特許第6596550号(P6596550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6596550感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物が塗工されたドライフィルム及び感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596550
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物が塗工されたドライフィルム及び感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20191010BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20191010BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20191010BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20191010BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20191010BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20191010BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   G03F7/027 515
   G03F7/004 501
   G03F7/004 512
   C08G59/20
   C08F290/06
   C08F290/14
   C08F299/06
   H05K3/28 D
   H05K3/28 F
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-164997(P2018-164997)
(22)【出願日】2018年9月4日
(65)【公開番号】特開2019-49709(P2019-49709A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2018年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-172902(P2017-172902)
(32)【優先日】2017年9月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 吉生
(72)【発明者】
【氏名】清野 桃子
(72)【発明者】
【氏名】堀 敦史
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−195861(JP,A)
【文献】 特開2008−063572(JP,A)
【文献】 特開2014−052599(JP,A)
【文献】 特開2017−107182(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0048357(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0044371(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)炭素数が5〜17である少なくとも1種の飽和モノカルボン酸とc)ジカルボン酸とd)エチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応生成物である不飽和カルボン酸化エポキシ樹脂に、e)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる、カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記b)炭素数が5〜17である少なくとも1種の飽和モノカルボン酸が、直鎖状であることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記c)ジカルボン酸が、炭素数が6〜20である少なくとも1種のジカルボン酸を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記c)ジカルボン酸が、炭素数が6〜10である少なくとも1種のジカルボン酸を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記e)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物が、多塩基酸無水物であり、該多塩基酸無水物が、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、水素原子、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基、カルボキシル基、またはヒドロキシル基を表し、mは1〜3の整数である。)で表される化合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、(C)(メタ)アクリレートモノマーを含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、(D)エポキシ化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物が、フィルム上に塗工されたことを特徴とするドライフィルム。
【請求項9】
請求項8に記載のドライフィルムを基板上にラミネートして形成した塗膜を、パターニングした光硬化膜を有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して形成した塗膜を、パターニングした光硬化膜を有することを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたライン形状を有し、さらに伸び特性に優れた硬化塗膜を得ることができる感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物が塗工されたドライフィルム及び該感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板に関する物である。
【背景技術】
【0002】
基板(例えば、導体回路のパターンを形成した基板)上に、保護膜(例えば、絶縁被膜)が形成される場合がある。導体回路のパターンを形成した基板には、例えば、フレキシブル基板やリジッド基板を用いたプリント配線板がある。プリント配線板の保護膜として、感光性樹脂を含有した感光性樹脂組成物の光硬化膜が使用されることがある。
【0003】
近年の電子機器の高機能化に伴い、プリント配線板には電子部品が高密度搭載されることから、プリント配線板の保護膜には、微細なラインであってもアンダーカットが防止された形状を有すること、すなわち、解像性が良好であることが要求される。また、プリント配線板の中でも、ポリイミド等のフレキシブル基板が用いられるフレキシブルプリント配線板では、保護膜が柔軟であることが要求されることから、優れた伸び特性も要求される。
【0004】
そこで、特許文献1では、柔軟性に優れる硬化塗膜を提供するために、(A)1分子中に2個以上の不飽和二重結合と1個以上のカルボキシル基を有する感光性プレポリマー、(B)光重合開始剤、(C)希釈剤、(D)エポキシ化合物、(E)1分子中に1個以上の内部エポキシド基を有するポリブタジエン、及び(F)ポリウレタン微粒子を含有する感光性樹脂組成物が提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1では、依然として、伸び特性に改善の余地があり、また、アンダーカットが防止された優れたライン形状を十分には得ることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−293882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、指触乾燥性等の基本特性を損なうことなく、アンダーカットが防止された優れたライン形状を有し、伸び特性に優れた硬化塗膜を得ることができる感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物が塗工されたドライフィルム及び該感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、(A)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)炭素数が5〜17である少なくとも1種の飽和モノカルボン酸とc)ジカルボン酸とd)エチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応生成物である不飽和カルボン酸化エポキシ樹脂に、e)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる、カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0009】
本発明の態様は、前記b)炭素数が5〜17である少なくとも1種の飽和モノカルボン酸が、直鎖状であることを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0010】
本発明の態様は、前記c)ジカルボン酸が、炭素数が6〜20である少なくとも1種のジカルボン酸を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0011】
本発明の態様は、前記c)ジカルボン酸が、炭素数が6〜10である少なくとも1種のジカルボン酸を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0012】
本発明の態様は、前記e)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物が、多塩基酸無水物であり、該多塩基酸無水物が、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、水素原子、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基、カルボキシル基、またはヒドロキシル基を表し、mは1〜3の整数である。)で表される化合物であることを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0013】
本発明の態様は、さらに、(C)(メタ)アクリレートモノマーを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0014】
本発明の態様は、さらに、(D)エポキシ化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0015】
本発明の態様は、上記感光性樹脂組成物が、フィルム上に塗工されたことを特徴とするドライフィルムである。
【0016】
本発明の態様は、上記ドライフィルムを基板上にラミネートして形成した塗膜を、パターニングした光硬化膜を有することを特徴とするプリント配線板である。
【0017】
本発明の態様は、上記感光性樹脂組成物を基板上に塗布して形成した塗膜を、パターニングした光硬化膜を有することを特徴とするプリント配線板である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の態様によれば、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物であって、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂が、a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)炭素数が5〜17である少なくとも1種の飽和モノカルボン酸とc)ジカルボン酸とd)エチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応生成物である不飽和カルボン酸化エポキシ樹脂に、e)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる化学構造を有することにより、優れた透明性と指触乾燥性を有する感光性樹脂組成物を得ることができ、また、アンダーカットが防止された優れたライン形状を得られることで解像性に優れ、伸び特性にも優れた硬化塗膜を得ることができる。
【0019】
また、本発明の態様によれば、透明性、伸び特性、絶縁信頼性、疎水性に優れた構造である中鎖〜長鎖モノカルボン酸(炭素数が5〜17である飽和モノカルボン酸)をエチレン性不飽和基含有カルボン酸とともに、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂に付加することで、光硬化性、透明性、伸び特性、絶縁信頼性、耐燃焼性及び疎水性に優れた硬化塗膜を形成することができる。また、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて樹脂にカルボキシル基を導入することにより、弱アルカリ性水溶液(例えば、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液等)に可溶化させることができるので、樹脂組成物に現像性を付与することができる。
【0020】
本発明の態様によれば、ジカルボン酸を1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂に付加することにより、カルボキシル基含有感光性樹脂の構成成分であるエポキシ樹脂の異なるエポキシ基が、上記ジカルボン酸を介して相互に結合することで、エポキシ樹脂が有する比較的剛直な骨格が、ジカルボン酸に由来する柔軟性を有する骨格にて共有結合により架橋された構造となる。これにより、本発明の感光性樹脂組成物の硬化塗膜に、伸び特性を付与することができる。また、カルボキシル基含有感光性樹脂にジカルボン酸が導入されることにより、比較的低分子量のエポキシ樹脂を適当な分子量に調整することができるので、アルカリ現像性を維持しながら乾燥後の指触乾燥性に優れた硬化塗膜となる感光性樹脂組成物とすることができる。
【0021】
本発明の態様によれば、ジカルボン酸として炭素数が6〜10である中鎖〜長鎖ジカルボン酸を含むことにより、感光性樹脂組成物の透明性がさらに向上して、アンダーカットがより確実に防止されたより優れたライン形状を有する(すなわち、優れた解像性を有する)硬化塗膜を得ることができる。また、ジカルボン酸として炭素数が6〜10である中鎖〜長鎖ジカルボン酸を含むことにより、感光性樹脂組成物の指触乾燥性もさらに向上する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の感光性樹脂組成物について詳細に説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とb)炭素数が5〜17である少なくとも1種の飽和モノカルボン酸とc)ジカルボン酸とd)エチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応生成物である不飽和カルボン酸化エポキシ樹脂に、e)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる、カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、を含有する。上記各成分は、以下の通りである。
【0023】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂
1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂であればいずれでも使用可能である。1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、その上限値は、エチレン性不飽和基含有カルボン酸と飽和モノカルボン酸とジカルボン酸の導入割合の低下による感光性と伸び特性の低下を防止する点から1000g/eqが好ましく、500g/eqがより好ましく、400g/eqが特に好ましい。一方で、その下限値は、耐熱性と機械的強度の点から100g/eqが好ましく、200g/eqが特に好ましい。
【0024】
1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂には、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、о−クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を含有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を導入したエポキシ樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂にBr、Cl等のハロゲン原子を導入したものも使用可能である。
【0025】
これらのうち、感光性樹脂組成物の硬化物の感光性と、伸び特性及び絶縁信頼性の点から、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂が好ましく、伸び特性により優れる点から、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、例えば、下記一般式(2)
【0026】
【化2】
(式中、Rは、水素原子、または直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基を表し、lは1〜3の整数、nは1〜10の整数である。)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0027】
1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂として市販されているものには、例えば、NC‐3000(日本化薬株式会社、一般式(2)のRが水素原子であるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)、HP-7200H(DIC株式会社、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、NC−7000やNC−7300(日本化薬株式会社、ナフタレン型エポキシ樹脂)、NC−2000(日本化薬株式会社、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂)等が挙げられる。上記した1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
b)炭素数が5〜17である飽和モノカルボン酸
炭素数が5〜17である飽和モノカルボン酸は、例えば、炭素数が5〜17である、炭化水素基を有する飽和モノカルボン酸である。炭素数が5〜17である飽和モノカルボン酸には、一塩基酸である、炭素数が5〜17の脂肪酸が含まれる。
【0029】
炭素数が5〜17である飽和モノカルボン酸は、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基に反応して、該樹脂に上記飽和モノカルボン酸に由来する透明性、柔軟性及び絶縁信頼性に優れた中鎖〜長鎖炭化水素構造が導入される。これにより、感光性樹脂組成物に優れた透明性が付与されることで感光性樹脂組成物の硬化塗膜はアンダーカットが防止された優れたライン形状を有しつつ、さらに、感光性樹脂組成物の硬化塗膜は優れた伸び特性と絶縁信頼性等を得ることができる。また、上記飽和モノカルボン酸に由来する中鎖〜長鎖炭化水素構造が導入されることにより、感光性樹脂組成物に優れた指触乾燥性が付与される。
【0030】
炭素数が5〜17である飽和モノカルボン酸としては、環式脂肪族炭化水素基を有する飽和モノカルボン酸、直鎖状の脂肪族炭化水素基を有する飽和モノカルボン酸、分岐鎖状の脂肪族炭化水素基を有する飽和モノカルボン酸のいずれも使用可能である。このうち、直鎖状飽和脂肪族鎖の疎水性結合に由来すると考えられる凝集力が乾燥後の塗膜に発生して予備乾燥後の塗膜がさらに優れた指触乾燥性を有するだけでなく、より柔軟性に優れた直鎖状飽和脂肪族鎖の構造を有することにより、硬化塗膜はより優れた伸び特性を有する点及び透明性と伸び特性をバランスよく向上させる点から、直鎖状の脂肪族炭化水素基を有する飽和モノカルボン酸が好ましい。
【0031】
また、飽和モノカルボン酸の炭素数は5〜17の範囲であれば、特に限定されないが、透明性と伸び特性をバランスよく向上させる点から5〜12の炭素数が好ましい。
【0032】
炭素数が5〜17である飽和モノカルボン酸には、例えば、ペンタン酸(C5)、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、テトラデカン酸(C14)、ヘキサデカン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0033】
カルボキシル基含有感光性樹脂(固形分)中における、炭素数が5〜17である飽和モノカルボン酸の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、伸び特性と絶縁信頼性をより向上させる点から5.0質量%が好ましく、伸び特性をさらに向上させる点から8.0質量%が特に好ましい。一方で、その上限値は、エチレン性不飽和基含有カルボン酸の導入量を確保して感光性を確実に得つつ、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入量を確保してアルカリ現像性を確実に得る点から20質量%が好ましく、18質量%が特に好ましい。
【0034】
c)ジカルボン酸
ジカルボン酸は、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基に反応して、ジカルボン酸の炭化水素構造をエポキシ樹脂に導入しつつ、上記エポキシ樹脂の異なるエポキシ基がジカルボン酸を介して相互に結合することで、エポキシ樹脂が有する比較的剛直な骨格が、ジカルボン酸由来の柔軟性を有する炭化水素構造にて共有結合により架橋された構成とすることができ、硬化塗膜の伸び特性と透明性と指触乾燥性に優れた構造をエポキシ樹脂に付与する。また、飽和モノカルボン酸とジカルボン酸を併用することにより、柔軟性を有しながら、比較的低分子量のエポキシ樹脂を適当な分子量に調整することができる。よって、柔軟性とアルカリ現像性を維持しつつ、乾燥後の指触乾燥性に優れた硬化塗膜となる感光性樹脂組成物とすることができる。
【0035】
ジカルボン酸としては、例えば、非環式飽和脂肪族炭化水素基を有する飽和ジカルボン酸、非環式不飽和脂肪族炭化水素基を有する不飽和ジカルボン酸、環式飽和脂肪族炭化水素基を有する飽和ジカルボン酸、環式不飽和脂肪族炭化水素基を有する不飽和ジカルボン酸が好ましい。また、非環式飽和脂肪族炭化水素基を有する飽和ジカルボン酸としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基または炭素数2以下の側鎖を2本以下有する分岐鎖状の脂肪族炭化水素基を有する飽和ジカルボン酸が特に好ましい。非環式不飽和脂肪族炭化水素基を有する不飽和ジカルボン酸としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基または炭素数2以下の側鎖を2本以下有する分岐鎖状の脂肪族炭化水素基を有する不飽和ジカルボン酸が特に好ましい。
【0036】
上記から、ジカルボン酸には、二塩基酸である飽和脂肪酸、二塩基酸である不飽和脂肪酸が含まれる。
【0037】
ジカルボン酸の炭素数は、特に限定されないが、非環式脂肪族炭化水素基を有するジカルボン酸では、その下限値は、伸び特性を確実に得る点から炭素数5が好ましく、炭素数6が特に好ましい。一方で、非環式脂肪族炭化水素基を有するジカルボン酸の炭素数の上限値は、感光性樹脂組成物の透明性が確実に向上して、アンダーカットが確実に防止された優れたライン形状を有する硬化塗膜を得ることができ、感光性樹脂組成物の指触乾燥性も確実に向上する点から、炭素数20が好ましく、感光性樹脂組成物の透明性がさらに向上して、より優れたライン形状を有する硬化塗膜を得ることができ、また、感光性樹脂組成物の指触乾燥性もさらに向上する点から、炭素数12がより好ましく、炭素数10が特に好ましい。環式脂肪族炭化水素基を有するジカルボン酸では、その下限値は、伸び特性を確実に得る点から炭素数6が好ましく、炭素数7が特に好ましい。一方で、環式脂肪族炭化水素基を有するジカルボン酸の炭素数の上限値は、感光性樹脂組成物の透明性が確実に向上して、アンダーカットが確実に防止された優れたライン形状を有する硬化塗膜を得ることができ、感光性樹脂組成物の指触乾燥性も確実に向上する点から、炭素数20が好ましく、感光性樹脂組成物の透明性がさらに向上して、より優れたライン形状を有する硬化塗膜を得ることができ、また、感光性樹脂組成物の指触乾燥性もさらに向上する点から、炭素数12がより好ましく、炭素数10が特に好ましい。
【0038】
ジカルボン酸は、例えば、下記一般式(3)
HOOC−R−COOH (3)
(式中、Rは、炭素数3〜18の非環式飽和脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の非環式不飽和脂肪族炭化水素基、または環式飽和脂肪族炭化水素基若しくは環式不飽和脂肪族炭化水素基を有する(好ましくは、環式脂肪族炭化水素基を1つ有する)炭素数4〜18の脂肪族炭化水素基を表す。)で表されるジカルボン酸化合物が好ましい。
【0039】
一般式(3)で表される化合物としては、非環式脂肪族炭化水素基を有するジカルボン酸では、例えば、ペンタン二酸(C5)、アジピン酸(C6)、スベリン酸(C8)、セバシン酸(C10)、ドデカン二酸(C12)、テトラデカン二酸(C14)、ヘキサデカン二酸(C16)、エチルオクタデカン二酸(C20)、エイコサン二酸(C20)、エイコサジエン二酸(C20)等のジカルボン酸が挙げられる。また、環式脂肪族炭化水素基を有するジカルボン酸では、例えば、シクロブタンジカルボン酸(C6)、シクロペンタンジカルボン酸(C7)、シクロヘキサンジカルボン酸(C8)等のジカルボン酸が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
カルボキシル基含有感光性樹脂(固形分)中における、ジカルボン酸の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、伸び特性と絶縁信頼性をより向上させる点から2.0質量%が好ましく、伸び特性をさらに向上させる点から3.0質量%が特に好ましい。一方で、その上限値は、エチレン性不飽和基含有カルボン酸の導入量を確保して感光性を確実に得つつ、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入量を確保してアルカリ現像性を確実に得る点から15質量%が好ましく、10質量%が特に好ましい。
【0041】
1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と炭素数が5〜17である少なくとも1種の飽和モノカルボン酸とジカルボン酸との反応方法は、公知の方法でよく、例えば、上記エポキシ樹脂と上記カルボン酸を適当な希釈剤中で加熱する反応方法が挙げられる。
【0042】
d)エチレン性不飽和基含有カルボン酸
エチレン性不飽和基含有カルボン酸は、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基と反応して、エポキシ樹脂に光重合開始剤により発生するフリーラジカルによって重合することができる光硬化性基を導入する。エチレン性不飽和基含有カルボン酸は、エポキシ樹脂に光硬化性を付与するものであれば、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、β−アクリロキシプロピオン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン−(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸など、アクリロイル基またはメタクリロイル基をエポキシ樹脂に導入できるカルボン酸を挙げることができる。このうち、アクリル酸、メタクリル酸(以下、(メタ)アクリル酸ということがある。)が好ましく、アクリル酸が特に好ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
カルボキシル基含有感光性樹脂(固形分)中における、エチレン性不飽和基含有カルボン酸の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、感度をより向上させる点から2.0質量%が好ましく、3.0質量%が特に好ましい。一方で、その上限値は、炭素数が5〜17である飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸の導入量を維持して伸び特性と絶縁信頼性をより向上させ、また、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入量を維持してアルカリ現像性を確実に得る点から10質量%が好ましく、8.0質量%が特に好ましい。
【0044】
1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応方法は特に限定されず、例えば、上記エポキシ樹脂とエチレン性不飽和基含有カルボン酸を適当な希釈剤中で加熱する反応方法が挙げられる。
【0045】
d)多塩基酸、多塩基酸無水物
多塩基酸、多塩基酸無水物は、前記エポキシ樹脂が、炭素数が5〜17である飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸との反応により生成した水酸基並びにエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応により生成した水酸基に反応して、前記エポキシ樹脂に遊離のカルボキシル基が導入される。感光性樹脂にカルボキシル基が導入されることで、アルカリ現像性が付与される。使用する多塩基酸、多塩基酸無水物としては、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。多塩基酸には、ジカルボン酸、トリカルボン酸、カルボキシル基を4つ以上有するカルボン酸を挙げることができる。多塩基酸には、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、3−エチルテトラヒドロフタル酸、4−エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、3−エチルヘキサヒドロフタル酸、4−エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、トリメリット酸誘導体、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられる。多塩基酸無水物としては、上記多塩基酸の無水物が挙げられる。
【0046】
多塩基酸と多塩基酸無水物のうち、エポキシ樹脂に生成した上記水酸基との反応効率、すなわち、遊離カルボン酸の導入の容易性の点から多塩基酸無水物が好ましく、多塩基酸無水物としては、アルカリ現像性の点から、下記一般式(1)
【化3】
(式中、Rは、水素原子、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8のアルキル基またはアリール基、カルボキシル基、またはヒドロキシル基を表し、mは1〜3の整数である。)で表される化合物が好ましい。
【0047】
一般式(1)で示される化合物は、炭素数が5〜17である飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸またはエチレン性不飽和基を有するカルボン酸とエポキシ基との反応により生成した水酸基と上記化合物の酸無水物基とが反応して、エステル結合により樹脂骨格に導入される。このとき、一般式(1)で示される化合物は、一分子当たり、2つのカルボキシル基を樹脂に導入できることとなる。従って、多くの飽和モノカルボン酸とジカルボン酸成分を樹脂に導入しながら、少ない水酸基にて、効率良くアルカリ溶解性を得るのに必要な量のカルボキシル基を樹脂に導入することができる。
【0048】
従って、多くの飽和モノカルボン酸とジカルボン酸成分を樹脂に導入しながら、少ない水酸基にて、効率良くアルカリ溶解性を得るのに必要な量のカルボキシル基を樹脂に導入することができる。これにより、飽和モノカルボン酸とジカルボン酸成分の導入による硬化塗膜の伸び特性及び絶縁信頼性と、予備乾燥後のアルカリ現像性とを高いレベルで両立することができる。特に、同じカルボン酸量に設計しながら、一般式(1)で示される化合物を導入したカルボキシル基含有感光性樹脂を含有した感光性樹脂組成物は、一般式(1)で示される化合物以外の多塩基酸またはその無水物を導入したカルボキシル基含有感光性樹脂に比べて、より短時間でのアルカリ現像を行うことができる。なお、これらの化合物は単独で使用してもよく、アルカリ現像性を適度に調整するために、2種以上混合して使用してもよい。
【0049】
カルボキシル基含有感光性樹脂(固形分)中における、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、良好なアルカリ現像性を得る点から7.0質量%が好ましく、9.0質量%が特に好ましい。一方で、その上限値は、絶縁信頼性の低下を確実に防止する点から20質量%が好ましく、16質量%が特に好ましい。
【0050】
a)成分〜d)成分の反応生成物である不飽和カルボン酸化エポキシ樹脂に多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させる方法は特に限定されず、例えば、不飽和カルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を適当な希釈剤中で加熱し、必要に応じて触媒を添加する反応方法が挙げられる。
【0051】
a)成分〜d)成分の反応生成物である不飽和カルボン酸化エポキシ樹脂に多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる上記カルボキシル基含有感光性樹脂の固形分酸価は、特に限定されないが、良好なアルカリ現像性と絶縁信頼性の低下防止とのバランスの点から30〜80mgKOH/gが好ましく、40〜70mgKOH/gが特に好ましい。
【0052】
上記カルボキシル基含有感光性樹脂の質量平均分子量は、特に限定されないが、その下限値は、硬化物の強靭性及び指触乾燥性の低下を防止する点から3000が好ましく、5000が特に好ましい。一方で、その上限値は、アルカリ現像性の低下を防止する点から50000が好ましく、30000が特に好ましい。
【0053】
(B)光重合開始剤
光重合開始剤としては、一般的に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン‐n‐ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2‐ジメトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、2,2‐ジエトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニルプロパン‐1‐オン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2‐メチル‐1‐〔4‐(メチルチオ)フェニル〕‐2‐モルフォリノ‐プロパン‐1‐オン、2‐ベンジル‐2‐ジメチルアミノ‐1‐(4‐モルフォリノフェニル)‐ブタノン‐1、4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)フェニル‐2‐(ヒドロキシ‐2‐プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p‐フェニルベンゾフェノン、4,4′‐ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2‐メチルアントラキノン、2‐エチルアントラキノン、2‐ターシャリーブチルアントラキノン、2‐アミノアントラキノン、2‐メチルチオキサントン、2‐エチルチオキサントン、2‐クロルチオキサントン、2,4‐ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P‐ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルフォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、エタノン,1‐[9‐エチル‐6‐(2‐メチルベンゾイル) ‐9H‐カルバゾール‐3‐イル] ‐ ,1‐(O‐アセチルオキシム)等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0054】
本発明の感光性樹脂組成物では、優れた透明性を有するので、光重合開始剤の含有量を従来よりも低減でき、結果、光硬化時における光重合開始剤からのガス発生を防止して優れた塗膜外観を得ることができる。
【0055】
光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5〜30質量部が好ましく、10〜25質量部が特に好ましい。
【0056】
(C)(メタ)アクリレートモノマー
(メタ)アクリレートモノマーは光重合性を有するモノマーであり、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって光硬化することにより、感光性樹脂組成物の光硬化を十分にして、耐酸性、耐熱性、耐アルカリ性などを有する硬化物を得るために使用する。従って、(メタ)アクリレートモノマーは、反応性希釈剤として機能する。
【0057】
(メタ)アクリレートモノマーには、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0058】
(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、特に限定されないが、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5〜30質量部が好ましく、10〜25質量部が特に好ましい。
【0059】
(D)エポキシ化合物
エポキシ化合物は、硬化物の架橋密度を上げて、十分な機械的強度を有する硬化塗膜等の硬化物を得るためのものである。エポキシ化合物には、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型等)、ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られたビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂、さらにシクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレート、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール変性キシレン樹脂型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂(例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等)を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0060】
エポキシ化合物の配合量は、特に限定されないが、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、10〜150質量部が好ましく、20〜100質量部が特に好ましい。
【0061】
また、必要に応じて、上記(A)〜(D)成分の他に、着色剤、非反応性希釈剤、添加剤、消泡剤等を適宜配合してもよい。
【0062】
着色剤は、顔料、色素等、特に限定されず、また、白色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、黒色着色剤等、いずれも使用可能である。上記着色剤には、例えば、白色着色剤である酸化チタン、黒色着色剤であるカーボンブラック等の無機系着色剤や、フタロシアニングリーン及びフタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、アントラキノン系等の有機系着色剤などを挙げることができる。
【0063】
非反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の粘度や乾燥性を調節するためのものである。非反応性希釈剤として、例えば、有機溶剤を挙げることができる。有機溶剤には、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類等を挙げることができる。
【0064】
添加剤には、例えば、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、メラミン及びその誘導体等の硬化触媒、シラン系、チタネート系、アルミナ系等のカップリング剤、アセチルアセナートZn及びアセチルアセナートCr等のアセチルアセトンの金属塩、エナミン、オクチル酸錫、第4級スルホニウム塩、トリフェニルホスフィン、2−メルカプトベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、イミダゾリウム塩類並びにトリエタノールアミンボレート等の熱硬化促進剤、ポリカルボン酸アマイド等のチキソ剤などが挙げられる。また、消泡剤には、例えば、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等を挙げることができる。
【0065】
上記した本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されないが、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温にて三本ロールにより混合分散させて製造することができる。また、必要に応じて、前記混合分散前に、攪拌機にて予備混合してもよい。
【0066】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例を説明する。ここでは、まず、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブル配線板上に、本発明の感光性樹脂組成物を塗工して、ソルダーレジスト膜を形成する方法を例にとって説明する。
【0067】
銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブル配線板上に、上記のように製造した感光性樹脂組成物をスクリーン印刷、バーコーター、スプレー塗工、アプリケータ、ブレードコータ、ナイフコータ、ロールコータ、グラビアコータ等の公知の方法を用いて所望の厚さに塗布する。塗布後、必要に応じて、感光性樹脂組成物中の溶剤を揮散させるために60〜80℃程度の温度で15〜60分間程度加熱する予備乾燥を行い、感光性樹脂組成物から溶剤を揮発させて塗膜の表面をタックフリーの状態にする。塗布した感光性樹脂組成物上に、前記回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、その上から紫外線(例えば、波長300〜400nmの範囲)を照射させる。そして、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより塗膜が現像される。現像方法には、スプレー法、シャワー法等が用いられ、使用される希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5〜5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。次いで、130〜170℃の熱風循環式の乾燥機等で20〜80分間ポストキュアを行うことにより、フレキシブル配線板上に目的とするソルダーレジスト膜を形成させることができる。
【0068】
次に、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブル配線板上に、本発明の感光性樹脂組成物を塗工したドライフィルムを用いて、ソルダーレジスト膜を形成する方法の例を説明する。
【0069】
ドライフィルムは、支持フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルム)と、該支持フィルムに塗工されたソルダーレジスト層と、該ソルダーレジスト層を保護するカバーフィルム(例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム)と、を有する積層構造である。支持フィルム上に感光性樹脂組成物を、ローラコート法等の公知の方法で塗工後、塗膜を乾燥処理して支持フィルム上にソルダーレジスト層を形成する。その後、形成したソルダーレジスト層上にカバーフィルムを積層することでドライフィルムを作製できる。上記ドライフィルムのカバーフィルムを剥がしながらソルダーレジスト層とフレキシブル配線板をはり合わせることで、フレキシブル配線板上にソルダーレジスト膜を形成する。その後、上記と同様に、露光、現像、キュアの各工程を行なうことで、フレキシブル配線板上に目的とする回路パターンを有するソルダーレジスト膜を形成させることができる。
【0070】
このようにして得られた硬化塗膜にて被覆されたフレキシブル配線板に、噴流はんだ付け方法、リフローはんだ付け方法等により電子部品がはんだ付けされることで、電子回路ユニットが形成される。
【実施例】
【0071】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0072】
感光性樹脂A−1
撹拌翼、温度計、還流管と窒素導入管を備えた300mlの4つ口セパラブルフラスコにNC−3000を106.1g(エポキシ基:0.383mol、日本化薬株式会社)、ドデカン酸24.6g(カルボン酸:0.123mol、キシダ化学株式会社)、アジピン酸8.4g(カルボン酸:0.115mol、キシダ化学株式会社)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート66.1g(三洋化成品株式会社)を加え、窒素・酸素混合気体雰囲気下110℃で30分間撹拌し、混合溶解させた。次いで、反応液の液温を115℃に昇温したのちに、4-メトキシフェノール0.3g(キシダ化学株式会社)、アクリル酸10.4g(カルボン酸:0.145mol、大阪有機化学工業株式会社)、トリフェニルホスフィン0.9g(キシダ化学株式会社)を投入した。115℃で8時間撹拌し、酸価測定を行いカルボン酸が完全に消失していることを確認した。次いで、大気雰囲気下、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物(H−TMAn−S)24.8g(カルボン酸無水物:0.125mol、三菱ガス化学株式会社)、ジエチルジグリコール16.5g(日本乳化剤株式会社)を加え、100℃で2時間撹拌したのちに、FT−IR(赤外分光光度計)で反応終了を確認し、実施例1で配合する感光性樹脂A−1を258.0g得た。質量平均分子量(Mw)は9100であった。
【0073】
感光性樹脂A−2
感光性樹脂A−1と同様にして、NC−3000を106.1g、ドデカン酸24.6g、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸9.9g (カルボン酸:0.115mol、東京化成工業株式会社) 、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート66.2g、4−メトキシフェノール0.3g、アクリル酸10.4g、トリフェニルホスフィン0.8g、H−TMAn−S24.8g、ジエチルジグリコール16.5gを反応させて、実施例2で配合する感光性樹脂A−1を258.5g得た。Mwは8400であった。
【0074】
感光性樹脂A−3
感光性樹脂A−1と同様にして、NC−3000を106.1g、ヘプタン酸16.0g(カルボン酸:0.123mol、キシダ化学株式会社)、セバシン酸11.6g(カルボン酸:0.115mol、キシダ化学株式会社)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート63.6g、4−メトキシフェノール0.3g、アクリル酸10.4g、トリフェニルホスフィン0.8g、H−TMAn−S23.8g(カルボン酸無水物:0.120mol)、ジエチルジグリコール15.9gを反応させて、実施例3で配合する感光性樹脂A−3を248.4g得た。Mwは9700であった。
【0075】
感光性樹脂A−4
感光性樹脂A−1と同様にして、NC−3000を106.1g、ヘプタン酸19.5g(カルボン酸:0.150mol)、8−エチルオクタデカン二酸19.7g(カルボン酸:0.115mol、岡村製油株式会社)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート69.1g、4−メトキシフェノール0.2g、アクリル酸10.4g、トリフェニルホスフィン0.7g、H−TMAn−S27.1g(カルボン酸無水物:0.137mol)、ジエチルジグリコール17.3gを反応させて、実施例4で配合する感光性樹脂A−4を270.1g得た。Mwは10000であった。
【0076】
感光性樹脂A−5
感光性樹脂A−1と同様にして、NC−3000を104.7g(エポキシ基:0.378mol)、ベヘニン酸32.7g(カルボン酸:0.096mol、日油株式会社)、ステアリン酸6.9g(カルボン酸:0.024mol、日油株式会社)、8−エチルオクタデカン二酸19.5g(カルボン酸:0.114mol、岡村製油株式会社)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート76.8g、4−メトキシフェノール0.3g、アクリル酸10.2g、トリフェニルホスフィン0.9g、H−TMAn−S28.8g(カルボン酸無水物:0.145mol)、ジエチルジグリコール19.2gを反応させて、比較例1で配合する感光性樹脂A−5を300.0g得た。Mwは10500であった。
【0077】
感光性樹脂A−6
感光性樹脂A−1と同様にして、NC−3000を106.1g、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート59.1g、4−メトキシフェノール0.2g、アクリル酸27.6g、トリフェニルホスフィン0.7g、H−TMAn−S22.3g(カルボン酸無水物:0.113mol)、ジエチルジグリコール14.8gを反応させて、比較例2で配合する感光性樹脂A−6を230.7g得た。Mwは2000であった。
【0078】
感光性樹脂A−7
感光性樹脂A−1と同様にして、NC−3000を106.1g、アジピン酸8.4g、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート59.1g、4−メトキシフェノール0.2g、アクリル酸19.3g、トリフェニルホスフィン0.7g、H−TMAn−S22.3g、ジエチルジグリコール14.8gを反応させて、比較例3で配合する感光性樹脂A−7を230.9g得た。Mwは7000であった。
【0079】
感光性樹脂A−8
感光性樹脂A−1と同様にして、NC−3000を106.1g、ドデカン酸46.6g(カルボン酸:0.233mol)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート72.1g、4−メトキシフェノール0.2g、アクリル酸10.8g(カルボン酸:0.150mol)、トリフェニルホスフィン0.7g、H−TMAn−S27.1g(カルボン酸無水物:0.137mol)、ジエチルジグリコール18.0gを反応させて、比較例4で配合する感光性樹脂A−8を281.5g得た。Mwは4000であった。
【0080】
感光性樹脂A−9
NC−3000を106.1g(エポキシ基:0.383mol)に代えて、NC−7000を88.8g(エポキシ基:0.383mol、日本化薬株式会社)を用いた以外は、感光性樹脂A−1と同様にして、実施例5で配合する感光性樹脂A−9を240.7g得た。Mwは10000であった。
【0081】
感光性樹脂A−10
NC−3000を106.1g(エポキシ基:0.383mol)に代えて、NC−2000を91.2g(エポキシ基:0.383mol、日本化薬株式会社)を用いた以外は、感光性樹脂A−1と同様にして、実施例6で配合する感光性樹脂A−10を243.1g得た。Mwは8000であった。
【0082】
感光性樹脂A−1〜A−10の各成分の質量割合について、下記表1に示す。なお、感光性樹脂A−1〜A−10を150℃で2時間乾燥させ、乾燥前後の質量比から感光性樹脂A−1〜A−10の固形分を求めた。溶液酸価は、アルカリ中和滴定に基づくフェノールフタレイン変色法により測定した。質量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(株式会社島津製作所)を用いて以下の条件にて測定した。
カラム:TSKgel(東ソー株式会社)
検出器:示差屈折率検出器
展開溶媒:テトラヒドロフラン
標準物質:標準ポリスチレン
流速:0.5ml/min
【0083】
【表1】
【0084】
実施例1〜6、比較例1〜4
下記表2に示す各成分を下記表2に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1〜6、比較例1〜4にて使用する感光性樹脂組成物を調製した。なお、下記表2に示す配合量は質量部を表す。
【0085】
試験片作製工程
上記のように調製した感光性樹脂組成物を、以下のように塗工して試験片を作製した。
【0086】
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社、カプトン100H)に回路パターンを形成したフレキシブル配線板用基板を希硫酸(3質量%)により表面処理後、スクリーン印刷法にて、各調製した感光性樹脂組成物を塗布後、BOX炉にて80℃で20分の予備乾燥を行った。予備乾燥後、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルム(フォトマスク)を塗膜上に密着させ、その上から紫外線を露光装置(株式会社オーク製作所、HMW−680GW)にて500mJ/cmまで露光した。その後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム現像液にて現像後、BOX炉にて150℃で60分のポストキュアを行うことで、上記基板上に硬化塗膜を形成し、実施例及び比較例の試験片を得た。硬化塗膜の厚みは、いずれも20〜23μmであった。
【0087】
評価項目
(1)アンダーカット(解像性)
幅100μmのフォトマスクを用いて硬化塗膜のラインを上記ポリイミドフィルム上に形成した。形成したラインの切断面からライン形状を金属顕微鏡(倍率:100倍)にて観察し、ラインの表面側の幅(x)と底部側(深部側)の幅(y)を測定し、(x−y)/2からアンダーカット値を測定し、以下の基準で評価した。
○:5μm以下
△:5μm超15μm以下
×:15μm超
【0088】
(2)伸び率(%)
上記のように調製した感光性樹脂組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに厚さ50μm±10μmになるようにバーコーターを用いて均一に塗布した後、上記の予備乾燥からポストキュアまでの工程を行って、硬化塗膜を形成した。その後、形成した硬化塗膜をPETフィルムから剥がして所定の大きさに切断したサンプルついて、島津製作所(株)製のオートグラフを使用して、引っ張り速度5mm/minの条件で伸び率を測定し、以下の基準で評価した。
◎:60%超
○:45%超60%以下
△:30%超45%以下
×:30%以下
【0089】
(3)指触乾燥性
上記試験片作製工程の予備乾燥後にネガフィルムを塗膜に接触させ、露光した後における、塗膜のネガフィルムへのはり付き性を評価した。評価は以下の基準で行った。
○:はり付きなし
△:塗膜にはり付き跡が残存
×:ネガフィルム引き剥がし後、ネガフィルムに塗膜が付着
【0090】
実施例1〜6、比較例1〜4の評価結果を下記表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
表2より、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と炭素数が5〜17である飽和モノカルボン酸(実施例では、炭素数7または12の飽和モノカルボン酸)とジカルボン酸とエチレン性不飽和基含有カルボン酸(実施例ではアクリル酸)との反応生成物である不飽和カルボン酸化エポキシ樹脂に、e)多塩基酸及び/または多塩基酸無水物(実施例では、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物)を付加させて得られる、カルボキシル基含有感光性樹脂(感光性樹脂A−1〜A−4、A−9〜A−10)をそれぞれ用いた実施例1〜6では、透明な樹脂溶液が得られ、また、優れた指触乾燥性を備えていた。さらに、実施例1〜6では、アンダーカットが防止された優れたライン形状を有し、且つ伸び特性に優れた硬化塗膜を得ることができた。特に、カルボキシル基含有感光性樹脂に導入されるジカルボン酸の炭素数が6〜10である実施例1〜3、5、6は、上記炭素数が20である実施例4と比較して、さらに優れたライン形状を得ることができ、解像性がさらに向上した。また、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を用いた実施例1、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂を用いた実施例6は、ナフタレン型エポキシ樹脂を用いた実施例5と比較して、伸びがさらに向上した。
【0093】
一方で、エポキシ樹脂に炭素数が18である飽和モノカルボン酸と炭素数が22である飽和カルボン酸を導入し、中鎖〜長鎖ジカルボン酸を導入しなかった比較例1では、樹脂溶液の透明性が低下し、アンダーカットが防止されずに解像性が得られなかった。また、比較例1では、指触乾燥性も得ることができなかった。また、中鎖〜長鎖飽和モノカルボン酸も中鎖〜長鎖飽和カルボン酸もカルボキシル基含有感光性樹脂に導入されなかった比較例2、カルボキシル基含有感光性樹脂に中鎖〜長鎖飽和モノカルボン酸は導入せずに炭素数6の中鎖ジカルボン酸を導入した比較例3、カルボキシル基含有感光性樹脂に中鎖〜長鎖ジカルボン酸を導入せずに炭素数12の長鎖飽和モノカルボン酸を導入した比較例4では、いずれも、伸び特性が向上せず、柔軟性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の感光性樹脂組成物は、指触乾燥性等の基本特性を損なうことなく、アンダーカットが防止された優れたライン形状を有し、伸び特性に優れた硬化塗膜を得ることができるので、例えば、電子部品が高密度搭載されるプリント配線板(例えば、フレキシブル配線板やリジット配線板等)の保護膜の分野で利用価値が高い。