【実施例】
【0025】
実施例1
ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社製の太陽電池パネル(型式:VLXA−125)を用いて実験を行った。まず、約800×1600×40mmの大きさの太陽電池パネルからAl製の外枠をダイヤモンド・カッターで切断し、取り外した。外枠と太陽電池アレイは黒いバインダー樹脂で接着されていた。この黒い接着樹脂を含むような形で、120×120×5mmの太陽電池モジュール5の1片を切り出し、TASC処理の解体試料とした。太陽電池モジュール5の上面は約3.5mmのガラス1板、最下面には約0.5mm程度の白色のポリマー・シート(バック・シート7)があり、ガラス1板とポリマー・シートの中間には約1mm程度の透明の樹脂層(充填剤)があった。
【0026】
太陽電池モジュール5の1片のバック・シート7を下にして、酸化物半導体13としてCr
2O
3をコーティングしたコージライト(2MgO・2Al
2O
3・5SiO
2)組成のハニカム上に載せた。酸化物半導体13はTASC処理においてそれ自体は変化・消耗することなく、これに接触している被処理物中の有機物を分解・除去する作用をするので、酸化物半導体13を担持したハニカムは触媒担持ハニカム8とも称する。太陽電池モジュール5の1片を載せた触媒担持ハニカム8を
図3の電気炉9に入れて、空気導入口11から空気を導入しながらヒーター10に通電して500℃まで昇温し、30分間500℃に制御した。この後温度制御の電源をオフにして冷却した。以上の一連のTASC処理により、モジュール片のバック・シート7および充填剤を構成するポリマーは完全に分解され、下層から順に、薄いガラス・ファイバーと思われる布、インター・コネクタ3/太陽電池セル2/インター・コネクタ3、さらに細かくひび割れしたガラス1塊が得られた。分解されたポリマーは水と炭酸ガスとなり、排気口12から排出される。酸化物半導体13(Cr
2O
3)と太陽電池モジュール5はバック・シート7表面でのみ接触しているが、酸化物半導体13に発現する酸化力により、バック・シート7表面でポリマーから結合電子を奪い、ポリマー内に不安定なカチオン・ラジカルが形成される。このラジカルが被分解物であるポリマー内を伝播することによりポリマー全体を不安定化し、ポリマーは自滅するような形でエチレンのような小分子に裁断化(ラジカル開裂)され、空気中の酸素と反応して水と二酸化炭素に完全分解される。これがTASC法の特徴である。つまり、ポリマー表面でラジカルが一度形成されると、厚み方向に次々に分解反応が続くので、充填剤の領域まで完全分解が実現する。
【0027】
分解されたモジュールを、ガラス・ファイバーと思われる布から外し、5メッシュのステンレス網14に移した。これを約30度傾け、低周波数で振動させると、ガラス塊は転がるように落下した。次に、周波数を上げて振動させると、太陽電池セル2ならびにインター・コネクタ3も落下し、分別・回収することができた。この間に、ポリマーに含有されていた無機物の白い残渣(充填物:TiO
2,CaCO
3,SiO
2等)はメッシュを通して落下した。以上の操作で、
図2に示すように、ガラス1塊、太陽電池セル2ならびにインター・コネクタ3は容易に分別できた。ステンレス網14を傾ける角度は20度以上40度以下が好ましい。またガラス1塊を落下させるための振動数(第1の振動数)は5Hz以上で20Hz以下の範囲で、太陽電池セル2ならびにインター・コネクタ3を落下させるための振動数(第2の振動数)は10Hz以上で200Hz以下の範囲で、ガラスの厚みおよび太陽電池セルの構造などに依存して最適値に設定すればよい。振動の強さは分別・回収ができるように、適宜調整するのが良い。
【0028】
インター・コネクタ3は幅2mm、厚みが0.2mm、長さが100mm程度の金属であり、蛍光X線分析の結果、銅と錫が主成分であることが分かった。また、太陽電池セル2の受光面には格子状の電極がスクリーン印刷されていた。太陽電池セル2ならびに格子状の電極材料は、蛍光X線分析の結果、それぞれシリコンならびに銀が主成分であることが判明した。太陽電池セル2の受光面上の銀電極は以下の手順により、AgClとして回収した。まず、銀電極のついた太陽電池セル2を濃硝酸で溶解し、薄黄色の溶液を得た。次に、これに塩酸を滴下し、銀をAgClとして沈殿させた。水洗後にろ過・乾燥させ、AgClの粉末を得た。9.6gの太陽電池セルから、0.3gのAgClを回収した(約3.2重量%)。
【0029】
実施例2
実施例1で使用した太陽電池パネルから、同様の太陽電池モジュール5の1片を切り出した。酸化物半導体13として、実施例1で使用したCr
2O
3の代わりにα−Fe
2O
3(酸化鉄:ヘマタイト)を用い、実施例1と同様のTASC処理を行った。その結果、実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0030】
実施例3
実施例1で使用した太陽電池パネルから、同様の太陽電池モジュール5の1片を切り出した。モジュールの下面のポリマー・シート(バック・シート)の上に、Cr
2O
3の懸濁液をスプレー・コーティング法で5−10ミクロン程度コーティングした。この面を下にして、無垢(Cr
2O
3が未コート)のコージライト組成のハニカム上に載せ、空気中、500℃で30分加熱した(TASC処理)。モジュール片のポリマーは実施例1と同様に完全に分解され、ガラス1、太陽電池セル2、インター・コネクタ3も容易に分別され、格子状の銀電極もAgClの形で回収した。なお、酸化物半導体が担持されていないハニカムを用いたが、酸化物半導体が担持されているハニカムを用いても良い。またハニカムでなくてもモジュール片を載せる支持体であれば良いが、TASC法では裁断化された分子を水と炭酸ガスに完全分解するには十分な酸素が必要であるので、通気性の高い多孔質の支持体が好ましい。
【0031】
実施例4
実施例3において、太陽電池モジュール5の1片の底辺部に酸化物半導体13であるCr
2O
3を塗膜する代わりに、
図4(a)に示すように、モジュール片の4つの側面を順次、酸化物半導体13であるCr
2O
3の懸濁液に漬けてディップ・コーティングした。これを無垢のハニカム(Cr
2O
3が塗布されていないハニカム)の上に置き、空気中、500℃で30分TASC処理を行った。その結果、実施例3と同様に良好な結果を得た。なお、酸化物半導体が担持されていないハニカムを用いたが、酸化物半導体が担持されているハニカムを用いても良い。またハニカムでなくてもモジュール片を載せる支持体であれば良いが、TASC法では裁断化された分子を水と炭酸ガスに完全分解するには十分な酸素が必要であるので、通気性の高い多孔質の支持体が好ましい。
【0032】
実施例5
実施例4において、太陽電池モジュール5の1片の4つの側面の代わりに、
図4(b)に示すように、3辺を順次、酸化物半導体13であるCr
2O
3の懸濁液に漬けてディップ・コーティングした。これを無垢のハニカムの上に置き、空気中、500℃で30分TASC処理を行った。その結果、実施例3と同様に良好な結果を得た。
【0033】
実施例6
図4(c)に示すように、太陽電池モジュール5の1片の4つの側面の内、相対する2つのエッジを順次、酸化物半導体13であるCr
2O
3のCr
2O
3懸濁液に漬けてディップ・コーティングし、これを無垢のハニカムの上に置き、空気中、500℃で30分TASC処理を行った。その結果、実施例3と同様に良好な結果を得た。
【0034】
実施例7
図4(d)に示すように、太陽電池モジュール5の1片の4つの側面の内、1つのエッジを酸化物半導体13であるCr
2O
3の懸濁液に漬けてディップ・コーティングし、これを無垢のハニカムの上に置き、空気中、500℃で30分TASC処理を行った。その結果、実施例3と同様に良好な結果を得た。
このように、ポリマーの表面でのみ酸化物半導体と接触させておけば、TASC法の特徴により、120mm離れた端までポリマーの完全分解が自動的に進行することが実証された。
【0035】
実施例1−7で述べたように、TASC法のためには酸化物半導体13が有機物の表面でのみ接触していればよい。従って、接触させる方法は酸化物半導体13を坦持したハニカムに太陽電池モジュール5のバック・シート7が接触するようにモジュールを載せる方法、バック・シート7に酸化物半導体13の懸濁液をコーティングして無垢のハニカムにモジュールを載せる方法、モジュール片の4辺の少なくとも一辺に酸化物半導体13の懸濁液をコーティングして無垢のハニカムにモジュールを載せる方法のいずれであってもよい。しかしながら、有機物表面に酸化物半導体13の懸濁液をコーティングした場合は、回収物(ガラス1、太陽電池セル2、インター・コネクタ3等)に酸化物半導体13の粉が微少ではあるが混入することは避けられない。一方、酸化物半導体13を坦持したハニカムに太陽電池モジュール5のバック・シート7が接触するようにモジュールを載せる方法では回収物に酸化物半導体13が混入しないことや処理操作が極めて容易である点で好ましい方法である。
【0036】
実施例8
Changzhou Trina Solar Energy Co. Ltd.製の太陽電池パネル(型式:TSM−05DC80.08)を用いた。この太陽電池パネルはAl製の外枠と太陽電池アレイの固定には、太陽電池モジュール5の1片のベース体と同じポリマー・バインダーが使用されていた。実施例1の方法で、太陽電池モジュール5の1片(120×120×5 mm)を切り出し、実施例1と同様のTASC処理を行った。実施例1と同様に、太陽電池モジュール5の1片のポリマーは完全に分解され、下層から、インター・コネクタ3/太陽電池セル2/インター・コネクタ3/細かくひび割れしたガラス1塊、が得られた。これらは容易に分別できた。太陽電池セルならびに格子状の電極材料は、蛍光X線分析の結果、それぞれ、シリコンならびに銀が主成分であることが判明した。実施例1と同様の手法で、AgClを回収した。5.5gの太陽電池セルから、0.08gのAgClを回収した(1.48重量%)。
【0037】
実施例9
実施例8で使用した太陽電池パネルから、同様の太陽電池モジュール5の1片を切り出した。酸化物半導体13として、実施例8で使用したCr
2O
3の代わりにα−Fe
2O
3(ヘマタイト)を用い、実施例8と同様のTASC処理を行った。その結果、実施例8と同様に良好な結果が得られた。
【0038】
実施例10
実施例8で使用した太陽電池パネルから、同様の太陽電池モジュール5の1片を切り出した。このモジュール片を用いて、実施例3と同様に、モジュールの下面のバック・シート7の上に、Cr
2O
3の懸濁液をスプレー・コーティング法で5−10ミクロン程度コーティングした。この面を下にして、無垢(Cr
2O
3が未コート)のコージライト組成のハニカム上に載せ、空気中、500℃で30分加熱した(TASC処理)。モジュール片のポリマーは実施例8と同様に完全に分解され、ガラス、太陽電池セル2、インター・コネクタ3も容易に分別され、格子状の銀電極もAgClの形で回収した。
【0039】
実施例11
実施例8の太陽電池モジュール5の1片を用いて、実施例4と同様な実験を行った(4辺処理、
図4(a))。その結果、実施例8と同様に良好な結果を得た。
【0040】
実施例12
実施例8の太陽電池モジュール5の1片を用いて、実施例5と同様な実験を行った(3辺処理、
図4(b))。その結果、実施例8と同様に良好な結果を得た。
【0041】
実施例13
実施例8の太陽電池モジュール5の1片を用いて、実施例6と同様な実験を行った(2辺処理、
図4(c))。その結果、実施例8と同様に良好な結果を得た。
【0042】
実施例14
実施例8の太陽電池モジュール5の1片を用いて、実施例7と同様な実験を行った(1辺処理、
図4(d))。その結果、実施例8と同様に良好な結果を得た。
【0043】
実施例15
実施例1もしくは実施例2または実施例8もしくは実施例9において、太陽電池モジュール5の1片のバック・シート7を下にして、酸化物半導体13をコーティングしたハニカム上に載せる際に、ガラス等を回収する便宜のために
図5のようにステンレス網14を挿入する。予め、ハニカムには溝を掘っておき、溝深さ以下の厚みをもつステンレス網14をはめ込めるようにしておく。こうすれば、ハニカムに坦持された酸化物半導体13はモジュール片のバック・シート7表面と接触するので、TASC処理には支障がなく、かつTASC処理後に解体物を別途用意したステンレス網14に移す工程を経ることなく、ステンレス網14とステンレス網14上の解体物をハニカムから外し、実施例1に記載した方法でガラス塊、太陽電池セル2ならびにインター・コネクタ3を容易に分別することができる。
【0044】
実施例16
実施例3もしくは実施例7または実施例10もしくは実施例14において、太陽電池モジュール5の1片を、酸化物半導体13が担持されていないハニカムの上に載せる際に、ガラス等を回収する便宜のために、実施例15と同様にステンレス網14を挿入する。ただし、太陽電池モジュール5の1片には既に酸化物半導体13が塗布されているから、ハニカムに溝を掘っておく必要はなく、単にハニカムの上にステンレス網14、太陽電池モジュール5の1片の順に載せればよい。こうすれば、TASC処理には支障がなく、かつTASC処理後に解体物を別途用意したステンレス網14に移す工程を経ることなく、ステンレス網14とステンレス網14上の解体物をハニカムから外し、実施例1に記載した方法でガラス塊、太陽電池セル2ならびにインター・コネクタ3を容易に分別することができる。
【0045】
実施例17
太陽電池モジュール5のTASC処理を連続的に行うには
図6に示した太陽電池モジュール用TASC連続処理装置15を用いるのが良い。ハニカムの上に、ステンレス網14、太陽電池モジュール5の1片を順に載せて、装置入口側の搬入部16に置く。酸化物半導体13坦持ハニカムを用いる場合は、実施例15に従い溝を掘ったハニカムとし、ハニカムの上にステンレス網14を、さらに太陽電池モジュール5の1片をバック・シート7が下になるようにして載せる。太陽電池モジュール5の1片のバックシート表面または太陽電池モジュール5の1片の側面に酸化物半導体13を塗布した場合は、酸化物半導体13を坦持しないハニカムを用いて、実施例16に従ってステンレス網14、太陽電池モジュール5の1片を載せる。ハニカムと一体となってその上に置かれたステンレス網14、太陽電池モジュール5の1片は搬入部16から搬出部20に渡って設置されているコンベヤにより、約100mm/minの搬送速度で連続的に搬送される。予備加熱部17、TASC処理部18、冷却部19には空気が外部から導入される。ハニカムと太陽電池モジュール5の1片は予備加熱部17を通過する間に500℃に加熱される。約1000mmに渡って500℃に制御された加熱処理部であるTASC処理部18を通過するときにTASC処理が行われ、モジュール片の中の有機物成分が完全に分解除去される。冷却部19を通過する間に冷却が行われる。なお、室温まで冷却される必要はなく、冷却される温度は適宜でよい。冷却部19から出てきたハニカム上の解体物からは有機物がTASC処理により完全に分解除去されており、搬出部20においてハニカムが除かれ、ステンレス網14とその上の解体物が搬出部20に戻される。搬出部20を経て分別回収部に送られると分別回収部21において、実施例1に記載された方法により無機物の白い残渣を、メッシュを通して落下させる。第一振動によりステンレス網14から滑り落ちたガラスと第2振動によりステンレス網14から滑り落ちた太陽電池セル2およびインター・コネクタ3は分別・回収される。
【0046】
連続処理装置において搬入部から搬出部に至るすべての経路を一定速度で搬送すると述べたが、搬入部、搬出部及び分別回収部では太陽電池モジュールを載せたハニカムを一定速度で連続的に搬送し、予備加熱部、TASC処理部及び冷却部を一体化したTASC処理室では停止状態でTASC処理を行うシステムでもよい。この場合、TASC処理室には入口・出口の扉を持った電気炉が中央に置かれており、太陽電池モジュールを載せたハニカムの搬入の際には、入口の扉が開き、炉内に被処理物が運ばれ、入口が閉じられる。そして、処理後には出口側の扉が開き、TASC処理されたハニカム上の解体物が搬出される。バッチ方式を踏襲した本システムは搬送制御がやや複雑になるが、メリットは温度管理がし易いこと、必要な酸素を制御できることであり、着実なTASC処理が可能である。
【0047】
実施例18
さらに段落46で述べた半自動装置から搬入部、搬出部を取り払い、完全バッチ方式によってもTASC処理による太陽電池モジュールからの有価物の回収を行うことができる。
図7において、太陽電池モジュールに酸化物半導体を接触させた状態で、太陽電池モジュールを電気炉9である加熱処理室内に配置する。加熱処理室9は空気導入口11と排気口12を有する。加熱処理室9を約500℃に加熱すると、TASC処理により太陽電池モジュール5中の有機物は分解され、生じた高温のガスは上昇するので、排気口12は加熱処理室9の天井内に設けるのが良い。加熱処理室9から廃棄されるガスはまだ完全には炭酸ガスと水にはなっておらず、低分子化された有機物が含まれることもあるため、排気口12の外側にTASC法によるVOC浄化装置23を配置する。これは酸化物半導体13を担持したハニカム8にヒーターを埋め込んだものを複数枚直列に配列した装置であり、ヒーターで約500℃に加熱することにより、通過する低分子有機物は完全に炭酸ガスと水に分解され、無害のガスとして大気に放出される。酸化物半導体を担持したハニカム構造体8を、加熱処理室9内で天井の排気口12付近に配置すると、約500℃に加熱されたハニカム構造体8を通過する低分子有機物ガスが炭酸ガスと水に分解されるのでさらに良い。酸化物半導体を担持したハニカム構造体8を側面にも付加的に設けて太陽電池モジュール5を取り囲むように配置してもよい。このような装置によりTASC処理を行うと、太陽電池モジュール5中の有機物は完全に分解除去され、電気炉9内の解体物から有価物を容易に回収することができる。連続処理炉および半自動処理炉においては複数枚の太陽電池モジュールを同時に処理するには装置を非常に大がかりにする必要があるが、完全バッチ炉においては電気炉9内に複数枚、たとえば5枚程度の太陽電池モジュール5を並べて無理なく配置することはスペース的に十分可能であり、こうすることにより一枚当たりの処理速度を上げることができる。
図7のバッチ処理方式は連続処理炉に比べて小型、安価、低消費電力との特徴を有する。