(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596706
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/47 20060101AFI20191021BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20191021BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20191021BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
A61F13/47 300
A61F13/53 200
A61F13/534 110
A61F13/15 100
A61F13/15 220
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-212173(P2015-212173)
(22)【出願日】2015年10月28日
(65)【公開番号】特開2017-80104(P2017-80104A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】椎野 雄一郎
【審査官】
▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−153735(JP,A)
【文献】
特開2013−176412(JP,A)
【文献】
特開2006−247088(JP,A)
【文献】
特開2010−178932(JP,A)
【文献】
特開2014−168501(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0077104(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15−13/84
A61L 15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体と、を有し、個別包装に際して幅方向に延びる折り線によって長手方向に折り畳まれる吸収性物品であって、
前記吸収体は、吸収性繊維及び高吸水性ポリマーを主体として構成されるとともに、前記折り線が形成された領域の近傍において長手方向に分割されており、
前記吸収体が分割された部分には、親水性不織布に高吸水性ポリマーが挟持された構造を有する、吸収性シート部材が、前記吸収体のバックシート側に配置されて分割された吸収体を架橋し、かつ吸収体と重複する部位において、吸収体の幅方向に亘って固着されている吸収性物品。
【請求項2】
分割された前記吸収体のうち、互いに隣接する前記吸収体の離間距離が3mm以上15mm以下である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性物品は、長手方向に3つ折りにされて、2本の折り線を有し、前記吸収体が2箇所において分割されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収性シート部材の高吸水性ポリマーの含有量が100g/m2以上1000g/m2以下である、請求項1から3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収性シート部材の幅方向の寸法は、前記吸収体の幅方向の寸法の少なくとも50%以上であり、前記吸収性シート部材の長手方向の寸法は、隣接する前記吸収体の離間距離より大きい、請求項1から4のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時に折り癖や折りじわが低減された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、軽失禁ライナー、軽失禁パッド、及び生理用ナプキン等の吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されており、これにより、尿や血液等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収される。これらの吸収性物品は、通常、これを1枚ごとに3つ折り等に折り畳んで個別包装し、複数枚をプラスチックフィルムにて一括包装しており、消費者が吸収性物品を使用する際には、個別包装から吸収性物品を取り出し、吸収性物品の衣類接触側表面に設けられたズレ止めテープを使用して、吸収性物品を下着に固着して装着している。
【0003】
吸収性物品の吸収体は、吸収性繊維及び高吸水性ポリマーを主体として構成されるものであり、適度な厚さとクッション性が求められている。そして、吸収性物品は、一般に吸収量ごとに様々な種類のものが販売されているが、吸収性物品の吸収量が多くなるほど、吸収体の厚みは厚くなり、包装時に3つ折りにした場合、3つ折りした部分の吸収体に折り癖がついたり、3つ折りした部分の近傍のトップシートに折りじわが発生したりしてしまう。このような折り癖は、吸収性物品の下着への適切な装着を損ない、身体へのフィット性を低下させることもある他、折りじわも幅方向に発生するため、体液の幅方向への横漏れの原因にもなる。加えて、これらの折り癖、折りじわは、装着時に着用者に不快感を感じさせ、かゆみ等の肌トラブルを引き起こす可能性がある他、外観上も好ましいものとは言えない。
【0004】
折り癖や折りじわを低減することを目的とした吸収性物品に関係する発明としては、例えば、特許文献1には、トップシート、バックシート、及び吸収体を有する縦長の吸収性物品であって、吸収体が、幅方向に延びており、かつ吸収体の全幅に亘らない長さを有する折り曲げ補助手段が、吸収体の長手方向に位置をずらして複数本形成された折り曲げ領域を有しており、個別包装される際に、折り曲げ領域が存する部位において折り曲げられることを特徴とする吸収性物品が開示されている。また、特許文献2には、トップシートとバックシートとの間に吸収体が配置されるとともに、個別包装される際には、幅方向の折り線にて長手方向に折り畳まれる吸収性物品において、折り線の近傍に、吸収性物品の幅方向に亘る線状の形状保持部材を形成した吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−153735号公報
【特許文献2】特開2013−176412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の吸収性物品においては、折り曲げ補助手段の近傍で吸収性物品を折り曲げて折り畳むことにより、吸収性物品に強い折り癖がつくことを防止することができるとされているが、トップシート等に発生する折りじわの問題に対しては、何らの配慮もなされていない。また、特許文献2の吸収性物品は、これを展開した際に形状保持部材を湾曲させて吸収性物品の形状を保持することにより、折り癖や折りじわの問題に対処しようとするものであるが、このような手段を採用しても、トップシートや吸収体の折り癖の形成が抑制されるわけではなく、形成された折り癖も完全には解消されない。したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、個別包装に際して長手方向に折り畳まれる吸収性物品において、使用時に折り癖や折りじわがより低減されている吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、個別包装に際して幅方向に延びる折り線によって長手方向に折り畳まれる吸収性物品において、吸収体を、折り線が形成された領域の近傍において長手方向に分割されたものとし、吸収体が分割された部分には、親水性不織布及び高吸水性ポリマーからなる吸収性シート部材を配置することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0008】
(1) 本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体と、を有し、個別包装に際して幅方向に延びる折り線によって長手方向に折り畳まれる吸収性物品であって、前記吸収体は、吸収性繊維及び高吸水性ポリマーを主体として構成されるとともに、前記折り線が形成された領域の近傍において長手方向に分割されており、前記吸収体が分割された部分には、親水性不織布に高吸水性ポリマーが挟持された構造を有する、吸収性シート部材が、前記吸収体のバックシート側に配置されて分割された吸収体を架橋し、かつ吸収体と重複する部位において、吸収体の幅方向に亘って固着されている吸収性物品である。
【0009】
(2) 本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、分割された前記吸収体のうち、互いに隣接する前記吸収体の離間距離が3mm以上15mm以下であることを特徴とするものである。
【0010】
(3) 本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、前記吸収性物品は、長手方向に3つ折りにされて、2本の折り線を有し、前記吸収体が2箇所において分割されていることを特徴とするものである。
【0011】
(4) 本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記吸収性シート部材の高吸水性ポリマーの含有量が100g/m
2以上1000g/m
2以下であることを特徴とするものである。
【0012】
(5) 本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記吸収性シート部材の幅方向の寸法は、前記吸収体の幅方向の寸法の少なくとも50%以上であり、前記吸収性シート部材の長手方向の寸法は、隣接する前記吸収体の離間距離より大きいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吸収性物品は、幅方向に延びる折り線が形成された領域の近傍において、吸収体が長手方向に分割されている。吸収性物品を折り畳んだ際の折り癖や折りじわは、折り線近傍の吸収性物品の厚みが厚いほど、強く形成される傾向にあるので、吸収体が折り線近傍において長手方向に分割されていることにより、折り畳まれた吸収性物品に形成される折り癖や折りじわを低減することができ、使用時に展開した状態においても、折り癖や折りじわを低減することができる。また、吸収体が分割された部位には、親水性不織布及び高吸水性ポリマーからなる吸収性シート部材を配置したので、折り癖や折りじわの形成を防止しつつも、吸収体が分割された部位に滞留する体液を効率よく吸収し、体液の漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の吸収性物品の展開図を示す図面である。
【
図2】
図1におけるX
1−X
1線による断面図を示す図面である。
【
図3】
図1におけるY
1−Y
1線による断面図を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1から
図3を参照して、本発明の実施形態に係る吸収性物品1について詳細に説明する。なお、本実施形態の説明においては、全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。本明細書における以下の説明において、体液とは、尿、血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出される液体をいう。さらに、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の装着時及び着用後の少なくとも一方を示す。なお、本明細書の説明において、吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後にわたる方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。
【0016】
<吸収性物品>
図1は、本発明の吸収性物品1の展開図を示す図面であり、
図2は、
図1におけるX
1−X
1線による断面図を示す図面であり、
図3は、
図1におけるY
1−Y
1線による断面図を示す図面である。本発明の実施形態に係る吸収性物品1としては、
図1に示すような軽失禁パッドが例示されるが、本発明はこれに限定されるものではなく、軽失禁ライナー、生理用ナプキン、その他の吸収性物品であってもよい。
図1から
図3に示すように、吸収性物品1は、身体接触側表面に配置された液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向し、衣類接触側表面に配置された液不透過性のバックシート30と、トップシート10及びバックシート30の間に配置された吸収体20と、を備え、これにより、吸収体20は、トップシート10とバックシート30との間に挟まれた構造となっている。吸収性物品1は、個別包装に際して幅方向に延びる折り線40によって長手方向に折り畳まれるものであり、好ましくは、2本の折り線40を有し、長手方向に3つ折りにされる。吸収性物品1は、着用者の前側に位置する前部1aと、着用者の股間に位置する股部1bと、着用者の後側に位置する後部1cとを有する。
【0017】
[トップシート]
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させるものであり、吸収体20を挟んで、バックシート30と対向して配置されている。トップシート10は、肌と当接するシートとなることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような基材、例えば、エアスルー不織布を代表とするサーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいはこれらを積層した複合シートといった材料から形成される。トップシート10は、単層であっても、複数層積層していてもよく、ドライタッチ性を付与するために多数の透孔が形成されていてもよい。
【0018】
不織布としては、ポリエチレン等の合成繊維やレーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、サーマルボンド法の他、スパンレース法やスパンボンド法等の公知の加工法によって得られたものも用いることができる。加工性及び強度の点から、トップシート10の坪量は、18g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。トップシート10には、肌への刺激を低減させるために、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を適用してもよい。トップシート10は、着用者の股部が位置づけられる長手方向中央に括れ部を有する砂時計形状、略矩形形状等の形状を有していてもよく、吸収体20の側縁よりも若干外方に延在して設けられていてもよい。
【0019】
なお、本発明においては、吸収体20の上面への体液の拡散を促進するため、トップシート10と吸収体20との間に、液拡散性シート11を設けてもよい。斯かる液拡散性シート11としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布を挙げることができる。液拡散シートの厚さは0.1mm以上であることが好ましく、その坪量は15g/m
2以上であることが好ましい。液拡散性シート11の形状は、特に制限はないが、尿等の液体がくまなく吸収体20に拡散するよう、吸収体20の表面を完全に覆うことができる形状であることが好ましい。
【0020】
[バックシート]
バックシート30は、吸収性物品1の外部に体液が漏れないよう、液不透過性を有し、遮水性を有するシート材が用いられるが、ムレ防止のために透湿性を有していてもよい。このような特性を有するバックシート30の材料としては、例えば、ポリエチレンシートやポリエチレンラミネート不織布等の厚みの薄いプラスチックシートを挙げることができる。バックシート30は、着用者の股部が位置づけられる長手方向中央に括れ部を有する砂時計形状、略矩形形状等の形状を有していてもよく、吸収体20の側縁より若干外方に延在して設けられていてもよい。バックシート30の衣類接触側表面には、着用時に下着等に吸収性物品1を固着するための粘着剤層60が設けられていてもよい。吸収性物品1が粘着剤層60を有する場合、粘着剤層60を保護するための剥離シート65を有していてもよく、この剥離シート65は、吸収性物品1の包装シートと一体となっていてもよい。トップシート10及びバックシート30は、長手方向端部等の端部の少なくとも一部において、吸収体20を挟まずに、ホットメルト接着剤やヒートシール等により固着されるフラップを形成していてもよい。
【0021】
[吸収体]
本発明において、吸収体20は、吸収性繊維及び高吸水性ポリマーを主体として構成されるものであり、折り線40が形成された領域の近傍において長手方向に分割されている。すなわち、本発明の吸収性物品1は、折り線40の近傍には、吸収体20が存在しておらず、この折り線を谷として折り曲げることにより、吸収性物品1を展開した後においても、折り癖や折りじわが残りにくくなるようになっている。上述のとおり、本発明の吸収性物品1は、好ましくは、2本の折り線40を有し、長手方向に3つ折りにされるが、吸収体20は、この2本の折り線の両方の近傍において(2箇所において)分割されていることが好ましい。分割された吸収体20のうち、互いに隣接する2つの吸収体20の離間距離は、3mm以上15mm以下であることが好ましい。分割された吸収体20がこのような距離で離間していることにより、吸収性物品1の折り癖や折りじわを低減しつつも、吸収性物品1から体液が漏れる可能性をより低減することができ、着用感も良好に維持することができる。
【0022】
ここで、吸収体20は、基材としての吸収性繊維と、高吸水性ポリマー(SAP)と、を含有する。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキン、おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体20の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、100g/m
2以上800g/m
2以下の坪量とすることが好ましい。
【0023】
吸収体20の高吸水性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。吸収体20のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、50g/m
2以上500g/m
2以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上60質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0024】
吸収体20において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マットの形態であることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体20の形状の安定化の目的から、吸収体20をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0025】
吸収体20は、上層吸収体と下層吸収体とを積層してなるものであってもよい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の寸法は、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より大きくてもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法と同じであってもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より小さくてもよい。
【0026】
(吸収性シート部材)
吸収性シート部材21は、親水性不織布(上層親水性不織布及び下層親水性不織布)の間に高吸水性ポリマーを含む吸水層が挟持されたものであり、吸収体20が分割された部分において、吸収体20のバックシート30側に配置されて分割された吸収体20を架橋し、かつ吸収体20と重複する部位において、吸収体20の幅方向に亘って固着されている。吸収性物品1の折り線40が形成される領域の近傍となる、吸収体20が分割された領域に吸収性シート部材21を配置することにより、この部位の吸収性物品1の厚みを薄くすることができ、個別包装に当たって吸収性物品を3つ折り等にする場合においても、折り癖や折りじわを形成されにくくすることができる。また、
図3に示すように、吸収性シート部材21が吸収体20のバックシート側に配置されていることにより、個別包装に際して吸収性シート部材21を折り曲げるとしても、トップシート10側に折りじわが形成されにくく、使用時の不快感を低減することができる。吸収性シート部材21が有する吸水層は、高吸水性ポリマー及びホットメルト接着剤を含み、このホットメルト接着剤によって、上記上層親水性不織布、吸水層、及び下層親水性不織布は、相互に接着されている。
【0027】
吸収性シート部材21に使用される高吸水性ポリマーの中位粒子径は、100μm以上600μm以下が好ましく、200μm以上500μm以下がより好ましい。高吸水性ポリマーの中位粒子径を斯かる数値の範囲内のものとすることにより、流動性の悪い微粉末の使用を避けて、吸収性シート部材21の基本性能を高めつつも、吸収性シート部材21が堅くなることを防ぐとともに、ゴツゴツした感触を低減して、触感を改善することができる。
【0028】
吸収性シート部材21が含有する高吸水性ポリマーの含有量は、要求される吸収性能に応じて適宜設定することができるが、100g/m
2以上1000g/m
2以下であることが好ましく、200g/m
2以上800g/m
2以下であることがより好ましい。高吸水性ポリマーの含有量を斯かる数値の範囲内のものとすることにより、十分な吸収性能を発揮できる上に、体液吸収後のさらさら感も保持され、かつ超薄型に成形可能で、柔らかく動きやすい着用感を有する吸収性シート部材21を提供することができる。
【0029】
高吸水性ポリマーとしては、ポリアクリル酸系、デンプン系、セルロース系等の公知のものを使用することができるが、基本的には、吸収体20に使用されるものと同類のものを使用することができる。
【0030】
親水性不織布と高吸水性ポリマーとの接着のために用いることができるホットメルト接着剤としては、融点が100℃から180℃程度の、スチレン−ブタジエン−スチレン系共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン系共重合体等の合成ゴム系接着剤、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系接着剤等を使用することができる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、溶融状態のホットメルト接着剤をノズルから非接触で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法を使用することができる。
【0031】
本発明においては、上層親水性不織布、吸水層、及び下層親水性不織布をホットメルト接着剤によって一体化した吸収性シート部材21全体に熱エンボス加工を施すことが好ましい。これにより、吸収性シート部材21全体への体液の拡散の効率を高めることができ、吸収性シート部材21中での高吸水性ポリマーの固定が強化される。エンボス形状としては、直線、曲線、ドット状等、特に限定されず、またエンボスパターン形状も格子状、波状、エイコンパターン(どんぐりの連続形状)等、液体の拡散を効率よくするためのものが適宜選択される。
【0032】
吸収性シート部材21を構成する上層親水性不織布、及び下層親水性不織布は、20g/m
2以上の、親水性材料から構成された不織布や、親水化処理がなされた不織布を制限なく使用できるが、少なくとも1枚は、親水性が高く、それ自身が保水して一時的に液体を保持するスパンレース不織布であることが好ましく、バックシート側に位置する下層親水性不織布がスパンレース不織布であることが更に好ましい。スパンレース不織布はレーヨンやコットンのセルロース系、及び合成繊維系等の不織布を使用することができ、その坪量は適宜選択できるものの、20g/m
2以上のものが好ましい。スパンレース不織布以外としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の合成繊維系からなるエアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布を使用することができる。本発明においては、特に液戻りの防止性能に優れるエアスルー不織布を使用することが好ましい。
【0033】
なお、分割された吸収体20と、吸収性シート部材21とを接合させる際には、ホットメルト系接着剤等を使用して吸収性シート部材21を分割された吸収体に固定する。このようにすることにより、吸収性シート部材21から分割された吸収体へ、体液が確実に拡散するものとなる。
【0034】
吸収性シート部材21の寸法について、幅方向の寸法は吸収体20の幅方向の寸法の少なくとも50%以上が好ましい。また、長手方向の寸法は、互いに隣接する吸収体20の離間距離よりも大きいことが好ましい。具体的には、長手方向の寸法が20mm以上60mm以下であり、幅方向の寸法が40mm以上150mm以下であることが好ましい。吸収性シート部材21の寸法を上記のように設定することにより、折り線40が形成された領域の近傍における体液の漏れを確実に防止するとともに、吸収性シート部材21の分割された吸収体20への固定状態も良好に維持することができる。
【0035】
[立体ギャザー]
吸収性物品1の身体接触側表面には、立体ギャザー50が設けられていてもよい。この立体ギャザー50は、トップシート10とともに体液の閉じ込め空間を形成し、体液の横漏れを防止できるようになっている。立体ギャザー50は、立体ギャザーシート51と、立体ギャザーシート51の自由端部に沿って配された伸縮性弾性部材52と、を備えていることが好ましい。伸縮性弾性部材52としては、天然ゴム、合成ゴム、及びポリウレタン等からなる、糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができる。
【0036】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、吸収体20と吸収性シート部材21とにホットメルト接着剤を塗布して一体化し、これを、適宜、拡散性シート11及び立体ギャザー50をあらかじめ、トップシート10に配置したトップシート10とバックシート30との間に挟持し、トップシート10とバックシート30とを一部あるいは全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定することで製造することができる。そして、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折り等にして折り畳めばよい。
【0037】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0038】
1 吸収性物品
1a 前部
1b 股部
1c 後部
10 トップシート
11 液拡散性シート
20 吸収体
21 吸収性シート部材
30 バックシート
40 折り線
50 立体ギャザー
51 立体ギャザーシート
52 伸縮性弾性部材
60 粘着剤層
65 剥離シート