特許第6596759号(P6596759)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6596759-ガスタービンシステムおよび制御方法 図000013
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596759
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】ガスタービンシステムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 9/28 20060101AFI20191021BHJP
   F23R 3/26 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   F02C9/28 C
   F23R3/26 Z
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-62587(P2018-62587)
(22)【出願日】2018年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-184951(P2018-184951A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2018年3月28日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0052386
(32)【優先日】2017年4月24日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507002918
【氏名又は名称】ドゥサン ヘヴィー インダストリーズ アンド コンストラクション カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ビュン ヒー
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−323165(JP,A)
【文献】 特開2016−037883(JP,A)
【文献】 特開昭63−134825(JP,A)
【文献】 特開2015−148168(JP,A)
【文献】 特開2015−098788(JP,A)
【文献】 特開2012−041919(JP,A)
【文献】 特開2003−172154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 9/28
F23R 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から空気を吸入し、圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、前記圧縮空気および燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスによって回転するロータを含むタービンと、前記ロータの回転によって駆動される発電機とを含み、前記圧縮機と前記タービンとは同軸に接続されており、前記ロータの回転数は系統周波数に比例するガスタービンシステムの制御装置であって、
前記タービンのロータの回転数を測定するセンシング部と、
前記センシング部で測定した前記タービンのロータの回転数に基づいて、前記圧縮機で生成されて前記燃焼器へ供給される圧縮空気量の変化割合Mを推定する圧縮空気量推定部と、
前記圧縮空気量推定部で推定した前記圧縮空気量の変化割合Mに基づいて、前記燃焼器へ供給する燃料量を制御する燃料量制御部とを含み、
前記圧縮空気量推定部は、
前記圧縮空気量の変化割合M
【数8】
(Nは前記センシング部で測定した前記タービンのロータの回転数、Nは系統周波数が定格周波数であるときの前記タービンのロータの回転数)によって推定し、
前記燃料量制御部は、
前記燃焼器へ供給する燃料量F
【数9】
の式によって決定し、
前記Fは、系統周波数が定格周波数であるときに前記燃焼器へ供給されていた燃料の量を示す、ガスタービン制御装置。
【請求項2】
前記センシング部は、
前記圧縮機の入口温度および/または前記圧縮機へ空気を誘導するガイドベーン(Inlet Guide Vane)の位置をさらに測定し、
前記圧縮空気量推定部は、
前記圧縮空気量の変化割合Mを前記圧縮機の入口温度および/または前記ガイドベーンの位置に応じて補正する、請求項に記載のガスタービン制御装置。
【請求項3】
前記センシング部は、
前記圧縮機で生成されて前記燃焼器へ供給される圧縮空気量をさらに測定し、
前記圧縮空気量推定部は、
測定された前記圧縮空気量に基づいて、前記圧縮空気量の変化割合Mを検証し補正する、請求項に記載のガスタービン制御装置。
【請求項4】
前記圧縮空気量推定部は、
前記圧縮機の入口温度、前記ガイドベーンの位置、および前記タービンのロータの回転数のうちの少なくとも一つをパラメータにして測定された前記圧縮空気量をデータベースに格納し、前記データベースに格納されたデータに基づいて、前記圧縮空気量の変化割合Mを検証し補正する、請求項に記載のガスタービン制御装置。
【請求項5】
発電のためのガスタービンシステムであって、
外部から空気を吸入し圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、
圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、
前記燃焼器に発生する燃焼ガスによって回転するロータを含むタービンと、
前記ロータの回転によって駆動される発電機と、
前記燃焼器へ供給される燃料量を制御する請求項1〜のいずれか一項に記載のガスタービン制御装置とを含む、ガスタービンシステム。
【請求項6】
外部から空気を吸入し、圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、前記圧縮空気および燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスによって回転するロータを含むタービンと、前記ロータの回転によって駆動される発電機とを含み、前記圧縮機と前記タービンとは同軸に接続されており、前記ロータの回転数は系統周波数に比例するガスタービンシステムのガスタービン制御方法であって、
前記タービンのロータの回転数を測定する段階と、
前記タービンのロータの回転数の変化による、前記燃焼器へ供給される圧縮空気量の変化割合Mを推定する段階と、
前記圧縮空気量の変化割合Mに応じて、前記燃焼器へ供給する燃料供給量を制御する段階とを含んでなり、
前記タービンのロータの回転数の変化による、前記燃焼器へ供給される前記圧縮空気量の変化割合を推定する段階は、
前記圧縮空気量の変化割合M
【数10】
(Nは測定した前記タービンのロータの回転数、Nは系統周波数が定格周波数であるときの前記タービンのロータの回転数)によって推定する段階を含み、
前記圧縮空気量の変化割合Mに応じて、前記燃焼器へ供給する前記燃料供給量を制御する段階は、前記燃焼器へ供給する燃料量F
【数11】
の式によって決定し、
前記Fは、系統周波数が定格周波数であるときに前記燃焼器へ供給されていた燃料の量を示す、
ガスタービン制御方法。
【請求項7】
前記圧縮機の入口温度および/または前記圧縮機へ空気を誘導するガイドベーン(Inlet Guide Vane)の位置を測定する段階をさらに含み、
前記タービンのロータの回転数の変化による、前記燃焼器へ供給される前記圧縮空気量の変化割合を推定する段階は、
前記圧縮空気量の変化割合Mを前記圧縮機の入口温度および/または前記ガイドベーンの位置に応じて補正する段階をさらに含む、請求項に記載のガスタービン制御方法。
【請求項8】
前記圧縮機で生成されて前記燃焼器へ供給される圧縮空気量を測定する段階をさらに含み、
前記タービンのロータの回転数の変化による、前記燃焼器へ供給される前記圧縮空気量の変化割合を推定する段階は、
測定された前記圧縮空気量に基づいて、前記圧縮空気量の変化割合Mを検証し補正する段階をさらに含む、請求項に記載のガスタービン制御方法。
【請求項9】
前記測定された前記圧縮空気量に基づいて前記圧縮空気量の変化割合Mを検証し補正する段階は、
前記圧縮機の入口温度、前記ガイドベーンの位置、および前記タービンのロータの回転数のうちの少なくとも一つをパラメータにして測定された前記圧縮空気量をデータベースに格納し、前記データベースに格納されたデータに基づいて前記圧縮空気量の変化割合Mを検証し補正する段階を含む、請求項に記載のガスタービン制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンシステムおよびその制御方法に係り、より詳細には、系統周波数の瞬間的な変化に対応して予め燃焼器へ供給される圧縮空気量を推測し、それに応じて燃料量を制限することにより安定した温度制御が可能なガスタービンシステムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスタービンや蒸気タービンなどのタービン(turbine)付き機関または装置は、気体または流体の熱エネルギーを機械的エネルギーの回転力に変換する動力発生装置であって、気体または流体によって軸回転するロータ(rotor)と、前記ロータを支持し、包み込むステータ(stator)とを含んでいる。
【0003】
電気を生産するために発電所などで使用されるガスタービンの構成を簡単に考察すると、空気を圧縮して高圧の空気を燃焼器へ供給する圧縮機と、燃焼ガスを生成するための燃焼器と、燃焼器から吐出される燃焼ガスによって駆動するタービンとを含むことができる。
【0004】
ガスタービンの圧縮機は、一般に、タービンの軸と一体に結合されてタービンと共に軸回転をし、このように軸回転をしながら、外部から吸入した空気を圧縮する。圧縮された空気は燃焼器へ供給され、燃焼器では、圧縮された空気に燃料を供給して燃焼させることにより高温、高圧の燃焼ガスを生成し、これをタービンへ供給する。
【0005】
タービンへ供給された高温、高圧の燃焼ガスは、タービンの回転翼を駆動させてタービンのロータを回転させる。
【0006】
一般に、タービンロータの回転は系統周波数と連係されており、系統周波数の変化に応じてロータの回転数も変化する。このようなシステムで系統周波数が大きく低下した場合、ロータの回転数も減少して、同軸に接続された圧縮機での圧縮空気の生成も減少する。
【0007】
このように圧縮空気の生成が減少すれば、燃焼器へ供給される圧縮空気量が減少し、燃焼器は、より少ない量の圧縮空気を用いて燃焼をしなければならないため、タービン入口温度が瞬間的に増加し得る。一般に、最大許容可能なタービン入口温度で動作しているガスタービンシステムにおいて、このようなタービン入口温度の増加は、タービンおよび/または燃焼器の構成品に悪影響を及ぼすおそれがあるため、問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、系統周波数の瞬間的な変化による圧縮空気量の変化に先制的に対応して燃料量を制御するガスタービンシステムおよびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明に係るガスタービン制御装置は、外部から空気を吸入し、圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、前記圧縮空気および燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスによって回転するロータを含むタービンと、前記ロータの回転によって駆動される発電機とを含み、前記圧縮機と前記タービンとは同軸に接続されており、前記ロータの回転数は系統周波数に比例するガスタービンシステムの制御装置であって、前記タービンのロータの回転数を測定するセンシング部と、前記センシング部で測定した前記タービンのロータの回転数に基づいて、前記圧縮機で生成されて前記燃焼器へ供給される圧縮空気量の変化割合Mを推定する圧縮空気量推定部と、前記圧縮空気量推定部で推定した圧縮空気量の変化割合Mに基づいて、前記燃焼器へ供給する燃料量Fを制御する燃料量制御部とを含むことができる。
【0010】
さらに詳細には、前記圧縮空気量推定部は、前記圧縮空気量の変化割合M
【数1】
(Nは前記センシング部で測定した前記タービンのロータの回転数、Nは系統周波数が定格周波数であるときの前記タービンのロータの回転数)によって推定することができる。
【0011】
また、前記センシング部は、前記圧縮機の入口温度および/または前記圧縮機へ空気を誘導するガイドベーン(Inlet Guide Vane)の位置をさらに測定し、前記圧縮空気量推定部は、前記圧縮空気量の変化割合Mを前記圧縮機の入口温度および/または前記ガイドベーンの位置に応じて補正することができ、これに加えて、前記センシング部は、前記圧縮機で生成されて前記燃焼器へ供給される圧縮空気量をさらに測定し、圧縮空気量推定部は、測定された前記圧縮空気量に基づいて、前記圧縮空気量の変化割合Mを検証し補正することができる。
【0012】
また、圧縮空気量推定部は、前記圧縮機の入口温度、前記ガイドベーンの位置、および前記タービンのロータの回転数のうちの少なくとも一つをパラメータにして測定された前記圧縮空気量をデータベースに格納し、前記データベースに格納されたデータに基づいて、前記圧縮空気量の変化割合Mを検証し補正することができる。
【0013】
また、前記燃料量制御部は、前記燃焼器へ供給する燃料量F
【数2】
の式によって決定するが、前記Fは、系統周波数が定格周波数であるときに燃焼器へ供給されていた燃料の量を示すことができる。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明に係るガスタービンシステムは、発電のためのガスタービンシステムであって、外部から空気を吸入し、圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、圧縮空気と燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスによって回転するロータを含むタービンと、前記ロータの回転によって駆動される発電機と、前記燃焼器へ供給される燃料量を制御する請求項1〜6のいずれか一項に記載の制御装置とを含むことができる。
【0015】
上記の目的を達成するための本発明に係るガスタービン制御方法は、外部から空気を吸入し、圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、前記圧縮空気および燃料を燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に発生する燃焼ガスによって回転するロータを含むタービンと、前記ロータの回転によって駆動される発電機とを含み、前記圧縮機と前記タービンとは同軸に接続されており、前記ロータの回転数は系統周波数に比例するガスタービンシステムのガスタービン制御方法であって、前記タービンのロータの回転数を測定する段階と、前記タービンのロータの回転数の変化による、前記燃焼器へ供給される圧縮空気量の変化割合Mを推定する段階と、前記圧縮空気量の変化割合Mに応じて、前記燃焼器へ供給する燃料供給量を制御する段階とを含むことができる。
【0016】
さらに詳細には、前記タービンのロータの回転数の変化による、前記燃焼器に供給される圧縮空気量の変化割合を推定する段階は、前記圧縮空気量の変化割合M
【数3】
(Nは前記センシング部で測定した前記タービンのロータの回転数、Nは系統周波数が定格周波数であるときの前記タービンのロータの回転数)によって推定する段階を含むことができる。
【0017】
また、前記ガスタービン制御方法は、前記圧縮機の入口温度および/または前記圧縮機へ空気を誘導するガイドベーン(Inlet Guide Vane)の位置を測定する段階をさらに含み、前記タービンのロータの回転数の変化による、前記燃焼器へ供給される圧縮空気量の変化割合を推定する段階は、前記圧縮空気量の変化割合Mを前記圧縮機の入口温度および/または前記ガイドベーンの位置に応じて補正する段階をさらに含むことができる。
【0018】
これに加えて、前記ガスタービン制御方法は、前記圧縮機で生成されて前記燃焼器へ供給される圧縮空気量を測定する段階をさらに含み、前記タービンのロータの回転数の変化による、前記燃焼器へ供給される圧縮空気量の変化割合を推定する段階は、測定された前記圧縮空気量に基づいて、前記圧縮空気量の変化割合Mを検証し補正する段階をさらに含むことができる。
【0019】
また、前記測定された前記圧縮空気量に基づいて前記圧縮空気量の変化割合Mを検証し補正する段階は、前記圧縮機の入口温度、前記ガイドベーンの位置、および前記タービンのロータの回転数のうちの少なくとも一つをパラメータにして測定された前記圧縮空気量をデータベースに格納し、前記データベースに格納されたデータに基づいて前記圧縮空気量の変化割合Mを検証し補正する段階を含むことができ、前記圧縮空気量の変化割合Mに応じて、前記燃焼器へ供給する燃料供給量を制御する段階は、前記燃焼器へ供給する燃料量F
【数4】
の式によって決定する段階を含み、前記Fは、系統周波数が定格周波数であるときに燃焼器へ供給されていた燃料の量を示すことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、系統周波数と連動したタービンの回転数の変動による圧縮空気量の変動に先制的に対応して燃料量を制御することにより、最大許容可能な温度以上にタービン入口温度が上がらないようにしてタービンおよび/または燃焼器に悪影響を及ぼさないようにするという効果がある。
【0021】
また、本発明によれば、系統周波数と連動したタービンの回転数の変動による圧縮空気量の変動に先制的に対応して燃料量を制御することにより、ガスタービンシステムの効率低下を防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るガスタービンシステムを示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る制御装置100を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る制御装置100の燃焼器へ供給する燃料量の制御方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付する。
【0024】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「接続」されているとするとき、これは「直接接続」されている場合だけでなく、それらの間に他の素子を介在して「電気的に接続」されてある場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0025】
ある部分が他の部分の「上に」あるとするとき、これは他の部分の真上にある場合も、それらの間に別の部分が介在する場合も含む。対照的に、ある部分が他の部分の「真上に」あるとするときは、それらの間に別の部分が介在しない。
【0026】
「第1」、「第2」および「第3」などの用語は、様々な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別する目的のみで使用される。よって、以下で述べる第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲から外れない範疇内において、第2部分、成分、領域、層またはセクションとして言及されてもよい。
【0027】
ここで使用される専門用語は、特定の実施形態を言及するためのものに過ぎず、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形は、これと明らかに反対の意味を示さない限り、複数形も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在または付加を除外させるものではない。
【0028】
「下」、「上」などの相対的な空間を示す用語は、図面に示されたある部分と他の部分との関係をより容易に説明するために使用できる。これらの用語は、図面で意図した意味と共に、使用中の装置の他の意味や動作を含むように意図される。例えば、図面中の装置をひっくり返すと、他の部分の「下」にあると説明されたある部分は他の部分の「上」にあると説明される。したがって、「下」という例示的な用語は、上方向と下方向をすべて含む。装置は90°回転または他の角度で回転することができ、相対的な空間を示す用語もこれに基づいて解釈される。
【0029】
特に定義していないが、ここで使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同じ意味を持つ。一般的に使われる辞典に定義されている用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を持つものと追加解釈され、定義されない限り、 理想的または非常に公式的な意味で解釈されない。
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施し得るように詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0031】
図1は本発明の一実施形態に係るガスタービンシステムを示す図である。
【0032】
図1を参照すると、ガスタービンシステムは、圧縮機10、燃焼器30、タービン20、発電機50、および制御装置100を含むことができる。
【0033】
圧縮機10は、外部から吸入した空気を圧縮して高圧の圧縮空気を生成する機能を実行することができる。圧縮空気は燃焼器30へ伝達できる。
【0034】
燃焼器30は、圧縮機10から入ってくる圧縮空気に燃料を注入して燃焼させ、高圧、高温の燃焼ガスを生成してタービン20へ提供することができる。タービン20へ供給された高温、高圧の燃焼ガスは、タービンの回転翼を駆動させてタービン20のロータを回転させる。タービン20へ供給された高温、高圧の燃焼ガスは、タービンの回転翼を駆動させながら温度と圧力が低くなり、排出ガスとして大気中へ放出される。
【0035】
発電機50は、タービン20のロータの回転を用いて電力を生産することができる。
【0036】
タービン20と圧縮機10は、一つの軸40に一緒に固定されており、上述したようにタービン20のロータが回転しながら圧縮機10も共に回転し、これを用いて空気を圧縮する。
【0037】
ガスタービンシステムの場合、タービン20のロータの回転速度を調節する方式には、ロード制限(Load Limit)方式とガバナフリー(Governor Free)方式がある。ロード制限方式は、タービン20のロータの回転速度を一定に固定しておく方式をいい、ガバナフリー方式は、電力系統の周波数の変化に応じてタービン20のロータの回転速度を自動的に制御する方式をいう。一般に、電力系統全体の安定運用のためには、系統周波数が定格周波数(韓国の場合には60Hz)に保持される必要がある。このため、ガスタービンシステムの運用者は、設備の保護次元でガスタービンシステムの急激な動揺を防止することができるロード制限方式を好むが、電力系統全体の安定運用を管掌する韓国電力取引所の「電力市場運営規則」に「発電会員はガバナフリー運転で系統周波数の維持に積極的に協力しなければならない。」という義務条項が挿入されており、ガスタービンシステムはガバナフリー方式で運転するのが一般的である。
【0038】
ガバナフリー方式で運用されると、系統周波数と比例する回転速度でタービン20のロータが回転する。タービン20と圧縮機10とは一つの軸40で連動しているので、圧縮機10はタービン20のロータの回転数に比例して圧縮空気を生成する。
【0039】
このような環境で負荷量よりも発電量が少なくて系統周波数が下がる場合には、これに比例してロータの回転数が小さくなり、その結果、圧縮機10で生成する圧縮空気量も比例して減少する。すると、燃焼器30へ供給される圧縮空気量も減少するようになり、燃焼器30に混入される燃料量を制御しなければ、圧縮空気量が減ることによりタービン入口温度が上昇する可能性がある。
【0040】
逆に系統周波数が上がる場合には、これに比例してロータの回転数が大きくなり、その結果、圧縮機10で生成する圧縮空気量が比例して増える。すると、燃焼器30へ供給される圧縮空気量も増えるようになり、燃焼器30に混入される燃料量を制御しなければ、圧縮空気量が減ることによりタービン入口温度が下降する可能性があり、タービン入口温度の下降はガスタービンシステムの効率を低下させる結果につながる。
【0041】
これを防止するために、本発明で提示するガスタービンシステムの制御装置100は、前記燃焼器から供給される圧縮空気量を推定し、これに基づいて、前記燃焼器へ供給する燃料の量を制御することができる。
【0042】
図2は本発明の一実施形態に係る制御装置100を示すブロック図である。
【0043】
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る制御装置100は、センシング部110、圧縮空気量推定部120および燃料量制御部130を含むことができる。
【0044】
センシング部110は、タービン20のロータの回転数を測定することができる。これに加えて、燃焼器30へ供給される圧縮空気量、圧縮機10の入口温度、圧縮機10へ空気を誘導するガイドベーン(Inlet Guide Vane)の位置を測定することができる。
【0045】
圧縮空気量推定部120は、センシング部110で取得したタービン20のロータの回転数に基づいて、燃焼器30へ供給される圧縮空気量を推定する。さらに詳細には、圧縮空気量推定部120は、系統周波数が定格周波数(60Hz)である場合のタービン20のロータの回転数Nと燃焼器30へ供給される圧縮空気量Mを測定して格納することができる。このとき、燃焼器30へ供給される圧縮空気量は、圧縮機10の入口温度とガイドベーンの位置に応じて変わることができる。
【0046】
系統周波数の変化によってタービン20のロータの回転数がNに変化する場合には、これにより、燃焼器30へ供給される圧縮空気量を下記数式1の如く推定することができる。
[数式1]
【数5】
【0047】
数式1によれば、ロータの回転数が減ると、燃焼器30へ供給される圧縮空気量Mも減り、ロータの回転数が増えると、燃焼器30へ供給される圧縮空気量Mも増えるものと推定することができる。
【0048】
これによって減ったり増えたりする圧縮空気量の変化割合Mは、下記数式2によって求めることができる。
[数式2]
【数6】
【0049】
圧縮空気量の変化割合Mが0よりも大きければ増える割合であり、0よりも小さければ減る割合であることが分かる。前記割合は、実際にセンシング部110で測定した圧縮空気量に基づいて検証し、誤差がある場合には補正できる。
【0050】
また、圧縮空気量の変化割合Mは、圧縮機10の入口温度および/またはガイドベーンの位置によって変化できる。したがって、圧縮空気量推定部120は、圧縮空気量の変化割合Mを、前記センシング部110で測定した圧縮機10の入口温度および/またはガイドベーンの位置に応じて補正することができる。
【0051】
これに加えて、圧縮空気量推定部120は、圧縮機10の入口温度、ガイドベーンの位置、およびタービン20のロータの回転数のうちの少なくとも一つをパラメータにし、特定のパラメータ値に対する圧縮機10で生成されて燃焼器30へ供給される圧縮空気量を、シミュレーションまたはセンシング部110での測定によって取得し、データベースに格納することができる。また、データベースに格納されたデータを基に、現在のパラメータによる圧縮空気量をデータベースから読み込んで圧縮空気量推定部120で推定した圧縮空気量の変化割合Mを検証し補正することもできる。
【0052】
燃料量制御部は、前記推定された、減ったり増えたりする圧縮空気量の変化割合Mに基づいて、燃焼器30へ供給する燃料の量Fが、下記数式3によって求められた量となるように制御することができる。
[数式3]
【数7】
式中、Fは、系統周波数が定格周波数であるときに燃焼器30へ供給されていた燃料の量を示す。
【0053】
数式3を参照すると、燃焼器30へ供給する燃料の量は、圧縮空気量の割合Mが0より大きければ増え、0よりも小さければ減ることが分かる。
【0054】
上述したように、本発明が提示するガスタービンシステムの制御装置100は、タービン20のロータの回転数に基づいて、燃焼器30へ供給される圧縮空気量の変化を事前に予測し、それに応じて、燃焼器30へ供給する燃料量を増加または減少させるように制御することにより、タービン入口温度の上昇を防止し、および/またはガスタービンシステムの効率性の低下を防止することができる。
【0055】
図3は本発明の一実施形態に係る制御装置100の燃焼器へ供給する燃料量の制御方法を示す図である。
【0056】
図3を参照すると、本発明の一実施形態に係る制御装置100は、燃焼器へ供給される圧縮空気量の変化を推定するために、まず、タービン20のロータの回転数を測定(S510)することができる。そして、測定したタービン20のロータの回転数に基づいて、燃焼器へ供給される圧縮空気量の変化割合を推定(S520)することができる。このときの圧縮空気量の変化割合は、前記数式2に示された通りであり、0よりも大きければ増える割合になり、0よりも小さければ減る割合になることが分かる。制御装置100の圧縮空気量推定部120で推定した前記変化割合に応じて、制御装置100の燃料量制御部130は燃焼器30へ供給する燃料量を制御(S530)することができる。すなわち、制御装置100の燃料量制御部130は、圧縮空気量推定部120で推定した圧縮空気量の変化割合分だけ、燃焼器30へ供給する燃料量を増やしたり減らしたりすることができる。
【0057】
上述したように、本発明に係る制御装置および制御方法によれば、系統周波数の変化によって、燃焼器20へ供給される圧縮空気量の変化量を予め推定して先制的に対応することにより、従前の制御、すなわち圧縮空気量の減少→タービン入口温度の上昇→排気ガス温度の上昇→燃料量減少の段階を経て行われる制御により発生するタービン入口温度の上昇を未然に防止する温度制御が可能である。
【0058】
本発明の属する技術分野における当業者は、本発明がその技術的思想や必須的特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できるので、上述した実施形態はあらゆる面で例示的なもので、限定的なものではないと理解すべきである。本発明の範囲は詳細な説明ではなく、後述する特許請求の範囲によって定められ、特許請求の範囲の意味、範囲およびその等価概念から導出されるすべての変更または変形形態も本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0059】
10 圧縮機
20 タービン
30 燃焼器
40 軸
100 制御装置
110 センシング部
120 圧縮空気量推定部
130 燃料量制御部
図1
図2
図3