(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596598
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】LLDPE及びLDPEを有する人工芝繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 6/04 20060101AFI20191010BHJP
E01C 13/08 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
D01F6/04 Z
E01C13/08
【請求項の数】20
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-549560(P2018-549560)
(86)(22)【出願日】2017年4月18日
(65)【公表番号】特表2019-513909(P2019-513909A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2017059184
(87)【国際公開番号】WO2017182466
(87)【国際公開日】20171026
【審査請求日】2018年10月15日
(31)【優先権主張番号】16165769.7
(32)【優先日】2016年4月18日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510256676
【氏名又は名称】ポリテックス・シュポルトベレーゲ・プロドゥクシオンス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Polytex Sportbelaege Produktions GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ジック,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ザンデル,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,ベルント
【審査官】
西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第102493011(CN,A)
【文献】
国際公開第2012/005974(WO,A1)
【文献】
特表2013−538959(JP,A)
【文献】
特表2010−540799(JP,A)
【文献】
特開2004−238774(JP,A)
【文献】
特開2003−268648(JP,A)
【文献】
特開平10−016105(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0243459(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0139150(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 6/04
E01C 13/08
D01D 5/00
C08L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−ポリマー混合物(470)を作製する(502)工程であって、
前記ポリマー混合物が、
・前記ポリマー混合物の60〜99重量%の量で、0.918g/cm3〜0.920g/cm3の範囲の密度を有するLLDPEポリマー(450、452)と、
・前記ポリマー混合物の1〜15重量%の量で、0.919g/cm3〜0.921g/cm3の範囲の密度を有するLDPEポリマー(102、454)と、を含む工程と、
−前記ポリマー混合物を押し出して(504)、モノフィラメント(606)に成形する(504)工程と、
−前記モノフィラメントを急冷する(506)工程と、
−前記モノフィラメントを再加熱する(508)工程と、
−前記再加熱したモノフィラメントを延伸して(510)、延伸モノフィラメントを得た後、該延伸モノフィラメントで人工芝繊維(1004)を形成する工程と、を含む人工芝繊維を製造する方法。
【請求項2】
前記ポリマー混合物が、前記ポリマー混合物の5〜8重量%の量でLDPEポリマーを含み、及び/又は、前記ポリマー混合物の60重量%〜95重量%の量でLLDPEポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー混合物の7〜13重量%の更なるLLDPEポリマー(456)を含み、前記LLDPEポリマー(456)が、0.914g/cm3〜0.918g/cm3の範囲の密度を有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー混合物が、ワックス、艶消し剤、UV安定剤、難燃剤、酸化防止剤、顔料、充填材料及びそれらの組み合わせを含む群より選択される1つ以上の添加剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記LLDPEポリマー(456、452、450)が、チーグラー−ナッタ触媒の存在下での重合反応により作製されたポリマーである、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記LLDPEポリマー(456、452、450)が、メタロセン触媒の存在下での重合反応により作製されたポリマーである、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記LLDPE(456、452、450)ポリマーが、エチレンを、3〜8個の炭素原子を有するα−オレフィン5〜12%と共重合させることにより作製されたポリマーである、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記LLDPEポリマーが、ポリマー鎖の100個のC原子当たりに0.001〜10個の三級C原子を含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記人工芝繊維の製造が、前記延伸モノフィラメントで撚り糸を形成する工程を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記延伸モノフィラメントを前記人工芝繊維に織り、紡ぎ、撚り合わせ、巻き戻し、及び/又は、束ねる工程を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー混合物が、少なくとも二相系であり、該相の第1の相が、第1の染料及び請求項1〜10のいずれか一項記載のポリマー混合物の成分を含み、第2の相が、第2の染料及び前記第1の相とは非混和性の更なるポリマーを含み、前記第2の染料が、前記第1の染料とは異なる色を有し、前記更なるポリマーが、前記第1の相内でポリマービーズを形成する、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記更なるポリマーが、極性ポリマーであり、及び/又は、下記:ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)のうちのいずれか1つである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記人工芝繊維を人工芝裏打ち(1002)に組み込むことにより、人工芝を製造することを更に含む、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記人工芝繊維を前記人工芝裏打ちに組み込む工程が、前記人工芝繊維を前記人工芝裏打ちに房付けし、かつ、前記人工芝繊維を前記人工芝裏打ちに結合させ、又は、前記人工芝繊維を前記人工芝裏打ちに織り込む工程を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項記載の方法に従って製造された、人工芝繊維。
【請求項16】
請求項13又は14記載の方法に従って製造された、人工芝。
【請求項17】
− 60〜99重量% のLLDPEポリマー(456、452、450)であって、0.918g/cm3〜0.920g/cm3の範囲の密度を有するLLDPEポリマーと、
− 1〜15重量% のLDPEポリマー(454)であって、0.919g/cm3〜0.921g/cm3の範囲の密度を有するLDPEポリマー(454)と、を含むモノフィラメント、で形成された人工芝繊維。
【請求項18】
前記モノフィラメントが、7〜13重量%の更なるLLDPEポリマー(456)を含み、該更なるLLDPEポリマー(456)が、0.914g/cm3〜0.918g/cm3の範囲の密度を有する、請求項17記載の人工芝繊維。
【請求項19】
人工芝繊維布裏打ち(1002)と、請求項17又は18記載の人工芝繊維(1004)とを含み、前記人工芝繊維が、前記人工芝繊維布裏打ちに組み込まれている、人工芝(1000)。
【請求項20】
前記モノフィラメントが、押出し延伸モノフィラメントである、請求項19記載の人工芝。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
発明の分野
本発明は、合成芝とも呼ばれる人工芝及び人工芝の製造に関する。本発明は、更に、芝を模倣する繊維の製造、及び特に、ポリマーブレンドに基づく人工芝繊維のための製品及び製造方法並びにこれらの人工芝繊維から製造される人工芝カーペットの製造に関する。
背景及び関連技術
【0002】
背景及び関連技術
人工芝(Artificial turf)又は人工芝生(artificial grass)は、芝生を置き換えるのに使用される繊維で構成された地表である。人工芝の構造は、人工芝が芝に類似する外観を有するように設計される。典型的には、人工芝は、サッカー、アメリカンフットボール、ラグビー、テニス、ゴルフのようなスポーツ用の地表、競技場用の地表又は運動場用の地表として使用される。更に、人工芝は、多くの場合、造園用途に使用される。
【0003】
人工芝競技場は、競技又は運動中に踏み倒された後に、繊維を立たせるのを助けるために、定期的にブラシ掛けされる。5〜15年の典型的な利用期間の間に、人工芝のスポ―ツ競技場が、高い機械的磨耗に耐えることができ、UVに耐えることができ、熱サイクル又は熱劣化に耐えることができ、化学物質との相互作用及び種々の環境条件に耐えることができれば、有益であることができる。したがって、人工芝が長い使用可能期間を有し、耐久性であり、その使用期間の間に、その競技特性及び表面特性並びに外観を維持できれば、有益である。
【0004】
欧州特許出願公開第1378592号A1には、プラストマーとポリエチレンとの混合物を含む合成繊維を製造するための方法が記載されている。ポリエチレンは、LLPE又はHDPEであることができる。
【0005】
2012年6月13日付けの中国特許出願公開第102493011号(TAISHAN SPORTS INDUSTRY GROUP; LEUNG TAISHAN ARTIFICIAL TURF INDUSTRY)には、耐摩耗性人工芝生フィラメントが記載されている。一実施態様は、85% のLLDPEと、6%の 耐摩耗性マスターバッチとを含み、ここで、マスターバッチの約50%は、LDPEからなる。
【0006】
2012年1月12日付けの国際公開第2012/005974号A1(DOW GLOBAL TECHNOLOGIES LLC [US] Sandkuehler Peter [ES]; Martin Jill)には、三成分ポリマーブレンドで製造された配向物品、例えば、撚り糸、テープ又はフィラメントが記載されている。このブレンドは、(a)0.85〜0.90gm/cm
3の密度、及び3未満のMw/Mn、及び0.5〜5gm/10分のメルトインデックス(12)を有する均質なエチレンポリマーを含む、20〜50部の 第1の成分(A)と;(b)0.91〜0.945gm/cm
3の密度、及び3.5超のMw/Mn、及び0.5〜10gm/10分のメルトインデックス(12)を有する不均質な分岐鎖エチレンポリマーを含む、30〜80部 の第2の成分(B)と;(c)0.945gm/cm
3超の密度、及び0.01〜10gm/10分のメルトインデックス(12)を有するエチレンポリマーを含む、2〜25部 の第3の成分(C)とを含む。一連の望ましい特性、例えば、平滑性、引張強度、せん断力に対する抵抗性及び/又は繊維のスプライシングに対する抵抗性を有する人工芝繊維を製造するのが望ましい場合がある。
【0007】
概要
本発明は、独立請求項において人工芝を製造する方法を提供する。実施態様は、従属請求項に与えられる。実施態様は、それらが相互に排他的でなければ、自由に互いを組み合わせることができる。
【0008】
一態様において、本発明は、人工芝繊維を製造する方法に関する。本方法は、
−・ポリマー混合物の60〜99重量%の量のLLDPEポリマー、
・ポリマー混合物の1〜15重量%の量のLDPEポリマー
を含むポリマー混合物(470)を作製する工程と、
−ポリマー混合物を押し出して、モノフィラメントに成形する工程と、
−モノフィラメントを急冷する工程と、
−モノフィラメントを再加熱する工程と、
−再加熱したモノフィラメントを延伸して、モノフィラメントで人工芝繊維を形成する工程とを含む。
【0009】
「低密度ポリエチレン」(LDPE)は、0.910〜0.940g/cm
3の範囲の密度を有するエチレンモノマーから構成される熱可塑性物質である。本発明の実施態様は、密度範囲が上記で特定された部分範囲内にあるLDPEに基づいている。
【0010】
本明細書で使用する場合、「直鎖状低密度ポリエチレン」(LLDPE)は、相当な数の短い分岐を有する、実質的に線状のポリマー(ポリエチレン)である。LLDPEは長鎖の分岐が存在しないため、従来のLDPEとは構造的に異なる。LLDPEの線状性により、LLDPEとLDPEとは製造プロセスが異なる。一般的には、LLDPEは、エチレンとα−オレフィンとの共重合により、より低い温度及び圧力で製造される。
【0011】
押出し及び延伸プロセスにおいてモノフィラメントを作製するために、上記特定された量の範囲でLLDPEとLDPEとの混合物を含む人工芝を製造することは、複数の理由で有利であることができる。
【0012】
本方法により、同時に、柔軟で、可撓性で、(例えば、押出し中又は延伸中に加えられる)せん断力に対して抵抗性であり、高い引張強度を有し、スプライシングに対して抵抗性である、人工芝繊維を製造可能である。本明細書で使用する場合、「スプライシング」は、その長手方向軸に沿って繊維を縦に裂くことに関する。
【0013】
プラストマーとLLDPE又はHDPEとの組み合わせと比較して、特定量の範囲でのLLDPEとLDPEとの組み合わせを含むポリマー混合物は、驚くべきことに、向上した柔軟性、可撓性及び改善した引張強度を示す一方で、同じ又は更に改善した縦裂きに対する抵抗性を示す。全てのプラストマーが人工芝繊維における縦裂きを防止するのに十分適しているわけではないことが観察された。プラストマーは、−少なくとも、一部の特定量の範囲で提供され、及び/又は、特定の密度を有する場合−、おそらく、スプライシングを確実に防止することができる鎖の絡み合いを生じるとは考えられず、及び/又は、低下した引張強度もしくは可撓性及び/又は増大した脆性を有する繊維が作製される等の負の副作用を有するためである。
【0014】
出願人は、驚くべきことに、一方で、高いスプライシング耐性と、他方で、高い引張強度との間の最適な妥協点を、人工芝繊維作製用に、特定量のLLDPEとLDPEポリマーとを組み合わせることにより達成することができることを観察した。加えて、前記繊維は、低下した脆性及び向上した可撓性を有することができる。
【0015】
出願人は、作製された繊維のスプライシングに対する高い抵抗性を、高い引張強度及び高い可撓性との組み合わせで確保するために、使用されるLDPEの量を、比較的少なく、優先的には、ポリマー混合物の1重量%〜15重量%の範囲、より優先的には、5〜8重量%の範囲にするべきであることも観察した。
【0016】
出願人は、LLDPEにおける長鎖分岐の欠損により、鎖が伸張する際に、鎖同士が絡まり合うことなく滑らかに動くことが可能となることを観察した。結果として、完全にLLDPEからなる繊維は、引っ張り力が繊維表面に加えられると、スプライシングを受けやすい。出願人は、LLDPEがLDPE及び多くのプラストマーより、より高い引張強度及びより高い穿孔抵抗性を有することも観察した。出願人は、驚くべきことに、上記特定量の範囲でのLDPE及びLLDPEの特定組み合わせを使用することにより、スプライシングに抵抗性であることができ、同時に、柔軟性で、可撓性であり、かつ、高い引張強度を有する人工芝繊維を製造可能であることを観察した。
【0017】
更に有益な態様では、モノフィラメント内及びモノフィラメント表面でのポリマー結晶の延伸誘引形成によって、繊維の粗さを増大させ、もって、モノフィラメントが、後に凝固させる液膜(例えば、ラテックス又はPUフィルム)に部分的に埋め込まれる実施態様において、人工芝裏打ちへの強力な機械的固定が可能となる。
【0018】
出願人は、LLDPE及びLDPEポリマーを含むポリマー混合物上に強力なせん断力を加えることにより、例えば、LLDPE及びLDPEポリマーを含むポリマー混合物を押し出すことにより、LDPE分子が変形され、LDPE分子の側鎖が他のLDPE分子の側鎖及び/又はLLDPE分子と絡み合うことを更に観察した。鎖の絡み合いの結果として、粘度が上昇する。出願人は、特定量のLDPE及びLLDPEの特定の混合物から製造された人工芝繊維が、柔軟で可撓性であり、(LLDPE成分による)高い引張強度を有し、同時に、(LDPE成分により生じる鎖の絡み合いにより)スプライシングに対して抵抗性であることを見出した。出願人は、LDPEに対するLLDPEの比が大き過ぎると、スプライシングが起こる場合があり、前記比が小さ過ぎると、繊維の可撓性及び引張強度が著しく低下する場合があることを観察した。
【0019】
ポリアミド(PA)等のポリマーとは対照的に、ポリエチレン(PE)は、一般的には、皮膚の火傷等の傷害のリスクを低減する比較的柔軟で可撓性のポリマーと考えられている。LLDPEは、そのより短い鎖の分岐のために、せん断感受性であるPEの一形態である。LLDPEは、同等のメルトインデックスのLDPEの応力緩和と比較して、押出し又は延伸後のポリマー鎖の、より速い応力緩和が可能である。応力耐性は、人工芝繊維の製造に関して特に有益であることができる。すなわち、延伸プロセスにより、延伸繊維の表面(及び内部)における結晶部分の形成が誘発される。この結晶は、表面粗さを増大させるため、表面裏打ちにおける繊維のより良好な機械的固定が可能となる。
【0020】
実施態様によれば、ポリマー混合物は、LDPEポリマーを、ポリマー混合物の5〜8重量%の量で含み、LLDPEポリマーを、ポリマー混合物の60重量%〜95重量%の量で含む。好ましい実施態様によれば、ポリマー混合物は、LDPEポリマーを、ポリマー混合物の5〜8重量%の量で含み、及び/又は、LLDPEポリマーを、LLDPEポリマー混合物の65〜75重量%の量で含む。
【0021】
「ポリマー混合物」は、更なる物質、例えば、充填材料及び/又は添加剤を含むことができる。このため、LLDPEポリマー及びLDPEポリマーの総量は、ポリマー混合物の100重量%である必要はない。
【0022】
実施態様によれば、LDPEポリマーは、0.919g/cm
3〜0.921g/cm
3の範囲の密度を有する。
【0023】
いくつかの実施態様によれば、LLDPEは、0.918g/cm
3〜0.920g/cm
3の範囲の密度を有する。
【0024】
出願人は、驚くべきことに、スプライシングに抵抗性であり、高い引張強度を示す繊維の能力は、各ポリマーの密度によっても決まることを観察した。おそらく、密度は、分岐の数及び位置並びにPE分子の分岐に関連する他の構造特性に対応するためである。上記密度範囲は、スプライシング抵抗性と引張強度とを組み合わせた繊維を提供するのに特に適していることが観察された。
【0025】
他の実施態様によれば、LLDPEポリマーは、0.918g/cm
3〜0.920g/cm
3の範囲の密度を有する第1のLLDPEポリマーを含み、0.914g/cm
3〜0.918g/cm
3の範囲の密度を有する第2のLLDPEポリマーを含む。
【0026】
実施態様によれば、ポリマー混合物は、第2のLLDPEポリマーをポリマー混合物の7〜13重量%の量で含む。混合物におけるLLDPEポリマーの残り部分は、上記特定された、より高い密度を有する第1のLLDPEからなることができる。
【0027】
第1の「中密度」LDPEに加えて、第2の「低密度」LLDPEを加えることは、スプライシングのリスクを更に低下させるために有利であることができる。すなわち、低密度LLDPEは、三次元空間において、より密でない様式で折り畳まれるため(
図1を参照のこと)、延伸プロセスにおいて生じる結晶部分の量を減少させることができる。これにより、繊維の脆性が低下するため、スプライシングのリスクも低下させることができる。このため、特定量のLDPE及びLLDPEを選択し、鎖の絡み合いを促進することにより、スプライシングを防止することができる。この場合、スプライシングのリスクを、低密度LLDPEを加えることにより更に低下させることができる。
【0028】
更に有益な態様では、一定量の前記「低密度」LDPEを加えることにより、繊維をより平滑にし、皮膚の火傷のリスクを低減させる。
【0029】
実施態様によれば、LLDPEポリマーは、ポリマー混合物に、以下の形態で加えられる。
−添加剤を含まない「主」LLDPEポリマー成分(「主」又は「純粋な」LLDPEポリマーは、例えば、ポリマー混合物の47〜88重量%の量で、優先的には、ポリマー混合物の70〜75重量%の量で加えることができる)及び
−1つ以上の添加剤を含む更なるLLDPEポリマー(第2のLLDPEポリマーは、例えば、ポリマー混合物の7〜13重量%の量で、優先的には、約10%の量で加えられる。前記添加剤含有LLDPEポリマー画分は、「マスターバッチ」と呼ぶこともでき、「主」LLDPEポリマー成分及びマスターバッチは、0.918g/cm
3〜0.920g/cm
3の上記言及された密度範囲を有することができる)。
−場合により、低密度LLDPEポリマーを、優先的には、ポリマー混合物の7〜13重量%の量で加えることができる。
【0030】
優先的には、主LLDPE成分及び「マスターバッチ」のLLDPEポリマー種は同一であり、マスターバッチが、さらに添加剤を含むことのみが異なる。例えば、LDPE、LLDPEマスターバッチ、及び添加剤を含まないLLDPE成分はそれぞれ、ポリマー顆粒の形態で容器に加えることができる。顆粒は混合され、全てのポリマー顆粒が溶融し、モノフィラメントを押し出すのに使用される液状のポリマー混合物が生じるまで加熱される。主な種類のポリマー(ここでは、LLDPEポリマー)に基づく別々のマスターバッチによってのみ添加剤を加えることは、添加剤を含まないLLDPE及びLDPEそれぞれの種類及び相対量とは独立して、幾つかの特性、例えば、色、難燃性等を改変可能であるため有利である。このため、LLDPE及びLDPEの最適な比から逸脱することなく、例えば色又は難燃剤の濃度を改変可能である。同様に、モノフィラメント及び繊維の物理−化学特性、例えば、弾性、せん断力及びスプライシングに対する抵抗性、可撓性、柔軟性並びに引張強度を「微調整する」ために、中密度LLDPEと低密度LLDPEとの比を、添加剤の濃度を改変させることなく、わずかに適合可能である。
【0031】
実施態様によれば、ポリマー混合物は、1つ以上の添加剤を更に含む。添加剤は、ポリマー混合物に、例えば、マスターバッチを加えることにより、加えることができる。添加剤は、ワックス、艶消し剤、UV安定剤、難燃剤、酸化防止剤、顔料、充填材料及びそれらの組み合わせを含む群より選択される。充填材料は、ポリマー混合物に別個に加えることもでき、押し出される最終的なポリマー混合物の相当量を構成することができる。
【0032】
実施態様によれば、LLDPEポリマーは、チーグラー−ナッタ触媒の存在下での重合反応により作製されたポリマーである。
【0033】
一部の実施態様によれば、チーグラー−ナッタ触媒は、共触媒、例えば、有機アルミニウム化合物、例えば、トリエチルアルミニウム、と組み合わせたチタン成分をベースとする不均一系支持触媒である。
【0034】
他の実施態様によれば、チーグラー−ナッタ触媒は、均一系触媒である。均一系触媒は、通常、Ti、Zr又はHfの錯体をベースとしており、優先的には、異なる有機アルミニウム共触媒であるメチルアルミノキサン(MAO)との組み合わせで使用される。チーグラー−ナッタ触媒を使用することは、生成されたLLDPEの分岐が、よりランダムに分布される、例えば、アタクチック配向を示す利点を有することができる。これにより、LDPE分子の分岐との絡み合いが容易になる場合がある。
【0035】
実施態様によれば、LLDPEポリマーは、メタロセン触媒の存在下での重合反応により作製されたポリマーである。LLDPEポリマーを生成するための重合を触媒させるのにメタロセンを使用することは、この特定形態の触媒により、分岐が、より少ないランダムさで、より明らかな様式で生じるのを確かにするため有利であることができる。メタロセンを触媒として使用する結果として、LLDPE分子当たりの分岐数は、通常の分布には従わず、ポリマー分子あたりの分岐頻度についての1つのみ又は非常に少ない(例えば、1〜3個の)ピークを有する分布に従う。分岐長が、よりランダムに分布されるLLDPEポリマーを生成することにより、LDPE分子の分岐との絡み合いを容易にすることができる。
【0036】
例えば、メタロセン触媒は、共触媒、例えば、MAO、(Al(CH3)xOy)nと共に使用することができる。一部の例によれば、メタロセン触媒は、組成Cp2MCl2(M=Ti、Zr、Hf)、例えば、二塩化チタノセンを有する。典型的には、有機リガンドは、シクロペンタジエニルの誘導体である。そのシクロペンタジエニルリガンドの種類に応じて、例えば、Ansa架橋を使用することにより、メタロセン触媒は、異なる立体規則性及び異なる分岐頻度のポリマーを製造することができる。IUPAC定義におけるタクチックポリマーは、全ての構成(繰返し)単位が本質的に同一である高分子である。立体規則性、分岐頻度及び分布は、ポリマーの物理特性に影響を有するであろう。高分子構造の規則性は、この高分子が、堅い結晶性長距離秩序又は可撓性の非晶性長距離無秩序有する度合いに影響を及ぼす。実施態様によれば、人工芝繊維を製造するのに使用するためのLLDPE又はLDPE顆粒を製造するのに使用されるポリマー混合物の立体規則性は、プロトン又は炭素−13NMRを使用して直接測定することができる。この技術によって、スペクトル分解に応じた既知の2連子(r、m)、3連子(mm、rm+mr、rr)及び/又は高次のn−連子に対応するピーク面積又は積分範囲の比較により、立体規則性分布の定量が可能である。立体規則性を測定するのに使用することができる他の技術は、x−線粉体回折、二次イオン質量分光法(SIMS)、振動分光法(FTIR)及び特に、二次元技術を含む。
【0037】
実施態様によれば、LLDPEポリマーは、3〜8個の炭素原子を有する、5〜12% のα−オレフィン(例えば、ブテン、ヘキセン又は
オクテン)とエチレンを共重合させることにより作製されるポリマーである。作製されたLLDPEの結晶化度は、加えられるコモノマーの量により決まり、典型的には、わずかに30〜40%の範囲にとどまり、結晶溶融範囲は、典型的には、121〜125℃の範囲にある。
【0038】
LLDPEの製造は、触媒tにより開始される。実際の重合プロセスは、液相又は気相リアクタのいずれかにおいて行うことができる。通常、オクテンが、液相におけるコモノマーである一方で、ブテン及びヘキセンが、気相リアクタにおいて、エチレンと共重合される。
【0039】
実施態様によれば、LLDPEポリマーは、ポリマー鎖の100個のC原子当たりに0.001〜10個の三級C原子を含むポリマーである。好ましくは、LLDPEポリマーは、ポリマー鎖の100個のC原子当たりに0.8〜5個の三級C原子を含む。
【0040】
実施態様によれば、LDPEポリマーは、ポリマー鎖の100個のC原子当たりに0.001個超、優先的には、1個超の三級C原子を含むポリマーである。三級C原子の数は、分岐度の尺度である。上記特定の分岐度を有するLLDPE及び/又はLDPEポリマーを使用することは、前記分岐度が、LLDPEとLDPEポリマー分子との間の強力な絡み合いを生じさせて、スプライシングに対してポリマー繊維を保護することが観察されたため、有利であることができる。実施態様によれば、人工芝繊維を製造することは、延伸モノフィラメントを撚り糸に形成することを含む。複数、例えば、4〜8本のモノフィラメントを、撚り糸に形成し又は仕上げることができる。
【0041】
実施態様によれば、本方法は、延伸モノフィラメントを織り、紡ぎ、撚り合わせ、巻き戻し、及び/又は、束ねて人工芝繊維にする工程を更に含む。人工芝を製造するこの技術は、例えば、米国特許出願公開第20120125474号A1から公知である。
【0042】
実施態様によれば、ポリマー混合物は、液状のポリマー混合物であり、2つ以上の異なる液相を含む。該相の第1の相は、第1の染料及び先に記載された実施態様のいずれか1つに記載のポリマー混合物の成分を含む。例えば、前記第1の相は、第1及び第2のLLDPEポリマーとLDPEポリマーとの混合物を含むことができる。第2の相は、第2の染料及び第1の相とは非混和性の更なるポリマー、例えば、ポリアミドを含むことができる。第2の染料は、第1の染料とは異なる色を有することができ、更なるポリマーは、第1の相内でポリマービーズを形成する。
【0043】
再加熱されたモノフィラメントの延伸により、ポリマービーズが糸様領域に変形される。二相ポリマー混合物のモノフィラメントへの押出しにより、第1の染料の第1の色及び第2の染料の第2の色のマーブルパターンを含むモノフィラメントが押し出され、作製される。
【0044】
このため、2つの異なる染料が2つの異なる相に分散され、該相の一方がビーズの形態で他方の相に乳化されている、液状ポリマー混合物を作製することができる。これは、第1の色と第2の色との中間色を有するモノフィラメントではなく、マーブルパターンを有するモノフィラメントが作製されるのを確保するために、2つの染料の時期尚早な混合を機械的に防止する特注押出し機を使用し又は作製するのを必要としないので有利であることができる。このため、本発明の実施態様は、マーブル状モノフィラメントを作製するために、単色モノフィラメントを作製するのと同じ押出し機の使用を可能にする。これにより、製造コストを低減することができ、1つの溶融・押出し装置により作製することができる人工芝の種類の多様性を増やすことができる。
【0045】
更に、天然芝の手触りを正確に再現する人工芝を提供するのに、1つの複雑な紡糸口金工具に送り込む複数の押出しヘッドを必要としない。
【0046】
更に有益な態様では、第1の相の全部または大部分を(第1の染料と共に)構成するポリマー混合物は、2つの異なる種類のポリマーが二相、例えば、第1の相におけるPEと第2の相におけるポリアミドとの種々の形態で使用される場合であっても、第2の相の全部または大部分を(第2の染料と共に)構成する他のポリマーから剥離することはない。糸様領域が、第1の相のポリマー混合物内に埋め込まれる。したがって、それらを剥離することは不可能である。
【0047】
実施態様によれば、相溶剤が、ポリマー混合物及び第1の相と第2の相との界面に加えられることにより、異なる相におけるポリマーの剥離を更に防止する。
【0048】
更なる利点は、押出しプロセス中の流体動力学により、押出しプロセス中にモノフィラメントの中心領域に糸様領域が濃縮される一方で、モノフィラメントの表面にも相当な部分の糸様領域が依然として存在し、マーブルパターンの外観を生じさせることができることである。このため、(第1の相におけるLLDPE及びLDPEより剛性の材料のものであることができる)他のポリマーを、モノフィラメントの中心に濃縮させることができ、モノフィラメントの外側又は外部領域に、より多くの量のより柔軟なプラスチックを濃縮させることができる。これにより、剛性、表面平滑性、並びに表面の色及び手触りの両方に関して、より芝生に似た特性を有する人工芝繊維を更にもたらすことができる。
【0049】
マーブル状の色パターンが押出しフィラメントの表面に印刷され又は塗装される代替的なアプローチとは対照的に、本方法の実施態様によれば、その表面だけでなく、内側にもマーブル状の色パターンを含むモノフィラメントがもたらされる。フィラメントが縦裂きされ、その表面がすり減らされ又は何らかの方法で傷付けられてしまうような場合でも、マーブル状の色パターンは、同パターンがモノフィラメントの表面に制限されていないため除去されないであろう。
【0050】
実施態様によれば、ポリマー混合物は、0.2〜35重量% の更なるポリマーを含み、より優先的には、2〜10重量% の更なるポリマーを含む。実施態様によれば、0.918g/cm
3〜0.920g/cm
3の範囲の密度を有する「純粋な」LLDPEの量は、前記LLDPEポリマー、LLDPEマスターバッチ、任意の低密度LLDPE、LDPEポリマー、他のポリマー、並びに任意の添加剤及び/又は充填物質が合計100%になるまで加えられるように選択される。
【0051】
実施態様によれば、更なるポリマーは、極性ポリマーである。
【0052】
実施態様によれば、更なるポリマーは、下記:ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)のうちのいずれか1つである。
【0053】
実施態様によれば、モノフィラメントのマーブルパターンは、天然芝生の色パターンを再現する。例えば、第1の染料は、緑色のものであり、他の染料は、黄色又は淡緑色のものである。これは、天然芝生の外観を忠実に再現する人工芝繊維が製造されるため有利であることができる。
【0054】
実施態様によれば、第1の染料は、第1の相の0.001〜0.3重量%、好ましくは、0.05〜0.2重量%の濃度でのフタロシアニングリーンである。優先的には、第1の染料は、緑色又は暗緑色を有する。実施態様によれば、第2の染料は、第2の相の0.5〜5、優先的には、1.5〜2重量%の濃度でのアゾ−ニッケル顔料錯体である。例えば、アゾ−ニッケル顔料である「BAYPLAST(登録商標)Gelb 5GN」(LANXESS)を、第2の染料として使用することができる。優先的には、第2の染料は、黄色、淡緑色又は黄緑色を有する。
【0055】
実施態様によれば、押出しは、40〜140bar、より優先的には、60〜100barの圧力で行われる。ポリマー混合物は、ポリマー顆粒を、全てのポリマーが溶融するまで混合され、加熱される固体ポリマー組成物に加えることにより作製することができる。例えば、ポリマー混合物は、押出しの時点で、190〜260℃、より優先的には、210〜250℃の温度に達するように加熱することができる。
【0056】
実施態様によれば、延伸は、再加熱したモノフィラメントを、1.1〜8の範囲、より優先的には、3〜7の範囲の延伸係数に従って延伸することを含む。
【0057】
実施態様によれば、急冷は、10〜60℃、より優先的には、25℃〜45℃の温度を有する急冷溶液において行われる。
【0058】
実施態様によれば、モノフィラメントのマーブルパターンにおいて、2つの異なる色の発生は、優先的には、50〜1000μm毎、より優先的には、100〜700μm毎に変化する。実施態様によれば、モノフィラメントのマーブルパターンは、天然芝の色パターンを再現する。
【0059】
実施態様によれば、人工芝繊維は、人工芝裏打ちを超えて、所定長さ伸びている。繊維様領域は、該所定長の1/2未満の長さを有する。
【0060】
実施態様によれば、本方法は、人工芝繊維を人工芝裏打ちに組み込むことにより人工芝を製造することを更に含む。実施態様によれば、人工芝繊維を人工芝裏打ちに組み込むことは、人工芝繊維を人工芝裏打ちに房付けし、人工芝繊維を人工芝裏打ちに結合させることを含む。
【0061】
実施態様によれば、人工芝繊維を人工芝裏打ちに組み込むことは、人工芝繊維を人工芝裏打ちに織り込むことを含む。
【0062】
更なる態様では、本発明は、本明細書で記載された実施態様のいずれか1つの方法に従って製造された、人工芝繊維に関する。
【0063】
更なる態様では、本発明は、本明細書で記載された実施態様のいずれか1つの方法に従って製造された、人工芝に関する。
【0064】
更なる態様では、本発明は、
−60〜99重量%、例えば、60〜95重量% のLLDPEポリマーと、
−1〜15重量%、例えば、5〜8重量% のLDPEポリマーと、を含む人工芝繊維に関する。
【0065】
実施態様によれば、LLDPEポリマーは、0.918g/cm
3〜0.920g/cm
3の範囲の密度を有し、及び/又は、LDPEポリマーは、0.919g/cm
3〜0.921g/cm
3の範囲の密度を有する。
【0066】
他の実施態様によれば、LLDPEポリマーは、0.918g/cm
3〜0.920g/cm
3の範囲の密度を有する第1のLLDPEポリマーと、0.914g/cm
3〜0.918g/cm
3の範囲の密度を有する第2のLLDPEポリマーとからなる。LDPEポリマーは、0.919g/cm
3〜0.921g/cm
3の範囲の密度を有する。
【0067】
更なる態様では、本発明は、人工芝繊維布裏打ちと、本発明の実施態様に記載された人工芝繊維とを含む、人工芝に関する。人工芝繊維は、人工芝裏打ちに組み込まれている。
【0068】
実施態様によれば、モノフィラメントは、押出し及び/又は延伸モノフィラメントである。人工芝繊維の作製は、ポリマー混合物を押し出す工程と、モノフィラメントを延伸して、モノフィラメントで人工芝繊維を形成する工程とを含む。
【0069】
実施態様によれば、相溶剤は、下記:グラフト化無水マレイン酸(MAH)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、ポリエチレン又はポリアミド上にグラフト化されたマレイン酸;ポリエチレンのフリーラジカル開始グラフトコポリマー上にグラフト化された無水マレイン酸、SEBS(スチレンエチレンブチレンスチレン)、EVA(エチレン−ビニルアセテート);マレイン酸のような不飽和酸またはその無水物を含む、EPD(エチレン−プロピレンジエン)又はポリプロピレン;グリシジルメタクリレート、リシノロキサゾリンマレイネート;SEBSとグリシジルメタクリレートとのグラフトコポリマー、EVAとメルカプト酢酸及び無水マレイン酸とのグラフトコポリマー;EPDMと無水マレイン酸とのグラフトコポリマー;ポリプロピレンと無水マレイン酸とのグラフトコポリマー;ポリオレフィン−graft−ポリアミドポリエチレンもしくはポリアミド;並びにポリアクリル酸型相溶剤のいずれか1つである。
【0070】
異なる種類のポリマーの混合物、例えば、上記されたように、第1の相における非極性ポリエチレンと第2の相における極性ポリアミドとの混合物を使用することは、マーブル状の色パターンを示し、より剛性のPAによる摩耗及び引裂きに対する向上した耐久性を有するのと同時に、純粋なPA系モノフィラメントと比較して、より平滑な表面及び向上した弾性を有する人工芝繊維が作製されるという利点を有する。相溶剤は、異なる相に関するポリマー領域間のスプライシングを防止する。
【0071】
実施態様によれば、急冷溶液、例えば、水浴は、10〜60℃、より優先的には、25〜45℃、及び更により優先的には、32℃〜40℃の温度(押し出しノズルまたは孔の直後)を有する。急冷溶液の前記温度は、モノフィラメントの押出しと複数の液状ポリマー相の凝固との間の定義された時間間隔内で、凝固がポリマードメインの任意の更なる移動及び融合を妨げる前に、特定の相の複数のポリマードメインを一体化することにより、所望の平均太さを有する第1のポリマーの糸をもたらすことができるために有利であることができる。
【0072】
更に、ポリマー相が液状である間、及び染料が他の相に拡散することができる間に得られる時間間隔は、他の相への相当な染料拡散が妨げられるほどに短い。更に、高圧下、かつ、ポリマー混合物における(押出し時に観察された)激しい流動条件において、所定の相の複数のポリマードメインは一体化しないことが観察された。これらの「激しい」条件下では、押出しモノフィラメントが押出し直後に凝固するであろう場合、多くの場合、第1のポリマー相の糸は細く、マーブル構造が観察できないであろう。しかし、上記された急冷液温度及び押出し塊温度を使用することにより、同じ相の異なるポリマードメインは、ポリマー混合物流が層流になった後に一体化するのに十分な時間を有し、もって、ヒトの眼により、例えば、15cm以内の距離で見た場合、サイズ及び厚みがマーブル状の色の印象を提供するのに十分長い糸を形成する。
【0073】
実施態様によれば、押出しは、80barの圧力で行われ、押出し時のポリマー混合物は、230℃の温度を有し、延伸係数は、5であり、急冷溶液、例えば、水浴は、35℃の温度を有する。
【0074】
実施態様によれば、第1及び第2の染料はそれぞれ、無機染料、有機染料又はそれらの混合物である。上記言及された条件において、基本的には、染料の極性又分子量に関係なく、染料の各他のそれぞれの相への拡散が妨げられるであろう。
【0075】
これは、染料の各他のそれぞれの相への拡散の防止、したがって、染料の混合が防止されることにより、マーブル状の色表現が第1及び第2の染料の任意の組み合わせで生成されることを確保するのに有利であることができる。
【0076】
実施態様によれば、色様領域は、2mm未満の長さを有する。
【0077】
実施態様によれば、ミキサーの撹拌パラメータである押出し塊温度は、押出し前の溶融ポリマー混合物中のビーズの平均直径が、50マイクロメートル未満、優先的には、0.1〜3マイクロメートル、好ましくは、1〜2μmであるように選択される。
【0078】
前記特徴は、押出しポリマー混合物が一旦、層流流動状態に達した際に、同じ層のポリマードメインの一体化を可能にする急冷条件と組み合わせて、2つの異なる色の発生が、優先的には、50〜1000μm毎、より優先的には、100〜700μm毎に変化するマーブル構造の形成を支持するのに有利であることができる。
【0079】
このため、押出し中に、第2のポリマー相のポリマードメインは、第1のポリマー相内に非常に微細に顆粒状に分散され、第2の色を示すモノフィラメントの表面上の部分は、モノフィラメントが凝固するまでの、押出し後の複数の第2の相ドメインの一体化(融合)により、目の粗い構造として形成することができる。これにより、第1及び第2のポリマー相のより良好な混合が可能となり、層間剥離(delamination)を妨げることができる。
【0080】
「ドメイン」、「ポリマードメイン」、「ポリマービーズ」又は「ビーズ」という用語は、別のポリマーからなる周囲の相に非混和性であるポリマーの局部領域、例えば、液滴を意味することができる。ポリマービーズは、一部の例では、円形又は球形又は楕円形であることができるが、それらは、不規則な形状であることもできる。
【0081】
本明細書で使用する場合、「相」は、材料の多くの又は全ての物理特性が本質的に均質である、空間領域(熱力学系)である。物理特性の例は、密度、屈折率、磁化性及び化学組成を含む。相が、化学的に均質で、物理的に識別でき、機械的に分離可能である材料の領域であるというのが、単純な説明である。例えば、ポリマー混合物は、溶融状態において、第1及び第2の液相を形成することができ、これにより、第1の相は、第1及び第2のLLDPEポリマー及びLDPEポリマー並びに第1の染料の混合物を含み、第2の相は、別のポリマー、例えば、PA及び第2の染料を含むことができる。
【0082】
本明細書で使用する場合、「ポリマー」は、ポリオレフィンである。
【0083】
本発明の1つ以上の前述の実施態様は、組み合わせられた実施態様が相互に排他的でない限り、組み合わせることができると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
本発明の下記実施態様は、例示としてのみ、図面を参照して、より詳細に説明される。
【
図1】
図1は、LDPE及びLLDPE分子を示す。
【
図2】
図2は、1つのLDPEと複数のLLDPE分子との絡み合いを示す。
【
図4】
図4は、顆粒状ポリマー混合物の断面を示す。
【
図5】
図5は、人工芝繊維を製造する方法の例を図示するフローチャートを示す。
【
図6】
図6は、複数相のポリマー混合物の模式図を示す。
【
図7】
図7は、モノフィラメントの小さなセグメントの断面を示す。
【
図8】
図8は、モノフィラメントを延伸する効果を図示する。
【
図9】
図9は、ポリマー混合物のモノフィラメントへの押出しを図示する。
【0085】
詳細な説明
これらの図面における同じ符号の構成要素は、同等の構成要素であるか、又は、同じ機能を行うかのいずれかである。先に検討された構成要素は、機能が同等であれば、後続の図面において検討するのを必ずしも必要としないであろう。
【0086】
図1に、本発明の実施態様に使用することができる、1つのLDPE分子102を示す。LDPE分子102は、1つ以上の長い主鎖と、主鎖のいずれか1つから伸びる複数の短い側鎖とを含む。短い側鎖は、典型的には、2〜8個の炭素原子の長さである。加えて、
図1に、1つのLLDPE分子104を示す。LLDPE分子は、より長い側鎖を含まない。LLDPE分子は、1つの長いポリエチレン主鎖及び主鎖から伸びる複数の短い側鎖のみを含む。
【0087】
出願人は、重合反応中に使用される触媒の種類により、PE分子の立体規則性及び分岐特性(主鎖中の分岐の数及び距離、側鎖の長さ等)が決定されることを観察した。優先的には、メタロセン触媒が、LLDPEを作製するのに使用される。メタロセン触媒により、他の触媒より規則正しい分岐パターンがもたらされる(典型的には、分岐の数及び距離並びに個々の分岐の長さが正常な分布に従うLLDPEポリマーの生成が誘発される)ためである。定義された通常の(非標準的分布)分岐パターンを有するLLDPEポリマーの生成は、このようなLLDPEポリマーとLDPEポリマーとの混合物から生じるモノフィラメントの特性を、より明確に予測することができるため有益であることができる。更に、密度は、立体規則性及び分岐パターンのより正確なインジケータである。
【0088】
加えて、
図1の下部に、第1の「中密度」LLDPE104が、第2の「低密度」LLDPE106よりも密に折り畳まれていることを図示する。
【0089】
図2に、1つのLDPE分子102と複数のLLDPE分子104との間の鎖の絡み合いを示す。この絡み合いは、
LDPEの大きい方の分岐及び小さい方の分岐と、1つ以上のLLDPE分子の主鎖及び小さい方の側鎖との間のファンデルワールス力により達成される。より大きな側鎖を欠いているため、LLDPEのみからなるポリマー繊維は、スプライシングを受けやすいであろう。幾らかのLDPE分子を特定の重量比で、主にLLDPEからなるポリマー混合物に加えることにより、及び、特定の密度のLDPE及びLLDPEポリマーを選択することにより、高い縦裂き抵抗性と、同時に、高い引張強度を有する繊維を製造可能である。
【0090】
図3に、円筒状の押出しノズル内の領域に沿った断面を示す。第1の領域302では、液化したポリマー混合物のポリマーは、ほとんどが非晶状態である。すなわち、結晶領域が、わずかにのみ存在し又は存在せず、ポリマー分子は、一次元における好ましい配向を何ら示していない。増大したせん断力の領域に対応する第2の領域304において、ポリマー分子がせん断され、ノズルの開口310の方向に、少なくとも部分的に引っ張られる。高せん断力に対応する領域306において、LLDPE及び部分的にLDPE分子も、少なくとも部分的に、もつれが解かれ、配向され、結晶部分308を形成する。ただし、好ましい実施態様によれば、大部分の結晶部分は、延伸プロセスにおいて、その後に生じる。
【0091】
本発明の実施態様のLLDPE−LDPE混合物を使用することは、製造プロセスにおいて延伸される人工芝繊維におけるスプライシングを防止するのに特に有益である。押出し、及び特に、延伸により、LLDPE分子のもつれが少なくとも部分的に解かれ、LLDPE分子の平行な配向がもたらされるので、繊維のスプライシングに対する感受性の増大を再度生じさせる。適切な量のLDPE、特に、特定密度のLDPEをポリマー混合物に加えることにより、製造中に延伸された繊維においてもスプライシングを妨げることができる。
【0092】
図4に、本発明の一実施態様の顆粒状ポリマー混合物470の断面を示す。ポリマー混合物は、例えば、その後に溶融されるポリマー顆粒の形態で、下記成分:
−ポリマー混合物の73重量%の量での0.919g/cm
3の密度の「純粋な」第1のLLDPEポリマー450(第1のLLDPEポリマーは、優先的には、任意の添加剤を含まない);
−ポリマー混合物の10重量%の量での0.919g/cm
3の密度を有する第1のLLDPEポリマーを含む「マスターバッチ」452(マスターバッチは、添加剤を含むことができる);
−ポリマー混合物の7重量%の量での0.920g/cm
3の密度のLDPEポリマー454;
−ポリマー混合物の10重量%の量での0.916g/cm
3の密度の第2の低密度LLDPEポリマー456
を含む。
【0093】
実施態様に応じて、充填材料、マスターバッチ、LDPE並びに第1及び第2のLLDPEポリマーの量を変動させることができる。優先的には、添加剤を含まない第1のLLDPEポリマー450の量は、この場合には、ポリマー混合物の全ての成分が合計で100%となるように適合される。
【0094】
示された例では、画分450及びマスターバッチ452における第1のLLDPEポリマー、及びマスター混合物に含有される添加剤は、ポリマー混合物470の83重量%を構成することができる。(図示されていない)他の実施態様では、ポリマー混合物470は、最大39% の充填材料を含むことができる。ポリマー混合物が1% のLDPEポリマー及び99% のLLDPEポリマーを含む(充填材又は添加剤を含まない)場合には、1:99のLDPE/LLDPE重量比が使用される。ポリマー混合物が15% のLDPEポリマー及び60% のLLDPEポリマーを含む(大量の充填材及び添加剤を含むことができる)場合には、15:60のLDPE/LLDPE重量比が使用される。優先的には、LDPE/LLDPE重量比は、5:95〜8:60、すなわち、5.3%〜13.3%である。
【0095】
例えば、
図6に示された一部の実施態様では、ポリマー成分450〜456は組み合わさって第1の液相404を形成する。第1の液相は更に、追加のポリマー、例えば、PAを含むことができ、追加のポリマーは、第2の相402を形成することができ、該第2の相は、第1の相内にビーズ408を形成する。この場合には、第1のLLDPEの量は、他のポリマーの量に応じて減らされる。
【0096】
図5に、人工芝繊維を製造する方法の例を図示するフローチャートを示す。まず、工程502において、ポリマー混合物を作製する。ポリマー混合物は、少なくとも、0.918g/cm
3〜0.920g/cm
3の密度を有するLLDPEポリマーと、0.920g/cm
3の密度を有する第1のLLDPEポリマーとを、ポリマー混合物の約5〜8重量%の量で含む。LLDPEポリマーは、例えば、
図4に示されたように、純粋なLLDPE顆粒450及びマスターバッチLLDPE顆粒452の形態で加えることができる。マスターバッチLLDPEポリマー顆粒は、添加剤を含むことができる。優先的には、ポリマー顆粒450、452におけるLLDPEポリマーは、同一の種類のものである。場合により、ポリマー混合物は、約10% の「低密度」LLDPEを含むことができる。
【0097】
実施態様に応じて、ポリマー混合物は、
図6に更に詳細に示され、検討されたように、少量の更なるポリマー、例えば、PAと、任意選択的に相溶剤と、を含むことができる。
【0098】
ポリマー混合物は、最初に、ポリマー顆粒混合物の形態を有することができる。顆粒を加熱することにより、液状ポリマー混合物が作製される。これにより、ポリマー混合物を、任意選択的に、溶融ポリマー及び添加剤が均質に混合されるのを確保するのに適した撹拌速度で撹拌することができる。
【0099】
次の工程504において、ポリマー混合物を押し出して、モノフィラメントに成形する。次に、工程506において、モノフィラメントをクエンチ又は急速に冷却する。次に、工程508において、モノフィラメントを再加熱する。工程510において、再加熱したモノフィラメントを延伸して、モノフィラメントで人工芝繊維を形成する。前記工程を、
図3により詳細に示す。
【0100】
更なる工程をモノフィラメントに施して、人工芝繊維を形成してもよい。例えば、モノフィラメントを紡ぎ又は織ることによって、所望の特性を有する撚り糸にすることができる。ついで、人工芝繊維を、人工芝裏打ちに組み込む。例えば、これは、人工芝繊維を人工芝裏打ちに房付し又は織り込むことにより行うことができる。最後に、人工芝繊維を、人工芝裏打ちに結合させる。例えば、人工芝繊維を、被覆又は他の材料により、適切な位置に接着又は保持することができる。一実施態様によれば、少なくとも一部の人工芝繊維は、担体、例えば、布地片を通して、前記担体の裏側まで及ぶ。流動ラテックス又はポリウレタン(PU)膜を、前記裏打ちの裏側(すなわち、より長い部分の繊維が出ている側とは反対側)に塗工する。これにより、担体の裏側における繊維の少なくとも一部を前記ラテックス又はPU膜により濡らし、前記ラテックス又はPU膜で囲む。膜が固まる際に、繊維がラテックス又はPU裏打ちに、機械力、摩擦力により固定される。この作用は、少なくとも部分的には、繊維表面(及び内部)においてポリマー結晶が生成され表面粗さを増大させる延伸プロセスにより生じる。本発明の実施態様により生成されたモノフィラメントは、例えば、ポリマーフィルムを薄いストライプに縦裂きすることにより生成されるポリマー繊維より高い表面粗さを有する。ポリマーフィルムの切断により、刃物の刃と接触した領域において、結晶構造が破壊されるためである。
【0101】
図6に、多相ポリマー混合物400の断面の模式図を示す。ポリマー混合物400は、少なくとも第1の相404と第2の相402とを含む。第1の相は、例えば、
図4に示された本発明の実施態様に従って、第1の染料及びLDPE−LLDPEポリマー混合物を含む。第2の相402は、第1の相におけるポリマー及び第2の染料とは非混和性の更なるポリマーを含む。例えば、更なるポリマーは、改善された弾性の繊維を提供することができるPAであることができる。示された実施態様では、ポリマー混合物は、大部分又は専ら、相溶剤を含む第3の相406を含む。第3の相は、第1もしくは第2もしくは第3の染料を含むことができ、又は、染料を1つも含まないことができる。第1の相と第2の相とは非混和性である。更なるポリマー及び第2の相402は、(主にLLDPE−LDPE混合物からなる)第1の相ほど多くはない。第2の相402は、相溶剤相406により囲まれ、第1の相404内に分散されたものとして示されている。相溶剤相406により囲まれた第2の相402は、数多くのポリマービーズ408を形成している。ポリマービーズ408は、球形又は楕円形であることができ、又は、それらは、ポリマー混合物がどの程度十分に混合されるか、及び温度に応じて、不規則な形状であることもできる。ポリマー混合物400は、三相系の例である。相溶剤相406は、第1の相402と第2の相406とを分離する。更なるポリマーは、第1の相におけるポリマーより剛性であり、より弾性であることができる。これにより、繊維の剛性及び弾性が向上する。
【0102】
押出し中の流動条件に起因して、ビーズから、モノフィラメントの内部に主に位置する糸様領域が形成される。糸様領域が主に繊維表面に存在していたとしたら、(周囲の第1のポリマー相に対して)人工繊維部分を横切ってヒトの皮膚を滑らせた場合には、糸様領域の向上した剛性により、皮膚火傷のリスクを増大させるであろうことから、この特定の位置は有利である。
【0103】
(第1の相におけるポリマーより優先的に剛性である)更なるポリマーの糸様領域を含む繊維を製造する文脈において、第1の相におけるスプライシングに対する抵抗性を向上させることは、特に有利である。抵抗性の向上により、(主に繊維の内側に位置する)剛性の糸様領域が、剥離又は他の形態でのスプライシングにより、表面に露出するのを抑えるからである。
【0104】
図7に、モノフィラメント606の小さなセグメントの断面を示す。再度、モノフィラメントは、本発明の実施態様によるLLDPE−LDPEポリマー混合物を含む第1の相404を含むように示される。本件図の場合、第1の相は、内部に混合されたポリマービーズ408の形態で、任意選択的に第2の相を含む、ポリマービーズ408は、図示されていない相溶剤により、第2のポリマーから分離される。糸様構造を形成するために、モノフィラメント606の部分が加熱され、ついで、モノフィラメント606の長さに沿って延伸される。これは、延伸方向を示す矢印700により図示されている。第1及び第2のポリマー相は、異なる色を有する染料を含むことができる。
【0105】
図8に、モノフィラメント606を延伸する効果を示す。
図8において、延伸モノフィラメント
606’の断面の例を示す。
図7におけるポリマービーズ408は、糸様構造800に延伸されている。ポリマービーズ408の変形量は、モノフィラメント606’がどの程度延伸されるたかにより決まるであろう。
【0106】
例示は、合成芝とも呼ばれる人工芝の製造に関することができる。特に、本発明は、機械的特性(可撓性、表面摩擦)及び光学特性(色あい)の両方に関して、芝生を模倣する繊維の製造に関する。示された実施態様による繊維は、第1及び第2の相から構成され、これらの相は混和性ではなく、剛性、密度、極性のような材料特性が異なり、2つの異なる染料に起因して光学特性が異なる。一部の実施態様では、繊維は、更に、相溶剤及び更なる成分を含むことができる。他の実施態様では、ポリマー混合物は、1つ以上のLLDPEポリマー、1つ以上のLDPEポリマー、及び任意選択的に1つ以上の添加剤を含む、1つの液相のみからなる。
【0107】
第1の工程において、特定の立体規則性及び分岐パターンに対応する特定の密度範囲にある、少なくとも1つのLLDPE及び少なくとも1つのLDPEを含むポリマー混合物を生成する。
【0108】
ポリマー混合物が第2の相を形成する更なるポリマーを更に含む実施態様では、第2の相の量は、ポリマー混合物の5質量%〜10質量%であることができ、大部分又は完全に相溶剤から構成される任意選択的な第3の相の量は、ポリマー混合物の5質量%〜10質量%である。これに応じて第1の相におけるLLDPEポリマーの量を適合させる。押出し技術を使用することにより、相溶剤により囲まれる第2の相の液滴又はビーズの混合物がもたらされ、ビーズは、第2の相とは異なる色を有する第1のポリマー相のポリマーマトリックス中に分散される。
【0109】
押出し中に使用される溶融温度は、使用されるポリマー及び相溶剤の種類により決まる。ただし、溶融温度は、典型的には、230℃〜280℃である。
【0110】
フィラメント又はフィブリル化テープと呼ぶこともできるモノフィラメントは、混合物を繊維製造押出しラインに供給することにより製造される。溶融混合物を、押出し工具、すなわち、紡糸口金プレート又はワイドスロットノズルを通過させて溶融流動物をフィラメント又はテープ状に形成し、紡糸水浴中でクエンチ又は冷却し、異なる回転速度を有する回転加熱ゴデット及び/又は加熱オーブンを通過させることにより乾燥し、延伸する。
【0111】
ついで、モノフィラメント又は
テープは、更なる加熱オーブン及び/又は一式の加熱ゴデットを通過させる第2の工程の作動中において、アニーリングされる。
【0112】
この手順により、(場合により、相溶剤相により囲まれている)ビーズ又は液滴が、長手方向に延伸され、糸様領域とも呼ばれる細い繊維様の線状構造を形成する。線状構造の大部分は、LLDPE−LDPEポリマーマトリックス404に完全に埋め込まれるが、線状部分の相当な部分が、モノフィラメントの表面にも存在する。
【0113】
得られた繊維は、複数の利点、すなわち、耐久性及び長期弾性と組み合わせられた柔軟性、及びスプライシングに対する抵抗性と組み合わせられた引張強度を有することができる。大量のLLDPEポリマーは、高い引張強度を確保する一方で、特定のLDPE/LLDPE比で加えられたLDPEポリマーは、鎖の絡み合いを促進し、これにより、繊維をスプライシングから保護するであろう。複数のポリマー相が異なる剛性及び曲げ特性を有する場合、繊維は、より良好な弾性を示すことができる(これは、一旦繊維が踏み倒されても、元に戻るであろうことを意味する)。剛性な更なるポリマー402の場合には、ポリマーマトリックス中に構成された小さな線状繊維構造は、繊維のポリマーを強化させる。
【0114】
第1及び第2の相におけるポリマーにより形成された複合材による
層間剥離は、更なるポリマーの糸様領域が、LLDPE−LDPEポリマー相404により与えられたマトリックスに埋め込まれるという事実により妨げられる。
【0115】
図9に、ポリマー混合物のモノフィラメントへの押出しを図示する。一定量のポリマー混合物600が示されている。ポリマー混合物600内には、多数のポリマービーズ408が存在する。ポリマービーズ408は、第1の相404におけるLLDPE−LDPEポリマー混合物と混和性ではなく、第1の相から相溶剤により分離される、1つ以上のポリマーで作製することができる。スクリュー、ピストンその他の装置は、プレート602における孔604から、ポリマー混合物600を押し出すのに使用される。これにより、ポリマー混合物600が押し出されて、モノフィラメント606に成形される。モノフィラメント606は、ポリマービーズ408も含有するように示されている。第1の相404におけるポリマー及びポリマービーズ408は共に押し出される。一部の例では、第1の相は、更なるポリマー、例えば、PAを含むポリマービーズ408より粘性が低いであろう。そして、ポリマービーズ408は、モノフィラメント606の中心に濃縮される傾向があるであろう。これにより、モノフィラメント606のコア領域における糸様領域の濃縮をもたらすことができるため、最終的な人工芝繊維に望ましい特性をもたらすことができる。ただし、第1及び第2の相の組成、及び特に、それに含有されるポリマーは、第1の相が第2の相より高い粘性を有し、ビーズ及び糸様領域がモノフィラメントにおけるコア領域に濃縮されるように、(例えば、ポリマー鎖長、側鎖の数及び種類等に関して)選択される。2つの異なる相が異なる色の染料を含む実施態様では、更なるポリマーは、第1の相におけるポリマーの粘度特性と組み合わせての粘度特性により、モノフィラメント表面上に依然として十分な量のビーズ及び糸様領域が存在し、モノフィラメント表面上にマーブル状の色あいをもたらすように選択される。
【0116】
図10に、人工芝1000の例の断面の例を示す。人工芝1000は、人工芝裏打ち1002を含む。人工芝繊維1004は、人工芝裏打ち1002内に房付けされている。人工芝裏打ち1002の底部には、被覆1006が示される。被覆は、人工芝繊維1004を人工芝裏打ち1002に結合させ又は固定するのに役立てることができる。被覆1006は任意選択的であることができる。例えば、人工芝繊維1004を、代替的に、人工芝裏打ち1002に織り込むことができる。種々の種類の糊、被覆又は接着剤を、被覆1006に使用することができる。人工芝繊維1004は、人工芝裏打ち1002上を距離1008伸びるように示されている。距離1008は、本質的に、人工芝繊維1004のパイル高さである。人工芝繊維1004内の糸様領域の長さは、距離1008の半分以下である。被覆は、例えば、PU又はラテックス膜であることができ、当該膜は芝裏打ちの底面上に液膜として塗工され、凝固させることにより、ポリマー繊維を裏打ちに機械的に固定する。
【0117】
参照符号の列記
102 LDPE分子
104 LLDPE分子
302〜306 押出し中に異なるせん断力を有する領域
308 結晶ポリマー部分
310 押出しノズルの開口
400 ポリマー混合物
402 第2の相
404 第1の相
406 相溶剤を含む第3の相
408 ポリマービーズ
450 第1のLLDPEポリマー
452 「マスターバッチ」LLDPEポリマー(添加剤を含む)
454 LDPEポリマー
456 第2の(「低密度」)LLDPEポリマー
470 ポリマー混合物
502〜510 工程
600 ポリマー混合物
602 プレート
604 孔
606 モノフィラメント
606’ 延伸モノフィラメント
1000 人工芝
1002 人工芝カーペット
1004 人工芝繊維(パイル)
1006 被覆
1008 パイル高さ