特許第6596786号(P6596786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596786
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】弾性表面波センサおよび検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/02 20060101AFI20191021BHJP
   G01N 29/48 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   G01N29/02 501
   G01N29/48
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-126761(P2015-126761)
(22)【出願日】2015年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-9492(P2017-9492A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 碧
(72)【発明者】
【氏名】小貝 崇
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−517225(JP,A)
【文献】 特開2013−096866(JP,A)
【文献】 特開2015−052524(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/079789(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0305221(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0281369(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/00 − G01N 9/36
G01N 29/00 − G01N 29/52
G01N 33/48 − G01N 33/98
H03H 3/08 − H03H 3/10
H03H 9/145
H03H 9/25
H03H 9/42 − H03H 9/44
H03H 9/64
H03H 9/68
H03H 9/72
H03H 9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応場を伝搬した弾性表面波の変化として前記反応場で生じた反応を検出する弾性表面波センサであって、
前記反応場上に設けられ、抗体と抗原との双方または何れか一方を含む溶液と、前記反応場の洗浄に供される洗浄液と、前記反応の促進、抑制、初期化の何れかに供される液体との全てまたは一部を前記反応場上に保つ保湿部材と、
前記保湿部材に保持された液状物質の余剰分が前記保湿部材から突出し得る距離に亘った位置に前記保湿部材に対して空間を介して配置され、前記溶液と前記洗浄液と前記液体との何れかである液状物質が前記保湿部材に供給されたときに、前記余剰分を吸収する吸湿部材と、
を備えたことを特徴とする弾性表面波センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波センサにおいて、
前記吸湿部材は、
前記保湿部材の保湿容量よりも大きい容量の吸湿容量を有することを特徴とする弾性表面波センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の弾性表面波センサにおいて、
前記保湿部材から前記吸湿部材に吸湿容量を超えて導かれた液状物質の余剰分を前記吸湿部材の外部に誘導する経路を更に備えたことを特徴とする弾性表面波センサ。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1項に記載の弾性表面波センサにおいて、
前記吸湿部材は、
吸湿部材本体と、
前記吸湿部材本体と前記保湿部材との間に少なくとも一方の端部が離れて設けられ、前記保湿部材から前記吸湿部材本体に前記液状物質の余剰分を導く糸状体と、
を備えたことを特徴とする弾性表面波センサ。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1項に記載の弾性表面波センサにおいて、
前記吸湿部材は、
前記保湿部材の面に対向して配置されたことを特徴とする弾性表面波センサ。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れか1項に記載の弾性表面波センサにおいて、
前記保湿部材は、
複数の側面を有する立体として形成され、
前記吸湿部材は、
前記保湿部材の複数の側面に個別に対向して配置されたことを特徴とする弾性表面波センサ。
【請求項7】
弾性表面波センサの反応場を伝搬した弾性表面波の変化として前記反応場で生じた反応を、前記弾性表面波センサを用いて検出する検出方法であって、
液状の第1試料を前記反応場上に保持する第1段階と、
前記第1試料を前記反応場上に保持した状態で、前記反応場を伝搬した第1弾性表面波を検出する第2段階と、
前記第1試料が保持された前記反応場上に対して、前記反応の促進、抑制、初期化の何れかに供される液状の第2試料を滴下していくことで、前記反応場上に保持される前記第1試料を第2試料に置き換えることにより、前記第2試料を前記反応場上に保持する第3段階と、
前記第2試料を前記反応場上に保持した状態で、前記反応場を伝搬した第2弾性表面波を検出する第4段階と、
前記第1弾性表面波と前記第2弾性表面波とから、前記反応場を伝搬した弾性表面波の変化を検出する第5段階と、
を含む検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物を置換できる弾性表面波センサおよび検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定試料中の物質を検出する手法としてラテラルフロー法が知られており(特許文献1参照)、ラテラルフロー法の一種にイムノクロマトグラフィー法での2種類の抗体で標的物質を挟み込むサンドイッチアッセイ法がある。サンドイッチアッセイ法を用いて、例えば抗原を検出する場合、抗原抗体反応に関与する1次抗体が組み込まれたメンブレンに、標識である2次抗体と抗原とを含む混合液からなる被測定試料を滴下する。滴下された被測定試料中の抗原とメンブレン中の1次抗体との間で抗原抗体反応が生じると、1次抗体と抗原とが相互に結合され、抗原抗体反応の生成物質として1次抗体と抗原との複合体が形成される。この複合体中の抗原に結合している2次抗体(標識)を観察すれば、上記抗原抗体反応に関与した物質(抗原)を視覚的に判別することができる。
【0003】
また、従来、各種物質の検出や物性値等の測定を行うための弾性表面波センサが知られている(特許文献2参照)。この種の弾性表面波センサは、圧電基板上に反応場を挟んで櫛形の送信電極と受信電極とが対向配置された構造を有している。この弾性表面波センサを用いれば、サンドイッチアッセイ法において、視覚観察によらずに、抗原抗体反応に関与する物質等を検出することができる。
【0004】
詳細には、抗原抗体反応に関与する1次抗体を弾性表面波センサの反応場に固定化しておき、その上に多孔性基材を設置し、抗原と2次抗体とが混合された被測定試料を上記多孔性基材に滴下する。そして、弾性表面波センサの送信電極に励振信号を供給して圧電基板を励振させる。反応場上の1次抗体と被測定試料中の抗原との間で抗原抗体反応が生じると、弾性表面波センサの反応場上に1次抗体と抗原との複合体が形成される。この場合、弾性表面波センサの圧電基板上を伝搬する弾性表面波の位相が抗原抗体反応の前後で変化し、この変化した弾性表面波を受信電極で受信して得られる特性変化を電気信号の増幅変化としてとらえる。この様にして、受信電極の電気信号から抗原抗体反応を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−189355号公報
【特許文献2】特開2013−096866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本発明者は、サンドイッチアッセイ法において弾性表面波センサを用いる場合、抗原と2次抗体を事前に混合した液体を1次抗体と反応させて測定するよりも、反応場にて1次抗体と抗原を反応させた後に2次抗体を供給し反応させて測定する方が、抗原抗体反応を示す弾性表面波の特性変化を大きくすることができることを見出した。
この場合、被測定物質の抗原で反応場上の多孔性基材を満たして表面の1次抗体と抗原を反応させた後、2次抗体に置換する必要がある。
【0007】
しかしながら、従来技術による弾性表面波センサによれば、反応場は一様に濡れることが条件であり、そのためには多孔性基材の吸水容量まで滴下することが必要であり、第1被測定試料が弾性表面波センサの反応場上の多孔性基材に一旦浸み込むと、新たに別の第2被測定試料で多孔性基材を満たすことは困難となり、多孔性基材中の第1被測定試料を第2被測定試料で置換することは困難である。
【0008】
ここで、上述の多孔性基材に浸み込んだ第1被測定試料を回収する手法の一つとして、特許文献1に記載されたラテラルフロー法のように、多孔性基材に吸湿部材を接触させ、第1被測定試料を吸湿部材で吸い取る手法が挙げられる。しかしながら、この手法によれば、吸湿部材により多孔性基材中の第1被測定試料が過剰に吸い取られると、多孔性基材中に液体が無くなり、弾性表面波センサの反応場が乾燥する場合がある。この場合、必要な反応時間内に第1被測定試料を供給し続けないと、第1被測定試料の抗原抗体反応の反応時間を確保することが困難になる。
【0009】
従って、本発明の目的の一つは、反応場上の多孔性基材中の溶液を保持しつつ、試料の滴下のみで反応場上の試料を入れ替えることができる弾性表面波センサおよび検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一態様による弾性表面波センサは、反応場を伝搬した弾性表面波の変化として前記反応場で生じた反応を検出する弾性表面波センサであって、保湿部材、吸湿部材を備えている。保湿部材は、前記反応場上に設けられ、抗体と抗原との双方または何れか一方を含む溶液と、前記反応場の洗浄に供される洗浄液と、前記反応の促進、抑制、初期化の何れかに供される液体との全てまたは一部を前記反応場上に保つ。吸湿部材は、前記保湿部材に保持された液状物質の余剰分が前記保湿部材から突出し得る距離に亘って隔たった位置に前記保湿部材と空間を介して配置され、前記溶液と前記洗浄液と前記液体との何れかである液状物質が前記保湿部材に供給されたときに、前記余剰分を吸収する。
【0011】
ここで、前記溶液と前記洗浄液と前記液体とのうち、何れか一つの液状物質(例えば、前記溶液)が保湿部材を満たした状態で別の液状物質(例えば、前記液体)が保湿部材に供給されると、保湿部材に保持された液状物質の量が保湿容量を超え、前記一つの液状物質の一部が、保持部材に保持された液状物質の余剰分となって膨潤し、前記一つの液状物質に押し出されるようにして保湿部材から突出する。保湿部材から突出した前記一つの液状物質の一部が吸湿部材に接すると、前記一つの液状物質の一部が吸湿部材に吸い取られて保湿部材から吸湿部材に移動する。このため、保湿部材に保持された前記一つの液状物質の量が減少する。
【0012】
このとき、保湿部材に対する前記別の液状物質の供給を継続すると、保湿部材から吸湿部材への前記一つの液状物質の移動が継続され、保湿部材に保持された前記一つの液状物質が減少した分だけ保湿部材に保持される前記別の液状物質の量が増加する。そして、保湿部材から吸湿部材への前記一つの液状物質の移動が終了すると、反応場上の保湿部材に保持された前記一つの液状物質が前記別の液状物質に置換された状態になる。このように反応場上の液状物質が置換される過程で、保湿部材には、前記一つの液状物質および前記別の媒体の一方または両方が保持されるので、反応場が液状物質で浸潤された状態に維持される。
【発明の効果】
【0013】
従って、本発明によれば、反応場上の多孔性基材の溶液を保持しつつ、試料の滴下のみで反応場上の試料を入れ替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による弾性表面波センサの全体構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施形態による弾性表面波センサに備えられたセンサ部の構成を模式的に示す図である。
図3】本発明の実施形態による弾性表面波センサの動作を説明するための図であり、反応場上の液状の試料を置換する原理を説明するための図である。
図4】本発明の実施形態による弾性表面波センサの反応場上の液状の試料を置換する原理を補足説明するための図である。
図5】本発明の実施形態による弾性表面波センサの効果を説明するための図であり、反応場上での抗原抗体反応による位相変化量の比較例を示す図である。
図6】本発明の実施形態による弾性表面波センサに備えられた保湿部材と吸湿部材との配置の変形例を模式的に示す図である。
図7】本発明の実施形態による弾性表面波センサを用いた測定プロセスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態による弾性表面波センサ100の全体構成を模式的に示す図である。
図1の上段側には、弾性表面波センサ100の上面図が示され、下段側には、弾性表面波センサ100の側面図が示されている。
【0016】
弾性表面波センサ100は、プリント基板110と、プリント基板110上に配置されたセンサ部120と、センサ部120の反応場122上に設けられた保湿部材130と、保湿部材130の近傍に所定の距離Lだけ離間して配置された吸湿部材140とを備えている。吸湿部材140には、排出経路150が任意的に設けられる。
【0017】
図2は、本発明の実施形態による弾性表面波センサ100に備えられたセンサ部120の構成を模式的に示す図である。
センサ部120は、圧電基板121、反応場122、櫛形の送信電極123および受信電極124を備えている。ここで、圧電基板121は、弾性表面波Wを伝搬させることができるものであれば、特に限定されないが、例えば36度Y板90度X軸伝播の水晶基板であり、または、36度Y板X軸伝播タンタル酸リチウム(LiTaO3)である。弾性表面波Wは、圧電基板121の表面に沿って伝搬する波であり、例えば、横波の伝播するすべり弾性表面波である。
【0018】
反応場122は、試料が載置される領域であり、送信電極123と受信電極124との間の弾性表面波Wの伝搬経路となる圧電基板121の表面に形成されている。本実施形態では、反応場122上に載置される試料は液状物質である。以下の説明において、試料は、液状物質を意味する。反応場122には、例えば、圧電基板121上に蒸着された金属膜が形成される。金属膜の材料は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、等が挙げられ、特に限られるものではないが、反応場に滴下される試料に対して化学的に安定している金とすることが好ましい。
【0019】
送信電極123および受信電極124は、反応場122を挟むようにして圧電基板121上に配置されている。送信電極123は、入力端子Sと固定端子Gとの間に印加される高周波発振信号により励振されて圧電基板121上に弾性表面波Wを発生させるための要素である。受信電極124は、圧電基板121上の反応場122を伝搬した弾性表面波Wを受信するための要素である。送信電極123および受信電極124は、それぞれ、試料が付着することで測定精度が低下することを回避するため、樹脂又はガラス等の封止部材(図示省略)により密閉されている。
【0020】
なお、送信電極123および受信電極124は、受信電極124に反射器を用いることで弾性表面波を反射させて送信電極123によって送信と受信を行う構成でもよい。この場合、反射器は、弾性表面波を機械的に反射するため、樹脂又はガラス等の封止部材は受信電極124に不要であり、封止部材は送信電極123にのみに備えればよく、また、入出力の端子も1つでよい。また、この場合、反射器は、弾性表面波の4分の1波長の櫛歯電極とすることが好ましい。更に、基板端面での反射を利用してもよく、弾性表面波を反射可能であれば、反射器として任意の手段を用いることができる。
【0021】
説明を図1に戻す。センサ部120の反応場122上には、保湿部材130が配置されている。保湿部材130は、液状の試料を反応場122上に保持するための要素であり、例えば多孔性基材である。保湿部材130に保持される試料は、抗体と抗原との双方または何れか一方を含む溶液と、反応場122の洗浄に供される洗浄液と、上記抗原抗体反応の促進、抑制、初期化の何れかに供される液体との全てまたは一部である。
【0022】
例えば、保湿部材130は多孔性基材である。ただし、保湿部材130は、必ずしも多孔性の素材に限らず、液状の試料を反応場表面に保持することができ、且つ、吸湿部材140等から反応場122への試料の逆流を阻止し得ることを限度に、保湿部材130は任意の素材であり得る。保湿部材130として使用し得る素材を次に例示する。
・紙、スポンジ、その他の保湿部材
・メンブレン(ラテラルフロー用テストストリップに使用される部材、例えば、ニトロセルロースやナイロン等)
・ビニールテープ、プラスティックチューブ、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックシート、その他の非保湿材
・液体を保持することができる構造体(例えば、プール)
【0023】
本実施形態では、概略矩形の反応場122の1辺に、テープ状の保湿部材130の一端を合わせるようにして、保湿部材130の一部が反応場122上に位置するように配置されている。本実施形態では、反応場122上に位置する保湿部材130の一部を除く残りの部分は、反応場122に液状の試料を導くための誘導経路として機能する。この経路上の保湿部材130に液状の試料を滴下することにより、試料が反応場122に導かれる。誘導経路による導入方向は任意に設定することができ、伝搬方向の水平面/垂直面どちらからでもよい。
【0024】
反応場122に液状の試料を導くための上記誘導経路の部位は、例えばスロープ状に形成され、且つ(又は)、吸水性のない素材で構成されてもよい。また、このような誘導経路は、毛細管現象を利用して液状の試料を移送する素材であってもよい。上記誘導経路を設けた場合、液状の被測定試料が上記誘導経路を移動する過程で撹拌され、液状の試料に含まれる複数種類の物質(溶質)を混合することができる。
【0025】
即ち、上記誘導経路は、滴下された試料を反応場122に運搬する機能と、滴下された試料を撹拌する機能を有している。ただし、反応場122に液状の試料を導くための誘導経路は任意的な要素であり、省略してもよい。上記誘導経路を省略した場合、保湿部材130は、例えば反応場122上にのみ配置され、液状の試料は、例えば反応場122上の保湿部材130に直接的に滴下される。
【0026】
センサ部120の送信電極123(図2)上には、ガラス等の封止材(図示なし)を挟んで吸湿部材140が配置されている。吸湿部材140は、保湿部材130に保持された試料が膨潤したときに保湿部材130から突出した余剰分を吸収するための要素である。吸湿部材140は、保湿部材130に先に保持された試料を、後で保湿部材130に追加される試料の滴下等に応じて保湿部材130から吸収することができ、保湿部材130に保持された試料を実質的に置換することができる吸湿容量を有している。
【0027】
例えば、吸湿部材140は、保湿部材130の保湿容量よりも大きい容量の吸湿容量を有している。例えば、吸湿部材140の吸湿容量は、反応場122に配置された保湿部材130の保湿容量に、保湿部材130に保持される液体を置換する回数を乗じた容量以上に設定される。
ただし、上記の例に限定されず、反応場で反応に寄与しなかった余分な試料を他の試料に置換することができることを限度に、吸湿部材140の吸湿容量は任意に設定し得る。
また、保湿部材130と吸湿部材140との間の最小距離を後述の所定距離Lとすることを限度に、吸湿部材140の形状は任意に設定し得る。
【0028】
吸湿部材140は、上述の溶液、洗浄液、液体の何れかである試料が保湿部材130に供給されたときに、保湿部材130に保持された試料の余剰分が保湿部材130から突出する所定距離Lに亘って隔たった位置に配置されている。即ち、吸湿部材140は、保湿部材130の端部から所定距離Lだけ離間して配置されている。このような所定距離Lを設定する目的は、反応場122を乾燥させず、且つ、余剰分の試料が吸湿部材140から保湿部材130に逆流することを防止するためである。
【0029】
ここで、所定距離Lは、例えば、保湿部材130に保持された試料の余剰分(保湿部材130の保湿容量を超えた分)が膨潤により保湿部材130から突出する距離の上限値以下に設定される。また、所定距離Lは、例えば、保湿部材130に保持された試料が吸湿部材140に吸い取られる過程で、保湿部材130に所望量の試料を残して、保湿部材130と吸湿部材140との間の試料の移動を抑止し得る距離の下限値以上に設定される。従って、所定距離Lは、上記の下限値以上、且つ、上記の上限値以下の距離に設定される。ただし、所定距離Lは、上記の例に限定されず、保湿部材130に保持された試料を置換することができることを限度に、任意に設定し得る。
【0030】
吸湿部材140として使用し得る素材としては、例えば、保湿部材130に保持された試料に含まれる水分等(水に限定されない。)によって組織的に吸湿機能が損なわれることが少なく、劣化の少ない素材が望ましい。そのような素材の例として、例えば、紙、スポンジ、高級水性分子、キャピラリー等が挙げられる。ただし、この例に限定されず、吸湿部材140として、液状の媒体を吸収する素材全般を用いることができ、また、異なる複数の素材を組み合わせて吸湿部材140を構成してもよい。
【0031】
吸湿部材140には、吸湿部材140の吸湿容量を超えて保湿部材130から吸湿部材140に導かれた試料の余剰分を吸湿部材140の外部に誘導して排出するための排出経路150が設けられている。排出経路150を設けることにより、吸湿部材140の吸湿容量を回復させることができる。排出経路150は、吸湿部材140に吸収された液体を外部に排出することができるものであれば、任意の部材で構成することができる。
【0032】
次に、本発明の実施形態による弾性表面波センサ100の動作を説明する。
ここでは、保湿部材130に保持された試料の置換に着目して、弾性表面波センサ100の動作を説明する。
【0033】
図3は、本発明の実施形態による弾性表面波センサ100の動作を説明するための図であり、反応場122上の液状の試料を置換する原理を説明するための図である。
図4は、本発明の実施形態による弾性表面波センサ100の反応場122上の液状の試料を置換する原理を補足説明するための図である。ここで、図4(A)は、本発明の実施形態によるサンドイッチアッセイ法において反応場122上の試料を入れ替る過程で反応場122上に保持される物質(抗体および抗原)を示す。また、図4(B)は、従来技術によるサンドイッチアッセイ法において反応場122上に保持される抗体および抗原を参考的に示す。
【0034】
弾性表面波センサ100で試料を測定する前の初期状態では、図3(A)に示すように、反応場122上に1次抗体B1を固定しておく。これにより、図4(A)の「初期状態」に示すように、反応場122上には、1次抗体B1が保持された状態となる。また、測定前に、抗原Aのみを含む液状の第1試料と、2次抗体B2のみを含む液状の第2試料と予めを別々に準備しておく。初期状態では、反応場122上には、1次抗体B1のみが存在し、第1試料および第2試料は滴下されていない。
【0035】
上記の初期状態において、測定者(弾性表面波センサ100を用いて測定作業を行う者)は、送信電極123(図2)の入力端子Sと固定端子Gとの間に高周波発振信号を印加し、圧電基板121上に弾性表面波Wを励起させる。以下では、初期状態で受信電極124により受信される弾性表面波Wを「弾性表面波W0」と称す。図示しない外部の信号処理装置は、初期状態で受信電極124により受信される電気信号の位相変化と振幅変化の電気的特性量を求める。
【0036】
続いて、測定者は、図3(B)に示すように、抗原Aを含む第1試料を反応場122上の保湿部材130に滴下し(1回目の滴下)、反応場122の表面で第1試料を1次抗体B1と反応させる。これにより、図4(A)の「1回目の滴下」に示すように、1次抗体B1と抗原Aとが抗原抗体反応により結合する。
【0037】
続いて、測定者は、反応場122上の保湿部材130に第1試料が保持された状態で、送信電極123(図2)の入力端子Sと固定端子Gとの間に高周波発振信号を印加し、圧電基板121上に弾性表面波Wを励起させる。以下では、保湿部材130に第1試料を保持させた状態で受信電極124により受信される弾性表面波Wを「弾性表面波W1」と称す。励起された弾性表面波W1は、反応場122が形成された圧電基板121の表面を受信電極124に向かって伝搬し、受信電極124により受信される。
【0038】
受信電極124で受信された弾性表面波W1の電気信号は、図示しない外部の信号処理装置に供給される。この信号処理装置は、弾性表面波W1から得られた電気信号から、弾性表面波W1の位相変化と振幅変化の電気的特性量を求め、この電気的特性量から第1試料の固定化量や、試料の粘度や密度等の第1試料の物理的特性を求める。
【0039】
具体的には、図示しない外部の信号処理装置は、反応場122上の保湿部材130に第1試料が滴下される前の初期状態で求めた電気的特性量と、保湿部材130に第1試料が滴下された状態で求めた電気的特性量の2つの測定データの差分から、第1試料の粘度や密度等を算出する。
【0040】
ここで、吸湿部材140が保湿部材130から所定距離Lだけ離間して配置されているので、第1試料(抗原A)と1次抗体B1の抗原抗体反応の必要な反応時間だけ、反応場122上の保湿部材130は、第1試料を保持し、且つ、吸湿部材140は、保湿部材130に保持された第1試料を吸収しない。このため、保湿部材130の吸水量のみの滴下で、反応場122上の第1試料の抗原抗体反応に必要な時間だけ、反応場122に第1試料を留めておくことができ、反応場が乾燥することなく抗原抗体反応をさせることができる。ただし、第1試料によって保湿部材130が完全に濡れており、液体の置換に必要なだけの容量が吸湿部材に残っていれば、第1試料の一部を保湿部材130が吸収しても良い。
【0041】
続いて、図3(C)に示すように、測定者は、2次抗体B2を含む第2試料を保湿部材130に滴下する(2回目の滴下)。これにより、図4(A)の「2回目の滴下」に示すように、抗原Aと2次抗体B2とが抗原抗体反応により結合し、反応場122上には、1次抗体と抗原Aと2次抗体との複合体が形成される。
【0042】
図3(C)の例では、簡略化のため、第2試料は、反応場122上に位置する保湿部材130に直接滴下されているが、図1に示す保湿部材130のうち、前述の誘導経路を形成する部位に第2試料を滴下してもよい。好ましくは、第2試料は、保湿部材130のうち、反応場122を挟んで吸湿部材140から離れる方向に位置する部位に滴下される。その理由は、第2試料により第1試料を吸湿部材140側に押し出すためである。測定者は、第2試料が保湿部材130に滴下されたときに、それまで保湿部材130に保持された第1試料が吸湿部材140側に移動するように、第1試料を滴下する部位を選択する。
【0043】
続いて、図3(D)に示すように、測定者が第2試料(抗体B2)の滴下を継続すると、保湿部材130に保持される第2試料の量が徐々に増加する。そして、保湿部材130に保持された第1試料の量と第2試料の量の和が保湿部材130の保湿容量を超えると、保湿部材130に保持された第1試料が膨潤する。そして、膨潤した第1試料の一部が余剰分として保湿部材130から突出し、第1試料の一部が保湿部材130から吸湿部材140に向けて所定距離Lだけ突出した時点で吸湿部材140と接触する。
【0044】
保湿部材130から突出した第1試料の一部が吸湿部材140に接触すると、図3(E)に示すように、保湿部材130に保持された第1試料の一部は、例えば毛細管現象等により吸湿部材140に吸収される。このとき、測定者が第2試料の滴下を継続すれば、1回目に滴下された第1試料のうち、保湿部材130に残留する第1試料は、2回目に滴下された第2試料により吸湿部材140側に押し出され、保湿部材130に保持された第1被測定試料が吸湿部材140に吸収される。これにより、保湿部材130に保持された第1被測定試料が保湿部材130から吸湿部材140に移動し、反応場122上の保湿部材130に保持された第1被測定試料(抗原)が第2被測定試料(2次抗体)で置換される。
【0045】
ここで、反応場122上の保湿部材130に保持された第1被測定試料が第2被測定試料で置換される過程で、保湿部材130の保持された第1試料が減少し、保湿部材130から吸湿部材140へ移動する第1試料がなくなると、保湿部材130に滴下された第2試料が保湿部材130を満たし、その余剰分が発生すると、上述の第1試料と同様に膨潤して吸湿部材140に吸収される。
【0046】
測定者は、反応場122上の保湿部材130に保持された第1被測定試料が第2被測定試料で置換されると、保湿部材130に対する第2試料の滴下を終了する。第2試料の滴下が終了された直後も、保湿部材130に保持された第2試料の一部が吸湿部材140により吸収され、保湿部材130に保持された第2試料の量が徐々に減少する。保湿部材130に保持された第2試料の量が減少するにつれて、保湿部材130の保湿容量を超える第2試料の余剰分が少なくなる。この結果、保湿部材130から吸湿部材140への第2試料の移動(吸収)が停止する。
【0047】
ここで、本実施形態では、吸湿部材140の吸収容量は、保湿部材130の保湿容量よりも大きい容量であるため、保湿部材130から吸湿部材140に試料が移動する過程で、逆流が発生しない。従って、反応場122上の保湿部材に保持された第1試料が第2試料に置換された後、保湿部材130に第2試料が保持された状態が維持される。
【0048】
続いて、測定者は、反応場122上の保湿部材130に第2試料が保持された状態で、送信電極123(図2)の入力端子Sと固定端子Gとの間に高周波発振信号を印加し、圧電基板121上に弾性表面波Wを励起させる。以下では、保湿部材130に第2試料を保持させた状態で受信電極124により受信される弾性表面波Wを「弾性表面波W2」と称す。励起された弾性表面波W2は、反応場122が形成された圧電基板121の表面を受信電極124に向かって伝搬し、受信電極124により受信される。
【0049】
受信電極124で受信された弾性表面波W2の電気信号は、図示しない外部の信号処理装置に供給され、この信号処理装置は、弾性表面波W2の電気信号から、弾性表面波W2の位相変化と振幅変化の電気的特性量を求め、この電気的特性量から第2試料の物理的特性を求める。具体的には、図示しない外部の信号処理装置は、反応場122上の保湿部材130に第1試料が保持された状態で求めた前述の電気的特性量と、保湿部材130に第2試料が保持された状態で求めた上述の電気的特性量との2つの測定データの差分から、第2試料の粘度や密度等の物理的特性値を算出し、試料の濃度等を算出する。
【0050】
ここで、吸湿部材140が保湿部材130から所定距離Lだけ離間して配置されているので、第2試料(2次抗体B2)と第1試料(抗原A)の抗原抗体反応の必要な反応時間だけ、反応場122上の保湿部材130は、第2試料を保持し、且つ、吸湿部材140は、保湿部材130に保持された第2試料を吸収しない。このため、反応場122上の第1試料(抗原A)と第2試料(2次抗体B2)との抗原抗体反応に必要な時間だけ、反応場122は、第2試料で浸潤された状態に維持され、反応場が乾燥することなく抗原抗体反応をさせることができる。ただし、第1試料によって保湿部材が完全に濡れており、液体の置換に必要なだけの容量が吸湿部材に残っていれば、第一試料の一部を保湿部材が吸収しても良い。
【0051】
上述したように、本実施形態では、吸湿部材140と保湿部材130との間の距離として、第2試料が保湿部材130に供給されたときに、保湿部材130に保持された第1試料の余剰分(保湿部材130の保湿容量を超えた分)が膨潤により保湿部材130から突出する距離の上限値以下の距離を設定したことにより、反応場122上の保湿部材130に保持された試料の置換と、反応場122の乾燥の防止とを同時に実現することができる。従って、保湿部材130から膨潤により第1試料が突出する距離の範囲内に吸湿部材140を保湿部材130から所定距離Lだけ離間して配置することが重要である。
【0052】
保湿部材130から膨潤により第1試料が突出する距離は、例えば、第1試料の表面張力等を変化させる要素(例えば、粘性、界面活性剤の有無や濃度等)、保湿部材130の材質の特性(例えば、親水性や疎水性の程度、孔の大きさ等)や形状、保湿部材130と吸湿部材140との配置関係(例えば、鉛直方向に配置されているか、水平方向に配置されているか)等の各種の要素に応じて異なる。従って、所定距離Lは、上記の要素を考慮して決定される。
【0053】
上述の例では、反応場122上の試料を、抗原を含む第1試料と、2次抗体を含む第2試料とに分けたが、参考までに、図4(B)を参照して、従来のサンドイッチアッセイ法において、試料として抗原と2次抗体との混合液を反応場122上の保湿部材130に滴下した場合を説明する。
【0054】
図4(B)の「初期状態」に示すように、反応場122上の保湿部材130には、1次抗体B1のみが付着している。この初期状態で、図示しない外部の信号処理装置により、受信電極124により受信された弾性表面波から得られる電気信号の電気的特性量が求められる。続いて、測定者が保湿部材130に上記混合液を滴下すると、抗原抗体反応により混合液中の抗原が保湿部材130の1次抗体と結合する。これにより、1次抗体と抗原と2次抗体との複合体が反応場122上に形成される。
【0055】
そして、1次抗体と抗原と2次抗体との複合体が反応場122上の保湿部材130に保持された状態で、図示しない外部の信号処理装置により、受信電極124により受信された弾性表面波から得られる電気信号の電気的特性量が求められる。上記二つの電気的特性量の測定データから、上記混合液の物理的特性値が算出される。
【0056】
次に、図5を参照して、本発明の実施形態による効果の一例を説明する。
図5は、本発明の実施形態による弾性表面波センサ100の効果を説明するための図である。図5では、上述の図4(A)に示す試料の滴下を2回に分けた場合に受信電極124で受信される弾性表面波の位相変化量と、上述の図4(B)に示す試料を混合液として滴下を1回とした場合に受信電極124で受信される弾性表面波の位相変化量を示している。また、図5において、太い線のハッチングが付されたヒストグラムと、細い線のハッチングが付されたヒスとグラムは、それぞれ異なる実験ロットの測定結果を示している。即ち、図5は、2回の比較実験の結果を示している。
【0057】
図5から理解されるように、第1試料と第2試料の滴下を分けた場合に受信電極124で受信される弾性表面波の位相変化量は、試料を混合液として滴下した場合よりも有意に大きくなっている。このことは、試料によっては、第1試料と第2試料の滴下を分けた方が、受信電極124で受信される弾性表面波から得られる電気信号の強度が大きくなり、測定の感度を改善することができる場合があることを意味する。
【0058】
[変形例]
次に、保湿部材130と吸湿部材140との配置関係の変形例を説明する。
図6は、本発明の実施形態による弾性表面波センサ100に備えられた保湿部材130と吸湿部材140との配置関係の変形例を模式的に示す図である。
【0059】
図6(A)は、第1変形例を示す図である。
第1変形例では、保湿部材130と吸湿部材140とが、水平方向(横方向)に所定距離Lだけ隔てて配置されている。
第1変形例によれば、弾性表面波センサ100の鉛直方向(縦方向)のサイズを抑えることができる。
【0060】
図6(B)は、第2変形例を示す図である。
第2変形例では、保湿部材130と吸湿部材140とは、垂直方向(鉛直方向)に所定距離Lだけ隔てて配置され、吸湿部材140は、保湿部材130の面に対向して配置されている。
第2変形例によれば、弾性表面波センサ100の水平方向のサイズを抑えることができ、弾性表面波センサ100を小型化することができる。また、保湿部材130と吸湿部材140と間の対向面積が増えるので、吸湿部材140が保湿部材130から試料を吸収するのに必要とされる時間を短縮することができる。
【0061】
図6(C)は、第3変形例を示す図である。
第3変形例では、一つの保湿部材130と複数の吸湿部材140が、水平方向に所定距離Lだけ隔てて配置される。第3変形例では、保湿部材130は、複数の面を有する立体(多面体)として形成される。保湿部材130の外周の複数の面のそれぞれの面もしくは2つ以上の面に、吸湿部材140が個別に対向して配置されている。図6(C)の例では、保湿部材130の外周の4つの側面のそれぞれに吸湿部材140が個別に対向して配置されている。保湿部材130と吸湿部材140との間の対向面は距離Lだけ離間されている。ただし、各部材の対向面の間の距離は、全て等しい距離である必要はなく、それぞれ異なる距離であってもよい。
第3変形例によれば、弾性表面波センサ100の垂直方向のサイズを抑えつつ、側面に配置した吸湿部材140の数だけ吸湿容量を増やすことができる。
【0062】
図6(D)は、第4変形例を示す図である。
第4変形例では、吸湿部材140は、反応場122の下側に拡張された形状(例えば、L字状)を有している。上述の第1変形例と同様に、保湿部材130と吸湿部材140は水平方向に所定距離Lだけ隔てて配置されている。
第4変形例によれば、弾性表面波センサ100の水平方向および垂直方向のサイズを抑えつつ、吸湿部材140の吸湿容量を増やすことができる。
【0063】
図6(E)は、第5変形例を示す図である。
第5変形例では、吸湿部材140は、吸湿部材本体140aと糸状体140bとを組み合わせて構成されている。吸湿部材本体140aは、上述の第1変形例等の吸湿部材140と同様の素材である。ただし、第5変形例では、吸湿部材本体140aは、保湿部材130に近接して配置される必要はない。糸状体140bは、吸水性を有する任意の糸状の部材である。
【0064】
糸状体140bは、保湿部材130に保持された試料の余剰分を保湿部材130から吸湿部材本体140aに導くための要素である。糸状体140bは、吸湿部材本体140aと保湿部材130との間に、少なくとも一方の端部が離れて設けられている。図5(E)の例では、糸状体140bの二つの端部のうち、一方の端部が、保湿部材130から所定距離Lだけ離して配置され、他方の端部が、吸湿部材本体140aに接続されている。ただし、保湿部材130から吸湿部材本体140aへ試料の移動が可能であれば、糸状体140bの端部の両方が、保湿部材130および吸湿部材140から離れていても良い。
第5変形例によれば、吸湿部材140の配置の自由度を改善することができる。
【0065】
図6(F)は、第6変形例を示す図である。
第6変形例では、吸湿部材140は、直方体から構成され、その短辺の一つが保湿部材130から所定距離Lだけ離れるようにして配置されている。即ち、吸湿部材140の局所的な部位が、保湿部材130から所定距離Lだけ離間した位置に保湿部材130と対向するように配置されている。ただし、吸湿部材140は、直方体に限らず、吸湿性を発揮し得ることを限度に任意の形状に形成され得る。また、保湿部材130と対向する吸湿部材の局所的な部位は、辺に限らず、頂点であってもよい。
第6変形例によれば、保湿部材130と対向する吸湿部材140の部位を局所的に限定することにより、吸湿部材140の形状の自由度を改善することができる。
【0066】
次に、本発明の実施形態による弾性表面波センサを用いた測定手順の例を説明する。
図7は、本発明の実施形態による弾性表面波センサ100を用いた測定プロセスの例を示す図である。
図7に示すプロセスPAでは、第1段階以前に、測定者が、1次抗体を反応場122に直接固定しておく。第1段階で、測定者が2次抗体を含む試料を保湿部材130に滴下する。第2段階で、測定者が、抗原を含む試料を保湿部材130に滴下する。第3段階で、測定者が、3次抗体を含む試料を保湿部材130に滴下すると、反応場122上の試料が置換される。このプロセスPAは、上述した図3に示す測定手順に相当する。この場合の置換の原理も、上述の図3を参照して説明したものと同様である。
プロセスPAによれば、反応場122に固定された1次抗体を含む3種類の抗体を用いた抗原抗体反応に対応することが可能となる。また、2次抗体を標識できない場合や、さらなる信号の増幅に有効である。
【0067】
図7に示すプロセスPBでは、第1段階以前に、測定者が、1次抗体を反応場122に直接固定しておく。第1段階で、測定者が抗原を含む試料を保湿部材130に滴下する。第2段階から第4段階で、測定者が、洗浄液を保湿部材130に滴下することにより保湿部材130を洗浄する(洗浄を3回行う)。そして、第5段階で、測定者が、2次抗体を含む試料を保湿部材130に滴下すると、洗浄液が試料(2次抗体)で置換される。この場合の置換の原理も、上述の図3を参照して説明したものと同様である。
プロセスPBによれば、2次抗体を滴下する前に反応場122を洗浄するので、不要な抗原を除去することができる。
【0068】
図7に示すプロセスPCでは、第1段階以前に、測定者が、1次抗体を反応場122に直接固定しておく。第1段階で、測定者が抗原α1を含む試料を保湿部材130に滴下する。第2段階で、測定者が、2次抗体を含む試料を保湿部材130に滴下する。第3段階で、測定者が、解離液(例えば、HCl)を滴下し、抗原抗体反応により形成された複合体を解離させる。第4段階で、測定者が、保湿部材130に洗浄液を滴下し、保湿部材130に浸み込んだ解離液(解離された物質を含む)を洗浄液で洗浄する。第5段階で、測定者が、抗原α2を含む試料を保湿部材130に滴下すると、洗浄液が抗原α2の試料で置換される。第6段階で、測定者が、2次抗体を含む試料を保湿部材130に滴下すると、抗原α2の試料が2次抗体の試料で置換される。この場合の置換の原理も、上述の図3を参照して説明したものと同様である。
プロセスPCによれば、反応場122に一度形成された抗原(抗原α1)と抗体(2次抗体)の複合体を解離液によって解離させることにより、反応場122を再度反応可能な状態にすることができ、弾性表面波センサ100の再利用が可能になる。
【0069】
上述の実施形態では、本発明を弾性表面波センサ100として表現したが、上述した弾性表面波センサ100の動作説明等から明らかなように、本発明は、弾性表面波センサ100を用いた検出方法として表現することもできる。この場合、本発明による検出方法は、弾性表面波センサの反応場を伝搬した弾性表面波の変化として前記反応場で生じた反応を、前記弾性表面波センサを用いて検出する検出方法であって、液状の第1試料を前記反応場上に保持する第1段階と、前記第1試料を前記反応場上に保持した状態で、前記反応場を伝搬した第1弾性表面波を検出する第2段階と、前記反応場上に保持された前記第1試料を、前記反応の促進、抑制、初期化の何れかに供される液状の第2試料に置き換えて、前記第2試料を前記反応場上に保持する第3段階と、前記第2試料を前記反応場上に保持した状態で、前記反応場を伝搬した第2弾性表面波を検出する第4段階と、前記第1弾性表面波と前記第2弾性表面波とから、前記反応場を伝搬した弾性表面波の変化を検出する第5段階と、を含む検出方法として表現することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態および変形例を説明したが、本発明は、上述した実施形態および変形例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の変形、修正、置換、付加等が可能である。
例えば、保湿部材130(多孔性基材)に2次抗体等、反応場122上での反応に必要とされる任意の反応物質を予め保湿部材130に付着させておいてもよい。
【符号の説明】
【0071】
100…弾性表面波センサ、110…プリント基板、120…センサ部、121…圧電基板、122…反応場、123…送信電極、124…受信電極、130…保湿部材、140…吸湿部材、140a…吸湿部材本体(吸湿部材の一部)、140b…糸状体(吸湿部材の一部)、150…排出経路、A…抗原、B1…1次抗体、B2…2次抗体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7