(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、クロージャ内に浸水検知モジュールを配置した様子を示す図である。クロージャ100は、地下に敷設されているケーブル200の接続点に設けられる。クロージャ100は気密性が高く、クロージャ100が設けられた地下設備が水没してもクロージャ100内に水が侵入しにくい設計となっている。クロージャ100内に水が侵入したことを早期発見するために、浸水検知モジュール1をクロージャ100内の底部付近に設置する。
【0016】
図2は、第1の実施の形態の浸水検知モジュール1の構成を示す平面模式図である。
図3は、
図2の浸水検知モジュール1が浸水したときの様子を示す平面模式図である。
【0017】
浸水検知モジュール1は、通信用とは別の保守用の若番光心線201と老番光心線202に取り付けられる。若番光心線201と老番光心線202は光心線固定部20により固定されて、ケース10内を通される。より具体的には、若番光心線201は2つの心線ガイド21を通って配置され、老番光心線202は心線ガイド21を通さず、例えばケース10内の外周近くを通される。
【0018】
浸水検知モジュール1は、ケース10内に浮き子11および浮き子11と連動して動く曲げ部12を有する。図示していないが、ケース10は、ケース10内に水を流入させるための開口部を備える。クロージャ100内に侵入した水は、開口部からケース10内に侵入する。ケース10の材料として樹脂を用いることができるが、これに限定するものではない。
【0019】
浮き子11と曲げ部12は回転部13に取り付けられる。回転部13は支点14を中心に回転可能にケース10に固定される。浮き子11は、ケース10内に水が侵入した場合に浮き上がるように、発泡スチロールなどの水に浮く材料で構成する。曲げ部12は、浮き子11と連動して動き、ケース10内に水が侵入していないときは若番光心線201に接触せず、ケース10内に水が侵入したときに心線ガイド21間の若番光心線201を押し曲げて曲げ損失を与える。具体的には、ケース10内に水が侵入すると、浮き子11が浮き上がり、浮き子11の動きに連動して回転部13が支点14を中心に回転する。曲げ部12は、回転部13の回転に合わせて上方へ移動し、心線ガイド21間の若番光心線201を押し曲げて曲げ損失を与える。曲げ部12の形状は軸状であるがこの形状に限定するものではなく、若番光心線201に曲げ損失を与えられる形状であればよい。なお、心線ガイド21を通していない老番光心線202は、浸水時にも曲げ損失が与えられない。
【0020】
浸水時、曲げ部12が若番光心線201に与えた曲げ損失をOTDRにより検出することで、浸水したクロージャ100を検知できる。
【0021】
浮き子11から見て支点14の反対側の回転部13の下側に支え軸15が取り付けられる。支え軸15の下側に所定の範囲内で上下に可動な磁石16が配置される。
図3に示すように、浸水時に、クロージャ100の外部の底に、磁石16の下面と同じ磁極の磁石30を近づけると、ケース10内の磁石16が反発して上に動き、支え軸15が磁石16に押されて回転部13が浸水時とは逆方向に回転する。その結果、曲げ部12が下がり、一時的に若番光心線201の押し曲げを解除できる。例えば、複数のクロージャ100で浸水が発生している場合に、上流のクロージャ100の浸水検知モジュール1で与えた曲げ損失を一時的に解除することで、下流のクロージャ100の浸水検知モジュール1の曲げ損失を検出できる。
【0022】
復旧時、クロージャ100内から排水されると、ケース10内の水も無くなり、浮き子11が下がる。浮き子11の動きに連動して回転部13が浸水時とは逆方向に回転する。曲げ部12は、回転部13の回転に合わせて下方へ移動し、浸水発生前の通常状態に戻る。排水されると浸水検知モジュール1は通常状態に戻り再利用できるので、クロージャ100を補修後、浸水した浸水検知モジュール1を新たなものに取り替える必要がない。
【0023】
図2,3の浸水検知モジュール1の浮き子11は、浸水状況によっては水面で上下に動き、若番光心線201に適切な曲げ損失を与えられないことが考えられる。そこで、
図4に示す浸水検知モジュール1は、
図2,3の浸水検知モジュール1に対して、曲げ部12の先端と曲げ部12の受け側のそれぞれに磁石17,18を配置した。
【0024】
浸水時、曲げ部12が上方に移動すると磁石17,18が互いに引き合い、若番光心線201を挟んで吸着する。そのため、浮き子11が水面で上下に動きにくくなり、確実に若番光心線201に曲げ損失を与えられるようになる。磁石17,18の形状は、適切な曲げ損失を与えることができる形状にする。
【0025】
曲げ部12の先端が磁石18に引き寄せられればよいので、磁石17,18のどちらかを鉄などの磁石にくっつく材料としてもよい。
【0026】
(第1の実施の形態の変形例1)
図5は、第1の実施の形態の変形例1の浸水検知モジュール1の構成を示す平面模式図である。
【0027】
変形例1の浸水検知モジュール1は、回転部13を備えていない点で
図2〜4の浸水検知モジュール1と異なる。変形例1の浸水検知モジュール1は、浮き子11の上面に曲げ部12を取り付けた。
【0028】
ケース10は、
図2〜4の浸水検知モジュール1と同様のものを利用できる。若番光心線201および老番光心線202への取り付け方も
図2〜4の浸水検知モジュール1と同様に、若番光心線201は2つの心線ガイド21を通して配置し、老番光心線202は心線ガイド21を通さず、例えばケース10内の外周近くに配置する。
【0029】
浮き子11は、上下のみに可動で、左右には動かないように配置する。例えば、ケース10内面に浮き子11の左右への動きを制限するガイドを設けても良い。
【0030】
曲げ部12を磁石とし、
図4と同様に、曲げ部12の受け側に磁石18を配置した。浸水時、曲げ部12が上昇すると磁石18に引き寄せられ、若番光心線201を挟む。曲げ部12および磁石18の形状は、心線ガイド21間の若番光心線201に適切な曲げ損失を与えられる形状とする。
【0031】
復旧時、曲げ部12の重みにより、浮き子11が下にさがり、若番光心線201の曲げが復旧する。なお、ケース10の開口部から浮き子11を手動で下げられるようにしてもよい。
【0032】
(第1の実施の形態の変形例2)
図6は、第1の実施の形態の変形例2の浸水検知モジュール1の構成を示す斜視模式図であり、
図7は、その断面の構造を示す断面模式図である。
【0033】
変形例2の浸水検知モジュール1も浮き子11の動きに連動して曲げ部12が動き、若番光心線201を押し曲げで曲げ損失を与える点で、
図2〜5の浸水検知モジュール1と同様である。
【0034】
変形例2のケース10は、側面の一部に平らな平面を備える円柱状である。浸水検知モジュール1は、平面を下に向けてクロージャ100内に配置する。図示していないが、ケース10は、ケース10内に水を流入させるための開口部を備える。
【0035】
図2〜5と同様に、若番光心線201は2つの心線ガイド21を通って配置され、老番光心線202は心線ガイドを通さず、曲げ部12に押し曲げられない位置に配置される。
【0036】
ケース10の中心線に沿って、軸回りに回転可能な回転軸19が配置される。
【0037】
浮き子11および曲げ部12は回転軸19に固定される。具体的には、
図6に示すように、ケース10の両端側に一つずつの浮き子11が配置され、2つの浮き子11の間に曲げ部12が配置される。浮き子11は軸回りに回転移動し、浮き子11の移動に伴って回転軸19が回転し、さらに曲げ部12も軸回りに回転移動する。
【0038】
浮き子11は、半円柱形状であり、浮き子11の中心からずらした位置が回転軸19に固定される。水位が上昇した場合、浮き子11は
図7の矢印に示す方向に回転する。浮き子11の形状および固定位置は、これに限定するものではなく、浮き子11の回転方向を一定方向に制御できるものであればよい。
【0039】
曲げ部12は、回転軸19に固定された軸である。曲げ部12の形状はこれに限定するものではなく、若番光心線201に適切な曲げ損失を与えることができる形状であればよい。
図4の浸水検知モジュール1のように、曲げ部12および曲げ部12の受け側に磁石を配置してもよい。
【0040】
浸水時、浮き子11の回転に応じて曲げ部12も軸回りに回転し、若番光心線201を押し曲げて曲げ損失を与える。曲げ部12は、
図7の横方向から若番光心線201を押し曲げる。
【0041】
復旧時、浮き子11および曲げ部12の重みにより、回転軸19が浸水時とは逆方向に回転し、曲げ部12による若番光心線201の押し曲げが解除されて、浸水発生前の通常状態に戻る。
【0042】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態の浸水検知モジュールは、浮き子11と連動して動く曲げ部12が若番光心線201に曲げ損失を与えていたが、第2の実施の形態の浸水検知モジュールは、曲げ部12を備えず、浮き子11が若番光心線201に曲げ損失を与える。
【0043】
図8は、第2の実施の形態の浸水検知モジュール1の構成を示す模式図である。
図9は、その断面の構造を示す断面模式図である。
【0044】
図8,9のケース10は円柱状である。浸水検知モジュール1の上下は気にせずに、クロージャ100内に水平に設置すればよく、クロージャ内の広範囲の位置で使用可能である。図示していないが、ケース10は、ケース10内に水を流入させるための開口部を備える。
【0045】
若番光心線201は、ケース10の中心軸に沿って、2つの心線ガイド21を通って配置される。老番光心線202は心線ガイド21を通さず、例えばケース10内の外周近くに配置される。
【0046】
浮き子11は、円柱形状であり、中心に若番光心線201を通すための貫通孔を備える。浮き子11は、心線ガイド21の間の若番光心線201に取り付けられる。浮き子11は、側面から貫通孔にかけてつながる切れ目を備えて、その切れ目から若番光心線201を入れて貫通孔を通してもよい。
【0047】
浸水時、浮き子11が浮き上がるのに応じて、浮き子11に通された若番光心線201が持ち上げられる。これにより、若番光心線201が押し曲げられて曲げ損失が与えられる。
【0048】
復旧時、若番光心線201の張力により浮き子11が元の位置に戻されて、浸水発生前の通常状態に戻る。
【0049】
(第2の実施の形態の変形例)
図10は、縦型クロージャ内に浸水検知モジュールを配置した様子を示す図である。
図10のクロージャ100は、縦に配置する円柱状のクロージャである。縦型のクロージャ100には、縦に配置可能な第2の実施の形態の変形例の浸水検知モジュール1を配置できる。
【0050】
図11は、第2の実施の形態の変形例の浸水検知モジュール1の構成を示す平面模式図である。
【0051】
図11の浸水検知モジュール1は円柱状である。クロージャ100内に円柱を立てた状態で浸水検知モジュール1を配置する。
【0052】
浸水検知モジュール1は、縦方向に延びる若番光心線201と老番光心線202に取り付けられる。若番光心線201と老番光心線202は、浸水検知モジュール1の上面と下面の光心線固定部20により固定されて、ケース10内を通される。
【0053】
若番光心線201は、浮き子11の中心を通され、浮き子11に固定される。また、若番光心線201は、浮き子11の上の光心線固定部20に固定される。
【0054】
浮き子11は、円柱形状であり、ケース10内に水が侵入したときに浮き上がる。若番光心線201は浮き子11と浮き子11の上の光心線固定部20に固定されている。浸水時、浮き子11が浮き上がると、若番光心線201は、光心線固定部20と浮き子11の間が押し曲げられて曲げ損失が与えられる。
【0055】
浸水していないときは、浮き子11は下に位置するので、浮き子11より下に若番光心線201の余長ができる。この余長部分に曲げ損失を与えないように、浮き子11が下がり過ぎないようなストッパーを設けてもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態によれば、保守用の若番光心線201を心線ガイド21を通して光心線固定部20でケース10に固定し、ケース10内に水が侵入した場合に浮き上がる浮き子11と心線ガイド21の間の若番光心線201を押し曲げて曲げ損失を与える曲げ部12とを支点14を中心に回転可能な回転部13に配置することで、ケース10内に水が侵入すると浮き子11が浮き上がり、浮き子11に連動して曲げ部12が上方へ移動し、若番光心線201に曲げ損失を与え、クロージャ100から排水後は、浮き子11と曲げ部12が下がり、侵入発生前の通常状態に戻るので、浸水検知モジュール1が再利用できる。
【0057】
本実施の形態によれば、回転部13の浮き子11と曲げ部12を配置した反対側の端に対応する位置に、上下可動に磁石16を配置することで、クロージャ100の外側から磁石16と同じ磁極の磁石30を近づけると、磁石16が反発して上方へ動き、回転部13を浸水時とは逆方向に回転させて曲げ部12を下げることができるので、一時的に若番光心線201の押し曲げを解除できる。
【0058】
本実施の形態によれば、曲げ部12の先端と曲げ部12の受け側に磁石17,18を備えることで、浸水時、曲げ部12が上方に移動すると磁石17,18が互いに引き合い、若番光心線201を挟んで吸着するので、確実に若番光心線201に曲げ損失を与えることができる。