(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記油溜部は、前記回転軸および前記スラスト軸受を収容するベアリングハウジングに対して、前記スラスト軸受を支持するインサート部と、前記スラスト軸受との間に設けられる板状のディフレクターからなることを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
前記油溜部は、前記回転軸および前記スラスト軸受を収容するベアリングハウジングに対して、前記スラスト軸受を支持するインサート部からなることを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スラスト軸受からディフレクターへの潤滑油量が増加し、ディフレクター内に潤滑油が充満すると、回転軸の回転においてディフレクターから潤滑油が排出されずにディフレクター内に再流入して攪拌抵抗により損失が発生する。しかも、ディフレクター内に潤滑油が充満すると、ディフレクターとスラストブッシュとの摺動面であるシール面から潤滑油が漏れ出てシール性が低下するおそれがある。従って、スラスト軸受での潤滑油の排出性を向上することが望まれている。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、スラスト軸受での潤滑油の排出性を向上することのできる軸受装置および排気タービン過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明の軸受装置は、回転軸と、前記回転軸に設けられて前記回転軸の軸方向への移動を規制するスラスト軸受と、軸方向で前記スラスト軸受に隣接し前記回転軸を囲むように円弧上に形成され下方が開放して設けられた油溜空間が形成されていると共に、前記油溜空間において前記回転軸の中心を通過する水平面以下の領域で前記スラスト軸受側に突出しつつ前記回転軸の回転方向に沿って傾斜する傾斜面が形成された油溜部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この軸受装置によれば、スラスト軸受から油溜空間に至った潤滑油は、油溜空間の下方へ流れるが、回転軸の回転方向において、油溜空間の円弧に沿って流動する。そして、回転軸の中心を通過する水平面以下の領域で流動する潤滑油は、傾斜面に案内されてスラスト軸受側に送り出される。この結果、油溜空間を流動する潤滑油が油溜空間内に再流入することを阻止でき、スラスト軸受での潤滑油の排出性を向上することができる。
【0008】
また、本発明の軸受装置では、前記油溜部は、前記回転軸および前記スラスト軸受を収容するベアリングハウジングに対して、前記スラスト軸受を支持するインサート部と、前記スラスト軸受との間に設けられる板状のディフレクターからなることを特徴とする。
【0009】
この軸受装置によれば、ディフレクターに油溜部の機能を設け、スラスト軸受での潤滑油の排出性を向上することができる。
【0010】
また、本発明の軸受装置では、前記油溜部は、前記回転軸および前記スラスト軸受を収容するベアリングハウジングに対して、前記スラスト軸受を支持するインサート部からなることを特徴とする。
【0011】
この軸受装置によれば、インサート部に油溜部の機能を設け、スラスト軸受での潤滑油の排出性を向上することができる。
【0012】
また、本発明の軸受装置では、前記スラスト軸受は、下方に切欠が形成されており、当該切欠の開口端が前記傾斜面に連続して設けられていることを特徴とする。
【0013】
この軸受装置によれば、傾斜面に切欠の開口端が一致していると、切欠の開口端で傾斜面に案内された潤滑油が切られることになり、油溜空間を流動する潤滑油が油溜空間内に再流入することを阻止する効果を顕著に得ることができる。
【0014】
また、本発明の軸受装置では、前記切欠の開口端が前記傾斜面に連続する傾斜面を有することを特徴とする。
【0015】
この軸受装置によれば、切欠の開口端が傾斜面を有して形成されていることで、切欠の開口端で傾斜面に案内された潤滑油が開口端の傾斜面によりさらに開放された外側に案内されつつ切られることになり、油溜空間を流動する潤滑油が油溜空間内に再流入することを阻止する効果をより顕著に得ることができる。
【0016】
上述の目的を達成するために、本発明の排気タービン過給機は、タービンと、コンプレッサと、前記タービンと前記コンプレッサとを同軸上に連結する回転軸と、前記回転軸に設けられて前記回転軸の軸方向への移動を規制するスラスト軸受と、上述したいずれか1つの軸受装置と、を備えることを特徴とする。
【0017】
この排気タービン過給機によれば、スラスト軸受での潤滑油の排出性を向上することができ、攪拌抵抗により回転軸の回転に損失が発生したり、シール面から潤滑油が漏れ出てシール性が低下したりする事態を防止できる。この結果、高効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スラスト軸受での潤滑油の排出性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0021】
図1は、本実施形態に係る排気タービン過給機の全体構成図である。
図2は、本実施形態に係る排気タービン過給機の軸受部分の拡大図である。
図3は、本実施形態に係る排気タービン過給機の軸受部分の拡大図である。
【0022】
図1に示す排気タービン過給機11は、主に、タービン12と、コンプレッサ13と、回転軸14と、により構成され、これらがハウジング15内に収容されている。
【0023】
ハウジング15は、内部が中空に形成され、タービン12の構成を収容する第一空間部S1をなすタービンハウジング15Aと、コンプレッサ13の構成を収容する第二空間部S2をなすコンプレッサカバー15Bと、回転軸14を収容する第三空間部S3をなすベアリングハウジング15Cと、を有する。ベアリングハウジング15Cの第三空間部S3は、タービンハウジング15Aの第一空間部S1とコンプレッサカバー15Bの第二空間部S2との間に位置している。
【0024】
回転軸14は、タービン12側の端部がタービン側軸受であるジャーナル軸受21により回転自在に支持され、コンプレッサ13側の端部がコンプレッサ側軸受であるジャーナル軸受22により回転自在に支持され、かつスラスト軸受23により回転軸14が延在する軸方向への移動を規制されている。また、回転軸14は、軸方向における一端部にタービン12のタービンディスク24が固定されている。タービンディスク24は、タービンハウジング15Aの第一空間部S1に収容され、外周部に軸流型をなす複数のタービン翼25が周方向に所定間隔で設けられている。さらに、回転軸14は、軸方向における他端部に、コンプレッサ13のコンプレッサ羽根車31が固定されており、コンプレッサ羽根車31は、コンプレッサカバー15Bの第二空間部S2に収容され、外周部に複数のブレード32が周方向に所定間隔で設けられている。
【0025】
また、タービンハウジング15Aは、タービン翼25に対して排気ガスの入口通路26と排気ガスの出口通路27が設けられている。そして、タービンハウジング15Aは、入口通路26とタービン翼25との間にタービンノズル28が設けられており、このタービンノズル28により静圧膨張された軸方向の排気ガス流が複数のタービン翼25に導かれることで、タービン12を駆動回転することができる。さらに、コンプレッサカバー15Bは、コンプレッサ羽根車31に対して空気取込口33と圧縮空気吐出口34が設けられている。そして、コンプレッサカバー15Bは、コンプレッサ羽根車31と圧縮空気吐出口34との間にディフューザ35が設けられている。コンプレッサ羽根車31により圧縮された空気は、ディフューザ35を通って排出される。
【0026】
このように構成された、排気タービン過給機11は、エンジン(図示せず)から排出された排ガスによりタービン12が駆動し、タービン12の回転が回転軸14に伝達されてコンプレッサ13が駆動し、このコンプレッサ13が燃焼用気体を圧縮してエンジンに供給する。従って、エンジンからの排気ガスは、排気ガスの入口通路26を通り、タービンノズル28により静圧膨張され、軸方向の排気ガス流が複数のタービン翼25に導かれることで、複数のタービン翼25が固定されたタービンディスク24を介してタービン12が駆動回転する。そして、複数のタービン翼25を駆動した排気ガスは、出口通路27から外部に排出される。一方、タービン12により回転軸14が回転すると、一体のコンプレッサ羽根車31が回転し、空気取込口33を通って空気が吸入される。吸入された空気は、コンプレッサ羽根車31で加圧されて圧縮空気となり、この圧縮空気は、ディフューザ35を通り、圧縮空気吐出口34からエンジンに供給される。
【0027】
また、排気タービン過給機11において、ベアリングハウジング15Cは、ジャーナル軸受21,22およびスラスト軸受23に潤滑油を供給する潤滑油供給通路40が設けられている。潤滑油供給通路40は、ベアリングハウジング15Cの上部に径方向に沿う第一供給通路41と、ベアリングハウジング15Cの上部に軸方向に沿う第二供給通路42と、ジャーナル軸受21に連通する第三供給通路43と、ジャーナル軸受22に連通する第四供給通路44と、スラスト軸受23に連通する第五供給通路45とから構成されている。第一供給通路41は、基端部が潤滑油タンク(図示略)に連結され、先端部が第二供給通路42の中間部に連通している。第三供給通路43は、基端部が第二供給通路42に連通し先端部がジャーナル軸受21に連通している。第四供給通路44は、基端部が第二供給通路42に連通し先端部がジャーナル軸受22に連通している。第五供給通路45は、基端部が第二供給通路42に連通し先端部がスラスト軸受23に連通している。
【0028】
ジャーナル軸受21,22は、
図1〜
図3に示すように、円筒形状に形成されている。ジャーナル軸受21,22は、ベアリングハウジング15Cにおいて第三空間部S3に設けられた支持部16がなす円柱状の空間に収容されている。各ジャーナル軸受21,22を支持する支持部16は、ジャーナル軸受21,22の間で第三空間部S3の下方に通じる通路16bが形成されている。
【0029】
ジャーナル軸受21は、
図2に示すように、外周面21bが支持部16の内面16aとの間で回転自在に支持され、内周面21cと回転軸14の外周面14aとの間で回転軸14を回転自在に支持する。ジャーナル軸受21は、外周面21bに向けて第三供給通路43の先端部が連通されている。さらに、ジャーナル軸受21は、外周面21bから内周面21cに貫通する通路21aが形成され、通路21aにより第三供給通路43から外周面21bに供給された潤滑油が内周面21cと回転軸14の外周面14aとの間に導かれる。従って、ジャーナル軸受21は、外周面21bと支持部16の内面16aとの間に供給された潤滑油により支持部16に回転自在に支持されると共に、内周面21cと回転軸14の外周面14aとの間に供給された潤滑油により回転軸14を回転自在に支持する。
【0030】
ここで、
図1に示すように、タービン12のタービンディスク24は、軸方向でジャーナル軸受21に隣接して配置されるようにコンプレッサ13側に突出するボス部24aが設けられている。ボス部24aは、円筒形状に形成され、回転軸14においてタービン12側の端部が段部14bを介して細径に形成された部分に嵌め入れられ、当該段部14bに当接して軸方向で位置決めされている。ボス部24aにおいて段部14bに当接する部分は、
図2に示すように、支持部16がなす円柱状の空間のタービン12側の開口を覆う円盤部材であり、軸方向でジャーナル軸受21の側面部21dと間隔Dをおいて対面して配置される対面部24aaを有する。また、ベアリングハウジング15Cは、ボス部24aの外周部に排油空間室47が形成されている。また、タービン12のタービンディスク24は、軸方向でボス部24aとタービンディスク24との間にシール部24bが形成されている。シール部24bは、ベアリングハウジング15Cとの間にシール部を形成する。
【0031】
ジャーナル軸受21において、外周面21b側および内周面21c側に供給された潤滑油は、コンプレッサ13側では、支持部16の通路16bから第三空間部S3の下方へ流れる。一方、ジャーナル軸受21において、外周面21b側および内周面21c側に供給された潤滑油は、タービン12側では、側面部21d側に流れ、対面するボス部24aの対面部24aaにおいて回転軸14の回転の遠心力により径方向外側に送られてボス部24aの外周部の排油空間室47に至り、当該排油空間室47から第三空間部S3の下方へ流れる。
【0032】
ジャーナル軸受22は、
図3に示すように、外周面22bが支持部16の内面16aとの間で回転自在に支持され、内周面22cと回転軸14の外周面14aとの間で回転軸14を回転自在に支持する。ジャーナル軸受22は、外周面22bに向けて第四供給通路44の先端部が連通されている。さらに、ジャーナル軸受22は、外周面22bから内周面22cに貫通する通路22aが形成され、通路22aにより第四供給通路44から外周面22bに供給された潤滑油が内周面22cと回転軸14の外周面14aとの間に導かれる。従って、ジャーナル軸受22は、外周面22bと支持部16の内面16aとの間に供給された潤滑油により支持部16に回転自在に支持されると共に、内周面22cと回転軸14の外周面14aとの間に供給された潤滑油により回転軸14を回転自在に支持する。
【0033】
スラスト軸受23は、
図1に示すように、回転軸14の軸方向でジャーナル軸受22に隣接してコンプレッサ13側に配置されている。スラスト軸受23は、
図3に示すように、回転軸14が挿通される挿通穴23aを有して板状に形成され、ベアリングハウジング15Cに固定されている。スラスト軸受23は、スラストリング17およびスラストスリーブ18を介して回転軸14の軸方向の移動を規制する。
【0034】
スラストリング17は、
図3に示すように、ボス部17aおよびフランジ部17bを有する。ボス部17aは、円筒状に形成され、回転軸14においてコンプレッサ13側の端部が段部14bを介して細径に形成された部分に嵌め入れられ、当該段部14bに当接して軸方向で位置決めされており、スラスト軸受23の挿通穴23aに回転軸14と共に挿通される。フランジ部17bは、ボス部17aにおいて段部14bに当接する部分で径方向外側に突出した円盤部材であり、軸方向でジャーナル軸受22側のスラスト軸受23の板面23cに対面して配置される一方の対面部17baと、軸方向でジャーナル軸受22の側面部22dと間隔Dをおいて対面して配置される他方の対面部17bbと、を有する。
【0035】
スラストスリーブ18は、
図3に示すように、ボス部18aおよびフランジ部18bを有する。ボス部18aは、円筒状に形成され、回転軸14においてコンプレッサ13側の端部の細径に形成された部分に嵌め入れられ、スラストリング17におけるボス部17aのコンプレッサ13側の端面に当接して軸方向で位置決めされている。フランジ部18bは、ボス部18aにおいてスラストリング17のボス部17aに当接する部分で径方向外側に突出した円盤部材であり、軸方向でコンプレッサ13側のスラスト軸受23の板面23dに対面して配置される一方の対面部18baと、軸方向でコンプレッサ13側からスラスト軸受23側に向く油溜空間19aを形成する油溜部19に対面して配置される他方の対面部18bbと、を有する。
【0036】
すなわち、スラストリング17およびスラストスリーブ18は、それぞれフランジ部17b,18bの一方の対面部17ba,18baの間にスラスト軸受23を挟むように配置される。このため、スラスト軸受23は、スラストリング17およびスラストスリーブ18を介して回転軸14の軸方向の移動を規制する。
【0037】
なお、油溜部19は、軸方向でスラスト軸受23のコンプレッサ13側に隣接して設けられ、油溜空間19aを回転軸14の周囲に沿って配置し、かつ油溜空間19aの下方が開放して第三空間部S3の下方に通じるように形成されている。油溜部19は、油溜部19の下側にて延出する舌片19bを有し、油溜空間19aは、舌片19bを介して第三空間部S3の下方に通じている。この油溜部19は、
図1では、ディフレクターにより構成されている。ディフレクターは、板状に形成されており、インサート部20とスラスト軸受23との間に取り付けられている。インサート部20は、ベアリングハウジング15Cの第二空間部S2と第三空間部S3との間の隔壁をなし、スラストスリーブ18のボス部18aを回転軸14と共に挿通し、ベアリングハウジング15Cに対してスラスト軸受23と共にディフレクターを支持する。
【0038】
また、スラスト軸受23は、通路23bが形成されている。通路23bは、基端部が第五供給通路45の先端部に連通し、先端部が挿通穴23aに連通している。このため、第五供給通路45から通路23bを介して挿通穴23aに供給された潤滑油は、スラスト軸受23の各板面23c,23dとフランジ部17b,18bのそれぞれの対面部17ba,18baの間に導かれる。従って、スラスト軸受23は、対面部17ba,18baの間で回転軸14の軸方向の移動を規制しつつ、フランジ部17b,18bのそれぞれの対面部17ba,18baとの間に供給された潤滑油により対面部17ba,18baとの摩擦抵抗を低減される。
【0039】
スラスト軸受23において、スラストスリーブ18のフランジ部18bの対面部18ba側では、潤滑油は、回転軸14の回転の遠心力により径方向外側に送られ、一部がフランジ部18bの外周部を伝わってフランジ部18bの下側にて第三空間部S3の下方へ流れ、一部が油溜部(ディフレクター)19の油溜空間19aに至る。従って、油溜空間19aに至った潤滑油は、油溜部19の舌片19bを伝って第三空間部S3の下方へ流れる。一方、スラストリング17のフランジ部17bの対面部17ba側では、潤滑油は、回転軸14の回転の遠心力により径方向外側に送られる。フランジ部17bの外周部は、ベアリングハウジング15Cとの間に隙間48が形成され、当該隙間48は、第三空間部S3の下方に通じている。従って、対面部17ba側で径方向外側に送られた潤滑油は、隙間48を通じて第三空間部S3の下方へ流れる。
【0040】
また、スラスト軸受23に隣接するジャーナル軸受22において、外周面22b側および内周面22c側に供給された潤滑油は、タービン12側では、支持部16の通路16bから第三空間部S3の下方へ流れる。一方、スラスト軸受23に隣接するジャーナル軸受22において、外周面22b側および内周面22c側に供給された潤滑油は、スラスト軸受23側では、側面部22d側に流れ、対面するスラストリング17のフランジ部17bの対面部17bbにおいて回転軸14の回転の遠心力により径方向外側に送られて隙間48を通じて第三空間部S3の下方へ流れる。
【0041】
なお、図には明示しないが、ベアリングハウジング15Cは、第三空間部S3の下方に潤滑油排出管の基端部が連結されている。潤滑油排出管は、先端部がオイルパンに連結されている。オイルパンは、潤滑油供給通路40の第一供給通路41が連結された潤滑油タンクに潤滑油循環ラインで接続されている。潤滑油循環ラインは、オイルポンプとオイルフィルタが介在されており、オイルポンプによりオイルフィルタで不純物が濾過された潤滑油をオイルパンから潤滑油循環ラインを介して潤滑油タンクに送る。そして、この潤滑油タンクから第一供給通路41に潤滑油が供給される。
【0042】
図4は、本実施形態に係る排気タービン過給機の他の例の全体構成図である。
【0043】
図4に示す排気タービン過給機11は、
図1に示す排気タービン過給機11に対して異なる構成の油溜部20を有し、他の構成は同様である。従って、
図4に示す排気タービン過給機11については、油溜部20のみ説明し、他の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
油溜部20は、軸方向でスラスト軸受23のコンプレッサ13側に隣接して設けられ、油溜空間20aを回転軸14の周囲に沿って配置し、かつ油溜空間20aの下方が開放して第三空間部S3の下方に通じるように形成されている。この油溜部20は、
図4では、ディフレクターを有さずインサート部により構成されている。
図4において、インサート部は、ベアリングハウジング15Cの第二空間部S2と第三空間部S3との間の隔壁をなし、スラストスリーブ18のボス部18aを回転軸14と共に挿通し、ベアリングハウジング15Cに対してスラスト軸受23を支持する。
【0045】
そして、スラスト軸受23は、第五供給通路45から通路23bを介して挿通穴23aに供給された潤滑油は、スラスト軸受23の各板面23c,23dとフランジ部17b,18bのそれぞれの対面部17ba,18baの間に導かれる。このスラスト軸受23において、スラストスリーブ18のフランジ部18bの対面部18ba側では、潤滑油は、回転軸14の回転の遠心力により径方向外側に送られ、一部がフランジ部18bの外周部を伝わってフランジ部18bの下側にて第三空間部S3の下方へ流れ、一部が油溜部(インサート部)20の油溜空間20aに至る。従って、油溜空間20aに至った潤滑油は、第三空間部S3の下方へ流れる。
【0046】
以下、本実施形態における軸受装置について
図5〜
図13を参照して説明する。本実施形態の軸受装置は、上述した油溜部19,20およびスラスト軸受24に係る。
【0047】
図5は、本実施形態に係る軸受装置の一例を示す拡大斜視図である。
図6は、本実施形態に係る軸受装置の一例を示す拡大正面図である。
図7は、
図6におけるA−A断面図である。
図8は、
図6におけるB−B断面図である。
図9は、本実施形態に係る軸受装置の一例を示す拡大正面図である。
【0048】
図5〜
図8では、インサート部により構成される油溜部20を示している。油溜部20は、スラスト軸受23側に、
図5〜
図8に示すように、油溜空間20aを形成する凹部が設けられている。また、油溜部20は、その中心に、スラストスリーブ18のボス部18aを回転軸14と共に挿通する挿通穴20bが形成されている。そして、
図6において回転軸14は、挿通穴20bを中心として左回り(反時計回り)に回転する。
【0049】
油溜空間20aは、回転軸14の回転方向において、回転軸14の中心を通過する水平面(
図6におけるA−A線)Hの下側から上側に向かう部分を始端αとし、当該始端αから挿通穴20bを中心として左回りに挿通穴20b(回転軸14)を囲むように、ほぼ一周回って終端βに至り円弧を描く溝状に形成されている。また、油溜空間20aは、
図6〜
図8に示すように、始端αから終端βに向かって溝深さや溝幅が漸次拡大して形成されている。
【0050】
そして、油溜部20は、油溜空間20aにおいて、回転軸14の中心を通過する水平面H以下の領域(
図6におけるA−A線以下の領域)に終端βが形成され、
図8に示すように、この終端βにおいてスラスト軸受23側に突出しつつ回転軸14の回転方向に沿って傾斜する傾斜面20aaが形成されている。傾斜面20aaの最も突出した位置が油溜空間20aの終端βとなる。
【0051】
この油溜空間20aが向くスラスト軸受23は、
図9に示すように、回転軸14が挿通される挿通穴23aを有して円板状に形成され、回転軸14の中心を通過する水平面H以下の領域に切欠23eが形成されている。この切欠23eにより油溜空間20aの下方が開放して第三空間部S3の下方に通じ、切欠23e以外の油溜空間20aの部分が閉塞された空間となる。また、切欠23eは、油溜空間20aの形状に沿って形成され、油溜空間20aの終端βに切欠23eの開口端23eaが一致するように形成されている。すなわち、スラスト軸受23の切欠23eの開口端23eaは、油溜部20の油溜空間20aの傾斜面20aaの最も突出した終端βと一致するため、傾斜面20aaと連続して設けられることになる。また、スラスト軸受23の切欠23eの開口端23eaは、油溜部20の油溜空間20aの傾斜面20aaと連続する傾斜面を有して形成されている。
【0052】
このような構成において、油溜空間20aに至った潤滑油は、スラスト軸受23の切欠23eにより油溜空間20aから第三空間部S3の下方へ流れるが、回転軸14の回転方向において、
図6に矢印で示すように、油溜空間20aの始端αから終端βに、挿通穴20b(回転軸14)を中心として左回り(反時計回り)に流動する。そして、油溜空間20aの終端βでは、
図8に矢印で示すように、流動する潤滑油は、傾斜面20aaに案内されてスラスト軸受23側に送り出され、スラスト軸受23側の切欠23eにより開放された外側であって第三空間部S3の下方に流れる。この結果、油溜空間20aを流動する潤滑油が始端αから再流入することを阻止でき、スラスト軸受23での潤滑油の排出性を向上することができる。
【0053】
また、傾斜面20aaが形成された油溜空間20aの終端βに切欠23eの開口端23eaが一致していると、切欠23eの開口端23eaで傾斜面20aaに案内された潤滑油が切られることになり、油溜空間20aを流動する潤滑油が始端αから再流入することを阻止する効果を顕著に得ることができる。
【0054】
また、切欠23eの開口端23eaが傾斜面を有して形成されていることで、切欠23eの開口端23eaで傾斜面20aaに案内された潤滑油が開口端23eaの傾斜面によりさらに開放された外側に案内されつつ切られることになり、油溜空間20aを流動する潤滑油が始端αから再流入することを阻止する効果をより顕著に得ることができる。
【0055】
図10は、本実施形態に係る軸受装置の一例を示す拡大斜視図である。
図11は、本実施形態に係る軸受装置の一例を示す拡大正面図である。
図12は、
図11におけるC−C断面図である。
図13は、
図11におけるD−D断面図である。
【0056】
図10〜
図13では、ディフレクターにより構成される油溜部19を示している。油溜部19は、スラスト軸受23側に、
図10〜
図13に示すように、油溜空間19aを形成する凹部が設けられている。また、油溜部19は、その中心に、スラストスリーブ18のボス部18aを回転軸14と共に挿通する挿通穴19cが形成されている。そして、
図11において回転軸14は、挿通穴19cを中心として左回り(反時計回り)に回転する。
【0057】
油溜空間19aは、回転軸14の回転方向において、回転軸14の中心を通過する水平面(
図11におけるC−C線)Hの下側から上側に向かう部分を始端αとし、当該始端αから挿通穴19cを中心として左回りに挿通穴19c(回転軸14)を囲むように、ほぼ一周回って終端βに至り円弧を描き形成されている。
【0058】
そして、油溜部19は、油溜空間19aにおいて、回転軸14の中心を通過する水平面H以下の領域(
図11におけるC−C線以下の領域)に終端βが形成され、
図13に示すように、この終端βにおいてスラスト軸受23側に突出しつつ回転軸14の回転方向に沿って傾斜する傾斜面19aaが形成されている。傾斜面19aaの最も突出した位置が油溜空間19aの終端βとなる。
【0059】
この油溜空間19aが向くスラスト軸受23は、
図9に示すように、回転軸14が挿通される挿通穴23aを有して円板状に形成され、回転軸14の中心を通過する水平面H以下の領域に切欠23eが形成されている。この切欠23eにより油溜空間19aの下方が開放して第三空間部S3の下方に通じ、切欠23e以外の油溜空間19aの部分が閉塞された空間となる。また、切欠23eは、油溜空間19aの形状に沿って形成され、油溜空間19aの終端βに切欠23eの開口端23eaが一致するように形成されている。すなわち、スラスト軸受23の切欠23eの開口端23eaは、油溜部19の油溜空間19aの傾斜面19aaの最も突出した終端βと一致するため、傾斜面19aaと連続して設けられることになる。また、スラスト軸受23の切欠23eの開口端23eaは、油溜部19の油溜空間19aの傾斜面19aaと連続する傾斜面を有して形成されている。
【0060】
このような構成において、油溜空間19aに至った潤滑油は、スラスト軸受23の切欠23eにより油溜空間19aから第三空間部S3の下方へ流れるが、回転軸14の回転方向において、
図11に矢印で示すように、油溜空間19aの始端αから終端βに、挿通穴19c(回転軸14)を中心として左回り(反時計回り)に流動する。そして、油溜空間19aの終端βでは、
図13に矢印で示すように、流動する潤滑油は、傾斜面19aaに案内されてスラスト軸受23側に送り出され、スラスト軸受23側の切欠23eにより開放された外側であって第三空間部S3の下方に流れる。この結果、油溜空間19aを流動する潤滑油が始端αから再流入することを阻止でき、スラスト軸受23での潤滑油の排出性を向上することができる。
【0061】
また、傾斜面19aaが形成された油溜空間19aの終端βに切欠23eの開口端23eaが一致していると、切欠23eの開口端23eaで傾斜面19aaに案内された潤滑油が切られることになり、油溜空間19aを流動する潤滑油が始端αから再流入することを阻止する効果を顕著に得ることができる。
【0062】
また、切欠23eの開口端23eaが傾斜面を有して形成されていることで、切欠23eの開口端23eaで傾斜面19aaに案内された潤滑油が開口端23eaの傾斜面によりさらに開放された外側に案内されつつ切られることになり、油溜空間19aを流動する潤滑油が始端αから再流入することを阻止する効果をより顕著に得ることができる。