特許第6596609号(P6596609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6596609建築ガスケット、建築ガスケットユニットおよび建築ガスケットを設ける方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6596609
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】建築ガスケット、建築ガスケットユニットおよび建築ガスケットを設ける方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/684 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   E04B1/684 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-116476(P2019-116476)
(22)【出願日】2019年6月24日
【審査請求日】2019年6月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594034005
【氏名又は名称】ホッティーポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】坂野 弘一
(72)【発明者】
【氏名】巴 史郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達也
(72)【発明者】
【氏名】水谷 亮
(72)【発明者】
【氏名】和田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】赤木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】青木 一夫
(72)【発明者】
【氏名】池澤 裕樹
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−060756(JP,A)
【文献】 実開昭58−005507(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/684− 1/686
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部が開放された筒状の本体部と、
前記本体部の内周面に設けられたファスナ部と、
前記本体部の内周面において前記ファスナ部と対面するように設けられたチャック部と、を備え、
前記ファスナ部は、前記チャック部に向かって延びるネック部の端部に設けられると共に前記チャック部に引っ掛けられるフック部を有し、
前記チャック部は、前記フック部を着脱可能に保持するフック収容部を有し、
前記フック部と前記フック収容部との間には、前記フック収容部への前記フック部の引っ掛かりを解除する解除具を挿通させる解除孔が設けられている、建築ガスケット。
【請求項2】
建築ガスケットであり、前記建築ガスケットは、端部が開放された筒状の本体部と、前記本体部の内周面に設けられたファスナ部と、前記本体部の内周面において前記ファスナ部と対面するように設けられたチャック部と、を有し、前記ファスナ部は、前記チャック部に向かって延びるネック部の端部に設けられると共に前記チャック部に引っ掛けられるフック部を含み、前記チャック部は、前記フック部を着脱可能に保持するフック収容部を含む、前記建築ガスケットと、
前記フック収容部への前記フック部の引っ掛かりを解除するための解除具と、を備え、
前記フック部と前記フック収容部との間には、前記解除具を挿通させる解除孔が設けられ、
前記解除具は、前記解除孔より小さいワイヤ部と、前記ワイヤ部の端部に設けられると共に前記解除孔より大きいアンロック部と、を有する、建築ガスケットユニット。
【請求項3】
第1建築部材と第2建築部材との間に形成された目地に建築ガスケットを設ける方法であって、
前記建築ガスケットの端部が開放された筒状の本体部に設けられたファスナ部が前記ファスナ部と対面する位置に設けられたチャック部に引っ掛かると共に、前記ファスナ部と前記チャック部との間に形成された解除孔に前記チャック部への前記ファスナ部の引っ掛かりを解除するための解除具が配置された前記建築ガスケットが、前記第1建築部材および前記第2建築部材の間に配置された状態を形成する工程と、
前記解除具を操作することにより、前記建築ガスケットを、前記チャック部への前記ファスナ部の引っ掛かりが解除された形態へ切り替える工程と、を有する、建築ガスケットを設ける方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築ガスケット、建築ガスケットユニットおよび建築ガスケットを設ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅のような建築物の施工に要する時間および労力を低減する技術が検討されている。例えば、建築物を複数のモジュールの集合体として設計する。当該モジュールは、工場で製造される。そして、モジュールは、建築物の施工現場に搬入され、互いに連結される。このような工法は、PPVC工法(Pre-fabricated Pre-finished Volumetric Modular Construction:PPVC)と呼ばれる。PPVC工法は、海外において導入が始まっている。
【0003】
建築部材であるモジュールと当該モジュールに隣接する別のモジュールとの間には、目地が形成される。この目地には、止水性の確保といった観点から、建築ガスケットが配置される。目地に配置される建築ガスケットとして、例えば、特許文献1に記載の外壁パネル用ガスケットが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001―262721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建築ガスケットは、建築物を構成する建築部材間における止水性および気密性などを確保する。止水性を確保するために、建築ガスケットは、建築部材に対して密着する必要がある。そこで、一方のモジュールと他方のモジュールとの間に建築ガスケットを配置した後に、一方のモジュールを他方のモジュールに近づけることによって、建築ガスケットを建築部材に対して密着させる。
【0006】
より詳細には、建築ガスケットは、先に設置する建築部材に取り付けられる。この壁面は、後から設置する建築部材に対面する。また、建築ガスケットは、鉛直方向に沿うように建築部材の壁面に設ける。建築ガスケットは、先に設置された建築部材の隣に別の建築部材を設置する際に、邪魔になる。建築ガスケットの径方向における自然長は、建築部材の間に存在する隙間よりも大きい。
【0007】
次に、後から設置する建築部材を、先に設置した建築部材の壁面から建築ガスケットの高さよりも離れた位置に降ろす。次に、後から設置した建築部材を先に設置した建築部材に向けて水平方向に移動させる。
【0008】
しかし、建築部材が重量物である場合に、建築部材を別の建築部材にごくわずかな距離(30mm程度)だけ近づけて微調整する作業は、多大な時間と労力とを要し、容易ではない。
【0009】
例えば、特許文献1に記載された、予め潰した建築ガスケットを採用する方法も考えられる。特許文献1の図6〜8に図示された建築ガスケットは、潰した状態を機械的な篏合構造によって維持し、建築ガスケットの内部にコンプレッサから空気を導入することによって、形状を復元している。
【0010】
ここで、空気の導入によって形状を復元させるためには、篏合を解除可能な程度に建築ガスケットの内圧を高める必要があり、建築ガスケットの端部を閉じ、気密構造をなす必要がある。そして、空気を導入するために、コンプレッサ等の付加的な装置を準備する手間も生じる。そこで、当該技術分野においては、元の形状に容易に復元可能な建築ガスケットおよび建築ガスケットユニットが望まれている。さらには、施工性を向上可能な建築ガスケットを設ける方法が望まれている。
【0011】
本発明は、容易に変形させると共に元の形状に容易に復元可能な建築ガスケットおよび建築ガスケットユニット、さらに施工性を向上可能な建築ガスケットを設ける方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一形態である建築ガスケットは、端部が開放された筒状の本体部と、本体部の内周面に設けられたファスナ部と、本体部の内周面においてファスナ部と対面するように設けられたチャック部と、を備える。ファスナ部は、チャック部に向かって延びるネック部の端部に設けられると共にチャック部に引っ掛けられるフック部を有する。チャック部は、フック部を着脱可能に保持するフック収容部を有する。フック部とフック収容部との間には、フック収容部へのフック部の引っ掛かりを解除する解除具を挿通させる解除孔が設けられている。
【0013】
本発明の別の形態である建築ガスケットユニットは、建築ガスケットであり、建築ガスケットは、端部が開放された筒状の本体部と、本体部の内周面に設けられたファスナ部と、本体部の内周面においてファスナ部と対面するように設けられたチャック部と、を有し、ファスナ部は、チャック部に向かって延びるネック部の端部に設けられると共にチャック部に引っ掛けられるフック部を含み、チャック部は、フック部を着脱可能に保持するフック収容部を含む、当該建築ガスケットと、フック収容部へのフック部の引っ掛かりを解除するための解除具と、を備える。フック部とフック収容部との間には、解除具を挿通させる解除孔が設けられる。解除孔は、その一部が開放された形状をなしてもよい。解除孔は、フック部の先端に設けられるが、フック収容部の端面に設けてもよい。解除具は、解除孔より小さいワイヤ部と、ワイヤ部の端部に設けられると共に解除孔より大きいアンロック部と、を有する。
【0014】
本発明の更に別の形態は、第1建築部材と第2建築部材との間に形成された目地に建築ガスケットを設ける方法であって、建築ガスケットの端部が開放された筒状の本体部に設けられたファスナ部がファスナ部と対面する位置に設けられたチャック部に引っ掛かると共に、ファスナ部とチャック部との間に形成された解除孔にチャック部へのファスナ部の引っ掛かりを解除するための解除具が配置された建築ガスケットが、第1建築部材および第2建築部材の間に配置された状態を形成する工程と、解除具を操作することにより、建築ガスケットを、チャック部へのファスナ部の引っ掛かりが解除された形態へ切り替える工程と、を有する。
【0015】
上記の建築ガスケットおよび建築ガスケットユニットでは、ファスナ部のフック部をチャック部のフック収容部に引っ掛けることが可能である。その結果、筒状である本体部がその径方向に圧縮された形態を維持することができる。さらに、建築ガスケットは、ファスナ部のチャック部への引っ掛かりを解除するための解除具を配置可能な解除孔を有する。その結果、解除孔に解除具を配置することが可能となるので、ファスナ部のチャック部への引っ掛かりを解除できる。従って、建築ガスケットおよび建築ガスケットユニットは、容易に変形させると共に元の形状に容易に復元することができる。
【0016】
さらに、建築ガスケットを設ける方法では、圧縮された状態の建築ガスケットを第1建築部材と第2建築部材との目地に設置した後に、チャック部へのファスナ部の引っ掛かりを解除する。その結果、建築ガスケットは、圧縮されていた形状が復元するので、第1建築部材および第2建築部材のそれぞれに密着する。つまり、建築ガスケットを第1建築部材および第2建築部材のそれぞれに密着させるために、第1建築部材および第2建築部材を互いに近づけるように移動させる必要がない。従って、施工性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の建築ガスケットおよび建築ガスケットユニットによれば、容易に変形させると共に元の形状に容易に復元することができ、建築ガスケットを設ける方法によれば、施工性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、建築ガスケットが用いられる建築物を施工している様子を示す斜視図である。
図2図2は、建築ガスケットの端面を示す図である。
図3図3は、半分に切断した建築ガスケットの圧縮状態を解除している様子を示す斜視図である。
図4図4の(a)部および図4の(b)部は、建築ガスケットを設ける方法の主要な工程を示す図である。
図5図5の(a)部および図5の(b)部は、建築ガスケットを設ける方法において、図4に続く主要な工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、建築ガスケットが用いられる建築物100を施工している様子を示す。以下の説明では、建築ガスケットは、単に「ガスケット1A」と呼ぶ。この建築物100は、複数のモジュール101により構成される。モジュール101は、工場において製造されたのちに、現場に搬入される。そして、モジュール101は、クレーン110などを用いて積み重ねられる。ガスケット1Aは、モジュール101の間の目地105に配置される。ガスケット1Aは、長手方向が鉛直方向に沿うように配置される。クレーン110は、図1において図示された形態に限定されない。つまり、モジュール101を配置するための装置および設備は、モジュールの101の構成および施工現場の状況に応じて、適宜選択してよい。
【0021】
図2は、ガスケット1Aの端面を拡大して示す。ガスケット1Aは、形状を復元する性質を有する弾性体により構成されている。このような弾性体として、例えば、ゴム及び樹脂材料等が挙げられる。ガスケット1Aは、一方の端部および他方の端部が開放された筒である。つまり、ガスケット1Aの端部は、閉鎖されていない。ここで言う閉鎖とは、ガスケット1Aの内部が気密に保たれた状態を意味する。
【0022】
ガスケット1Aは、本体部10と、ファスナ部20と、チャック部30と、を有する。
【0023】
本体部10の形状は、略円筒形である。従って、本体部10は、所定の厚みを有するほぼ円形の閉鎖された断面形状を有する。本体部10は、外周面11と、内周面12と、を有する。ガスケット1Aに圧縮力Fが作用したとき、本体部10は、圧縮力Fに抵抗する復元力を発揮する。ここで言う圧縮力Fとは、本体部10の径方向に沿う力である。圧縮力Fは、ファスナ部20からチャック部30までの距離を縮めるように作用する。本体部10の外周面11には、軸方向に伸びる一対の溝11aが設けられている。この溝11aは、ガスケット1Aに圧縮力Fが作用したときに、本体部10が強く屈曲する位置に設けられている。
【0024】
本体部10の外周面11には、一対の当接面13、14が設けられている。当接面13、14は、それぞれ、曲面である外周面11よりも径方向に突出している。当接面13は、モジュール101の壁面101aに押し当てられる。当接面14は、モジュール102の壁面102aに押し当てられる。当接面13、14は、それぞれ平面である。当接面13、14は、互いに向き合うように設けられている。また、当接面13、14は、互いに平行である。このような当接面13、14によれば、当接面13を壁面101aに密着させることができる。同様に、当接面14を壁面102aに密着させることができる。
【0025】
一方の当接面13から軸線Aを通って他方の当接面14に至る基準線LSを規定する。この仮想線に直交する方向の長さを当接面13、14の幅であると規定とする。一方の当接面13の幅W13は、他方の当接面14の幅W14と異なってもよいし、同じであってもよい。例えば、一方の当接面13の幅W13は、他方の当接面14の幅W14より長くてもよい。本実施形態では、一方の当接面13から他方の当接面14までの距離は、ガスケット1Aの高さH1である。
【0026】
一方の当接面13は、外周面11から突出したチャックネック31の先端に設けられている。他方の当接面14は、外周面11より突出する。
【0027】
本体部10の内周面12には、ファスナ部20とチャック部30とが設けられている。ファスナ部20は、チャック部30に向き合っている。これらの配置によれば、圧縮力Fが作用したときに、ファスナ部20をチャック部30に近づけることができる。ファスナ部20は、チャック部30に対して引っ掛かる。つまり、ファスナ部20及びとチャック部30は、協働して本体部10が圧縮方向に潰された形状を維持する。従って、ファスナ部20とチャック部30との結合力は、本体部10の復元力よりも大きい。
【0028】
ファスナ部20の平面形状は、略Y字状である。ファスナ部20は、ネック部21とフック部22とを有する。本体部10の内周面12は、他方の当接面14に対して平行である平面部12aを含む。ネック部21は、平面部12aから本体部10の軸線Aに向かって突出する。換言すると、ネック部21は、平面部12aからチャック部30に向かって突出する。ネック部21の長さは、例えば、本体部10の厚みと概ね同等であってもよい。ネック部21の先端には、フック部22が設けられている。
【0029】
フック部22は、チャック部30に引っ掛けられる。フック部22の形状は、平面視して略台形状である。フック部22の幅は、チャック部30に近づく方向に狭くなっている。換言すると、フック部22の幅は、チャック部30から遠ざかる方向に広がっている。フック部22の底辺部の幅W22は、ネック部21の幅W21よりも大きい。つまり、フック部22の底辺部は、ネック部21の側面から幅方向に突出している。この突出した部分は、フック爪23である。フック爪23は、フック受け33に引っ掛かる。フック部22の先端には、解除孔24が設けられている。解除孔24は、開口部を含む。つまり、解除孔24は、チャック部30に対して対面する位置に設けられている。そして、解除孔24の内周面24aは、フック収容部32の端面32aに対して直接に対面する。
【0030】
チャック部30は、一対のチャックネック31と、フック収容部32と、フック受け33と、を有する。チャックネック31は、端面32aから突出する。チャックネック31は、基準線LSを挟んで線対象に配置されている。つまり、チャックネック31の間には、フック収容部32が形成される。さらに、チャックネック31の先端には、当接面13が設けられている。さらに、フック収容部32は、フック受け33にも囲まれている。フック受け33は、一対のチャックネック31から基準線LSに向けて延びる。しかし、フック受け33同士は、接触しない。つまり、フック受け33の先端の間には、隙間W33が設けられる。この隙間W33は、フック収容部32の幅W32よりも小さい。フック受け33の隙間W33は、ネック部21の幅W21よりもわずかに大きい。フック収容部32は、フック部22を収容する。
【0031】
このような構成を有するガスケット1Aは、互いに異なる第1形態(ガスケット1A参照)と第2形態(ガスケット1B参照)とを取り得る。第1形態は、ファスナ部20がチャック部30に引っ掛けられていない形態である。一方、第2形態ではガスケット1Aは、ファスナ部20がチャック部30に引っ掛かる程度に変形する。より具体的には、ファスナ部20がチャック部30に引っ掛けられている。ここで、本実施形態でいう「変形」とは、第2形態の状態を構成する程度の大きな変形を意味する。例えば、ガスケット1Aが目地105に配置されて、その機能を発揮しているとき、ガスケット1Aは、わずかにつぶれている。しかし、ファスナ部20はチャック部30に引っ掛かっていないので、本実施形態でいう「変形」には該当しない。
【0032】
第2形態であるガスケット1Bは、フック部22がフック収容部32に配置されている。フック部22の幅W22は、フック受け33の隙間W33よりも大きい。従って、フック爪23がフック受け33に引っ掛かっている。フック爪23およびフック受け33は、本体部10が発生する復元力によっても引っ掛かりが解除されるような変形を生じない。要するに、ガスケット1Bおよびガスケットユニット50は、その変形状態を機械的な篏合構造によって維持する。その結果、ガスケット1Bの変形状態を容易に維持することができる。従って、作業の安定性が向上する。また、作業の経済性を高めることができる。そして、フック部22の先端とフック収容部32の端面32aとの間には、解除孔24が配置される。この解除孔24には、次に説明する解除具40が配置される。
【0033】
図3は、ガスケット1Aの圧縮状態を解除している様子を、ガスケット1Aを半分に切断して示す斜視図である。図3に示すように、解除具40は、ファスナ部20とチャック部30との引っ掛かりを解除する。解除具40およびガスケット1Bは、ガスケットユニット50(建築ガスケットユニット)を構成する。解除具40は、フック収容部32に端面32aと解除孔24の内周面24aとを互いに離間させる力を発生させ、フック爪23の引っ掛かりを解除し得る程度の変形をフック受け33に生じさせる。これにより、コンプレッサから空気をガスケット1Bの内部に送り込むといった作業を要さずに、ガスケット1Bの変形状態が解除される。つまり、ガスケット1A、1Bおよびガスケットユニット50は、容易に変形すると共に元の形状に容易に復元することができる。
【0034】
解除具40は、アンロック部41と、ワイヤ部42と、を有する。アンロック部41の形状は、例えば、円錐である。なお、図3に示すアンロック部41は、理解を容易にするために寸法を誇張して示している。アンロック部41の基端41aの直径は、解除孔24の直径と同じであるかわずかに小さい。一方、アンロック部41の末端41bの直径は、解除孔24の直径よりも大きい。つまり、アンロック部41の末端41bの直径は、フック爪23をフック受け33の外側に押し出すことが可能な程度であればよい。また、解除具40は、解除動作においてワイヤ部42が破断せず、ワイヤ部2とアンロック部41との接続箇所が切断しない程度の強度を有する。アンロック部41の基端41aには、ワイヤ部42が連結されている。ワイヤ部42を引っ張ることによって、アンロック部41が軸線Aと平行な方向に移動する。
【0035】
以下、ガスケット1Aを目地105に設ける方法を説明する。この方法は、主要な工程として、4つの工程S1、S2、S3、S4を有する。まず、ガスケット1Aを準備する(工程S1)。次に、モジュール101、102の間にガスケットユニット50が配置された状態を形成する(工程S2)。次に、解除具40を操作することにより、第2形態のガスケット1Bを、第1形態のガスケット1Aへ切り替える(工程S3)。そして、グラウト300を充填する(工程S4)。以下、各工程S1、S2、S3、S4のそれぞれについて詳細に説明する。ガスケット1Aを目地105に設ける方法は、工程S1、S2、S3によって構成されるとしてもよい。
【0036】
図4の(a)部に示すように、ガスケットユニット50を準備する(工程S1)。まず、ガスケット1Aを準備する。次に、ガスケット1Aに解除具40を配置する。具体的には、ガスケット1Aの解除孔24に解除具40のワイヤ部42を配置する。次に、当接面14を当接面13に向けて押し付ける。そうすると、ファスナ部20がチャック部30に近づき、フック部22がフック受け33を押しのけて、最終的にフック部22がフック収容部32に収まる。つまり、第1形態であるガスケット1Aが第2形態であるガスケット1Bに切り替わる。以上の工程によって、ガスケットユニット50が準備される。なお、ワイヤ部42が解除中に破断した場合には、ガスケット1B内部の隙間のいずれかに細い棒状の部材を差し込むことにより、強制的にガスケット1Bからガスケット1Aへ復元してもよい。また、解除具40を配置するタイミングは、上記の順に限定されない。
【0037】
モジュール101、102の間にガスケットユニット50が配置された状態を形成する(工程S2)。工程S2では、工程S2が終了した時点で図4の(b)部に示すような状態が形成されていればよい。具体的には、ガスケットユニット50を一方のモジュール101(第1建築部材)の壁面101aに接着する。ガスケットユニット50の接着は、モジュール101を組み立てた工場において実施してもよいし、ガスケットユニット50の接着は、施工現場において所定の位置に設置される前のモジュール101に対して実施してもよい。また、ガスケットユニット50の接着は、施工現場において所定の位置に設置されたモジュール101に対して実施してもよい。このとき、他方のモジュール102(第2建築部材)は配置されていない。次に、他方のモジュール102を配置する。ここで、他方のモジュール102を配置するとき、モジュール101、102の隙間G1は、予め定められる設計寸法としてよい。この時点では、ガスケット1Bは変形しているのでガスケット1Bは、高さH2である。つまり、ガスケット1Bの高さH2は、隙間G1よりも小さい。従って、他方のモジュール102は、ガスケット1Bの影響を受けず、所定の位置に直接に配置が可能である。また、隙間G1は、第1形態のガスケット1Aの高さH1よりもわずかに小さい。
【0038】
なお、図4の(b)部に示す状態を形成する手順は、上記の手順に限定されない。例えば、潰されていないガスケット1Aをモジュール101の壁面に配置してから、解除具40を配置してからガスケット1Aを潰すことにより、ガスケットユニット50を形成してもよい。
【0039】
解除具40を操作することにより、第2形態のガスケット1Bを、第1形態のガスケット1Aへ切り替える(工程S3、図5の(a)部参照)。図3に示すように、解除具40のワイヤ部42を引っ張る。そうすると、アンロック部41は、基端41aから解除孔24に差し込まれる。アンロック部41が移動すると、アンロック部41の末端41bが解除孔24の内周面24aとフック収容部32の端面32aの間に圧入される。その結果、内周面24aおよび端面32aが互いに離間し、フック爪23がフック受け33を変形させるので、フック爪23とフック受け33との引っ掛かりが解除される。
【0040】
なお、引っ掛かりの解除は、上記の解除具40の操作のみに限定されない。引っ掛かりを解除可能ないくつかの手法を適用してよい。例えば、解除孔24や、本体部10の内側に棒状部材を差し込む手法を適用してもよい。
【0041】
ファスナ部20とチャック部30との引っ掛かりがすべて解除されると、他方の当接面14は、他方のモジュール102の壁面102aに密着する。つまり、ガスケット1Aは、その機能を発揮する状態となる。従って、先に設置されたモジュール101に対して、後から設置されるモジュール102を水平方向に移動させる作業が不要になる。その結果、建築物100を施工に要する時間を短縮でき、施工性を向上させることができる。
【0042】
モジュール101の壁面101aとモジュール102の壁面102aと一対のガスケット1Aとに囲まれた領域に、モジュール101間の接着と遮音性向上のためのグラウト300を充填する(工程S4、図5の(b)部参照)。この充填によって、モジュール101、102を一体化する。
【0043】
以上の工程により、ガスケット1Aが目地105に配置される。
【0044】
以上、ガスケット1A、ガスケットユニット50およびガスケット1Aを設ける方法について説明した。しかし、ガスケット1A、ガスケットユニット50およびガスケット1Aを設ける方法は、上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施してよい。
【符号の説明】
【0045】
1A,1B…ガスケット(建築ガスケット)、10…本体部、11…外周面、12…内周面、13,14…当接面、20…ファスナ部、21…ネック部、22…フック部、23…フック爪、24…解除孔、30…チャック部、31…チャックネック、32…フック収容部、40…解除具、41…アンロック部、42…ワイヤ部、50…ガスケットユニット、100…建築物、101,102…モジュール(建築部材)、105…目地、110…クレーン、300…グラウト。
【要約】
【課題】建築ガスケットの形状を容易に変形させると共に元の形状に容易に復元する。
【解決手段】ガスケット1Aは、両端が開放された筒状の本体部10と、本体部10の内周面12に設けられたファスナ部20と、本体部10の内周面12においてファスナ部20と対面するように設けられたチャック部30と、を備える。ファスナ部20は、チャック部30に向かって延びるネック部21の端部に設けられると共にチャック部30に引っ掛けられるフック部22を有する。チャック部30は、フック部22を着脱可能に保持するフック収容部32を有する。フック部22とフック収容部32との間には、フック収容部32へのフック部22の引っ掛かりを解除する解除具40を挿通させる解除孔24が設けられている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5