特許第6596722号(P6596722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ車体株式会社の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6596722-トランクリッド開閉機構 図000002
  • 特許6596722-トランクリッド開閉機構 図000003
  • 特許6596722-トランクリッド開閉機構 図000004
  • 特許6596722-トランクリッド開閉機構 図000005
  • 特許6596722-トランクリッド開閉機構 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596722
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】トランクリッド開閉機構
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/12 20060101AFI20191021BHJP
   E05D 3/14 20060101ALI20191021BHJP
   E05D 15/46 20060101ALN20191021BHJP
【FI】
   B62D25/12 B
   E05D3/14 Z
   !E05D15/46
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-142678(P2016-142678)
(22)【出願日】2016年7月20日
(65)【公開番号】特開2018-12404(P2018-12404A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2018年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】町口 芳文
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−086638(JP,A)
【文献】 特開2003−226265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/10−25/13
E05D 3/14
E05D 15/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における荷室の開口部を開閉するためのトランクリッドに固定されるヒンジベースと、
前記ヒンジベースを前記荷室の開口部に繋ぐためのものであって、互いの間に距離をおいて設けられている第1アーム及び第2アームと、を備えるトランクリッド開閉機構において、
前記第1アームの基端部は前記荷室の開口部に対し第1基端ピンを中心として回転可能に支持される一方、前記第1アームの先端部は前記ヒンジベースに対し第1先端ピンを中心として回転可能に接続されており、
前記第2アームの基端部は前記荷室の開口部に対し前記第1基端ピンと平行な第2基端ピンを中心として回転可能に支持される一方、前記第2アームの先端部は前記ヒンジベースに対し前記第1先端ピンと平行な第2先端ピンを中心として回転可能に接続されており、
前記トランクリッドが開いて前記第1アームの先端部と前記第2アームの先端部との対向するエッジ部同士が接近するとき、それらエッジ部間に位置し、肉抜き部を有する変形可能な遮蔽部材を備えていることを特徴とするトランクリッド開閉機構。
【請求項2】
前記第2アームには前記トランクリッドが全開となったときに前記ヒンジベースに当接する全開ストッパが設けられており、前記遮蔽部材は前記全開ストッパと一体的に形成されている請求項1に記載のトランクリッド開閉機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランクリッド開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
車両における荷室の開口部を開閉するためのトランクリッドは、荷室の開口部との間に設けられた開閉機構によって支持されている。こうした開閉機構としては、トランクリッドを閉じたときに開閉機構を構成する部材が荷室側に突き出ることがないよう、例えば特許文献1に示されるものが採用される。特許文献1の開閉機構は、トランクリッドに固定されるヒンジベースと、そのヒンジベースを荷室の開口部に繋ぐための第1アーム及び第2アームと、を備えている。第1アームと第2アームとは、互いの間に距離をおいて設けられている。
【0003】
第1アームの基端部は上記荷室の開口部に対し第1基端ピンを中心として回転可能に支持される一方、第1アームの先端部は上記ヒンジベースに対し第1先端ピンを中心として回転可能に接続されている。また、第2アームの基端部は上記荷室の開口部に対し上記第1基端ピンと平行な第2基端ピンを中心として回転可能に支持される一方、第2アームの先端部は上記ヒンジベースに対し上記第1先端ピンと平行な第2先端ピンを中心として回転可能に接続されている。
【0004】
そして、第1アーム及び第2アームは、トランクリッドが全閉位置にあるときには荷室の開口部に対し倒れた状態となっており、トランクリッドが開くにつれて徐々に荷室の開口部に対し立ち上がるようになる。このように第1アーム及び第2アームが荷室の開口部に対し倒れた状態から徐々に立ち上がることにより、それら第1アーム及び第2アームによって定まる開閉軌道に沿ってトランクリッドが全閉位置から全開位置に向けて変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−226265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、トランクリッドが全閉位置から全開位置に向けて変位する際、第1アームの先端部と第2アームの先端部との対向するエッジ部同士の間の空間の大きさは、トランクリッドの上記変位の前期に徐々に大きくなり、最大値に達した後の上記変位の後期には徐々に小さくなる。このため、トランクリッドが全開位置付近で開き側に変位しているときには、第1アームの先端部と第2アームの先端部との対向するエッジ部同士が接近して両者の間の空間が徐々に小さくなる。このときには、第1アームの先端部と第2アームの先端部との対向するエッジ部同士が接近中であることから、それらエッジ部間に誤って物が挟まるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、トランクリッドを開くときに第1アームの先端部と第2アームの先端部との対向するエッジ部同士の間に誤って物が挟まることを抑制できるトランクリッド開閉機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するトランクリッド開閉機構は、車両における荷室の開口部を開閉するためのトランクリッドに固定されるヒンジベースと、そのヒンジベースを上記荷室の開口部に繋ぐためのものであって、互いの間に距離をおいて設けられた第1アーム及び第2アームと、を備える。上記第1アームの基端部は上記荷室の開口部に対し第1基端ピンを中心として回転可能に支持される一方、上記第1アームの先端部は上記ヒンジベースに対し第1先端ピンを中心として回転可能に接続される。また、上記第2アームの基端部は上記荷室の開口部に対し上記第1基端ピンと平行な第2基端ピンを中心として回転可能に支持される一方、上記第2アームの先端部は上記ヒンジベースに対し上記第1先端ピンと平行な第2先端ピンを中心として回転可能に接続される。更に、上記トランクリッド開閉機構は、トランクリッドが開いて第1アームの先端部と第2アームの先端部との対向するエッジ部同士が接近するとき、それらエッジ部間に位置する遮蔽部材を備える。
【0009】
上記構成によれば、トランクリッドの開き側への変位に伴い、第1アームの先端部と第2アームの先端部との対向するエッジ部同士が接近して両者の間の空間が徐々に小さくなるとしても、上記エッジ部間に位置する上記遮蔽部材によって上記空間に物が入り込むことを抑制できる。従って、トランクリッドを開くとき、第1アームの先端部と第2アームの先端部との対向するエッジ部同士の間に、誤って物が挟まることを抑制できる。
【0010】
上記第2アームにトランクリッドが全開となったときにヒンジベースに当接する全開ストッパが設けられている場合、その全開ストッパと上記遮蔽部材とが一体的に形成されているものとすることが考えられる。
【0011】
この構成によれば、トランクリッド開閉機構に対する全開ストッパ及び遮蔽部材の組み付けを一度に行うことができる。
また、上記遮蔽部材は、肉抜き部を有するものとすることが考えられる。
【0012】
この構成によれば、遮蔽部材の剛性を肉抜き部によって低下させることができる。このため、第1アームの先端部と第2アームの先端部との対向するエッジ部同士が接近するとき、仮に両者の間の空間に物が入り込んだとしても、その物が接近するエッジ部同士の間できつく挟まれることは上記遮蔽部材の変形によって抑制される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トランクリッドを開くときに第1アームの先端部と第2アームの先端部との対向するエッジ部同士の間に誤って物が挟まることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車両におけるトランクリッドの開閉機構及びその周辺を示す略図。
図2】トランクリッドを開く際の開閉機構の動作態様を示す略図。
図3】トランクリッドを開く際の開閉機構の動作態様を示す略図。
図4】トランクリッドを開く際の開閉機構の動作態様を示す略図。
図5図3の開閉機構の第1アーム、第2アーム、及び遮蔽部材を矢印A−A方向から見た状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、トランクリッド開閉機構の一実施形態について、図1図4を参照して説明する。
図1に示すように、車両1の後部に位置する荷室2には、その荷室2の開口部2aを開閉するためのトランクリッド3が設けられている。このトランクリッド3は、荷室2の開口部2aとの間に設けられた開閉機構4によって支持されている。同開閉機構4としては、トランクリッド3を閉じたときに開閉機構4を構成する部材が荷室2側に突き出ることのない構造のものが採用されている。
【0016】
上記開閉機構4は、トランクリッド3に固定されるヒンジベース5と、そのヒンジベース5を荷室2の開口部2aに繋ぐための第1アーム6及び第2アーム7と、を備えている。ヒンジベース5は、トランクリッド3の裏面(図1の下面)に接合される板状の接合部13と、その接合部13からトランクリッド3に対し離れる方向に突出する支持板14と、を備えている。
【0017】
また、第1アーム6と第2アーム7とは車両1の前後方向(図1の左右方向)に所定の距離をおいて設けられており、第2アーム7が第1アーム6よりも車両1の前方側(図1の左側)に位置している。そして、第2アーム7は、第1アーム6から離れる方向に膨らむよう曲がっている。これにより、第2アーム7における長手方向の中央部で第1アーム6との間の距離が最大となる一方、第2アーム7における長手方向の中央部から端部に向うほど第1アーム6との間の距離が短くなっている。
【0018】
上記開閉機構4は、第1アーム6及び第2アーム7を荷室2の開口部2aに繋ぐための板状のブラケット8も備えている。第1アーム6は、支持板14の厚さ方向における一方側(図1の紙面奥側)、及び、ブラケット8の厚さ方向における一方側(図1の紙面奥側)に位置している。また、第2アーム7は、支持板14の厚さ方向における他方側(図1の紙面手前側)、及び、ブラケット8の厚さ方向における他方側(図1の紙面手前側)に位置している。
【0019】
第1アーム6の基端部6aはブラケット8に対し第1基端ピン9を中心として回転可能な状態で接続される一方、第1アーム6の先端部6bはヒンジベース5の支持板14に対し上記第1基端ピン9と平行な第1先端ピン10を中心として回転可能に接続されている。また、第2アーム7の基端部7aは上記ブラケット8に対し上記第1基端ピン9と平行な第2基端ピン11を中心として回転可能な状態で接続される一方、第2アーム7の先端部7bは上記支持板14に対し上記第1先端ピン10と平行な第2先端ピン12を中心として回転可能に接続されている。
【0020】
第1アーム6の基端部6a及び第2アーム7の基端部7aが接続された上記ブラケット8は、荷室2の開口部2aに固定されている。これにより、第1アーム6の基端部6aが荷室2の開口部2aに対し第1基端ピン9を中心として回転可能に支持されるとともに、第2アーム7の基端部7aが荷室2の開口部2aに対し第2基端ピン11を中心として回転可能に支持されている。
【0021】
第1アーム6及び第2アーム7は、トランクリッド3が図1に示すように全閉位置にあるときには荷室2の開口部2aに対し倒れた状態となっており、トランクリッド3が開くにつれて徐々に荷室2の開口部2aに対し立ち上がるようになる。このように第1アーム6及び第2アーム7が荷室2の開口部2aに対し倒れた状態から徐々に立ち上がることにより、それら第1アーム6及び第2アーム7によって定まる開閉軌道に沿ってトランクリッド3が、図1図2図3図4のように全閉位置(図1)から全開位置(図4)に変位する。
【0022】
なお、図1図4から分かるように、トランクリッド3が全閉位置から全開位置に向けて変位する際、第1アーム6の先端部6bと第2アーム7の先端部7bとの対向するエッジ部6c,7c間の空間の大きさは、次のように変化してゆく。すなわち、上記空間の大きさは、トランクリッド3の上記変位の前期(図1図2)に徐々に大きくなり、最大値(図2)に達した後の上記変位の後期(図2図3図4)には徐々に小さくなる。このため、トランクリッド3が全開位置付近で開き側に変位しているときには、第1アーム6の先端部6bと第2アーム7の先端部7bとの対向するエッジ部6c,7c同士が接近して両者の間の空間が徐々に小さくなる。
【0023】
第2アーム7には、トランクリッド3が全開となったとき(図4)、ヒンジベース5の接合部13に当接する全開ストッパ15が設けられている。この全開ストッパ15は、第2アーム7の先端部7bに装着される装着部16と、その装着部16における第1アーム6側とは反対側の部分に形成された当接部18とを備えている。全開ストッパ15は、上記装着部16によって第2アーム7に取り付けられている。また、トランクリッド3が全開になると、全開ストッパ15の当接部18が上述したようにヒンジベース5の接合部13に当接することにより、トランクリッド3が全開位置に対し更に開き側に変位しないようにされる。
【0024】
更に、上記開閉機構4は、トランクリッド3が開いて第1アーム6の先端部6bと第2アーム7の先端部7bとの対向するエッジ部6c,7c同士が接近するとき(図3)、それらエッジ部6c,7c間に位置する遮蔽部材17を備えている。この遮蔽部材17は、全開ストッパ15の装着部16における第1アーム6側の部分に位置しており、全開ストッパ15と一体的に形成されている。また、遮蔽部材17は肉抜き部19を有している。この肉抜き部19は、遮蔽部材17を図1図4の紙面と直交する方向に貫通する穴を形成することにより、同遮蔽部材17に設けられている。
【0025】
次に、トランクリッド3の開閉機構4の作用効果について説明する。
(1)図5に示すように、トランクリッド3の開き側への変位に伴い第1アーム6の先端部6bと第2アーム7の先端部7bとの対向するエッジ部6c,7c同士が接近して両者の間の空間が徐々に小さくなるとき、上記エッジ部6c,7c間には遮蔽部材17が位置するようになる。従って、トランクリッド3を開くとき、第1アーム6の先端部6bと第2アーム7の先端部7bとの対向するエッジ部6c,7c同士の間の空間に物が入り込むことを上記遮蔽部材17によって抑制することができ、それらエッジ部6c,7c間に過って物が挟まることを抑制できるようになる。
【0026】
(2)第2アーム7の先端部7bに装着される全開ストッパ15と上記遮蔽部材17とが一体的に形成されているため、全開ストッパ15を第2アーム7の先端部7bに装着することによって開閉機構4に遮蔽部材17を組み付けることができ、開閉機構4に対する全開ストッパ15及び遮蔽部材17の組み付けを一度に行うことができる。
【0027】
(3)第2アーム7が第1アーム6から離れる方向に膨らむよう曲がっているため、第1アーム6の先端部6bと第2アーム7の先端部7bとの対向するエッジ部6c,7c同士の間の空間を大きくとることができる。このため、トランクリッド3の開き側への変位に伴い、第1アーム6の先端部6bと第2アーム7の先端部7bとの対向するエッジ部6c,7c同士が接近して両者の間の空間が徐々に小さくなるとき、その空間を大きくとることによって上記エッジ部6c,7c同士の間に物が挟まりにくくなる。
【0028】
(4)上記遮蔽部材17は肉抜き部19を有しているため、その肉抜き部19によって遮蔽部材17の剛性を低下させることができる。このため、第1アーム6の先端部6bと第2アーム7の先端部7bとの対向するエッジ部6c,7c同士が接近するとき、仮に両者の間の空間に物が入り込んだとしても、その物が接近するエッジ部6c,7c同士の間できつく挟まれることを上記遮蔽部材17の変形によって抑制することができる。
【0029】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・遮蔽部材17の肉抜き部19については、遮蔽部材17に対し図1図4の紙面と直交する方向にへこむ窪みを形成することにより、同遮蔽部材17に設けるようにしてもよい。
【0030】
・遮蔽部材17は全開ストッパ15とは別体であってもよい。
・遮蔽部材17を全開ストッパ15とは別体とした場合、その遮蔽部材17については第2アーム7の先端部7bに装着するようにしてもよいし、第1アーム6の先端部6bに装着するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…車両、2…荷室、2a…開口部、3…トランクリッド、4…開閉機構、5…ヒンジベース、6…第1アーム、6a…基端部、6b…先端部、6c…エッジ部、7…第2アーム、7a…基端部、7b…先端部、7c…エッジ部、8…ブラケット、9…第1基端ピン、10…第1先端ピン、11…第2基端ピン、12…第2先端ピン、13…接合部、14…支持板、15…全開ストッパ、16…装着部、17…遮蔽部材、18…当接部、19…肉抜き部。
図1
図2
図3
図4
図5