特許第6596812号(P6596812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596812
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】太陽電池用絶縁シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20191021BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20191021BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20191021BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   H01L31/04 560
   H01L31/04 500
   B32B27/30 A
   B32B27/18 A
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-208591(P2014-208591)
(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-81947(P2016-81947A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】亀田 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】荒井 崇
(72)【発明者】
【氏名】網岡 孝夫
【審査官】 山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−183112(JP,A)
【文献】 特開2014−194985(JP,A)
【文献】 特開2012−182425(JP,A)
【文献】 特開2011−202144(JP,A)
【文献】 特開2012−182424(JP,A)
【文献】 特開2005−340362(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0000510(US,A1)
【文献】 特開2012−019124(JP,A)
【文献】 特開2009−277793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの片面に、アクリル系樹脂、紫外線吸収剤、及びシリカを含む樹脂層を有し、該樹脂層が、該樹脂層全体100質量%に対してシリカを0.3〜0.9質量%含み、全光線透過率が85%以上である太陽電池用絶縁シートと、配線とを有する、配線付き絶縁シート。
【請求項2】
前記アクリル系樹脂がアクリルウレタン系樹脂である、請求項1に記載の配線付き絶縁シート
【請求項3】
熱融着層を有する、請求項1又は2に記載の配線付き絶縁シート。
【請求項4】
前記基材フィルムの前記樹脂層を有さない側の面に、配線が配置されることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の配線付き絶縁シート。
【請求項5】
前記基材フィルムの前記樹脂層を有さない側の面に、熱融着層を介して配線が配置されることを特徴とする、請求項に記載の配線付き絶縁シート。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載の配線付き絶縁シートを有する、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期にわたる過酷な屋外環境下での使用に耐え得る、耐候性及び透明性に優れた太陽電池用絶縁シート、及びそれを用いた太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油、石炭をはじめとする化石燃料の枯渇が危ぶまれ、これらの化石燃料により得られる代替エネルギーを確保するための開発が急務とされている。このため原子力発電、水力発電、風力発電、太陽光発電等の種々の方法が研究され、実際の利用に及んでいる。太陽光エネルギーを電気エネルギーに直接変換することが可能な太陽光発電は、半永久的で無公害の新たなエネルギー源として実用化されており、実際に利用される上での価格性能比の向上が目覚しく、クリーンなエネルギー源として非常に期待が高い。
【0003】
太陽光発電に使用される太陽電池は、太陽光のエネルギーを直接電気エネルギーに変換する太陽光発電システムの心臓部を構成するものであり、シリコンなどに代表される半導体からできている。その構造としては、太陽電池素子(以下、セル)を直列、並列に配線し、20年程度の長期間にわたってセルを保護するために種々のパッケージングが施され、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットは太陽電池モジュールと呼ばれ、一般に太陽光が当たる面をガラスで覆い、熱可塑性樹脂からなる封止材で間隙を埋め、裏面を封止シートで保護した構成となっている。そのため、太陽電池モジュールは、一般的にガラス、セルを含む封止材層、裏面封止シートの順に積層されて構成される。
【0004】
配線はセルに半田付けされており、太陽電池モジュールの裏側にある端子箱から取り出されるが、配線同士やセル裏面電極と配線が接触するとショートしてしまうため、接触しないように絶縁シートが使用されている。絶縁シートは配線と配線の間や、配線とセル裏面電極の間に設置したり、一方の配線の両面に絶縁シートをラミネートして一体化した配線を使用したりするケースがある。
【0005】
絶縁シートとしては、汎用のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやフッ素フィルムが使用されている。絶縁シートに要求される特性は基本的には絶縁性と、封止材との密着性であるが、耐候性が要求される場合もある。それは、一般的に封止材には紫外線吸収剤が配合されているが、よりセルに光を取り込ませて発電効率を上げるために紫外線吸収剤を抜いた封止材を使用する場合があり、その場合は絶縁シートに直接紫外線が当たるため、紫外線で劣化しない耐候性が求められる。
【0006】
上記課題を解決する方法として、耐候性の良いフッ素フィルムを使用する方法が提案されている(特許文献1)。また、汎用のPETフィルムは紫外線で劣化してしまうため、PETフィルム、又はフィルムに積層したコート層に着色顔料を配合した着色耐候性フィルムを使用する方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−352966号公報(段落[0007]〜[0008])
【特許文献2】特開2014−074149号公報(段落[0227])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された、フッ素フィルムを用いる場合は、耐候性には問題ないが高価である点に課題があった。特許文献2に開示された、着色耐候性フィルムを用いる場合は、一般的に絶縁シートと裏面封止シートの色を合わせるため、着色耐候性フィルムと裏面封止シートが同系色である場合に限定され、裏面封止シートが透明や別の色である場合には意匠性の点で使用できないという課題があった。
【0009】
本発明の目的は、前記課題を克服し、耐候性及び透明性に優れた太陽電池用絶縁シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の配線付き絶縁シートは、かかる課題を解決するために、次の構成を有する。
すなわち、本発明の配線付き絶縁シートは、以下である。
(1) 基材フィルムの片面に、アクリル系樹脂、紫外線吸収剤、及びシリカを含む樹脂層を有し、該樹脂層が、該樹脂層全体100質量%に対してシリカを0.3〜0.9質量%含み、全光線透過率が85%以上である太陽電池用絶縁シートと、配線とを有する、配線付き絶縁シート。
(2) 前記アクリル系樹脂がアクリルウレタン系樹脂である、(1)に記載の配線付き絶縁シート
) 熱融着層を有する、(1)又は(2)に記載の配線付き絶縁シート。
) 前記基材フィルムの前記樹脂層を有さない側の面に、配線が配置されることを特徴とする、(1)〜()のいずれかに記載の配線付き絶縁シート。
) 前記基材フィルムの前記樹脂層を有さない側の面に、熱融着層を介して配線が配置されることを特徴とする、()に記載の配線付き絶縁シート。
) (1)〜()のいずれかに記載の配線付き絶縁シートを有する、太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長期にわたる過酷な屋外環境下での使用に耐え得る、耐候性及び透明性に優れた太陽電池用絶縁シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の太陽電池モジュールの一例の断面図。
図2】太陽電池用絶縁シートの一例の断面図。
図3】太陽電池用絶縁シートの一例の断面図。
図4】配線付き絶縁シートの一例の断面図。
図5】配線付き絶縁シートの一例の断面図。
図6】本発明の太陽電池モジュールの一例の断面図。
図7】本発明の配線付き絶縁シートの一例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の太陽電池用絶縁シートは、基材フィルムの少なくとも片面に、アクリル系樹脂と紫外線吸収剤とを含む樹脂層を有し、全光線透過率が85%以上であることを特徴とする。この樹脂層により、屋外環境下での紫外線による基材フィルムの劣化が抑えられ、耐候性及び透明性に優れた太陽電池用絶縁シートが得られるものである。
【0014】

[基材フィルム]
本発明の太陽電池用絶縁シートに使用される基材フィルムとしては、種々の樹脂フィルムを用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂フィルムや、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンエーテルなどの樹脂フィルム、およびこれらの樹脂を混合した樹脂フィルムが挙げられる。中でも強度、寸法安定性、熱安定性に優れていることからポリエステル樹脂フィルムが好ましく、さらに安価であることからポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが特に好ましい。また、ポリエステル樹脂フィルム中のポリエステル樹脂は、共重合体であっても良く、共重合成分としては、例えば、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオール成分、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびそのエステル形成性誘導体のジカルボン酸成分などを使用することができる。
【0015】
また、太陽電池用絶縁シートを構成する基材フィルムには、必要に応じて、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、充填剤等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で含有させることができる。
【0016】
本発明の太陽電池用絶縁シートは、全光線透過率が85%以上であることから、基材フィルムには透明性が求められる。そのため基材フィルム中の着色顔料は少ないことが好ましく、特には着色顔料を含まないことが好ましい。
【0017】
本発明の太陽電池用絶縁シートを構成する基材フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、絶縁性、コスト等を勘案すると、1〜250μmが好ましい。また取り扱いやすさから25μm以上がさらに好ましく、絶縁シート使用部の厚さが非使用部と比べて厚くなりすぎないようにすること、およびコストの観点から100μm以下がさらに好ましい。
【0018】
また、基材フィルムには必要に応じて、例えば、コロナ放電やプラズマ放電等の放電処理、あるいは酸処理等の表面処理を行ってもよい。
【0019】

[樹脂層]
本発明の太陽電池用絶縁シートは、基材フィルムの少なくとも片面に、アクリル系樹脂と紫外線吸収剤を含む樹脂層を有する。
【0020】
樹脂層中のアクリル系樹脂としては特に限定されないが、耐候性、基材フィルムとの密着性の観点からアクリルウレタン系樹脂が好ましい。アクリルウレタン系樹脂は種々の方法で作製されるが、アクリルポリオール系樹脂とイソシアネート樹脂を混ぜて架橋することで作製されたアクリルウレタン系樹脂が、樹脂の硬化性、耐熱性、基材フィルムとの密着性の観点から好ましい。
【0021】
本発明における樹脂層は紫外線カット性能を有することが好ましい。樹脂層の紫外線カット性能は、波長360nmでの透過率で評価することができ、波長360nmでの透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。樹脂層の波長360nmでの透過率を20%以下にすることで、基材フィルムの紫外線による黄変や劣化を抑制することが可能となる。
【0022】
上記の通り樹脂層が紫外線カット性能を有する場合、本発明の太陽電池用絶縁シートも紫外線カット性能を有することになる。本発明の太陽電池用絶縁シートの紫外線カット性能は、波長360nmでの透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。太陽電池用絶縁シートの波長360nmでの透過率を20%以下にすることで、太陽電池用絶縁シートの非受光面側の部材の紫外線による黄変や劣化を抑制することが可能となる。
【0023】
本発明における樹脂層の厚みは0.2〜20μmが好ましく、さらに好ましくは1〜10μm、特に好ましくは3〜6μmである。樹脂層の厚みは0.2〜20μmにすることで、紫外線カット性能、塗工性、コストの観点で優れた樹脂層が得られるため好ましい。
【0024】
本発明における樹脂層を塗布する方法により形成する場合のコーティング液に用いる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールおよび水等を例示することができ、該コーティング液の性状としてはエマルジョン型および溶解型のいずれでも良い。
【0025】
樹脂層を基材フィルム上に形成する方法は特に制限されるべきものではなく、公知の方法を用いることができる。そして樹脂層をコーティング法によって形成する場合も、種々の方法を適用することができ、例えば、ロールコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法およびグラビアロールコーティング法等や、これらを組み合わせた方法を利用することができる。なかでも、グラビアロールコーティング法は、コーティング層形成組成物の安定性を増す理由で好ましい方法である。
【0026】

[紫外線吸収剤]
本発明において、樹脂層に含まれる紫外線吸収剤は、紫外線をカットすることにより、紫外線から基材フィルムを保護する目的で用いられる。
【0027】
一般に紫外線吸収剤は、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があり、本発明においてはいずれを用いることもできるが、無機系紫外線吸収剤は一般的に着色タイプが多く、また光触媒作用を持つものもあるため、本発明では有機系紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0028】
有機系紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤が例示できる。具体的には、例えば、サリチル酸系のp−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、ベンゾフェノン系の2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン、ベンゾトリアゾール系の2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、シアノアクリレート系のエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート)、その他として、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールなどやこれらの変性物、重合物、誘導体などが例示できる。
【0029】

[その他添加剤]
さらに、本発明にかかる樹脂層には、その特性を損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化剤、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤、架橋助剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、光安定化剤、増粘剤、接着改良剤、つや消し剤、ブロッキング防止剤などを添加してもよい。
【0030】
樹脂層に含有させる光安定化剤としては特に限定されないが、ヒンダードアミン系等の光安定化剤が挙げられる。具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル〕ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、デカン二酸ビス[2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ]−4−ピペリジニル]エステルなどやこれらの変性物、重合物、誘導体などが例示できる。
【0031】
ブロッキング防止剤は樹脂同士の密着を防止し、滑りやすくする目的で添加する。樹脂層に含有させるブロッキング防止剤としては、樹脂への分散性、コストの点からシリカであることが重要である。つまり本発明で用いる太陽電池用絶縁シートの樹脂層は、シリカを含むことが重要である。シリカの平均粒径は特に限定されないが、樹脂への分散性、ブロッキング防止性の観点から1〜20μmが好ましく、特に好ましくは5〜10μmである。シリカの含有量は樹脂層全体100質量%に対し0.3〜0.9質量%であることが重要である。シリカの含有量を樹脂層全体100質量%に対して0.3〜0.9質量%にすることで、ブロッキング防止性、樹脂層の紫外線カット性能の保持、コストの点で好ましい。

【0032】

[太陽電池用絶縁シート]
図2のように、基材フィルムの少なくとも片面に、アクリル系樹脂と紫外線吸収剤を含む樹脂層を有し、全光線透過率が85%以上である本発明のシートは、太陽電池用絶縁シートとして用いられる。そして本発明の太陽電池用絶縁シートは、全光線透過率が85%以上である。好ましくは87%以上である。そして太陽電池絶縁シートの全光線透過率に上限は特にないが、100%とすることは現実的に容易ではなく、実質的には98%以下であることが好ましい。そして、太陽電池絶縁シートの全光線透過率を85%以上とするためには、基材フィルム及び樹脂層として透明性に優れた材料を選択する方法があり、透明性を低下させる着色顔料の含有量をできるだけ減らすことが好ましい。
【0033】
そして本発明における太陽電池用絶縁シートは、図3のように、熱融着層を有していてもよい。熱融着層とは、基材フィルムより低い温度で溶融し、他部材との熱接着性を有する層である。この熱融着層により、太陽電池用絶縁シートを配線と接着させることができる。このような熱融着層としては、ポリエチレン樹脂やエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)、エチレン−アクリル酸エチル共重合樹脂(EEA樹脂)等が例示できる。なお熱融着層を有する本発明の太陽電池用絶縁シートは、基材フィルムの一方の面に樹脂層を有し、基材フィルムの他方の面に熱融着層を有する態様が好ましい。
【0034】
さらに本発明における太陽電池用絶縁シートは、基材フィルムの一方の面のみに樹脂層を有する
【0035】
本発明における太陽電池用絶縁シートは、太陽電池モジュール中の配線と配線の間に設置することができる。さらに一方の配線の両面に本発明の太陽電池用絶縁シートをラミネートして、配線と太陽電池用絶縁シートとを一体化した配線として、太陽電池モジュール中で使用することもできる。なお、本発明の配線付き絶縁シートとは、太陽電池用絶縁シートと配線とで構成されるシートである
【0036】
配線付き絶縁シートの好ましい構成としては、図4のように、基材フィルムの一方の面のみに、前述の樹脂層を有し、基材フィルムの樹脂層を有さない側の面に、配線が配置される構成である。
【0037】
配線付き絶縁シートとしてさらに好ましくは、図5のように、基材フィルムの一方の面のみに樹脂層を有し、基材フィルムの樹脂層を有さない側の面に、熱融着層を介して配線が配置される構成である。そして配線付き絶縁シートとして特に好ましくは、図5のように、基材フィルムの一方の面のみに樹脂層を有し、基材フィルムの樹脂層を有さない側の面に熱融着層を有する太陽電池用絶縁シート2枚を用いて、熱融着層側を配線に向けてサンドイッチ(熱プレス)して一体成形した構成である。
【0038】
このような配線付き絶縁シートの構成にすることで、太陽電池モジュールを作製する工程で絶縁シートの位置がずれることがなく、また配線の両面に絶縁性、耐候性を有することが可能となる。
【0039】

[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池用絶縁シートを太陽電池モジュールに使用するに際し、配線同士やセル裏面電極と配線が接触する部分に絶縁シートを配置して、太陽電池モジュールに組み込む。これにより、本発明の太陽電池モジュールにおいては、図6のように、絶縁シートと配線が直接接触し、封止材中に絶縁シートが配置されることとなる。
【実施例】
【0040】
次に、実施例を挙げて、具体的に本発明について説明する。実施例中で「部」とは、特に注釈のない限り「質量部」であることを意味する。なお、以下、実施例1〜10は参考例とする。
<特性の評価方法>
本発明で用いた特性の評価方法は、下記の通りである。
(1)塗布量測定
樹脂層の塗布量は、以下の手順で測定した。樹脂層形成後に500cmの面積に切り出し、その試験片の質量を質量Aとした。次に、その試験片から樹脂層をメチルエチルケトンに溶解させ、剥がし取り、再び試験片の質量を測定し、質量Bとした。続いて、下式に基づき、単位面積当たりの塗布量を算出した。この塗布量測定を3つの試験片について行い、その平均値を塗布量とした。
【0041】
塗布量[g/m]=(質量A−質量B)/(500×10−4
(2)膜厚測定
樹脂層の膜厚は、フィルメトリクス社製膜厚計F20を使用して測定を実施した。
(3)耐ブロッキング性評価
樹脂層を形成した絶縁シートを5cm角に10枚カットした。これらを、絶縁シートの樹脂層面と、他の絶縁シートの基材フィルム面とが重なるように重ねた。そして、(株)DGエンジニアリング社製インキブロッキングテスターDG−BTにて8kg/cmの荷重をかけて50℃の環境下で3日間エージングを行った。その後、樹脂層と基材フィルムとの貼り付き具合を評価し、下記分類とした。
+:樹脂層と基材フィルムが貼り付いていない。
−:樹脂層と基材フィルムが貼り付いている。
【0042】

(4)全光線透過率の測定
JIS K 7361-1 (1997)に基づいて、絶縁シートの全光線透過率の測定を実施した。測定装置は、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH4000を使用した。
(5)紫外線カット性能の評価(分光スペクトル測定)
紫外線カット性能は樹脂層及び絶縁シートについて評価を実施した。
【0043】
樹脂層については、基材フィルムとして東レフィルム加工(株)製エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)フィルムである“トヨフロン”(登録商標)(50μm)を使用し、実施例1〜10に基づいて絶縁シートを作製し、本評価に用いた。
【0044】
一方、絶縁シートについては、各例で作製したものを本評価に用いた。
【0045】
樹脂層及び絶縁シートの紫外線カット性能は、JIS K 7105 (2006)に基づいて、島津製作所社製紫外可視近赤外分光光度計UV−3150を使用し分光スペクトルの測定を実施した。紫外線領域の光線カット性能について、360nmの波長の透過率を測定することで評価した。
(6)基材フィルム/樹脂層間の密着強度評価
各例で作製した太陽電池用絶縁シートの基材フィルムと樹脂層との間の密着力(塗膜密着力)について、JIS K 5400 (1990)に基づいてクロスカット試験を実施し、下記の特性分類をした。
++:100マス塗膜残存/100マス中
+:81〜99マス塗膜残存/100マス中
−:80マス以下の塗膜残存/100マス中。
【0046】

(7)封止材層と絶縁シートの接着強度の測定
厚さ3mmの半強化ガラスの上にEVAシートを重ね、作製した太陽電池用絶縁シートの樹脂層面が接するように重ね、真空ラミネーターを用いて真空引き後に135℃加熱条件下、3kgf/cm荷重で15分間プレス処理し、さらに150℃で30分間処理して、封止材層(EVAシート)/絶縁シートラミネートサンプルを作製した。EVAシートは、サンビック(株)製の500μm厚シート(紫外線吸収剤を含まないタイプ)を用いた。
【0047】
このラミネートサンプルを使用して、JIS K 6854-2 (1999)に基づいて、封止材層(EVAシート)と絶縁シートとの接着力を測定した。接着強度試験の試験片の幅は10mmとし、2つの試験片について各々測定を1回行い、2つの測定値の平均値を接着強度(N/10mm)の値とした。
(8)湿熱試験
エスペック(株)製恒温恒湿オーブンを用いて、85℃、85%RHの環境下で1,000時間の湿熱処理を、絶縁シート、並びに、封止材層/絶縁シートラミネートサンプルに施した。その後、絶縁シート中の基材フィルム/樹脂層間の密着強度を、(6)に記載の方法で測定した。さらに封止材層/絶縁シートラミネートサンプル中の封止材層と絶縁シート間の接着強度を、(7)に記載の方法で測定した。
(9)耐紫外線性
岩崎電気(株)製アイスーパーUVテスターSUV−W151を用いて、63℃×30%RH雰囲気にて紫外線強度160mW/cmで300時間、絶縁シートの樹脂層面側から、又は擬似太陽電池モジュールのガラス面側から紫外線照射を行った。その前後の表色系b値の測定を行い、紫外線照射後のb値から紫外線照射前のb値を差し引き、その差分Δbを求めた。b値の測定は、JIS Z 8722 (2000)に基づき、日本電色工業社製分光式色差計SE−2000を用いて、反射法により測定した。
【0048】
[樹脂層形成用塗料(塗料1〜5)の調製]
(i)主剤の調製
表1の主剤の欄に示す配合にて、DIC(株)製の、アクリルポリオール系樹脂と紫外線吸収剤を含むコーティング剤であるUC CLEAR BS(固形分濃度:40質量%)にシリカおよび溶剤を一括混合し、ビーズミル機を用いて分散し、固形分濃度が40質量%である樹脂層形成用塗料の主剤を得た。
(ii)塗料1〜5の調製
上記主剤に硬化剤としてイソシアネート樹脂である、DIC(株)製ウレタン硬化剤 G−18N(固形分濃度:100質量%)を、樹脂層形成用塗料の主剤中のDIC(株)製UC CLEAR BS(固形分濃度:40質量%)との質量比が100/1.5の比になるように予め計算した量配合し、さらに固形分濃度30質量%(樹脂固形分濃度)の塗料となるように予め算出した希釈剤(酢酸エチル)を量りとり、15分間攪拌することにより固形分濃度30質量%(樹脂固形分濃度)の塗料1〜5を得た。
【0049】
【表1】
【0050】
(実施例1)
基材フィルムとして東レ(株)製透明ポリエチレンテレフタレートフィルムである“ルミラー”(登録商標)T60(75μm)を準備した。この基材フィルムの一方の面に、コロナ処理を施し、さらにワイヤーバーを用いて塗料1を塗布し、120℃で60秒間乾燥し、乾燥後塗布量が5.0g/m(厚み4.5μm)となるように樹脂層を形成した。これを40℃で3日間エージングすることで、アクリルポリオール系樹脂とイソシアネート樹脂が架橋してウレタン結合が生成し、アクリルウレタン系樹脂層を有する太陽電池用絶縁シート1(表2,3中では絶縁シート1と略記する)を作製した。
【0051】
(実施例2)
樹脂層形成用塗料1の代わりに樹脂層形成用塗料2を塗布した他は、実施例1と同様にして太陽電池用絶縁シート2(表2,3中では絶縁シート2と略記する)を作製した。
【0052】
(実施例3)
樹脂層形成用塗料1の代わりに樹脂層形成用塗料3を塗布した他は、実施例1と同様にして太陽電池用絶縁シート3(表2,3中では絶縁シート3と略記する)を作製した。
【0053】
(実施例4)
樹脂層形成用塗料1の代わりに樹脂層形成用塗料4を塗布した他は、実施例1と同様にして太陽電池用絶縁シート4(表2,3中では絶縁シート4と略記する)を作製した。
【0054】
(実施例5)
樹脂層形成用塗料1の代わりに樹脂層形成用塗料5を塗布した他は、実施例1と同様にして太陽電池用絶縁シート5(表2,3中では絶縁シート5と略記する)を作製した。
【0055】
(実施例6)
実施例1に記載の方法で得た絶縁シート1の樹脂層とは反対側のフィルム表面に、エチレン−アクリル酸エチル共重合樹脂(EEA樹脂)を厚み75μmとなるように押出積層し、熱融着層を形成した。このようにして太陽電池用絶縁シート6(表2,3中では絶縁シート6と略記する)を作製した。
【0056】
(実施例7)
乾燥後塗布量が4.5g/m(厚み4.0μm)となるように樹脂層を形成した他は、実施例1と同様にして太陽電池用絶縁シート7(表2,3中では絶縁シート7と略記する)を作製した。
【0057】
(実施例8)
乾燥後塗布量が4.0g/m(厚み3.5μm)となるように樹脂層を形成した他は、実施例1と同様にして太陽電池用絶縁シート8(表2,3中では絶縁シート8と略記する)を作製した。
【0058】
(実施例9)
乾燥後塗布量が3.0g/m(厚み2.5μm)となるように樹脂層を形成した他は、実施例1と同様にして太陽電池用絶縁シート9(表2,3中では絶縁シート9と略記する)を作製した。
【0059】
(実施例10)
乾燥後塗布量が2.5g/m(厚み2.0μm)となるように樹脂層を形成した他は、実施例1と同様にして太陽電池用絶縁シート10(表2,3中では絶縁シート10と略記する)を作製した。
【0060】
(比較例1)
樹脂層及び熱融着層を形成しないで、“ルミラー”(登録商標)T60(東レ(株)製、75μm)を太陽電池用絶縁シート11(表2,3中では絶縁シート11と略記する)とした。
【0061】
(比較例2)
東レ(株)製白色ポリエチレンテレフタレートフィルムである“ルミラー”(登録商標)E20F(50μm)を太陽電池用絶縁シート12(表2,3中では絶縁シート12と略記する)とした。
【0062】
以上で得られた実施例1〜10、比較例1、2の太陽電池用絶縁シートについて上記の評価方法により特性を評価した。結果を表3に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
(実施例11)
絶縁シート6の熱融着層面に、配線として日立電線社製銅箔A−SPS0.23×6.0を重ね、さらにその上に、もう1枚の絶縁シート6の熱融着層面がその配線と接するように重ね、ラミネーターを用いて100℃加熱条件下、15分間プレス処理し、図7に示した構成の配線付き絶縁シート1を作製した。
【0066】
次に、厚さ3mmの半強化ガラスの上に、EVAシート、作製した配線付き絶縁シート1、EVAシート、東レフィルム加工(株)製太陽電池用バックシートである“ルミソーラー”(登録商標)LTW−09ST−2(275μm)をこの順で重ね、真空ラミネーターを用いて真空引き後に135℃加熱条件下、3kgf/cm荷重で15分間プレス処理し、さらに150℃で30分間処理して、擬似太陽電池モジュールを作製した。EVAシートは、サンビック(株)製の500μm厚シート(紫外線吸収剤を含まないタイプ)を用いた。
【0067】
(比較例3)
絶縁シート6の代わりに、“ルミラー”(登録商標)T60(東レ(株)製、75μm)の片面に熱融着層としてエチレン−アクリル酸エチル共重合樹脂(EEA樹脂)を厚み75μmとなるように押出積層した絶縁シートを使用する以外は、実施例11と同様にして配線付き絶縁シート2及び擬似太陽電池モジュールを作製した。
【0068】
以上で得られた実施例11、比較例3の擬似太陽電池モジュールについて上記の評価方法により特性を評価した。結果を表4に示す。
【0069】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の太陽電池用絶縁シートは、耐候性及び透明性に優れることから、有用である。
【符号の説明】
【0071】
10,60 太陽電池モジュール
11 ガラス
12 封止材
13 配線
14 太陽電池裏面封止シート
15 太陽電池素子
20,30 太陽電池用絶縁シート
21 樹脂層
22 基材フィルム
31 熱融着層
40,50,70 配線付き絶縁シート
71 太陽電池用絶縁シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7