(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記空調機の快適性の評価値は、複数の前記空調機のうち前記設定温度の達成を重視する前記空調機については、他の前記空調機に対する優先係数より大きな値を持つ前記優先係数をその空調機に対する所定の評価値に乗じて、前記優先係数を乗じた後の一つの前記空調機に対する前記所定の評価値を複数の前記空調機について合計した値である、 請求項4に記載の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対し、本願の出願人は、電力料金がリアルタイムに変化する条件下で、空調快適さを損なわずに機器の電力料金を抑制する制御方法についての出願(特願2016−173173)を行っている。この出願では、1つの冷媒系統を対象とした制御方法を提案した。しかし、複数の冷媒系統を有する施設全体を対象として、空調快適さと電力料金を最適化する制御方法は、これまでに提供されていない。
【0006】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、
1台の室外機と1台または複数台の室内機を備える空調機を1つの制御単位として、複数の前記空調機を制御する制御装置であって、未来の所定期間における単位時間ごとの電力料金単価の情報を取得する料金情報取得部と、複数の
前記空調機それぞれの運転状態に関する運転状態情報を取得する運転情報取得部と、前記運転状態情報と所定の予測モデルとに基づいて、
前記所定期間における複数の前記
空調機ごとの運転状態を予測する予測部と、前記予測部が予測した運転状態に基づく前記所定期間に
わたる複数の前記
空調機の快適性の評価値と、前記
単位時間ごとの電力料金単価の情報に基づく前記所定期間に
わたる複数の前記
空調機の動作に必要な電力料金の評価値と、前記予測部が予測した運転状態に基づく前記所定期間に
わたる複数の前記
空調機の動作に必要な消費電力量の評価値と、に基づく前記所定期間
にわたる複数の前記
空調機全体の運転に関する評価値を算出する評価部と、前記評価値が最適な値となるように運転するための前記
空調機に対する制御情報を
複数の前記空調機ごとに算出する制御情報算出部と、を備える制御装置である。
【0008】
本発明の第2の態様における前記制御情報は、前記所定期間において前記
空調機を運転するのに必要な電力の
前記単位時間以下の長さを有する時間ごとの上限値である。
【0009】
本発明の第3の態様における前記消費電力量の評価値は、複数の前記
空調機の動作に必要な消費電力量の合計が消費電力量の所定の目標値を上回る場合は、前記消費電力量の合計と前記目標値との差であり、前記消費電力量の合計が前記目標値以下の場合は0である。
【0010】
本発明の第4の態様に
おいて、一つの前記
空調機に対する前記快適性の評価値は、設定された設定温度と前記空調機による空調温度との温度差と、前記空調機が備える室内機の容量と、の積に基づく値である。
【0011】
本発明の第5の態様における複数の前記空調機の快適性の評価値は、複数の前記空調機のうち前記設定温度の達成を重視する前記空調機については、他の前記空調機に対する優先係数より大きな値を持つ前記優先係数をその空調機に対する所定の評価値に乗じて、前記優先係数を乗じた後の一つの前記
空調機に対する前記所定の評価値を複数の前記空調機について合計した値である。
【0012】
本発明の第6の態様は、上記の何れかに記載の制御装置と、前記制御装置が算出する制御情報に基づいて運転する空調機と、を備える空調制御システムである。
【0013】
本発明の第7の態様は、
1台の室外機と1台または複数台の室内機を備える空調機を1つの制御単位として、複数の前記空調機を制御する制御方法であって、未来の所定期間における単位時間ごとの電力料金単価の情報を取得するステップと、複数の
前記空調機それぞれの運転状態に関する運転状態情報を取得するステップと、前記運転状態情報と所定の予測モデルとに基づいて、
前記所定期間における複数の前記
空調機ごとの運転状態を予測するステップと、前記予測するステップで予測した運転状態に基づく前記所定期間に
わたる複数の前記
空調機の快適性の評価値と、前記
単位時間ごとの電力料金単価の情報に基づく前記所定期間に
わたる複数の前記
空調機の動作に必要な電力料金の評価値と、前記予測するステップで予測した運転状態に基づく前記所定期間に
わたる複数の前記
空調機の動作に必要な消費電力量の評価値と、に基づく前記所定期間
にわたる複数の前記
空調機全体の運転に関する評価値を算出するステップと、前記評価値が最適な値となるように運転するための前記
空調機に対する制御情報を
複数の前記空調機ごとに算出するステップと、を有する制御方法である。
【0014】
本発明の第8の態様は、
1台の室外機と1台または複数台の室内機を備える空調機を1つの制御単位として、複数の前記空調機を制御するコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記コンピュータを、
未来の所定期間における単位時間ごとの電力料金単価の情報を取得する手段、複数の
前記空調機それぞれの運転状態に関する運転状態情報を取得する手段、前記運転状態情報と所定の予測モデルとに基づいて、
前記所定期間における複数の前記
空調機ごとの運転状態を予測する手段、前記予測する手段が予測した運転状態に基づく前記所定期間に
わたる複数の前記
空調機の快適性の評価値と、前記
単位時間ごとの電力料金単価の情報に基づく前記所定期間に
わたる複数の前記
空調機の動作に必要な電力料金の評価値と、前記予測する手段が予測した運転状態に基づく前記所定期間に
わたる複数の前記
空調機の動作に必要な消費電力量の評価値と、に基づく前記所定期間
にわたる複数の前記
空調機全体の運転に関する評価値を算出する手段、前記評価値が最適な値となるように運転するための前記
空調機に対する制御情報を
複数の前記空調機ごとに算出する手段、として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、時々刻々と変化する電力料金に対応して、複数の機器全体での経済性と快適性と省電力性を最適化する制御を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態による空調制御システムを
図1〜
図13を参照して説明する。
図1は、本発明の第一実施形態における空調制御システムの一例を示す図である。
空調制御システム100は、ビル4等に備えられた空調機31等を、ユーザの快適性を保ちつつ、低コストで運転するための制御システムである。特に本実施形態の空調制御システム100は、空調機31〜3m等全体での快適さや経済性、消費電力量を所望の状態に制御することを特徴とする。空調制御システム100は、DRASサーバ1と、DRASクライアント2と、ゲートウェイ3と、空調機31、空調機32、・・・、空調機3mと、を含んで構成される。DRASサーバ1は、例えば電力会社が運用するサーバ端末装置である。電力会社は、電力料金単価を例えば10分ごとに変更する。例えば、電力会社は、電力の需要による電力不足が見込まれる場合には、電力料金単価を上昇させて需要家に節電を促し、電力需要が比較的少ないと見込まれる時間には電力料金単価を下げて電力の消費を促す。DRASサーバ1とDRASクライアント2とは通信可能に接続されており、一般に公開されたプロトコル(例えばOpenADR2.0等)に基づく通信を行う。例えば、DRASサーバ1は、未来における所定期間分の電力料金のスケジュール情報を、DRASクライアント2に送信する。
【0018】
DRASクライアント2は、例えば空調機31等の運用を行う企業が運用するサーバ端末装置である。DRASクライアント2は、DRASサーバ1から取得した電力料金のスケジュール情報に基づいて、どのような運転を行えば、ユーザの設定温度を実現しつつ安い電力料金かつ少ない消費電力量で空調機を運転できるかを示す運転制限スケジュール情報を算出する。DRASクライアント2は、インターネット等のネットワークを介して、ゲートウェイ3と通信可能に接続されている。DRASクライアント2は、算出した運転制限スケジュール情報をゲートウェイ3に送信する。
【0019】
ゲートウェイ3は、ビル4に設けられた通信装置である。ビル4には、複数の室内機を有するマルチ型の空調機31,32,・・・,3mが設けられている。空調機31は、室外機301と、室内機311,・・・,31n等を備える。空調機32は、室外機302と、室内機321,・・・,32n等を備える。空調機33,34,3mについても同様である。例えば、室外機301は、圧縮機、熱交換器等を有しており、冷媒を室内機311,31n等へ送出する。室内機311等は、ビル4の部屋に設けられており、その部屋の温度を、ユーザ所望の温度となるように空調を行う。また、本実施形態では、例えば、ブロック1に空調機31、ブロック2に空調機32など各空調機に1つの制御単位であるブロックを割り当て、このブロック単位で室温達成の優先度を変更することができる。例えば、空調機31が空調対象とする部屋の温度を重視する場合、ブロック1の優先度を高く設定することで、例えば、他の空調機32等が対象とする部屋の温度を多少犠牲にしても、空調機31が対象とする部屋の温度をより高い精度で所望の温度に制御する。
【0020】
ゲートウェイ3は、DRASクライアント2から取得した空調機ごとの運転制限スケジュール情報を、対応する空調機31等へ出力する。空調機31等の各々は取得した運転制限スケジュール情報に基づいて、自装置の運転を制御する。
【0021】
図2は、本発明の第一実施形態における制御装置の構成例を示すブロック図である。
図2を用いてDRASクライアント2の構成について説明する。DRASクライアント2は、運転情報取得部21と、料金情報取得部22と、制御情報算出部23と、運転状態予測部24と、評価部25と、通信部26と、記憶部27とを備える。
運転情報取得部21は、空調機31,32,・・・,3m等の運転情報を取得する。運転情報とは、例えば、空調機31の運転による消費電力量、運転時の室内温度、設定温度および室外温度等である。運転情報取得部21は、例えば所定の時間毎に空調機31,32,・・・,3m等の運転情報を取得し、記憶部27に取得した運転情報を記録する。
料金情報取得部22は、DRASサーバ1が送信した電力料金のスケジュール情報を取得する。電力料金のスケジュール情報については、後に
図3を用いて説明する。
【0022】
制御情報算出部23は、所定の最適化手法を用いて、ユーザの快適性を保ちつつ、電力料金や消費電力量を最適化する空調機31等の運転を実現する運転制限スケジュール情報を算出する。所定の最適化手法とは、例えば、焼きなまし法(Simulated Annealing)、遺伝的アルゴリズム、粒子群最適化などの手法である。また、ユーザの快適性を保ちつつ、電力料金や消費電力量を最適化する運転制限スケジュール情報とは、後述する評価部25が出力する評価値が最も小さな値となる場合の運転制限スケジュールのことをいう。本実施形態の場合、運転制限スケジュール情報とは、所定時間ごとの空調機31,32,3mのそれぞれが消費する電力の上限値である。
【0023】
運転状態予測部24は、運転制限スケジュール情報が示す条件下での空調機31,32,3m等の運転状態を予測する。例えば、運転状態予測部24は、運転情報取得部21が取得した空調機31の現在の運転状態に基づいて数分先の空調機31の運転状態を予測する。また、例えば、運転状態予測部24は、現在の運転状態に基づいて予測した数分先の空調機31の運転状態に基づいて、さらに数分先の空調機31の運転状態を予測する。運転状態の予測には、例えば、ニューラルネットワークと呼ばれる機械学習アルゴリズムによる予測モデルを用いる。
【0024】
評価部25は、運転状態予測部24が予測した所定時間先の空調機31等の運転状態を後述する評価関数によって評価する。より具体的には、評価部25は、電力料金評価部251と快適性評価部252と施設全体電力評価部253とを備えており、消費電力、電力料金(コスト)とユーザにとっての快適性の各側面から運転状態予測部24が予測した未来における空調機31等の運転に対する評価を行う。
通信部26は、他装置との通信を行う。例えば、通信部26は、DRASサーバ1とデータ通信を行い、電力料金のスケジュール情報を取得する。あるいは、通信部26は、ゲートウェイ3とデータ通信を行い、運転制限スケジュール情報をゲートウェイ3へ送信する。
記憶部27は、運転制限スケジュール情報の算出に必要な種々のデータを記憶する。例えば、記憶部27は、運転状態予測部24が運転状態の予測に用いる予測モデルを記憶している。この予測モデルは、ある運転制限スケジュール情報を与えた場合の過去の運転状態の実績情報に基づいてニューラルネットワーク等の手法で生成した予測モデルである。この予測モデルは、電力制限スケジュール情報と、実際の消費電力量、室内温度、室外温度を入力すると、所定時間先の未来における室内温度とそれまでに消費される消費電力量の予測値を出力する。本実施形態の場合、予測モデルは、1分ごとの室内温度と消費電力量を5分先まで予測する。
【0025】
次に電力料金のスケジュール情報について説明する。
図3は、本発明の第一実施形態における電力料金スケジュール情報の一例を示す図である。電力料金のスケジュール情報には、所定時間(例えば10分)ごとの電力料金単価が含まれている。
図3の例の場合、本日の14:00〜14:10では1kWhあたりの電力料金が30円、14:10〜14:20では10円、14:20〜14:30では100円となっている。DRASサーバ1は、例えば、時間が10分経過する毎に、30分先までの10分毎の電力料金単価が含まれたスケジュール情報をDRASクライアント2へ送信する。DRASクライアント2では、料金情報取得部22が電力料金単価のスケジュール情報を、通信部26を介して取得し、記憶部27へ記録する。
【0026】
次に運転制限スケジュール情報について説明する。
図4は、本発明の第一実施形態における運転制限スケジュール情報の一例を示す図である。運転制限スケジュール情報には、所定時間(例えば5分)ごとの電力制限値が含まれている。
この電力制限値は、
図3で例示した電力料金単価の場合に、ユーザが設定した室内の設定温度をなるべく達成しつつ、最安の電力料金で空調機31等を運転するための空調機31等が消費する電力の上限値である。
図4の例の場合、単価が30円の時間帯(14:00〜14:10)では、前半が14kW、後半が7kwとなっている。続いて、単価が10円の時間帯(14:10〜14:20)では前半が3kW、後半が7kwとなっている。最後に単価が100円の時間帯(14:20〜14:30)では前半、後半ともに0kwとなっている。
DRASクライアント2では、制御情報算出部23が算出した運転制限スケジュールの条件下での30分後までの空調機31等の運転状態を運転状態予測部24が予測し、評価部25がその30分間の運転による電力料金、快適性、ビル4全体での消費電力量を評価する。そして、制御情報算出部23は、評価部25による評価結果に基づいて、より適切な運転制限スケジュール情報を再設定する。例えば、快適性が良好でも電力料金が高額になる場合や、ビル4全体での消費電力量が大きすぎる場合には、制御情報算出部23は運転制限スケジュールの電力制限値を抑え、より低電力で運転を行う条件を再設定する。また、例えば、電力料金は非常に安くなるが快適性も低い場合、制御情報算出部23は運転制限スケジュールの電力制限値を上昇させ、電力料金が相対的に上昇してもユーザが設定した設定温度を実現することにより、快適性を向上させる条件を再設定する。
図4に例示する電力制限運転のスケジュール情報は、このようにして最適化された所定時間ごとの電力制限値である。
【0027】
次に評価部25が使用する評価関数について説明する。以下の式(1)〜(3)が本実施形態の評価関数の一例である。
【0031】
ここで、式(1)のα
1は電力料金評価に対する重み係数、α
2は快適性評価に対する重み係数、β
bはブロックbの室内温度に対する優先係数、γは施設全体電力評価に対する重み係数、Y
jはj単位時間時の電力単価、W
bjはj単位時間時のブロックbの機器使用電力量[Wh]、T
bSAjはj単位時間時のブロックbの室温偏差、T
bSETjiはj単位時間時のブロックbの室内機iのユーザ設定温度(℃)、T
bROOMjiはj単位時間時のブロックbの室内機iの室内温度(吸込み温度)(℃)、Cap
biはブロックbの室内機iの機器容量[kW]、i(i=1,2・・・Imax)は運転中の室内機の識別番号、j(1,2、・・・Jmax)は単位時間番号である。Total_Capacity
bはブロックbの全室内機の機器容量合計値(kW)、X
alljは単位時間あたりの全ブロックの消費電力量の評価値、W
allは単位時間あたりの全ブロックの合計目標消費電力量[Wh]、bはブロックの識別番号(b=1,2,・・・,B
max)である。
電力料金評価部251は、式(1)右辺の第1項の式により電力料金の評価値を算出する。快適性評価部252は、式(1)右辺の第2項の式と式(2)により快適性の評価値を算出する。施設全体電力評価部253は、式(1)右辺の第3項の式と式(3)により施設全体の電力評価値を算出する。式(1)右辺の第1項はブロック別の単位時間あたりの電力料金をブロック単位で集計し、所定期間にわたって合計する式である。電力料金が高い程、第1項の値は大きくなる。第2項は、単位時間あたりの室内機ごとのユーザによる設定温度と実際の室内温度(空調温度)の温度差の2乗に室内機容量を乗じた値を、さらにブロックbの全室内機の容量の合計で除算した値に対して、ブロック別の優先度係数を乗じ、ブロックb内の全室内機について集計し、集計した値を所定期間にわたって合計する式である。ユーザが設定した設定温度と実際の室内温度の温度差が大きい程(快適性が低い程)、大きな値となる。また、優先度係数が大きい、つまり優先されるブロックでの温度差が大きいほど、大きな値となる。第3項は、全ブロックでの単位時間あたりの消費電力(施設に設けられた各空調機の動作に必要な単位時間あたりの消費電力の合計)と目標値との偏差を2乗したものである。但し、全ブロックでの消費電力と目標値との偏差は、全ブロックでの消費電力が目標値以下の場合は0とする。全ブロックでの消費電力が目標値を上回る程、第3項の値は大きくなる。従って、電力料金が安く、各ブロックでの快適性が高く、各ブロックでの消費電力が目標値以内であれば、式(1)の値は小さな値となる。制御情報算出部23は、評価部25が算出した式(1)による評価値がなるべく小さくなるように電力制限運転のスケジュール情報を調整する。
【0032】
なお、式(1)の右辺第1項のW
jについては、室外機が消費する電力量のみであってもよいし、室外機と全室内機が消費する電力量の合計であってもよい。数式で表すと以下のように表すことができる。
(室外機のみ)
W
j=P
ouj ・・・・(4)
【0035】
ここで、P
oujは、j単位時間に室外機が消費する電力量(Wh)、P
IUjiは、j単位時間に室内機iが消費する電力量(Wh)である。
次に電力制限運転のスケジュール情報の最適化処理について説明する。
【0036】
図5は本発明の第一実施形態における電力制限運転を説明する第一の図である。
図6は本発明の第一実施形態における電力制限運転を説明する第二の図である。
図5、
図6において縦軸は消費電力量(kW)、横軸は時間(分)を示している。
図6の場合、縦軸はさらに電力制限値(kW)を示している。
図5に示すグラフ51は、通常の制御(本実施形態の電力制限値による運転制限を設けない制御)によって空調機31を運転したときの消費電力量の時間推移を示している。
図6に示すグラフ61は、本実施形態の電力制限値による運転制限を設けた制御によって空調機31を運転したときの消費電力量の時間推移を示している。また、グラフ62は、制御情報算出部23が算出した空調機31に対する運転制限スケジュール(電力制限値の時間推移)を示している。
図5、
図6何れの場合も室内機311〜31nにおけるユーザの設定温度は25℃である。また、ほぼ同じ気温条件下で時間0に空調を開始したとする。
【0037】
まず、運転状態予測部24が、運転情報取得部21が取得した最新の空調機31の運転状態情報(電力制限値、実際の電力、室内温度、設定温度、室外温度)と予測モデルによって5分先までの1分毎の空調機31の運転状態を予測する。次に運転状態予測部24が、自らが予測した5分後の空調機31の運転状態情報と予測モデルによってさらに5分先(つまり時間5分から10分)までの1分毎の空調機31の運転状態を予測する。運転状態予測部24は、同様の5分単位の予測を計6回繰り返し、時間0を基準として30分後までの運転状態を模擬する。なお、これら6回の模擬において電力制限値については任意の値を与える。
次に評価部25が式(1)に、運転状態予測部24が模擬した30分間の運転状態情報(T
bsetjiは25℃)を代入し評価値を算出する。なお、α
1、α
2、β
b、Cap
bi、Total_Capacity
b等の定数やブロック別の消費電力の目標値については予め設定され記憶部27に記録されている。また時間毎の電力料金単価Y
jには料金情報取得部22が取得した電力料金スケジュール情報を用いる。
【0038】
次に制御情報算出部23が、評価部25が算出した評価値に基づいて、5分毎の電力制限値の最適化を行う。例えば、開始から5分間(1回目の模擬区間)は目標の設定温度を達成するために高めの電力制限値を設定し、空調機31の運転を促進する。また、4回目の模擬区間(15〜20分)については、次に電力料金単価が100円と高額になる区間なので、高額区間(5〜6回目の模擬区間)での運転を抑制するために予め強めの運転を行って部屋を涼しくしておくなど、電力料金単価の変動と設定温度と室内温度との乖離具合(快適性)とに応じた電力制限値を設定する。
【0039】
しかし、電力制限値は消費電力量の上限を定めるものにすぎないから、制御情報算出部23が高めの電力制限値を設定しても、空調機31がその高めの電力制限値に応じて、電力料金単価が安いうちに運転の強度を増加させて動作するとは限らない。従ってこのような状況のために、制御情報算出部23は、電力料金単価が上昇する時間の前の模擬区間に、空調機31の運転強度を上昇させる制御情報を算出する。具体的には、制御情報算出部23は、空調機31が冷房運転を行っている場合、設定温度25℃よりも低い温度(例えば23℃)を暗に設定し、その温度に到達するように室外機301が備える圧縮機(図示せず)の回転数を上昇させる制御情報を算出する。同様に、暖房運転を行っている場合は、設定温度よりも高い温度を暗に設定し、部屋の温度がその温度に到達するように圧縮機の回転数を上昇させる制御情報を算出する。なお、暗に設定した部屋の目標温度に対応する圧縮機の回転数については予め定められ記憶部27に記録されているとする。このように制御情報算出部23は、状況に応じて、電力制限値と共に圧縮機の回転数の制御情報を含んだ運転制限スケジュール情報を算出する。
【0040】
なお、式(1)からわかるように、制御情報算出部23は、優先係数β
bの値が大きく設定されたブロックの空調温度に対しては、優先的にユーザによる設定温度を実現するように制御情報を算出する。
また、制御情報算出部23は、目標の設定温度を達成すべく5分毎の電力制限値の設定を行うにあたり、ブロックごとの消費電力と目標値との偏差の施設全体での合計がなるべく小さくなるように電力制限値を設定する。例えば、制御情報算出部23は、優先係数β
bの値が大きく設定されたブロックに属する空調機31等への電力制限値は、確実に目標温度が達成できるように十分に大きな値を設定し、他のブロックについては、式(1)の第3項が小さくなるように、電力制限値に小さめの値を設定してもよい。
【0041】
次に運転状態予測部24は、制御情報算出部23が設定した6つの区間に対する新たな運転制限スケジュール情報(時間ごとの電力制限値、または時間ごとの電力制限値および圧縮機の回転数)を用いて、再度、未来の30分間における空調機31の運転状態を模擬する。また、評価部25はその模擬結果を式(1)の評価関数Eによって評価する。また、制御情報算出部23が、焼きなまし法などの最適化手法を用いて評価関数Eを最小にする運転制限スケジュール情報を算出する。仮に5分毎30分間の運転制限スケジュール情報を算出する場合、制御情報算出部23は、計6回分の電力制限値を解とする6次元空間探査を実行することになる。
【0042】
このような運転制限スケジュール情報の最適化を繰り返し、評価関数Eの値を最小にする運転制限スケジュールが決定されると、制御情報算出部23が最適化された運転制限スケジュール情報を、通信部26を介してゲートウェイ3に送信する。ゲートウェイ3は最適化された運転制限スケジュール情報を空調機31に送信し、空調機31は、運転制限スケジュール情報が示す5分毎の電圧制限値を超えないように運転を行う(ときには圧縮機をより高速に回転させる)。このような制御を実際の環境で検証した結果を
図7に示す。
【0043】
図7は、複数の空調機について全体を対象として電力制限運転を行った結果の一例を示す図である。
図7のグラフは、式(1)の係数を、5つのブロックについて、α
1=0.1、α
2=0.9、β
1=0.5、β
2=0、β
3=−0.5、β
4=−0.5、β
5=0.5、γ=10として実際の運転を行ったときの消費電力と達成した温度の結果である。
図7の上図はブロック1〜5各々の消費電力の推移を示し、
図7下図はブロック1〜5が対象とする空間の温度の推移を示す。例えば、P1はブロック1の消費電力、TAA1はブロック1の温度を示す。ブロック2〜5についても同様である。図示するように優先係数β
bに大きな値を設定したブロック1、5については、おおよそ設定温度を達成し、優先係数β
bに小さな値が設定されたブロック3、4については設定温度と実際の温度との間に乖離が見られる。また、消費電力については、比較のために
図8、
図9に示す制御の結果よりも低減することができた。
【0044】
図8は、複数の空調機について各空調機を対象として電力制限運転を行った結果の一例を示す図である。
図8のグラフは、式(1)において、第3項とβ
bを削除し、α
1=0.1、α
2=0.9、B
max=1とした場合の制御結果である。つまり施設全体の電気料金、快適性、消費電力量の最適化を考慮せず、空調機ごとの電気料金および快適性の評価値の合計を最小化する制御を行った結果である。目標温度や電力料金は
図7の場合と同じである。
図7の上図と
図8の上図を比較してわかるように、施設全体の電力料金、快適性、消費電力量を考慮した本実施形態の式(1)による制御を行うことにより、消費電力量を削減することができる。
【0045】
図9は、複数の空調機について電力制限を行うことなく運転を行った結果の一例を示す図である。
図9のグラフは、電力料金や消費電力を抑制する制御を行うことなく、各空間の温度を目標温度へと近づける一般的な制御を行った結果である。
図7と
図9を比べると、本実施形態による制御が、快適性を損なうことなく、施設全体の省電力化に有効であることがわかる。
【0046】
図10は、本発明の第一実施形態における電力制限運転の効果を示す図である。
図10の左図は制御方法別の電気料金の結果、右図は消費電気の結果を示すグラフである。「A」は、
図7の本実施形態の制御による電力料金と消費電力量を設備全体での合計、「B」は、
図8のブロックごとの制御による電力料金と消費電力量を設備全体での合計、「C」は、
図9の一般的な制御による電力料金と消費電力量を設備全体での合計である。
図7〜
図10が示すように、本実施形態によれば、施設全体の消費電力量や電力料金を抑えつつ、各空間の温度を所望の温度に制御することができる。
【0047】
なお、式(1)のα
1、α
2、γの値を調整することで、快適性、電力料金、省電力の何れに重きを置いた運転とするかを任意に調整することが可能である。最も単純に係数α
2を設定する場合は、α
2=1−α
1とすることができる。これにより、経済性と快適性のトレードオフを調整することができる。また、設定温度との乖離度合いを評価値に反映させたい場合、例えば
図11のように、設定温度からの乖離に対するペナルティを設定する。
図11に示すように評価関数の係数α
2は設定温度からの乖離度合いと電力料金単価に応じて変化させることができる。例えば、冷房運転時において多少の冷やし過ぎについては許容する運転を行うためには、同じ3℃の乖離でも−側に3.0℃乖離する場合よりも+側に3.0℃乖離する場合について、より大きな値をα
2に設定することで実現することができる。図中、冷房運転時の電力料金単価が10円の場合の設定例は、このような考えに基づく設定である。つまり、同じ温度乖離していても+側に乖離している(室内温度が設定温度より高い)場合(「+3.0℃」の「10」)、−側に乖離している(室内温度が設定温度より低い)場合(「−3.0℃」の「5」)よりも大きなペナルティ値が設定されている。
【0048】
また、冷房運転時に電力料金単価が高い場合は、多少暑くても許容する設定を行うことが可能である。例えば、同じ+3℃の乖離でも単価が10円の場合(「10」)よりも、単価が100円の場合(「5」)により小さな値を設定することでそのような運転を実現することができる。
【0049】
また、
図11に示すように暖房運転時において、例えば、暖め過ぎに対しても暖め足りない状態に対しても同様のペナルティを課す設定とすることができる。
図11の例では、暖房運転時の設定において同じ温度乖離していれば+側に乖離していても−側に乖離しても同じ大きさの値が設定されている。
また、暖房運転時に電力料金単価が高い場合は、多少寒くても許容する運転を行うことが可能である。例えば、
図11に示すように同じ−3℃の乖離でも単価が10円の場合(「10」)よりも、単価が100円の場合(「5」)により小さな値を設定することでそのような運転を実現することができる。
なお、
図11に例示するデータテーブルを、設定用インタフェースと共にユーザ毎(室内機毎)に用意し、ユーザが自由に設定できるよう構成してもよい。
【0050】
また、係数γの値を大きくすることで、施設全体の消費電力を低減し、省エネルギー化に貢献することができる。
【0051】
図12は、本発明の第一実施形態における電力制限値の探索範囲設定の一例を示す図である。
ところで、経済性と快適性と省電力化を実現する本実施形態の運転制御スケジュール情報は、空調機の運転中に逐次算出しなければならないものである。制御情報算出部23がリアルタイムに変化する電力料金単価に合わせて逐次最適な運転制御スケジュール情報を算出するためには、最適解を見つける時間を短縮する必要がある。
図12に示すデータテーブルは、焼きなまし法によって制御情報算出部23が最適な電力制限値を見つける場合に、その探索範囲や探索単位(解像度)に加える制限を定めたものである。例えば、1行目の設定値によれば、室外機301が容量4HPという比較的小容量の室外機であれば、電力制限値の探索範囲は0kW〜15kW、探索単位は5kW毎に制限することを示している。このように探索範囲テーブルを用いることで、探索時間を少なくでき、無駄な領域探索を行うことなく最適解を導くことができる。なお、探索範囲と探索単位は、計算処理の能力に応じて調整できる。
【0052】
図13は、本発明の第一実施形態における制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図13を用いて運転制限スケジュール情報の生成処理の流れについて説明する。記憶部27には、式(1)に用いられる定数(α
1,α
2,β
b,γ等)が記録されている。
まず、料金情報取得部22が、DRASサーバ1が生成した電力料金単価スケジュール情報を取得し(ステップS11)、記憶部27に記録する。電力料金スケジュール情報には、例えば、30分先までの10分毎の電力料金単価が含まれている。
次に運転情報取得部21が、複数の空調機31、32、・・・、3mの運転状態情報を取得する(ステップS12)。運転状態情報には、空調機31等単位での単位時間毎の消費電力量、外気温度、室内機単位での室内温度、ユーザによる設定温度等の情報が含まれている。運転情報取得部21は、取得した運転状態情報を記憶部27に記録する。
【0053】
次に制御情報算出部23が、各空調機31〜3mについて、未来の所定期間(例えば30分間)における所定時間ごと(例えば5分毎)の運転制限スケジュール情報を算出する(ステップS13)。例えば、制御情報算出部23は、初回では任意の初期値を30分間にわたる5分毎の電力制限値として設定しても良い。あるいは、運転条件に応じた運転制限スケジュール情報の初期設定が予め記憶部27に記録されていて、制御情報算出部23は、電力料金スケジュール情報や外気温度、各室内機の室内温度等に応じてこれらの運転条件に適した電力料金スケジュール情報の初期設定の情報を記憶部27から読み出し、読み出した初期設定の情報を、30分間にわたる5分毎の電力制限値として設定しても良い。
【0054】
次に運転状態予測部24が、各空調機31〜3mについて、未来の所定期間における所定時間ごとの運転状態を予測する(ステップS14)。より具体的には、運転状態予測部24は、ステップS12で取得した運転状態情報と、ステップS13で設定した運転制限スケジュール情報とを予測モデルに入力し、未来の5分間における1分毎の空調機単位の消費電力量と、室内機単位の室内温度を予測する。次に運転状態予測部24は、ステップS12で取得した運転状態情報とステップS13で設定した運転制限スケジュール情報とのうち、実際の消費電力量と室内温度とを、予測モデルによって予測した5分後の予測値で置き換えた情報を、予測モデルに入力し、さらに5分先(開始時間から5分後〜10分後までの5分間)までの1分毎の空調機単位の消費電力量と、室内機単位の室内温度を予測する。以下、同様にして5分毎の予測を計6回繰り返し、30分間分の消費電力量と、室内温度の予測を行う。
【0055】
次に評価部25が、運転状態予測部24によって予測された運転状態に対する評価値を算出する(ステップS15)。具体的には、ステップS14の予測により、1分毎の消費電力量、室内機毎の室内温度の予測値が算出されているので、評価部25は、式(1)を用いて施設全体の評価値を算出する。このとき、評価部25(快適性評価部252)は、電力料金単価と許容できる温度偏差および偏差の方向(温度が目標とする設定温度と比べて高いか低いか)とに応じて重み係数α
2を変更して快適性に関する評価値を算出しても良い(
図11参照)。なお、α
1、α
2、β
b、γ、Cap
bi、Total_Capacity
b、
図11で例示したα
2に関するデータテーブル等については予め記憶部27に記録されている。評価部25は、算出した評価値を制御情報算出部23へ出力する。
【0056】
次に制御情報算出部23が、評価値が最小値に収束したかどうかを判定する(ステップS16)。評価値の収束判断は、例えば、評価値の繰り返し計算が規定回数に到達することや規定閾値と比較することで実施される。最小値に収束した場合(ステップS16;Yes)、制御情報算出部23は、評価値を最小にする場合の空調機31等毎の運転制限スケジュール情報を、ゲートウェイ3へ出力する(ステップS17)。ゲートウェイ3は、運転制限スケジュール情報を対応する空調機31〜3mへ出力し、各空調機31〜3mは、運転制限スケジュール情報に従って、次の30分の間、運転を行う。これにより、ユーザ所望の設定温度をできるだけ達成し快適性を維持しつつ、空調機の運転に必要な電力料金を低減することができる。また、施設全体の消費電力を抑えることができる。
【0057】
最小値に収束していない場合(ステップS16;No)、評価値が収束するまで、ステップS13からの処理を繰り返す。具体的には、制御情報算出部23が焼きなまし法などの最適化手法を用いて、式(1)による評価値を最小化する新たな運転制限スケジュール情報を算出する(ステップS13)。このとき、計算時間の短縮のために例えば、
図12で例示した探索範囲、探索単位を限定するデータテーブルを参照して、電力制限値を算出してもよい。また、必要に応じて圧縮機の回転数を上昇させる制御情報を運転制限スケジュール情報に含めても良い。
【0058】
本実施形態によれば、電力料金単価が変動する環境下でも、ユーザの快適性を満たしつつ、施設全体での電力料金および消費電力量を抑えた空調機の運転が可能になる。また、α
1、α
2、γの値の設定により、電力料金、快適性、消費電力量の重要度を任意に設定することができる。
なお、上記例では、運転制限スケジュール情報の算出を行う機能を、DRASクライアント2に実装する場合を例に説明を行ったが、これに限定されない。例えば、これらの機能をゲートウェイ3に実装してもよい。
なお、運転状態予測部24は、ある時刻において運転情報取得部21が取得した運転状態情報と、例えば5分後に運転情報取得部21が取得した運転状態情報と、その間設定されていた運転制限スケジュール情報とを取得して、ニューラルネットワーク等の機械学習手法を用いて、記憶部27に記録された予測モデルを継続的に更新するように構成されていてもよい。
【0059】
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態による空調制御システムを、
図14を参照して説明する。
第二実施形態では、快適性の評価について、さらに湿度、天気情報、人感センサ情報等を利用する。
図14は、本発明の第二実施形態における制御装置の構成例を示すブロック図である。
本発明の第二実施形態に係る構成のうち、本発明の第一実施形態に係るDRASクライアント2を構成する機能部と同じものには同じ符号を付し、それらの説明を省略する。第二実施形態に係るDRASクライアント2aは、第一実施形態の構成に加えて、センサ情報取得部28、天気情報取得部29を備えている。また、DRASクライアント2aは、評価部25および快適性評価部252に代えて評価部25aおよび快適性評価部252aを備えている。
【0060】
センサ情報取得部28は、各室内機が備えられた部屋に設けられた人感センサ又は画像センサ(カメラ)、湿度センサの計測した計測値を取得する。
天気情報取得部29は、気象データを保存した気象データサーバ端末装置(図示せず)から気象データを取得する。気象データには、日々の最高気温と最低気温の予報値が含まれる。
【0061】
快適性評価部252aは、第一実施形態の評価項目に加え、外温偏差係数、湿度係数、密集度係数などを考慮した評価式によって快適性の評価を行う。
評価部25aは、電力料金評価部251が算出した評価値と、快適性評価部252aが算出した評価値と、施設全体電力評価部253が算出した評価値とを合計して評価関数Eの値を算出する。
【0062】
次に快適性評価部252aによる快適性の算出方法を説明する。
第二実施形態の快適性評価部252aによる快適性評価値は以下の数式で算出することができる。
(冷房時)
【0066】
なお、外温偏差係数は、以下で定義する。
(冷房時)
外温偏差係数
b = δ1 × (最高気温 − 室内温度) ・・・・(8)
(暖房時)
外温偏差係数
b = δ1 × (室内温度 − 最低気温) ・・・・(9)
ここで、δ1は任意の定数である。また、最高気温と最低気温は、それぞれ、天気情報取得部29が取得した日々の最高気温の予報値と最低気温の予報値である。但し、冷房運転時に(最高気温−室内温度)が負の値となる場合、快適性評価部252aはδ1=0を設定する。同様に暖房運転時に(室内温度−最低気温)が負の値となる場合、快適性評価部252aはδ1=0を設定する。また、室内温度とは、例えば最新の室内温度である。
【0067】
また、湿度係数は、以下で定義する。
湿度係数
b = δ2 × {100÷(100−湿度)}・・・(10)
ここで、δ2は任意の定数である。また、湿度はセンサ情報取得部28が取得した各部屋の湿度の計測値である。
【0068】
また、密集係数は、以下で定義する。
密集係数
b = δ3 × 密集度 ・・・(11)
ここで、δ3は任意の定数である。また、密集度はセンサ情報取得部28が取得した人感センサ又は画像センサが検出した各部屋に存在する人の数に応じた値である。例えば、式(11)の密集度は、ブロックbに割り当てられた空調機の室内機が設けられた各部屋の密集度の平均値であってもよい。例えば、記憶部27には部屋ごとの人感センサ等の検出値と密集度とが対応付けられたデータテーブルが記録されており、快適性評価部252aは、人感センサの検出値とこのデータテーブルに基づいて密集度を算出する。
【0069】
本実施形態によれば、湿度、最高・最低気温、人の密集度などを考慮したさらに精緻な快適性の指標に従って空調制御を行うことができる。
【0070】
なお、上述したDRASクライアント2、2aにおける各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをDRASクライアント2、2aのコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0071】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本実施形態では空調機の制御を例に説明を行ったが、他の機器(冷蔵庫、ヒートポンプ等)に適用することも可能である。なお、DRASクライアント2、2aは制御装置の一例である。