱交換の終了した地熱水は、還元井62に送出される。
【0140】
第2流通経路は、第2熱交換装置78内にさらに媒体のパイプが設けられており、フラッシャー42から送られた媒体は、第2熱交換装置78で加熱された状態で再度、媒体移送管20に送出される。
【0141】
発電用経路は、第2熱交換装置78、第1熱交換装置77、タービン73、発電機74、復水器75、循環ポンプ等を備えており、発電用液体は、第2熱交換装置78で予熱がなされ、第1熱交換装置77で気体にされ、この気体でタービン73によって発電がされる。発電で消費された発電用液体は、復水器75で液体に戻されて循環ポンプによって、再度、第2熱交換装置78に戻される。
【0142】
かかる構成を採用することによって、第1地熱発電設備10において媒体移送管20に送出される媒体は、あらかじめ、第2熱交換装置78によって加熱されているので、加熱されていない媒体を送出する場合と比較してより高温の媒体を取り出すことができ、エネルギー効率を向上させることができる。
【0143】
(実施例1)
実施例1の地熱発電システム100は、第3実施形態にかかる地熱発電システム100において第1地熱発電設備10として、深度250で120℃〜140℃、深度1000で150℃〜170℃、深度1500mで170℃〜220℃、深度2000mで230〜270℃の地熱帯Sに、1500mボーリングして、外径が0,2445mで内径が0.2245mの媒体注入管、外径0.1300mで内径が0.1000mの媒体取出管からなるパイプからなる地熱交換器を1500m埋設された媒体移送管20とした。第2地熱発電設備50には、第1地熱発電設備10の復水器で得られた凝縮水を低圧循環ポンプで第2地熱発電設備50に送出し、第2フラッシャー72に設けられた熱交換器76を介して、約164℃に加熱された水として高圧循環ポンプ30に戻した。なお、媒体として、水を使用した。計算すると、高圧循環ポンプで入口圧0.618MPa、吐出圧2.017MPa、流量40.73m
3/h、出力30.7KW、密度902.30kg/m
3で媒体を送出した場合、取水される高温の媒体は、温度195℃、圧力2.017MPa、流量44.89m
3/hとなる。かかる値から媒体移送管20の出力を以下の計算式で計算すると、1654KWとなる。
出力=(坑井出口のエンタルピー(kj)−坑井入り口のエンタルピー(Kj))×流量(kg/s)×1000
蒸気発生器41及びフラッシャー42によって得られる蒸気は、温度165℃、圧力0.70℃、流量2.60t/hとなる。MSEG132KWスチームスター(神鋼商事株式会社製)のスクリュー式子型発電機を使用した場合、発電出力は115KWとなる。
【0144】
(比較例1)
比較例1における地熱発電システムは、第2地熱発電設備50を設けることなく、
図6に示すように、フラッシャー42で分離された媒体及び復水器46で得られた冷却水及び補給水を低圧循環ポンプ48で高圧循環ポンプ用タンク43に送って、高圧循環ポンプ30に送る単純循環方式の発電設備である。この比較例における高圧循環ポンプに送られる水の温度は156℃となる。この場合坑井から取り出される高温圧力水は、190℃で1.254MPaとなる。この場合の生産井の出力は1466KWで、発電出力は100KWとなる。
【0145】
実施例1と比較例1のそれぞれの送出する媒体、取水される媒体、生産井出力、発電出力、熱効率、必要な高圧循環ポンプの出力、低圧循環ポンプの出力及び高圧循環ポンプの出力及び低圧循環ポンプを加味した総発電出力の表を
図7Aに示す。
【0146】
この表によれば、取り出す熱水温度が190℃から195℃に上がることで、総発電出力が11%アップすることがわかる。
【0147】
次に、実施例1及び比較例1でいずれも発電出力102KWとした場合における各高圧循環ポンプ及び低圧循環ポンプの出力とこれを加味した総出力の表を
図7Bに示す。実施例1では、循環水量は36%少なくすることができ、ポンプ出力を下げることができる。これにより、総出力は28%アップする。
【0148】
次に、本発明にかかる地熱発電装置1000、1100、1200の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0149】
(第6実施形態)
第6実施形態にかかる地熱発電装置1000を、
図8を参照して説明する。
図8は、第6実施形態にかかる本発明の地熱発電装置1000の構成を示す概要図である。
図8を参照して第1実施形態にかかる地熱発電装置1000を説明する。大別すると地熱発電装置1000は、加圧水発電装置Aとバイナリー発電装置Bとに構成される。
【0150】
加圧水発電装置Aは、圧力制御することができる加圧給水ポンプ103、貯留タンク104、低圧循環ポンプ105、復水器106、媒体移送管110、フラッシャーF、加熱部130、蒸気タービンT、発電機G、送電設備H及びバイナリー発電装置Bと接続される熱交換部150とで構成されている。
加圧水発電装置Aは、蒸気タービンTに蒸気を供給することで、発電機Gを回転させて発電を行い、送電設備Hに電気を供給し送電網を介して電力会社等に電気を供給するものである。
蒸気タービンTは、タービン形式だけでなくスクリュー形式のもの等であってもよく、蒸気によって発電可能なものであればよい。蒸気タービンTに供給される蒸気は、熱水を減圧し沸騰させてフラッシャーFで生成される。
【0151】
フラッシャーFで蒸気となった熱水は、すべて蒸気とされることがないため、フラッシャーFから多量の熱水が熱交換部150に送られる。熱交換部150で熱交換された熱水は低圧循環ポンプ105で貯留タンク104へ送られる。また、蒸気タービンTで排気された蒸気は復水器106で冷却水107によって凝縮され水に戻され貯留タンク104に貯められる。
貯留タンク104の水は、再度地熱帯Sのある深部で熱水として熱交換されるように後述する媒体移送管110へ加圧給水ポンプ103で移送される。
【0152】
次に、媒体移送管110を説明する。地表Kから地中深部にある熱源となる地熱帯Sまで媒体移送管110が埋設されている。媒体移送管110は、外側に円筒状の媒体注入管111が埋設され、その媒体注入管111の周囲は地表Kから地熱帯手前までは地熱セメントによって固められている。媒体移送管110の媒体注入管111は、最深部が密閉されており、地熱帯Sの深部の温泉水等の流体や岩盤からの熱を吸収するものである。
【0153】
媒体注入管111は、スチールやステンレス等の素材で形成されている。温度の高い地熱帯Sの領域では、媒体注入管111は、外周に地熱帯Sの熱が伝わりやすいように、断面が円形の円柱状のフィンが溶接されている。媒体注入管111は、地表Kに近い温度の低い領域では、貯留タンク104から加圧されて注入される水の熱が奪われないように断熱材や空気層を設けた断熱構造がとられている。
【0154】
媒体注入管111の内側には地熱帯Sで熱せられた水を移送する円筒状の媒体取出管112が設けられている。媒体取出管112は、媒体注入管111の内側であって同軸上に円筒状に形成されている。媒体取出管112は、垂直の断面は外側部と内側部との間に断熱材の繊維や樹脂や空気層を形成する2重構造となっている。この2重構造により、断熱効果だけでなく、体積が増し密度を小さくし水の密度に近づけることで、設置する際に媒体としての水を媒体注入管111に注入した後、この2重構造を取った媒体取出管112を水の中に沈めていくことで浮力が発生し、媒体取出管112を吊る装置への荷重を軽減することが可能となる。
【0155】
地熱帯Sで熱せられた熱水は、フラッシャーFで減圧し沸騰され蒸気を生成する。ここで、フラッシャーFは、蒸気を発生させる際のノズルは、自吸により微小気泡となるマイクロバブルやナノバブルを生成することができるノズルを使用しても良い。この構成により蒸気量を増やすことが可能である。蒸気量を増やすことによって、水を移送する速度を落としても充分な蒸気量を確保できるため、地熱帯Sの熱吸収領域での水の滞在時間を多くとることで、水が熱を吸収する時間が取れ、高温の熱水とすることができる。
【0156】
図9は、第6実施形態にかかる本発明の加熱部130の概要図である。
図8及び
図9を参照して加熱部130を説明する。加熱部130は、フラッシャーFで生成した蒸気を蒸気タービンTまで移送する配管内に、螺旋状の電熱ヒータ132を配置している。加熱部用電源ライン161から送られた電力により、加熱制御装置131を駆動し電熱ヒータ132により配管内に過熱蒸気Vが生成される。電熱ヒータ132は、700〜1200℃程度に熱せられ、300℃程度の過熱蒸気Vを生成することも可能である。
ここで、過熱蒸気とは、飽和蒸気をさらに加熱することで、ある圧力における飽和蒸気温度以上の温度を持つ状態での蒸気である。また、加熱部によって過熱蒸気まで至らずとも湿り蒸気を乾き蒸気とする意味で使用しても良く、加熱蒸気としてもよい。いずれもエンタルピーを向上させることができる。
【0157】
また、
図10は、加熱部130の他の例を示している。加熱部130は、フラッシャーFで生成した蒸気を蒸気タービンTまで移送する配管内に、棒状の電熱ヒータ136を配置している。加熱部用電源ライン161から送られた電力により、加熱制御装置131を駆動し電熱ヒータ132により配管内に過熱蒸気Vが生成される。電熱ヒータ132は、700〜1200℃程度に熱せられ、300℃程度の過熱蒸気Vを生成することも可能である。
【0158】
その他の加熱部130として、700℃程度の熱風を生成することができる装置等を、蒸気タービンTまで移送する配管内に配置することも考えられる。これらヒータは温風やニクロム線等に限定されず、蒸気を過熱できる装置であれば良い。
【0159】
本実施例では、地熱帯Sで熱交換する媒体として水を使用しているが、媒体として不活性ガス又はバイナリー発電で利用される水より沸点が低い媒体(水とアンモニアの混合物等)が考えられる。媒体移送管110の破損等が有った場合であっても、水であれば環境に害を与えることはなく、作業面においても安全に扱うことが可能である。
本実施例で説明する加圧水発電装置Aは、水が閉じられた状態で循環しており熱エネルギーの交換を行うシステムである。
【0160】
次に、バイナリー発電装置Bを、
図8を参照して説明すると、バイナリー発電装置Bは、加圧水発電装置Aと接続される熱交換部150と、蒸気タービンT3と、発電機G、送電設備H、冷却器156及び循環ポンプ155とで構成されている。
【0161】
熱交換部150は、フラッシャーFで蒸気と分離された熱水が、幾十にも折り曲げられた熱交換器151を通過する。この熱交換部150の部分で熱せられた作動媒体が蒸発して蒸気タービンT3を回転させて発電を行っている。送電設備Hは、加圧給水ポンプ用電源ライン165、低圧循環ポンプ用電源ライン166や循環ポンプ用電源ライン167を通して、加熱部130、加圧給水ポンプ103、低圧循環ポンプ105や循環ポンプ155に3相の交流220Vの電力を供給可能である。
【0162】
ここで作動媒体は、可燃性や毒性のない不活不活性ガスのHFC−245fa、R245fa等や沸点の低い媒体(水とアンモニアの混合物等、炭化水素(ペンタン))等が使用される。
蒸気タービンT3は、膨張タービン等が使用されている。蒸気タービンT3を通過した作動媒体は、冷却器156の冷却水157によって冷却され、媒体を気体から液体等に凝縮させ循環ポンプ155によって再度、熱交換部150へ送られる。
【0163】
このような作動媒体を利用することによって、70℃から95℃の温水であっても9(ton(トン))/h(時間)から24t/hの流量が有れば発電が可能となる。このシステムにおいては、媒体が閉じられた系の中で熱交換を行うシステムとなっている。
【0164】
(上記装置を利用して発電する発電方法)
図8を参照して発電方法を説明すると、200℃前後の熱を地中で得るためにボーリングにより開けられた穴の深度は、地中700mから1500m程度までの深さに達している。この深さは深ければ深いほど高い温度が得られると考えられるが、掘削費用との兼ね合いにより決められ地熱帯Sは、150℃から300℃の温度があれば最もよく、地熱帯Sの最深部付近から得られる温度によって適宜以下の値も変化する。
【0165】
先ず、加圧水発電装置Aの発電方法について説明すると、地中には、媒体移送管110が埋設されており、媒体移送管110は、地中と接する外側に媒体注入管111が連結されて地中深くまで達している。また、媒体注入管111は、媒体注入管111の内側に媒体取出管112が連結されて媒体注入管111の底部まで達している。これら媒体移送管110は、地熱帯Sから得られる熱を吸収する熱交換部として利用されている。以下に加圧水発電装置Aによる発電方法について詳述する。
【0166】
例えば、貯留タンク104の水(I1)は、加圧給水ポンプ103により5MPaに加圧され媒体移送管110の媒体注入管111に流量55(ton(トン))/h(時間)で送られ、地中深くの地熱帯Sまで移送される。220℃の地熱帯Sまで移送された温水は、地熱帯Sからの熱を熱伝導率の高い媒体注入管111から吸収し、最終的に210℃の熱水(I2)となる。そして、媒体取出管112から取り出された熱水(I3)は、出口での温度が200℃で、圧力が2.0MPaでフラッシャーFに移送される。
【0167】
フラッシャーFは、温度200℃の熱水を、圧力を解放して0.61MPaに減圧沸騰させてフラッシュ率約11%の蒸気を蒸気量6t/hの蒸気を発生させる。フラッシャーFは、その生成した蒸気を蒸気タービンTに送る。送られた蒸気は、加熱部130によって加熱され300℃の過熱蒸気Vとなって蒸気タービンTの回転により発電機Gを駆動させ発電する。蒸気のエンタルピーは、加熱しない場合では、約0.61気圧で2757kJ/kgであるが、0.61気圧、300℃の過熱蒸気Vでは10%増加し3061kJ/kgである。そのため、この蒸気により発電される発電量は、効率を80%とすると少なくとも528kWhの出力が得られる。加熱しない場合と比較すると4.5倍の発電量が得られる。
【0168】
また、フラッシャーFは、蒸気にならずに残った約89%の熱水(I4)を、温度180℃前後の温度を保ったまま圧力1.0MPaで熱交換器151に流量49t/hで送る。熱交換器151を通過した熱水(I5)は、熱交換されて作動媒体に熱を奪われ160℃前後に冷却され低圧循環ポンプ105によって圧力0.47MPaで貯留タンク104へ移送される。また、蒸気タービンTで排気された蒸気は、復水器106で冷却水107によって凝縮され圧力0.101MPaの140℃の熱水(I6)に戻され、流量6t/hで貯留タンク104に貯められる。
貯留タンク104の160℃前後の熱水(I1)は、再び加圧給水ポンプ103により6MPaに加圧され媒体移送管110の媒体注入管111に流量55t/hで送られ、地中深くの地熱帯Sまで移送される。
【0169】
ここで、
図11乃至
図14によって従来の加圧水発電装置Aと本発明の比較を示す。
図11は、従来の加圧水発電装置Aの媒体移送管110の深度と熱水の温度分布の関係図である。破線は、地中の温度分布121を示しており、実線は、媒体注入管111及び媒体取出管112の熱伝導率が50W/m・Kの材質を採用した場合の熱水の温度分布122・123を示している。2点鎖線は、熱伝導率が0.1W/m・Kの材質を採用し、
図12の蒸発曲線126の200℃の温度でのC点となる1.554MPa以下の場合の温度分布121を示している。
【0170】
図12は、水の状態変化の概要図である。
図12には、水が固体・液体・気体と変化する際の温度と圧力が示されている。三重点から臨界点までの実線は蒸発曲線126を示している。大気圧での沸点は100℃であって0.101MPaを示している。線上のC点では200℃の温度の場合には1.554MPaより少ない場合には水の状態から気体すなわち蒸気へと変化する境界ラインである。線上のD点では210℃の温度の場合には1.907MPaより少ない場合には水の状態から気体すなわち蒸気へと変化する境界ラインとなる。
【0171】
温度分布121は、地熱帯Sの深部に近づくにつれて温度は上昇し220℃に達している。媒体注入管111及び媒体取出管112の熱伝導率は50W/m・Kの材質を採用しているため、媒体注入管111に導かれる熱水(I1)は、地中の温度分布121に沿って温度分布122が上昇する。そして、200℃に達した熱水(I2)を媒体取出管112から取り出すが、熱水(I2)は地表部Kまで上昇する際に、媒体取出管112の熱伝導率が高いため温度分布123に示すように熱水(I1)の温度に近づくように、熱水(I3)は、温度が低下する。
【0172】
ここで、媒体取出管112の熱伝導率を0.1W/m・Kと小さく設定したとしても、媒体取出管112の出口の熱水I3の圧力が
図12に示すC点より低い場合を示しており、
図11に示す温度分布124は、蒸発曲線126よりも低くなっているため蒸気が発生し、沸点に近づくように温度低下が発生している。
【0173】
また、
図13は、水の対流熱伝達係数127を示している。この熱伝達係数とは、流れている流体から、それに接する壁へいかに熱が伝わりやすいかを示す尺度である。図に示しように水から蒸気へと変化すると、数10倍の熱伝達係数が大きくなるため、熱水に含まれる蒸気量が増えれば増えるほど、所謂気液2相流となり、熱しやすくまた冷めやすいという傾向となるので、熱が奪われやすくなる。その熱損失を防ぎエネルギーを蓄えたまま移送するためには、熱水を冷め難くする必要がある。
【0174】
そして、地熱帯Sで熱せられた沸点以上の熱水は、冷めないように蒸気を含まない状態でフラッシャーFまで運べれば熱損失が少なくなる。熱損失を少なくするには、上述したように
図10の蒸発曲線126よりも高い圧力を保つ必要がある。特に、熱交換器内に温度差が生じ、これに伴って水の密度差に起因する重力水頭圧が発生するが、媒体注入管111及び媒体取出管112の圧力損失等を考慮すると蒸発曲線126よりも高い圧力を保つために加圧給水ポンプ103によって圧力を高いままに保って蒸気が発生しないように保つことが重要である。熱水のまま所謂単相流のままフラッシャーFまで移送することが地下の熱を有効に利用することができることとなる。
【0175】
以上のことから、本発明では
図14の網掛けに示すように媒体注入管111及び媒体取出管112の断熱領域を、熱伝達係数を0.1W/m・K以下とする材料で形成した。最も良いのは0.05W/m・Kから0.01W/m・K以下の断熱性能を有するものがよい。断熱性能を保つことによって、出口での温度低下を防ぎ、結果加圧給水ポンプ103の圧力を高く設定しなくとも良い。
図14において、破線は、地中の温度分布121を示しており、実線は、熱水の温度分布125を示している。
また、熱水(I3)の出口圧力は、媒体注入管111及び媒体取出管112の圧力損失を考慮して、加圧給水ポンプによって少なくとも
図12の蒸発曲線126よりも大きくし、温度が沸点以上である熱水のまま移送できるように蒸気を発生させない圧力とした。
さらに地中の温度分布の高い領域すなわち発電に必要な吸熱領域において媒体注入管111は、熱伝導率の高い50W/m・Kの材料で形成した。特に高ければ高い伝導率であればよいが、地中内での圧力や腐食を考慮すると金属製の材料で形成するのが望ましく、有効な熱伝導率は、20W/m・K以上であればよい。
【0176】
このように形成することにより、地中の温度の高い吸熱領域において、地熱帯からの沸点を超えた熱水(I2)は、熱を吸収し、熱伝導率の低い媒体取出管112及び加圧給水ポンプ103により加圧しながら移送することによって、温度を低下することなく200℃の熱水(I3)を圧力2.0MPaで地上にあるフラッシャーFまで移送することができる。
【0177】
次に、バイナリー発電装置Bでの発電方法を説明する。
熱交換部150は、フラッシャーFで蒸気にならずに残った約89%の熱水(I4)を、温度180℃前後の温度を保ったまま圧力1.6MPaで熱交換器151に流量49t/hで供給される。その際、熱水(I4)の流量が多ければバイパスを設けて貯留タンク104に余った熱水を分岐させても良い。熱交換器151は、熱交換部150にて低沸点である作動媒体(J1)を蒸発させており、その生成した蒸気を蒸気タービンT3に送る。送られた蒸気は、蒸気タービンT3の回転により発電機Gを駆動させ発電する。この蒸気により発電される発電量は効率を80%で稼働させると少なくとも113〜160kWhの出力が得られる。
また、蒸気タービンT3から排出された蒸気(J2)は、冷却器156の冷却水157によって冷却され、本発明で使用される作動媒体を気体から液体等に凝縮させている。循環ポンプ155によって、作動媒体(J3)は再び熱交換部150へ送られる。
【0178】
これら、加圧水発電装置Aで得られた電気は、送電設備Hを介して電力会社等へ供給される。バイナリー発電装置Bで生成された電気は、加熱部130での電力に使用される。また地熱発電装置1000内で消費しても良く、ポンプ類(103、105、155)での電力に使用しても良い。また蓄電池等に蓄えてから使用することも考えられる。
【0179】
(第7実施形態)
第7実施形態にかかる地熱発電装置1100を、
図15を参照して説明する。
図15は、第7実施形態にかかる本発明の地熱発電装置1100の構成を示す概要図である。
図15を参照して第7実施形態にかかる地熱発電装置1100を説明する。大別すると地熱発電装置1100は、加圧水発電装置Aとバイナリー発電装置Bとに構成される。
【0180】
加圧水発電装置Aは、加圧給水ポンプ103、貯留タンク104、低圧循環ポンプ105、復水器106、媒体移送管110、加熱部130、フラッシャーF、蒸気タービンT、発電機G、送電設備H及びバイナリー発電装置Bと接続される熱交換部150とで構成されている。第6実施形態と同様の構成を示す箇所は、第6実施形態と同様の符号を付して表してあり、構成は第6実施形態と同様な個所の説明は省略する。
第6実施形態と異なる点は、加圧水発電装置Aは、ダブルフラッシュ(F1・F2)となっている点で異なっており、高圧側の蒸気タービンT1と低圧側の蒸気タービンT2に蒸気を供給している。
フラッシャーF1は、高圧の蒸気を蒸気タービンT1に供給し、フラッシャーF2は、低圧の蒸気を蒸気タービンT2に供給している。
また、加熱部130は、フラッシャーF1、F2で生成した蒸気を、高圧側と低圧側の両方の蒸気タービンT1、T2まで移送する配管内に電熱ヒータ132又は電熱ヒータ136を配置している。
【0181】
(上記装置を利用して発電する発電方法)
図15を参照して発電方法を説明すると、200℃前後の熱を地中で得るためにボーリングにより開けられた穴の深度は、地中700mから1500m程度までの深さに達している。この深さは深ければ深いほど高い温度が得られると考えられるが、掘削費用との兼ね合いにより決められ地熱帯Sは、150℃から300℃の温度があれば最もよく、地熱帯Sの最深部付近から得られる温度によって適宜以下の値も変化する。
【0182】
また、第6実施形態で説明したように本発明は、地中の温度の高い吸熱領域において、地熱帯からの沸点を超えた熱水(I12)は、熱を吸収する。熱伝導率の低い媒体取出管112及び加圧給水ポンプ103により、加圧しながら移送することによって、温度を低下することなく200℃の熱水(I13)を圧力2.0MPaで地上にあるフラッシャーF1・F2まで移送することができる。
【0183】
先ず、加圧水発電装置Aによる発電方法について詳述する。地中には、媒体移送管110が埋設されており、媒体移送管110は、地中と接する外側に媒体注入管111が連結されて地中深くまで達している。また、媒体注入管111は、媒体注入管111の内側に媒体取出管112が連結されて媒体注入管111の底部まで達している。これら媒体移送管110を地熱帯Sから得られる熱を吸収する熱交換部として利用し、熱水を蒸発させて蒸気タービンTを介して発電を行っている。
【0184】
例えば、貯留タンク104の水(I11)は、加圧給水ポンプ103により5MPaに加圧され媒体移送管110の媒体注入管111に流量55t/hで送られ、地中深くの地熱帯Sまで移送される。220℃の地熱帯Sまで移送された温水は、地熱帯Sからの熱を熱伝導率の高い媒体注入管111から伝わり、最終的に210℃の熱水(I12)となる。そして、媒体取出管112から取り出された熱水(I13)は、出口での温度が200℃で、圧力が2.0MPaでフラッシャーF1に移送される。
【0185】
フラッシャーF1は、温度200℃の熱水を、圧力を解放して1.0MPaに減圧し沸騰させてフラッシュ率約7%の蒸気を蒸気量4t/hで発生させる。フラッシャーF1は、その生成した蒸気を高圧側の蒸気タービンT1に送る。
送られた蒸気は、加熱部130によって加熱され300℃の過熱蒸気となって蒸気タービンTを回転させ、発電機Gによって発電する。蒸気のエンタルピーは、加熱しない場合では、約1気圧で2777kJ/kgであるが、1気圧、300℃の過熱蒸気Vでは11%増加し3051kJ/kgである。
そのため、この蒸気により発電される発電量は、効率を80%とすると、333kWhの出力が得られる。加熱しない場合と比較すると3.7倍の発電量が得られる。
また、フラッシャーF1で蒸気にならずに残った約93%の熱水(I14)は、温度180℃前後の温度を保ったまま圧力1.0MPaでフラッシャーF2に送られる。
【0186】
フラッシャーF2は、温度180℃の熱水を、圧力を解放して0.6MPaに減圧沸騰させてフラッシュ率約4%の蒸気を蒸気量2t/hの蒸気を発生させる。フラッシャーF2は、その生成した蒸気を低圧側の蒸気タービンT2に送る。
送られた蒸気は、加熱部130によって加熱され300℃の過熱蒸気Vとなって蒸気タービンTの回転により発電機Gを駆動させ発電する。蒸気のエンタルピーは、加熱しない場合では、約0.61気圧で2757kJ/kgであるが、0.61気圧、300℃の過熱蒸気では11%増加し3061kJ/kgである。
そのため、この蒸気により発電される発電量は効率を80%で稼働させると少なくとも発電量は、183kWhの発電量が得られる。加熱しない場合と比較すると4.7倍の発電量が得られる。
【0187】
フラッシャーF2は、最初汲み上げた熱水(I13)のうち蒸気にならずに残った約89%の熱水(I15)を、温度160℃前後の温度を保ったまま圧力0.6MPaで熱交換器151に、流量49t/hで送る。熱交換器151を通過した熱水(I15)は、熱交換されて作動媒体に熱を奪われ140℃前後に冷却され低圧循環ポンプ105によって圧力0.47MPaで貯留タンク104へ移送される(I16)。また、蒸気タービンTで排気された蒸気は、復水器106で冷却水107によって凝縮され圧力0.101MPaの140℃の熱水(I17)に戻され、流量6t/hで貯留タンク104に貯められる。
貯留タンク104の140℃前後の熱水(I11)は、再び加圧給水ポンプ103により6MPaに加圧され媒体移送管110の媒体注入管111に流量55t/hで送られ、地中深くの地熱帯Sまで移送される。
【0188】
次に、バイナリー発電装置Bでの発電方法を説明する。
熱交換部150は、フラッシャーF2で蒸気にならずに残った約89%の熱水(I15)を、温度160℃前後の温度を保ったまま圧力0.47MPaで熱交換器151に流量49t/hで供給される。その際、熱水(I15)の流量が多ければバイパスを設けて貯留タンク104に余った熱水を分岐させても良い。熱交換器151は、熱交換部150にて低沸点である作動媒体(J1)を蒸発させており、その生成した蒸気を蒸気タービンT3に送る。送られた蒸気は、蒸気タービンT3の回転により発電機Gを駆動させ発電する。この蒸気により発電される発電量は効率を80%で稼働させると少なくとも113〜160kWhの出力が得られる。
また、蒸気タービンT3から排出された蒸気(J2)は、冷却器156の冷却水157によって冷却され、本発明で使用される作動媒体を気体から液体等に凝縮させている。循環ポンプ155によって、作動媒体(J3)は再び熱交換部150へ送られる。
【0189】
これら、加圧水発電装置Aで得られた電気は、送電設備Hから電力会社等へ供給される。また、バイナリー発電装置Bで生成された電気は、地熱発電装置1000内で消費しても良く、加熱部130の電力に使用され、またポンプ類(103、105、155)での電力に使用しても良い。また、これら生成された電気は、蓄電池等に蓄えてから使用することも考えられる。
【0190】
(第8実施形態)
第8実施形態にかかる地熱発電装置1200を、
図16を参照して説明する。
図16は、第8実施形態にかかる本発明の地熱発電装置1200の構成を示す概要図である。
図16を参照して第8実施形態にかかる地熱発電装置1200を説明する。大別すると地熱発電装置1200は、加圧水発電装置Aとバイナリー発電装置Bとに構成される。
【0191】
加圧水発電装置Aは、加圧給水ポンプ103、貯留タンク104、低圧循環ポンプ105、復水器106、媒体移送管110、加熱部130、フラッシャーF、蒸気タービンT、発電機G、送電設備H及びバイナリー発電装置Bと接続される熱交換部150とで構成されている。
第6実施形態と同様の構成を示す箇所は、第6実施形態と同様の符号を付して表してあり、構成は第6実施形態と同様な個所の説明は省略する。
第6実施形態と異なる点は、加圧水発電装置Aは、ダブルフラッシュ(F1・F2)となっている点で異なっており、フラッシャーに対して独立した蒸気タービン及び発電装置が設けられている。
フラッシャーF1は、高圧の蒸気を蒸気タービンT1に供給し、フラッシャーF2は、低圧の蒸気を蒸気タービンT2に供給している。
また、加熱部130は、フラッシャーF1、F2で生成した蒸気を、高圧側と低圧側の両方の蒸気タービンT1、T2まで移送する配管内に、各電熱ヒータ132又は電熱ヒータ136を配置している。
【0192】
(上記装置を利用して発電する発電方法)
図16を参照して発電方法を説明すると、200℃前後の熱を地中で得るためにボーリングにより開けられた穴の深度は、地中700mから1500m程度までの深さに達している。この深さは深ければ深いほど高い温度が得られると考えられるが、掘削費用との兼ね合いにより決められ地熱帯Sは、150℃から300℃の温度があれば最もよく、地熱帯Sの最深部付近から得られる温度によって、適宜以下の値も変化する。
【0193】
また、第6実施形態で説明したように本発明は、地中の温度の高い吸熱領域において、地熱帯からの沸点を超えた熱水(I12)は、熱を吸収し、その吸収した熱は、熱伝導率の低い媒体取出管112及び加圧給水ポンプ103により加圧しながら移送することによって、温度を低下することなく200℃の熱水(I13)を圧力2.0MPaで地上にあるフラッシャーF1・F2まで移送することができる。
【0194】
先ず、加圧水発電装置Aによる発電方法について詳述する。地中には、媒体移送管110が埋設されており、媒体移送管110は、地中と接する外側に媒体注入管111が連結されて地中深くまで達している。また、媒体注入管111は、媒体注入管111の内側に媒体取出管112が連結されて媒体注入管111の底部まで達している。これら媒体移送管110を地熱帯Sから得られる熱を吸収する熱交換部として利用し、熱水を蒸発させて蒸気タービンTを介して発電を行っている。
【0195】
例えば、貯留タンク104の水(I11)は、加圧給水ポンプ103により5MPaに加圧され媒体移送管110の媒体注入管111に流量55t/hで送られ、地中深くの地熱帯Sまで移送される。220℃の地熱帯Sまで移送された温水は、地熱帯Sからの熱を熱伝導率の高い媒体注入管111から伝わり、最終的に210℃の熱水(I12)となる。そして、媒体取出管112から取り出された熱水(I13)は、出口での温度が200℃で、圧力が2.0MPaでフラッシャーF1に移送される。
【0196】
フラッシャーF1は、温度200℃の熱水を、圧力を解放して1.0MPaに減圧し沸騰させてフラッシュ率約7%の蒸気を蒸気量4t(トン)/h(時間)で発生させる。フラッシャーF1は、その生成した蒸気を高圧側の蒸気タービンT1に送る。
送られた蒸気は、加熱部130によって加熱され300℃の過熱蒸気Vとなって蒸気タービンTに送られる。そして蒸気タービンTの回転により発電機Gを駆動させ発電する。蒸気のエンタルピーは、加熱しない場合では、約1気圧で2777kJ/kgであるが、1気圧、300℃の過熱蒸気Vでは10%増加し3051kJ/kgである。
そのため、この蒸気により発電される発電量は、効率を80%とすると少なくとも333kWhの出力が得られる。加熱しない場合と比較すると3.7倍の発電量が得られる。
また、フラッシャーF1で蒸気にならずに残った約93%の熱水(I14)は、温度180℃前後の温度を保ったまま圧力1.0MPaでフラッシャーF2に送られる。
【0197】
フラッシャーF2は、温度180℃の熱水を、圧力を解放して0.6MPaに減圧し沸騰させてフラッシュ率約4%の蒸気を蒸気量2t/hで発生させる。フラッシャーF2は、その生成した蒸気を低圧側の蒸気タービンT2に送る。
送られた蒸気は、加熱部130によって加熱され300℃の過熱蒸気Vとなって、蒸気タービンTを回転させ、発電機Gを駆動させて発電に使用される。蒸気のエンタルピーは、加熱しない場合では、約0.61気圧で2757kJ/kgであるが、0.61気圧、300℃の過熱蒸気Vでは11%増加し3061kJ/kgである。
そのため、この蒸気により発電される発電量は、効率を80%とすると183kWhの発電量が得られる。加熱しない場合と比較すると4.7倍の発電量が得られる。
【0198】
フラッシャーF2は、最初汲み上げた熱水(I13)のうち蒸気にならずに残った約89%の熱水(I15)を、温度160℃前後の温度を保ったまま圧力0.6MPaで熱交換器151に流量49t/hで送る。熱交換器151を通過した熱水(I15)は、熱交換され、作動媒体に熱を奪われ140℃前後に冷却され、低圧循環ポンプ105によって圧力0.47MPaで貯留タンク104へ移送される(I16)。また、蒸気タービンTで排気された蒸気は、復水器106で冷却水107によって凝縮され、圧力0.101MPaの140℃の熱水(I17)に戻され、流量6t/hで貯留タンク104に貯められる。
貯留タンク104の140℃前後の熱水(I11)は、再び加圧給水ポンプ103により6MPaに加圧され、媒体移送管110の媒体注入管111に流量55t/hで送られ、地中深くの地熱帯Sまで移送される。
【0199】
次に、バイナリー発電装置Bでの発電方法を説明する。
熱交換部150は、フラッシャーF2で蒸気にならずに残った約9.0割の熱水(I15)を、温度160℃前後の温度を保ったまま圧力0.47MPaで熱交換器151に、流量50.4t/hで供給される。その際、熱水(I15)は、流量が多ければバイパスを設けて貯留タンク104に分岐させても良い。熱交換器151は、熱交換部150にて低沸点である作動媒体(J1)を蒸発させており、その生成した蒸気を、蒸気タービンT3に送る。送られた蒸気は、蒸気タービンT3の回転により発電機Gを駆動させ発電する。この蒸気により発電される発電量は効率を80%とすると113〜160kWhの出力が得られる。また、蒸気タービンT3から排出された蒸気(J2)は、冷却器156の冷却水157によって冷却され、本発明で使用される作動媒体を気体から液体等に凝縮される。循環ポンプ155によって、作動媒体(J3)は、再び熱交換部150へ送られる。
【0200】
これら、加圧水発電装置Aで得られた電気は、送電設備Hから電力会社等へ供給される。また、バイナリー発電装置Bで生成された電気は、地熱発電装置1000内で消費しても良く、ポンプ類(103、105、155)での電力に使用しても良い。また、これら生成された電気は蓄電池等に蓄えてから使用することも考えられる。
【0201】
なお、バイナリー発電装置Bは、上記の発電装置に限定されず、バイナリー発電装置Bの条件として、飽和蒸気温度130℃、圧力0.169MPの蒸気を1.8t/hをバイナリー発電装置Bに供給し、冷却水等で冷却温度35℃に冷却した場合に92kWhの発電が可能である。また、他の条件として70〜95℃の熱水を12〜28t/hの流量をバイナリー発電装置Bに供給し、冷却水等で冷却温度20〜30℃で20〜40t/hの流量で冷却した場合に20KWの発電が可能である。
【0202】
(上記第6実施形態から第8実施形態で考えられるその他の技術的特徴)
加圧水発電装置の蒸気タービンで排出された蒸気をバイナリー発電の熱源として使用し、前記蒸気よりも沸点の低い作動媒体を蒸気化して発電を行うバイナリー発電装置と、前記加圧水発電装置に設けられる蒸気タービンへ送られる蒸気を加熱して過熱蒸気を生成し、前記バイナリー発電装置によって得られた電力によって駆動する加熱部と、を備えたことを特徴とする。
利用した蒸気を再利用して過熱蒸気を生成する加熱部を設けたことによって、再利用した蒸気を効率よく利用することができ、電力量をさらに増加させることが可能である。
【0203】
次に、本発明にかかる地熱発電装置1300、1400、1500の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0204】
(第9実施形態)
第9実施形態にかかる地熱発電装置1300を、
図17を参照して説明する。
図17は、第9実施形態にかかる本発明の地熱発電装置1300の構成を示す概要図である。
図17を参照して第9実施形態にかかる地熱発電装置1300を説明する。大別すると地熱発電装置1300は、加圧水発電装置Aとバイナリー発電装置Bとに構成される。
【0205】
加圧水発電装置Aは、圧力制御することができる加圧給水ポンプ103、貯留タンク104、低圧循環ポンプ10155、復水器106、媒体移送管110、フラッシャーF、蒸気タービンT、発電機G、送電設備H及びバイナリー発電装置Bと接続される熱交換部150とで構成されている。
加圧水発電装置Aは、蒸気タービンTに蒸気を供給することで、発電機Gを回転させて発電を行い、送電設備Hに電気を供給し送電網を介して電力会社等に電気を供給するものである。
蒸気タービンTは、タービン形式だけでなくスクリュー形式のもの等であってもよく、蒸気によって発電可能なものであればよい。蒸気タービンTに供給される蒸気は、熱水を減圧し沸騰させてフラッシャーFで生成される。
【0206】
フラッシャーFで蒸気となった熱水は、すべて蒸気とされることがないため、フラッシャーFからの多量の熱水が熱交換部150に送られる。熱交換部150で熱交換された熱水は低圧循環ポンプ105で貯留タンク104へ送られる。また、蒸気タービンTで排気された蒸気は復水器106で冷却水107によって凝縮され水に戻され貯留タンク104に貯められる。
貯留タンク104の水は、再度地熱帯Sのある深部で熱水として熱交換されるように後述する媒体移送管110へ加圧給水ポンプ103で移送される。
【0207】
次に、媒体移送管110を説明する。地表Kから地中深部にある熱源となる地熱帯Sまで媒体移送管110が埋設されている。媒体移送管110は、外側に円筒状の媒体注入管111が埋設され、その媒体注入管111の周囲は地表Kから地熱帯手前まで地熱セメントによって固められている。媒体移送管110の媒体注入管111は、最深部が密閉されており、地熱帯Sの深部の温泉水等の流体や岩盤からの熱を吸収するものである。
【0208】
媒体注入管111は、スチールやステンレス等の素材で形成されている。温度の高い地熱帯Sの領域では、媒体注入管111は、外周に地熱帯Sの熱が伝わりやすいように、断面が円形の円柱状のフィンが溶接されている。媒体注入管111は、地表Kに近い温度の低い領域では、貯留タンク104から加圧されて注入される水の熱が奪われないように断熱材や空気層を設けた断熱構造がとられている。
【0209】
媒体注入管111の内側には地熱帯Sで熱せられた水を移送する円筒状の媒体取出管112が設けられている。媒体取出管112は、媒体注入管111の内側であって同軸上に円筒状に形成されている。媒体取出管112は、垂直の断面は外側部と内側部との間に断熱材の繊維や樹脂や空気層を形成する2重構造となっている。この2重構造により、断熱効果だけでなく、体積が増し密度を小さくし水の密度に近づけることで、設置する際に媒体としての水を媒体注入管111に注入した後、この2重構造を取った媒体取出管112を水の中に沈めていくことで浮力が発生し、媒体取出管112を吊る装置への荷重を軽減することが可能となる。
【0210】
地熱帯Sで熱せられた熱水は、フラッシャーFで減圧し沸騰され蒸気を生成する。ここで、フラッシャーFは、蒸気を発生させる際のノズルは、自吸により微小気泡となるマイクロバブルやナノバブルを生成することができるノズルを使用しても良い。この構成により蒸気量を増やすことが可能である。蒸気量を増やすことによって、水を移送する速度を落としても充分な蒸気量を確保できるため、地熱帯Sの熱吸収領域での水の滞在時間を多くとることができ、水が熱を吸収する時間が取れ高温の熱水とすることができる。
【0211】
本実施例では地熱帯Sで熱交換する媒体として水を使用しているが、媒体として不活性ガス又はバイナリー発電で利用される水より沸点が低い媒体(水とアンモニアの混合物等)が考えられる。媒体移送管110の破損等が有った場合であっても、水であれば環境に害を与えることはなく、作業面においても安全に扱うことが可能である。
本実施例で説明する加圧水発電装置Aは、水が閉じられた状態で循環しており熱エネルギーの交換を行うシステムである。
【0212】
次に、バイナリー発電装置Bを、
図17を参照して説明すると、バイナリー発電装置Bは、加圧水発電装置Aと接続される熱交換部150と、蒸気タービンT3と、発電機G、送電設備H、冷却器156及び循環ポンプ155とで構成されている。
【0213】
熱交換部150は、フラッシャーFで蒸気と分離された熱水が、幾十にも折り曲げられた熱交換器151を通過する。この熱交換部150の部分で熱せられた作動媒体は、蒸発して蒸気タービンT3を回転させ発電を行っている。送電設備Hは、電気を供給し送電網を介して電力会社等に電気を供給するものである。ここで作動媒体は、可燃性や毒性のない不活不活性ガスのHFC−245fa、R245fa等や沸点の低い媒体(水とアンモニアの混合物等、炭化水素(ペンタン))等が使用される。
蒸気タービンT3は、膨張タービン等が使用されている。蒸気タービンT3を通過した作動媒体は、冷却器156の冷却水157によって冷却され、媒体を気体から液体等に凝縮させ循環ポンプ155によって再度、熱交換部150へ送られる。
【0214】
このような作動媒体を利用することによって、70℃から95℃の温水であっても9(ton(トン))/h(時間)から24t/hの流量が有れば発電が可能となる。このシステムにおいては、媒体が閉じられた系の中で熱交換を行うシステムとなっている。
【0215】
(上記装置を利用して発電する発電方法)
図17を参照して発電方法を説明すると、200℃前後の熱を地中で得るためにボーリングにより開けられた穴の深度は、地中700mから1500m程度までの深さに達している。この深さは深ければ深いほど高い温度が得られると考えられるが、掘削費用との兼ね合いにより決められ、地熱帯Sは、150℃から300℃の温度があれば最もよく、地熱帯Sの最深部付近から得られる温度によって適宜以下の値も変化する。
【0216】
先ず、加圧水発電装置Aの発電方法について説明すると、地中には、媒体移送管110が埋設されており、媒体移送管110は、地中と接する外側に媒体注入管111が連結されて地中深くまで達している。また、媒体注入管111は、媒体注入管111の内側に媒体取出管112が連結されて媒体注入管111の底部まで達している。これら媒体移送管110を地熱帯Sから得られる熱を吸収する熱交換部として利用されている。この加圧水発電装置Aは、熱水を蒸発させて蒸気タービンTを介して発電を行っている。以下に加圧水発電装置Aによる発電方法について詳述する。
【0217】
例えば、貯留タンク104の水(I1)は、加圧給水ポンプ103により5MPaに加圧され媒体移送管110の媒体注入管111に流量55(ton(トン))/h(時間)で送られ、地中深くの地熱帯Sまで移送される。220℃の地熱帯Sまで移送された温水は、地熱帯Sからの熱を熱伝導率の高い媒体注入管111から吸収し、最終的に210℃の熱水(I2)となる。そして、媒体取出管112から取り出された熱水(I3)は、出口での温度が200℃で、圧力が2.0MPaでフラッシャーFに移送される。
【0218】
フラッシャーFは、温度200℃の熱水を、圧力を解放して約0.6MPaに減圧し沸騰させてフラッシュ率約11%の蒸気を蒸気量6t/hの蒸気を発生させる。フラッシャーFは、その生成した蒸気を蒸気タービンTに送る。送られた蒸気は、蒸気タービンTの回転により発電機Gを駆動させ発電する。この蒸気により発電される発電量は効率を80%とすると約112kWhの出力が得られる。
【0219】
また、フラッシャーFは、蒸気にならずに残った約89%の熱水(I4)を、温度160℃前後の温度を保ったまま圧力0.6MPaで熱交換器151に流量49t/hで送る。熱交換器151を通過した熱水(I5)は、熱交換されて作動媒体に熱を奪われ140℃前後に冷却され低圧循環ポンプ105によって圧力0.47MPaで貯留タンク104へ移送される。また、蒸気タービンTで排気された蒸気は、復水器106で冷却水107によって凝縮され圧力0.101MPaの100℃の熱水(I6)に戻され、流量6t/hで貯留タンク104に貯められる。
貯留タンク104の130℃前後の熱水(I1)は、再び加圧給水ポンプ103により6MPaに加圧され媒体移送管110の媒体注入管111に流量55t/hで送られ、地中深くの地熱帯Sまで移送される。
【0220】
ここで、
図11乃至
図14によって従来の加圧水発電装置Aと本発明の比較を示す。
図11は、従来の加圧水発電装置Aの媒体移送管110の深度と熱水の温度分布の関係図である。破線は、地中の温度分布121を示しており、実線は、媒体注入管111及び媒体取出管112の熱伝導率が50W/m・Kの材質を採用した場合の熱水の温度分布122・123を示している。2点鎖線は、熱伝導率が0.1W/m・Kの材質を採用し、
図12の蒸発曲線126の200℃の温度でのC点となる1.554MPa以下の場合の温度分布121を示している。
【0221】
図12は、水の状態変化の概要図である。
図12には、水が固体・液体・気体と変化する際の温度と圧力が示されている。三重点から臨界点までの実線は蒸発曲線126を示している。大気圧での沸点は100℃であって0.101MPaを示している。線上のC点では200℃の温度の場合には1.554MPaより少ない場合には水の状態から気体すなわち蒸気へと変化する境界ラインである。線上のD点では210℃の温度の場合には1.907MPaより少ない場合には水の状態から気体すなわち蒸気へと変化する境界ラインとなる。
【0222】
温度分布121は、地熱帯Sの深部に近づくにつれて温度は上昇し220℃に達している。媒体注入管111及び媒体取出管112の熱伝導率は、50W/m・Kの材質を採用しているため、媒体注入管111に導かれる熱水(I1)は、地中の温度分布121に沿って温度分布122が上昇する。そして、200℃に達した熱水(I2)を媒体取出管112から取り出すが、熱水(I2)は地表部Kまで上昇する際、媒体取出管112の熱伝導率が高いため、温度分布123に示すように熱水(I1)の温度に近づくよう、熱水(I3)は温度が低下する。
【0223】
ここで、媒体取出管112の熱伝導率を0.1W/m・Kと小さく設定したとしても、媒体取出管112の出口の熱水I3の圧力が
図12に示すC点より低い場合を示しており、
図11に示す温度分布124は、蒸発曲線126よりも低くなっているため蒸気が発生し、沸点に近づくように温度低下が発生している。
【0224】
また、
図13は、水の対流熱伝達係数127を示している。この熱伝達係数とは、流れている流体から、それに接する壁へいかに熱が伝わりやすいかを示す尺度である。図に示しように水から蒸気へと変化すると、数10倍の熱伝達係数が大きくなるため、熱水に含まれる蒸気量が増えれば増えるほど、所謂気液2相流となり、熱しやすくまた冷めやすいという傾向となるので、熱が奪われやすくなる。その熱損失を防ぎエネルギーを蓄えたまま移送するためには、熱水を冷め難くする必要がある。
【0225】
そして、地熱帯Sで熱せられた沸点以上の熱水は、冷めないように蒸気を含まない状態でフラッシャーFまで運べれば熱損失が少なくなる。熱損失を少なくするには、上述したように
図12の蒸発曲線126よりも高い圧力を保つ必要がある。特に、熱交換器内に温度差が生じ、これに伴って水の密度差に起因する重力水頭圧が発生するが、媒体注入管111及び媒体取出管112の圧力損失等を考慮すると蒸発曲線126よりも高い圧力を保つために加圧給水ポンプ103によって圧力を高いままに保って蒸気が発生しないように保つことが重要である。熱水のまま所謂単相流のままフラッシャーFまで移送することが地下の熱を有効に利用することができることとなる。
【0226】
以上のことから、本発明では
図14の網掛けに示すように媒体注入管111及び媒体取出管112の断熱領域を、熱伝達係数を0.1W/m・K以下とする材料で形成した。最も良いのは0.05W/m・Kから0.01W/m・K以下の断熱性能を有するものがよい。断熱性能を保つことによって、出口での温度低下を防ぎ、結果加圧給水ポンプ103の圧力を高く設定しなくとも良い。
図14において、破線は、地中の温度分布121を示しており、実線は、熱水の温度分布125を示している。
また、熱水I3の出口圧力は、媒体注入管111及び媒体取出管112の圧力損失を考慮して、加圧給水ポンプによって少なくとも
図12の蒸発曲線126よりも大きくし、温度が沸点以上である熱水のまま移送できるように蒸気を発生させない圧力とした。
さらに地中の温度分布の高い領域すなわち発電に必要な吸熱領域において媒体注入管111は、熱伝導率の高い50W/m・Kの材料で形成した。特に高ければ高い伝導率であればよいが、地中内での圧力や腐食を考慮すると金属製の材料で形成するのが望ましく、有効な熱伝導率は、20W/m・K以上であればよい。
【0227】
このように形成することにより、地中の温度の高い吸熱領域において、地熱帯からの沸点を超えた熱水(I2)は、熱を吸収し、熱伝導率の低い媒体取出管112及び加圧給水ポンプ103により加圧しながら移送することによって、温度を低下することなく200℃の熱水(I3)を圧力2.0MPaで地上にあるフラッシャーFまで移送することができる。
【0228】
次に、バイナリー発電装置Bでの発電方法を説明する。
熱交換部150は、フラッシャーFで蒸気にならずに残った89%の熱水(I4)を、温度160℃前後の温度を保ったまま圧力0.6MPaで熱交換器151に流量49t/hで供給される。その際、熱水(I4)の流量が多ければバイパスを設けて貯留タンク104に余った熱水を分岐させても良い。熱交換器151は、熱交換部150にて低沸点である作動媒体(J1)を蒸発させており、その生成した蒸気を蒸気タービンT3に送る。送られた蒸気は、蒸気タービンT3の回転により発電機Gを駆動させ発電する。この蒸気により発電される発電量は効率を80%で稼働させると少なくとも113〜160kWhの出力が得られる。フラッシャーFからの余った熱水(I4)は、全てバイナリー発電装置Bに使用する必要はなく、バイナリー発電装置Bの特性や希望する発電量に応じて供給すれば良く。余剰の熱水(I4)は、熱を保ったまま再び地熱帯Sへ戻して熱交換をさせることも可能である。
また、蒸気タービンT3から排出された蒸気(J2)は、冷却器156の冷却水157によって冷却され、本発明で使用される作動媒体を気体から液体等に凝縮させている。循環ポンプ155によって、作動媒体(J3)は再び熱交換部150へ送られる。
【0229】
これら、加圧水発電装置Aとバイナリー発電装置Bとで得られた電気は、送電設備Hから電力会社等へ供給される。また、バイナリー発電装置Bで生成された電気は、地熱発電装置1300内で消費しても良く、乾き蒸気を生成する電力やポンプ類(103、105、155)での電力に使用しても良い。また蓄電池等に蓄えてから使用することも考えられる。
【0230】
(第10実施形態)
第10実施形態にかかる地熱発電装置1400を、
図18を参照して説明する。
図18は、第10実施形態にかかる本発明の地熱発電装置1400の構成を示す概要図である。
図18を参照して第2実施形態にかかる地熱発電装置1400を説明する。大別すると地熱発電装置1400は、加圧水発電装置Aとバイナリー発電装置Bとに構成される。
【0231】
加圧水発電装置Aは、加圧給水ポンプ103、貯留タンク104、低圧循環ポンプ105、復水器106、媒体移送管110、フラッシャーF、蒸気タービンT、発電機G、送電設備H及びバイナリー発電装置Bと接続される熱交換部150とで構成されている。
第9実施形態と同様の構成を示す箇所は、第1実施形態と同様の符号を付して表してあり、構成は第9実施形態と同様な個所の説明は省略する。
第9実施形態と異なる点は、加圧水発電装置Aは、ダブルフラッシュ(F1・F2)となっている点で異なっており、高圧側の蒸気タービンT1と低圧側の蒸気タービンT2に蒸気を供給している。
フラッシャーF1は、高圧の蒸気を蒸気タービンT1に供給し、フラッシャーF2は、低圧の蒸気を蒸気タービンT2に供給している。
【0232】
(上記装置を利用して発電する発電方法)
図18を参照して発電方法を説明すると、200℃前後の熱を地中で得るためにボーリングにより開けられた穴の深度は、地中700mから1500m程度までの深さに達している。この深さは深ければ深いほど高い温度が得られると考えられるが、掘削費用との兼ね合いにより決められ地熱帯Sは、150℃から300℃の温度があれば最もよく、地熱帯Sの最深部付近から得られる温度によって適宜以下の値も変化する。
【0233】
また、第9実施形態で説明したように本発明は、地中の温度の高い吸熱領域において、熱水(I12)は、地熱帯Sから熱を吸収する。熱伝導率の低い媒体取出管112及び加圧給水ポンプ103により、加圧しながら移送することによって、温度を低下することなく200℃の熱水(I13)を圧力2.0MPaで地上にあるフラッシャーF1・F2まで移送することができる。
【0234】
先ず、加圧水発電装置Aによる発電方法について詳述する。地中には、媒体移送管110が埋設されており、媒体移送管110は、地中と接する外側に媒体注入管111が連結されて地中深くまで達している。また、媒体注入管111は、媒体注入管111の内側に媒体取出管112が連結されて媒体注入管111の底部まで達している。これら媒体移送管110を地熱帯Sから得られる熱を吸収する熱交換部として利用し、熱水を蒸発させて蒸気タービンTを介して発電を行っている。
【0235】
例えば、貯留タンク104の水(I11)は、加圧給水ポンプ103により5MPaに加圧され媒体移送管110の媒体注入管111に流量55t/hで送られ、地中深くの地熱帯Sまで移送される。220℃の地熱帯Sまで移送された温水は、地熱帯Sからの熱を熱伝導率の高い媒体注入管111から伝わり、最終的に210℃の熱水(I12)となる。そして、媒体取出管112から取り出された熱水(I13)は、出口での温度が200℃で、圧力が2.0MPaでフラッシャーF1に移送される。
【0236】
フラッシャーF1は、温度200℃の熱水を、圧力を解放して1.0MPaに減圧し沸騰させてフラッシュ率約7%の蒸気を蒸気量約4t/hで発生させる。フラッシャーF1は、その生成した蒸気を高圧側の蒸気タービンT1に送る。送られた蒸気は、蒸気タービンTを回転させ発電機Gによって発電する。この蒸気により発電される発電量は効率を80%とすると90kWhの出力が得られる。また、フラッシャーF1で蒸気にならずに残った約93%の熱水(I14)は、温度180℃前後の温度を保ったまま圧力1.0MPaでフラッシャーF2に送られる。
【0237】
フラッシャーF2は、温度180℃の熱水を、圧力を解放して0.6MPaに減圧沸騰させてフラッシュ率約4%の蒸気を蒸気量2t/hの蒸気を発生させる。フラッシャーF2は、その生成した蒸気を低圧側の蒸気タービンT2に送る。送られた蒸気は、蒸気タービンTの回転により発電機Gを駆動させ発電する。この蒸気により発電される発電量は効率を80%で稼働させると少なくとも40kWhの出力が得られる。
【0238】
フラッシャーF2は、最初汲み上げた熱水(I13)のうち蒸気にならずに残った約89%の熱水(I15)を、温度160℃前後の温度を保ったまま圧力0.6MPaで熱交換器151に流量約49t/hで送る。熱交換器151を通過した熱水(I15)は、熱交換されて作動媒体に熱を奪われ140℃前後に冷却され低圧循環ポンプ105によって圧力0.47MPaで貯留タンク104へ移送される(I16)。また、蒸気タービンTで排気された蒸気は、復水器106で冷却水107によって凝縮され圧力0.101MPaの140℃の熱水(I17)に戻され、流量6t/hで貯留タンク104に貯められる。
貯留タンク4の140℃前後の熱水(I11)は、再び加圧給水ポンプ103により6MPaに加圧され媒体移送管110の媒体注入管111に流量55t/hで送られ、地中深くの地熱帯Sまで移送される。
【0239】
次に、バイナリー発電装置Bでの発電方法を説明する。
熱交換部150は、フラッシャーF2で蒸気にならずに残った約89%の熱水(I15)を、温度160℃前後の温度を保ったまま圧力0.47MPaで熱交換器151に流量49t/hで供給される。その際、熱水(I15)の流量が多ければバイパスを設けて貯留タンク104に余った熱水を分岐させても良い。熱交換器151は、熱交換部150にて低沸点である作動媒体(J1)を蒸発させており、その生成した蒸気を蒸気タービンT3に送る。送られた蒸気は、蒸気タービンT3の回転により発電機Gを駆動させ発電する。この蒸気により発電される発電量は効率を80%とすると113〜160kWhの出力が得られる。また、蒸気タービンT3から排出された蒸気(J2)は、冷却器156の冷却水157によって冷却され、本発明で使用される作動媒体を気体から液体等に凝縮させている。循環ポンプ155によって、作動媒体(J3)は再び熱交換部150へ送られる。
【0240】
これら、加圧水発電装置Aとバイナリー発電装置Bとで得られた電気は、送電設備Hから電力会社等へ供給される。また、バイナリー発電装置Bで生成された電気は、地熱発電装置1400内で消費しても良く、乾き蒸気を生成する電力やポンプ類(103、105、155)での電力に使用しても良い。また蓄電池等に蓄えてから使用することも考えられる。
【0241】
(第10実施形態)
第10実施形態にかかる地熱発電装置1500を、
図19を参照して説明する。
図19は、第9実施形態にかかる本発明の地熱発電装置1500の構成を示す概要図である。
図19を参照して第10実施形態にかかる地熱発電装置1500を説明する。大別すると地熱発電装置1500は、加圧水発電装置Aとバイナリー発電装置Bとに構成される。
【0242】
加圧水発電装置Aは、加圧給水ポンプ103、貯留タンク104、低圧循環ポンプ105、復水器106、媒体移送管110、フラッシャーF、蒸気タービンT、発電機G、送電設備H及びバイナリー発電装置Bと接続される熱交換部150とで構成されている。
第8実施形態と同様の構成を示す箇所は、第8実施形態と同様の符号を付して表してあり、構成は第8実施形態と同様な個所の説明は省略する。
第8実施形態と異なる点は、加圧水発電装置Aは、ダブルフラッシュ(F1・F2)となっている点で異なっており、フラッシャーに対して独立した蒸気タービン及び発電装置が設けられている。
フラッシャーF1は、高圧の蒸気を蒸気タービンT1に供給し、フラッシャーF2は、低圧の蒸気を蒸気タービンT2に供給している。
【0243】
(上記装置を利用して発電する発電方法)
図19を参照して発電方法を説明すると、200℃前後の熱を地中で得るためにボーリングにより開けられた穴の深度は、地中700mから1500m程度までの深さに達している。この深さは深ければ深いほど高い温度が得られると考えられるが、掘削費用との兼ね合いにより決められ地熱帯Sは、150℃から300℃の温度があれば最もよく、地熱帯Sの最深部付近から得られる温度によって適宜以下の値も変化する。
【0244】
また、第8実施形態で説明したように本発明は、地中の温度の高い吸熱領域において、地熱帯Sから熱を吸収した熱水(I12)は、熱伝導率の低い媒体取出管112及び加圧給水ポンプ103により加圧しながら移送することによって、温度を低下することなく200℃の熱水(I13)を圧力2.0MPaで地上にあるフラッシャーF1・F2まで移送することができる。
【0245】
先ず、加圧水発電装置Aによる発電方法について詳述する。地中には、媒体移送管110が埋設されており、媒体移送管110は、地中と接する外側に媒体注入管111が連結されて地中深くまで達している。また、媒体注入管111は、媒体注入管111の内側に媒体取出管112が連結されて媒体注入管111の底部まで達している。これら媒体移送管110を地熱帯Sから得られる熱を吸収する熱交換部として利用し、熱水を蒸発させて蒸気タービンTを介して発電を行っている。
【0246】
例えば、貯留タンク104の水(I11)は、加圧給水ポンプ103により5MPaに加圧され媒体移送管110の媒体注入管111に流量55t/hで送られ、地中深くの地熱帯Sまで移送される。220℃の地熱帯Sまで移送された水は、地熱帯Sからの熱を熱伝導率の高い媒体注入管111から伝わり、最終的に210℃の熱水(I12)となる。そして、媒体取出管112から取り出された熱水(I13)は、出口での温度が200℃で、圧力が2.0MPaでフラッシャーF1に移送される。
【0247】
フラッシャーF1は、温度200℃の熱水を、圧力を解放して1.0MPaに減圧し沸騰させてフラッシュ率約7%の蒸気を蒸気量4t(トン)/h(時間)で発生させる。フラッシャーF1は、その生成した蒸気を高圧側の蒸気タービンT1に送る。送られた蒸気は、蒸気タービンT1の回転により発電機G1を駆動させ発電する。この蒸気により発電される発電量は効率を80%として90kWhの出力が得られる。また、フラッシャーF1で蒸気にならずに残った93%の熱水(I14)は、温度180℃前後の温度を保ったまま圧力1.0MPaでフラッシャーF2に送られる。
【0248】
フラッシャーF2は、温度180℃の熱水の圧力を解放して0.6MPaに減圧し沸騰させてフラッシュ率約4%の蒸気を蒸気量2t/hで発生させる。フラッシャーF2は、その生成した蒸気を低圧側の蒸気タービンT2に送る。送られた蒸気は、蒸気タービンT2の回転により発電機G2を駆動させ発電する。この蒸気により発電される発電量は効率を80%として40kWhの出力が得られる。
【0249】
フラッシャーF2は、最初汲み上げた熱水(I13)のうち蒸気にならずに残った約89%の熱水(I15)を、温度160℃前後の温度を保ったまま圧力0.6MPaで熱交換器151に流量約49t/hで送る。熱交換器151を通過した熱水(I15)は、熱交換されて作動媒体に熱を奪われ140℃前後に冷却され低圧循環ポンプ105によって圧力0.47MPaで貯留タンク104へ移送される(I16)。また、蒸気タービンTで排気された蒸気は、復水器106で冷却水107によって凝縮され圧力0.101MPaの140℃の熱水(I17)に戻され、流量6t/hで貯留タンク104に貯められる。
貯留タンク104の140℃前後の熱水(I11)は、再び加圧給水ポンプ103により6MPaに加圧され媒体移送管110の媒体注入管111に流量55t/hで送られ、地中深くの地熱帯Sまで移送される。
【0250】
次に、バイナリー発電装置Bでの発電方法を説明する。
熱交換部150は、フラッシャーF2で蒸気にならずに残った約89%の熱水(I15)を、温度160℃前後の温度を保ったまま圧力0.47MPaで熱交換器151に流量約49t/hで供給される。その際、熱水(I15)の流量が多ければバイパスを設けて貯留タンク104に余った熱水を分岐させても良い。熱交換器151は、熱交換部150にて低沸点である作動媒体(J1)を蒸発させており、その生成した蒸気を蒸気タービンT3に送る。送られた蒸気は、蒸気タービンT3の回転により発電機Gを駆動させ発電する。この蒸気により発電される発電量は効率を80%とすると113〜160kWhの出力が得られる。また、蒸気タービンT3から排出された蒸気(J2)は、冷却器156の冷却水157によって冷却され、本発で使用される作動媒体を気体から液体等に凝縮される。循環ポンプ155によって、作動媒体(J3)は再び熱交換部150へ送られる。
【0251】
これら、加圧水発電装置Aとバイナリー発電装置Bとで得られた電気は、送電設備Hから電力会社等へ供給される。また、バイナリー発電装置Bで生成された電気は、地熱発電装置1300内で消費しても良く、乾き蒸気を生成する電力やポンプ類(103、105、155)での電力に消費しても良い。またこれら電気は蓄電池等に蓄えてから使用することも考えられる。
【0252】
尚、バイナリー発電装置Bは、上記の発電装置に限定されず、バイナリー発電装置Bの条件として、飽和蒸気温度130℃、圧力0.169MPの蒸気を1.8t/hをバイナリー発電装置Bに供給し、冷却水等で冷却温度35℃に冷却した場合に92kWhの発電が可能である。また、他の条件として70〜95℃の熱水を12〜28t/hの流量をバイナリー発電装置Bに供給し、冷却水等で冷却温度20〜30℃で20〜40t/hの流量で冷却した場合に20kWhの発電が可能である。
尚、T1及びT2についても作動媒体を低沸点としたバイナリー発電Bであっても良い。蒸気や熱水が低い場合であっても発電が可能である。
【0253】
(第8実施形態から第10実施形態から考えられるその他の技術的特徴)
地熱帯の熱によって熱せられた熱水を熱源として発電する地熱発電装置であって、外側に前記地熱帯へ前記熱水を移送する媒体注入管と、前記媒体注入管の内側に前記地熱帯の熱によって熱せられた前記熱水を取り出す媒体取出管とを備えた媒体移送管と、低温である前記地熱帯の領域では熱伝導率の低い断熱構造を設けた前記媒体取出管と、高温である前記地熱帯の領域では熱伝導率の高い吸熱構造を設けた前記媒体注入管と、を設け、前記地熱帯により熱を吸収した高温の前記熱水を蒸発曲線よりも高い圧力を加えて、蒸気を発生しないように液体の状態で地上にある蒸気発生器まで移送し、その蒸気発生器で蒸気とならなかった前記熱水をその後の複数の蒸気発生器によって蒸気を発生させて前記蒸気によって発電を行うことによって加圧水発電装置と、地上へ移送された前記熱水のうち蒸気発生器で蒸気とならなかった前記熱水を熱源として使用し、前記熱水よりも沸点の低い作動媒体を蒸気化して発電を行うバイナリー発電装置と、を備えたことを特徴とする地熱発電装置及び地熱発電方法。
【0254】
以上の構成によって、地中から得られた熱を、水を媒体として熱変換するため、スケールによる熱の温度低下や管の詰まり等の機器への影響を考える必要もなく、またスケール除去等による汚染や地中からの有害物質による障害も考えることはない。
熱水および蒸気の凝縮水が混入すると、タービンの熱効率は、乾き蒸気で作動する場合に比べて、効率が著しく低下する、いわゆる湿り損失が生じることが知られている。また、蒸気中の水滴が高速で回転するタービン動翼あるいは配管内壁に衝突することにより、エロージョンを受け、さらなる効率の低下のみならず機器損傷を引き起こす原因となる。本発明では、地上の蒸気発生器(フラッシャー)にて蒸気を生成するため、地中で蒸気を生成する場合に比較して熱効率よく地上に熱水を移送した後、減圧沸騰させ蒸気を発生させるため、エロージョンや効率低下という問題を解決することができる。
また、蒸気とならなかった熱水を再利用することで発電量を増量させることが可能である。
【0255】
加圧水発電装置に設けられた複数の蒸気発生器で発生した蒸気又は蒸気とならなかった熱水を熱源として使用し、前記熱水よりも沸点の低い作動媒体を蒸気化して発電を行うバイナリー発電装置と、を備えたことを特徴とする地熱発電装置及び地熱発電方法。
発電量を増量させることが可能であると共に地熱の熱を有効に利用することが可能である。
【0256】
次に、本発明にかかる地熱発電装置1600、1700、1800、1900の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
図に示される白矢印は、媒体(温水、熱水及び還元水)が流れる方向を示している。ここで、本発明では使用される単相流の液体を水を例にとって説明しているが、特に限定されることはなく、アンモニア等のバイナリー発電等で使用される低沸点の媒体であっても良い。各白矢印の液体の流れる箇所は、配管が設けられている。また、各装置又はタンクの手前に減圧弁等が設けられており、流量の調整が可能なようになっている。
【0257】
(第12実施形態)
第12実施形態にかかる地熱発電装置1600が
図20乃至
図22に示されている。主に
図20を参照して説明すると、
図20は、第12実施形態にかかる本発明の地熱発電装置1600の構成を示す概要図である。
図21は、微小気泡213を表す作用図である。
図223(A)は、第12実施形態にかかる微小気泡生成ノズル221aの構成を表す概要図である。
【0258】
第12実施形態にかかる地熱発電装置1600は、大別すると微小気泡生成装置420、貯留タンクとしての循環サービスタンク230、熱交換器250、蒸気発生器260、フラッシャー270、蒸気タービン280、復水器290、加圧給水ポンプ241、低圧循環ポンプ242で構成されている。
【0259】
地熱発電装置1600は、蒸気タービン280に蒸気を供給することで発電モータ281を回転させて発電を行い、受電設備282に電気を供給し送電網を介して電力会社等に電気を供給するものである。蒸気タービン280は、タービン形式だけでなくスクリュー形式のもの等であってもよく、蒸気によって発電可能なものであればよい。
蒸気タービン280に供給される蒸気は、熱水を減圧沸騰させて蒸気発生器260で生成する。生成した蒸気は、配管261によって蒸気タービン280の高圧部に直接供給される。蒸気量が足りない場合は、蒸気発生器260で余った高温水をフラッシャー270で再度減圧沸騰させ、蒸気を発生させる。発生した蒸気は、配管271によって低圧部の蒸気タービン280へ供給される。熱水は、すべて蒸気とされることがないため、フラッシャー270からの還元水は、循環サービスタンク230に貯められる。また、復水器290は、蒸気タービン280で使用された蒸気を冷却水291で再び水へ凝縮させる装置である。凝縮された温水は低圧循環ポンプ242で循環サービスタンク230へ移送される。
【0260】
循環サービスタンク230は、フラッシャー270からの還元水と復水器290から低圧循環ポンプ242で移送された温水を貯めている。貯められた水は、再度地熱帯Sで熱水として熱交換されるように加圧水注入管251へ加圧給水ポンプ241で移送される。
循環サービスタンク230は、微小気泡生成装置220を含んでおり、循環サービスタンク230の水の一部を液体搬送管231を介して微小気泡生成装置420に移送される。微小気泡生成装置420は、
図20及び
図22(A)に示すように、動力部224と、微小気泡213を排出するノズル部としての微小気泡生成ノズル221aとに分離されて設けられている。
【0261】
微小気泡生成装置420に設けられた動力部224の図示しないポンプで加圧した水を圧力注入管223aにより微小気泡生成ノズル221aに供給する。微小気泡生成装置420は、動力部224の図示しないエアコンプレッサー等で気体注入管222aを介して空気を微小気泡生成ノズル221aに供給し、微小気泡生成ノズル221aは空気と共に温水を排出するためのノズル225aが設けられている。微小気泡生成ノズル221aは、微小気泡生成ノズル221aの中間部に位置し、微小気泡生成ノズル221aの中に挿入された球状体227が嵌め込まれている。微小気泡生成ノズル221aは、その球状体227の挿入中心から下流に微小気泡生成ノズル221aの周上に穿設された小孔229が設けられている。微小気泡生成ノズル221aは、小孔229の外側に大気又はエアコンプレッサーと連通している空気室226が設けられている。
そして、加圧した高圧水流を流すことで、自吸又はエアコンプレッサーで加圧した空気を伴って
図21に示すように微小気泡213が生成される。微小気泡生成ノズル221aは、耐熱性のものが良く、少なくとも200℃程度耐えるような樹脂や金属等を使用するとよい。
【0262】
本発明で生成した微小気泡213は、マイクロバブルやナノバブルであり、粒径が20マイクロ以下のマイクロバブルはナノバブルへと縮小し、最終的には消滅することが知られている。ヘンリーの法則によると、気体は圧力に比例して水の中に溶解する。そのため、小さな気泡ほど気体の溶解能力が高いことを意味している。そして、マイクロバブルやナノバブルを溶解した水は、以下のような効果を奏している。
微小気泡213を含んだ熱水をノズルでスプレー状に散布した場合に、マイクロバブルやナノバブルを多く含んでいるため、何も含んでいない水と比較すれば、粒子数で換算すると2倍から3倍の粒子数が確認されている。微小気泡213を含んだ熱水は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器260で熱水が蒸気となる場合に、少なくとも蒸気量が1割から2割増大することが確認されている。
【0263】
マイクロバブルを乱流境界層中に注入することにより、壁面の摩擦抵抗を低減することも可能である。このため、管内の抵抗が少なくなり圧力損失の低減を行うことが可能である。そして、加圧給水ポンプ241や低圧循環ポンプ242の負担が少なくなる。
また、微小気泡213は、空気と水の気液界面214では静電摩擦が起こることにより、静電気により気液界面214を境にして水側に正の電位216が、空気側には負の電位215が発生し気液界面214に生じた負の電位215による静電摩擦の力により、液体中の不純物を集めながら移送される。これにより、移送路内の浄化効果もあり、さらに圧力損失の低減を行うことが可能である。
【0264】
また、微小気泡213の生成方法には他にも考えられ、衝撃波や超音波やベンチュリー管を使用して圧壊を起こす方法、キャビテーションによる方法、剪断、電気分解や加圧溶解による方法等が考えられる。
【0265】
次に、熱交換器250を説明すると、地表Fから地中深部にある熱源となる地熱帯Sまで熱交換器250が埋設されている。熱交換器250は、外側に円筒状の加圧水注入管251が設けられ、その加圧水注入管251の周囲は地表Fから地熱帯S付近までは地熱セメントによって固められている。加圧水注入管251の内側には地熱帯Sで熱せられた水を移送する円筒状の液体取出管252が設けられている。加圧水注入管251は、スチールやステンレス等の素材で形成されており、温度の高い地熱帯Sの領域では、外周は地熱帯Sの熱が伝わりやすいように、フィン等が取り付けられている。
また、加圧水注入管251の外周は、耐腐食性や伝熱性を向上させるためにアルミやアルミと鉛を混合した材料で溶射加工が施されている。加圧水注入管251は、地表Fに近い温度の低い領域では、循環サービスタンク230から加圧された温水の熱が奪われないように断熱材や空気層を設けた断熱構造がとられている。
図20に示すように加圧水注入管251の最深部は、圧力損失が生じないように断面弧状に形成され、加圧された水がスムーズに液体取出管252へ移送される。
【0266】
液体取出管252は、地熱帯Sで熱せられた熱水を地上まで移送するために円筒状の管が、加圧水注入管251の内部に設けられている。液体取出管252は、ステンレス等の素材で形成されており最深部は、圧力損失が生じないように図示しない一部分が欠き切られた形状に形成され、加圧された水がスムーズに上昇する。
【0267】
液体取出管252から取り出された熱水は、加圧された状態で蒸気発生器260まで到達する。蒸気発生器260では、加圧された熱水が減圧沸騰され、蒸気が発生する。通常、蒸気発生器260で熱水から蒸気として取得できる蒸気の重量割合は30%であり、70%は温水として戻される。しかしながら、微小気泡213を含んだ状態では、付加的な発泡核数及び気液界面の増大により蒸気の重量割合は40%まで向上している。
【0268】
(第13実施形態)
第13実施形態にかかる地熱発電装置1700が
図23に示されている。
図23は、第13実施形態にかかる本発明の実施形態に係る地熱発電装置1700の構成を示す概要図である。第12実施形態と同様の構成を示す箇所は、第12実施形態と同様の符号を付して表してあり、構成は第12実施形態と同様な個所の説明は省略する。
【0269】
第13実施形態にかかる地熱発電装置1700は、大別すると微小気泡生成装置430、循環サービスタンク230、熱交換器250、蒸気発生器360、フラッシャー270、蒸気タービン280、復水器290、加圧給水ポンプ241、低圧循環ポンプ242で構成されている。
【0270】
第12実施形態と異なる点のみ説明すると、蒸気発生器360に微小気泡生成装置430が設けられている。微小気泡生成装置430は、
図22(A)及び
図23に示すように、動力部224と、微小気泡213を排出するノズル部としての微小気泡生成ノズル221aとに分離されて設けられている。
【0271】
微小気泡生成装置430は、加圧給水ポンプ241で加圧した熱水を圧力注入管223aで微小気泡生成ノズル221aに供給し、動力部224の図示しないエアコンプレッサーで気体注入管222aを介して空気を気泡生成ノズル221aに供給している。微小気泡生成ノズル221aは、空気と共に熱水を排出するためのノズル225aが設けられている。微小気泡生成ノズル221aの中間部に位置し、微小気泡生成ノズル221aの中に挿入された球状体227が嵌め込まれている。その球状体227の挿入中心から下流に微小気泡生成ノズル221aの周上に穿設された小孔229が設けられている。小孔229の外側には、エアコンプレッサーと連通している空気室226が設けられている。
【0272】
そして、蒸気発生器360は、熱水を減圧沸騰させて蒸気を生成するが、蒸気を発生させるノズルが微小気泡生成ノズル221aで構成されており、微小気泡213を発生させながら蒸気としているため、微小気泡213を含んだ熱水は、マイクロバブルやナノバブルを多く含んでいるため、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面の表面積が増大している。これにより、蒸気発生器360で熱水が蒸気となる場合に、蒸気量が増大する効果を奏している。
【0273】
(第14実施形態)
第14実施形態にかかる地熱発電装置210が
図22(B)、
図24及び
図25に示されている。
図22(B)は、第14実施形態にかかる微小気泡生成ノズル221bの構成を表す概要図である。
図24は、第14実施形態にかかる本発明の実施形態に係る地熱発電装置1800の構成を示す概要図である。
図25は、第14実施形態にかかる熱交換器350の上方部分における液体取出管252と微小気泡生成ノズル221bを示す斜視図である。第12実施形態と同様の構成を示す箇所は、第12実施形態と同様の符号を付して表してあり、構成は第12実施形態と同様な個所の説明は省略する。
【0274】
第14実施形態にかかる地熱発電装置1800は、大別すると微小気泡生成装置440、循環サービスタンク230、熱交換器350、蒸気発生器260、フラッシャー270、蒸気タービン280、復水器290、加圧給水ポンプ241、低圧循環ポンプ242で構成されている。
【0275】
第12実施形態と異なる点のみ説明すると、微小気泡生成装置440が熱交換器350に設けられている。熱交換器350は、地表F近くに微小気泡生成装置440を設けている。微小気泡生成装置440は、加圧給水ポンプ241に接続される圧力注入管223bを、液体取出管252と加圧水注入管251の間にあって、加圧水注入管251の内周に沿って反時計回りの螺旋状に設けている。これは、加圧された水を加圧水注入管251の内周に沿って注入することで螺旋を描きながら圧力損失を低減しながらスムーズに水が降下するように設けられている。
【0276】
微小気泡生成装置440は、
図24及び
図22(B)に示すように、気体注入管222bを介して空気を供給する動力部224に図示しないエアコンプレッサー等を備えている。また、加圧給水ポンプ241で加圧した水を圧力注入管223bで供給し、空気と共に排出するためのノズル225bが設けられている。
微小気泡生成ノズル221bは、微小気泡生成ノズル221bの中間部に位置し、微小気泡生成ノズル221bの中に挿入された螺旋状の気泡カッター228が内蔵されている。その気泡カッター228の挿入中心から下流に微小気泡生成ノズル221bの周上に穿設された小孔229が設けられている。小孔229の外側には、空気室226が設けられている。そして、加圧した高圧水流を流すことで、動力部224の図示しないエアコンプレッサーで加圧された空気を伴って
図21に示すように微小気泡213が生成される。
【0277】
生成された微小気泡440は、加圧給水ポンプ241により、温水の中に溶存しながら熱交換器350の深部に移送された後、熱水となって蒸気発生器260に移送される。微小気泡213は、管内の抵抗が少なくなり圧力損失の低減を行うことが可能である。そのため、加圧給水ポンプ241や低圧循環ポンプ242の負担が少なくなる。微小気泡213を含んだ熱水は、マイクロバブルやナノバブルを多く含んでいるため、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面の表面積が増大している。これにより、蒸気発生器260で熱水が蒸気となる場合に、蒸気量が増大する効果を奏している。
【0278】
(第15実施形態)
第15実施形態にかかる地熱発電装置1900が
図26に示されている。
図26は、第15実施形態にかかる本発明の実施形態に係る地熱発電装置1900の構成を示す概要図である。第12実施形態と同様の構成を示す箇所は、第12実施形態と同様の符号を付して表してあり、構成は第12実施形態と同様な個所の説明は省略する。
【0279】
第15実施形態にかかる地熱発電装置1900は、大別すると微小気泡生成装置450、循環サービスタンク230、熱交換器250、蒸気発生器260、フラッシャー270、蒸気タービン280、復水器290、加圧給水ポンプ341、低圧循環ポンプ242で構成されている。
【0280】
第12実施形態と異なる点のみ説明すると、微小気泡生成装置450が加圧給水ポンプ341に接続されている。加圧給水ポンプ341は、空気を取り入れながら攪拌して
図21の微細気泡213を生成する構造となっている。
微小気泡生成装置450は、動力部224に図示しないエアコンプレッサーを搭載し、コンプレッサーで圧縮した空気を気体注入管222bを介して加圧給水ポンプ341に供給する。供給された空気は、加圧給水ポンプ341内の図示しない気泡カッターによって微小に形成される。加圧給水ポンプ341は、循環サービスタンク230からの水を加圧し、微小気泡213を溶存させて、熱水を熱交換器250に移送する。生成された微小気泡213は、加圧給水ポンプ341により、水の中に溶存しながら熱交換器250に移送された後、熱水となって蒸気発生器260に移送される。
【0281】
微小気泡213は、経路内の抵抗が少なくなり圧力損失の低減を行うことが可能である。そのため、加圧給水ポンプ341や低圧循環ポンプ242の負担が少なくなる。微小気泡213を含んだ熱水は、マイクロバブルやナノバブルを多く含んでいるため、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面の表面積が増大している。これにより、蒸気発生器260で熱水が蒸気となる場合に、蒸気量が増大する効果を奏している。
【0282】
(上記装置を利用して発電する発電方法)
図20及び
図21を参照して発電方法を説明すると、温度200℃前後の熱を地中で得るためにボーリングにより開けられた穴の深度は、地中700mから1500m程度まで達している。循環サービスタンク230の微小気泡213を含んだ水は、加圧給水ポンプ241により1.65Mpaに加圧され熱交換器250の加圧水注入管251に流量35.8t/hで送られ、地中深くの地熱帯Sまで移送される。例えば、230℃の地熱帯Sまで移送された水は、地熱帯Sからの熱を熱伝導性の良い加圧水注入管251から伝わり、最終的に200℃の熱水となる。そして、液体取出管252から取り出された温度190℃の熱水は、加圧給水ポンプ241により1.25Mpaに加圧され蒸気発生器260に移送される。
【0283】
蒸気発生器260で生成した蒸気は、配管261によって蒸気タービン280の高圧部に直接供給される。蒸気量が足りない場合は、蒸気発生器260で余った高温水をフラッシャー270で再度減圧沸騰させ、蒸気を発生させる。発生した蒸気は、配管271によって低圧部の蒸気タービン280へ供給される。
フラッシャー270に移送された温度162℃の熱水を、圧力0.65Mpaに減圧膨張させて蒸気流量2.14t/hの蒸気として蒸気タービン280に送り、蒸気タービン280の回転により発電される。この蒸気量により発電される発電量は102KWの出力が得られる。
【0284】
また、フラッシャー270から得られる温度157℃の還元水は、圧力0.57Mpaで循環サービスタンク230に移送され貯留される。蒸気タービン280からの温度103℃の蒸気は、復水器290で冷却水291によって再び温度80℃の温水へ凝縮される。この温水は、低圧循環ポンプ242によって圧力0.47Mpaで循環サービスタンク230へ移送される。
そして、循環サービスタンク230に貯留された温水は、微小気泡生成装置420で生成され微小気泡213を含み再び熱交換器250に加圧給水ポンプ241で送られる。これらシステムでは水を循環利用し、経路が閉塞型のシステムである。そのため、温泉水を汲み上げることなく発電が行われる環境に良いシステムである。
尚、この深度は地熱帯Sの熱源の温度に左右され、特に限定されるものではない。また、発電量も移送する熱水の量や温度を調整することで、1MW等やそれ以上の出力を得ることも可能である。
【0285】
(上記実施の形態から考えられるその他の技術的特徴)
微小気泡生成装置(440)は、螺旋状に形成し、液体を地熱帯へ移送する加圧水注入管(223b)を備えたことを特徴とする。このように構成することによって、加圧水注入管の内周に沿って液体(熱水)が遠心力を伴って抵抗なく導入され深部に移送されるので、圧力損失なく移送され加圧ポンプ(241)等の負担を少なくすることができる。
【0286】
微小気泡生成装置(440)は、加圧水注入管(223b)の螺旋に沿って微小気泡(213)を伴った液体(熱水)を排出するノズル(221b)を備えたことを特徴とする。このように構成することによって、加圧水注入管251の内周に沿って液体(熱水)が遠心力を伴って抵抗なく導入され深部に移送されるので、液体(熱水)が圧力損失なく移送され加圧給水ポンプ(241)等の負担を少なくすることができる。
【0287】
地熱発電装置(1600・1700・1800・1900)は、蒸気化するまでの間に微小気泡(213)を生成する微小気泡生成装置(420、430、440、0)を備え、前記微小気泡を溶存させた液体を蒸気化して発電することを特徴とする。
このように構成することによって、微小気泡を含んだ液体(熱水)は、通常の水よりも付加的な発泡核数及び気液界面(蒸発界面)の表面積が増大する。これにより、蒸気発生器で液体(熱水)が蒸気となる場合に、蒸気量を増すことができるので発電量を向上させることが可能となる。
【0288】
尚、上記実施の形態の中の微小気泡は、空気又は不活性ガス(窒素等)としても良く、窒素を使用することで安価であり、経路内の配管等の金属の酸化を防ぐことも可能である。また窒素は物性的に液体の流動抵抗をさらに低減することが可能である。以上のことから、経路内の抵抗が少なくなり圧力損失の低減を行うことが可能であるため、加圧給水ポンプ341や低圧循環ポンプ242の負担が少なくなる。
【0289】
これら微小気泡213を生成する微小気泡生成装置(20、120、220、450)は、様々な個所に設置することが考えられる。また、必ずしもエアコンプレッサー等の別の動力を使用しなければならないわけではなく、加圧給水ポンプ241や低圧循環ポンプ242の圧力を利用し温水や熱水を送り込み、各装置間の配管内やバイパス経路の配管の途中にベンチュリー管等を設置して、空気を自吸による送り込んで温水や熱水の中に微小気泡213を生成することも可能である。
【0290】
本発明にかかる媒体移送管510及び地熱発電装置2000の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0291】
(第16実施形態)
第16実施形態にかかる媒体移送管510及び地熱発電装置2000が
図27乃至
図35に示されている。
図27は、第16実施形態にかかる本発明の地熱発電装置2000の構成を示す概要図である。
図28は、第16実施形態にかかる本発明の媒体移送管510の媒体注入管511の接続部分を中心に拡大した斜視図である。
図29は、第16実施形態にかかる本発明の媒体移送管510の軸上の断面図である。
図30は、第16実施形態にかかる本発明の媒体移送管510の媒体注入管511を接続する接続管512の斜視図である。
図31は、第16実施形態にかかる本発明の媒体移送管510の媒体注入管511の
図28に示すA−A部分で切断した断面の一部分を示す拡大断面図である。
図32は、第16実施形態にかかる本発明の媒体移送管510の媒体取出管521の接続管530を中心に拡大した斜視図である。
図33は、第16実施形態にかかる本発明の媒体移送管510の媒体取出管521の接続部分を中心に拡大した正面図である。
図34は、第16実施形態にかかる本発明の媒体取出管521の平面の中心を垂直に切断した際の断面図である。
図35は、第16実施形態にかかる本発明の媒体移送管510の整流部540の斜視図である。
【0292】
図27を参照して第16実施形態にかかる地熱発電装置2000を説明すると、地熱発電装置2000は、貯留タンクとしての循環サービスタンク505、媒体移送管510、蒸気発生器560、フラッシャー(気水分離器)570、蒸気タービン580、復水器590、加圧給水ポンプ506、低圧循環ポンプ507で構成されている。
【0293】
地熱発電装置2000は、蒸気タービン580に蒸気を供給することで、発電モータ581を回転させて発電を行い、送電設備582に電気を供給し送電網を介して電力会社等に電気を供給するものである。蒸気タービン580は、タービン形式だけでなくスクリュー形式のもの等であってもよく、蒸気によって発電可能なものであればよい。
蒸気タービン580に供給される蒸気は、熱水を減圧沸騰させて蒸気発生器560で生成される。生成した蒸気は、熱水と共に汽水分離器570に送られる。汽水分離器570は、熱水と、発生した蒸気を分離させて、蒸気を蒸気タービン580に供給する。
【0294】
熱水は、すべて蒸気とされることがないため、汽水分離器570からの還元水は、循環サービスタンク505に貯められる。また、復水器590は、蒸気タービン580で使用された蒸気を冷却水591で再び水へ凝縮させる装置である。凝縮された温水は、低圧循環ポンプ507で循環サービスタンク505へ移送される。
【0295】
循環サービスタンク505は、汽水分離器570からの還元水と復水器590から低圧循環ポンプ507で移送された温水を貯めている。貯められた温水は、再度地熱帯Sのある深部で熱水として熱交換されるように後述する媒体移送管510へ加圧給水ポンプ506で移送される。
【0296】
次に、
図27乃至
図35を参照して媒体移送管510を説明する。地表Fから地中深部にある熱源となる地熱帯Sまで媒体移送管510が埋設されている。媒体移送管510は、外側に円筒状の媒体注入管511が埋設され、その媒体注入管511の周囲は地表Fから地熱帯付近までは地熱セメントによって固められている。媒体注入管511の内側には地熱帯Sで熱せられた水を移送する円筒状の媒体取出管521が設けられている。
【0297】
図28乃至
図31を参照して媒体注入管511を説明する。媒体注入管511は、スチールやステンレス等の素材で形成されている。温度の高い地熱帯Sの領域では、媒体注入管511は、外周に地熱帯Sの熱が伝わりやすいように、断面が円形の円柱状のフィン513が溶接されており、
図31に示すようにフィン513の端部と中間に数カ所溶接した溶接塊515が設けられている。その他の箇所は、耐腐食性や伝熱性を向上させるために溶射加工によってアルミ又はアルミと鉛を混合した材料で被膜層516が設けられている。被膜層516は、フィン513の近傍の被膜層516Aと媒体注入管511の被膜層516Bとでは、被膜の厚みが異なり、伝熱性を高めるため被膜層516Bは薄くされており、被膜層516Aは強度と表面積を向上させるため厚く形成されている。被膜層516Bは、約0.1mmとし、被膜層516Aは、約0.5mmとしている。
【0298】
フィン513は、断面形状を円形で説明したが、三角形状、四角形状、多角形、楕円形状等であってもよく、表面積が増加する形状であれば良い。媒体注入管511は、地表Fに近い温度の低い領域では、循環サービスタンク505から加圧されて注入される温水の熱が奪われないように断熱材や空気層を設けた断熱構造がとられている。
【0299】
図28乃至
図30を参照して接続管512を説明する。接続管512は、媒体注入管511同士を接続するための管であり、媒体注入管511の両端に設けられた図示しないネジ溝と螺合するように内側に螺合溝514が形成されている。媒体注入管511は、約10mの長さで形成されており、約10m間隔で接続管512を使用して連結されている。
【0300】
次に、媒体取出管521及び整流部540を、
図29及び
図32乃至
図35を参照して説明する。媒体取出管521は、媒体注入管511の内側であって同軸上に円筒状に形成されている。媒体取出管521は、
図34に示すように断面が外側部524と中側部との間に空気層523を形成する2重構造となっている。この2重構造により、断熱効果だけでなく、体積が増し密度を小さくし水に近づけることで、設置する際に媒体としての水を媒体注入管511に注入した後、この2重構造を取った媒体取出管521を水の中に沈めていくことで浮力が発生し、媒体取出管521を吊る装置への荷重を軽減することが可能となる。
【0301】
また、
図34に示すように媒体注入管511と同様に、接続管530は媒体取出管521同士を接続するための管であり、媒体取出管521の両端に設けられたネジ溝525と螺合するように内側に螺合溝531が形成されている。媒体取出管521は、約10mの長さで形成されており、約10m間隔で接続管530を使用して連結されている。
【0302】
整流部540は、
図29、
図32、
図33及び
図35に示すように、媒体取出管521の同軸上に胴体部としての円形の環状のリング部542を上下に設けている。リング部542の間は、空間となっており、リング部542は、整流片541の上端を上方のリング部542と溶接し、整流片541の下端を下方のリング部542と溶接することで固定されている。リング部542は、内径が媒体取出管521よりも大きく、接続管530の外径よりも小さく形成されている。
【0303】
リング部542は、このような内径の寸法とすることで、媒体取出管521の上方から挿入可能であり接続部530の上端で止まる構造となる。このような構造とすることで、整流部540は、媒体取出管521の上方から挿入して落下させるのみの動作で、接続管530が接続部530に留まり施工が容易となる。整流部540は、約10mの間隔で接続管530の上方に位置している。リング部542は、平面からみて円形に形成したが、特に限定することなく四角形、三角形、多角形又は楕円形等であっても良い。
【0304】
整流片541は、ステンレス等の金属製の平板を、側端を媒体取出管521の外周及び媒体注入管511の内周に沿って切り出し、上下端は、リング部542との上端と水平になるように切り出して形成されている。整流片541は、平面から見てリング部542の中心軸Yを中心として、略90度の角度毎に配列し媒体注入管511に向って4枚設けられている。
【0305】
また、
図33に示すように、整流片541が傾斜して溶接されている角度αは、媒体取出管521又はリング部542の中心軸Yの垂線となす角度として、略45度から75度が最適であり、60度が最も良い角度である。
この整流片541は、特に地熱帯Sに設けられ、加圧された温水を矢印に(逆時計回りに)沿って導くことによって、加圧された温水を螺旋状に旋回しながら下降させ、圧力損失が生じないように最下部まで温水を導いている。また、整流片541は、地熱帯Sで熱せられた熱水の逆流を複数の整流片541により防いでいる。さらに、整流片541は、媒体取出管521の軸中心を偏らせない機能として振れ止めとなる機能を備えている。以下の実施例においても整流片541は同様な作用効果を奏している。
【0306】
整流部540は、媒体取出管521の外周に沿って断面円形の線状の棒が螺旋状に旋回された螺旋棒543が設けられている。
図33に示すように、螺旋棒543が旋回されている螺旋の角度αは、媒体取出管521又はリング部542の中心軸Yの垂線となす角度として、略45度から75度が最適であり、60度が最も良い角度である。螺旋棒543を支持するために、媒体取出管521の外周に沿って断面円形の線状の支持棒544が、リング部542から斜めに直線状に延設されており、螺旋棒543は、支持棒544と1カ所で溶接されている。螺旋棒543は、螺旋の状態で媒体取出管521の全長の約1/2の全長5mで形成されている。
【0307】
また、螺旋棒543又は支持棒544は、リング部542又は整流片541の外周と溶接され整流部540として一体構造となっている。螺旋棒543は、媒体取出管521の外周を螺旋状に旋回されているため、加圧された温水を矢印に(逆時計回りに)沿って導くことによって、加圧された温水を螺旋状に旋回しながら下降させ、圧力損失が生じないように最下部まで温水を導いている。また、螺旋棒543は、地熱帯Sで熱せられた熱水の逆流を複数箇所で防いでいる。さらに、重量を軽量化しながらも媒体の流下させる方向を制御することができる。螺旋棒543又は支持棒544は、断面形状を円形で説明したが、三角形状、四角形状、多角形又は楕円形状等であってもよく、内部は軽量化できるように空洞であってもよく媒体の流下させる方向を制御できる形状であれば良い。また、螺旋棒543は、コイルスプリングを延ばして形成することも可能であり簡単に製造が可能である。
【0308】
(第17実施形態)
第17実施形態にかかる媒体移送管610が
図36乃至
図39及び
図48に示されている。
図36は、第17実施形態にかかる本発明の媒体移送管610の媒体取出管621の接続部分を中心に拡大した斜視図である。
図37は、第17実施形態にかかる本発明の媒体移送管610の軸上の断面図である。
図38は、第17実施形態にかかる本発明の媒体移送管610の媒体取出管621の接続部分を中心に拡大した正面図である。
図39は、第17実施形態にかかる本発明の媒体移送管610の整流部550の斜視図である。
図48は、第17実施形態にかかる本発明の
図38の整流部550の整流片551のZ−Z断面図である。第16実施形態と同様の構成を示す箇所は、第16実施形態と同様の符号を付して表してあり、構成は第16実施形態と同様な個所の説明は省略する。
【0309】
また、
図36に示すように媒体注入管511と同様に、接続管630は媒体取出管621同士を接続するための管である。接続管630は、媒体取出管621の両端に設けられた図示しないネジ溝525と螺合するように内側に図示しない螺合溝531が形成されている。媒体取出管621は、約10mの長さで形成されており、約10m間隔で接続管630を使用して連結されている。
【0310】
整流部550は、
図36乃至
図39に示すように、媒体取出管621と同軸上に胴体部として環状のリング部552を設けている。リング部552は、リング部552の外周に沿って整流片551の側面を溶接して固定されている。リング部552は、内径が媒体取出管621よりも大きく、また接続管630の外径よりも小さく形成されている。リング部552は、このような内径の寸法とすることで、媒体取出管621の上方から挿入可能であり接続部630の上端で止まる構造となる。このような構造とすることで、整流部550は、媒体取出管621の上方から挿入して落下させることにより接続管630で留まり施工が容易となる。整流部550は、約10m間隔で接続管630の上方に位置している。
【0311】
整流片551は、ステンレス等の金属製の平板を、上下端は、側端をリング部552の外周及び媒体注入管511の内周に沿って切り出し、上下端は、リング部552の上端と水平になるように切り出して形成されている。整流片551は、平面から見てリング部552の中心軸Yを中心として、略60度の角度毎に配列し媒体注入管511に向って6枚設けられている。整流部550は、平面から見ると整流片551が隙間なく流路を閉塞した位置に配置されているので、地熱帯Sで熱せられた熱水の逆流を複数箇所で防ぎ、より逆流防止効果がある。
【0312】
また、
図38に示すように、整流片551が傾斜して溶接されている角度αは、媒体取出管621又はリング部552の中心軸Yの垂線となす角度として、略45度から75度が最適であり、60度が最も良い角度である。この整流片551は、特に地熱帯Sに設けられ、加圧された温水を矢印に(逆時計回りに)沿って導くことによって、加圧された温水を螺旋状に旋回しながら下降させ、圧力損失が生じないように最下部まで温水を導いている。
【0313】
図48に示すように、
図48(A)は、整流片551の別例としての
図38に示す整流片551のZ−Zの断面図である。整流片551の整流先端553は、流下する温水も抵抗を緩和して下流に導くため傾斜が設けられている。この整流先端553は、渦流や乱流を低減している。
図48(B)は、整流片551の別例としての
図38に示す整流片551のZ−Zの断面図である。整流片551の整流先端554は、流下する温水の抵抗を緩和して下流に導くため飛行機の羽根のように先端が膨らみ下流が絞られている。この整流先端553は、渦流や乱流を低減している。また直線上に絞られているが、片側に湾曲して飛行機の翼のように構成しても良い。
図48の構造は、以下の実施形態に適用することができる。
【0314】
(第18実施形態)
第18実施形態にかかる整流部750が
図40及び
図41に示されている。
図40は、第18実施形態にかかる本発明の媒体移送管710の整流部750の斜視図である。
図41は、第18実施形態にかかる本発明の媒体移送管710の整流部250の一部分の拡大図であり、
図40に示されるCの点を拡大した側面図である。
第16実施形態及び第17実施形態と同様の構成を示す箇所は、第16実施形態及び第17実施形態と同様の符号を付して表してあり、構成は第16実施形態と同様な個所の説明は省略する。
【0315】
図示しない媒体取出管と同軸上に胴体部として環状の接続管730を設けている。接続管730は、内周に図示しない媒体取出管のネジ溝525と螺合する螺合溝731が形成されている。接続管730は上下に媒体取出管621が接続される。また、接続管730は、外周に整流片751を溶接等によって固定され、取り付けられる角度及び枚数は第16実施形態と同様である。
そして、これら整流片751は、特に地熱帯Sに設けられ、加圧された温水を整流片751に沿って導くことによって、加圧された温水を螺旋状に旋回しながら下降させ、圧力損失が生じないように最下部まで温水を導いている。また、整流片751は、地熱帯Sで熱せられた熱水の逆流を複数箇所で防いでいる。
【0316】
図41に示すように接続管730の上方には、所定の角度45度から60度の傾斜となった導入部733が設けられている。導入部733は、加圧された温水を螺旋状に旋回しながら下降する際に、整流片751に乱流や渦流が形成されないように温水を導入している。このように導入部733によって温水を圧力損失が生じず下降させることができる。
【0317】
(第19実施形態)
第19実施形態にかかる媒体移送管810が
図42乃至
図45に示されている。
図42は、第19実施形態にかかる本発明の媒体移送管810の軸上の断面図である。
図43は、第19実施形態にかかる本発明の媒体移送管810の媒体注入管811を斜め上方から見た斜視図である。
図44は、第19実施形態にかかる本発明の媒体移送管810の媒体取出管821の斜視図である。
図45は、第19実施形態にかかる本発明の媒体移送管810の媒体注入管811を垂直方向に切断し、媒体取出管321を表した斜視図である。
第16実施形態乃至第18実施形態と同様の構成を示す箇所は、第16実施形態乃至第18実施形態と同様の符号を付して表してあり、構成は第16実施形態と同様な個所の説明は省略する。
【0318】
媒体移送管810は、媒体取出管821と媒体注入管811とで構成されている。媒体注入管811の内周には所定の幅と深さを持った螺旋溝845が螺旋状に先端から終端まで設けられている。
この螺旋の角度は第16実施形態と同様に正面から見て、媒体注入管811の中心軸との垂線となす角度は、略45度から75度が最適で、60度が最も良い角度である。
螺旋溝845の個数や形状は、特に限定されず、軸上の周囲全体に渡って凹凸となるように設けても良い。
そして、これら螺旋溝845は、特に地熱帯Sに設けられ、加圧された温水を螺旋溝845に沿って導くことによって、加圧された温水を螺旋状に旋回しながら下降させ、圧力損失が生じないように最下部まで温水を導いている。また、螺旋溝845は、地熱帯Sで熱せられた熱水の逆流を複数箇所で防いでいる。
【0319】
媒体移送管810は、媒体取出管821の外周に沿って断面円形の線状の棒を螺旋状に旋回した螺旋棒843を先端から終端まで設けている。第16実施形態と同様に螺旋棒843が旋回されている螺旋の角度は、媒体取出管821の中心軸の垂線となす角度として、略45度から75度が最適であり、60度が最も良い角度である。
そして、これら螺旋棒843は、特に地熱帯Sに設けられ、加圧された温水を螺旋棒843に沿って導くことによって、加圧された温水を螺旋状に旋回しながら下降させ、圧力損失が生じないように最下部まで温水を導いている。
【0320】
また、螺旋溝845と螺旋棒843とは、対面して配置され先端から終端まで螺旋状に旋回されている。螺旋溝845と螺旋棒843とは、各々で効果が認められるが、螺旋溝845と螺旋棒843とで、さらに螺旋状に旋回させながらスムーズに下降させるという効果を奏している。螺旋溝845と螺旋棒843は、一対で複数設けられているが、特に限定されることなく1組であっても良い。
【0321】
(第20実施形態)
第20実施形態にかかる媒体移送管910が
図46及び
図47に示されている。
図46は、第20実施形態にかかる本発明の媒体移送管910の媒体注入管911を垂直方向に切断し、接続環946を表した斜視図である。
図47は、第20実施形態にかかる本発明の整流部940を表した斜視図である。
第16実施形態乃至第19実施形態と同様の構成を示す箇所は、第16実施形態乃至第19実施形態と同様の符号を付して表してあり、構成は第16実施形態と同様な個所の説明は省略する。
【0322】
整流部940は、上端に環状の接続リング946が設けられており、接続リング946の下方には、媒体注入管910の内周に沿って断面円形の線状の棒を螺旋状に旋回された螺旋棒943が先端から終端まで設けられている。第1実施例と同様に螺旋棒943が旋回されている螺旋の角度は、媒体注入管910の中心軸の垂線となす角度として、略45度から75度が最適であり、60度が最も良い角度である。
媒体注入管910と同軸上に環状の接続管912を設けている。接続管912は、内周に媒体注入管911のネジ溝925と螺合する螺合溝914が形成されている。接続管912は、上下に媒体注入管911を連結している。
【0323】
接続リング946は、媒体注入管911同士の隙間に固定されている。このように固定することで強固に固定できると共に、媒体取出管821が容易に挿入可能である。また、螺旋棒943は、特に地熱帯Sに設けられ、加圧された温水を螺旋棒943に沿って導くことによって、加圧された温水を螺旋状に旋回しながら下降させ、圧力損失が生じないように最下部まで温水を導いている。
【0324】
(上記装置を利用して発電する発電方法)
図27を参照して発電方法を説明すると、200℃前後の熱を地中で得るためにボーリングにより開けられた穴の深度は、地中700mから1500m程度まで達している。
この地中には、媒体移送管510が埋設されており、媒体移送管510は、地中と接する外側に媒体注入管511が連結されて地中深くまで達している。また、媒体注入管511は、媒体注入管511の内側に媒体取出管521が連結されて媒体注入管511の底部まで達している。これら媒体移送管510を地熱帯Sから得られる熱を吸収する熱交換器として利用し、媒体を蒸発させて蒸気タービンを介して発電を行っている。以下に発電する方法について詳述する。
【0325】
循環サービスタンク505の温水は、加圧給水ポンプ5066により1.65Mpaに加圧され媒体移送管510の媒体注入管511に流量35.8t/hで送られ、地中深くの地熱帯Sまで移送される。例えば、230℃の地熱帯Sまで移送された温水は、地熱帯Sからの熱を熱伝導性の良い媒体注入管511から伝わり、最終的に200℃の熱水となる。そして、媒体取出管521から取り出された温度は190℃の熱水は、加圧給水ポンプ506により媒体取出管521を介して1.25Mpaに加圧され蒸気発生器560に移送される。
【0326】
蒸気発生器560は、温度162℃の熱水を、圧力0.65Mpaに減圧膨張させて蒸気流量の2.14t/hの蒸気を発生させる。汽水分離器570は、蒸気を蒸気タービン580に送り、蒸気タービン580の回転により発電される。この蒸気量により発電される発電量は102KWの出力が得られる。
また、汽水分離器570は、蒸気にならずに残った水が温度157℃の還元水として、圧力0.57Mpaで循環サービスタンク505に移送され貯留される。また、蒸気タービン580からの103℃蒸気は、復水器590で冷却水591によって再び温度80℃の温水へ凝縮される。この温水は、低圧循環ポンプ507によって圧力0.47Mpaで循環サービスタンク505へ移送される。
【0327】
そして、循環サービスタンク505に貯留された温水は、再び媒体移送管510に加圧給水ポンプ506で送られる。これらシステムでは水を循環利用し、経路が閉塞型のシステムである。そのため、温泉水を汲み上げることなく発電が行われる環境に良いシステムである。
尚、この深度は地熱帯Sの熱源の温度に左右され、特に限定されるものではない。また、発電量も移送する熱水の量を調整することで、1MW等やそれ以上の出力を得ることも可能である。
【0328】
(上記第16実施形態〜第20実施形態から考えられるその他の技術的特徴)
尚、媒体取出管821の外周に、媒体注入管811の螺旋溝845と同様な螺旋状の螺旋溝を形成しても良い。その際、螺旋溝同士が対面するように設けると良い。そうすることによって、螺旋に沿って温水が導入されやすくなり加圧された温水を螺旋状に旋回しながら下降させ、圧力損失が生じないように最下部まで温水を導くことができる。
尚、ここで媒体とは、熱水、温水、蒸気、不活性ガス又はバイナリー発電で利用される水より沸点が低い媒体(水とアンモニアの混合物等)が考えられる。
尚、本実施例では、整流部の機能として媒体注入管の媒体を流下させる構造で説明したが、整流部は媒体取出管から媒体を取り出す際の上昇流を制御することにも使用することが可能である。特に螺旋棒や螺旋溝を媒体取出管の内周に設けることも考えられる。
整流部は、媒体取出管の近傍に設置することで、圧力損失することなく媒体取出管への導入を容易にすることが可能となる。螺旋回転しながら媒体取出管への導入を補助することができる。
【0329】
(第21実施形態)
第21実施形態にかかる媒体移送管1010が
図23に示されている。本第21実施形態にかかる媒体移送管1010は、前述した第1実施形態から第20実施形態に適用可能なものである。
図23は、第21実施形態にかかる本発明の媒体移送管1010の構成を示す概要図である。
【0330】
次に、
図23及び
図24を参照して媒体移送管1010を説明する。上述したように媒体移送管1010は、地表から地中深部にある熱源となる地熱帯までが埋設される。媒体移送管1010は、外側に円筒状の媒体注入管1011が埋設され、その媒体注入管1011の周囲は地表から地熱帯付近までは地熱セメントによって固められている。媒体注入管1011の内側には地熱帯で熱せられた水を移送する円筒状の媒体取出管1012が設けられている。
【0331】
第21実施形態にかかる媒体移送管1010は、
図23に示すように、媒体移送管1010の最下端に媒体移送管1010より細い管からなる伝熱管1013を備えている。伝熱管1013は、スチールやステンレス等の素材で形成されている。伝熱管1013は、両方の端部が媒体移送管1010内に配置されており、媒体移送管1010内を流れて来た媒体が伝熱管1013内を通過することによって、地熱をより高い効率で媒体に伝熱する機能を有する。伝熱管1013は、一方端部の開口が前記媒体取出管1012と媒体注入管1011の間に配置され、他方端部の開口が媒体取出管1012の下方側に配置されることが好ましい。かかる位置関係に配置されることによって、一方端部近傍は、媒体が下方方向に流れているので正圧がかかり、伝熱管1013内に媒体が流れやすくなり、他方端部近傍は、媒体が上昇しているので、開口付近が負圧となり媒体が取り出される方向に力がかかるため、効率よく媒体を伝熱管1013内に流すことができる。より好ましくは、
図23の点線で示したように、他方端部の伝熱管1013をさらに媒体取出管の内側まで上方に延設して設けてもよい。伝熱管1013の本数は、特に限定するものではない。例えば、
図24に示すように、放射状に伝熱管1013を複数本設けるとよい。伝熱管1013の形態は、特に限定するものではなく、
図23に示すようにU字状に設けても良いし、
図25に示すように、媒体注入管1011の外周より外側に配置されるように設けても良い。また、伝熱性をさらに向上させるために、螺旋状等に形成しても構わない。さらに、伝熱管1013を保護するために、伝熱管1013を取り囲むように保護壁を設けても良い。
【0332】
(第22実施形態)
第22実施形態にかかる媒体移送管1110の設置方法が図に示されている。本第22実施形態にかかる媒体移送管1110は、前述した第1実施形態から第20実施形態に適用可能なものである。
【0333】
第22実施形態にかかる媒体移送管1110に使用される媒体移送管は特に限定するものではなく、地熱帯Sの熱によって熱せられた媒体を蒸気化することによって発電する地熱発電装置に使用され、前記媒体を移送する媒体移送管であれば、どのような形態の媒体移送管であっても構わない。
【0334】
第22実施形態にかかる媒体移送管1110の設置方法は、少なくとも一部が前記乾燥破砕帯F又は液体で充填していない前記破砕帯Fに水又は泥水等の液体を流入し、媒体移送管1110の周囲に貯水槽の機能を有する貯水領域を積極的に形成する方法である。かかる方法により媒体移送管1110を設置することによって、
図52に示すように、地熱セメントCの下方側の全部又は一部において、媒体移送管1110は液体に接することになるため、熱効率を高める。また、水又は泥水等の液体を破砕帯Fに流入することで破砕帯Fの地耐圧を向上させる効果を有する。
【0335】
破砕帯Fに水又は泥水を流入させる方法としては、坑井掘削終了後に水又は泥水等の液体を流入してもよいし、
図53に示すように、水掘削又は泥水掘削を行いビットから流出した水又は泥水をそのまま利用して破砕帯Fに流入させてもよい。最初はエアドリリングで掘削し、破砕帯Fに近づいてから水掘削又は泥水掘削に切り替えても良い。水掘削又は泥水掘削の場合は、削り屑がそのまま坑井の底部において破砕帯と同様の機能を有するので破砕帯F近傍においては削り屑を地上に回収しなくても構わない。泥水掘削に使用する泥水は、破砕帯Fに浸透させやすくすることと、削り屑は泥水中を沈降させても構わないため、低粘度の泥水を使用するとよい。
【0336】
このように破砕帯Fに水又は泥水等の液体を流入し、媒体移送管1110の周囲に貯水領域を設けることによって、媒体移送管1110に対し熱せられた液体が媒体移送管1110に接するため、より効率よく媒体移送管1110に熱を伝熱することができる。また、貯水領域を設けることによって、貯水領域において液体の対流が起こりやすくなるため、媒体移送管1110の貯水領域を設けない場合と比較して、より遠くの熱源から熱を回収することができる。対流を起こし易くするために、温度勾配のある破砕帯領域で貯水領域を形成することが好ましい。また、破砕帯Fに水又は泥水等の液体を流入することで破砕帯Vの隙間が液体で満たされるため、地耐圧の向上を図ることもできる。
【0337】
(第23実施形態)
第23実施形態にかかる媒体移送管1110の設置方法が図に示されている。本第22実施形態にかかる媒体移送管1110は、前述した第1実施形態から第20実施形態に適用可能なものである。
【0338】
第23実施形態にかかる媒体移送管1110の設置方法は、第22実施形態にかかる媒体移送管1110の設置方法は、前記乾燥破砕帯又は液体で充填していない前記破砕帯に媒体移送管1110を設置する方法であったのに対し、第23実施形態にかかる媒体移送管1110の設置方法は、媒体移送管1110を設置する場所をダイナマイト等の爆発物、水圧破砕その他の方法によって人工的に破砕して地熱帯の坑井に人工破砕帯を形成するものである。人工的に破砕帯を形成した後に水又は泥水等の液体を流入することで媒体移送管1110の周囲に貯水領域を作製することができる。その他の点は第22実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0339】
第21実施形態及び第22実施形態にかかる媒体移送管1110の設置方法によって設置された媒体移送管1110は、第1実施形態から第20実施形態と組み合わせて使用することができ、前述した発電装置又は発電方向に適用することによって効率的に熱を地熱から回収することができる。
【0340】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。