特許第6596787号(P6596787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596787
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】スクロール圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   F04C18/02 311B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-153343(P2015-153343)
(22)【出願日】2015年8月3日
(65)【公開番号】特開2017-31895(P2017-31895A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勝博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅大
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−237251(JP,A)
【文献】 特開2015−021386(JP,A)
【文献】 米国特許第04645436(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して結合される第一ハウジングおよび第二ハウジングを有するハウジング部と、
前記ハウジング部内に収容され、前記第一ハウジングに固定された固定スクロール、および前記第二ハウジング内で前記固定スクロールに対して公転可能に設けられた旋回スクロールを備えた圧縮部と、
前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとの間に挟み込まれて、前記ハウジングの内外をシールする第一ガスケットと、
前記第一ガスケットを貫通して、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとを結合する前記結合ボルトと、
前記第一ハウジングと前記固定スクロールとの間に挟み込まれ、前記圧縮部の高圧側と低圧側とを仕切る第二ガスケットと、
前記第二ガスケットを貫通して、前記第一ハウジングと前記固定スクロールとを結合する固定ボルトと、
を備えるスクロール圧縮機。
【請求項2】
前記第一ハウジングと前記固定スクロールとが互いに対向する方向において、前記第一ハウジングと前記固定スクロールとが直接突き当たるスクロール位置固定部をさらに備える請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記第一ガスケットと前記第二ガスケットとが、同一のガスケット材料から形成される請求項1または2に記載のスクロール圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機は、金属製のハウジング内に、電動機やエンジンによって回転駆動される主軸と、主軸に対してオフセットされた位置に設けられた偏心軸と、この偏心軸に回転可能に支持される旋回スクロールと、旋回スクロールと対向する固定スクロールと、を有している。旋回スクロールは、上記主軸の軸線を中心として、自転を伴わずに公転すなわち旋回運動を行う。これにより、固定スクロールと旋回スクロールとの間に形成される圧縮室の容積を変化させ、圧縮室内に導かれた流体を圧縮する。
【0003】
スクロール圧縮機のハウジングは少なくとも二分割構造とされ、一方のハウジングに旋回スクロールや主軸が収容され、他方のハウジングに固定スクロールが一体に固定されている。これら二つのハウジングは、ボルト等で互いに結合されている。
このようなスクロール圧縮機を、例えば車両に備える場合、車両の走行時に、スクロール圧縮機に水等が掛かることがある。
【0004】
特許文献1には、水等のハウジング内への侵入を防ぐため、ハウジング同士の合わせ面にガスケット(第1のガスケット)を挟み込む構成が提案されている。ハウジング同士の合わせ面全体にガスケットを挟み込んで密着させることで、ハウジング同士の合わせ面への水等の侵入を防ぐ。
さらには、特許文献1には、旋回スクロールとハウジングとの間に、ガスケット(第2のガスケット)を設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−21386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ガスケットをハウジング同士の合わせ面に挟み込む構成においては、ハウジング同士を結合作業時にボルトを締め込んでいくと、ハウジング同士の間でガスケット(第1のガスケット)が潰れる。これに対し、ハウジング内に設けたガスケット(第2のガスケット)は、ボルトの締結力の影響を受けないので、ボルトの締め込みに応じて潰れることがない。これにより、ハウジング同士の間のガスケットと、ハウジングと旋回スクロールとの厚さが異なることになる。
すると、一方のハウジングに設けられた旋回スクロールと、他方のハウジングに固定された固定スクロールとの、主軸の軸方向に沿ったクリアランス(以下、これをチップクリアランスと称する)が狭まってしまう。
【0007】
本発明は、チップクリアランスを適正に管理することのできるスクロール圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明の第一の態様によれば、スクロール圧縮機は、互いに対向して結合される第一ハウジングおよび第二ハウジングを有するハウジング部と、前記ハウジング部内に収容され、前記第一ハウジングに固定された固定スクロール、および前記第二ハウジング内で前記固定スクロールに対して公転可能に設けられた旋回スクロールを備えた圧縮部と、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとの間に挟み込まれて、前記ハウジングの内外をシールする第一ガスケットと、前記第一ガスケットを貫通して、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとを結合する前記結合ボルトと、 前記第一ハウジングと前記固定スクロールとの間に挟み込まれ、前記圧縮部の高圧側と低圧側とを仕切る第二ガスケットと、前記第二ガスケットを貫通して、前記第一ハウジングと前記固定スクロールとを結合する固定ボルトと、を備える。
【0009】
このような構成によれば、第一ガスケットは、互いに結合された第一ハウジングと第二ハウジングとの間に挟み込まれ、第二ガスケットは、結合部材によって互いに結合された第一ハウジングと固定スクロールとの間に挟み込まれている。これにより、第一ハウジングと第二ハウジング、第一ハウジングと固定スクロールをそれぞれ結合しても、第一ガスケットおよび第二ガスケットを同等の厚さに維持することができる。このように、第一ハウジングと第二ハウジングとを結合して第一ガスケットが潰れても、第二ガスケットも同様に潰すことができるので、第一ガスケットと第二ガスケットとの潰れ具合の違いによって、固定スクロールと旋回スクロールとのチップクリアランスが影響を受けるのを抑えることができる。
【0010】
上記スクロール圧縮機において、前記第一ハウジングと前記固定スクロールとが互いに対向する方向において、前記第一ハウジングと前記固定スクロールとが直接突き当たるスクロール位置固定部をさらに備えてもよい。
【0011】
このような構成によれば、スクロール位置固定部において、第一ハウジングと固定スクロールとが直接突き当たることで、第一ハウジングと固定スクロールとの、互いに対向する方向における位置関係が拘束される。これにより、固定スクロールの位置を、より確実に固定することができ、チップクリアランスを適正に維持することができる。
【0012】
上記スクロール圧縮機において、前記第一ガスケットと前記第二ガスケットとが、同一のガスケット材料から形成されていてもよい。
【0013】
このような構成によれば、第一ガスケットと第二ガスケットとの厚さのばらつきを抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るスクロール圧縮機によれば、チップクリアランスを適正に管理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態に係るスクロール圧縮機の構成を示す断面図である。
図2】本発明の第二実施形態に係るスクロール圧縮機の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るスクロール圧縮機を図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係るスクロール圧縮機の構成を示す断面図である。
図1に示すように、この実施形態のスクロール圧縮機1Aは、装置の外形をなすハウジング部10と、ハウジング部10内に設けられた圧縮部30と、を備えている。このようなスクロール圧縮機1Aは、ハウジング部10に形成された吸入部(図示無し)からハウジング部10内に導入した作動流体を、圧縮部30で圧縮して高圧状態とし、ハウジング部10に形成された吐出部(図示無し)から外部に吐出する。このようにして圧縮された作動流体は、例えば空調機器等における冷媒として利用される。以下、各部の構成について詳細に説明する。
【0017】
ハウジング部10は、ハウジング本体(第二ハウジング)11と、蓋体(第一ハウジング)12と、を備える。
ハウジング本体11は、スクロール収容部11cと、駆動軸33を収容する軸収容部11sと、を有する。ハウジング本体11のスクロール収容部11c側の端部11aには、開口部13が形成されている。ハウジング本体11の軸収容部11s側の端部11bには、軸収容部11sに連通する軸挿通孔11hが形成されている。
【0018】
蓋体12は、ハウジング本体11の開口部13を塞ぐように設けられる。
蓋体12のハウジング本体11に対向する側の内側面12aには、内側面12aの外周面において周方向に連続する合わせ面12fが形成されている。合わせ面12fは、内側面12aの外周部からハウジング本体11側に延び、ハウジング本体11の開口部13の外周側で周方向に連続する合わせ面11fに対向する。
【0019】
さらに、蓋体12の合わせ面12fの内周側には、周方向に連続するサポート部(スクロール位置固定部)14が、蓋体12の径方向内方に張り出して形成されている。
【0020】
蓋体12のサポート部14の内周側には、蓋体12の径方向に間隔を空けて、内側面12aから固定スクロール31側に突出する円筒状の固定スクロール支持部18が形成されている。固定スクロール支持部18には、周方向に間隔を空けた複数箇所に、ボルト挿通孔18hが形成されている。ボルト挿通孔18hは、蓋体12の内側面12aとその反対側の外側面12bとを連通して形成され、固定スクロール31を蓋体12に固定するための固定ボルト(結合部材)19が挿通される。
【0021】
ハウジング本体11および蓋体12には、開口部13の外周側において、外方に張り出すフランジ部15、16が、開口部13の周方向に間隔を空けて複数設けられている(図1においては、2箇所のフランジ部15、16のみを示している。)。ハウジング本体11のフランジ部15には、雌ネジ孔15hが形成され、蓋体12のフランジ部16には、ボルト挿通孔16hが、それぞれ互いに連通する位置に形成されている。
【0022】
ハウジング本体11と蓋体12とは、周方向に連続する合わせ面11f、12f、および周方向複数箇所に設けられたフランジ部15、16をそれぞれ互いに対向させた状態で、複数本の結合ボルト21により結合される。各結合ボルト21は、蓋体12側から各フランジ部16のボルト挿通孔16hに挿通されるとともに、その先端部をハウジング本体11のフランジ部15の雌ネジ孔15hにねじ込んで締結される。
【0023】
圧縮部30は、蓋体12に固定された固定スクロール31と、ハウジング本体11内で固定スクロール31に対して公転可能に設けられた旋回スクロール32と、駆動軸33と、を備えている。
【0024】
固定スクロール31は、円盤状の端板34と、この端板34の一方側の表面34fから直交する方向に立設された固定ラップ35と、を有している。
【0025】
端板34の中央部には、一方側の表面34fと、他方の側の表面34gとを貫通する貫通孔34hが形成されている。また、端板34の表面34gには、周方向に間隔を空けた複数箇所に、雌ネジ孔34nが形成されている。
【0026】
固定ラップ35は、端板34の表面34fに対向する側から見て渦巻状に形成された壁体である。一例として固定ラップ35は、端板34の中心位置を中心とするインボリュート曲線をなすように構成されることが望ましい。
【0027】
このような固定スクロール31は、端板34の表面34gを、蓋体12に形成されたサポート部14および固定スクロール支持部18に対向させた状態で、複数本の固定ボルト19により蓋体12に固定される。各固定ボルト19は、蓋体12の外側面12b側から、固定スクロール支持部18に形成されたボルト挿通孔18hに挿通し、その先端部を端板34に形成された雌ネジ孔34nにねじ込むことで締結される。
【0028】
このようにして設けられた固定スクロール31の表面34gと、蓋体12の内側面12aとの間には、圧縮部30で圧縮された高圧の作動流体が吐出される、高圧空間S2としての吐出チャンバTが形成される。
【0029】
旋回スクロール32は、円盤状の端板41と、この端板41の固定スクロール31に対向する側の表面41fに設けられた渦巻状の旋回ラップ42と、を有している。
【0030】
端板41は、旋回ラップ42が設けられた表面41fとは反対側の表面41gに、軸支孔41hが形成されている。
【0031】
旋回ラップ42は、端板41の表面41fに対向する側から見て渦巻状に形成された壁体である。旋回ラップ42は、端板41の中心部を中心とするインボリュート曲線をなすように構成されることが望ましい。
【0032】
これらの固定ラップ35および旋回ラップ42は、固定ラップ35と旋回ラップ42とを互いに噛み合わせた状態で、ハウジング本体11のスクロール収容部11cに収容されている。
固定スクロール31の端板34および固定ラップ35と、旋回スクロール32の端板41および旋回ラップ42との間には、作動流体を圧縮する圧縮室Aが形成される。
【0033】
駆動軸33は、ハウジング本体11の軸収容部11sに設けられた一対の軸受43、44により、その中心軸C周りに回動自在に支持されている。駆動軸33の一端33aは、ハウジング本体11に形成された軸挿通孔11hからハウジング部10の外部に突出している。この駆動軸33の一端33aに、外部のモータやエンジン等を連結することで、駆動軸33は中心軸C回りに回転駆動される。
【0034】
軸受43と軸受44との間には、ハウジング本体11の軸収容部11sの内周面と駆動軸33の外周面との間を塞ぐシール部材45が設けられている。
【0035】
駆動軸33の他端33bには、駆動軸33の中心軸Cから側方にオフセットした位置に偏心軸Chを有する偏心軸46が、旋回スクロール32側に突出して設けられている。偏心軸46は、旋回スクロール32の端板41に形成された軸支孔41h内に軸受47を介して回動自在に連結されている。
駆動軸33を中心軸C回りに回転駆動させると、偏心軸46が、中心軸Cを中心とし、偏心軸Chの中心軸Cからのオフセット寸法を半径とした円周軌道に沿って旋回する。すると、旋回スクロール32が偏心軸46とともに、中心軸C回りに公転する。
【0036】
また、駆動軸33と旋回スクロール32の間には、駆動軸33の中心軸Cに対して偏心して旋回する旋回スクロール32によるアンバランスを解消するため、バランサ48が設けられている。
【0037】
このような圧縮部30においては、駆動軸33により旋回スクロール32を公転させると、ハウジング部10に形成された吸入部(図示無し)からハウジング部10内に導入される。ハウジング部10内において固定スクロール31および旋回スクロール32の外周側の低圧空間(低圧側)S1から、作動流体が圧縮室Aに吸入される。作動流体は、圧縮室A内において内周側に移動するにしたがって圧縮される。圧縮された作動流体は、固定スクロール31の端板34の中央部に形成された貫通孔34hから高圧空間(高圧側)S2である吐出チャンバT内を経て、ハウジング部10に形成された吐出部(図示無し)から外部に吐出される。
【0038】
ここで、上記スクロール圧縮機1Aには、蓋体12と、ハウジング本体11、固定スクロール31との間に、第一ガスケット50と、第二ガスケット51Aが挟み込まれている。
【0039】
第一ガスケット50は、ハウジング本体11の開口部13の外周側で周方向に連続する環状をなし、ハウジング本体11の合わせ面11fおよびフランジ部16の先端面16fと、蓋体12の合わせ面12fおよびフランジ部15の先端面15fと、の間に挟み込まれている。この第一ガスケット50により、外部からハウジング部10内への水等の侵入、ハウジング部10内から外部への作業流体の漏出を防ぐ。
この第一ガスケット50には、フランジ部16の先端面16fとフランジ部15の先端面15fとの間に挟み込まれることで、蓋体12とハウジング本体11とを結合する結合ボルト21の締結力(軸力)が作用する。
【0040】
第二ガスケット51Aは、固定スクロール支持部18の先端面18fと、固定スクロール31の端板34の表面34gとの間に挟み込まれている。この第二ガスケット51Aは、固定スクロール31および旋回スクロール32の外周側の低圧空間S1と、高圧空間S2である吐出チャンバTとの間をシールして区画する。
この第二ガスケット51Aには、固定スクロール支持部18の先端面18fと端板34の表面34gとの間に挟み込まれることで、固定スクロール31を蓋体12に固定する固定ボルト19の締結力(軸力)が作用する。
【0041】
ここで、第一ガスケット50および第二ガスケット51Aは、同一の板状のガスケット材料から形成されている。これにより、第一ガスケット50と第二ガスケット51Aとは、製造時における厚さのばらつきを抑え、同一の厚さとすることができる。
また、第一ガスケット50および第二ガスケット51Aは、同一平面状に配置されている。
【0042】
また、第二ガスケット51Aの外周側で、蓋体12のサポート部14の先端面14fと、固定スクロール31の端板34の外周部に形成された凸部34sとが、直接突き当たっている。凸部34sは、端板34の外周部に沿って連続し、端板34の表面34gに対して蓋体12側に突出するリブ状をなしている。
【0043】
上述したような構成のスクロール圧縮機1Aによれば、第一ガスケット50は、互いに結合された蓋体12とハウジング本体11との間に挟み込まれ、第二ガスケット51Aは、固定ボルト19によって互いに結合された蓋体12と固定スクロール31との間に挟み込まれている。これにより、蓋体12とハウジング本体11、蓋体12と固定スクロール31をそれぞれ結合しても、第一ガスケット50および第二ガスケット51Aを同様に潰し、同等の厚さに維持することができる。このように、蓋体12とハウジング本体11とを結合して第一ガスケット50が潰れても、第二ガスケット51Aも同様に潰すことができるので、第一ガスケット50と第二ガスケット51Aとの潰れ具合の違いによって、固定スクロール31と旋回スクロール32との、駆動軸33の中心軸C方向における間隔であるチップクリアランスが変動するのを抑えることができる。このようにして、スクロール圧縮機1Aにおけるチップクリアランスを適正に管理することが可能となる。
また、第二ガスケット51Aを用いることで、Oリング等と比較しても、高圧側である高圧空間S1と低圧側の低圧空間S2との間における高いシール性を確保することができる。
【0044】
また、サポート部14において、蓋体12と固定スクロール31とが直接突き当たることで、蓋体12と固定スクロール31とが、互いに対向する方向における位置関係が拘束される。これにより、固定スクロール31の位置を、より確実に固定することができる。これによって、スクロール圧縮機1Aにおけるチップクリアランスを適正に管理することができる。
【0045】
さらに、第一ガスケット50と第二ガスケット51Aとを、同一のガスケット材料から形成することで、第一ガスケット50と第二ガスケット51Aとを、容易に同じ厚さとすることができる。これによって、スクロール圧縮機1Aにおけるチップクリアランスを、より容易に管理することができる。
【0046】
(第二実施形態)
次に、本発明にかかるスクロール圧縮機の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態のスクロール圧縮機1Aに対し、蓋体12と固定スクロール31との間のシール構造の構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0047】
図2は、本発明の第二実施形態に係るスクロール圧縮機の構成を示す断面図である。
図2に示すように、この実施形態におけるスクロール圧縮機1Bにおいて、蓋体12と、ハウジング本体11、固定スクロール31との間に、第一ガスケット50と、第二ガスケット51Bが挟み込まれている。
【0048】
第一ガスケット50は、ハウジング本体11の開口部13の外周側で周方向に連続する環状をなし、ハウジング本体11の合わせ面11fおよびフランジ部16の先端面16fと、蓋体12の合わせ面12fおよびフランジ部15の先端面15fと、の間に挟み込まれている。この第一ガスケット50により、外部からハウジング部10内への水等の侵入、ハウジング部10内から外部への作業流体の漏出を防ぐ。
この第一ガスケット50には、フランジ部16の先端面16fとフランジ部15の先端面15fとの間に挟み込まれることで、蓋体12とハウジング本体11とを結合する結合ボルト21の締結力(軸力)が作用する。
【0049】
第二ガスケット51Bは、蓋体12のサポート部14の先端面14fと、固定スクロール31の端板34の表面34gの外周部と、の間に挟み込まれている。この第二ガスケット51Bは、固定スクロール31および旋回スクロール32の外周側の低圧空間S1と、高圧空間S2である吐出チャンバTと、の間をシールして区画する。
この第二ガスケット51Bには、蓋体12のサポート部14の先端面14fと端板34の表面34gとの間に挟み込まれることで、固定スクロール31を蓋体12に固定する固定ボルト19の締結力(軸力)が作用する。
【0050】
ここで、第一ガスケット50および第二ガスケット51Bは、同一の板状のガスケット材料から形成されている。
【0051】
また、第二ガスケット51Bの内周側で、蓋体12の固定スクロール支持部(スクロール位置固定部)18の先端面18fと、固定スクロール31の端板34の内周部に形成された凸部34tとが、直接突き当たっている。凸部34tは、周方向に連続し、端板34の表面34gに対して蓋体12側に突出するリブ状をなしている。
【0052】
上述したような構成によれば、第一ガスケット50は、互いに結合された蓋体12とハウジング本体11との間に挟み込まれ、第二ガスケット51Bは、固定ボルト19によって互いに結合された蓋体12と固定スクロール31との間に挟み込まれている。これにより、蓋体12とハウジング本体11、蓋体12と固定スクロール31をそれぞれ結合しても、第一ガスケット50および第二ガスケット51Bを同様に潰し、同等の厚さに維持することができる。このように、蓋体12とハウジング本体11とを結合して第一ガスケット50が潰れても、第二ガスケット51Bも同様に潰すことができるので、第一ガスケット50と第二ガスケット51Bとの潰れ具合の違いによって、固定スクロール31と旋回スクロール32との、駆動軸33の中心軸C方向における間隔であるチップクリアランスが変動するのを抑えることができる。このようにして、スクロール圧縮機1Aにおけるチップクリアランスを適正に管理することが可能となる。
【0053】
また、固定スクロール支持部18において、蓋体12と固定スクロール31とが直接突き当たることで、蓋体12と固定スクロール31とが、互いに対向する方向における位置関係が拘束される。これにより、固定スクロール31の位置を、より確実に固定することができる。これによって、スクロール圧縮機1Bにおけるチップクリアランスを適正に管理することができる。
【0054】
さらに、第一ガスケット50と第二ガスケット51Bとを、同一のガスケット材料から形成することで、第一ガスケット50と第二ガスケット51Bとの厚さのばらつきを抑えることができる。これによって、スクロール圧縮機1Bにおけるチップクリアランスを、より容易に管理することができる。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。即ち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上述した各実施形態においては、第一ガスケット50と、第二ガスケット51A、51Bとが、駆動軸33の中心軸Cに沿った方向において同一位置に配置されているが、これに限らない。第一ガスケット50と、第二ガスケット51A、51Bとを、駆動軸33の中心軸Cに沿った方向において互いに異なる位置に設けるようにしてもよい。その場合においても、第一ガスケット50と、第二ガスケット51A、51Bとを同一材料から形成すれば、厚さがばらつくのを抑えることができる。
【0056】
また、上述した実施形態で示したスクロール圧縮機1A、10Bの構成は一例に過ぎず、適宜構成を変更することが可能である。さらに、駆動軸33を外部から駆動する構成に限らず、ハウジング内にモータを内蔵した電動一体型スクロール圧縮機においても、上記と同様の構成を適用することが可能である。
【0057】
また、上述した実施形態、及び変形例の構成は、適宜組み合わせてよい。
【符号の説明】
【0058】
1A、1B スクロール圧縮機
10 ハウジング部
11 ハウジング本体(第二ハウジング)
11a 端部
11b 端部
11c スクロール収容部
11f 合わせ面
11h 軸挿通孔
11s 軸収容部
12 蓋体(第一ハウジング)
12a 内側面
12b 外側面
12f 合わせ面
13 開口部
14 サポート部(スクロール位置固定部)
14f 先端面
15 フランジ部
15f 先端面
15h 雌ネジ孔
16 フランジ部
16f 先端面
16h ボルト挿通孔
18 固定スクロール支持部(スクロール位置固定部)
18f 先端面
18h ボルト挿通孔
19 固定ボルト(結合部材)
21 結合ボルト
30 圧縮部
31 固定スクロール
32 旋回スクロール
33 駆動軸
33a 一端
33b 他端
34 端板
34f 表面
34g 表面
34h 貫通孔
34n 雌ネジ孔
34s 凸部
34t 凸部
35 固定ラップ
41 端板
41f 表面
41g 表面
41h 軸支孔
42 旋回ラップ
43 軸受
44 軸受
45 シール部材
46 偏心軸
47 軸受
48 バランサ
50 第一ガスケット
51A、51B 第二ガスケット
A 圧縮室
C 中心軸
Ch 偏心軸
S1 低圧空間(低圧側)
S2 高圧空間(高圧側)
T 吐出チャンバ
図1
図2