(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の各実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。なお、以下の説明における上下、左右、および前後の各方向(互いに直交する方向)は各図に示す通りである。下方向は鉛直下向きに一致し、前後および左右方向は水平方向に含まれる。また本実施形態における前後方向は、本発明に係る第1方向の一例である。
【0021】
1.第1実施形態
まず本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るフィラメント3次元結合体製造装置1の概略的な構成図である。
図2は、
図1に示すフィラメント3次元結合体製造装置1のA−A´断面矢視図である。
図3および
図4は、フィラメント3次元結合体製造装置1が有する各ユニット(Z1〜Z3)近傍の構成図である。
【0022】
フィラメント3次元結合体製造装置1は、立体的な網状構造を有する熱可塑性樹脂繊維からなるフィラメント3次元結合体3を製造する装置であり、押出成形機10と、3次元結合体形成装置20とを備えている。以下の説明では、熱可塑性樹脂繊維をフィラメントと称し、フィラメント3次元結合体3をFTS(Filament-linked Three-dimensional Structure)3と称することがある。また、フィラメント3次元結合体製造装置1をFTS製造装置1と称することがある。
【0023】
押出成形機10は、溶融状態のフィラメント(線条)を形成し、これを3次元結合体形成装置20に向けて排出する溶融フィラメント供給装置の一例である。押出成形機10は、材料投入用のホッパー13を備えた加圧溶融部である押出機11と、この押出機11に連設され、ノズル板17を有するダイ12等を有し、当該ノズル板17から溶融状態のフィラメントを排出する。なお、以下では、溶融状態のフィラメントを溶融フィラメント2と称することがある。
【0024】
ホッパー13は、フィラメントの材料となる熱可塑性樹脂を押出成形機10内に投入するための材料投入部である。FTS3の材料として用いることのできる熱可塑性樹脂として、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂およびポリスチレン樹脂等や、スチレン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等の熱可塑性エラストマーを用いることができる。
【0025】
押出機11は、熱可塑性樹脂を加圧しながら溶融する加圧溶融部である。押出機11の内部にはシリンダー11aが形成されている。このシリンダー11aには、スクリューモーター15により回転するスクリュー14が挿通されている。シリンダー11aの外周には、スクリューヒーター16が内装されている。スクリュー14は、スクリューヒーター16により加熱されて溶融する熱可塑性樹脂を加圧し、フィラメント排出部11bからダイ12に搬送する加圧搬送部材である。スクリューヒーター16は、シリンダー11a内の熱可塑性樹脂を加熱する加熱部である。
【0026】
ダイ12は、押出機11から搬送された溶融状態の熱可塑性樹脂を繊維状の溶融フィラメント2にして送出するフィラメント送出部である。ダイ12の内部には、ダイ導流路12aが形成されている。ダイヒーター18(18a〜18f)はダイ導流路12aを通過する熱可塑性樹脂を加熱する加熱部である。
【0027】
スクリューヒーター16及びダイヒーター18の近傍には、熱可塑性樹脂の温度を測定する不図示の温度センサーが設けられている。これらの温度センサーによる温度の測定結果に基づいて、スクリューヒーター16及びダイヒーター18の出力が制御されている。
【0028】
押出成形機10は、ホッパー13から供給された熱可塑性樹脂をシリンダー11a内で溶融させ、下流側へ押し出す。これにより溶融した熱可塑性樹脂は、ダイ12内部のダイ導流路12aを経由して、ノズル板17に形成された各ノズル17a(
図5を参照)から複数の溶融フィラメント2として鉛直下方に排出される。なお以下の説明では、このような複数の溶融フィラメント2を、溶融フィラメント群と称することがある。
【0029】
ノズル板17は、上下方向に貫通した断面円形の孔であるノズル17aが複数形成された略直方体(前後、左右、および上下の各面を有する略直方体)の金属板(口金)であり、ダイ導流路12aの最下流部に相当するダイ12の下部に設けられている。各ノズル17aは、ノズル板17の上面と下面に開口しており、上方から供給される溶融樹脂を下方へ糸状にして排出することが出来る。
【0030】
ノズル板17の前後方向および左右方向寸法は、例えばマットレス用のFTS3を製造する場合、その断面寸法(マットレスの厚み寸法および幅寸法)に応じて設定することが可能である。本実施形態におけるノズル板17は、一例として幅広のマットレス用のFTS3の製造に用いるため、前後方向寸法(厚み寸法に対応する)に比べて左右方向寸法(幅寸法に対応する)が大きくなっている。
【0031】
ノズル板17には、ノズル17aが前後と左右の二次元に並ぶマトリクス状に配置されている。各ノズル17aの内径は、各ノズル17a同士のピッチ(ノズル間隔)よりもやや小さい程度に設定されているが、ノズル17aの具体的形態は特に限定されるものではない。例えば、各ノズル17aの内径を1mmに設定し、各ノズル17a同士のピッチを10mmに設定してもよい。その他、FTS3の反発力の仕様等に基づき、ノズル形状、ノズル内径、ノズル間隔、或いはノズル配置などを適宜調整することができる。
【0032】
3次元結合体形成装置20は、複数の溶融フィラメント2を融着結合および冷却固化させることにより立体的な網状構造のFTS3を形成する。3次元結合体形成装置20は、所定の間隔を設けて面対称となるように設置された各受け板21(前後一対となった前側受け板21aおよび後側受け板21b)と、冷却水22aを蓄える水槽23を含む冷却機22とを備えている。
【0033】
前側受け板21aは、後方に向けて下り傾斜となる平板状の傾斜面21a1(鉛直方向に対して傾斜した面)と、傾斜面21a1の下部から鉛直下方に延びる平板状の鉛直面21a2を含む。これらの面21a1、21a2は、金属板材の屈曲により形成されている。後側受け板21bは、前方に向けて下り傾斜となる平板状の傾斜面21b1(鉛直方向に対して傾斜した面)と、傾斜面21b1の下部から鉛直下方に延びる平板状の鉛直面21b2を含む。これらの面21b1、21b2は、金属板材の屈曲により形成されている。
【0034】
ノズル板17から排出された各溶融フィラメント2は、重力の作用も手伝って鉛直下方へ並進し、ノズル板17の下方に配置された各受け板21に到達する。この際、溶融フィラメント群の前後方向中央寄りに位置する溶融フィラメント2は、各受け板21の鉛直面21a2、21b2に挟まれた間隙に直接進入する。
【0035】
一方、溶融フィラメント群の前端寄りに位置する溶融フィラメント2は、前側受け板21aの傾斜面21a1に当接した後、その傾斜面21a1に沿って当該間隙の前端近傍に進入する。また、溶融フィラメント群の後端寄りに位置する溶融フィラメント2は、後側受け板21bの傾斜面21b1に当接した後、その傾斜面21b1に沿って当該間隙の後端近傍に進入する。
【0036】
前後一対の受け板21により、溶融フィラメント群の前後方向両端部(表面層)を中央方向へ寄せて高密度化し、当該両端部に硬質表面層を形成させることが出来る。硬質表面層が形成されることにより、搬送方向におけるFTS3の厚み(前後方向寸法)の変化が抑えられ、FTS3の形状を安定化させることが出来る。
【0037】
なお各受け板21の上部には、各受け板21の表面全体に冷却水を供給する冷却水供給装置(不図示)を設けてもよい。冷却水の供給によって各受け板21の温度上昇を抑制又は防止することにより、溶融フィラメント2が各受け板21に融着することを防止できる。各受け板21の鉛直面21a2、21b2に挟まれた間隙に進入した溶融フィラメント2は、更に下方の冷却機22へ進む。
【0038】
各受け板21は、水槽23内の冷却水22aの浮力作用により、溶融フィラメント2を受けて一時的に滞留させることができ、滞留させた溶融フィラメント2同士の融着結合を促進させる。すなわち、溶融フィラメント2は、各受け板21内部において冷却水22aの浮力を受け、且つ、後述するコンベアの搬送速度(引取り速度)が溶融フィラメント2の落下速度より遅く設定されているため、各受け板21内部に滞留する。この際、溶融フィラメント2同士の融着結合を更に進めることが出来る。
【0039】
冷却機22は、融着結合した溶融フィラメント2を冷却固化する。冷却機22は、冷却水22aを蓄えた水槽23と、FTS3を搬送する各コンベア(前後一対となった前側コンベア24aおよび後側コンベア24b)と、複数の搬送ローラ25a〜25hと、これらのコンベア及び搬送ローラをギアを介して駆動する搬送モーター(不図示)とを有する。
【0040】
各コンベア24及び複数の搬送ローラ25a〜25hは、FTS3を搬送する搬送装置である。各コンベア24は、無端状に形成されており、各受け板21の鉛直下部に設けられている。各コンベア24の回転により、3次元的に融着結合が進んだ網目状の溶融フィラメント群を冷却水22aで冷却しながら下方へ搬送することが出来る。前側コンベア24aは、溶融フィラメント群の前側端部に接し、この前側端部を下流側へ搬送するように(下流側へ引取るように)駆動する。後側コンベア24bは、溶融フィラメント群の後側端部に接し、この後側端部を下流側へ搬送するように(下流側へ引取るように)駆動する。
【0041】
各コンベア24の搬送速度はフィラメント密度に密接に関係する。即ち、溶融フィラメント2の冷却スピードとの関係で、搬送速度が速くなるとフィラメント密度が低くなり、遅くなるとフィラメント密度が高くなる。搬送ローラ25a〜25hは、各コンベア24の後段に配設され、各コンベア24を通過したFTS3を水槽23の外まで搬送する。搬送ローラ25a〜25hは、それぞれ不図示の支持部材によって回転可能に支持されるとともに、FTS3との間で所定の摩擦力が得られるように、不図示のバネによりFTS3を圧縮する向きへ付勢するようになっている。
【0042】
なお本実施形態では、各コンベア24として網状の金属メッシュからなるベルトコンベアが採用されているが、これに限定されるものではなく、各種の搬送装置を採用することが可能である。例えば、当該搬送装置として、スラットコンベアなどを採用することも可能である。
【0043】
またFTS製造装置1には、駆動機構を有するユニットとして、ノズル板17を含む第1ユニットZ1、各受け板21を含む第2ユニットZ2、および各コンベア24を含む第3ユニットZ3が設けられている。以下、これらの各ユニットについて説明する。
【0044】
図5および
図6は、上方視点による第1ユニットZ1の概略的な構成図である。なお
図3および
図5は、各シャッター板32が何れのノズル17aをも閉じていない状態(全てのノズル17aが開放されている状態)の一例を示しており、
図4および
図6は、各シャッター板32が特定ノズル(開閉が切替えられるノズル)を閉じている状態の一例を示している。
【0045】
図3等に示すように、第1ユニットZ1は、先述したノズル板17、ノズル板17の上部に配設される各シャッター板32(前側シャッター板32aおよび後側シャッター板32b)、および各シャッター板32を駆動する各シャッター板駆動部33(前側シャッター板駆動部33aおよび後側シャッター板駆動部33b)を有する。
【0046】
各シャッター板32は、厚みが3mm〜20mmの範囲内にある金属板であり、ノズル板17の上面に沿って水平方向(より具体的には前後方向)へ可動に配設されている。各シャッター板32は、押出成形機10から溶融フィラメント2を排出させながら、所定のノズル17a(特定ノズル)を開閉するように可動である。前側シャッター板32aは、ノズル板17の上面の前寄りの領域において前後方向へ可動である。一方、後側シャッター板32bは、ノズル板17の上面の後寄りの領域において前後方向へ可動である。各シャッター板32がノズル17aの上側を塞ぐ位置に移動すると、そのノズル17aは閉じられた状態となる。閉じられたノズル17aからは、溶融フィラメント2は排出されない。ノズル17aの開閉により、そのノズル17aからの溶融フィラメント2の排出の有無が切替えられる。
【0047】
各シャッター板駆動部33は、各シャッター板32を前後方向へ移動させる。なお、各シャッター板駆動部33は、前側シャッター板32aと後側シャッター板32bを独立して移動させることが出来る。
【0048】
本実施形態では、前からXa列分(例えば4列分)の各ノズル17a(前端側の所定範囲内にある各ノズル17a)が、前側シャッター板32aによって開閉される特定ノズルとなっており、後からXb列分(例えば4列分)の各ノズル17a(後端側の所定範囲内にある各ノズル17a)が、後側シャッター板32bによって開閉される特定ノズルとなっている。但し、何れのノズル17aを特定ノズルとするかについては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に設定され得る。
【0049】
前側シャッター板駆動部33aは、ノズル板17の前側縁近傍に配設されており、前側シャッター板32aを後方へ押出したり前方へ引き込んだりして前後方向へ移動させる。これにより前側シャッター板32aの状態は、何れのノズル17aも塞がない状態、前から1列目までのノズル17aを塞ぐ状態、・・・、および前からXa列目までのノズル17aを塞ぐ状態、を含む各状態の間で切替可能である。
【0050】
後側シャッター板駆動部33bは、ノズル板17の後側縁近傍に配設されており、後側シャッター板32bを前方へ押出したり後方へ引き込んだりして前後方向へ移動させる。これにより後側シャッター板32bの状態は、何れのノズル17aも塞がない状態、後から1列目までのノズル17aを塞ぐ状態、・・・、および後からXb列目までのノズル17aを塞ぐ状態、を含む各状態の間で切替可能である。
【0051】
以上のように、各シャッター板32は、特定ノズルの開口を開く開位置(特定ノズルの上側を塞がない位置)と該開口を閉じる閉位置(特定ノズルの上側を塞ぐ位置)とに可動であり、特定ノズルの開閉に用いることが出来る。なお本実施形態では、各シャッター板32をノズル板17の上面をスライドするように設けているが、その代わりに、各シャッター板32をノズル板17の下面をスライドするように設けても良い。何れの場合においても、各シャッター板32は、ノズル板17の表面(特定ノズルの開口を含む面)をスライドするように開位置と閉位置とに可動であるため、比較的簡易な構成でありながら特定ノズルを的確に開閉することが可能である。
【0052】
図3および
図4に示すように、前側シャッター板32aの後端部の前後方向位置(以下、便宜的に「位置P1」と称することがある)が後方へ移行するほど、前から順により多くの特定ノズルが塞がるため、溶融フィラメント群の前側端部の位置がより後側となる。上述した前側シャッター板32aの移動によって、位置P1を変更することが可能である。なお同様の原理により、後側シャッター板32bの前端部の前後方向位置(以下、便宜的に「位置P2」と称することがある)については、後側シャッター板32bの移動により変更可能である。
図3および
図4に示すように、位置P2が前方へ移行するほど、後から順により多くの特定ノズルが塞がるため、溶融フィラメント群の後側端部の位置がより前側となる。
【0053】
第2ユニットZ2は、先述した各受け板21、前後方向へ伸びた形状の各受け板支持部42(前側受け板支持部42aおよび後側受け板支持部42b)、および各受け板21を水平方向(より具体的には前後方向)へ移動させる各受け板駆動部43(前側受け板駆動部43aおよび後側受け板駆動部43b)を有している。
【0054】
より具体的に説明すると、前側受け板支持部42aは、後端側に前側受け板21aが固定されており、前端側が前側受け板駆動部43aに接続されている。前側受け板駆動部43aは、前側受け板支持部42aを介して、前側受け板21aを前後方向へ移動させることが可能である。
【0055】
後側受け板支持部42bは、前端側に後側受け板21bが固定されており、後端側が後側受け板駆動部43bに接続されている。後側受け板駆動部43bは、後側受け板支持部42bを介して、後側受け板21bを前後方向へ移動させることが可能である。上記の仕組みにより、前側受け板21aと後側受け板21bは別個に支持され、互いに独立して前後方向へ可動である。
【0056】
前側受け板21aは、溶融フィラメント群の前側端部を傾斜面21a1に接触させ、傾斜面21a1を滑らせるようにして後方(該溶融フィラメント群の中央側)へ導く。これにより前側受け板21aは、溶融フィラメント群の前側端部を高密度化するとともに、当該前側端部の前後方向位置を変更可能に設定された規制位置(鉛直面21a2の位置)に規制する役割をも果たす。つまり、前側受け板21aに達した溶融フィラメント群の前側端部の前後方向位置は、
図3および
図4に示すように、前側受け板21aの鉛直面21a2の前後方向位置(以下、便宜的に「位置P3」と称することがある)に規制される。位置P3は、前側受け板21aの前後方向の移動によって変更可能である。
【0057】
また、溶融フィラメント群の前側端部が高密度化される度合は、傾斜面21a1によって後方へ導かれる溶融フィラメント2の量が多いほど高くなるため、位置P1から位置P3までの距離が長いほど高くなる。そのため、溶融フィラメント群の前側端部の前後方向位置が所望の位置となるように位置P3を調節した上で、溶融フィラメント群の前側端部が所望の度合で高密度化されるように位置P1を調節することが可能である。
【0058】
後側受け板21bは、溶融フィラメント群の後側端部を傾斜面21b1に接触させ、傾斜面21b1を滑らせるようにして前方(該溶融フィラメント群の中央側)へ導く。これにより後側受け板21bは、溶融フィラメント群の後側端部を高密度化するとともに、当該後側端部の前後方向位置を変更可能に設定された規制位置(鉛直面21b2の位置)に規制する役割をも果たす。つまり、後側受け板21bに達した溶融フィラメント群の後側端部の前後方向位置は、
図3および
図4に示すように、後側受け板21bの鉛直面21b2の前後方向位置(以下、便宜的に「位置P4」と称することがある)に規制される。位置P4は、後側受け板21bの前後方向の移動によって変更可能である。
【0059】
また、溶融フィラメント群の後側端部が高密度化される度合は、傾斜面21b1によって前方へ導かれる溶融フィラメント2の量が多いほど高くなるため、位置P2から位置P4までの距離が長いほど高くなる。そのため、溶融フィラメント群の後側端部の前後方向位置が所望の位置となるように位置P4を調節した上で、溶融フィラメント群の後側端部が所望の度合で高密度化されるように位置P2を調節することが可能である。
【0060】
第3ユニットZ3は、先述した各コンベア24を前後方向へ可動に支持するように構成されている。より具体的に説明すると、無端状である前側コンベア24aの内側において、上側に前側駆動ローラ52aが、下側に前側従動ローラ53aが、それぞれ配置されている。前側コンベア24aは、これらのローラ(52a、53a)に張架され、回転可能に支持されている。前側駆動ローラ52aが回転駆動すると、これに伴って前側コンベア24aも回転し、前側コンベア24aの後側の外面に接している溶融フィラメント2が下方へ搬送される。
【0061】
前側駆動ローラ52aの回転軸54aは、前後方向に伸びた前上側コンベア支持部56aの後端側に、回転可能に取付けられている。前上側コンベア支持部56aの前端側は前上側コンベア駆動部58aに接続されている。前上側コンベア駆動部58aは、前上側コンベア支持部56aを介して前側駆動ローラ52aを前後方向へ移動させる。
【0062】
前側従動ローラ53aの回転軸55aは、前後方向に伸びた前下側コンベア支持部57aの後端側に、回転可能に取付けられている。前下側コンベア支持部57aの前端側は前下側コンベア駆動部59aに接続されている。前下側コンベア駆動部59aは、前下側コンベア支持部57aを介して前側従動ローラ53aを前後方向へ移動させる。
【0063】
なお、前側駆動ローラ52aと前側従動ローラ53aの前後方向への移動量や移動速度は、これらのローラ52a、53aの前後方向位置が常時同一となるように設定される。これにより前側コンベア24aの後側外面を常時垂直に維持し、溶融フィラメント2を下方へ適切に搬送できる状態のまま、前側コンベア24aを前後方向に移動させることが出来る。また、前上側コンベア支持部56aと前下側コンベア支持部57aを一体化しておき、これを同じ駆動装置により駆動させるようにしても構わない。
【0064】
また、無端状である後側コンベア24bの内側において、上側に後側駆動ローラ52bが、下側に後側従動ローラ53bが、それぞれ配置されている。後側コンベア24bは、これらのローラ(52b、53b)に張架され、回転可能に支持されている。後側駆動ローラ52bが回転駆動すると、これに伴って後側コンベア24bも回転し、後側コンベア24bの前側の外面に接している溶融フィラメント2が下方へ搬送される。
【0065】
後側駆動ローラ52bの回転軸54bは、前後方向に伸びた後上側コンベア支持部56bの前端側に、回転可能に取付けられている。後上側コンベア支持部56bの後端側は後上側コンベア駆動部58bに接続されている。後上側コンベア駆動部58bは、後上側コンベア支持部56bを介して後側駆動ローラ52bを前後方向へ移動させる。なお前側駆動ローラ52aと後側駆動ローラ52bは、コンベア24が溶融フィラメント2を適切に搬送するように、互いに逆の回転方向へ同じ速さで回転するよう設定される。
【0066】
後側従動ローラ53bの回転軸55bは、前後方向に伸びた後下側コンベア支持部57bの前端側に、回転可能に取付けられている。後下側コンベア支持部57bの後端側は後下側コンベア駆動部59bに接続されている。後下側コンベア駆動部59bは、後下側コンベア支持部57bを介して後側従動ローラ53bを前後方向へ移動させる。
【0067】
なお、後側駆動ローラ52bと後側従動ローラ53bの前後方向への移動量や移動速度は、これらのローラ52b、53bの前後方向位置が常時同一となるように設定される。これにより後側コンベア24bの前側外面を常時垂直に維持し、溶融フィラメント2を下方へ適切に搬送できる状態のまま、後側コンベア24bを前後方向に移動させることが出来る。また、後上側コンベア支持部56bと後下側コンベア支持部57bを一体化しておき、これを同じ駆動装置により駆動させるようにしても構わない。上記の仕組みにより、前側コンベア24aと後側コンベア24bは別個に支持され、互いに独立して前後方向へ可動である。
【0068】
次に、各ユニット(Z1〜Z3)の駆動機構を制御するための制御体系および制御手法について説明する。FTS製造装置1における当該制御体系の構成要素として、
図1にブロックで示すように、厚み方向位置制御部30、シャッター板制御部34、受け板制御部35、およびコンベア制御部36が設けられている。
【0069】
厚み方向位置制御部30は、所望状態のFTS3を製造するための条件、すなわち、FTS3の厚み方向の形状、および厚み方向両端の高密度化の度合などの情報の入力を受け付ける。これを受けて厚み方向位置制御部30は、当該条件を満たすFTS3が製造されるように、各シャッター板32、各受け板21、および各コンベア24の前後方向位置(FTS3の厚み方向の位置に対応する)を制御する。
【0070】
より具体的には、厚み方向位置制御部30は、各シャッター板32の位置(位置P1と位置P2)を制御するための信号をシャッター板制御部34へ送出し、各受け板21の位置(位置P3と位置P4)を制御するための信号を受け板制御部35へ送出し、各コンベア24の位置を制御するための信号をコンベア制御部36へ送出する。
【0071】
上記信号を受けて、シャッター板制御部34は、各シャッター板駆動部33に駆動制御信号を送り、各シャッター板32を駆動させるようにする。また受け板制御部35は、各受け板駆動部43に駆動制御信号を送り、各受け板21を駆動させるようにする。またコンベア制御部36は、各コンベア駆動部(58a、58b、59a、59b)に駆動制御信号を送り、各コンベア24を駆動させるようにする。なお厚み方向位置制御部30が、シャッター板制御部34、受け板制御部35、およびコンベア制御部36の役割を兼ねるようにしても構わない。
【0072】
FTS3の厚み方向端部の形状は、一端については位置P3によって概ね定まり、他端については位置P4によって概ね定まる。そのため厚み方向位置制御部30は、FTS3の厚み方向両端部が所望の形状となるように、位置P3と位置P4を制御する。なおFTS3の厚みは、位置P3と位置P4の距離(各受け板21の間隙の大きさ)によって概ね定まる。そのためFTS3の厚みが予め決められている場合、位置P3と位置P4の距離が当該厚みと一致するように、各受け板21の位置が制御されるようにしてもよい。
【0073】
また厚み方向位置制御部30は、FTS3の両端部が所望の度合で高密度化されるように、位置P1と位置P2を制御する。すなわち当該度合に応じて、位置P1と位置P3との距離、および位置P2と位置P3との距離が調節される。既に説明した通り、位置P1と位置P3との距離が大きくなるほど、FTS3の前側端部における高密度化の度合が高くなり、位置P2と位置P4との距離が大きくなるほど、FTS3の後側端部における高密度化の度合が高くなる。
【0074】
更に厚み方向位置制御部30は、位置P3と位置P4の距離に基づいて、溶融フィラメント群が各コンベア24から適切な圧縮力(摩擦力)を受けるように、各コンベア24の前後方向位置を制御する。例えば、前側コンベア24aの前後方向位置は位置P3とほぼ同等の位置に制御され、後側コンベア24bの前後方向位置は位置P4とほぼ同等の位置に制御される。その他、各コンベア24同士の間隙を、位置P1と位置P2との距離または位置P3と位置P4との距離よりも小さくすることにより、溶融フィラメント群の前後方向両端部のフィラメント密度(圧縮度)を高くしてもよい。
【0075】
なお、厚み方向位置制御部30による位置制御の具体的手法は、上述したものに限られず、種々の事情に応じて異なる手法が採用され得る。またFTS3の製品仕様等に応じ、前後で対をなすように設けられた各シャッター板32、各受け板21、および各コンベア24の全部または一部について、前側と後側のいずれか一方だけを前後方向へ可動とする(他方の位置は固定とする)ようにしても良い。
【0076】
また上述した位置制御は、ノズル板17から溶融フィラメント2を連続的に排出させながら行うことができ、搬送方向で厚みが変化するFTS3を形成することが可能である。更に本実施形態では、各シャッター板32を用いた特定ノズルの開閉により、FTS3の厚み方向両端部を所望の度合で高密度化することも可能であり、搬送方向で厚みが変化するFTS3をより適切に形成することが出来る。
【0077】
搬送方向で厚みが変化するように形成されたFTS3は、種々の用途に応用可能である。
図7は、このようなFTS3を各種形態のマットレスに応用した例を示している。なおこの例におけるFTS3の搬送方向は、マットレスの長さ方向(マットレスに横たわるユーザーの頭頂部と足元を結ぶ方向)に相当する。
図7についての上下方向はマットレスの厚み方向であり、マットレスの上側にユーザーが横たわる。また、
図7に示す各FTS3(3a〜3i)の硬さはフィラメント密度により調整されており、硬いFTSほど、フィラメント密度が高くなるように製造されている。
【0078】
図7(A)は、長さ方向に厚みが変化するマットレスの形状と、これをユーザーが使用している状態を示す概念図である。この例では、下側表面を平面として上側表面をウェーブ形状としたFTS3aが用いられている。これにより、マットレスの上側の表面形状を長さ方向に変化させ、マットレスに仰向けに横たわるユーザーの頭と膝の位置が、腰や足元の位置よりも高くなるようにしている。
【0079】
図7(B)は、硬めのFTS3bの上に軟らかめのFTS3cを重ねたマットレスの形状と、これをユーザーが使用している状態を示す概念図である。この例では、FTS3bとFTS3cの接合部それぞれに設けたウェーブ形状同士が、これらを重ねた状態でフィットするように形成されている。このウェーブ形状により、FTS同士の位置ずれを抑えるとともに、マットレスの長さ方向の硬さ調整がなされている。すなわち、マットレスの硬くすべき箇所において、厚み方向における硬めのFTS3bの割合が高くなるように、当該ウェーブ形状が調整されている。また緩やかなウェーブ形状を採用することにより、マットレスが局部的に硬くなることを防ぐことが出来る。
【0080】
図7(C)は、軟らかめのFTS3dの上に硬めのFTS3eを重ねたマットレスの形状と、これをユーザーが使用している状態を示す概念図である。この例では、FTS3dとFTS3eの接合部それぞれに設けたウェーブ形状同士が、これらを重ねた状態でフィットするように形成されている。
図7(B)の場合と同様に、このウェーブ形状によって、FTS同士の位置ずれを抑えるとともに、マットレスの長さ方向の硬さ調整がなされている。
【0081】
図7(D)は、標準的な硬さのFTS3fの上に3個のFTS(軟らかめのFTS3g、硬めのFTS3h、およびやや軟らかめのFTS3i)を重ねたマットレスの形状と、これをユーザーが使用している状態を示す概念図である。この例では、上側と下側のFTSの接合部それぞれに設けたウェーブ形状同士が、これらを重ねた状態でフィットするように形成されている。また、硬さの異なる複数のFTSを長さ方向へずらして配置することにより、マットレスの硬さが長さ方向で調整されている。上側と下側のFTSの接合部を緩やかなウェーブ形状とすることにより、マットレスが局部的に硬くなることを抑えるとともに、水平方向に複数のFTS3を並べて配置した場合であっても、これらの位置ずれを極力防ぐことが可能である。
【0082】
なお一般的には、長さ方向に厚みが変化するFTSを得るためには、2枚以上のFTSを所望の厚みになるように重ね合わせたり、表面を切除したりする加工が必要となり、製造コストが高くなる。この点、本実施形態のFTS製造装置1によれば、FTSの形成過程において長さ方向(搬送方向)に厚みを変化させることができ、当該加工を省略あるいは簡略化して、製造コストを抑えることが可能である。
【0083】
以上に説明した通りFTS製造装置1は、複数のノズル17aそれぞれから溶融フィラメント2を排出する押出成形機10(溶融フィラメント供給装置)と、前記排出される溶融フィラメント群を融着結合させて、FTS3を形成する3次元結合体形成装置20と、を備えている。更に押出成形機10は、前記複数のノズル17aの少なくとも一つである特定ノズルの開閉を行う機能部(開閉部)を有する。
【0084】
そのため、特定ノズルの開閉によってFTS3の厚み方向端部が所望の度合で高密度化されるようにしておき、搬送方向で厚み等が変化するFTS3をより適切に形成することが容易である。また特定ノズルの開閉による溶融フィラメント2の排出の有無の切替は、FTS3の全体あるいは任意の部分の硬さ(フィラメント密度)を調節するために利用することも可能である。
【0085】
一例として、FTS3の全体の硬さを適宜調節可能とする場合は、開閉を切替可能とした特定ノズルを複数のノズル17aにおいて満遍なく設けておき、全体的に硬めのFTS3を製造するときは多くの特定ノズルを開状態とし、全体的に軟らかめのFTS3を製造するときは多くの特定ノズルを閉状態とすれば良い。これにより、多くの特定ノズルを開状態としたときは、フィラメント密度を全体的に高くして硬めのFTS3を製造することができ、多くの特定ノズルを閉状態としたときは、フィラメント密度を全体的に低くして軟らかめのFTS3を製造することができる。以上のように、特定ノズルの開閉が可能であることにより、厚み寸法や硬さ等を調節してFTS3を製造することが容易である。
【0086】
また本実施形態に係るFTS3を製造する方法は、前後方向を含む水平方向へ配置された複数のノズル17aから鉛直下方へ溶融フィラメント2を排出し、該排出される溶融フィラメント群を用いてFTS3を製造する方法となっている。そして当該方法には、制御ステップと、高密度化ステップと、形成ステップとが含まれている。
【0087】
制御ステップは、溶融フィラメント群の前後方向端部に対応するノズル17aの開閉により、当該端部の前後方向位置を制御するステップ(工程)である。高密度化ステップは、溶融フィラメント群の前後方向端部を該溶融フィラメント群の中央側へ導くことにより、当該端部の前後方向位置を変更可能に設定された規制位置に規制し、当該端部が高密度化された溶融フィラメント群を生成するステップである。形成ステップは、前記高密度化された溶融フィラメント群を融着結合させて、FTS3を形成するステップである。
【0088】
そして当該制御ステップは、前記規制位置に応じて、溶融フィラメント群の前後方向端部の前後方向位置を制御するステップとなっている。これにより、溶融フィラメント群の前後方向端部におけるフィラメント密度を調整することが出来る。先述した第1位置と第3位置の距離、或いは、第2位置と第4位置の距離が一定値を維持するように制御すれば、当該フィラメント密度の変化を抑え、表面平滑性の変化を低減させることが出来る。
【0089】
なお本実施形態における第2ユニットZ2(
図3等を参照)の具体的構成としては、種々の形態が採用され得る。
図8は、第2ユニットZ2の一構成例(第1構成例)について、その一部(前側受け板21a、前側受け板支持部42a、後側受け板21b、および後側受け板支持部42bの部分)の斜視図を示している。
【0090】
図8に示す第2ユニットZ2において、前側受け板支持部42aは、6本の支持棒42a1〜42a6により構成されており、前側受け板21aを水平方向(前後方向)に移動できるように支持している。より具体的に説明すると、各支持棒42a1〜42a6は、前後方向へ伸びる棒状となっており、左右方向へ略等間隔で配置されている。後側受け板支持部42bは、6本の支持棒42b1〜42b6により構成されており、後側受け板21aを水平方向(前後方向)に移動できるように支持している。より具体的に説明すると、各支持棒42b1〜42b6は、前後方向へ伸びる棒状となっており、左右方向へ略等間隔で配置されている。
図8に示す構成によれば、前側受け板21aおよび後側受け板21aを前後方向へ可動としながらも、比較的少ない部材により効率良く支持することが可能である。
【0091】
図9は、第2ユニットZ2の別の構成例(第2構成例)について、その一部(前側受け板21a、前側受け板支持部42a、後側受け板21b、および後側受け板支持部42bの部分)の斜視図を示している。
図9に示す第2ユニットZ2において、前側受け板21aは、複数個(本実施形態では25個)の前側受け板部材121a1〜121a25により構成されている。複数個の前側受け板部材121a1〜121a25は、左右方向へ順に並ぶように配置されており、全体として前側受け板21aの役割を果たす。また、複数個の前側受け板部材121a1〜121a25は、各支持棒142a1〜142a25(前側受け板支持部42aに相当する)により、それぞれ独立して水平方向(前後方向)に移動できるように支持されている。これにより
図10に示すように、前側受け板部材121a1〜121a25それぞれの前後方向位置を調節し、前側受け板21aの形状を適正化することが容易である。
【0092】
後側受け板121bは、複数個(本実施形態では25個)の後側受け板121b1〜121b25により構成されている。数個の後側受け板部材121b1〜121b25は、左右方向へ順に並ぶように配置されており、全体として後側受け板21bの役割を果たす。また、複数個の後側受け板121b1〜121b25は、各支持棒142b1〜142b25(後側受け板支持部42bに相当する)により、それぞれ独立して水平方向(前後方向)に移動できるように支持されている。これにより
図10に示すように、後側受け板部材121b1〜121b25それぞれの前後方向位置を調節し、後側受け板21bの形状を適正化することが容易である。なおフィラメント3次元結合体製造装置1には、前側受け板部材121a1〜121a25および後側受け板部材121b1〜121b25の表面全体に冷却水を供給する冷却水供給装置(不図示)を設けてもよい。
【0093】
図11は、第2ユニットZ2の更に別の構成例(第3構成例)について、その一部(前側受け板21a、前側受け板支持部42a、後側受け板21b、および後側受け板支持部42bの部分)の斜視図を示している。また
図12は、
図11に示す構成のうち、各離形性生地221aa、221bbの構成を示した図である。更に
図13は、
図11に示す構成のうち、各離形性生地221aa、221bb以外の構成を示した図である。
【0094】
第3構成例における前側受け板21aは、複数個(本実施形態では25個)の前側受け板部材221a1〜221a25と、それら前側受け板部材221a1〜221a25の外周部を覆う変形可能な離形性生地221aaにより構成されている。複数個の前側受け板部材221a1〜221a25は、左右方向へ順に並ぶように配置されており、支持棒242a1〜242a25(前側受け板支持部42aに相当する)により、それぞれ独立して水平方向(前後方向)に移動できるように支持されている。これにより、前側受け板部材221a1〜221a25それぞれの前後方向位置を調節し、前側受け板21aの形状を適正化することが容易である。
【0095】
なお、前側受け板部材221a1〜221a25が各々独立して水平方向に移動して、前側受け板部材221a1〜221a25どうしで段差が生じる場合であっても、離形性生地221aaが変形することにより当該段差(凸凹)が滑らかになる。そのため、溶融フィラメント群の前側端部の高密度化表面層を、段差のない滑らかな表面層として形成できる。
【0096】
また、後側受け板221bは、複数個(本実施形態では25個)の後側受け板部材221b1〜221b25と、それら後側受け板部材221b1〜221b25の外周部を覆う変形可能な離形性生地221bbにより構成されている。複数個の後側受け板部材221b1〜221b25は、左右方向へ順に並ぶように配置されており、支持棒242b1〜242b25(後側受け板支持部42bに相当する)により、それぞれ独立して水平方向(前後方向)に移動できるように支持されている。これにより、後側受け板部材221b1〜221b25それぞれの前後方向位置を調節し、後側受け板21bの形状を適正化することが容易である。
【0097】
なお、後側受け板部材221b1〜221b25が各々独立して水平方向に移動して、後側受け板部材221b1〜221b25どうしで段差が生じる場合であっても、離形性生地221bbが変形することにより当該段差(凸凹)が滑らかになる。そのため、溶融フィラメント群の後側端部の高密度化表面層を、段差のない滑らかな表面層として形成できる。
【0098】
各離形性生地221aa、221bbとしては、溶融フィラメントが融着せず、かつ、変形可能な生地を使用することが望ましく、例えば、フッ素系樹脂繊維で編まれた変形可能な生地などが使用できる。これにより、各離形性生地221aa、221bbへの溶融フィラメントの融着が防止可能となる。また各離形性生地221aa、221bbとして、例えば、吸水機能の高い綿繊維を含む吸水性糸を、ニット状に編みこんで変形可能にした吸水性生地を使用しても良い。更に、このような吸水性生地を使用するとともに、フィラメント3次元結合体製造装置1に冷却水供給装置(不図示)等を設けておき、当該吸水性生地の表面全体に冷却水を供給するようにしても良い。これにより、溶融フィラメントの融着と温度上昇を防止することができる。
【0099】
図14は、
図3に示す第2ユニットZ2および第3ユニットZ3の変形例を示す構成図である。本変形例では、第2ユニットZ2の機能は第3ユニットZ3が担っており、第2ユニットZ2の設置は省略されている。より具体的に説明すると、本変形例における第3ユニットZ3は、前後一対となった前側コンベア22aと後側コンベア22bを有する。
【0100】
前側コンベア22aは、従動ローラ81aと、その下方に設けられた駆動ローラ82aと、これらのローラの間に設けられた加圧ローラ83aと、従動ローラ81aおよび駆動ローラ82aにより回転可能に張架支持される耐熱ベルト80aとを含む。
【0101】
また
図14に示すように、各ローラ81a、82a、83aの回転軸は、前後方向に伸びたコンベア支持部84a、85a、86aそれぞれの後端側に、回転可能に取付けられている。各コンベア支持部84a、85a、86aの前端側は、コンベア駆動部87a、88a、89aそれぞれに接続されている。各コンベア駆動部87a、88a、89aは、対応するコンベア支持部を介して、対応するローラを前後方向へ移動させることが出来る。
【0102】
各ローラ81a、82a、83aの前後方向への移動量や移動速度は、これらのローラの前後方向位置が常時同一となるように設定される。これにより前側コンベア22aの後側外面を常時垂直に維持し、溶融フィラメント2を下方へ適切に搬送できる状態のまま、前側コンベア22aを前後方向に移動させることが出来る。なお、各コンベア支持部84a、85a、86aを一体化しておき、これを同じ駆動装置により移動させるようにしても構わない。
【0103】
後側コンベア22bは、従動ローラ81bと、その下方に設けられた駆動ローラ82bと、これらのローラの間に設けられた加圧ローラ83bと、従動ローラ81bおよび駆動ローラ82bにより回転可能に張架支持される耐熱ベルト80bとを含む。
【0104】
また
図14に示すように、各ローラ81b、82b、83bの回転軸は、前後方向に伸びたコンベア支持部84b、85b、86bそれぞれの前端側に、回転可能に取付けられている。各コンベア支持部84b、85b、86bの後端側は、コンベア駆動部87b、88b、89bそれぞれに接続されている。各コンベア駆動部87b、88b、89bは、対応するコンベア支持部を介して、対応するローラを前後方向へ移動させることが出来る。
【0105】
各ローラ81b、82b、83bの前後方向への移動量や移動速度は、これらのローラの前後方向位置が常時同一となるように設定される。これにより後側コンベア22bの後側外面を常時垂直に維持し、溶融フィラメント2を下方へ適切に搬送できる状態のまま、後側コンベア22bを前後方向に移動させることが出来る。なお、各コンベア支持部84b、85b、86bを一体化しておき、これを同じ駆動装置により移動させるようにしても構わない。
【0106】
当該変形例の仕組みにより、前側コンベア24aと後側コンベア24bは別個に支持され、互いに独立して前後方向へ可動である。また、前後の従動ローラ81a、81bに支持されている各耐熱ベルト80a、80bの一部が、第1実施形態における受け板21の役割を果たす。なお各駆動ローラ81a、81bは、各耐熱ベルト80a、80bに挟まれた溶融フィラメント2が下方へ搬送されるように、
図14に矢印で示す方向へ回転駆動する。
【0107】
2.第2実施形態
次に本発明の第2実施形態について説明する。なお第2実施形態は、第1ユニットに関する点を除き、基本的に第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる内容の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する内容については説明を省略することがある。
【0108】
図15は、第2実施形態に係る第1ユニットZ1aの上方視点による概略的な構成図である。本図に示すように第1ユニットZ1aは、ノズル板17、ノズル板17の上部に配設される各シャッター板132(各前側シャッター板132および各後側シャッター板132b)、および各シャッター板132を駆動する各シャッター板駆動部133(前側シャッター板駆動部133aおよび後側シャッター板駆動部133b)を有する。なおここでの「n」は、前後左右にマトリクス状に配列されているノズル17aの左右方向の個数を表し、ノズル板17の構成は、基本的に第1実施形態のノズル板17と同様である。
【0109】
各シャッター板132は、厚みが3mm〜20mmの範囲内にある金属板であり、ノズル板17の上面(各ノズル17aの開口を含む面)に沿って前後方向へ可動に配設されている。各シャッター板132は、押出成形機10から溶融フィラメント2を排出させながら、所定のノズル17a(特定ノズル)を開閉するように可動である。各シャッター板132は前後方向に伸びた板状であり、その左右方向の幅は、各ノズル17aの左右方向のピッチとほぼ同等である。
【0110】
各前側シャッター板132a(132a1〜132an)は、ノズル板17の上面の前寄りの領域において前後方向へ可動である。一方、各後側シャッター板132b(132b1〜132bn)は、ノズル板17の上面の後寄りの領域において前後方向へ可動である。各シャッター板132がノズル17aの上側を塞ぐ位置に移動すると、そのノズル17aは閉じられた状態となる。
【0111】
前側シャッター板駆動部133aは、前側シャッター板132a1〜132anそれぞれを互いに独立して前後方向へ移動させる。後側シャッター板駆動部133bは、後側シャッター板132b1〜132bnそれぞれを互いに独立して前後方向へ移動させる。なお、右からk番目の前側シャッター板132ak(kは1〜nの何れか)、および右からk番目の後側シャッター板132bkは、右からk番目のノズル17aの列に対応している。各シャッター板133の左右方向位置は、対応するノズル17aの列の左右方向位置に一致している。
【0112】
本実施形態では、前からYa列分(例えば4列分)の各ノズル17a(前端側の所定範囲内にある各ノズル17a)が、対応する前側シャッター板132aによって開閉される特定ノズルとなっており、後からYb列分(例えば4列分)の各ノズル17a(後端側の所定範囲内にある各ノズル17a)が、後側シャッター板132bによって開閉される特定ノズルとなっている。
【0113】
前側シャッター板駆動部133aは、ノズル板17の前側縁近傍に配設されており、各前側シャッター板132aを、後方へ押出したり前方へ引き込んだりして前後方向へ移動させる。これにより前側シャッター板132akの状態は、何れのノズル17aも塞がない状態、右からk番目であって前側から1列目までのノズル17aを塞ぐ状態、・・・、および右からk番目であって前側からYa列目までのノズル17aを塞ぐ状態の間で切替可能である。
【0114】
後側シャッター板駆動部133bは、ノズル板17の後側縁近傍に配設されており、各後側シャッター板132bを、前方へ押出したり後方へ引き込んだりして前後方向へ移動させる。これにより後側シャッター板132bkの状態は、何れのノズル17aも塞がない状態、右からk番目であって後側から1列目までのノズル17aを塞ぐ状態、・・・、および右からk番目であって後側からYb列目までのノズル17aを塞ぐ状態の間で切替可能である。
【0115】
各シャッター板132は、ノズル板17の上面をスライドするように、特定ノズルの開口を開く開位置と該開口を閉じる閉位置とに可動であり、特定ノズルの開閉に用いることが出来る。なお本実施形態では、各シャッター板132をノズル板17の上面をスライドするように設けているが、その代わりに、各シャッター板132をノズル板17の下面をスライドするように設けても良い。
【0116】
本実施形態では、前後方向に並ぶノズル17aの列それぞれに対し、前側と後側の両方に、独立して駆動するシャッター板132が一つずつ設けられている。これにより、ノズル17aの開閉を当該列の単位で制御することができ、製造するFTS3の厚みを左右方向で変化させること等も可能である。
【0117】
3.第3実施形態
次に本発明の第3実施形態について説明する。なお第3実施形態は、第1ユニットに関する点を除き、基本的に第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる内容の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する内容については説明を省略することがある。
【0118】
図16は、第3実施形態に係る第1ユニットZ1bの上方視点による概略的な構成図である。
図17(a)は、
図16に示す第1ユニットZ1bのB−B´断面矢視図であり、
図17(b)は、
図16に示す第1ユニットZ1bのC−C´断面矢視図である。
【0119】
第1ユニットZ1は、ノズル板17、ノズル板17の上部に配設される各シャッター板232(前側シャッター板232a1〜232a4および後側シャッター板232b1〜232b4)、および各シャッター232を駆動する各シャッター板駆動部233(右側シャッター板駆動部233aおよび左側シャッター板駆動部233b)を有する。なおノズル板17の構成は、後述する規制孔17bを設けた点を除き、基本的に第1実施形態のノズル板17と同様である。
【0120】
各シャッター板232は、厚みが3mm〜20mmの範囲内にある金属板であり、ノズル板17の上面に沿って水平方向(より具体的には左右方向)へ可動に配設されている。各シャッター板232は、押出成形機10から溶融フィラメント2を排出させながら、所定のノズル17a(特定ノズル)を開閉するように可動である。各シャッター板232は左右方向に伸びた板状であり、その前後方向の幅は、各ノズル17aの前後方向のピッチとほぼ同等である。
【0121】
前側シャッター板232a1〜232a4は、ノズル板17の上面の前寄りの領域において左右方向へ可動である。一方、後側シャッター板232b1〜232b4は、ノズル板17の上面の後寄りの領域において左右方向へ可動である。各シャッター板232がノズル17aの上側を塞ぐ位置に移動すると、そのノズル17aは閉じられた状態となる。
【0122】
前からk番目の前側シャッター板232ak(kは1〜4の何れか)は、前からk番目のノズル17aの列に対応している。後からk番目の後側シャッター板232bkは、後からk番目のノズル17aの列に対応している。各シャッター板233の前後方向位置は、対応するノズル17aの列の前後方向位置に一致している。
【0123】
本実施形態では、前から4列分の各ノズル17a(前端側の所定範囲内にある各ノズル17a)が、対応する前側シャッター板232a1〜232a4によって開閉される特定ノズルとなっており、後から4列分の各ノズル17a(後端側の所定範囲内にある各ノズル17a)が、後側シャッター板232b1〜232b4によって開閉される特定ノズルとなっている。
【0124】
図17(a)に示すように、ノズル板17の左右両端近傍には、左右方向に所定の幅を有する規制孔17bが設けられており、各シャッター板232の両端近傍には、下方へ伸びる突起252が設けられている。各突起252は、規制孔17bに嵌め込まれており、左右方向の可動範囲が規制孔17bの左右方向幅によって規制されている。右側シャッター板駆動部233aは、ノズル板17の右側縁近傍に配設されており、各シャッター板232の右側の突起252に接続された駆動機構を有する。左側シャッター板駆動部233bは、ノズル板17の左側縁近傍に配設されており、各シャッター板232の左端の突起252に接続された駆動機構を有する。これらの駆動機構により、各シャッター板232を互いに独立して、上記規制の範囲内で(つまり、後述する開位置と閉位置との間で)左右方向へ移動させることが出来る。
【0125】
なお各シャッター板232は、ノズル板17の上面(各ノズル17aの開口を含む面)に沿って左右方向へ可動である壁部に、特定ノズルそれぞれに対応した開口部251を有するように形成されている。例えば、前側シャッター板232a1は、前から一列目のノズル17aそれぞれに対応した開口部251を有するように形成されている。
【0126】
一のシャッター板232において、左右方向へ一列に並ぶ複数の開口部251が設けられており、その左右方向の個数およびピッチは、ノズル17aの左右方向の個数およびピッチと同等である。左からx番目の開口部251は、左からx番目のノズル17aに対応している。また、上方視点による開口部251の形状はノズル17aの開口と同じ円形であり、開口部251の直径は当該開口の直径と同等またはやや大きく設定されている。なお、ノズル17aの左右方向のピッチはノズル17aの直径よりも大きく、開口部251の左右方向のピッチは開口部251の直径よりも大きい。
【0127】
各シャッター板232は、ノズル板17の上面をスライドするように、特定ノズルの開口を開く開位置と該開口を閉じる閉位置とに可動であり、特定ノズルの開閉に用いることが出来る。本実施形態における開位置は、開口部251が、対応する特定ノズルに重なる位置(当該開口部251を介して溶融フィラメント2が排出可能となる位置)である。
図16に示す例では、前から3列目と4列目の前側シャッター板232a3、232a4、および、後から3列目と4列目の後側シャッター板232b3、232b4が、開位置に位置した状態となっている。
【0128】
また本実施形態における閉位置は、開口部251が、対応する特定ノズルとその隣の特定ノズルとの間に重なる位置(当該開口部251に隣接する壁部が特定ノズルを塞ぐ位置)である。
図16に示す例では、前から1列目と2列目の前側シャッター板232a1、232a2、および、後から1列目と2列目の後側シャッター板232b1、232b2が、閉位置に位置した状態となっている。
【0129】
各シャッター板232について、開位置と閉位置の間を移動させるために必要な移動量は、ノズル17aの開口の直径程度で足りる。そのため本実施形態では、ノズル17aの開閉に要するシャッター板232の移動距離が非常に短くなり、開閉を素早くしてより精度の高い開閉制御が可能となる。また、前後方向端部から遠い位置にある中央寄りの特定ノズルを開閉する場合であっても、ノズル17aの開閉に要するシャッター板232の移動距離を同様に短くすることができ、同等の効果を得ることが可能である。なお本実施形態では、各シャッター板232をノズル板17の上面をスライドするように設けているが、その代わりに、各シャッター板232をノズル板17の下面をスライドするように設けても良い。
【0130】
4.総括
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。