(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
<<積層体>>
本発明に係る積層体は、基材上に受容層を介して導電層が設けられ、前記受容層が、下記式(i)−1、(i)−2及び(i)−3で表される構成単位(以下、それぞれ「構成単位(i)−1」、「構成単位(i)−2」、「構成単位(i)−3」と略記することがある)を有する高分子化合物(以下、「高分子化合物(I)」と略記することがある)を用いて形成され、且つガラス転移点(以下、「Tg」と略記することがある)が75℃以上のものであることを特徴とする。
【0015】
【化2】
(式中、R
21は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。)
【0016】
前記積層体において、前記導電層は、これを形成するための原料となる組成物(以下、「導電層用組成物」と略記することがある)を受容層上に付着させて組成物層を形成し、この組成物層(導電層用組成物)に対して乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理を行うことで形成される。そして、前記受容層は、上述のような特定の高分子化合物(I)を用いて形成され、且つTgが高めの特定範囲のものである。前記導電層がこのような受容層上に形成されることで、前記導電層は、その大きさ(特に受容層の表面に対して平行な方向における大きさ)が、受容層上での前記組成物層の大きさに対して小さくなってしまう、縮小が抑制される。また、前記導電層は、ほぼ設計どおりに形成されるので、形状を損なうことがない。
【0017】
図1は、本発明に係る積層体の一実施形態を例示する概略断面図である。
ここに示す積層体1は、基材11上に受容層12を介して導電層13を備える。すなわち、積層体1は、基材11上に受容層12及び導電層13がこの順に積層されたものである。ただし、本発明に係る積層体は、ここに示すものに限定されない。
【0018】
<基材>
基材11は、フィルム状又はシート状であることが好ましく、厚さが12〜5000μmであることが好ましく、12〜2000μmであることがより好ましい。基材11の厚さが前記下限値以上であることで、受容層12の構造をより安定して保持でき、基材11の厚さが前記上限値以下であることで、受容層12や導電層13形成時の取り扱い性がより良好となる。
【0019】
基材11の材質は特に限定されず、目的に応じて選択すればよいが、後述する導電層用組成物を用いた場合等において、加熱処理による導電層形成時に変質しない耐熱性を有するものが好ましい。
基材11の材質として具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリアリレート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等の合成樹脂が例示できる。
また、基材11の材質としては、上記以外にも、ガラス、シリコン等のセラミックスや、紙が例示できる。
また、基材11は、ガラスエポキシ樹脂、ポリマーアロイ等の、2種以上の材質を併用したものでもよい。
【0020】
基材11は、単層からなるものでもよいし、二層以上の複数層からなるものでもよい。基材11が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが異なっていてもよい。そして、複数層が互いに異なる場合、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。ここで、複数層が互いに異なるとは、各層の材質及び厚さの少なくとも一方が互いに異なることを意味する。
なお、基材11が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい基材11の厚さとなるようにするとよい。
【0021】
<受容層>
受容層12は、前記高分子化合物(I)を用いて形成されたものであり、基材11と導電層13との密着性を向上させるだけでなく、上述のように導電層13の収縮を抑制する。
【0022】
基材11の一方の主面(受容層12が形成されている側の表面)11aを上方から見下ろすように、積層体1を平面視したときの、受容層12の形状は、目的に応じて任意に設定でき、後述する導電層13の形状を考慮して設定すればよい。例えば、基材11の表面11a全面に受容層12が設けられていてもよいし、基材11の表面11aのうち、一部のみに受容層12が設けられていてもよく、この場合、受容層12はパターニングされていてもよい。
【0023】
受容層12の厚さは、0.001〜20μmであることが好ましく、0.002〜10μmであることがより好ましい。受容層12の厚さが前記下限値以上であることで、導電層13の密着性がより向上すると共に、導電層13の収縮抑制効果がより高くなり、受容層12の厚さが前記上限値以下であることで、受容層12の構造をより安定して保持できる。
【0024】
[高分子化合物(I)]
高分子化合物(I)は、前記構成単位(i)−1、(i)−2及び(i)−3を有するポリビニルアセタール(ポリビニルアセタール樹脂)である。高分子化合物(I)において、構成単位(i)−1、(i)−2及び(i)−3の配列順は特に限定されない。
【0025】
式中、R
21は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。
R
21における前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基が例示でき、直鎖状又は分枝鎖状であることが好ましい。
【0026】
高分子化合物(I)の分子量は、10000以上であることが好ましく、15000以上であることがより好ましく、20000以上であることがさらに好ましく、25000以上であることが特に好ましい。
また、高分子化合物(I)の分子量の上限値は、特に限定されないが、本発明の効果が十分に得られ、且つ受容層12をより容易に形成できることから、200000であることが好ましい。
ここで、「分子量」とは、高分子化合物(I)の合成に用いたモノマーがすべて反応して、高分子化合物(I)を構成したと仮定した場合に、前記モノマーの分子量を用いて算出される理論値(計算分子量)であり、高分子化合物(I)が構成単位(i)−1、(i)−2及び(i)−3のみを有する場合、前記モノマーとしては、構成単位(i)−1を誘導するもの、構成単位(i)−2を誘導するもの、及び構成単位(i)−3を誘導するもののみを考慮すればよい。
【0027】
高分子化合物(I)が有する構成単位(i)−1は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は特に限定されない。
【0028】
高分子化合物(I)は、Tgが77℃以上であることが好ましく、79℃以上であることがより好ましく、81℃以上であることが特に好ましい。高分子化合物(I)のTgが前記下限値以上であることで、導電層13の収縮抑制効果がより高くなる。
また、高分子化合物(I)のTgの上限値は、特に限定されないが、130℃であることが好ましく、120℃であることがより好ましい。
【0029】
高分子化合物(I)は、これを構成する繰り返し単位の総量(繰り返し単位の総モル数)に対する構成単位(i)−2の量(構成単位(i)−2のモル数)の割合が、0モル%より大きければよく、0.5モル%以上であることが好ましく、0.75モル%以上であることがより好ましく、1モル%以上であることが特に好ましい。そして、構成単位(i)−2の量の前記割合は、8モル%以下であることが好ましく、6モル%以下であることがより好ましく、4モル%以下であることが特に好ましい。
【0030】
また、高分子化合物(I)は、これを構成する繰り返し単位の総量(繰り返し単位の総モル数)に対する構成単位(i)−3の量(構成単位(i)−3のモル数)の割合が、0モル%より大きければよく、10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることが特に好ましい。そして、構成単位(i)−3の量の前記割合は、50モル%以下であることが好ましく、45モル%以下であることがより好ましく、40モル%以下であることが特に好ましい。
【0031】
また、高分子化合物(I)は、これを構成する繰り返し単位の総量(繰り返し単位の総モル数)に対する構成単位(i)−1の量(構成単位(i)−1のモル数)の割合が、0モル%より大きければよく、50モル%以上であることが好ましく、55モル%以上であることがより好ましく、60モル%以上であることが特に好ましい。そして、構成単位(i)−1の量の前記割合は、90モル%以下であることが好ましく、85モル%以下であることがより好ましく、80モル%以下であることが特に好ましい。
【0032】
高分子化合物(I)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、構成単位(i)−1、(i)−2及び(i)−3以外のその他の構成単位を有していてもよいが、高分子化合物(I)を構成する繰り返し単位の総量(繰り返し単位の総モル数)に対する、前記その他の構成単位の量(前記その他の構成単位のモル数)の割合が、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。そして、高分子化合物(I)は、構成単位(i)−1、(i)−2及び(i)−3のみを有することが好ましい。
【0033】
高分子化合物(I)は、構成単位(i)−1、(i)−2及び(i)−3、並びに必要に応じて前記その他の構成単位を誘導するモノマーを、公知の方法で重合させることにより得られる。重合温度及び重合時間は特に限定されず、重合方法や用いるモノマーの種類に応じて、適宜設定すればよい。重合反応後は、公知の方法で高分子化合物(I)を取り出せばよく、必要に応じて精製してもよい。また、高分子化合物(I)として、市販品を用いてもよい。
【0034】
受容層12の形成に用いる高分子化合物(I)は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は特に限定されない。
【0035】
受容層12(受容層12を構成している樹脂)のTgは、75℃以上であり、77℃以上であることが好ましく、79℃以上であることがより好ましく、81℃以上であることが特に好ましい。
また、受容層12のTgの上限値は、特に限定されないが、115℃であることが好ましく、105℃であることがより好ましい。
受容層12のTgは、高分子化合物(I)の影響を受け、通常は、高分子化合物(I)のTgよりも低くなり、例えば、高分子化合物(I)のTgよりも2〜15℃程度低くなる。
【0036】
<導電層>
導電層13の材質は、導電性を有するものであれば特に限定されないが、抵抗値が低い導電層を容易に形成できる点から、銀、銅等の単体金属、又は合金(以下、これらをまとめて「金属」と略記することがある)であることが好ましく、銀又は銅であることがより好ましい。
【0037】
基材11の一方の主面(受容層12が形成されている側の表面)11aを上方から見下ろすように、積層体1を平面視したときの、導電層13の形状は、目的に応じて任意に設定でき、受容層12の表面12aの全面に導電層13が設けられていてもよいし、受容層12の表面12aのうち、一部のみに導電層13が設けられていてもよく、この場合、導電層13はパターニングされていてもよい。
パターニングされた導電層13は、例えば、配線として有用である。
【0038】
導電層13の厚さは、目的に応じて任意に設定できるが、3nm〜40μmであることが好ましく、4nm〜30μmであることがより好ましい。導電層13の厚さが前記下限値以上であることで、導電性をより向上させることができ、さらに、導電層13の構造をより安定して維持できる。また、導電層13の厚さが前記上限値以下であることで、積層体1をより薄層化できる。
【0039】
導電層13は、単層からなるものでもよいし、二層以上の複数層からなるものでもよい。導電層13が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、基材11の場合と同様に構成できる。例えば、複数層からなる導電層13は、各層の合計の厚さが、上記の好ましい導電層13の厚さとなるようにするとよい。
【0040】
導電層13は、導電性に優れ、体積抵抗率が20μΩ・cm以下であることが好ましく、15μΩ・cm以下であることがより好ましく、10μΩ・cm以下であることがさらに好ましく、7μΩ・cm以下であることが特に好ましい。導電層13の体積抵抗率は、導電層13の材質及び厚さ等により調節できる。
【0041】
本発明に係る積層体は、
図1に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、他の構成が追加されたり、一部構成が適宜変更されたものでもよい。例えば、本発明に係る積層体は、
図1に示す積層体1において、基材11上に受容層12及び導電層13以外のその他の層を備えたものでもよく、前記その他の層としては、受容層12及び導電層13を被覆するオーバーコート層(図示略)が例示できる。
また、本発明に係る積層体は、
図1に示す積層体1において、基材11の一方の主面(表面)11a上だけでなく、基材11の他方の主面(裏面)11b上にも同様に(基材11の両方の主面上に)、受容層12を介して導電層13を備えたものでもよい。
【0042】
本発明に係る積層体は、上述のように、受容層が高分子化合物(I)を用いて形成されたものであり、且つ受容層のTgが75℃以上であることにより、導電層の縮小が抑制される。基材上に前記受容層を介して導電層が設けられた積層体では、受容層のTgが大きくなるに従い、導電層の縮小抑制効果は高くなる傾向にあるが、十分な導電層の縮小抑制効果を得るためには、受容層のTgが75℃以上であることが必要である。また、受容層のTgが75℃以上であれば、Tgが互いに異なる受容層上に形成された導電層同士の間では、その縮小抑制効果が大きく変動することがない。これは、例えば、受容層の形成過程で、その工程条件の変動により、形成された受容層のTgに変動が生じても、その変動したTgが75℃以上であれば、導電層においてはその安定した縮小抑制効果が得られることを意味する。受容層のTgが75℃未満であると、Tgが互いに異なる受容層上に形成された導電層同士の間では、縮小抑制効果が大きく変動してしまうため、例えば、受容層の形成過程において、形成された受容層のTgが大きく変動しないように、工程条件を厳密に制御する必要があり、積層体の製造方法は簡略化が難しく、手間を要するものとなってしまう。
また、受容層のTgは、上述のように、通常、高分子化合物(I)のTgよりも低くなり、その低下幅も、通常、2〜15℃程度であるので、目的とするTgの受容層を形成するために必要な高分子化合物(I)を容易に選択できる。
【0043】
基材上に受容層を介して導電層が設けられた積層体において、上述のように、受容層上の導電層の縮小の程度が受容層のTgの影響を受けることは、従来知られていない。導電層のその形成過程における縮小の程度は、通常であれば、導電層を形成するための材料、すなわち、導電層用組成物の成分の影響を最も受けると考え易いはずである。したがって、導電層の縮小の程度が、主として導電層用組成物の成分ではなく、受容層の影響を受け、しかも、受容層の数多くの特性の中でも特にTgの影響を受けるという知見は、全く意外なものである。
【0044】
<<積層体の製造方法>>
本発明に係る積層体は、例えば、基材上に受容層を形成する工程(以下、「受容層形成工程」と略記することがある)と、前記受容層上に導電層を形成する工程(以下、「導電層形成工程」と略記することがある)と、を有する製造方法で製造できる。
図2は、
図1に示す積層体1の製造方法を説明するための概略断面図である。
【0045】
<受容層形成工程>
積層体1を製造するためには、まず、
図2(b)に示すように、基材11の表面(一方の主面)11a上に受容層12を形成する。
受容層12は、高分子化合物(I)が配合されてなる受容層用組成物を基材11上に付着させ、乾燥処理、加熱処理等の後処理を行うことにより形成できる。受容層用組成物としては、通常、高分子化合物(I)以外に、溶媒が配合されてなるものを用いる。加熱処理は乾燥処理を兼ねるものであってもよい。
【0046】
高分子化合物(I)は、受容層用組成物の配合成分のうち、主成分に相当する。
受容層用組成物における高分子化合物(I)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0047】
受容層用組成物は、溶媒以外の配合成分の総量に対する高分子化合物(I)の配合量の割合が70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。高分子化合物(I)の配合量の前記割合が前記下限値以上であることで、目的とする受容層12を効率的かつ容易に形成できる。
【0048】
受容層用組成物における前記溶媒は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、好ましいものとしては、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;エタノール、2−プロパノール等のアルコール;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、グルタル酸モノメチル、グルタル酸ジメチル等のエステル;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン(ジメチルセロソルブ)等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン;アセトニトリル等のニトリル;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド等が例示できるが、これらに限定されない。
受容層用組成物における溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0049】
受容層用組成物において、配合成分の総量に対する溶媒の配合量の割合は、30〜97質量%であることが好ましく、40〜96質量%であることがより好ましい。
【0050】
受容層用組成物は、高分子化合物(I)及び溶媒以外に、これらに該当しないその他の成分がさらに配合されてなるものでもよい。
受容層用組成物における前記その他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
受容層用組成物における前記その他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0051】
受容層用組成物において、溶媒以外の配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが特に好ましく、0質量%であってもよい。その他の成分の配合量の前記割合がこのような範囲であることで、導電層13の収縮抑制効果がより高くなる。
【0052】
受容層用組成物は、高分子化合物(I)、溶媒、及び必要に応じて前記その他の成分を配合することで得られる。各成分の配合後は、得られたものをそのまま受容層用組成物としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られたものを受容層用組成物としてもよい。
【0053】
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0054】
受容層用組成物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。溶解していない成分を均一に分散させる場合には、例えば、上記の三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を用いて分散させる方法を適用するのが好ましい。
【0055】
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、10〜50℃であることがより好ましく、15〜45℃であることがより好ましい。そして、配合時の温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
また、配合時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、0.5〜60分であることが好ましく、0.5〜40分であることがより好ましい。
【0056】
受容層用組成物は、例えば、印刷法、塗布法、浸漬法等の公知の方法で基材11上に付着させることができる。
前記印刷法としては、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が例示できる。
前記塗布法としては、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターや、ワイヤーバー等を用いる方法が例示できる。
【0057】
受容層形成工程においては、基材11上に付着させる受容層用組成物の量、又は受容層用組成物における溶媒以外の成分の配合量を調節することで、受容層12の厚さを調節できる。
【0058】
受容層用組成物の乾燥処理及び加熱処理は、いずれも公知の方法で行えばよく、例えば、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれでおこなってもよい。
受容層用組成物の乾燥処理及び加熱処理における処理温度は特に限定されず、受容層用組成物の調製条件等、他の条件を考慮して適宜設定すればよい。例えば、乾燥処理は、加熱乾燥処理及び常温乾燥処理のいずれでもよく、加熱乾燥処理の場合であれば、加熱温度は60〜230℃であることが好ましく、80〜220℃であることがより好ましく、100〜210℃であることが特に好ましい。また、加熱時間は、1〜120分であることが好ましく、2〜60分であることがより好ましく、5〜30分であることが特に好ましい。
【0059】
受容層形成工程においては、受容層用組成物を付着させる前に、基材11を加熱処理(アニール処理)してもよい。基材11を加熱処理しておくことで、本工程において受容層用組成物を加熱処理したときや、後述する導電層形成工程において、導電層用組成物を加熱(焼成)処理したときに、基材11の収縮が抑制され、寸法安定性が向上する。
受容層用組成物を付着させる前の、基材11の加熱処理の条件は、基材11の種類に応じて適宜調節すればよく、特に限定されないが、60〜200℃で10〜60分間加熱処理することが好ましく、本工程での受容層用組成物の加熱処理の条件や、導電層形成工程での導電層用組成物の加熱(焼成)処理の条件と同じでもよい。
【0060】
また、本発明においては、受容層用組成物を付着させる前に、基材11の受容層12の形成面をプラズマ処理してもよい。基材11をプラズマ処理しておくことで、後述する導電層形成工程において、受容層12上で導電層用組成物の滲みが抑制されることがある。
プラズマ処理は公知の方法で行えばよく、例えば、大気圧プラズマ処理の場合には、電圧290〜300W、気流速度1.0〜5.0m/分等の条件で行うことができる。
【0061】
<導電層形成工程>
積層体1を製造するためには、次いで、
図2(c)に示すように、受容層12の表面(主面)12a上に導電層13を形成する。
導電層13は、例えば、前記導電層用組成物を調製し、これを受容層12上の所望の箇所に付着させ、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理を適宜選択して行うことで形成できる。加熱処理は、乾燥処理を兼ねて行ってもよい。
【0062】
導電層13の材質が金属である場合には、前記導電層用組成物として、金属又は金属の形成材料が配合されてなる金属インク組成物を調製し、これを受容層12上に付着させて、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理を適宜選択して行うことで、導電層13を形成することが好ましい。
金属インク組成物中の金属の形成材料は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0063】
配合される前記金属(単体金属又は合金)は、粒子状又は繊維状(チューブ状、ワイヤー状等)であることが好ましく、ナノ粒子又はナノワイヤーであることがより好ましく、銀ナノ粒子、銀ナノワイヤー、銅ナノ粒子又は銅ナノワイヤーであることが特に好ましい。
なお、本明細書において、「ナノ粒子」とは、粒径が1nm以上1000nm未満、好ましくは1〜100nmである粒子を意味し、「ナノワイヤー」とは、幅が1nm以上1000nm未満、好ましくは1〜100nmであるワイヤーを意味する。
【0064】
配合される前記金属の形成材料は、該当する金属原子(元素)を有し、分解等の構造変化によって金属を生じるものであればよく、金属塩、金属錯体、有機金属化合物(金属−炭素結合を有する化合物)等が例示できる。前記金属塩及び金属錯体は、有機基を有する金属化合物及び有機基を有しない金属化合物のいずれでもよい。なかでも金属の形成材料は、金属塩であることが好ましく、銀塩又は銅塩であることがより好ましい。
金属の形成材料を用いることで、前記材料から金属が生じ、この金属を含む導電層13が形成される。この場合の導電層13は、前記金属を主成分とするものであり、前記金属の比率が、見かけ上金属だけからなるとみなし得る程度に十分に高く、導電層13中の金属の比率は、好ましくは97質量%以上、より好ましくは98質量%以上、特に好ましくは99質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0065】
金属インク組成物としては、液状のものが好ましく、前記金属の形成材料が均一に分散されたものが好ましい。
【0066】
以下、金属インク組成物として、金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物を用いた場合の、導電層13の形成方法について説明するが、金属種が銀以外の場合にも同様の方法で、導電層13を形成できる。
前記金属銀の形成材料は、加熱等によって分解し、金属銀を形成するものである。
【0067】
[カルボン酸銀]
金属銀の形成材料としては、式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀が例示できる。
本発明において、カルボン酸銀は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記カルボン酸銀は、式「−COOAg」で表される基を有していれば特に限定されない。例えば、式「−COOAg」で表される基の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよい。また、カルボン酸銀中の式「−COOAg」で表される基の位置も特に限定されない。
【0068】
前記カルボン酸銀は、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀(以下、「β−ケトカルボン酸銀(1)」と略記することがある)及び下記一般式(4)で表されるカルボン酸銀(以下、「カルボン酸銀(4)」と略記することがある)からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
なお、本明細書においては、単なる「カルボン酸銀」との記載は、特に断りの無い限り、「β−ケトカルボン酸銀(1)」及び「カルボン酸銀(4)」だけではなく、これらを包括する、「式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀」を意味するものとする。
【0069】
【化3】
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R
1−CY
12−」、「CY
13−」、「R
1−CHY
1−」、「R
2O−」、「R
5R
4N−」、「(R
3O)
2CY
1−」若しくは「R
6−C(=O)−CY
12−」で表される基であり;
Y
1はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;R
1は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;R
2は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;R
3は炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R
4及びR
5はそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;R
6は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
X
1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「R
7O−」、「R
7S−」、「R
7−C(=O)−」若しくは「R
7−C(=O)−O−」で表される基であり;
R
7は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
【0070】
【化4】
(式中、R
8は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基又は式「−C(=O)−OAg」で表される基であり、前記脂肪族炭化水素基がメチレン基を有する場合、1個以上の該メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。)
【0071】
(β−ケトカルボン酸銀(1))
β−ケトカルボン酸銀(1)は、前記一般式(1)で表される。
式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R
1−CY
12−」、「CY
13−」、「R
1−CHY
1−」、「R
2O−」、「R
5R
4N−」、「(R
3O)
2CY
1−」若しくは「R
6−C(=O)−CY
12−」で表される基である。
【0072】
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が例示できる。
【0073】
Rにおける直鎖状又は分枝鎖状の前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が例示できる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示できる。
【0074】
Rにおける前記アルケニル基としては、ビニル基(エテニル基、−CH=CH
2)、アリル基(2−プロペニル基、−CH
2−CH=CH
2)、1−プロペニル基(−CH=CH−CH
3)、イソプロペニル基(−C(CH
3)=CH
2)、1−ブテニル基(−CH=CH−CH
2−CH
3)、2−ブテニル基(−CH
2−CH=CH−CH
3)、3−ブテニル基(−CH
2−CH
2−CH=CH
2)、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が二重結合(C=C)に置換された基が例示できる。
Rにおける前記アルキニル基としては、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CH
2−C≡CH)等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が三重結合(C≡C)に置換された基が例示できる。
【0075】
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が例示できる。また、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての置換基が同一であってもよいし、すべての置換基が異なっていてもよく、一部の置換基のみが異なっていてもよい。
【0076】
Rにおけるフェニル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基(−OH)、シアノ基(−C≡N)、フェノキシ基(−O−C
6H
5)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
【0077】
RにおけるY
1は、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子である。そして、一般式「R
1−CY
12−」、「CY
13−」及び「R
6−C(=O)−CY
12−」においては、それぞれ複数個のY
1は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0078】
RにおけるR
1は、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基(C
6H
5−)であり、R
1における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR
2は、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR
3は、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR
4及びR
5は、それぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R
4及びR
5は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR
6は、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり、R
6における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
【0079】
Rは、上記の中でも、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、一般式「R
6−C(=O)−CY
12−」で表される基、水酸基又はフェニル基であることが好ましい。そして、R
6は、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であることが好ましい。
【0080】
一般式(1)において、X
1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基(C
6H
5−CH
2−)、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基(C
2H
5−O−CH=CH−)、又は一般式「R
7O−」、「R
7S−」、「R
7−C(=O)−」若しくは「R
7−C(=O)−O−」で表される基である。
X
1における炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
【0081】
X
1におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
X
1におけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(−NO
2)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0082】
X
1におけるR
7は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(C
4H
3S−)、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C
6H
5−C
6H
4−)である。R
7における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。また、R
7におけるフェニル基及びジフェニル基の前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R
7がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、X
1において隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2−チエニル基及び3−チエニル基のいずれでもよい。
【0083】
一般式(1)において、2個のX
1は、2個のカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して1個の基として結合していてもよく、このようなものとしては式「=CH−C
6H
4−NO
2」で表される基が例示できる。
【0084】
X
1は、上記の中でも、水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、ベンジル基、又は一般式「R
7−C(=O)−」で表される基であることが好ましく、少なくとも一方のX
1が水素原子であることが好ましい。
【0085】
β−ケトカルボン酸銀(1)は、2−メチルアセト酢酸銀(CH
3−C(=O)−CH(CH
3)−C(=O)−OAg)、アセト酢酸銀(CH
3−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、2−エチルアセト酢酸銀(CH
3−C(=O)−CH(CH
2CH
3)−C(=O)−OAg)、プロピオニル酢酸銀(CH
3CH
2−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、イソブチリル酢酸銀((CH
3)
2CH−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、ピバロイル酢酸銀((CH
3)
3C−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、カプロイル酢酸銀(CH
3(CH
2)
3CH
2−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、2−n−ブチルアセト酢酸銀(CH
3−C(=O)−CH(CH
2CH
2CH
2CH
3)−C(=O)−OAg)、2−ベンジルアセト酢酸銀(CH
3−C(=O)−CH(CH
2C
6H
5)−C(=O)−OAg)、ベンゾイル酢酸銀(C
6H
5−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、ピバロイルアセト酢酸銀((CH
3)
3C−C(=O)−CH
2−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、イソブチリルアセト酢酸銀((CH
3)
2CH−C(=O)−CH
2−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、2−アセチルピバロイル酢酸銀((CH
3)
3C−C(=O)−CH(−C(=O)−CH
3)−C(=O)−OAg)、2−アセチルイソブチリル酢酸銀((CH
3)
2CH−C(=O)−CH(−C(=O)−CH
3)−C(=O)−OAg)、又はアセトンジカルボン酸銀(AgO−C(=O)−CH
2−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)であることが好ましい。
【0086】
β−ケトカルボン酸銀(1)は、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。原料や不純物が少ない程、例えば、形成された金属銀同士の接触が良好となり、導通が容易となり、抵抗率が低下する。
【0087】
β−ケトカルボン酸銀(1)は、後述するように、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、好ましくは60〜210℃、より好ましくは60〜200℃という低温で分解し、金属銀を形成することが可能である。そして、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。還元剤については後ほど説明する。
【0088】
本発明において、β−ケトカルボン酸銀(1)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0089】
(カルボン酸銀(4))
カルボン酸銀(4)は、前記一般式(4)で表される。
式中、R
8は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基(−COOH)又は式「−C(=O)−OAg」で表される基である。
R
8における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。ただし、R
8における前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
【0090】
R
8における前記脂肪族炭化水素基がメチレン基(−CH
2−)を有する場合、1個以上の該メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。カルボニル基で置換されていてもよいメチレン基の数及び位置は特に限定されず、すべてのメチレン基がカルボニル基で置換されていてもよい。ここで「メチレン基」とは、単独の式「−CH
2−」で表される基だけでなく、式「−CH
2−」で表される基が複数個連なったアルキレン基中の1個の式「−CH
2−」で表される基も含むものとする。
【0091】
カルボン酸銀(4)は、ピルビン酸銀(CH
3−C(=O)−C(=O)−OAg)、酢酸銀(CH
3−C(=O)−OAg)、酪酸銀(CH
3−(CH
2)
2−C(=O)−OAg)、イソ酪酸銀((CH
3)
2CH−C(=O)−OAg)、2−エチルへキサン酸銀(CH
3−(CH
2)
3−CH(CH
2CH
3)−C(=O)−OAg)、ネオデカン酸銀(CH
3−(CH
2)
5−C(CH
3)
2−C(=O)−OAg)、シュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)、又はマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)であることが好ましい。また、上記のシュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)及びマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)の2個の式「−COOAg」で表される基のうち、1個が式「−COOH」で表される基となったもの(HO−C(=O)−C(=O)−OAg、HO−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)も好ましい。
【0092】
カルボン酸銀(4)も、β−ケトカルボン酸銀(1)と同様に、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。そして、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
【0093】
本発明において、カルボン酸銀(4)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0094】
前記カルボン酸銀は、2−メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、2−エチルアセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、ピバロイル酢酸銀、カプロイル酢酸銀、2−n−ブチルアセト酢酸銀、2−ベンジルアセト酢酸銀、ベンゾイル酢酸銀、ピバロイルアセト酢酸銀、イソブチリルアセト酢酸銀、アセトンジカルボン酸銀、ピルビン酸銀、酢酸銀、酪酸銀、イソ酪酸銀、2−エチルへキサン酸銀、ネオデカン酸銀、シュウ酸銀及びマロン酸銀からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
そして、これらカルボン酸銀の中でも、2−メチルアセト酢酸銀及びアセト酢酸銀は、後述する含窒素化合物(なかでもアミン化合物)との相溶性に優れ、銀インク組成物の高濃度化に、特に適したものとして挙げられる。
【0095】
銀インク組成物において、前記金属銀の形成材料に由来する銀の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。このような範囲であることで、形成された導電体(金属銀)は品質により優れたものとなる。前記銀の含有量の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると25質量%であることが好ましい。
なお、本明細書において、「金属銀の形成材料に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀インク組成物の製造時に配合された前記金属銀の形成材料中の銀を意味し、配合後に引き続き金属銀の形成材料を構成している銀と、配合後に金属銀の形成材料が分解して生じた分解物中の銀及び銀自体と、の両方を含む概念とする。
【0096】
[含窒素化合物]
銀インク組成物は、特に前記金属銀の形成材料が前記カルボン酸銀である場合、前記金属銀の形成材料以外に、さらに含窒素化合物が配合されてなるものが好ましい。
前記含窒素化合物は、炭素数25以下のアミン化合物(以下、「アミン化合物」と略記することがある)、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩(以下、「第4級アンモニウム塩」と略記することがある)、アンモニア、炭素数25以下のアミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アミン化合物由来のアンモニウム塩」と略記することがある)、及びアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アンモニア由来のアンモニウム塩」と略記することがある)からなる群から選択される1種以上のものである。すなわち、配合される含窒素化合物は、1種のみでよいし、2種以上でもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0097】
(アミン化合物、第4級アンモニウム塩)
前記アミン化合物は、炭素数が1〜25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、前記第4級アンモニウム塩は、炭素数が4〜25である。前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンのアミノ基(−NH
2)を構成する窒素原子)の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
【0098】
前記第1級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいモノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が例示できる。
【0099】
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示でき、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−ヘプチルアミン(2−アミノヘプタン)、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミンが例示できる。
【0100】
前記モノアリールアミンを構成するアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が例示でき、炭素数が6〜10であることが好ましい。
【0101】
前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、芳香族環骨格を構成する原子として、ヘテロ原子を有するものであり、前記ヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子が例示できる。また、芳香族環骨格を構成する前記へテロ原子の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。2個以上である場合、これらへテロ原子は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これらへテロ原子は、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけ異なっていてもよい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3〜12員環であることが好ましい。
【0102】
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜4個有する単環状のものとしては、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、フラニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、チエニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜5個有する多環状のものとしては、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
【0103】
前記ジアミンは、アミノ基を2個有していればよく、2個のアミノ基の位置関係は特に限定されない。好ましい前記ジアミンとしては、前記モノアルキルアミン、モノアリールアミン又はモノ(ヘテロアリール)アミンにおいて、アミノ基(−NH
2)を構成する水素原子以外の1個の水素原子が、アミノ基で置換されたものが例示できる。
前記ジアミンは炭素数が1〜10であることが好ましく、より好ましいものとしてはエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタンが例示できる。
【0104】
前記第2級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(ヘテロアリール)アミン等が例示できる。
【0105】
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミンが例示できる。
【0106】
前記ジアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。また、ジアリールアミン一分子中の2個のアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0107】
前記ジ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基と同様であり、6〜12員環であることが好ましい。また、ジ(ヘテロアリール)アミン一分子中の2個のヘテロアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0108】
前記第3級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいトリアルキルアミン、ジアルキルモノアリールアミン等が例示できる。
【0109】
前記トリアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、トリアルキルアミン一分子中の3個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
【0110】
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルモノアリールアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。
【0111】
本発明において、前記第4級アンモニウム塩としては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が例示できる。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19であることが好ましい。また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の4個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、4個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示できる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドが例示できる。
【0112】
ここまでは、主に鎖状のアミン化合物及び第4級有機アンモニウム塩について説明したが、前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子が環骨格構造(複素環骨格構造)の一部であるようなヘテロ環化合物であってもよい。すなわち、前記アミン化合物は環状アミンでもよく、前記第4級アンモニウム塩は環状アンモニウム塩でもよい。この時の環(アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子を含む環)構造は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されず、脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよい。
環状アミンであれば、好ましいものとして、ピリジンが例示できる。
【0113】
前記第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩において、「置換基で置換されていてもよい水素原子」とは、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子に結合している水素原子以外の水素原子である。この時の置換基の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよく、前記水素原子のすべてが置換基で置換されていてもよい。置換基の数が複数の場合には、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数個の置換基はすべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。また、置換基の位置も特に限定されない。
【0114】
前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩における前記置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、トリフルオロメチル基(−CF
3)等が例示できる。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
【0115】
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基としてアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基として好ましくは炭素数が1〜5のアルキル基を有する、炭素数が3〜7の環状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するモノアルキルアミンとして、具体的には、2−フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、2−ブロモベンジルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
【0116】
前記モノアリールアミンを構成するアリール基が置換基を有する場合、前記アリール基は、置換基としてハロゲン原子を有する、炭素数が6〜10のアリール基が好ましく、このような置換基を有するモノアリールアミンとして、具体的には、ブロモフェニルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
【0117】
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基として水酸基又はアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するジアルキルアミンとして、具体的には、ジエタノールアミン、N−メチルベンジルアミンが例示できる。
【0118】
前記アミン化合物は、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−ヘプチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、2−フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン又はN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
そして、これらアミン化合物の中でも、2−エチルヘキシルアミンは、前記カルボン酸銀との相溶性に優れ、銀インク組成物の高濃度化に特に適しており、さらに金属銀の表面粗さの低減に特に適したものとして挙げられる。
【0119】
(アミン化合物由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩は、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩であり、前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸でもよいし、酢酸等の有機酸でもよく、酸の種類は特に限定されない。
前記アミン化合物由来のアンモニウム塩としては、n−プロピルアミン塩酸塩、N−メチル−n−ヘキシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩等が例示できるが、これらに限定されない。
【0120】
(アンモニア由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アンモニア由来のアンモニウム塩は、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩であり、ここで酸としては、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩の場合と同じものが例示できる。
前記アンモニア由来のアンモニウム塩としては、塩化アンモニウム等が例示できるが、これに限定されない。
【0121】
本発明においては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩は、それぞれ1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
そして、前記含窒素化合物としては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩からなる群から選択される1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0122】
銀インク組成物において、前記含窒素化合物の配合量は、前記金属銀の形成材料の配合量1モルあたり0.3〜15モルであることが好ましく、0.3〜5モルであることがより好ましい。前記含窒素化合物の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物は安定性がより向上し、導電体(金属銀)の品質がより向上する。さらに、高温による加熱処理を行わなくても、より安定して導電体を形成できる。
【0123】
[還元剤]
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料以外に、さらに還元剤が配合されてなるものが好ましい。還元剤を配合することで、前記銀インク組成物は、金属銀をより形成し易くなり、例えば、低温での加熱処理でも十分な導電性を有する導電体(金属銀)を形成できる。
【0124】
前記還元剤は、シュウ酸、ヒドラジン及び下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」と略記することがある)からなる群から選択される1種以上の還元性化合物(以下、単に「還元性化合物」と略記することがある)であることが好ましい。
H−C(=O)−R
21 ・・・・(5)
(式中、R
21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。)
【0125】
(還元性化合物)
前記還元性化合物は、シュウ酸(HOOC−COOH)、ヒドラジン(H
2N−NH
2)及び前記一般式(5)で表される化合物(化合物(5))からなる群から選択される1種以上のものである。すなわち、配合される還元性化合物は、1種のみでよいし、2種以上でもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0126】
R
21における炭素数20以下のアルキル基は、炭素数が1〜20であり、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
【0127】
R
21における炭素数20以下のアルコキシ基は、炭素数が1〜20であり、R
21における前記アルキル基が酸素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
【0128】
R
21における炭素数20以下のN,N−ジアルキルアミノ基は、炭素数が2〜20であり、窒素原子に結合している2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよく、該アルキル基はそれぞれ炭素数が1〜19である。ただし、これら2個のアルキル基の炭素数の合計値が2〜20である。
窒素原子に結合している前記アルキル基は、それぞれ直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、炭素数が1〜19である点以外は、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
【0129】
前記還元性化合物として、ヒドラジンは、一水和物(H
2N−NH
2・H
2O)を用いてもよい。
【0130】
前記還元性化合物で好ましいものとしては、ギ酸(H−C(=O)−OH);ギ酸メチル(H−C(=O)−OCH
3)、ギ酸エチル(H−C(=O)−OCH
2CH
3)、ギ酸ブチル(H−C(=O)−O(CH
2)
3CH
3)等のギ酸エステル;プロパナール(H−C(=O)−CH
2CH
3)、ブタナール(H−C(=O)−(CH
2)
2CH
3)、ヘキサナール(H−C(=O)−(CH
2)
4CH
3)等のアルデヒド;ホルムアミド(H−C(=O)−NH
2)、N,N−ジメチルホルムアミド(H−C(=O)−N(CH
3)
2)等のホルムアミド類(式「H−C(=O)−N(−)−」で表される基を有する化合物);シュウ酸が例示できる。
【0131】
銀インク組成物において、還元剤の配合量は、前記金属銀の形成材料の配合量1モルあたり0.04〜3.5モルであることが好ましく、0.06〜2.5モルであることがより好ましい。還元剤の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物は、より容易に、より安定して導電体(金属銀)を形成できる。
【0132】
[アルコール]
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料以外に、さらにアルコールが配合されてなるものでもよい。
【0133】
前記アルコールは、下記一般式(2)で表されるアセチレンアルコール類(以下、「アセチレンアルコール(2)」と略記することがある)であることが好ましい。
【0134】
【化5】
(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。)
【0135】
(アセチレンアルコール(2))
アセチレンアルコール(2)は、前記一般式(2)で表される。
式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。
R’及びR’’における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
【0136】
R’及びR’’におけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、シアノ基、フェノキシ基等が例示でき、Rにおけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基と同様である。そして、置換基の数及び位置は特に限定されず、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0137】
R’及びR’’は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
【0138】
好ましいアセチレンアルコール(2)としては、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オールが例示できる。
【0139】
アセチレンアルコール(2)を用いる場合、銀インク組成物において、アセチレンアルコール(2)の配合量は、前記金属銀の形成材料の配合量1モルあたり0.03〜0.7モルであることが好ましく、0.05〜0.3モルであることがより好ましい。アセチレンアルコール(2)の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物の安定性がより向上する。
【0140】
前記アルコールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0141】
[その他の成分]
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料、含窒素化合物、還元剤及びアルコール以外の、その他の成分が配合されてなるものでもよい。
銀インク組成物における前記その他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されず、好ましいものとしては、アルコール以外の溶媒が例示できる。
【0142】
前記溶媒は、配合成分の種類や量に応じて任意に選択できる。好ましい溶媒としては、常温常圧条件下で液状のアルカンが例示でき、前記アルカンは直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、炭素数が15以下であることが好ましく、より好ましいものとしては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン等が例示できる。
【0143】
銀インク組成物における前記その他の成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0144】
銀インク組成物における前記その他の成分の配合量は、前記その他の成分の種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、前記その他の成分がアルコール以外の溶媒である場合、前記溶媒の配合量は、銀インク組成物の粘度等、目的に応じて選択すればよいが、通常は、銀インク組成物において、配合成分の総量に対する前記溶媒の配合量の割合は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。
また、前記その他の成分が前記溶媒以外の成分である場合、銀インク組成物において、配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合が0質量、すなわちその他の成分を配合しなくても、銀インク組成物は十分にその効果を発現する。
【0145】
銀インク組成物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部又は全ての成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
【0146】
[銀インク組成物の製造方法]
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料、及び前記金属銀の形成材料以外の成分を配合することで得られる。各成分の配合後は、得られたものをそのまま銀インク組成物としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られたものを銀インク組成物としてもよい。本発明においては、特に前記金属銀の形成材料としてβ−ケトカルボン酸銀(1)を用いた場合、上記の各成分の配合時において、導電性を阻害する不純物が生成しないか、又はこのような不純物の生成量を極めて少量に抑制できるため、精製操作を行っていない銀インク組成物を用いても、十分な導電性を有する導電体(金属銀)が得られる。
【0147】
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。ただし、本発明においては、前記還元剤は滴下により配合することが好ましく、さらに滴下速度の変動を抑制することで、金属銀の表面粗さをより低減できる傾向にある。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
銀インク組成物において、溶解していない成分を均一に分散させる場合には、例えば、上記の三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を用いて分散させる方法を適用するのが好ましい。
【0148】
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。そして、配合時の温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
また、配合時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、10分〜36時間であることが好ましい。
【0149】
[二酸化炭素]
銀インク組成物は、さらに二酸化炭素が供給されてなるものでもよい。このような銀インク組成物は高粘度となり、例えば、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等の、インクを厚盛りすることが必要な印刷法への適用に好適である。
【0150】
二酸化炭素は、銀インク組成物製造時のいずれの時期に供給してもよい。
そして、本発明においては、例えば、前記金属銀の形成材料及び含窒素化合物が配合されてなる第一の混合物に、二酸化炭素を供給して第二の混合物とし、必要に応じて前記第二の混合物に、さらに、前記還元剤を配合して、銀インク組成物を製造することが好ましい。また、前記アルコール又はその他の成分を配合する場合、これらは、第一の混合物及び第二の混合物のいずれか一方又は両方の製造時に配合でき、目的に応じて任意に選択できる。
【0151】
前記第一の混合物は、配合成分が異なる点以外は、上記の銀インク組成物と同様の方法で製造できる。
【0152】
第一の混合物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
【0153】
第一の混合物製造時の配合温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜30℃であることが好ましい。また、配合時間は、配合成分の種類や配合時の温度に応じて適宜調節すればよいが、例えば、0.5〜12時間であることが好ましい。
【0154】
第一の混合物に供給される二酸化炭素(CO
2)は、ガス状及び固形状(ドライアイス)のいずれでもよく、ガス状及び固形状の両方でもよい。二酸化炭素が供給されることにより、この二酸化炭素が第一の混合物に溶け込み、第一の混合物中の成分に作用することで、得られる第二の混合物の粘度が上昇すると推測される。
【0155】
二酸化炭素ガスの供給は、液体中にガスを吹き込む公知の各種方法で行えばよく、適した供給方法を適宜選択すればよい。例えば、配管の一端を第一の混合物中に浸漬し、他端を二酸化炭素ガスの供給源に接続して、この配管を通じて二酸化炭素ガスを第一の混合物に供給する方法が例示できる。この時、配管の端部から直接二酸化炭素ガスを供給してもよいが、例えば、多孔質性のものなど、ガスの流路となり得る空隙部が多数設けられ、導入されたガスを拡散させて微小な気泡として放出することが可能なガス拡散部材を配管の端部に接続し、このガス拡散部材を介して二酸化炭素ガスを供給してもよい。また、第一の混合物の製造時と同様の方法で、第一の混合物を撹拌しながら二酸化炭素ガスを供給してもよい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
【0156】
二酸化炭素ガスの供給量は、供給先の第一の混合物の量や、目的とする銀インク組成物又は第二の混合物の粘度に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、20〜25℃における粘度が5Pa・s以上である銀インク組成物を100〜1000g程度得るためには、二酸化炭素ガスを100L以上供給することが好ましく、200L以上供給することがより好ましい。なお、ここでは銀インク組成物の20〜25℃における粘度について説明したが、銀インク組成物の使用時の温度は、20〜25℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。また、本明細書において「粘度」とは、特に断りのない限り、超音波振動式粘度計を用いて測定したものを意味する。
【0157】
二酸化炭素ガスの流量は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量を考慮して適宜調節すればよいが、第一の混合物1gあたり0.5mL/分以上であることが好ましく、1mL/分以上であることがより好ましい。流量の上限値は特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると、混合物1gあたり40mL/分であることが好ましい。
そして、二酸化炭素ガスの供給時間は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量や、流量を考慮して適宜調節すればよい。
【0158】
二酸化炭素ガス供給時の第一の混合物の温度は、5〜70℃であることが好ましく、7〜60℃であることがより好ましく、10〜50℃であることが特に好ましい。前記温度が前記下限値以上であることで、より効率的に二酸化炭素を供給でき、前記温度が前記上限値以下であることで、不純物が少ないより良好な品質の銀インク組成物が得られる。
【0159】
二酸化炭素ガスの流量及び供給時間、並びに二酸化炭素ガス供給時の前記温度は、それぞれの値を相互に考慮しながら適した範囲に調節すればよい。例えば、前記温度を低めに設定しても、二酸化炭素ガスの流量を多めに設定するか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。また、二酸化炭素ガスの流量を少なめに設定しても、前記温度を高めにするか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。すなわち、二酸化炭素ガスの流量、二酸化炭素ガス供給時の前記温度として例示した上記数値範囲の中の数値を、二酸化炭素ガスの供給時間も考慮しつつ柔軟に組み合わせることで、良好な品質の銀インク組成物が効率的に得られる。
【0160】
二酸化炭素ガスの供給は、第一の混合物を撹拌しながら行うことが好ましい。このようにすることで、供給した二酸化炭素ガスがより均一に第一の混合物中に拡散し、より効率的に二酸化炭素を供給できる。
この時の撹拌方法は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物の製造時における前記混合方法の場合と同様でよい。
【0161】
ドライアイス(固形状二酸化炭素)の供給は、第一の混合物中にドライアイスを添加することで行えばよい。ドライアイスは、全量を一括して添加してもよいし、分割して段階的に(添加を行わない時間帯を挟んで連続的に)添加してもよい。
ドライアイスの使用量は、上記の二酸化炭素ガスの供給量を考慮して調節すればよい。
ドライアイスの添加中及び添加後は、第一の混合物を撹拌することが好ましく、例えば、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物の製造時と同様の方法で撹拌することが好ましい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
撹拌時の温度は、二酸化炭素ガス供給時と同様でよい。また、撹拌時間は、撹拌温度に応じて適宜調節すればよい。
【0162】
第二の混合物の粘度は、銀インク組成物又は第二の混合物の取り扱い方法など、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、銀インク組成物をスクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法へ適用する場合には、第二の混合物の20〜25℃における粘度は、3Pa・s以上であることが好ましい。なお、ここでは第二の混合物の20〜25℃における粘度について説明したが、第二の混合物の使用時の温度は、20〜25℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。
【0163】
前記第二の混合物には、さらに、必要に応じて前記還元剤、アルコール及びその他の成分からなる群から選択される1種以上を配合して、銀インク組成物とすることができる。
このときの銀インク組成物は、配合成分が異なる点以外は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物と同様の方法で製造できる。そして、得られた銀インク組成物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
【0164】
前記還元剤配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。そして、配合時の温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
また、配合時間は、配合成分の種類や配合時の温度に応じて適宜調節すればよいが、例えば、0.5〜12時間であることが好ましい。
【0165】
前記その他の成分は、先に説明したように、前記第一の混合物及び第二の混合物のいずれかの製造時に配合されてもよく、両方の製造時に配合されてもよい。すなわち、第一の混合物及び第二の混合物を経て銀インク組成物を製造する過程において、二酸化炭素以外の配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合([その他の成分(質量)]/[金属銀の形成材料、含窒素化合物、還元剤、アルコール、及びその他の成分(質量)]×100)は、前記その他の成分がアルコール以外の溶媒である場合、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。一方、前記その他の成分が前記溶媒以外の成分である場合、前記配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。そして、前記配合量の割合が0質量、すなわちその他の成分を配合しなくても、銀インク組成物は十分にその効果を発現する。
【0166】
二酸化炭素が供給されてなる銀インク組成物は、例えば、銀インク組成物をスクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の高粘度インクを使用する印刷法へ適用する場合には、20〜25℃における粘度が、1Pa・s以上であることが好ましい。
【0167】
例えば、還元剤の配合時には、得られる配合物(銀インク組成物)は比較的発熱し易い。そして、還元剤の配合時の温度が高い場合、この配合物は、後述する銀インク組成物の加熱処理時と同様の状態になるため、還元剤による前記金属銀の形成材料の分解促進作用によって、金属銀の形成材料の少なくとも一部において金属銀の形成が開始されることがあると推測される。このような金属銀を含有する銀インク組成物は、導電体形成時において、金属銀を含有しない銀インク組成物よりも温和な条件で後処理を行うことにより、導電体を形成できることがある。また、還元剤の配合量が十分に多い場合にも、同様に温和な条件で後処理を行うことにより、導電体を形成できることがある。このように、金属銀の形成材料の分解を促進する条件を採用することで、後処理として、より低温での加熱処理で、あるいは加熱処理を行わずに常温での乾燥処理のみで、導電体を形成できることがある。また、このような金属銀を含有する銀インク組成物は、金属銀を含有しない銀インク組成物と同様に取り扱うことができ、特に取り扱い性が劣ることもない。
【0168】
なお、本発明における第二の混合物は、上記のように二酸化炭素の供給によって、粘度が通常よりも高い。一方で、第二の混合物への還元剤の配合時には、第二の混合物又は還元剤の種類によっては、上記のように前記金属銀の形成材料の少なくとも一部において金属銀の形成が開始され、金属銀が析出することがある。ここで、第二の混合物の粘度が高い場合には、析出した金属銀の凝集が抑制され、得られた銀インク組成物中での金属銀の分散性が向上する。このような銀インク組成物を用いて、後述する方法で金属銀を形成して得られた導電体は、粘度が低い、すなわち二酸化炭素が供給されていない混合物に還元剤が配合されて得られた銀インク組成物を用いた場合の導電体よりも、導電性が高く(体積抵抗率が低く)、表面粗さも小さくなり、より好ましい特性を有するものとなる。
【0169】
また、本発明においては、前記金属銀の形成材料、アルコール及び含窒素化合物が配合されてなる混合物に、二酸化炭素を供給して、銀インク組成物を製造することも好ましい。この場合、二酸化炭素の供給方法としては、上記と同様の方法が採用できる。
【0170】
銀インク組成物は、例えば、印刷法、塗布法、浸漬法等の公知の方法で基材上に付着させることができる。
前記印刷法としては、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、ジェットディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が例示できる。
前記塗布法としては、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターや、ワイヤーバー等を用いる方法が例示できる。
【0171】
銀インク組成物を乾燥処理する場合には、公知の方法で行えばよく、例えば、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれでおこなってもよい。そして、乾燥温度も特に限定されず、加熱乾燥及び常温乾燥のいずれでもよい。加熱処理が不要な場合の好ましい乾燥方法としては、18〜30℃で大気下において乾燥させる方法が例示できる。
【0172】
銀インク組成物を加熱(焼成)処理する場合、その条件は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよい。通常は、加熱温度が60〜370℃であることが好ましく、70〜280℃であることがより好ましい。加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、1分〜24時間であることが好ましく、1分〜12時間であることがより好ましい。前記金属銀の形成材料の中でも前記カルボン酸銀、特にβ−ケトカルボン酸銀(1)は、例えば、酸化銀等の金属銀の形成材料とは異なり、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、低温で分解する。そして、このような分解温度を反映して、前記銀インク組成物は、上記のように、従来のものより極めて低温で金属銀を形成できる。
【0173】
後述するように、銀インク組成物を耐熱性が低い基材に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、加熱温度は130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
【0174】
銀インク組成物の加熱処理の方法は、特に限定されず、例えば、電気炉による加熱、感熱方式の熱ヘッドによる加熱、遠赤外線照射による加熱、高熱ガスの吹き付けによる加熱等で行うことができる。また、銀インク組成物の加熱処理は、大気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、加湿条件下で行ってもよい。そして、常圧下、減圧下及び加圧下のいずれで行ってもよい。
【0175】
本明細書において「加湿」とは、特に断りのない限り、湿度を人為的に増大させることを意味し、好ましくは相対湿度を5%以上とすることである。加熱処理時には、処理温度が高いことによって、処理環境での湿度が極めて低くなるため、5%という相対湿度は、明らかに人為的に増大されたものであるといえる。
【0176】
銀インク組成物の加熱処理を加湿条件下で行う場合の相対湿度は、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが特に好ましく、90%以上であってもよいし、100%であってもよい。そして、加湿条件下での加熱処理は、100℃以上に加熱した高圧水蒸気の吹き付けにより行ってもよい。このように加湿条件下で加熱処理することにより、短時間でより高純度の金属銀を形成できる。
【0177】
銀インク組成物の加熱処理は、二段階で行ってもよい。例えば、一段階目の加熱処理では、金属銀の形成ではなく銀インク組成物の乾燥を主に行い、二段階目の加熱処理で、金属銀の形成を最後まで行う方法が例示できる。
一段階目の加熱処理において、加熱温度は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、60〜110℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、5秒〜12時間であることが好ましく、30秒〜2時間であることがより好ましい。
二段階目の加熱処理において、加熱温度は、金属銀が良好に形成されるように、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、60〜280℃であることが好ましく、70〜260℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、1分〜12時間であることが好ましく、1分〜10時間であることがより好ましい。
後述するように、銀インク組成物を耐熱性が低い基材に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、一段階目及び二段階目の加熱処理における加熱温度は、130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
【0178】
加湿条件下での加熱処理を採用する場合、銀インク組成物の加熱処理は、一段階目の加熱処理において、非加湿条件下で、上述のように金属銀の形成ではなく銀インク組成物の乾燥を主に行い、二段階目の加熱処理において、加湿条件下で、上述のように金属銀の形成を最後まで行う、二段階の方法で行うことが特に好ましい。
なお、本明細書において「非加湿」とは、上述の「加湿」を行わないこと、すなわち、湿度を人為的に増大させないことを意味し、好ましくは相対湿度を5%未満とすることである。
【0179】
上述の加熱処理を二段階の方法で行う場合、一段階目の非加湿条件下での加熱処理時の加熱温度は、60〜110℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、5秒〜3時間であることが好ましく、30秒〜2時間であることがより好ましく、30秒〜1時間であることが特に好ましい。
上述の加熱処理を二段階の方法で行う場合、二段階目の加湿条件下での加熱処理時の加熱温度は、60〜230℃であることが好ましく、70〜210℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、1分〜2時間であることが好ましく、1分〜1時間であることがより好ましく、1分〜30分であることが特に好ましい。
後述するように、銀インク組成物を耐熱性が低い基材に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、一段階目の非加湿条件下での加熱処理及び二段階目の加湿条件下での加熱処理における加熱温度は、いずれも130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
【0180】
本発明に係る積層体として、基材11上に受容層12及び導電層13以外のその他の層が設けられたものを製造する場合には、上記の製造方法において、所定のタイミングでその他の層を形成する工程を適宜追加して行えばよい。
【0181】
本発明に係る積層体を製造するためには、以上の説明のように、受容層の表面に導電層用組成物を付着させて組成物層を形成し、この組成物層(導電層用組成物)に対して乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理を行うことで、導電層を形成する。このとき、形成された導電層の大きさは、前記後処理を行う前の組成物層の大きさよりも小さくならないか又は小さくなる程度が僅かであり、収縮が抑制される。このような導電層の収縮は、従来、導電層の形成面、すなわち受容層の表面(
図1においては、受容層12の表面12a)に対して平行な方向において特に顕著であるが、本発明に係る積層体では、このような導電層の収縮が顕著に抑制される。例えば、形状が線状である導電層を形成する場合、前記後処理を行う前の線状の組成物層の幅に対する、形成された線状の導電層の幅の割合は、好ましくは78%以上、より好ましくは80%以上となる。これに対して、同様の形状の従来の導電層では、前記割合は最大でも75%程度にとどまる。
このように、本発明に係る積層体は、導電層の収縮抑制効果が高いので、導電層を設計どおりに形成できるか、又は収縮分を考慮して前記組成物層の大きさや形状等を設計し、目的とする導電層を容易に形成できる。導電層がラインアンドスペースパターン等の特に微細なパターンの場合に、本発明に係る積層体は特に好適である。
また、本発明に係る積層体は、導電層の収縮抑制効果が高いので、導電層の形状を損なうことがない。
【0182】
本発明に係る積層体は、上記のように、導電層の収縮が抑制されるのに加え、導電層の導電性が十分に高いため、後述するように、通信機器等の各種電子機器や透明導電膜の構成要素として極めて有用である。
【0183】
<<電子機器、データ受送信体、透明導電膜>>
前記積層体は、データ受送信体等の各種電子機器、透明導電膜等を構成するのに好適である。
例えば、前記電子機器は、前記積層体を用い、前記基材を筐体として備えるように構成でき、前記積層体中の基材で筐体の少なくとも一部を構成した点以外は、公知の電子機器と同様の構成とすることができる。例えば、パターニングされた前記導電層を回路とすることで、前記積層体を回路基板として用いることができ、前記積層体に加え、音声入力部、音声出力部、操作スイッチ、表示部等を組み合わせることにより、携帯電話機を構成できる。また、パターニングされた前記導電層をアンテナとすることで、前記積層体をアンテナ構造体とすることができる。
前記データ受送信体は、前記積層体を用い、前記導電層をアンテナとして備えるように構成でき、前記積層体をアンテナ構造体として用いた点以外は、公知のデータ受送信体と同様の構成とすることができる。例えば、前記積層体において、基材上又は受容層上に前記導電層と電気的に接続されたICチップを設けてアンテナ部とすることにより、非接触型データ受送信体を構成できる。
【0184】
前記透明導電膜は、前記積層体を用い、前記導電層を極微細配線又は極薄配線として備えるように構成でき、前記導電層を極微細配線又は極薄配線として備えた点以外は、公知の透明導電膜と同様の構成とすることができる。例えば、前記積層体に加え、透明基材等と組合せることにより、タッチパネルや光学ディスプレイを構成できる。
極微細配線の線幅は、1〜20μmであることが好ましく、1.3〜15μmであることがより好ましく、1.5〜13μmであることが特に好ましい。
また、極微細配線の断面形状は、好ましくは楕円の短軸方向のほぼ半分の領域が切り取られた半楕円形状である。
一方、極薄配線の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、7nm〜5μmであることがより好ましく、10nm〜1μmであることが特に好ましい。
極薄配線の断面形状は、前記極微細配線の断面形状と同様である。
前記透明導電膜は、前記導電層がこのような線幅及び厚さの少なくとも一方を満たしていることが好ましい。導電層がこのような線幅又は厚さであれば、目視によってその存在が認識困難となるので、透明導電膜として好ましいものとなる。
【0185】
また、前記積層体においては、前記導電層を低温で形成することも可能であり、基材等の材質を幅広く選択できるので、設計の自由度が飛躍的に向上し、電子機器、透明導電膜等をより合理的な構造とすることも可能である。
上記のような電子機器、透明導電膜等は、長期に渡って高い性能を維持することが可能である。
【実施例】
【0186】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0187】
[実施例1]
<積層体の製造>
(銀インク組成物の製造)
液温が50℃以下となるように、ビーカー中で2−エチルヘキシルアミン(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して0.4倍モル量)に2−メチルアセト酢酸銀を添加して、メカニカルスターラーを用いて15分間撹拌することにより、液状物を得た。この液状物に、反応液の温度が50℃以下となるように、シリンジポンプを用いてギ酸(2−メチルアセト酢酸銀に対して0.7倍モル量)を30分間かけて滴下した。ギ酸の滴下終了後、25℃にて反応液をさらに1時間撹拌することにより、銀インク組成物を得た。各配合成分の種類と配合比を表1に示す。表1中、「含窒素化合物(モル比)」とは、金属銀の形成材料の配合量1モルあたりの含窒素化合物の配合量(モル数)([含窒素化合物のモル数]/[金属銀の形成材料のモル数])を意味する。「還元剤(モル比)」も同様に、金属銀の形成材料の配合量1モルあたりの還元剤の配合量(モル数)([還元剤のモル数]/[金属銀の形成材料のモル数])を意味する。
【0188】
(受容層用組成物の製造)
表2に示す物性のポリビニルアセタールBX−5(積水化学工業社製)を、キシレン及びエタノールの混合溶媒(キシレン:エタノール=1:1(質量比))に加えて、40℃で30分間撹拌して溶解させることにより、受容層用組成物として、濃度が5質量%のポリビニルアセタール溶液を得た。なお、表2中の「分子量」とは、積水化学工業社のカタログに記載の「計算分子量」である。
【0189】
(積層体の製造)
スピンコート法(3000rpmで5秒、次いで6000rpmで3秒)により、上記で得られた受容層用組成物をガラス製基材(厚さ1.5mm)の一方の主面(表面)上に塗布し、この塗布済み基材をオーブン内で200℃、10分の条件で乾燥させることにより、基材表面の全面に受容層(厚さ7μm)を形成した。
【0190】
次いで、エア式ディスペンサーを用い、上記で得られた銀インク組成物により印刷を行い、受容層上に幅370μm、長さ約60mmの線状のパターンを形成した。
次いで、オーブン内でこの印刷済み基材を80℃で30分乾燥させ、さらに、200℃の水蒸気(過熱水蒸気)が1気圧で充満した雰囲気下に、この基材を10分置いて加熱(焼成)処理することにより、導電層として線状の銀層(平均厚さ15〜20μm、最大厚さ25〜30μm)を受容層の表面上に形成し、目的とする積層体を得た。
【0191】
<積層体の評価>
(導電層の体積抵抗率の測定)
形成した銀層について、線抵抗値R(Ω)、断面積A(cm
2)、及び線長L(cm)を測定し、式「ρ=R×A/L」により、銀層の体積抵抗率ρ(μΩ・cm)を算出した。なお、線抵抗値Rはデジタルマルチメータ(エーディーシー社製「7352」)を用いて2端子法で測定し、断面積Aはレーザ顕微鏡(キーエンス社製「VK−X100」)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0192】
(導電層の幅の測定、線幅の差の算出)
形成した線状の銀層について、上記のレーザ顕微鏡を用いて幅(線幅)を測定した。そして、銀インク組成物の印刷パターンの線幅(370μm)と、この銀層の線幅との差を算出した。これらの結果を表2に示す。なお、印刷時の銀インク組成物の上述の幅も、上記のレーザ顕微鏡を用いて測定している。
【0193】
(受容層のTgの測定)
得られた積層体から一部の受容層を剥離させて測定試料とし、この測定試料を下記測定装置に下記要領で配置した。そして、測定試料を100℃以上の温度で加熱して水分を除去した後、常温まで降温させ、次いで下記測定条件で、測定試料が相転移し、比熱が変化した温度を測定して、ガラス転移点(Tg)とした。結果を表2に示す。
また、この受容層のTgと、上記で算出した線幅の差(銀インク組成物の印刷パターンの線幅と銀層の線幅との差)との関係を表すグラフを、
図3に示す。さらに、受容層の形成に用いた高分子化合物のTgと、上記で算出した線幅の差との関係を表すグラフを、
図4に示す。
測定装置:示差熱分析装置(SII社製「DSC6200R」)
容器:アルミニウム
リファレンス:アルミナ
測定試料の使用量:約10mg
測定条件:10℃/分の昇温速度で−30℃から200℃まで測定試料を昇温させ、次いで、10℃/分の降温速度で200℃から−30℃まで測定試料を降温させ、次いで、再度、10℃/分の昇温速度で−30℃から200℃まで測定試料を昇温させる過程で、Tgを測定した。
【0194】
<積層体の製造及び評価>
[実施例2]
ポリビニルアセタールBX−5に代えて、表2に示す物性のポリビニルアセタールKS−1(積水化学工業社製)を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表2、
図3及び
図4に示す。
【0195】
[実施例3]
ポリビニルアセタールBX−5に代えて、表2に示す物性のポリビニルアセタールKS−5(積水化学工業社製)を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表2、
図3及び
図4に示す。
【0196】
[比較例1]
ポリビニルアセタールBX−5に代えて、表2に示す物性のポリビニルアセタールBL−1(積水化学工業社製)を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表2、
図3及び
図4に示す。
【0197】
[比較例2]
ポリビニルアセタールBX−5に代えて、表2に示す物性のポリビニルアセタールBH−6(積水化学工業社製)を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表2、
図3及び
図4に示す。
【0198】
【表1】
【0199】
【表2】
【0200】
上記結果から明らかなように、実施例1〜3の積層体では、受容層の形成にTgが高い高分子化合物(I)を用いて、Tgが高い受容層を形成したことで、銀層の縮小が抑制され、目的とするパターンでほぼ設計どおりの大きさ及び形状で銀層が形成されていた。より具体的には、印刷時のインク層(銀インク組成物)の線幅が370μmであったのに対し、形成された銀層の線幅は310〜325μmであり、印刷された銀インク組成物から銀層を形成するまでの過程で、受容層の表面に対して平行な方向におけるパターンの収縮が抑制されていた。また、実施例1〜3の積層体は、銀層の体積抵抗率が低く、導電性に優れていることも確認された。
【0201】
これに対して、比較例1〜2の積層体では、受容層の形成にTgが低い高分子化合物を用いて、Tgが低い受容層を形成したことで、銀層の縮小が抑制されていなかった。すなわち、印刷時のインク層(銀インク組成物)の線幅が370μmであったのに対し、形成された銀層の線幅は250〜270μmであり、印刷された銀インク組成物から銀層を形成するまでの過程で、受容層の表面に対して平行な方向におけるパターンの収縮が顕著であった。
【0202】
図3から明らかなように、得られた積層体においては、受容層のTgが大きくなるに従い、線幅の差は小さくなる、すなわち銀層の縮小抑制効果は高くなる傾向が見られた。そして、受容層のTgの変化量に対する、線幅の差の変化量の割合は、Tgが75℃以上の領域においては、Tgが75℃未満、特に70℃以下の領域よりも小さかった。すなわち、受容層のTgが75℃以上の場合、銀層の縮小抑制効果が高いことに加えて、受容層のTgが互いに異なっても、銀層の縮小抑制効果は安定しており、銀層の線幅は変動が小さかった。これに対して、受容層のTgが75℃未満の場合、銀層の縮小抑制効果が低いことに加えて、受容層のTgが互いに異なると、銀層の縮小抑制効果は大きく変動しており、銀層の線幅は変動が大きかった。
【0203】
また、
図4から明らかなように、高分子化合物のTgが大きくなるに従い、線幅の差は小さくなる、すなわち銀層の縮小抑制効果は高くなる傾向が見られた。また、高分子化合物のTgの変化量に対する、線幅の差の変化量の割合は、Tgが75℃以上の領域においては、Tgが75℃未満、特に70℃以下の領域よりも小さかった。受容層の形成に用いた高分子化合物のTgと、線幅の差との関係には、
図3及び4から明らかなように、受容層のTgと線幅の差との関係と同様の傾向が見られた。
【0204】
さらに、これらの結果から、導電層をラインアンドスペースパターンとする場合に、隣り合う導電層同士の間の距離(スペースの幅)は、実施例1〜3の場合と同様の受容層及び導電層を備えた積層体においては、最小で50μm程度とすることが可能であるが、比較例1〜2の場合と同様の受容層及び導電層を備えた積層体においては、最小でも100μm程度となってしまうことが判った。このように、本発明に係る積層体は、導電層が微細なパターンの場合に、特に好適であることが確認された。