(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に記載されるアッセイは、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質を含むタンパク質由来の特定の非修飾ペプチドの相対もしくは絶対レベルを定量化または測定し、また、それらのタンパク質由来の特定の修飾ペプチドの相対または絶対レベルも測定することもできる。修飾の例としては、ペプチド上に存在するリン酸化アミノ酸残基及びグリコシル化アミノ酸残基が挙げられる。
【0010】
タンパク質及び潜在的イソ型の相対定量的レベルは、SRM/MRM法により、例えば、SRM/MRM特徴的ピーク面積(例えば、特徴的ピーク面積、または積分断片イオン強度)を比較することによって、決定することができる。個別のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1ペプチドの相対レベルは、異なる試料(例えば、対照試料、及び患者の組織または対象の組織から調製された試料)中で決定することができる。あるいは、各ペプチドがそれ自体の特定のSRM/MRM特徴的ピークを有する場合、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1特徴的ペプチドのうちの1つ以上に対して複数のSRM/MRM特徴的ピーク面積を比較することが可能である。ピーク面積を比較することによって、1つの生体試料中、または1つ以上の追加または異なる生体試料中の相対ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質、ならびに潜在的タンパク質イソ型含有量を決定することが可能である。このように、それらのタンパク質由来の特定のペプチド(1つまたは複数)の相対量、したがって、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質、ならびにそれらの潜在的イソ型の相対量を、同じ実験条件下で複数の(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれを超える)生体試料にわたって決定することができる。加えて、単一の試料中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の所与のペプチド(1つまたは複数)の相対定量化を、SRM/MRM法により、そのペプチドの特徴的ピーク面積を、生体試料からの同じタンパク質調製物中の異なるタンパク質(1つまたは複数)由来の別の異なるペプチド(1つまたは複数)の特徴的ピーク面積と比較することによって決定することができる。
【0011】
そのような方法を使用して、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の特定のペプチドの量、したがって、対応するタンパク質のそれぞれ、及びそれらの潜在的イソ型の量を、同じ試料中または異なる試料中で互いに比較して決定され得る。個別のペプチド(1つまたは複数)の相対定量化は、試料中または試料間の別のペプチド(1つまたは複数)の量と比較して行われ得るため、生体試料中のタンパク質の容量に対する絶対重量、または重量に対する絶対重量にかかわらず、(例えば、互いに比較してピーク面積を決定することによって)存在するペプチドの相対量を決定することが可能である。故に、生体試料からのタンパク質調製物中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1ペプチドの量を使用して、様々な試料中及び試料間のそれらのタンパク質の量を決定することができる。異なる試料間の個別の特徴的ピーク面積に関する相対定量化データは、一般的に、試料ごとに分析されるタンパク質の量に正規化される(例えば、試料の総タンパク質濃度、及び分析される容量が試料の正規化に使用される)。相対定量化を、単一の試料中、及び/または多くの試料にわたって、複数のタンパク質、ならびにALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質(複数可)由来の多くのペプチドにわたって同時に実施して、相対タンパク質量、及び/または他のペプチド/タンパク質に対する1つのペプチド/タンパク質についてのさらなる洞察を得ることができる。
【0012】
ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の絶対定量的レベルは、例えば、SRM/MRM法によって決定され、それによって、1つの生体試料中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の個別のペプチドのSRM/MRM特徴的ピーク面積は、既知量の試料中で「スパイクされた」1つ以上の内部標準物の既知量のSRM/MRM特徴的ピーク面積と比較される(例えば、同位体標識標準物)。一実施形態において、内部標準物は、1つ以上の重同位体で標識された1つ以上のアミノ酸残基を含有する、全く同一のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1ペプチドの合成バージョンである。質量分析が、天然ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1ペプチド特徴的ピークとは異なり別個であり、かつコンパレータピークとして使用することのできる、予測可能かつ一貫したSRM/MRM特徴的ピークを生成するように、そのような同位体標識内部標準物が合成される。故に、内部標準物が、既知量の生体試料からのタンパク質またはペプチド調製物中に既知量でスパイクされ、質量分析によって分析されるとき、天然ペプチドのSRM/MRM特徴的ピーク面積を、内部標準ペプチドのSRM/MRM特徴的ピーク面積と比較することができる。この数値比較が、対応するタンパク質の濃度もしくは重量が決定され得る生体試料からの最初のタンパク質調製物中に存在する天然ペプチドの絶対モル濃度及び/または絶対重量のいずれかの計算を可能にする。断片ペプチドに対する絶対定量化データは、典型的に、試料ごとに分析されるタンパク質の量に従って表示される。絶対定量化は、多くのペプチドにわたって実施することができ、それが、同時に単一の試料中及び/または複数の試料にわたる複数のタンパク質(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ等)の定量決定を可能にし、個別の生体試料及び/または個別の試料のコホート全体における絶対タンパク質量についての洞察を得ることができる。一実施形態において、タンパク質の定量化は、Gygiらよって米国特許第7,501,286号に記載されるペプチド標準物を使用して行ってもよい。
【0013】
別途指定のない限り、本明細書で使用される場合、定量化する、定量化、測定する、測定という用語は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、標準物質(例えば、内部標準物)などの分析物の相対または絶対レベルを決定することを意味する。
【0014】
本明細書に記載されるアッセイ法を、例えば、ホルマリン固定組織などの患者由来または対象由来の組織を用いる際に、癌の病期の決定を助けるものとして使用することができる。本明細書に記載されるSRM/MRMアッセイはまた、その患者または対象の治療に使用する際にどの治療剤が最も有利であるかの決定を助けるものとして使用することもできる。
【0015】
本明細書に記載される肺癌に関連するタンパク質のレベルを試験するために、部分的または全体の腫瘍の外科的摘出、または疑わしい疾患の有無を決定するために行われる生検法のいずれかにより、患者もしくは対象から摘出された癌性組織、または癌性である疑いのある組織に対して分析を行うことができる。組織の試料を分析して、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質(複数可)のうちの1つ以上が患者の組織または対象の組織中に存在するかどうか、かつそれらのタンパク質のどの形態が存在するかを決定する。さらには、それらのタンパク質のうちの1つ以上の発現レベルを決定し、健常組織中に見出される「正常」または参照レベルと比較することができる。健常組織中に見出されるタンパク質の正常または参照レベルは、例えば、癌を有さない1つ以上の個体の関連組織に由来され得る。あるいは、正常または参照レベルは、癌に罹患していない関連組織(例えば、同じ器官の部分)の分析によって、癌を有する個体に対し得られ得る。
【0016】
タンパク質またはペプチドのレベルもしくは量は、SRM/MRMアッセイにより決定されるタンパク質またはペプチドのモル、質量、もしくは重量で表される量として定義することができる。このレベルもしくは量は、分析される溶解物中のタンパク質または別の構成成分の総レベルもしくは量に正規化され得るか(例えば、タンパク質のマイクロモル/マイクログラム、またはタンパク質のマイクログラム/マイクログラムで表される)、または重量当たりでDNAの量にさえ正規化され得る(例えば、DNAのマイクロモルもしくはマイクログラム/マイクログラム)。加えて、タンパク質またはペプチドのレベルもしくは量は、例えば、マイクロモルもしくはナノグラム/マイクロリットルで表される、容積基準で決定され得る。SRM/MRMアッセイによって決定されるタンパク質またはペプチドのレベルもしくは量を、分析される細胞の数に正規化することもできる。
【0017】
ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質、ならびにこれらのタンパク質のイソ型に関する情報を使用して、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質、ならびにそれらのイソ型、または断片ペプチドのレベルを、正常組織中で観察されるレベルと相関させるか、または比較することにより、癌の組織学的病期またはグレードの決定を助けることができる。一旦癌の組織学的病期及び/もしくはグレード、ならびに/またはALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/もしくはFGFR1タンパク質発現特性が決定されると、その情報は、例えば、アッセイされたタンパク質(複数可)(例えば、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1)の異常発現を特徴とする癌組織を特異的に治療するために開発された(化学的及び生物学的)治療剤の一覧と照合させることができる。特定の個体からのALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質アッセイからの情報をALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質(複数可)を発現している細胞/組織を特異的に標的とする治療剤の一覧と照合することは、肺癌を含む癌の治療に対するオーダーメイド医療手法を表す。本明細書に記載されるアッセイ方法は、診断及び治療法の決定のための源として患者または対象自身の組織由来のタンパク質の分析を用いることによりオーダーメイド医療手法の基盤を形成する。
【0018】
ペプチド生成
原理的には、既知の特異性の任意のタンパク質分解プロセスによって調製される、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の任意の予測されるペプチドが、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の存在量を決定するために、代理レポーターとして使用され得る。一実施形態において、試料は、既知の特異性のプロテアーゼ(1つまたは複数)(例えば、トリプシン及び/またはエンドプロテイナーゼLys−Cのうちの1つ以上)で消化される。タンパク質分解処理から生じる1つ以上のペプチドを代理レポーターとして使用して、質量分析ベースのSRM/MRMアッセイなどの好適なアッセイにおいて、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のうちの1つ以上の存在量を決定することができる。同様に、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質中で修飾されることが知られている部位にアミノ酸残基を含有する、任意の予測されるペプチド配列を使用して、試料中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の修飾の程度をアッセイしてもよい。
【0019】
ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1断片ペプチドは、米国特許第7,473,532号に提供されるLiquid Tissue(商標)プロトコルの使用を含む様々な方法によって生成され得る。Liquid Tissue(商標)プロトコル及び試薬は、組織/生体試料中のタンパク質のタンパク分解性消化により、ホルマリン固定パラフィン包埋組織から質量分光分析に適したペプチド試料を作製することができる。Liquid Tissue(商標)プロトコルでは、組織/生体試料は、緩衝液中で、高温で長期間維持され(例えば、約80℃〜約100℃で、約10分間〜約4時間)、タンパク質架橋を逆転または解放する。用いられる緩衝液は、中性緩衝液(例えば、トリスベース緩衝液、または洗剤含有緩衝液)であり、有利に、質量分光分析の妨げとならない緩衝液である。次に、組織/生体試料を、この生体試料の組織及び細胞構造を破壊し、この試料を液化するのに十分な時間(例えば、約37℃〜約65℃で約30分〜約24時間)、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、及びエンドプロテイナーゼLys−Cを含むが、これらに限定されない1つ以上のプロテアーゼで処理する。加熱及びタンパク質分解の結果物は、液体で可溶性の希釈可能な液体生物分子溶解物である。一実施形態において、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、及びエンドプロテイナーゼLys−Cから選択される2つ以上のプロテアーゼを、生体試料のタンパク質分解処理に用いる。
【0020】
ペプチド分離及びアッセイ
一旦溶解物が調製されると、試料中のペプチドは、それらの分析及び測定(定量化)を促進する様々な技術に供され得る。分析を質量分析により行う場合、分析を促進するために、1つ以上のクロマトグラフ法を用いてもよい。
【0021】
一実施形態において、ペプチドは、質量分析計器による分析の前に、液体クロマトグラフィー(LC)によって分離される。例えば、ペプチドを、Jupiter Proteo90Å C12、4μm樹脂(Phenomenex、Torrance、CA)で12cmのベッド長さに自己充填したPicoFrit(100μm ID/10μm先端ID、New Objective)カラムを用いて、nanoAcquityLCシステム(Waters、Milford、MA)、またはEASY−nLC II(Thermo Scientific、San Jose、CA)上で分離することができる。
ペプチドを、800nL/分の流量で、0.1%ギ酸を含有する1%〜50%アセトニトリルの12分のクロマトグラフィー勾配にわたって溶出することができる。液体クロマトグラフィーによって一旦分離されると、溶出されたペプチドは、分析のために質量分析計内に導かれる。一実施形態において、質量分析計は、ナノスプレー源を備える。
【0022】
別の実施形態において、ペプチドは、親和性技術、例えば、免疫学ベースの精製(例えば、免疫親和性クロマトグラフィー)、イオン選択培地におけるクロマトグラフィー、またはペプチドが修飾されている場合は、炭水化物修飾ペプチドの分離のためのレクチンなどの適切な媒体を使用した分離などによって分離され得る。さらに別の実施形態において、質量分光分析前にペプチドの免疫学的分離を用いるSISCAPA法が用いられる。SISCAPA技術は、例えば、米国特許第7,632,686号に記載されている。さらに他の実施形態において、レクチン親和性法(例えば、親和性精製及び/またはクロマトグラフィー)を使用して、質量分析による分析の前に溶解物からペプチドを分離し得る。
レクチンベースの方法を含む、ペプチド群の分離のための方法は、例えば、Geng et al.,J.Chromatography B,752:293−306(2001)に記載されている。免疫親和性クロマトグラフィー技術、レクチン親和性技術、ならびに親和性分離及び/またはクロマトグラフィーの他の形態(例えば、逆相、サイズベースの分離、イオン交換)は、質量分析によるペプチドの分析を促進するために任意の好適な組み合わせで用いることができる。
【0023】
驚くべきことに、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の多くの可能性のあるペプチド配列は、質量分析ベースのSRM/MRMアッセイでの使用に不適切であるか、または効果がないことが明らかになったが、理由は明らかになっていない。特に、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の多くのトリプシンペプチドが、ホルマリン固定パラフィン包埋組織由来のLiquid Tissue(商標)溶解物中で、効率的にまたは全く検出され得なかったことが明らかになった。MRM/SRMアッセイに最も好適なペプチドを予測することができなかったため、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のための信頼でき、かつ正確なSRM/MRMアッセイを開発するために、実際のLiquid Tissue(商標)溶解物中の修飾及び非修飾ペプチドを実験的に識別する必要があった。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、いくつかのペプチドは、うまくイオン化しないか、または他のタンパク質とははっきりと異なる断片を生成せず、また、分離(例えば、液体クロマトグラフィー)中にうまく分解できないか、またはガラスもしくはプラスチック製品に付着する可能性があるため、例えば、質量分析によって検出することが困難である可能性があると考えられている。したがって、ホルマリン固定組織試料から調製されたLiquid Tissue(商標)溶解物(例えば、表1及び2中のペプチド)中に検出することのできる、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来のそれらのペプチドは、SRM/MRMアッセイがALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質SRM/MRMアッセイにおいて用いられ得るペプチドである。一実施形態において、単一の試料中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の断片の同時調製に用いられるプロテアーゼは、トリプシンである。
【0024】
本明細書に記載される様々な実施形態(例えば、表1及び/または2)に見出されるALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1ペプチドは、ホルマリン固定癌組織から得た細胞から調製された複合Liquid Tissue(商標)溶解物中の全タンパク質のトリプシン消化により、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質に由来した。別段の指定がなければ、それぞれの例で、プロテアーゼはトリプシンであった。次いで、Liquid Tissue(商標)溶解物を質量分析によって分析し、質量分析によって検出及び分析されるALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来のそれらのペプチドを決定した。質量分光分析用に好ましい特異的サブセットのペプチドの特定は、次の項目に基づいている。1)タンパク質由来の1つ以上のどのペプチドがLiquid Tissue(商標)溶解物の質量分析中にイオン化するかの実験的決定、及び2)Liquid Tissue(商標)溶解物を調製するのに使用されるプロトコル及び実験条件におけるペプチドの生き残る能力。この後者の特性は、ペプチドのアミノ酸配列のみならず、ペプチド内の修飾アミノ酸残基の、試料調製の間で修飾された形態で生き残る能力までも及ぶものである。
【0025】
ホルマリン(ホルムアルデヒド)固定組織から直接得た細胞由来のタンパク質溶解物を、Liquid Tissue(商標)試薬及びプロトコルを用いて調製し、これは、組織の顕微解剖により試料チューブに細胞を収集し、続いて、細胞をLiquid Tissue(商標)緩衝液中で長期間加熱することを伴う。一旦ホルマリン誘導架橋がマイナスの影響を受けると、組織/細胞は、トリプシンなどのプロテアーゼを使用して、予測可能な様式で完全に消化されるが、他のプロテアーゼを使用してもよい。それぞれのタンパク質溶解物は、プロテアーゼによる無傷のポリペプチドの消化により一群のペプチドへと変化する。それぞれのLiquid Tissue(商標)溶解物を分析し(例えば、イオントラップ質量分析により)、複数のペプチドの包括的プロテオミック調査を行った。
この場合、それぞれのタンパク質溶解物中に存在する全細胞性タンパク質から質量分析により特定され得る可能な限り多くのペプチドを特定するものとして、データを提示した。
単一の複合タンパク質/ペプチド溶解物からできる限り多くのペプチドを識別するためにイオントラップ質量分析計または包括的プロファイリングを実施することのできる質量分析計の別の形態が、典型的に分析に用いられる。SRM/MRMアッセイを、MALDI、イオントラップ、または三連四重極を含む任意の種類の質量分析計において開発及び実行することができるが、SRM/MRMアッセイ用の最も都合のよい装置プラットフォームは、三連四重極装置プラットフォームであると考えられることが多い。
【0026】
一旦採用された条件下で、単一の溶解物の単一MS分析により可能な限り多くのペプチドが特定されると、ペプチドの一覧が照合され、その溶解物中に検出されたタンパク質を判定するために使用された。そのプロセスは、複数のLiquid Tissue(商標)溶解物に対して繰り返され、ペプチドの非常に長い一覧を単一のデータセットに並べた。その種類のデータセットは、(プロテアーゼ消化後に)分析されたその種類の生体試料中で、具体的には生体試料のLiquid Tissue(商標)溶解物中で検出され得、故に、例えば、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質などの特定のタンパク質に対するペプチドを含むペプチドを表すと見なされ得る。
【0027】
一実施形態において、ALK(例えば、NCBI受託番号Q9UM73、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5)、Ros(例えば、NCBI受託番号P08922、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8、Ron(例えば、NCBI受託番号Q04912、配列番号9、配列番号10、配列番号11。配列番号12、及び配列番号13)、Ret(例えば、NCBI受託番号P07949、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、及び配列番号26)、TS(例えば、NCBI受託番号P04818、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、及び配列番号35)、ならびに/またはFGFR1(例えば、NCBI受託番号P11362、配列番号36、配列番号37、配列番号38、及び配列番号39)の絶対もしくは相対量の決定に有用であると特定されるALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1トリプシンペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16。配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、及び配列番号39のペプチドの1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、もしくは10以上、またはすべてを含み、これらのそれぞれは表1に記載される。これらのペプチドのそれぞれは、ホルマリン固定パラフィン包埋組織から調製されるLiquid Tissue(商標)溶解物における質量分析によって検出された。故に、表1中のペプチドのそれぞれ、またはそれらのペプチドの任意の組み合わせ(例えば、表1に列挙されるこれらのペプチドの内の1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、または7つ以上、8つ以上、9つ以上、または10以上)は、ホルマリン固定患者または対象組織中直接を含む、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の定量的SRM/MRMアッセイでの使用の候補である。
【表1】
【0028】
表1に記載されるALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1ペプチドは、前立腺、結腸、及び乳房を含む異なるヒト器官の複数の異なるホルマリン固定組織の複数のLiquid Tissue(商標)溶解物から検出されたものを含む。これらのペプチドのそれぞれは、ホルマリン固定組織中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の定量的SRM/MRMアッセイに有用であると見なされる。これらの実験のさらなるデータ分析では、いずれの特定の器官部位に由来するいずれの特定のペプチドに対しても、選択性は観察されなかった。このため、これらのペプチドのそれぞれは、任意の生体試料または体内の任意の器官部位に由来する任意のホルマリン固定組織由来のLiquid Tissue(商標)溶解物におけるALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のSRM/MRMアッセイを行うのに好適であると考えられる。
【0029】
別の実施形態において、SRM/MRMアッセイは、TS及びFGFR1のそれぞれに対して1つまたは2つのペプチドを用いる(例えば、表1中に列記されるペプチド)。別の実施形態において、SRM/MRMアッセイは、ALK、Ros、Ron及び/またはRetのそれぞれに対して1つまたは2つのペプチドを用いる(例えば、表1中に列記されるペプチド)。
【0030】
他の実施形態において、ALK及びRosタンパク質の一方または両方がアッセイされ、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のうちの1つ、2つ、3つ、もしくは4つが、SRM/MRMアッセイ(複数可)を使用してアッセイされる。そのような実施形態の一例において、Ron及びRetタンパク質の一方もしくは両方に対する少なくとも1つのペプチドまたは少なくとも2つのペプチドが、SRM/MRMアッセイによってアッセイされ(例えば、表1中に列記されるRon及びRetペプチド)、ALK、Ros、TS、及び/またはFGFR1のうちのいずれか1つ、2つ、3つ、または4つに対する少なくとも1つのペプチドまたは少なくとも2つのペプチドが、アッセイされる(例えば、表1中に列記されるペプチド)。そのような実施形態の別の例において、ALK及びRosタンパク質のうちの一方もしくは両方に対する少なくとも1つまたは少なくとも2つのペプチドが、SRM/MRMアッセイによってアッセイされ(例えば、表1中に列記されるペプチド)、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1のうちのいずれかに対する少なくとも1つまたは少なくとも2つのペプチドが、アッセイされる(例えば、表1中に列記されるペプチド)。同位体標識されているが、それ以外にこれらの実施形態のうちのいずれかに示されるペプチドのうちの1つ以上と同一であるペプチドを含む組成物が、本明細書において提供され、それらの調製及び使用、具体的には質量分析標準物質としての使用が下記に記載される。
【0031】
一実施形態において、表1中の1つ以上のペプチド、またはこれらのペプチドの任意の組み合わせ(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、または11すべて)が、免疫学的方法(例えば、ウエスタンブロット法またはELISA)を含むが、これに限定されない質量分析に依存しない方法によりアッセイされる。一実施形態では、これらのアッセイは、ホルマリン固定組織を用いて行われる。ペプチド(複数を含む)(絶対的または相対的)の量に対する情報がどのように得られるかに関わらず、この情報は、患者または対象の癌の存在を示す(診断する)こと、癌の病期/グレード/状態を決定すること、予後を示すこと、または患者または対象に対する治療剤または治療レジメンを決定すること等を含む、本明細書に記載されるいずれの方法にも用いることができる。
【0032】
他の実施形態において、免疫学的方法(例えば、ウエスタンブロット法またはELISA)を含むが、これに限定されない質量分析に依存しない方法により、ALK及びRosタンパク質の一方または両方がアッセイされ、Ron、Ret、TS、及びFGFR1タンパク質のうちの1つ、2つ、3つ、または4つがアッセイされる。そのような実施形態の一例において、ALK及びRosタンパク質の一方または両方に対する少なくとも1つまたは少なくとも2つのペプチドがアッセイされ(例えば、表1中に列記されるALK及びROSペプチド)、Ron、Ret、TS、及びFGFR1タンパク質のうちのいずれか1つ、2つ、3つ、または4つに対する少なくとも1つまたは少なくとも2つのペプチドがアッセイされる(例えば、表1中に列記されるペプチド)。そのような実施形態の別の例において、ALK及びRonタンパク質の一方または両方に対する少なくとも1つまたは少なくとも2つのペプチドが(例えば、表1中に列記されるALK及びRonペプチド)、およびRos、Ret、TS、及びFGFR1タンパク質のいずれかに対する少なくとも1つまたは少なくとも2つのペプチドがアッセイされる(例えば、表1中に列記されるペプチド)。
【0033】
SRM/MRMアッセイを行う上での重要な考慮すべきことは、ペプチドの分析に採用し得る装置の種類である。SRM/MRMアッセイを、MALDI、イオントラップ、または三連四重極を含む任意の種類の質量分析計において開発及び実行することができるが、SRM/MRMアッセイ用の現在最も都合のよい装置プラットフォームは、三連四重極装置プラットフォームであると考えられることが多い。その種類の質量分析計が、細胞内に含まれる全タンパク質由来の何十万から何百万の個別のペプチドからなり得る極めて複雑化したタンパク質溶解物中の単一の単離標的ペプチドを分析するための最適の装置であると考えることができる。
【0034】
ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来のそれぞれのペプチドのSRM/MRMアッセイを最も効率よく実施するためには、分析におけるペプチド配列に加えて情報を利用することが望ましい。そのさらなる情報は、アッセイを効率的に行うことが可能となるように、正しく、的を絞った特異的標的化ペプチドの分析を行うように、質量分析計(例えば、三連四重極質量分析計)を指示し、それに命令を与える際に用いることができる。
【0035】
一般に、標的ペプチド、ならびに特定のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1ペプチドに関するさらなる情報は、各ペプチドのモノアイソトピック質量、その前駆物質電荷状態、前駆物質m/z値、m/z遷移イオン、及び各遷移イオンのイオン型のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上を含み得る。ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のためのSRM/MRMアッセイを開発するために使用され得るさらなるペプチド情報は、表1中の一覧の12個のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1ペプチドについて表2中に示される。表2に示されるペプチドについて記載されるこのさらなる情報が、作成され、得られ、他のプロテアーゼまたはプロテアーゼの組み合わせ(例えば、トリプシン及び/またはLys C)の作用によって産出されるものを含む、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の任意の他のペプチドの分析に適用され得る。
【表2】
【0036】
いくつかの実施形態において、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のアッセイに好適なペプチド(例えば、表1に示され、配列番号1〜39として示されるペプチド)は、切断されるとサブペプチドを産出するさらなるタンパク質分解部位をペプチド配列の内部に含有し得る。そのようなサブペプチドは、所望のプロテアーゼのタンパク質分解切断部位に対する識別されたペプチドの配列を分析することによって認識可能である。一実施形態において、トリプシンペプチドは、トリプシンによるさらなる切断時にサブペプチドをもたらすことができるさらなる内部トリプシン切断部位を含み得る。別の実施形態において、トリプシンペプチドは、トリプシン、GluC、AspN、キモトリプシン、及び/またはLys Cのうちのいずれか1つまたは2つ以上による切断時にサブペプチドの形成をもたらすことのできる、トリプシンGluC、AspN、キモトリプシン、及び/またはLys Cを含むが、これらに限定されない、プロテアーゼのための内部部位を含有し得る。別の実施形態において、Lys Cペプチドは、GluC、AspN、キモトリプシン、及び/またはトリプシンのうちのいずれか1つまたは2つ以上による切断時にサブペプチドの形成をもたらすことのできる、GluC、AspN、キモトリプシン、及び/またはトリプシンなどの他のプロテアーゼのための内部部位を含有し得る。そのようなサブペプチド、及び具体的には、配列番号1〜39で示されるペプチドのうちのいずれか1つ以上のトリプシン、GluC、AspN、キモトリプシン、及び/またはLys切断断片が示され、本開示の範囲内であることが理解される。
【0037】
本明細書に示される実施形態は、表1及び2中のペプチドのうちの1つ以上を含む組成物を含み、同位体標識されているが、それ以外に表1及び2中に見出されるペプチドのうちの1つ以上と同一であるペプチドを任意に含み得る。いくつかの実施形態において、該組成物は、表1及び2中のペプチドのうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、または39すべてを含む。そのような組成物は、アミノ酸配列が、同位体標識されているが、それ以外に表1及び2中に見出されるペプチドのうちの1つ以上と同一であるペプチドを含むペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を任意に含み得る。表1及び2中のペプチドのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ以上を含む、同位体標識された合成もしくは天然ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が用いられる場合、プロテアーゼ処理は、同位体標識されているが、それ以外に表1及び2中のペプチドと同一であるペプチドを解放する。そのような同位体標識された生物学的または生合成ペプチドは、同位体標識されたアミノ酸を使用して、例えば、プログラムされた細胞溶解物中、または組織培養物中で調製され得る。該同位体標識ペプチドのそれぞれは、
18O、
17O、
34S、
15N、
13C、
2H、またはそれらの組み合わせからなる群より独立して選択される1つ以上の同位体で標識され得る。ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来のペプチドを含む組成物は、同位体標識されていてもいなくても、そのタンパク質由来のペプチドのすべて(例えば、トリプシンペプチドの完全なセット)を含有する必要はない。いくつかの実施形態において、該組成物は、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質から組み合わせたすべてのペプチド、及び特に、表1及び表2中に示されているペプチドのすべてを含有するわけではない。ペプチドを含有する組成物は、乾燥もしくは凍結乾燥した材料、液状(例えば、水性)溶液もしくは懸濁液、アレイ、またはブロットの形態であり得る。
【0038】
一実施形態において、特定のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1ペプチドに関するさらなる情報は、各ペプチドのモノアイソトピック質量、その前駆物質電荷状態、前駆物質m/z値、m/z遷移イオン、ならびにALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のLys Cタンパク質分解から生じるペプチドに対する各遷移イオンのイオン型のうちの1つ以上、2つ以上、または3つ以上を含む。
【0039】
別の実施形態において、特定のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1ペプチドに関するさらなる情報は、各ペプチドのモノアイソトピック質量、その前駆物質電荷状態、前駆物質m/z値、m/z遷移イオン、ならびにALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のトリプシンタンパク質分解から生じるペプチドに対する各遷移イオンのイオン型のうちの1つ以上、2つ以上、または3つ以上を含む。
【0040】
さらに別の実施形態において、特定のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1ペプチドに関するさらなる情報は、各ペプチドのモノアイソトピック質量、その前駆物質電荷状態、前駆物質m/z値、m/z遷移イオン、ならびにALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のトリプシン及び/またはLys Cタンパク質分解から生じるペプチドに対する各遷移イオンのイオン型のうちの1つ以上、2つ以上、または3つ以上を含む。一実施形態において、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のそれぞれに由来の単一のトリプシン及び/またはLys Cタンパク質分解ペプチドは、関連するさらなる情報とともに、診断決定に用いられる。したがって、例えば、配列番号4、7、9、16、31、及び/または36のペプチド、ならびにそれらのペプチド(表3参照)に関するさらなる情報が、診断分析に用いられる。
【表3】
【0041】
特定の実施形態
本発明の特定の実施形態が以下に記載される。
【0042】
1.生体試料中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のレベルを測定するための方法であって、質量分析を使用して該生体試料から調製されたタンパク質消化物中の1つ以上の修飾及び/または非修飾ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドの量を検出及び/または定量化することと、該試料中の修飾または非修飾ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のレベルを計算することと、を含み、
該量が相対量または絶対量である、方法。
【0043】
2.1つ以上の修飾または非修飾ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドの量を検出及び/または定量化する前に、該タンパク質消化物を分画するステップをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0044】
3.該分画ステップが、ゲル電気泳動、液体クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、ナノ逆相液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、または逆相高速液体クロマトグラフィーからなる群より選択される、実施形態2に記載の方法。
【0045】
4.該生体試料の該タンパク質消化物が、Liquid Tissue(商標)プロトコルによって調製される、実施形態1〜3のいずれかに記載の方法。
【0046】
5.該タンパク質消化物がプロテアーゼ消化物を含む、実施形態1〜3のいずれかに記載の方法。
【0047】
6.該タンパク質消化物がトリプシン及び/またはlys C消化物を含む、実施形態5に記載の方法。
【0048】
7.該質量分析が、タンデム質量分析、イオントラップ質量分析、三連四重極質量分析、MALDI−TOF質量分析、MALDI質量分析、及び/または飛行時間型質量分析を含む、実施形態1〜6のいずれかに記載の方法。
【0049】
8.使用される質量分析のモードが、選択反応モニタリング(SRM)、多重反応モニタリング(MRM)、及び/もしくは複数選択反応モニタリング(mSRM)、またはそれらの任意の組み合わせである、実施形態7に記載の方法。
【0050】
9.ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16。配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、及び配列番号39として示されるアミノ酸配列を含む、実施形態1〜8のいずれかに記載の方法。
【0051】
10.生体試料が、血液試料、尿試料、血清試料、腹水試料、喀痰試料、リンパ液、唾液試料、細胞、または固形組織である、実施形態1〜9のいずれかに記載の方法。
【0052】
11.生体試料がホルマリン固定組織である、実施形態1〜10のいずれかに記載の方法。
【0053】
12.生体試料がパラフィン包埋組織である、実施形態1〜11のいずれかに記載の方法。
【0054】
13.生体試料が腫瘍から得られる組織である、実施形態1〜12のいずれかに記載の方法。
【0055】
14.腫瘍が原発腫瘍である、実施形態13に記載の方法。
【0056】
15.腫瘍が二次腫瘍である、実施形態13に記載の方法。
【0057】
16.修飾及び/または非修飾ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドを定量化することをさらに含む、実施形態1〜15のいずれかに記載の方法。
【0058】
17(a).ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドを定量化することが、1つの生体試料中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の約8〜約45個のアミノ酸残基のアミノ酸配列を含む1つ以上のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドの量を、異なる別個の試料または生体試料中の同一のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドの量と比較することを含む、実施形態1〜16のいずれかに記載の方法。
【0059】
17(b).ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドを定量化することが、1つ以上の生体試料中の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16。配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、及び配列番号39に示されるALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の約8〜約45個のアミノ酸残基のアミノ酸配列を含む1つ以上のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドの量を、異なる別個の生体試料中の同一のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドの量と比較することを含む、実施形態1〜16のいずれかに記載の方法。
【0060】
18.1つ以上のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドを定量化することが、生体試料中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドのそれぞれの量を、既知量の添加内部標準ペプチドとの比較によって決定することを含み、生体試料中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドがそれぞれ、同一のアミノ酸配列を有する添加内部標準ペプチドと比較される、実施形態17(a)または17(b)に記載の方法。
【0061】
19.内部標準ペプチドが同位体標識ペプチドである、実施形態18に記載の方法。
【0062】
20.同位体標識内部標準ペプチドが、
18O、
17O、
34S、
15N、
13C、
2H、またはそれらの組み合わせから選択される1つ以上の重安定同位体を含む、実施形態19に記載の方法。
【0063】
21.タンパク質消化物中の1つ以上の修飾または非修飾ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドの量を検出及び/または定量化することが、修飾及び/または非修飾ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の存在、ならびに患者または対象における癌との関連性を示す、実施形態1〜20のいずれかに記載の方法。
【0064】
22.1つ以上の修飾及び/または非修飾ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/もしくはFGFR1タンパク質断片ペプチドの量、または該ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/もしくはFGFR1タンパク質の量の該検出及び/または定量化の結果を、癌の診断上の病期/グレード/状態と相関させることをさらに含む、実施形態21に記載の方法。
【0065】
23.1つ以上の修飾または非修飾ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/もしくはFGFR1タンパク質断片ペプチドの量、または該ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/もしくはFGFR1タンパク質の量の該検出及び/または定量化の結果を、癌の診断上の病期/グレード/状態と相関させることが、他のタンパク質または他のタンパク質からのペプチドの量を検出及び/または定量化することと多重形式で組み合わされて、癌の診断上の病期/グレード/状態に関するさらなる情報を提供する、実施形態22に記載の方法。
【0066】
24.生体試料が得られる患者または対象のために、1つ以上のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/もしくはFGFR1タンパク質断片ペプチドの有無もしくは量、またはALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/もしくはFGFR1タンパク質の量に基づいて、治療を選択することをさらに含む、実施形態1〜23のいずれかに記載の方法。
【0067】
25.該生体試料が得られた患者または対象に、治療的有効量の治療剤を投与することをさらに含み、治療剤及び/または投与される治療剤の量が、1つ以上の修飾または非修飾ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/もしくはFGFR1タンパク質断片ペプチドの量、またはALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/もしくはFGFR1タンパク質の量に基づく、実施形態1〜24のいずれかに記載の方法。
【0068】
26.治療または治療剤が、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質を発現する癌細胞に指向される、実施形態24及び25に記載の方法。
【0069】
27.生体試料が、Liquid Tissue(商標)プロトコル及び試薬を用いて1つ以上の修飾または非修飾ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドの量を定量化するために処理されたホルマリン固定腫瘍組織である、実施形態1〜27のいずれかに記載の方法。
【0070】
28.該1つ以上の修飾または非修飾ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドが、表1中のペプチドのうちの1つ以上である、実施形態1〜28のいずれかに記載の方法。
【0071】
29.表1中のペプチドのうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、もしくは10以上、及び/またはそれらに対する抗体を含む組成物。
【0072】
30.表2中のペプチドのうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、もしくは10以上、及び/またはそれらに対する抗体を含む、実施形態30に記載の組成物。
【0073】
例示的なSRM/MRMアッセイ法
1.以下に記載される方法は、1)ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の質量分析ベースのSRM/MRMアッセイのために使用することのできるALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の候補ペプチドを特定し、2)ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の標的ペプチドのための個別のSRM/MRMアッセイ(1つまたは複数)を開発し、3)定量アッセイを癌診断及び/または最適治療の選択に適用するために使用された。ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のためのSRM/MRM候補断片ペプチドの特定:
a.プロテアーゼ(1つまた複数)(トリプシンを含んでも含まなくてもよい)を使用して、ホルマリン固定生体試料からLiquid Tissue(商標)タンパク質溶解物を調整して、タンパク質を消化させる。
b.イオントラップタンデム質量分析計において、Liquid Tissue(商標)溶解物中の全タンパク質断片を分析し、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の全断片ペプチドを特定し、この場合、個別の断片ペプチドは、リン酸化またはグリコシル化などのいかなるペプチド修飾も含有しない。
c.イオントラップタンデム質量分析計において、Liquid Tissue(商標)溶解物中の全タンパク質断片を分析し、例えば、リン酸化またはグリコシル化残基などのペプチド修飾を有するALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の全断片ペプチドを特定する。
d.完全長ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質全体から特定の消化方法により生成された全ペプチドを測定することは潜在的に可能であるが、SRM/MRMアッセイの開発に使用される好ましいペプチドは、ホルマリン固定生体試料から調製された複合Liquid Tissue(商標)タンパク質溶解物中で直接質量分析により特定されるものである。
e.患者または対象組織中で特異的に修飾され(リン酸化、グリコシル化等)、かつイオン化され、故に、ホルマリン固定生体試料からのLiquid Tissue(商標)溶解物を分析するとき、質量分析計中で検出することができるペプチドは、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のペプチド修飾をアッセイするための候補ペプチドとして特定される。
【0074】
2.ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の断片ペプチドのための質量分析アッセイ:
a.Liquid Tissue(商標)溶解物中で特定された個別の断片ペプチドのための三連四重極質量分析計におけるSRM/MRMアッセイが、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来のペプチドに適用される。
i.ゲル電気泳動法、液体クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動法、ナノ逆相液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、または逆相高速液体クロマトグラフィーが含まれるが、これらに限定されない、最適クロマトグラフィー条件のための断片ペプチドに対する最適保持時間を決定する。
ii.それぞれのペプチドに対するSRM/MRMアッセイを開発するために、ペプチドのモノアイソトピック質量、それぞれのペプチドに対する前駆物質電荷状態、それぞれのペプチドに対する前駆物質m/z値、それぞれのペプチドに対するm/z遷移イオン、及びそれぞれの断片ペプチドに対するそれぞれの遷移イオンのイオン型を決定する。
iii.次いで、(i)及び(ii)からの情報を用いて、三連四重極質量分析計においてSRM/MRMアッセイを行うことができ、この場合、それぞれのペプチドは、三連四重極質量分析計で行われる独特のSRM/MRMアッセイを明確に規定する特徴的かつ固有のSRM/MRM特徴的ピークを有する。
b.SRM/MRM質量分析の分析から固有のSRM/MRM特徴的ピーク面積の関数として、検出されるALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の断片ペプチドの量が、特定のタンパク質溶解物中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の相対及び絶対量の両方を示すことができるように、SRM/MRM分析を実施する。
i.相対的定量化は、以下により得ることができる。
1.(a)1つのホルマリン固定生体試料からのLiquid Tissue(商標)溶解物中で検出された所与のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1ペプチドのSRM/MRM特徴的ピーク面積を、(b)少なくとも第2、第3、第4、またはそれを超えるホルマリン固定生体試料からの少なくとも第2、第3、第4、またはそれを超えるLiquid Tissue(商標)溶解物中の同一のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1断片ペプチドの同一のSRM/MRM特徴的ピーク面積と比較することにより、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の存在の増加または減少を決定すること。
2.(a)1つのホルマリン固定生体試料からのLiquid Tissue(商標)溶解物中で検出された所与のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1ペプチドのSRM/MRM特徴的ピーク面積を、(b)異なる別個の生物学的起源由来の他の試料中の他のタンパク質由来の断片ペプチドから生成されたSRM/MRM特徴的ピーク面積と比較することにより、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の存在の増加または減少を決定し、この場合、2つの試料間のペプチド断片に対するSRM/MRM特徴的ピーク面積の比較は、各試料中で分析されたタンパク質の量に正規化される。
3.ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の変化するレベルを、様々な細胞条件下でのそれらの発現レベルを変化させない他のタンパク質のレベルに正規化するために、(a)所与のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1ペプチドのSRM/MRM特徴的ピーク面積を、(b)ホルマリン固定生体試料からの同一のLiquid Tissue(商標)溶解物中の異なるタンパク質に由来する他の断片ペプチドのSRM/MRM特徴的ピーク面積と比較することにより、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の存在の増加または減少を決定すること。
4.これらのアッセイを、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の非修飾断片ペプチド、ならびに修飾断片ペプチドの両方に適用することができ、この場合、修飾には、リン酸化及び/またはグリコシル化が含まれるが、これらに限定されず、修飾ペプチドの相対レベルは、非修飾ペプチドの相対量を決定するのと同一の様式で決定される。
ii.所与のペプチドの絶対定量化は、(a)個別の生体試料中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の所与の断片ペプチドのSRM/MRM特徴的ピーク面積を、(b)生体試料からのタンパク質溶解物中にスパイクされた内部断片ペプチド標準物のSRM/MRM特徴的ピーク面積と比較することにより、達成され得る。
1.内部標準物は、調べられているALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の断片ペプチドの標識された合成バージョンである。この標準物は、既知量で試料中にスパイクされ、SRM/MRM特徴的ピーク面積は、生体試料中の内部断片ペプチド標準物及び天然断片ペプチドの両方に対し、個別に決定され、その後、両方のピーク面積が比較され得る。
2.これは、非修飾断片ペプチド及び修飾断片ペプチドに適用可能であり、この場合、修飾には、リン酸化及び/またはグリコシル化が含まれるが、これに限定されず、また、修飾ペプチドの絶対レベルは、非修飾ペプチドの絶対的量を決定するのと同一の方法で決定され得る。
【0075】
3.断片ペプチド定量化の癌診断及び治療への適用
a.ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の断片ペプチドレベルの相対及び/または絶対定量化を実施し、癌の分野で十分に理解されている、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質発現と患者及び対象の腫瘍組織における癌の病期/グレード/状態との以前に決定された関連性が確認されることを実証する。
b.ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の断片ペプチドレベルの相対及び/または絶対定量化を実施し、異なる治療戦略からの臨床転帰との相関を実証し、この場合、この相関は、この分野ですでに実証されているか、または患者もしくは対象のコホート、及びそれらの患者もしくは対象からの組織にわたる相関研究により将来実証することができる。一旦以前に確立された相関関係、または将来得られる相関関係のいずれかがこのアッセイにより確認されると、本アッセイ方法を使用して、最適治療戦略を決定することができる。
【0076】
ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の断片ペプチドの質量分析アッセイ
a.タンパク質溶解物中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の相対及び/または絶対量を決定するために検出されるALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の断片ペプチドの量を決定するためのSRM/MRMアッセイ。
i.相対定量化は、下記により得ることができる。
1.(a)1つのホルマリン固定生体試料からのLiquid Tissue(商標)溶解物中で検出される所与のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質ペプチドのSRM/MRM特徴的ピーク面積を、(b)少なくとも第2、第3、第4、またはそれを超えるホルマリン固定生体試料からの少なくとも第2、第3、第4、またはそれを超えるLiquid Tissue(商標)溶解物中の同一のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドの同一のSRM/MRM特徴的ピーク面積と比較することにより、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の存在の増加または減少を決定すること。
2.(a)1つのホルマリン固定生体試料からのLiquid Tissue(商標)溶解物中で検出される所与のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質ペプチドのSRM/MRM特徴的ピーク面積を、(b)異なる別個の生物学的起源由来の他の試料中の他のタンパク質由来の断片ペプチドから生成したSRM/MRM特徴的ピーク面積と比較することにより、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の存在の増加または減少を決定することであり、2つの試料間のペプチド断片に対するSRM/MRM特徴的ピーク面積比較は、各試料中で分析されたタンパク質の量に正規化される。
3.ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の変化するレベルを、様々な細胞条件下でのそれらの発現レベルを変化させない他のタンパク質のレベルに正規化するために、(a)所与のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1ペプチドのSRM/MRM特徴的ピーク面積を、(b)ホルマリン固定生体試料からの同一のLiquid Tissue(商標)溶解物中の異なるタンパク質に由来する他の断片ペプチドのSRM/MRM特徴的ピーク面積と比較することにより、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の存在の増加または減少を決定すること。
4.これらのアッセイを、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の非修飾断片ペプチド、ならびに修飾断片ペプチドの両方に適用することができ、修飾には、リン酸化及び/またはグリコシル化が含まれるが、これらに限定されず、修飾ペプチドの相対レベルは、非修飾ペプチドの相対量を決定するのと同一の様式で決定される。
ii.所与のペプチドまたはそれが由来するタンパク質の絶対定量化は、(a)個別の生体試料中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の所与の断片ペプチドのSRM/MRM特徴的ピーク面積を、(b)生体試料からのタンパク質溶解物中にスパイクされた内部断片ペプチド標準物のSRM/MRM特徴的ピーク面積と比較することにより達成され得る。
【0077】
内部標準物は、調べられているALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質由来の断片ペプチドの標識された合成バージョン(または、タンパク質分解時に放出される断片ペプチドの標識された合成バージョンを含むタンパク質もしくはポリペプチド)である。この標準物は、既知量で試料中にスパイクされ、SRM/MRM特徴的ピーク面積が、生体試料中の内部断片ペプチド標準物及び天然断片ペプチドの両方に対し、別々に決定され、その後、両ピーク面積が比較され得る。
【0078】
これは、非修飾断片ペプチド及び修飾断片ペプチドに適用可能であり、この場合、修飾には、リン酸化及び/またはグリコシル化が含まれるが、これに限定されず、また、修飾ペプチドの絶対レベルは、非修飾ペプチドの絶対的量を決定するのと同一の方法で決定され得る。
【0079】
ホルマリン固定患者由来または対象由来の組織の分析に基づいた組織中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質レベルの評価は、それぞれの特定の患者または対象に関する診断、予後、及び治療的関連情報を提供することができる。生体試料中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のレベルを測定するための方法が、本明細書に記載され、この方法は、質量分析を使用して、該生体試料から調製されたタンパク質消化物中の1つ以上の修飾または非修飾ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドの量を検出及び/または定量化することと、該試料中の修飾または非修飾ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のレベルを計算することと、を含み、該レベルは、相対レベルまたは絶対レベルである。関連実施形態において、1つ以上のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドを定量化することは、既知量の添加内部標準ペプチドとの比較により、生体試料中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドのそれぞれの量を決定することを含み、生体試料中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質断片ペプチドがそれぞれ、同一のアミノ酸配列を有する内部標準ペプチドと比較される。いくつかの実施形態において、内部標準物は、
18O、
17O、
34S、
15N、
13C、
2H、またはそれらの組み合わせから選択される1つ以上の重安定同位体を含む、同位体標識内部標準ペプチドである。
【0080】
本明細書に記載される生体試料中のALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質(または、そのサロゲートとしての断片ペプチド)のレベルを測定するための方法は、患者または対象における癌の診断上の指標として使用され得る。
一実施形態において、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のレベルの測定からの結果を用いて、組織中に見出されるALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のレベルを、正常及び/または癌性もしくは前癌性組織中に見出されるALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質のレベルと相関させること(例えば、比較すること)により、診断上の癌の病期/グレード/状態を決定し得る。
【0081】
ホルマリン固定患者組織中の特定のタンパク質のレベルを検出するために使用されている唯一の現行方法は、免疫組織化学(IHC)である。この方法は、患者腫瘍組織試料からの単一の組織切片において一回につき1つのタンパク質のみを分析する。このため、複数のタンパク質を分析するためには、複数の組織切片を調べなければならず、それには多くの時間及び労力がかかる。IHCは、抗体を使用して標的タンパク質の存在を検出し、抗体のタンパク質への非特異的結合の可能性があるので、いかなるIHC実験においても信号バックグラウンドの生来の大きな可能性がある。加えて、IHCは、良くても半定量的でしかない。これらの問題に起因して、IHCは、複数のタンパク質の客観的な定量的分析を同時に提供することができない。本明細書に記載される方法は、患者組織試料の単一の切片を利用して、100%アッセイ特異性で、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の客観的定量化を同時に提供することができ、多くの時間及び費用を節約しながら、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質の発現に関するより一層有益なデータを提供する。
【0082】
この多重SRM/MRMアッセイはまた、EGFR、IGF−1R、及びcMetなどの薬物標的タンパク質を含む、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質以外の他のさらなるタンパク質の同時分析を含むことができる。これは、さらなるタンパク質の分析が、さらなる薬物が特定の癌の治療に有用であり得ることも示すため、有益である。さらなる例となる薬物標的タンパク質の分析に基づいたさらなる薬物の例としては、EGFR受容体を標的とするアービタックス、IGF−1Rを標的とするフィギツムマブ、及びc−Met及び血管内皮成長因子受容体2(VEGFR−2)を標的とするフォレチニブ(Foretinib)が挙げられる。
【0083】
核酸及びタンパク質の両方を同一のLiquid Tissue(商標)生体分子の調製物から分析することができるので、タンパク質分析に使用される同一の試料中の核酸から、疾患の診断及び薬物治療決定に関するさらなる情報を生成することが可能である。例えば、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1タンパク質が、特定の細胞により増加したレベルで発現される場合、SRMによりアッセイされるとき、データは細胞の状態に関する情報を提供することができ、細胞の、制御されない成長、潜在的な薬物耐性、及び癌の発生の可能性を得ることができる。同時に、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/またはFGFR1遺伝子ならびに/またはそれらがコードする核酸及びタンパク質の状態に関する情報(例えば、mRNA分子及びそれらの発現レベルまたはスプライス変異体)を、同一の生体分子の調製物中に存在する核酸から得ることができる。一実施形態において、ALK、Ros、Ron、Ret、TS、及び/もしくはFGFR1タンパク質、ならびに/または1つ、2つ、2つ、3つ、4つ以上のさらなるタンパク質に関する情報は、それらのタンパク質をコードする核酸を試験することによって分析され得る。これらの核酸を、例えば、シークエンシング法、ポリメラーゼ連鎖反応法、制限断片多型分析、欠失の識別、挿入、及び/または単一塩基対多型、遷移、塩基転換、もしくはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、突然変異体の存在の決定のうちの1つ以上、2つ以上、または3つ以上により、調査することができる。
【0084】
上の説明ならびに方法及び組成物の例示的な実施形態は、本開示の範囲を例示説明するものである。しかしながら、当業者には明らかであろう変形のため、本開示は、上に記載される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。