特許第6596750号(P6596750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6596750車両制御システム、走行管理装置、リソース管理装置、車両制御方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596750
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】車両制御システム、走行管理装置、リソース管理装置、車両制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/14 20060101AFI20191021BHJP
   B60L 15/40 20060101ALI20191021BHJP
   B61L 3/12 20060101ALI20191021BHJP
   B61L 19/06 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B61L23/14 Z
   B60L15/40 G
   B61L3/12 Z
   B61L19/06
【請求項の数】16
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-230113(P2015-230113)
(22)【出願日】2015年11月25日
(65)【公開番号】特開2017-94975(P2017-94975A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】518018986
【氏名又は名称】三菱重工エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼井 法貴
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 裕
(72)【発明者】
【氏名】野中 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】若杉 一幸
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−137337(JP,A)
【文献】 特開2013−123963(JP,A)
【文献】 特開2003−261028(JP,A)
【文献】 特開2014−148260(JP,A)
【文献】 特表2014−522339(JP,A)
【文献】 特開2015−139297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/14
B60L 15/40
B61L 3/12
B61L 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する軌道を構成する複数の閉塞区間とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報に基づいて前記車両が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間のうち予約対象の閉塞区間の予約要求をリソース管理装置へ送信する予約要求部を備える走行管理装置と、
前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間がその予約要求を受信した時点で前記予約要求を送信した車両以外の車両によって予約されていない場合、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間を前記予約要求を送信した車両の予約済みの閉塞区間と記録する予約管理部を備えるリソース管理装置と、
を備えることを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
前記リソース管理装置の前記予約管理部は、前記予約要求を送信した車両の予約済みの閉塞区間を示す予約完了情報を前記予約要求の送信元の車両へ送信し、
前記走行管理装置は前記予約完了情報が示す閉塞区間までの各閉塞区間における制限速度パターンを演算する速度演算部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記車両が前記走行管理装置を搭載しており、
前記リソース管理装置は前記軌道における所定の範囲毎に設置されており、
前記走行管理装置の予約要求部は、前記予約対象の閉塞区間を含む範囲に対応するリソース管理装置へ、その予約対象の閉塞区間についての前記予約要求を送信する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記走行管理装置は、前記車両の通過済みの閉塞区間を前記リソース管理装置へ送信する通過情報通知部を備え、
前記リソース管理装置の前記予約管理部は、前記通過済みの閉塞区間を受信すると、その通過済み閉塞区間の情報を予約済みの閉塞区間から未予約の閉塞区間へと更新する
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記走行管理装置は、前記予約済みの閉塞区間のキャンセル要求を上位装置より取得した場合には、前記車両の停止制御を行い、当該車両の停止後に前記予約済みの閉塞区間のうち進行方向前方の閉塞区間の予約放棄を前記リソース管理装置へ送信する予約放棄部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記走行管理装置は車両に搭載されることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記リソース管理装置は、分岐の無い閉塞区間が複数連続する非分岐連続区間に含まれる各閉塞区間を記憶し、当該非分岐連続区間に含まれる各閉塞区間についての予約済み又は未予約の情報の記憶は行わずに、前記非分岐連続区間を走行する車両の走行順序を記憶し、
前記走行管理装置は、自装置を搭載する車両が前記非分岐連続区間に進入後は当該車両の直前を走行する直前車両の識別情報を前記リソース管理装置から取得して、前記直前車両と通信することにより前記直前車両の位置を検出し、その直前車両の位置と、自装置を搭載する車両の位置とに基づく制動制御を要求する
ことを特徴とする請求項6に記載の車両制御システム。
【請求項8】
前記走行管理装置は前記予約対象の閉塞区間を決定するために、前記リソース管理装置から事前に予約状況の情報を取得することを特徴とする請求項1から請求項7の何れか一項に記載の車両制御システム。
【請求項9】
前記リソース管理装置は前記車両の予約済みの閉塞区間の中に分岐を有する閉塞区間が存在する場合には、その車両に走行方向に基づく当該分岐の転換制御を行う分岐制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項8の何れか一項に記載の車両制御システム。
【請求項10】
前記走行管理装置は前記車両の予約済みの閉塞区間の中に分岐を有する閉塞区間が存在する場合には、その車両に走行方向に基づく当該分岐の転換制御を行う分岐制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項7の何れか一項に記載の車両制御システム。
【請求項11】
前記走行管理装置は自装置が搭載されている車両以外の他の車両による予約済み閉塞区間の予約時刻に基づいて自装置が搭載されている車両の走行開始タイミングを決定する
ことを特徴とする請求項1から請求項10の何れか一項に記載の車両制御システム。
【請求項12】
車両が走行する軌道を構成する複数の閉塞区間とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報に基づいて前記車両が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間のうち予約対象の閉塞区間の予約要求をリソース管理装置へ送信する予約要求部と、
前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間がその予約要求を受信した時点で前記予約要求を送信した車両以外の車両によって予約されていない場合、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間を前記予約要求を送信した車両の予約済みの閉塞区間と記録する予約管理部を備える前記リソース管理装置から、当該予約済みの閉塞区間を示す予約完了情報を受信する受信部と、
前記予約完了情報が示す閉塞区間までの各閉塞区間における制限速度パターンを演算する速度演算部と、
を備える走行管理装置。
【請求項13】
車両が走行する軌道を構成する複数の閉塞区間とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報に基づいて前記車両が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間のうち予約対象の閉塞区間の予約要求をリソース管理装置へ送信する予約要求部を備える走行管理装置と通信接続し、
前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間がその予約要求を受信した時点で前記予約要求を送信した車両以外の車両によって予約されていない場合、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間を前記予約要求を送信した車両の予約済みの閉塞区間と記録する予約管理部
を備えるリソース管理装置。
【請求項14】
走行管理装置とリソース管理装置とを備えた車両制御システムの車両制御方法であって、
前記走行管理装置は、車両が走行する軌道を構成する複数の閉塞区間とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報に基づいて前記車両が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間のうち予約対象の閉塞区間の予約要求をリソース管理装置へ送信し、
前記リソース管理装置は、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間がその予約要求を受信した時点で前記予約要求を送信した車両以外の車両によって予約されていない場合、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間を前記予約要求を送信した車両の予約済みの閉塞区間と記憶する
ことを特徴とする車両制御方法。
【請求項15】
走行管理装置とリソース管理装置とを備えた車両制御システムにおける前記走行管理装置のコンピュータに、
車両が走行する軌道を構成する複数の閉塞区間とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報に基づいて前記車両が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間のうち予約対象の閉塞区間を決定し、その予約対象の閉塞区間の予約要求をリソース管理装置へ送信する予約要求手順、
前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間がその予約要求を受信した時点で前記予約要求を送信した車両以外の車両によって予約されていない場合、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間を前記予約要求を送信した車両の予約済みの閉塞区間と記録する予約管理部を備える前記リソース管理装置から、当該予約済みの閉塞区間を示す予約完了情報を受信する受信手順、
前記予約完了情報が示す閉塞区間までの各閉塞区間における制限速度パターンを演算する速度演算手順、
とを実行させるプログラム。
【請求項16】
車両が走行する軌道を構成する複数の閉塞区間とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報に基づいて前記車両が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間のうち予約対象の閉塞区間の予約要求をリソース管理装置へ送信する予約要求部を備える走行管理装置と、リソース管理装置とを備えた車両制御システムにおける前記リソース管理装置のコンピュータに、
前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間がその予約要求を受信した時点で前記予約要求を送信した車両以外の車両によって予約されていない場合、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間を前記予約要求を送信した車両の予約済みの閉塞区間と記録する予約管理手順、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システム、走行管理装置、リソース管理装置、車両制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高密度運行を行う鉄道システムでは、列車の速度を安全に保つためのATP(Automatic Train Protection)装置が採用される。ATPを採用した鉄道システムは、軌道の分岐に存在する転てつ器の転換の制御を旧来と同様の連動装置が担っている。連動装置は進路(閉塞区間)の単位で車両同士の排他制御を行う。連動装置は安全性を担保しながら転てつ器の転換の制御を行う。上記鉄道システムでは地上側に連動装置とATP装置とを設置するが、これらの装置は機器が高価な上に、広い機器室を準備する必要がある。連動装置の維持管理は、特殊な技能を持つ信号技術者が「連動図表」と呼ばれる設計資料を作成する必要があるため保守費用がかかる。
【0003】
このような問題を解決する手段として、車上装置が主体的に無線を介して分岐制御を行うことで、地上設備を簡素化する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5049992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述の特許文献1の技術は、「同一線形パターンの繰り返しで構成される線形(軌道)」においてのみ利用できる技術であり、複雑な線形を有する一般的な都市部の鉄道には適用できない。
【0006】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる車両制御システム、走行管理装置、リソース管理装置、車両制御方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、車両制御システムは、車両が走行する軌道を構成する複数の閉塞区間とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報に基づいて前記車両が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間のうち予約対象の閉塞区間の予約要求をリソース管理装置へ送信する予約要求部を備える走行管理装置と、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間がその予約要求を受信した時点で前記予約要求を送信した車両以外の車両によって予約されていない場合、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間を前記予約要求を送信した車両の予約済みの閉塞区間と記録する予約管理部を備えるリソース管理装置と、を備える。
【0008】
また上述の車両制御システムにおいて、前記リソース管理装置の前記予約管理部は、前記予約要求を送信した車両の予約済みの閉塞区間を示す予約完了情報を前記予約要求の送信元の車両へ送信し、前記走行管理装置は前記予約完了情報が示す閉塞区間までの各閉塞区間における制限速度パターンを演算する速度演算部を備えてもよい。
【0009】
また上述の車両制御システムにおいて、前記車両が前記走行管理装置を搭載しており、前記リソース管理装置は前記軌道における所定の範囲毎に設置されており、前記走行管理装置の予約要求部は、前記予約対象の閉塞区間を含む範囲に対応するリソース管理装置へ、その予約対象の閉塞区間についての前記予約要求を送信してもよい。
【0010】
また上述の車両制御システムにおいて、前記走行管理装置は、前記車両の通過済みの閉塞区間を前記リソース管理装置へ送信する通過情報通知部を備え、前記リソース管理装置の前記予約管理部は、前記通過済みの閉塞区間を受信すると、その通過済み閉塞区間の情報を予約済みの閉塞区間から未予約の閉塞区間へと更新してもよい。
【0011】
また上述の車両制御システムにおいて、前記走行管理装置は、前記予約済みの閉塞区間のキャンセル要求を上位装置より取得した場合には、前記車両の停止制御を行い、当該車両の停止後に前記予約済みの閉塞区間のうち進行方向前方の閉塞区間の予約放棄を前記リソース管理装置へ送信する予約放棄部を備えてもよい。
【0012】
また上述の車両制御システムにおいて、前記走行管理装置は車両に搭載されてもよい。
【0013】
また上述の車両制御システムにおいて、前記リソース管理装置は、分岐の無い閉塞区間が複数連続する非分岐連続区間に含まれる各閉塞区間を記憶し、当該非分岐連続区間に含まれる各閉塞区間についての予約済み又は未予約の情報の記憶は行わずに、前記非分岐連続区間を走行する車両の走行順序を記憶し、前記走行管理装置は、自装置を搭載する車両が前記非分岐連続区間に進入後は当該車両の直前を走行する直前車両の識別情報を前記リソース管理装置から取得して、前記直前車両と通信することにより前記直前車両の位置を検出し、その直前車両の位置と、自装置を搭載する車両の位置とに基づく制動制御を要求してもよい。
【0014】
また上述の車両制御システムにおいて、前記走行管理装置は前記予約対象の閉塞区間を決定するために、前記リソース管理装置から事前に予約状況の情報を取得してもよい。
【0015】
また上述の車両制御システムにおいて、前記リソース管理装置は前記車両の予約済みの閉塞区間の中に分岐を有する閉塞区間が存在する場合には、その車両に走行方向に基づく当該分岐の転換制御を行う分岐制御部と、を備えてもよい。
【0016】
また上述の車両制御システムにおいて、前記走行管理装置は前記車両の予約済みの閉塞区間の中に分岐を有する閉塞区間が存在する場合には、その車両に走行方向に基づく当該分岐の転換制御を行う分岐制御部と、を備えてもよい。
【0017】
また上述の車両制御システムにおいて、前記走行管理装置は自装置が搭載されている車両以外の他の車両による予約済み閉塞区間の予約時刻に基づいて自装置が搭載されている車両の走行開始タイミングを決定してもよい。
【0018】
また本発明の第2の態様によれば、車両制御方法は、走行管理装置とリソース管理装置とを備えた車両制御システムの車両制御方法であって、前記走行管理装置は、車両が走行する軌道を構成する複数の閉塞区間とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報に基づいて前記車両が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間のうち予約対象の閉塞区間の予約要求をリソース管理装置へ送信し、前記リソース管理装置は、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間がその予約要求を受信した時点で前記予約要求を送信した車両以外の車両によって予約されていない場合、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間を前記予約要求を送信した車両の予約済みの閉塞区間と記憶する。
【0019】
また本発明の第3の態様によれば、走行管理装置は、車両が走行する軌道を構成する複数の閉塞区間とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報に基づいて前記車両が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間のうち予約対象の閉塞区間の予約要求をリソース管理装置へ送信する予約要求部と、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間がその予約要求を受信した時点で前記予約要求を送信した車両以外の車両によって予約されていない場合、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間を前記予約要求を送信した車両の予約済みの閉塞区間と記録する予約管理部を備える前記リソース管理装置から、当該予約済みの閉塞区間を示す予約完了情報を受信する受信部と、前記予約完了情報が示す閉塞区間までの各閉塞区間における制限速度パターンを演算する速度演算部と、を備える。
【0020】
また本発明の第4の態様によれば、リソース管理装置は、車両が走行する軌道を構成する複数の閉塞区間とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報に基づいて前記車両が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間のうち予約対象の閉塞区間の予約要求をリソース管理装置へ送信する予約要求部を備える走行管理装置と通信接続し、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間がその予約要求を受信した時点で前記予約要求を送信した車両以外の車両によって予約されていない場合、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間を前記予約要求を送信した車両の予約済みの閉塞区間と記録する予約管理部を備える。
【0021】
また本発明の第5の態様によれば、走行管理装置とリソース管理装置とを備えた車両制御システムの車両制御方法において、前記走行管理装置は、車両が走行する軌道を構成する複数の閉塞区間とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報に基づいて前記車両が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間のうち予約対象の閉塞区間の予約要求をリソース管理装置へ送信し、前記リソース管理装置は、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間がその予約要求を受信した時点で前記予約要求を送信した車両以外の車両によって予約されていない場合、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間を前記予約要求を送信した車両の予約済みの閉塞区間と記憶する。
【0022】
また本発明の第6の態様によれば、プログラムは、走行管理装置とリソース管理装置とを備えた車両制御システムにおける前記走行管理装置のコンピュータに、車両が走行する軌道を構成する複数の閉塞区間とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報に基づいて前記車両が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間のうち予約対象の閉塞区間を決定し、その予約対象の閉塞区間の予約要求をリソース管理装置へ送信する予約要求手順、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間がその予約要求を受信した時点で前記予約要求を送信した車両以外の車両によって予約されていない場合、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間を前記予約要求を送信した車両の予約済みの閉塞区間と記録する予約管理部を備える前記リソース管理装置から、当該予約済みの閉塞区間を示す予約完了情報を受信する受信手順、前記予約完了情報が示す閉塞区間までの各閉塞区間における制限速度パターンを演算する速度演算手順、とを実行させる。
【0023】
また本発明の第7の態様によれば、プログラムは、車両が走行する軌道を構成する複数の閉塞区間とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報に基づいて前記車両が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間のうち予約対象の閉塞区間の予約要求をリソース管理装置へ送信する予約要求部を備える走行管理装置と、リソース管理装置とを備えた車両制御システムにおける前記リソース管理装置のコンピュータに、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間がその予約要求を受信した時点で前記予約要求を送信した車両以外の車両によって予約されていない場合、前記予約要求が示す前記予約対象の閉塞区間を前記予約要求を送信した車両の予約済みの閉塞区間と記録する予約管理手順を実行させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、連動装置やATP装置を用いずに軌道を走行する車両の走行制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態による車両制御システムの構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による走行管理装置とリソース管理装置の機能ブロック図である。
図3】車両1の走行する軌道を構成する各閉塞区間を示している。
図4】車両1の走行する軌道を構成する各閉塞区間の接続関係を示す図である。
図5】走行管理装置の記憶する軌道情報を示す図である。
図6】車両の走行経路を示す図である。
図7】リソース管理装置が記憶する予約管理テーブルを示す図である。
図8】車両制御システムの処理フローを示す図である。
図9】制限速度パターンと予約状況を示す図である。
図10】第二の実施形態によるリソース管理装置の設置状態を示す図である。
図11】第二の実施形態による走行管理装置が記憶するリソース管理装置情報を示す図である。
図12】第三の実施形態による処理概要を示す図である。
図13】第七の実施形態による車両制御システムを示す図である。
図14】第八の実施形態による車両制御システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第一の実施形態>
以下、本発明の第一の実施形態による車両制御システムを図面を参照して説明する。
図1は本発明の第一の実施形態による車両制御システムの構成を示す図である。
図1は車両制御システム10を示している。車両制御システム10は、図1に示すように、運行管理装置2と、車両1に搭載された車上信号装置3と、リソース管理装置4とを備えている。運行管理装置2と車上信号装置3とは無線信号により接続する。運行管理装置2は運行の為の情報を車上信号装置3へ出力する。車上信号装置3は走行管理装置30を備えている。車上信号装置3とリソース管理装置4とは無線信号により接続する。車両は軌道を走行する。軌道は複数の閉塞区間により構成される。車上信号装置3の走行管理装置30はリソースである各閉塞区間の予約管理を行うためにリソース管理装置4と情報を送受信する。
【0027】
詳細に説明すると、走行管理装置30は、車両1が走行する軌道を構成する複数の閉塞区間とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報に基づいて車両1が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間を特定する。走行管理装置30は、その特定した複数の閉塞区間のうち現在車両が存在する閉塞区間より先に位置する予約対象の閉塞区間を決定する。走行管理装置30は、その予約対象の閉塞区間の予約要求をリソース管理装置4へ送信する。
リソース管理装置4は、予約要求が示す予約対象の閉塞区間がその予約要求を受信した時点で予約要求を送信した車両1以外の車両によって予約されているかを判定する。リソース管理装置4は車両1以外の車両によって予約対象の閉塞区間が予約されていない場合、予約要求が示す予約対象の閉塞区間を予約要求を送信した車両1の予約済みの閉塞区間として記録する。
【0028】
図2は本発明の第一の実施形態による車上信号装置、走行管理装置、リソース管理装置の機能ブロック図である。
車上信号装置3は、走行管理装置30の他、自装置内に速度演算部310、走行制御部320の各処理部を有している。
走行管理装置30は、走行経路特定部31、予約要求部32、通過情報通知部33、予約放棄部34、制御部35、通信部36の各処理部と、記憶部37を有している。
【0029】
リソース管理装置4は、予約管理部41、分岐制御部44、制御部45、通信部46の各処理部と、記憶部47を有している。
【0030】
走行管理装置30の走行経路特定部31は、複数の閉塞区間とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報に基づいて車両1が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間を特定する。
予約要求部32は、走行経路特定部31の特定した複数の閉塞区間のうち現在車両1が存在する閉塞区間より先に位置する予約対象の閉塞区間を決定する。予約要求部32は、その予約対象の閉塞区間の予約要求をリソース管理装置4へ送信する。
【0031】
リソース管理装置4の予約管理部41は、予約要求が示す予約対象の閉塞区間がその予約要求を受信した時点で予約要求を送信した車両1以外の車両によって予約されていないを判定する。予約管理部41は車両1以外の車両によって予約されていないと判定した場合、予約要求が示す予約対象の閉塞区間を、予約要求を送信した車両1の予約済みの閉塞区間と記録する。
【0032】
車上信号装置3の速度演算部310は、予約完了情報が示す閉塞区間までの各閉塞区間における制限速度パターンを演算する。
車上信号装置3の走行制御部320は、制限速度パターンや上位装置からの信号に基づいてブレーキ等の停止制御を行う。
【0033】
走行管理装置30の通過情報通知部33は、車両1の通過済みの閉塞区間をリソース管理装置4へ送信する。
走行管理装置30の予約放棄部34は、予約済みの閉塞区間のキャンセル要求を上位装置より取得した場合には、車両1の停止制御を行い、当該車両の停止後に予約済みの閉塞区間のうち進行方向前方の閉塞区間の予約放棄をリソース管理装置4へ送信する。
【0034】
リソース管理装置4の分岐制御部44は、車両の予約済みの閉塞区間の中に分岐を有する閉塞区間が存在する場合には、その車両に走行方向に基づく分岐(転てつ器)の転換制御を行う。
リソース管理装置4において制御部45は装置内の各処理部を制御する。リソース管理装置4の通信部46は車上信号装置3と通信を行う。記憶部47はリソース管理の為の情報を記憶する。
【0035】
図3は車両の走行する軌道を構成する各閉塞区間を示す図である。
車両1の走行する軌道は、A1HT,A2HT,A1WT,A2WT,A3WT,A4WT,1T,2T,3T,4T,5T,6T,7T,8T,9T,10T,B1WT,B2WT,B3WT,B4WT,B1HT,B2HTの識別情報で表される各閉塞区間により構成される軌道であるとする。A1WT,A2WT,A3WT,A4WT,B1WT,B2WT,B3WT,B4WTの8つの閉塞区間は分岐を有している。分岐を有する閉塞区間において転てつ器が定位側の位置に設定されている状態においてその閉塞区間を車両が走行する必要がある場合には、その閉塞区間の識別情報には「−N」を付与して表す。分岐を有する閉塞区間において転てつ器が反位側の位置に設定されている状態においてその閉塞区間を車両が走行する必要がある場合には、その識別情報には「−R」を付与して表す。例えば閉塞区間A1WTについて、転てつ器が定位側に位置するよう制御されている場合の閉塞区間が車両1により利用される必要がある場合には、その閉塞区間の識別情報をA1WT−Nと表す。閉塞区間A1WTについて、転てつ器が反位側に位置するよう制御されている場合の閉塞区間が車両1により利用される必要がある場合には、その閉塞区間の識別情報をA1WT−Rと表す。
【0036】
図4は車両1が走行しうる軌道を構成する各閉塞区間の接続関係を示す図である。
図4で示す接続関係のうちの幾つかを説明すると、閉塞区間A1WT−Nは、閉塞区間A3WT−Nと、閉塞区間A3WT−Rと接続関係を有する。また閉塞区間A3WT−Nは、閉塞区間A1WT−Nと閉塞区間A1WT−Rと接続関係を有する。このように図4では接続関係のある閉塞区間を、直線で結んだ例を示している。
【0037】
図5は走行管理装置の記憶する軌道情報を示す図である。
走行管理装置30の記憶部37は、車両1が走行する軌道を構成する複数の閉塞区間の各識別情報とそれら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報を記憶する。軌道情報の一つは閉塞区間一覧情報である。閉塞区間一覧情報には軌道を構成する複数の閉塞区間の各識別情報(閉塞区間名)が含まれる。軌道情報の他の一つは閉塞区間の接続関係(図4参照)である。閉塞区間の接続関係の情報には接続関係のある2つの閉塞区間の各組み合わせが、車両1の走行する軌道の全ての閉塞区間について保持される。
【0038】
図6は車両の走行経路を示す図である。
図6が示す矢印Yは、車両1が図3と同様の軌道においてA2HT,A2WT−R,A1WT−R,A3WT−N,1T,3T,5T,7T,9T,B1WT−N,B3WT−N,B1HTの各識別情報で示される閉塞区間を、その記載の順に走行することを表している。
【0039】
図7はリソース管理装置が記憶する予約管理テーブルを示す図である。
リソース管理装置4は予約管理テーブル71を作成して記憶部37に登録し、またその予約管理テーブル71の内容を更新する。予約管理テーブル71は図7に示すように、閉塞区間の識別情報、分岐状態、分岐要求状態、予約者識別情報、管理状態の各情報を少なくとも対応付けて保持するデータテーブルである。分岐状態は、分岐を有する閉塞区間について転てつ器が定位側(−N)に設定されているか、反位側(−R)に設定されているかを記憶する情報である。閉塞区間が分岐を有さない場合には分岐状態には「−」の情報が設定される。分岐要求状態は、車両が予約を希望している閉塞区間のうち分岐を有する閉塞区間の転てつ器の設定方向である。この設定方向は車両側が予約要求において指定するものであってよい。予約者識別情報は閉塞区間の予約を行った予約元(車両、指令所、駅など)の識別情報を記憶する情報である。管理状態は閉塞区間の現在の閉塞区間の管理状態(不定、予約中、予約完了、在線、故障)を示す情報である。なお管理状態において「不定」は車両によって予約されていない状況を示す。リソース管理装置4はこの予約管理テーブル71の情報を更新する処理を主に行う。リソース管理装置4は図5で示した閉塞区間の各識別情報と、それら閉塞区間の接続関係とを示す軌道情報のデータを更に記憶部47に記憶している。
【0040】
図8は車両制御システムの処理フローを示す図である。
次に車両制御システムの処理フローについて説明する。
車両制御システム10においてまず運行管理装置2は車両1の走行する軌道に関する軌道情報を、無線通信を介して車両1に搭載された車上信号装置3へ送信する。この軌道情報は指令担当者が、車両1に走行させたい軌道の各閉塞区間を示すものであってよい。車上信号装置3は軌道情報を走行管理装置30へ出力する。走行管理装置30の通信部36は軌道情報を取得する。制御部35は通信部36の取得した軌道情報を記憶部37に登録する(ステップS101)。
【0041】
この状態において走行管理装置30の走行経路特定部31は軌道情報を記憶部37から読み取る。走行経路特定部31は軌道情報に基づいて、車両1が走行する軌道に含まれる複数の閉塞区間を特定する(ステップS102)。軌道情報は既に車両1に走行させると予め決定されている軌道を構成する閉塞区間の識別情報を含む情報であってよい。または軌道情報は車両1が任意に選択できる複数の経路の軌道それぞれを構成する閉塞区間の識別情報を含む情報であってよい。走行経路特定部31は軌道情報に含まれる複数の閉塞区間の識別情報に基づいて特定の始点から特定の終点までを結ぶ複数の経路を任意に選択できる場合には、所定の経路選択アルゴリズム(グラフ理論や経路探索技術など)を利用して特定した経路上の軌道に含まれる閉塞区間を特定してもよい。走行経路特定部31は特定した閉塞区間を予約要求部32へ出力する。予約要求部32は取得した閉塞区間の情報を予約対象の閉塞区間の情報と特定する。予約要求部32は予約対象の閉塞区間の識別情報を含む予約要求を、無線通信を介してリソース管理装置4へ送信する(ステップS103)。予約要求には車両1が現在位置する閉塞区間の情報が含まれていてもよい。予約要求部32は、予約要求に含む閉塞区間に分岐が存在するかどうかを記憶部37に記録されている予約管理テーブルに同期している情報から判定し、分岐が存在する場合には転てつ器が定位側(−N)と反位側(−R)のどちらに設定されるべきかを示す分岐要求状態を予約要求に格納する。
【0042】
リソース管理装置4の予約管理部41は、予約要求を受信する。予約管理部41は予約要求に含まれる閉塞区間の識別情報を読み取る。予約管理部41は、その読み取った閉塞区間のそれぞれについての管理状態の情報を予約管理テーブル71から読み取る。予約管理部41は予約要求に含まれる閉塞区間の中から管理状態が不定となっている閉塞区間を特定する。予約管理部41は予約者識別情報として車両1の識別情報に設定され、かつ管理状態「在線」となっている閉塞区間の識別情報を予約管理テーブル71から特定する。予約管理部41はその特定した閉塞区間の識別情報を、車両1が現在位置する閉塞区間と判定する。予約管理部41は予約要求に含まれる閉塞区間の中から管理状態が不定となっている閉塞区間のうち、車両1が現在位置する閉塞区間から順に連続して管理状態が不定となっている1つまたは複数の閉塞区間を、車両1の予約済み閉塞区間と特定する(ステップS104)。予約管理部41は、車両1の予約済み閉塞区間の識別情報に対応する予約管理テーブル中の予約者識別情報として車両1の識別情報を記録する。予約管理部41は、車両1の予約済み閉塞区間の識別情報に対応する予約管理テーブル中の管理状態として予約完了を記録する。予約管理部41は、予約要求に含まれていた各閉塞区間の識別情報に基づいて、その識別情報に対応付けられて予約管理テーブル71に記録されているテーブル情報(分岐状態、分岐要求状態、予約者識別情報、管理状態)を読み取る。予約管理部41は読み取ったテーブル情報を含む予約完了情報を、車両1の識別情報に基づいて特定した通信先(車両1の搭載している車上信号装置2)へ無線通信を介して送信する(ステップS105)。予約管理部41は予約要求に含まれる閉塞区間のうち車両1が在線する閉塞区間と接続関係にある閉塞区間が「予約中」、「予約完了」、「在線」、「故障」の何れかである場合には、予約不成立を示す情報を車両1の識別情報に基づいて特定した通信先へ送信してよい。
【0043】
車上信号装置3は予約完了情報を受信すると走行管理装置30へその予約完了情報を出力する。走行管理装置30は予約完了情報を記憶部37に記録する。予約完了情報には予約管理テーブル71のテーブル情報(分岐状態、分岐要求状態、予約者識別情報、管理状態)が含まれてよい。このため予約完了情報には、予約管理テーブル71のうち車両1が走行する軌道を含む閉塞区間についての情報を全て含んでいてよい。車上信号装置3の速度演算部310は記憶部37に記録されている予約完了情報に基づいて車両1の予約済み(予約完了)の閉塞区間を取得する。速度演算部310は予約済みの閉塞区間における制限速度パターンを演算する。なお制限速度パターンの演算方法は様々であり、限定するものではない。例えば速度演算部310は軌道脇の地上に設けられたATP装置と通信して各閉塞区間の制限速度を取得して、その制限速度に基づいて各閉塞区間における制限速度パターン(各閉塞区間における速度の制限値)を演算するようにしてもよい。また最も走行方向の前方の予約済みの閉塞区間までの距離に応じて制限速度パターンを演算するようにしてもよい。車上信号装置3の走行制御部320は制限速度パターンに基づいて、制限速度パターンを超えない車両1の速度制御を行う。速度演算部310は、ATP装置から取得した勾配情報を用いて制限速度パターンを演算してもよい。速度演算部310は運行管理装置2から無線通信を介して取得した情報に基づいて制限速度パターンを演算してもよい。
【0044】
図9は制限速度パターンと予約状況を示す図である。
車両1が図3と同様の軌道においてA2HT,A2WT−R,A1WT−R,A3WT−N,1T,3T,5T,7T,9T,B1WT−N,B3WT−N,B1HTを走行するとする。図9はこの走行経路が示す軌道を構成する閉塞区間のうち、A2HT,A2WT−R,A1WT−N,A3WT−N,1T,3T,5T,7Tの各閉塞区間を予約したことを示している。この場合車両1の速度演算部310は図9のPで示す制限速度パターンを演算する。図9の図において縦方向は速度を示す。速度閉塞区間9Tより先の予約ができていないため、図9の制限速度パターンは、閉塞区間7Tの途中において制限速度が0となる例を示している。
【0045】
通過情報通知部33は現在の車両1が走行する閉塞区間を検知する(ステップS106)。例えば通過情報通知部33は、車上信号装置3が地上側のATP装置から閉塞区間の情報を取得してもよいし、GPSから得た現在の車両1の位置に基づいて現在走行している閉塞区間を検知してもよい。通過情報通知部33は現在の車両の走行する閉塞区間の情報に基づいて、通過した閉塞区間の識別情報を特定する処理を繰り返す。通過情報通知部33は新しく通過した閉塞区間の識別情報と車両1の識別情報とを含む通過情報を、リソース管理装置4へ送信する(ステップS107)。リソース管理装置4の予約管理部41は通過情報に含まれる閉塞区間の識別情報を取得する。予約管理部41は通過情報に含まれる閉塞区間の識別情報と車両1の識別情報の組み合わせに対応して予約管理テーブルに記録されている管理状態の情報を不定に書き換える(ステップS108)。予約管理部41は、車両1の識別情報に基づいて、その識別情報に対応付けられて予約管理テーブル71に記録されているテーブル情報(分岐状態、分岐要求状態、予約者識別情報、管理状態)を読み取る。予約管理部41は読み取ったテーブル情報を、車両1の識別情報に基づいて特定した通信先(車両1の搭載している車上信号装置2)へ無線通信を介して送信する。
【0046】
車上信号装置3はテーブル情報を受信すると走行管理装置30へそのテーブル情報を出力する。走行管理装置30はテーブル情報に基づいて記憶部37を更新する。この更新処理を行うことで走行管理装置30は車両1の予約管理テーブルの情報をリソース管理装置4の記憶する情報と同期させるようにしてもよい。
【0047】
リソース管理装置4の分岐制御部44は、記憶部47に記録されている予約管理テーブルの情報に基づいて分岐を有する閉塞区間に設けられた転てつ器の方向を制御するようにしてもよい。分岐制御部44は、予約管理テーブル71の管理状態を新たに予約中へと更新すると判定した閉塞区間のうち、分岐を有する閉塞区間を特定する。分岐制御部44は管理状態を新たに予約中へと更新すると判定した閉塞区間のうち分岐を有する閉塞区間の分岐要求状態と、分岐状態とを比較する。分岐制御部44は、分岐状態が分岐要求状態に一致していない場合には、その分岐状態と分岐要求状態とが一致するように、その閉塞区間の転てつ器の方向の転換指示を転てつ器へ送信する。これにより転てつ器の方向が転換する。分岐制御部44は管理状態を新たに予約中へと更新すると判定した閉塞区間のうち分岐を有する閉塞区間の分岐要求状態と、分岐状態とが一致した後に、その閉塞区間の管理状態を不定から予約中へと更新する。
【0048】
走行管理装置30は、上位装置から予約済みの閉塞区間のキャンセル信号を受信するようにしてもよい。上位装置は運行管理装置2であってもよいし、駅や中央司令室に設置されている非常装置であってもよい。走行管理装置30は上位装置からキャンセル信号を受信する(ステップS201)。走行管理装置30は走行制御部320へ緊急制動の要求を出力する。走行制御部320は非常または通常のブレーキ制御を行い、車両1を停止させる。予約放棄部34は、車両1が位置する閉塞区間の識別情報と、車両1の識別情報とを含む予約放棄情報をリソース管理装置4へ無線通信を介して送信する(ステップS202)。リソース管理装置4の予約管理部41は予約放棄情報に含まれる車両1の識別情報と現在車両1が位置する閉塞区間の識別情報を取得する。予約管理部41は、車両1の識別情報に対応付けられて予約管理テーブル71に記録されている管理状態のうち、現在車両1が位置する閉塞区間の識別情報に対応付けられている管理状態以外の管理状態を、予約中から不定に書き換える(ステップS203)。これによりリソース管理装置4は、車両1の緊急制動に基づく車両1の進行方向前方の閉塞区間の予約放棄の処理をすることができる。
【0049】
以上本発明の第一の実施形態について説明したが、上述の処理によれば、車両制御システム10は、閉塞区間の管理の処理を行うために地上設備としての連動装置とATP装置とを必要とせず、閉塞区間の管理を制御することができる。つまり上述の車両制御システム10では閉塞区間の予約管理において、リソース管理装置4が予約要求を早く行った車両の順番で閉塞区間の予約受付を行う。この時リソース管理装置は軌道間の関連を考えずに独立に軌道毎の予約を管理する。これにより車両制御システム10の保守管理において、リソース管理装置4が複雑な論理処理を行うものではなく、また特殊技能を要する連動装置のロジック設計が必要ないため、安価で容易に車両制御の仕組みを構築することができる。また通常の連動装置では接近鎖錠と呼ばれる鎖錠制御時において車両が特定の閉塞区間から出たことを補償するための時間を確保して、その間、他の車両1に閉塞区間が予約されないよう制御していた。しかし上述の車両制御システム10の処理では車両の位置が判定できるため、そのような車両が特定の閉塞区間から出たことを補償するための時間を確保する処理を行う必要がなく、車両の進路キャンセル(予約放棄)における他の車両による予約確保を迅速に行うことができる。また上述の処理によれば車両制御システム10は、任意の走行経路の線形に対応した閉塞区間の予約制御等の車両運行の管理を行うことができる。
【0050】
<第二の実施形態>
図10は第二の実施形態によるリソース管理装置の設置状態を示す図である。
図11は第二の実施形態による走行管理装置が記憶するリソース管理装置情報を示す図である。
第一の実施形態ではリソース管理装置4が車両制御ステム10において1つ有する場合の例を示した。しかしながらリソース管理装置4は、車両の軌道における所定の範囲毎に複数設置されるようにしてもよい。この場合、走行管理装置30の予約要求部32は、複数のリソース管理装置4のうち、自装置を搭載する車両が現在走行している予約対象の閉塞区間を含む範囲に設置されているリソース管理装置4へ、その予約対象の閉塞区間についての予約要求を送信する。
【0051】
例えば図10で示すように、図3で示した軌道を用いて説明すると、走行管理装置30の予約要求部32は、走行管理装置30を搭載する車両がA1HT,A2HT,A1WT,A2WT,A3WT,A4WTの6つの閉塞区間の何れかに位置する場合、第1のリソース管理装置4#1へ予約要求を送信する。
また予約要求部32は、走行管理装置30を搭載する車両が1T,2T,3T,4T,5T,6T,7T,8T,9T,10Tの10閉塞区間の何れかに位置する場合、第2のリソース管理装置4#2へ予約要求を送信する。
また予約要求部32は、走行管理装置30を搭載する車両がB1WT,B2WT,B3WT,B4WT,B1HT,B2HTの6つの閉塞区間の何れかに位置する場合、第3のリソース管理装置4#3へ予約要求を送信する。
【0052】
予約要求部32は、図11で示すリソース管理装置情報を用いて予約要求の送信先のリソース管理装置4を特定する。リソース管理装置情報は閉塞区間の識別情報と、リソース管理装置の識別情報の関係を対応付けて記憶している。
予約要求部32は予約対象の閉塞区間を含む範囲に設置されているリソース管理装置4が複数ある場合には、それら複数のリソース管理装置4へそれぞれの範囲が受け持つ閉塞区間についての予約要求を送信するようにしてもよい。
【0053】
第二の実施形態の車両制御システム10によれば走行管理装置30は、自装置が搭載されている車両の位置に比較的近い位置に設置されているリソース管理装置と通信して閉塞区間の予約を行うことができるため、閉塞区間の予約の為の処理速度を向上させることができ、この結果、走行管理装置30は、制限速度パターンの演算のタイミングを早くすることができる。またそれぞれのリソース管理装置4は自装置に割り当てられた範囲に位置する閉塞区間の情報のみを管理すればよいため一つずつのリソース管理装置4の処理量を軽減すること、規模縮小を図ることができる。また分岐の近くにリソース管理装置4を設置することが可能となるため、機器室への配置自由度が大きくなり、分岐装置への配線も容易となる。
【0054】
<第三の実施形態>
図12は第三の実施形態による処理概要を示す図である。
リソース管理装置4は、分岐の無い閉塞区間が複数連続する非分岐連続区間に含まれる各閉塞区間を予約管理テーブル71に記憶し、その非分岐連続区間に含まれる各閉塞区間についての予約済み又は未予約の情報の記憶は行わずに、非分岐連続区間を走行する車両の走行順序のみを記憶するようにしてもよい。
【0055】
この場合、予約管理テーブル71は図7の情報に加えて、非分岐連続区間の識別情報を保持する。非分岐連続区間の識別情報に対応づかない閉塞区間は非分岐連続区間には含まれない閉塞区間である。また第三の実施形態の場合には、リソース管理装置4と走行管理装置30は走行順序テーブルを記憶する。走行順序テーブルは、非分岐連続区間の識別情報と、非分岐連続区間に位置する各車両の順序の情報とを記憶する。リソース管理装置4は、走行管理装置30から車両1の位置する閉塞区間の識別情報を定期的(所定時間毎)に取得する(ステップS301)。リソース管理装置4の予約管理部41は、取得した閉塞区間の識別情報と、非分岐連続区間の識別情報とを比較することにより、車両1の位置する閉塞区間が非分岐連続区間であるかどうかを判定する。なお走行管理装置30が自ら自装置を搭載する車両1の位置に基づいて、車両1の位置する閉塞区間が非分岐連続区間であるかどうかを判定するようにしてもよい。
【0056】
予約管理部41は、車両1の位置する閉塞区間が非分岐連続区間であると判定した場合には、車両1の識別情報と、非分岐連続区間の識別情報と、その非分岐連続区間において走行する車両のうちの車両1の走行順序とを、走行順序テーブルに記録する。リソース管理装置4の予約管理部41は、走行順序テーブルの情報を車両1の走行管理装置30へ送信する(ステップS302)。これにより、走行管理装置30が走行順序テーブルの情報を保持してもよい。走行管理装置30は、定期的な確認に基づいて、走行順序テーブルに自装置を搭載する車両の識別情報が記録されていると判定した場合には、非分岐連続区間に進入したことを検知することができる。
【0057】
第三の実施形態の場合、走行管理装置30は、自装置を搭載する車両が非分岐連続区間に進入後は、その車両の直前を走行する直前車両の識別情報を取得する(ステップS303)。具体的には走行管理装置30は、記憶部37に記録されている走行順序テーブルから自装置を搭載する車両の走行する非分岐連続区間と走行順序とを取得する。走行管理装置30は、自装置を搭載する車両の走行順序の1つ前の走行順序の情報と、同じ非分岐連続区間の識別情報との組み合わせに対応づけられて走行順序テーブルに記録されている他の車両の識別情報を取得する。その取得した他の車両の識別情報は、走行管理装置30を搭載する車両の直前を走行する車両の識別情報である。走行管理装置30はその直前を走行する車両の識別情報や通信先情報を、記憶部37から取得して、その直前を走行する車両と通信する。走行管理装置30は直前を走行する車両との通信に基づいて、その直前を走行する車両の位置、速度などを問い合わせる。走行管理装置30は、直前を走行する車両の位置、速度などを取得すると速度演算部310へ出力し制動制御を要求する。速度演算部310は直前を走行する車両の位置、速度などの情報を更に用いて制限速度パターンを演算する。走行管理装置30は車両1の走行する位置が非分岐連続区間を通過した場合にはリソース管理装置4へそのことを通知してもよい。車両1の走行する位置が非分岐連続区間を通過したかどうかをリソース管理装置4が車両1の位置する閉塞区間の情報等から判定するようにしてもよい。
【0058】
第三の実施形態の処理によれば非分岐連続区間に位置する車両同士で通信し、制動制御を行うので、その区間におけるリソース管理装置4の閉塞区間の予約管理が不要となり、リソース管理装置4の処理量を軽減することができる。また非分岐連続区間に位置する車両同士の通信で車両の制動制御ができるので、遠隔のリソース管理装置4に通信する必要がなく、通信にかかる時間を省き、走行する車両の所定区間における車両密度を向上させ、輸送力を向上させることができる。
【0059】
<第四の実施形態>
走行管理装置30の走行経路特定部31は、リソース管理装置4から事前に取得した予約状況の情報を用いて予約対象の閉塞区間を決定するようにしてもよい。具体的には、走行管理装置30の走行経路特定部31は軌道情報から予約されていない(不定)の閉塞区間の識別情報を検出する。走行経路特定部31は、任意に選択できる複数の経路の軌道のうち、予約されていない閉塞区間によって構成される軌道を特定し、その軌道に含まれる各閉塞区間を予約対象と決定する。
【0060】
<第五の実施形態>
走行管理装置30は更に分岐制御部を備え、リソース管理装置4の分岐制御部44の処理と同様の処理を行うようにしてもよい。つまり走行管理装置30の分岐制御部は、車両1の予約済みの閉塞区間の中に分岐を有する閉塞区間が存在する場合には、その車両1の走行方向に基づく分岐の転てつ器の転換指示を、その転てつ器に対して送信するようにしてもよい。
【0061】
<第六の実施形態>
走行管理装置30は自装置が搭載されている車両1以外の他の車両による予約済み閉塞区間の予約時刻に基づいて自装置が搭載されている車両の走行開始タイミングを決定するようにしてもよい。この場合、リソース管理装置4が生成する予約管理テーブル71には、さらに予約時刻が各閉塞区間の識別情報に対応付けられて保持される。走行管理装置30は、現在時刻から所定時間前までの時刻の間に所定の数以上の新たな車両識別情報についての予約中の情報が予約管理テーブル71に登録されたかどうかを判定する。走行管理装置30は、現在時刻から所定時間前までの時刻の間に所定の数以上の新たな車両識別情報についての予約中の情報が予約管理テーブル71に登録された場合には、同時出発した車両が多いと判断する。この場合、走行管理装置30は停止している自車両の走行開始を所定時間遅らせると判断するようにしてもよい。このような走行開始タイミングの制御をおこなうことにより、車両制御システムは、電力の異常な負荷を抑制することができる。
【0062】
<第七の実施形態>
図13は本発明による第七の実施形態による車両制御システムを示す図である。
車両制御システムは図13で示すように、車両1が運行管理装置2と、走行管理装置30を備えた車上信号装置3とをそれぞれ搭載するようにしてもよい。この場合の処理の各装置間の処理の流れは、第一〜第六の実施形態と同様である。
【0063】
<第八の実施形態>
図14は本発明による第八の実施形態による車両制御システムを示す図である。
車両制御システムは図14で示すように、走行管理装置30を車両外に設置するようにしてもよい。この場合は車上信号装置3と走行管理装置30との間の無線通信が必要となるが、運行管理装置2、車上信号装置3、走行管理装置30、リソース管理装置4の間の情報の流れは同様である。第八の実施形態の車両制御システムを構成する各装置構成は、第三実施形態を除く各実施形態に適用するものとする。
【0064】
なお上述の車上信号装置3、走行管理装置30、リソース管理装置4は、内部にコンピュータシステムを有している。上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータがそのプログラムを実行するようにしても良い。
【0065】
上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するプログラムであっても良い。上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、車両制御システム、車両制御方法、走行管理装置、リソース管理装置、プログラムに適用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1・・・車両
2・・・運行管理装置
3・・・車上信号装置
4・・・リソース管理装置
30・・・走行管理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14