(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ジエン系高分子が、末端に官能基を有さない、シス−1,4結合の含有率が90%以上の1種又は2種以上のジエン系高分子で構成されたものである、請求項1〜3のいずれかに記載の剥離シート。
前記ゴム系エラストマーが、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリクロロプレン及びこれらの水素添加物、並びにポリイソブチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれかに記載の剥離シート。
前記ゴム系エラストマーが有する官能基が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基である、請求項1〜7のいずれかに記載に剥離シート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、基材と、該基材上にアンカーコート層と、該アンカーコート層上に剥離剤層とを有し、前記アンカーコート層は、末端に官能基を有するゴム系エラストマーを架橋剤によって架橋させた硬化皮膜であり、前記剥離剤層は、ジエン系高分子で構成された材料を硬化させた硬化皮膜である剥離シートである。
【0014】
〔基材〕
本発明の剥離シートにおける基材としては、上質紙、クレーコート紙、キャストコート紙、クラフト紙等の紙類、これらの紙類にポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、合成紙等の紙材シート、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;アセテート樹脂;ポリスチレン樹脂;塩化ビニル樹脂等の合成樹脂のシート等が挙げられる。基材は、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。
基材の厚さは、特に制限ないが、通常10〜300μmであればよく、好ましくは20〜200μmである。基材の厚さが10〜300μmであれば、アンカーコート層又は離型層を塗工する際の、乾燥や紫外線照射によって生じる剥離シートの熱収縮を抑制することができる。
【0015】
また、基材として合成樹脂を用いる場合は、基材のアンカーコート層を設ける表面は、基材とアンカーコート層との密着性を向上させるために、所望により酸化法や凹凸化法等の方法により表面処理を施すことができる。酸化法としては、例えば、コロナ放電表面処理、クロム酸表面処理(湿式)、火炎表面処理、熱風表面処理、オゾン・紫外線照射表面処理等が挙げられる。また、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は、基材の種類に応じて適宜選定されるが、一般には、コロナ放電表面処理法が効果及び操作性の点から、好ましく用いられる。また、プライマー処理を施すこともできる。
【0016】
〔アンカーコート層〕
本発明の剥離シートにおけるアンカーコート層は、末端に官能基を有するゴム系エラストマーを架橋剤によって架橋させた硬化皮膜である。
アンカーコート層に用いられるゴム系エラストマーとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリクロロプレン及びこれらの水素添加物、並びにポリイソブチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
ゴム系エラストマーは、柔軟性に富む硬化皮膜を形成することができることから、好ましくはポリブタジエン及び/又はポリイソプレンであり、より好ましくは末端に官能基を有するポリブタジエンであり、さらに好ましくは両末端に官能基を有する1,4−ポリブタジエンである。
【0017】
両末端に官能基を有する1,4−ポリブタジエンは、直鎖状のポリマーであることが好ましいが、少量の分岐を有するものであってもよい。この直鎖状のポリマーは、1,4−付加によりブタジエンを重合したものであり、分岐状のポリマーは、1,2−付加によりブタジエンを重合したものである。両末端に官能基を有する1,4−ポリブタジエンは、1,4−付加によりブタジエンを重合した単位の割合が50%以上であり、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
両末端に官能基を有する1,4−ポリブタジエン重合体の数平均分子量は、500〜20,000が好ましく、1,000〜12,000が特に好ましい。1,4−ポリブタジエン重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値である。
【0018】
ゴム系エラストマーが有する官能基は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
ゴム系エラストマーが有する官能基としては、より好ましくは、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基であり、さらに好ましくは、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基であり、特に好ましくは、水酸基及びカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基であり、最も好ましくは、水酸基である。
【0019】
アンカーコート層を構成する末端に官能基を有するゴム系エラストマーは、架橋剤により架橋させて硬化皮膜を形成するものである。
架橋剤は、ゴム系エラストマーの官能基の種類に応じて選択され、架橋反応が可能であれば特に制限されない。
ゴム系エラストマーの官能基が水酸基である場合には、架橋剤としては、メラミン系化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、ヒドラジド系化合物、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物、尿素系化合物、ジアルデヒド系化合物、及び金属キレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤であることが好ましい。
ゴム系エラストマーの官能基が水酸基である場合には、架橋剤としては、より好ましくはメラミン系化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、ヒドラジド系化合物、オキサゾリン系化合物、尿素系化合物及び金属キレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋剤であり、さらに好ましくはメラミン系化合物、イソシアネート系化合物及びエポキシ系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋剤であり、特に好ましくはメラミン系化合物及びイソシアネート系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋剤である。また、ゴム系エラストマーの官能基がアクリロイル基又はメタクリロイル基である場合には、架橋剤は光開始剤から選択されてもよい。これらの架橋剤として用いられる光開始剤には、ベンゾフェノン系光開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。
【0020】
末端に官能基を有するゴム系エラストマーが、両末端に水酸基を有する1,4−ポリブタジエンである場合には、架橋剤はメラミン系化合物及びイソシアネート系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。この組み合わせによると、メラミン系化合物及び/又はイソシアネート系化合物の配合量により、剥離力を調整することが可能であり、硬化皮膜中で架橋反応を略均一に進行させることができる。末端に官能基を有するゴム系エラストマーが、両末端に水酸基を有する1,4−ポリブタジエンである場合には、架橋剤がメラミン系化合物であることがより好ましく、メラミン系化合物により耐溶剤性を得ることができる。
架橋剤の含有量は、固形分量として、両末端に水酸基を有する1,4−ポリブタジエン100質量部に対して、好ましくは5〜40質量部、より好ましくは8〜20質量部である。
【0021】
メラミン系化合物としては、メチロール化メラミン樹脂、イミノメチロール化メラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、エチル化メラミン樹脂、プロピル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、ヘキシル化メラミン樹脂、オクチル化メラミン樹脂等が挙げられ、アルキル基の炭素数が3以下のアルキル化メラミン樹脂が好ましく、メチル化メラミン樹脂が特に好ましい。
【0022】
アンカーコート層を形成するために、末端に官能基を有するゴム系エラストマー及び架橋剤を含む、アンカーコート層用の樹脂組成物を用いることが好ましい。
アンカーコート層用の樹脂組成物は、酸性触媒を含んでいてもよい。酸性触媒を用いることで、基材とアンカーコート層との密着性の向上が可能である。酸性触媒としては、特に制限はなく、従来公知の酸性触媒の中から適宜選択して用いることができる。このような酸性触媒としては、例えばp−トルエンスルホン酸やメタンスルホン酸、アルキルリン酸エステル等の有機系の酸性触媒が好適である。
この酸性触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、末端に官能基を有するゴム系エラストマー100質量部に対して、0.1〜15質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0023】
アンカーコート層用の樹脂組成物は、使用上の利便性等を考慮して、有機溶剤を含む溶液の形態で用いられることが好ましい。有機溶剤としては、末端に官能基を有するゴム系エラストマーに対する溶解性が良好である公知の溶剤の中から適宜選択して用いることができる。このような溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、n−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶剤の量は、末端に官能基を有するゴム系エラストマー及び架橋剤を含むアンカーコート層用の樹脂組成物が塗工時に適度な粘度を有する量となるように適宜選定すればよい。
アンカーコート層用の樹脂組成物に含まれる固形分の量は、特に制限されないが、樹脂組成物全体量に対して、固形分濃度が、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%の範囲となるように調製することが好ましい。
【0024】
アンカーコート層用の樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、光開始剤、光安定剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
酸化防止剤としては、特に制限はなく、公知のホスファイト系酸化防止剤、有機イオウ系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤のいずれも使用が可能である。このような酸化防止剤の具体例としては、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート)、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、N,N'-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸アミド)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール、カルシウムビス(O-エチル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフォスフォネート)、2-メチル-4,6-ビス((オクチルチオ)メチル)フェノール、トリエチレングリコールビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、6-[3-(3,5-ジt-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイルオキシ]ヘキシル 3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4'-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、亜りん酸トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)エチルフォスファイト、N,N-ジオクタデシルヒドロキシルアミン等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、ゴム系エラストマー100質量部に対して0.001質量部以上1質量部以下含有させることが好ましく、0.003質量部以上0.5質量部以下がさらに好ましい。
【0025】
本発明の剥離シートにおけるアンカーコート層の製造方法としては、基材の少なくとも一方の表面に、末端に官能基を有するゴム系エラストマー及び架橋剤を含むアンカーコート層用の樹脂組成物を、基材の少なくとも一方の表面に塗工し、加熱処理し、末端に官能基を有するゴム系エラストマーを架橋剤により架橋させて硬化皮膜を形成する方法が挙げられる。
加熱処理温度は、100〜170℃が好ましく、130〜160℃がより好ましい。また、加熱処理時間は、特に制限ないが、30秒〜5分間が好ましい。
ゴム系エラストマーがポリブタジエン及び/又はポリイソプレンである場合には、所望により、熱硬化した皮膜に活性エネルギー線、例えば電子線や紫外線等を照射して、ポリブタジエン又はポリイソプレンの主鎖にある不飽和結合を反応させて架橋密度を調整してもよい。紫外線は、高圧水銀ランプ、キセノンランプ等で得られ、照射量は、通常100〜500mJ/cm
2である。
【0026】
アンカーコート層用の樹脂組成物の塗工方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、エアーナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ゲートロールコート法、ダイコート法等が使用できる。
【0027】
アンカーコート層用の樹脂組成物の塗工の厚さは、樹脂組成物を塗工し、加熱処理し、その後乾燥して得られたアンカーコート層の厚さが、好ましくは40〜545nmとなり、より好ましくは50〜500nmとなるように塗工することが好ましい。アンカーコート層の厚さが40〜545nmであると、剥離シートの製造工程で積層(巻回)した場合には、背面とブロッキングすることを抑制することができ、背面移行量を抑制することができる。また、アンカーコート層の厚さが40〜545nmであると、巻回した剥離シートの繰り出し時に発生する繰り出し帯電を抑制することができる。
【0028】
本発明のアンカーコート層は、実質的にシリコーン化合物及びフッ素含有化合物を含まない材料で構成されている。本明細書において、実質的にシリコーン化合物及びフッ素含有化合物を含まないとは、シリコーン化合物又はフッ素含有化合物のそれぞれの量が、好ましくは500μg/m
2以下、より好ましくは100μg/m
2以下のことをいう。本発明の剥離シートは、アンカーコート層が、実質的にシリコーン化合物及びフッ素含有化合物を含まない材料で構成されているため、剥離剤層を通過して、剥離剤層に貼着される粘着剤層に、シリコーン化合物が移行することがない。その結果、剥離シートが剥離された粘着剤から被着体にシリコーン化合物が放出されることがない。特に被着体が電子機器に用いられる電子部品である場合には、放出されるシリコーン化合物によって、導電不良等の悪影響を及ぼすことがない。また、廃棄物処理する際に、使用済みの剥離シートからフッ素を放出することがなく、環境負荷を軽減することができる。
【0029】
〔剥離剤層〕
本発明の剥離シートにおける剥離剤層は、ジエン系高分子で構成された材料を硬化させた硬化皮膜である。
剥離剤層を構成する材料であるジエン系高分子としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のジエン系ホモポリマーや、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)等のジエン系コポリマーが挙げられる。ジエン系高分子としては、特にポリブタジエン及び/又はポリイソプレンが好適に用いられる。ジエン系高分子の数平均分子量は100,000〜1,200,000が好ましく、より好ましくは100,000〜1,000,000である。1,4−ポリブタジエン重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値である。
【0030】
剥離剤層に用いられるジエン系高分子は、末端に官能基を有さない、シス−1,4結合の含有率が90%以上の1種又は2種以上のジエン系高分子で構成されたものであることが好ましく、所望の軽い剥離力を得る観点から、シス−1,4結合の含有率が90〜99%の1種又は2種以上のジエン系高分子で構成されたものであることがより好ましい。
【0031】
剥離剤層に用いられるジエン系高分子は、剥離力を低下させるという観点から、ポリブタジエン及び/又はポリイソプレンが好ましく、より具体的には、1,4−ポリブタジエンが好ましい。1,4−ポリブタジエンは、シス構造、トランス構造の何れでもよくいが、シス−1,4結合の含有率が90%以上のものが好ましく、シス−1,4結合の含有率が90〜99%以上のものがより好ましい。剥離力が若干重めのものとしては、1,4−ポリブタジエンに1,2−ポリブタジエンを含有させたものを用いてもよい。
【0032】
ジエン系高分子で構成された材料には、ジエン系高分子を紫外線照射により架橋を効率良く行うために、光重合開始剤や光増感剤を添加してもよい。
光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン等を挙げることができる。
光増感剤としては、ベンゾフェノン、P,P´−ジメトキシベンゾフェノン、P,P´−ジクロルベンゾフェノン、P,P´−ジメチルベンゾフェノン、アセトフェノン、アセトナフトン等の芳香族ケトン類が良い結果を与え、そのほか、テレフタルアルデヒド等の芳香族アルデヒド、メチルアントラキノン等のキノン系芳香族化合物も使用することができる。
【0033】
ジエン系高分子で構成された材料には、ジエン系高分子の他に、光重合開始剤や光増感剤の他に酸化防止剤等の成分を添加してもよい。
酸化防止剤としては、特に制限はなく、公知のホスファイト系酸化防止剤、有機イオウ系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の中から適宜選択して用いることができる。酸化防止剤の具体例としては、アンカーコート層に用いられる酸化防止剤として記述したものと同じものが挙げられる。これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、ジエン系高分子の劣化による重剥離化を抑制するという観点からは、ジエン系高分子100質量部に対して0.01質量部以上含有させることが好ましく、アンカーコート層を介在させて基材と剥離剤層との密着性を充分に保つという観点からは、ジエン系高分子100質量部に対して10質量部以下が好ましい。さらに好ましくは、ジエン系高分子100質量部に対し、0.003〜5質量部の範囲である。
剥離剤溶液は、ジエン系重合体及び必要に応じて配合するその他の成分(帯電防止剤、光開始剤、光増感剤、可塑剤、安定剤等)を有機溶媒に溶解させたものである。
【0034】
剥離剤層は、有機溶剤とジエン系高分子と必要に応じて他の成分とを含む剥離剤溶液を、アンカーコート層上に塗工して、形成することが好ましい。剥離剤溶液の溶媒として用いられる有機溶剤は、特に制限なく、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素ル等や、これらの混合溶媒が挙げられる。有機溶媒の量は、特に制限されず、剥離剤溶液が塗工時に適度な粘度を有する量となるように適宜選択すればよい。
剥離剤溶液は、塗工の利便さから、これらの有機溶剤を使用して、固形分濃度が、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.15〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜5質量%の範囲となるように調製することが好ましい。
【0035】
本発明の剥離シートにおける剥離剤層は、粘着剤層との剥離性能を良好にするために、ジエン系高分子で構成された材料に活性エネルギー線を照射することにより硬化させた硬化皮膜であることが好ましい。活性エネルギー線としては、電子線や紫外線等が挙げられるが、基材に与えるダメージ(劣化)が少ない点から、紫外線が好ましい。
紫外線照射に使用する紫外線ランプとしては、従来公知の高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、無電極ランプ等が使用できるが、ポリブタジエン又はポリイソプレンの硬化性の点で無電極ランプが最も適している。
【0036】
紫外線の照射量は、剥離剤層が硬化し、粘着剤層との剥離性能を良好にするという観点からは、20mJ/cm
2 以上が好ましく、剥離剤層が酸化劣化し、重剥離化を回避できるという観点からは、300mJ/cm
2 以下が好ましい。
すなわち、紫外線照射量は20〜300mJ/cm
2 の範囲が好ましく、特に20〜255mJ/cm
2 の範囲が好ましい。
【0037】
剥離剤溶液の塗工方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、エアーナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ゲートロールコート法、ダイコート法等が使用できる。
【0038】
剥離剤溶液の塗工の厚さは、樹脂組成物を塗工し、活性エネルギー線を照射処理し、その後乾燥して得られた剥離剤層の厚さが、好ましくは5〜300nmとなり、より好ましくは10〜250nmとなるように塗工することが好ましい。
【0039】
本発明の剥離剤層は、実質的にシリコーン化合物及びフッ素含有化合物を含まない材料で構成されている。実質的にシリコーン化合物及びフッ素含有化合物を含まないとは、シリコーン化合物又はフッ素含有化合物のそれぞれの量が、好ましくは500μg/m
2以下、より好ましくは100μg/m
2以下のことをいう。本発明の剥離シートは、アンカーコート層及び剥離剤層の両方共にシリコーン化合物及びフッ素含有化合物を含まない材料で構成されているため、剥離シートの剥離剤層に貼着された粘着剤層にシリコーン化合物が移行しない。その結果、剥離シートが剥離された粘着剤層から被着体にシリコーン化合物が放出されることがない。特に被着体が電子機器に用いられる電子部品である場合には、放出されるシリコーン化合物によって、導電不良等の悪影響を及ぼすことがない。また、廃棄物処理する際に、使用済みの剥離シートからフッ素を放出することがなく、環境負荷を軽減することができる。
【0040】
〔剥離シート〕
図1は、本発明の剥離シート1の概略構成を示す図である。本発明の剥離シート1は、
図1に示すように、基材2と、末端に官能基を有するゴム系エラストマーを架橋剤によって架橋させた硬化皮膜であるアンカーコート層3と、ジエン系高分子で構成された材料を硬化させた硬化皮膜である剥離剤層4とを有する。
剥離シートは、剥離剤層に貼着される粘着剤層との剥離力が良好なものである。剥離剤層に貼着される粘着剤層は、例えば粘着基材シートに粘着剤層が形成された粘着シートの粘着剤層等が挙げられる。粘着剤層等に用いられる粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤等の、従来公知の粘着剤の中から適宜選択することができる。
【0041】
本発明の剥離シートは、剥離剤層とアンカーコート層との合計の厚さは特に制限されないが、剥離剤層とアンカーコート層との合計の厚さが、好ましくは70〜550nm、より好ましくは80〜500nm、さらに好ましくは90〜480nm、特に好ましくは100〜450nmである。剥離シートの剥離剤層とアンカーコート層との合計の厚さが70〜550nmである場合は、基材との密着性を確保して柔軟性に富みながら、剥離剤層の硬化性が良好であり、低弾性率化による軽剥離性が良好となる剥離シートを得ることができる。剥離シートの剥離剤層とアンカーコート層との合計の厚さは、後述する実施例において具体的に説明するように、例えばジェー・エー・ウーラム(J.A.WOOLIAM.)ジャパン株式会社製の分光エリプソメーター(商品名:SPECTROSCOPIC_Ellipsometers M-7000U)を用いて測定することができる。
【0042】
本発明の剥離シートは、剥離剤層の表面弾性率が、好ましくは0.5〜15MPaであり、さらに好ましくは1〜14MPaであり、さらに好ましくは2〜13MPaであり、特に好ましくは3〜12MPaである。
基材と剥離剤層の間にアンカーコート層を有しておらず、剥離剤層の厚さが小さい場合には、剥離剤層の表面弾性率は、基材の影響を受けて、十分な剥離物性を得るように表面弾性率を適正な範囲にすることが困難である。一方、剥離剤層の厚さが大きく、剥離剤層がエネルギー線の照射により硬化する場合には、エネルギー線を照射された剥離剤層の表面に発生するオゾンによってジエン系高分子が架橋し硬化が進行するため、硬化不良を生じ、剥離剤層を構成する硬化皮膜を形成できない場合がある。
本発明の剥離シートは、基材とジエン系高分子で構成された材料を硬化させた剥離剤層との間に、末端に官能基を有するゴム系エラストマーを架橋剤によって架橋させたアンカーコート層を有するため、アンカーコート層が柔軟性を有し、剥離剤層の表面弾性率を0.5〜15MPaにすることができる。剥離シートの剥離剤層の表面弾性率が0.5〜15MPaであると、柔軟性に富みながら、十分な皮膜強度を保ち、適度な剥離物性を得ることができ、また、加工時の摩擦等の損傷を抑制することができる。また、剥離シートの剥離剤層の表面弾性率が0.5〜15MPaであると、柔軟性に富みながら、十分な皮膜強度を保つため、剥離シートを巻回した際に、剥離剤層と重ね合せて使用される材料表面への剥離剤層に含まれる成分の背面移行量が少なくなり、当該材料表面の汚染を防ぐことができる。
【0043】
本発明の剥離シートの剥離剤層の表面弾性率とは、原子間力顕微鏡を用い測定対象物の表面を測定して得られる値をいう。すなわち、原子間力顕微鏡に設置したカンチレバーで、剥離シートの剥離剤層の表面を押し込みと引き離しを行い、得られるフォースカーブ曲線について、JKR理論式とフィッテングを行い、弾性率を求め本発明の表面弾性率とする。本発明の表面弾性率の測定に使用する具体的な測定装置や測定の手順の一例としては、後述する実施例に記載する方法の通りである。
【0044】
本発明の剥離シートは、剥離シートの剥離剤層と重ね合わされて使用される材料表面への背面移行量が低いものが好ましい。背面移行量の測定としては、剥離シートの剥離剤層と重ね合わされる材料としてポリエステルフィルムを用い、ポリエステルフィルムの表面の元素量の変位により評価する。重ね合わせる前のポリエステルフィルムのC元素の表面元素比はおよそ70%であるため、剥離シートの剥離剤層と重ね合わせて使用されたポリエステルフィルムのC元素の表面元素比が70%に近い値のポリエステルフィルムは背面移行量が少ないことを示す。
具体的には、本発明の剥離シートは、剥離シートの剥離剤層と重ね合わされたポリエステルフィルムの表面のC元素の表面元素比が70%以上90%未満であることが好ましく、ポリエステルフィルムの表面のC元素の表面元素比は、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは82%以下、最も好ましくは80%以下である。剥離シートの剥離剤層と重ね合わされたポリエステルフィルム表面のC元素の表面元素比が90%未満であると、剥離剤層と重ね合わされたポリエステルフィルム表面への剥離剤層に含まれる成分の背面移行量が少なく、また、剥離剤層と重ね合せて使用される材料表面の汚染を抑制することができる。
【0045】
剥離シートの背面移行量は、剥離剤層と重ねあわされて使用される材料(ポリエステルフィルム)を、X線光電分光分析装置「PH1 Quantera II」(アルバック・フォイ株式会社)を用いた表面元素比を導出することによって測定することができる。具体的には、後述する実施例の方法によって測定することが可能であるが、例えば、剥離シートの剥離剤層の表面にポリエステルフィルムを重ね、所定の圧力で荷重をかけて所定の時間を置いた後、当該ポリエステルフィルムの表面における、Oの1s、Nの1s、Cの1sの測定を行い、解析ソフトを用いて、C、O、Nの元素の合計を100%として、各元素の表面元素比(%)を導出して、背面移行量を評価することができる。
【0046】
本発明の剥離シートの剥離剤層の粘着剤層に対する剥離力は、好ましくは250mN/20mm以下、より好ましくは80〜250mN/20mm、さらに好ましくは90〜200mN/20mm、特に好ましくは100〜180mN/20mmである。粘着剤層を構成する粘着剤としては、例えばアクリル系の粘着剤が挙げられる。剥離シートの剥離剤層に対する剥離力が、80〜250mN/20mmであると、所望の軽剥離性を得ることができる。
【0047】
剥離シートの剥離剤層の粘着剤に対する剥離力は、後述する実施例の方法によって測定することができる。具体的には、実施例の方法で作成した粘着シートをJIS Z0237に準拠して、23℃、50%RHの雰囲気下で、引張試験機を用いて、180℃方向に300mm/分の速度で剥離させることにより測定する。
【0048】
本発明の剥離シートは、リレー、各種スイッチ、コネクタ、モーター、ハードディスク等の電子部品の製造工程において、電子部品の組立て時の仮止めや部品の内容表示等の粘着シート用の剥離シートとして好適に用いることができる。また、本発明の剥離シートは、電子回路、実装パッド等を形成するための粘着剤層に貼着される剥離シートとしても好適に用いることができる。
【実施例】
【0049】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって限定されるものではない。
【0050】
実施例、比較例で作製した剥離シートの評価は、以下の方法で行った。
(a)アンカーコート層と剥離剤層との合計の厚さの評価
得られた剥離シートのアンカーコート層と剥離剤層との合計の厚さを、分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム(J.A.WOOLIAM.)ジャパン株式会社製、商品名: SPECTROSCOPIC_Ellipsometers M-7000U)を使用して測定した。
【0051】
(b)剥離力の評価
得られた剥離シートの剥離剤層上に、アクリル系粘着剤(トーヨーケム株式会社製、商品名:オリバイン(登録商標)BPS−5127)を125μmのアプリケーターで塗工し、100℃で2分間乾燥し、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ株式会社製、商品名:ルミラ−(登録商標)T−60、膜厚:50μm)を貼付して、粘着シートを作製した。作製した粘着シートにおける剥離シートの剥離力は、JIS Z0237に準拠して、23℃、50%RHの雰囲気下で、引試験機(株式会社島津製作所、商品名:オートグラフAG−IS 500N)を用いて、180°方向に300mm/分の速度で、剥離させることにより剥離シートの剥離力(mN/20mm)を測定した。
【0052】
(c)背面移行性の評価
剥離シートの剥離剤層にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名:ダイヤホイル(登録商標)T−100、膜厚:50μm)を重ね合わせて積層サンプルとし、10kg/cm
2の荷重を24時間加えた。その後、剥離積層サンプルからPETフィルムを剥離し、PETフィルムの剥離剤層と重ね合わされた面をX線光電分光分析装置(アルバック・フォイ株式会社、商品名:PH1 Quantera II)を用いて測定し、表面元素比を導出した。具体的なX線励起条件は、100μm−100W−20kVであり、対陰極にAlを用いた。試料へのX線の照射範囲は、100μm×100μmとし、光電子の検出角度は45°を用いた。測定は、PETフィルム表面のOの1s、Nの1s、Cの1sの順で行い、全元素測定におけるトータルの試料へのX線の照射時間を30分以内とした。データ処理は、解析ソフト「Multipack」(アルバック・フォイ株式会社製)を用いた。C、O、N、3元素の検出値の合計を100%とし、C元素の検出値の比(表面元素比;%)を算出した。測定したC元素の表面元素比が90%以上の場合は、背面移行量が多く背面移行性はNGと評価し、C元素の表面元素比が70%以上90%未満の場合は、背面移行量が少なく背面移行性はOKとして評価した。
【0053】
(d)表面弾性率の評価
原子間力顕微鏡(Bruker Corporation製、MultiMode8)を用いて、この原子間力顕微鏡に、窒化ケイ素素材のカンチレバー(Bruker Corporation製、商品名:MLCT、先端半径:20nm、共振周波数:125kHz、バネ定数:0.6N/m)を設置した。原子間力顕微鏡に設置したカンチレバーで、剥離シートの剥離剤層の表面を、押し込み量2nm、スキャン速度:10Hzで押し込み、引き離しを行い、得られるフォースカーブ曲線について、JKR理論式とフィッテングを行い、表面弾性率を算出する。表面弾性率は、剥離シートの剥離剤層の表面1μm×1μm中で4096点を測定し、これらの値を平均化して表面弾性率(MPa)とした。
【0054】
(e)数平均分子量の測定
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定されるポルスチレン換算の値を用いた。
【0055】
(f)密着性の評価
実施例又は比較例で作成した剥離シートの剥離剤層表面を指で擦り、剥離剤層の脱落が生じるかを確認した。剥離剤層の脱落が生じなかった場合をOK、脱落が生じた場合をNGと評価した。
【0056】
(実施例1)
末端水酸基変性ポリブタジエン(出光興産株式会社、商品名:Poly bd(登録商標)
R−45HT、固形分濃度100質量%、数平均分子量2,800、1,4付加単位重合割合80.8%)100質量部に対して、架橋剤としてメチル化メラミン樹脂(日立化成ポリマー株式会社、商品名:テスファイン(登録商標)200、固形分濃度:80質量%)14.1質量部、酸触媒として、p−トルエンスルホン酸の溶液(固形分濃度:50質量%、溶媒:メタノール/イソプロピルアルコール=41.2/9.2(質量比)の混合溶媒)3質量部を添加して、アンカーコート層用の樹脂組成物の溶液を調製した。このアンカーコート層用の樹脂組成物の溶液を、溶剤(トルエン/メチルエチルケトン=6/4(質量比))で希釈し、固形分濃度1.5質量%の塗工液を作製した。作製した塗工液を、マイヤーバーで乾燥後の膜厚が200nmになるように、基材である厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名:ダイアホイル(登録商標)T−100)の一方の面上に塗工し、150℃で1分間乾燥し、基材であるPETフィルム上にアンカーコート層を形成した。
さらに、ポリブタジエン樹脂(JSR株式会社、商品名:BR 01−A0(シス−1,4結合の含有率98%、固形分100質量%、数平均分子量200,000))を固形分濃度0.25質量%となるようにヘプタンで希釈し、剥離剤層用の塗工液を作製した。剥離剤層用の塗工液を、マイヤーバーで乾燥後の膜厚が15nmとなるように、アンカーコート層上に塗工し、110℃で1分間乾燥し、乾燥後に紫外線照射(22mJ/cm
2)し、塗工液を硬化させて剥離剤層を形成し、基材と、基材上にアンカーコート層と、アンカーコート層上に剥離剤層とを有する剥離シートを得た。
【0057】
(実施例2)
実施例1の末端水酸基変性ポリブタジエンを、末端水酸基変性ポリイソプレン(出光興産株式会社、商品名:Poly ip(登録商標)
、固形分濃度100質量%、数平均分子量2,500)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、剥離シートを得た。
【0058】
(実施例3)
実施例1の末端水酸基変性ポリブタジエンを、末端水酸基変性ポリイソプレンの水素添加物(出光興産株式会社、商品名:エポール(登録商標)
、固形分濃度100質量%、数平均分子量2,500)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、剥離シートを得た。
【0059】
(実施例4)
実施例1のメチル化メラミン樹脂をイソシアネート系化合物(トーヨーケム株式会社、商品名:BHS8515、固形分濃度35質量%)15質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、剥離シートを得た。
【0060】
(実施例5)
末端アクリレート変性ポリブタジエン(大阪有機化学工業(株)、商品名:BAC−45、固形分濃度100質量%、数平均分子量10,000)100質量部に対して、架橋剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF株式会社、商品名:IRGACURE 819、固形分濃度:100質量%)3.1質量部を添加して、アンカーコート層用の樹脂組成物の溶液を調製した。このアンカーコート層用の樹脂組成物の溶液を、溶剤(トルエン/メチルエチルケトン=6/4(質量比))で希釈し、固形分濃度3.0質量%の塗工液を作製した。作製した塗工液を、マイヤーバーで乾燥後の膜厚が200nmになるように、基材である厚さ50μmのPETフィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名:ダイアホイル(登録商標)T−100)の一方の面上に塗工し、80℃で1分間乾燥し、乾燥後に紫外線照射(100mJ/cm
2)し、塗工液を硬化させて、基材であるPETフィルム上にアンカーコート層を形成した。
さらに、ポリブタジエン樹脂(JSR株式会社、商品名:BR 01−A0(シス−1,4結合の含有率98%、固形分100質量%、数平均分子量200,000))を固形分濃度0.25質量%となるようにヘプタンで希釈し、剥離剤層用の塗工液を作製した。剥離剤層用の塗工液を、マイヤーバーで乾燥後の膜厚が15nmとなるように、アンカーコート層上に塗工し、110℃で1分間乾燥し、乾燥後に紫外線照射(22mJ/cm
2)し、塗工液を硬化させて剥離剤層を形成し、基材と、基材上にアンカーコート層と、アンカーコート層上に剥離剤層とを有する剥離シートを得た。
【0061】
(比較例1)
アンカーコート層を設けることなく、基材に直接剥離剤層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、剥離シートを得た。
【0062】
(比較例2)
ウレタン樹脂(DIC株式会社、商品名:クリスボン(登録商標)5150S、固形分濃度50質量%)100質量部に対して、架橋剤としてイソシアネート系化合物(トーヨーケム株式会社、商品名:BHS8515、固形分濃度:35質量%)15質量部添加し、固形分濃度が1.0質量%となるように溶剤(シクロヘキサノン/メチルエチルケトン=6/4(質量比))で希釈し、塗工液を作製した。作製した塗工液を、マイヤーバーで乾燥後の膜厚が140nmになるように、基材である厚さ50μmのPETフィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名:ダイアホイル(登録商標)T−100)の一方の面上に塗工し、110℃で1分間乾燥し、基材であるPETフィルム上にアンカーコート層を形成した。さらに、実施例1と同様にして、剥離剤層を形成し、基材と、基材上にアンカーコート層と、アンカーコート層上に剥離剤層とを有する剥離シートを得た。
【0063】
(比較例3)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂エステル80質量部とメラミン樹脂20質量部との混合物(日立化成ポリマー株式会社、商品名:TA31−059D、固形分濃度50質量%、溶媒:キシレン/トルエン/イソブタノール=18/16/16(質量比)の混合溶媒)の固形分100質量部に対して、酸触媒としてp−トルエンスルホン酸の溶液(固形分濃度50質量%)2.5質量部(固形分比)を添加して、さらにトルエン/メチルエチルケトン=30/70(質量比)の混合溶媒で希釈し、塗工液を作製した。作製した塗工液を、マイヤーバーで乾燥後の膜厚が200nmになるように、基材である厚さ50μmのPETフィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名:ダイアホイル(登録商標)T−100)の一方の面上に塗工し、150℃で5分間乾燥し、基材であるPETフィルム上にアンカーコート層を形成した。さらに、実施例1と同様にして、剥離剤層を形成し、基材と、基材上にアンカーコート層と、アンカーコート層上に剥離剤層とを有する剥離シートを得た。
【0064】
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1から明らかなように、実施例1〜5の剥離シートは、ジエン系高分子で構成された材料を硬化させた剥離剤層と基材との間に、末端に官能基を有するゴム系エラストマーを架橋剤によって架橋させた硬化皮膜であるアンカーコート層を設けることによって、剥離剤層と基材との密着性を向上することができ、柔軟性に富み、所望の硬化性と低弾性率化による軽剥離性を有する。また、実施例1〜5の剥離シートは、剥離剤層に重ね合わせて使用される材料表面へのC元素の表面元素比が70%以上90%未満であり、背面移行量が少なく、剥離シートに重ね合わせて使用される材料表面への汚染が抑制されている。
比較例1の剥離シートは、基材の影響を受けて、実施例1〜5に比べて表面弾性率が比較的大きく、剥離力も大きく軽剥離が実現できていない。また、比較例1の剥離シートは、C元素の表面元素比が90%以上であり、背面移行量が多く、剥離シートに重ね合わせて使用される材料表面への汚染が抑制されていない。比較例2の剥離シートは、表面弾性率が低く、剥離力を測定することができない。また、比較例2の剥離シートは、表面弾性率が低く、所望の硬化性が得られていない。さらに、比較例2の剥離シートは、C元素の表面元素比が90%以上であり、背面移行量が多く、剥離シートに重ね合わせて使用される材料表面への汚染が抑制されていない。また、比較例3の剥離シートは、実施例1〜5の剥離シートと比べて、剥離力及び表面弾性率が非常大きく、所望の軽剥離を実現できない。