(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バッテリから供給される駆動電力により電動車の駆動輪を駆動するとともに所定の回生走行条件が成立した際には回生発電により回生電流を発生し前記駆動輪に回生制動力を与えるモータを制御するモータ制御装置であって、
前記電動車の走行状態に基づいて前記回生発電により発生する回生電流量を推定する回生電流量推定手段と、
前記バッテリのバッテリ劣化度を検知する劣化度検知手段と、
前記バッテリの充電率を検知する充電率検知手段と、
前記回生電流量推定手段によって推定された推定回生電流量と、前記バッテリ劣化度と、前記充電率とに基づいて、前記モータで発生する前記回生電流量を制御する回生制御手段と、
前記回生電流量を前記推定回生電流量よりも少なくする回生抑制が前記回生制御手段によって行われる可能性がある場合に、前記回生抑制が行われる可能性がある旨を報知する報知手段と、を備え、
前記回生制御手段は、前記バッテリ劣化度が前記充電率に基づいて決定される閾値劣化度以上か否かを判定し、前記バッテリ劣化度が前記閾値劣化度以上、かつ前記推定回生電流量が前記バッテリに供給可能な上限電流を上回った場合に前記回生抑制を行い、
前記報知手段は、前記バッテリ劣化度が前記充電率に基づいて決定される第1の報知劣化度以上となった場合に前記回生抑制が行われる可能性がある旨を報知し、
前記第1の報知劣化度は、前記閾値劣化度より小さく設定される、
ことを特徴とするモータ制御装置。
前記回生制御手段は、前記バッテリ劣化度と前記充電率とに基づいて前記閾値劣化度を決定するための閾値劣化度マップを有し、前記閾値劣化度マップに基づいて前記回生抑制を行うか否かを判断する、
ことを特徴とする請求項1または2記載のモータ制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回生抑制時には通常時と比較して回生ブレーキ(回生制動)が利きづらくなり、運転フィーリンクが通常時と大きく変化する。上述した従来技術では、回生抑制が行われる可能性がある場合でも、その旨を運転者に報知していないため、運転者は実際に回生ブレーキを利用するまで回生抑制が行われていることを知ることができない。よって、回生抑制に伴い運転者に違和感を与える可能性があるという課題がある。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、モータの回生抑制を事前に報知することができるモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかるモータ制御装置は、バッテリから供給される駆動電力により電動車の駆動輪を駆動するとともに所定の回生走行条件が成立した際には回生発電により回生電流を発生し前記駆動輪に回生制動力を与えるモータを制御するモータ制御装置であって、前記電動車の走行状態に基づいて前記回生発電により発生する回生電流量を推定する回生電流量推定手段と、前記バッテリのバッテリ劣化度を検知する劣化度検知手段と、前記バッテリの充電率を検知する充電率検知手段と、前記回生電流量推定手段によって推定された推定回生電流量と、前記バッテリ劣化度と、前記充電率とに基づいて、前記モータで発生する前記回生電流量を制御する回生制御手段と、前記回生電流量を前記推定回生電流量よりも少なくする回生抑制が前記回生制御手段によって行われる可能性がある場合に、前記回生抑制が行われる可能性がある旨を報知する報知手段と、を備え、前記回生制御手段は、前記バッテリ劣化度が前記充電率に基づいて決定される閾値劣化度以上か否かを判定し、前記バッテリ劣化度が前記閾値劣化度以上
、かつ前記推定回生電流量が前記バッテリに供給可能な上限電流を上回った場合に前記回生抑制を行い、前記報知手段は、前記バッテリ劣化度が
前記充電率に基づいて決定される第1の報知劣化度以上となった場合に前記回生抑制が行われる可能性がある旨を報知し、前記
第1の報知劣化度は、前記閾値劣化度より小さく設定される、ことを特徴とする。
請求項2の発明にかかるモータ制御装置は、前記閾値劣化度は、前記充電率が高いほど低い値に設定される、ことを特徴とする。
請求項3の発明にかかるモータ制御装置は、前記回生制御手段は、前記バッテリ劣化度と前記充電率とに基づいて前記閾値劣化度を決定するための閾値劣化度マップを有し、前記閾値劣化度マップに基づいて前記回生抑制を行うか否かを判断する、ことを特徴とする。
請求項4の発明にかかるモータ制御装置は、
前記報知手段は、前記バッテリ劣化度が、前記充電率に基づいて決定される第2の報知劣化度以上となった場合にも報知を行い、前記バッテリ劣化度が前記第1の報知劣化度以上となった場合と、前記第2の報知劣化度以上となった場合とで報知内容を変更
し、前記第2の報知劣化度は、前記閾値劣化度より大きい値に設定される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回生発電によって生じる回生電流量を、通常時の回生発電量である推定回生電流量よりも少なくする回生抑制が行われる可能性がある場合に、回生抑制が行われる可能性がある旨を報知する。よって、実際に回生抑制が行われる前に回生ブレーキがかかりにくい場合があることを運転者に認知させることができ、回生抑制に伴う違和感を軽減させることができる。
本発明によれば、バッテリ劣化度が閾値劣化度以下の場合に回生抑制を行う。一般に、バッテリ劣化度が高まるとバッテリ抵抗値が高まり、高電流を流すと劣化につながる可能性がある。このため、バッテリ劣化時に回生抑制を行うことによって、バッテリのさらなる劣化を防止することができる。
本発明によれば、バッテリの充電率が高いほど閾値劣化度を低くしているので、バッテリの充電率が高く過充電が懸念される状況で回生抑制に移行しやすくすることができる。
本発明によれば、閾値劣化度マップを用いて閾値劣化度を特定し、回生抑制を行うか否かを判断するので、数式等を用いて閾値劣化度を算出する場合と比較してモータ制御装置の処理負荷を軽減することができる。
本発明によれば、バッテリ劣化度が、閾値劣化度以下に設定された報知劣化度以上になった場合に回生抑制が行われる可能性を報知するので、実際に回生抑制が行われ得る状態になる前に運転者に報知を行うことができ、報知の実効性をより向上させることができる。
本発明によれば、報知劣化度を複数設定し、それぞれの報知劣化度以上となった場合に報知の内容を変更するので、回生抑制の度合いに連動した報知を行うことができ、報知の有効性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかるモータ制御装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態にかかるモータ制御装置10の構成を示す説明図である。
本実施の形態では、モータ制御装置10は電気自動車やハイブリット自動車等、モータ30を搭載し、動力の少なくとも一部として電力を用いる電動車に搭載されているものとする。
実施の形態にかかるモータ制御装置10は、バッテリ20から供給される駆動電力により電動車の駆動輪を駆動するとともに所定の回生走行条件が成立した際には回生発電により回生電流を発生し駆動輪に回生制動力を与えるモータ30を制御する。
【0012】
バッテリ20は、複数の電池セルを直列に接続した高電圧組電池であり、図示しない充電口から外部電源の供給を受けて充電される他、モータ30が回生発電を行った際に発生する回生電流によっても充電される。
バッテリ20に蓄電された電力は、電力線Lを介してモータ30に供給される。なお、バッテリ20は、モータ30の他、他の負荷装置(たとえば電動車の空調装置など)に対しても電力供給を行っていてもよい。
また、図示は省略しているが、バッテリ20とモータ30との間には直流電流と交流電流とを変換するインバータが設けられている。
【0013】
バッテリ20には温度センサ112、電圧センサ114、電流センサ116が接続される。
温度センサ112は、バッテリ20のバッテリ温度を測定する。温度センサ112は、たとえばバッテリ20を構成する各電池セルの温度であるセル温度や、所定の単位個数の電池セルで構成されるセルユニットの温度などを測定する。また、温度センサ112は、バッテリ20内の1つまたは複数の代表点における温度を測定してもよい。
電圧センサ114は、バッテリ20のバッテリ電圧Vを測定する。電圧センサ114は、たとえばバッテリ20を構成する各電池セルの電圧であるセル電圧を測定する。
電流センサ116は、バッテリ20からモータ30に供給される電流およびモータ30からバッテリ20に供給される回生電流を測定する。
【0014】
モータ制御装置10は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される処理部によって構成されている。
モータ制御装置10は、たとえばモータ30の制御を行うMCU(Motor Contrоl Unit)や電動車全体の制御を行うECUなどである。また、 モータ制御装置10は、MCU単体またはECU単体ではなく、これらが連携して後述する処理を実現するものであってもよい。
【0015】
モータ制御装置10は、回生電流量推定手段120、劣化度検知手段122、充電率検知手段124、回生制御手段128、報知手段130によって構成される。
回生電流量推定手段120は、電動車の走行状態に基づいて回生発電により発生する回生電流量を推定する。なお、回生電流量推定手段120で推定した回生電流量を推定回生電流量IEとする。
電動車の走行状態とは、電動車の走行速度、重量、走行する道路の傾斜等である。
また、電動車に回生制動力の大きさを運転者が任意に設定できる機構が設けられている場合には、当該機構における設定によっても回生発電量は変化する。
回生電流量推定手段120は、これらの情報に基づいて、各推定時において所定の回生走行条件が成立した際にモータ30で発生する回生電流量を推定する。
なお、所定の回生走行条件とは、例えば所定速度以上で走行している際にアクセルペダル24の踏み込みが解除された場合やブレーキペダル22が踏まれた場合など、主に減速動作や加速解除動作が行われた場合を指す。
【0016】
劣化度検知手段122は、バッテリ20のバッテリ劣化度Xを検知する。
劣化度検知手段122は、たとえば電圧センサ114で測定されたバッテリ電圧Vと電流センサ116で測定された電流とに基づいてバッテリ20の内部抵抗および開放電圧を求め、これらの値を元にバッテリ20の現在の最大出力を算出する。そして、算出した現在の最大出力とバッテリ20の初期状態(バッテリ劣化度0時)の最大出力とを比較してバッテリ劣化度Xを算出する。
バッテリ20の劣化は、使用開始からの年月に比例する経年劣化と、使用頻度に比例する使用劣化が知られており、劣化度検知手段122は、これらの劣化を総合してバッテリ20のバッテリ劣化度Xを検知する。
【0017】
充電率検知手段124は、バッテリ20の充電率S(SOC)を検知する。
充電率検知手段124は、たとえばバッテリ20の充電率とバッテリ電圧との関係を示すSOCマップを記憶し、電圧センサ114で測定されたバッテリ電圧に対応する充電率の値をSOCマップから読み出して充電率Sとする。なお、電圧センサ114でセル電圧を測定している場合、充電率検知手段124は、各セル電圧の平均値をバッテリ電圧とする。セル電圧からのバッテリ電圧Vの算出は、電圧センサ114で行ってもよい。この場合、充電率検知手段124は、電圧センサ114で算出されたバッテリ電圧Vの値を取得して、バッテリ20の充電率Sを算出する。
【0018】
回生制御手段128は、推定回生電流量IEと、バッテリ劣化度Xと、充電率Sとに基づいて、モータ30で発生する回生電流量を制御する。
具体的には、回生制御手段128は、バッテリ劣化度Xが充電率Sに基づいて決定される閾値劣化度XL以上か否かを判定し、バッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL以上の場合は回生抑制を行う。
なお、回生抑制とは、モータ30の回生電流量を推定回生電流量IEよりも少なくするものである。
また、回生制御手段128は、バッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL未満の場合は回生抑制を行わない。この場合、回生電流量≒推定回生電流量IEとなる。このように回生抑制を行わない状態を、以下「通常回生」という。
なお、回生電流量が推定回生電流量IEに完全に一致しないのは、各種条件により実際の回生電流量が推定回生電流量IEとならない可能性があるためである。
【0019】
ここで、従来から、バッテリ20の充電率Sが高い時には、過充電によるバッテリ20の劣化を防止するために回生抑制を行うことが知られている。
また、バッテリ劣化度Xが高い場合もバッテリ20のさらなる劣化を防ぐために回生抑制を行うことが知られている。これは、バッテリ劣化度Xが進んでいる時にはバッテリ20内の抵抗値が上昇し、回生電流量が大きくなるとバッテリ電圧が上昇しやすくなるためである。
このため、回生制御手段128は、充電率Sに基づいて決定される閾値劣化度XLとバッテリ劣化度Xとを比較し、バッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL以上の場合には回生抑制を行い、バッテリ20のさらなる劣化を防いでいる。
【0020】
図2は、回生制御手段128が保持する閾値劣化度マップMPの一例である。
回生制御手段128は、バッテリ劣化度Xと充電率Sとに基づいて閾値劣化度XLを決定するための閾値劣化度マップMPを有し、閾値劣化度マップMPに基づいて回生抑制を行うか否かを判断する。
図2において、縦軸はバッテリ劣化度X、横軸は充電率S(SOC)である。縦軸のバッテリ劣化度Xは縦軸上方ほど小さく(0%に近く)、縦軸下方ほど大きく(100%に近く)なっている。すなわち、バッテリ劣化度が低いとはバッテリ20が新品状態に近いことを示し、バッテリ劣化度が高いとはバッテリ20の劣化が進んだ状態を示している。
【0021】
図2に示すように、閾値劣化度XLは、充電率Sが高いほど低い値に設定される。
すなわち、充電率Sが高く、回生発電によって過充電状態となる可能性が高い場合には、回生抑制が開始される閾値劣化度XLが低くなり、回生抑制がより行われやすくなる。
また、
図2のグラフの右端は、充電率Sが100%に近い高SOC抑制エリアとなっており、この領域ではバッテリ劣化度Xに関わらず回生抑制が行われる。
図2の例では、閾値劣化度XLのラインが、高SOC抑制エリアの下限充電率よりも低い充電率に設定されているが、これに限らず、高SOC抑制エリアの下限充電率に閾値劣化度XLのラインを一致させてもよい。
【0022】
回生制御手段128は、充電率Sに基づいて閾値劣化度マップMP上の閾値劣化度XLを特定し、バッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL以上か否かを判定する。バッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL以上の場合は、閾値劣化度マップMPの回生抑制エリアに対応し、モータ30での回生電流量<推定回生電流量IEとする回生抑制を行う。
また、バッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL未満の場合は、閾値劣化度マップMPの通常回生エリアに対応し、モータ30での回生電流量≒推定回生電流量IEとなる通常回生を行う。
すなわち、回生制御手段128は、
図2に示す閾値劣化度マップMP上にバッテリ20の充電率Sおよびバッテリ劣化度Xが交差する点をプロットし、当該プロット点が通常回生エリアにあるか回生抑制エリアにあるかによって、回生抑制を行うか否かを判定する。
なお、
図2を充電率Sの閾値充電率のグラフとして読み替え、バッテリ劣化度Xに基づいて閾値充電率SLを特定し、バッテリ20の充電率Sが閾値充電率SL以上か否かを判定してもよいことは無論である。この場合、バッテリ20の充電率Sが閾値充電率SL以上の場合に回生抑制を行い、閾値充電率SL未満の場合に通常回生を行う。
【0023】
図3は、回生抑制時における回生電流量を模式的に示す説明図である。
図3において、縦軸はバッテリ20に供給可能な上限電流Iであり、横軸はバッテリ劣化度Xまたは充電率Sを示す。
グラフ左側に示すように、バッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL未満である(または充電率Sが閾値充電率SL未満である)場合には、上限電流Iは一定値(通常時上限電流In)となっている。この上限電流Iは、通常の走行状態においてモータ30で発生し得る回生電流の上限値以上に設定される。
一方、グラフ右側に示すように、バッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL以上となる(または充電率Sが閾値充電率SL以上となる)場合には、上限電流Iが通常時上限電流Inよりも小さくなる。より詳細には、バッテリ劣化度Xが上がるほど、または充電率Sが大きくなるほど上限電流Iが小さくなる。
モータ30で発生する回生電流が上限電流I以下である場合(推定回生電流量IE≦上限電流I)には、回生電流をそのままバッテリ20に供給することが可能であるが、モータ30で発生する回生電流が上限電流Iよりも大きい場合(推定回生電流量IE>上限電流I)には、回生電流をそのままバッテリ20に供給することはできない。この場合、回生電流を上限電流I以下に抑制する回生抑制が行われる。
上述のように、上限電流Iは、バッテリ劣化度Xが上がるほど、または充電率Sが大きくなるほど小さくなる。よって、バッテリ劣化度Xが上がるほど、または充電率Sが大きくなるほど、回生抑制の度合いが大きくなる。
【0024】
図1の説明に戻り、報知手段130は、回生抑制が行われる可能性がある場合に、回生抑制が行われる可能性がある旨を報知する。
報知手段130は、具体的には、たとえばディスプレイ26やスピーカ28、インスツルメントパネル内の警告灯(図示なし)等のインターフェースを制御する出力制御部である。報知手段130は、回生抑制が行われる可能性がある場合には、ディスプレイ26上に回生抑制が行われる可能性がある旨のメッセージやアイコン等を表示させたり、スピーカ28から上記メッセージを音声回生させたり、警告灯を点灯させたりする。
このように、回生抑制が行われる可能性があり、回生ブレーキが利かない可能性があることを事前に運転者に報知することによって、回生抑制によって運転者の意図する減速ができない場合でも、運転者が落ち着いて運転できる可能性が高くなる。
【0025】
ここで、報知手段130は、バッテリ劣化度Xが所定の報知劣化度XA以上となった場合に回生抑制が行われる可能性がある旨を報知する。報知劣化度XAは、例えば閾値劣化度XL以下に設定する。
上述のように、実際に回生抑制が行われるのは、バッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL以上、かつ推定回生電流量IEが上限電流Iを上回った場合である。よって、バッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL以上の場合には実際に回生抑制が生じ得る状態となるが、バッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL未満の場合には回生抑制が生じ得る状態とはなっていない。
一方で、バッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL未満であっても、閾値劣化度XLに近い劣化度である場合には、近い将来回生抑制が生じる可能性がある。
よって、バッテリ劣化度Xが、閾値劣化度XLより小さい報知劣化度XA以上となった際に早めに報知を行うことによって、報知の実効性を向上させることができる。
なお、報知劣化度XA=閾値劣化度XLである場合には、実際に回生抑制が生じ得る状態となってからの報知となる。この場合でも、実際に回生抑制が生じる前に(回生走行条件が成立する前に)報知を行うことによって、運転者の違和感を軽減することができる。
また、
図3に示すように、上限電流Iはバッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL以上となった直後には通常時上限電流Inに近い値であり、回生抑制の度合いは小さい。よって、報知劣化度XAを閾値劣化度XLより大きく、かつ閾値劣化度XL近傍の劣化度としてもよい。
【0026】
また、報知劣化度XAを、閾値劣化度XL以下に設定される第1の報知劣化度XA1と、閾値劣化度XLより大きい値に設定される第2の報知劣化度XA2と、の2種類設定してもよい。
この場合、報知手段130は、バッテリ劣化度Xが第1の報知劣化度XA1以上となった場合と、第2の報知劣化度XA2以上となった場合とで報知内容を変更する。
より詳細には、
図3に示すように、上限電流Iはバッテリ劣化度Xが大きいほど小さくなり、回生抑制の度合いが大きくなる。よって、バッテリ劣化度Xが第1の報知劣化度XA1以上となった場合と比較して、第2の報知劣化度XA2以上となった場合の方が、より報知の度合いを強くする。
報知の度合いを強くするには、たとえばディスプレイ26におけるメッセージやアイコンの表示の大きさを大きくする、表示色を原色等の視認しやすい色に変更する、メッセージの内容をより強く注意を促す内容にする、スピーカ28における出力音を大きくする、出力する音を不協和音とする、等の方法が挙げられる。
【0027】
図4は、報知劣化度XAと閾値劣化度XLとの関係を示すマップであり、
図2の閾値劣化度マップMPに報知劣化度XA(XA1,XA2)を加えたものである。
図4に示すように、第1の報知劣化度XAは閾値劣化度XL以下(
図4では第1の報知劣化度XA<閾値劣化度XL)に設定されており、第1の報知劣化度XA1以上となった場合にはバッテリ劣化度Xが通常回生エリアにある時にも回生抑制の可能性が運転者に報知される。
また、第2の報知劣化度XAは閾値劣化度XLより大きい値に設定されており、実際に回生抑制が生じ得る状態、かつ高SOC抑制エリアに近く、回生抑制の度合いが大きい状態である。よって、バッテリ劣化度Xが第2の報知劣化度XA2以上となった場合には、第1の報知劣化度XA1以上となった場合と比較して、報知の度合いをより強くし、運転者により強く注意を促すようにする。
これにより、回生抑制が生じる可能性を運転者に確実に報知することができ、報知の実効性を向上させることができる。
なお、報知劣化度XAは2つに限らず、3つ以上の複数設定してもよいことは無論である。
【0028】
図5は、モータ制御装置10の処理を示すフローチャートである。
まず、モータ制御装置10は、充電率検知手段124によってバッテリ20の充電率Sを検知する(ステップS500)。
つぎに、回生制御手段128は、閾値劣化度マップ(
図2、
図4)から充電率Sに対応する閾値劣化度XLおよび報知劣化度XAを読み出す(ステップS502)。なお、複数の報知劣化度XAが設定されている場合には、複数の報知劣化度XAをそれぞれ読み出す。
つづいて、劣化度検知手段122は、バッテリ劣化度Xを検知する(ステップS504)。
報知手段130は、バッテリ劣化度Xが報知劣化度XA以上か否かを判断し(ステップS506)、報知劣化度XA以上の場合には(ステップS506:Yes)、回生抑制が行われる可能性がある旨を報知する(ステップS508)。なお、報知劣化度XAが複数設定されている場合には、いずれの報知劣化度XA以上であるかによって報知の内容(報知の度合い)を変更する。
また、バッテリ劣化度Xが報知劣化度XA以上でない場合には(ステップS506:No)、そのままステップS510に移行する。
【0029】
つぎに、回生制御手段128は、アクセルペダル24やブレーキペダル22の踏み込み量等に基づいて、回生走行条件が成立したか否かを判断する(ステップS510)。回生走行条件が成立しない場合は(ステップS510:No)、ステップS500に戻り、以降の処理をくり返す。
一方、回生走行条件が成立した場合(ステップS510:Yes)、回生制御手段128は、バッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL以上か否かを判断し(ステップS512)、閾値劣化度XL以上の場合には(ステップS512:Yes)、回生電流量推定手段120に現在の電動車の走行状態に基づいて推定回生電流量IEを算出させる(ステップS514)。
そして、回生制御手段128は、推定回生電流量IEが現在のバッテリ劣化度Xに対応する上限電流Iを超えているか否かを判断する(ステップS516)。
推定回生電流量IEが上限電流Iを超えている場合は(ステップS516:Yes)、回生電流量を上限電流I以下とする回生抑制を行う(ステップS518)。
また、推定回生電流量IEが上限電流Iを超えていない場合は(ステップS516:No)、回生抑制を行わずにそのまま通常の回生動作を行う(ステップS520)。
なお、ステップS512で、バッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL以上でない場合には(ステップS512:No)、上限電流Iは通常時上限電流In(モータ30で発生し得る回生電流の上限値以上の値)であるため、回生抑制を行わずにそのまま通常の回生動作を行う(ステップS520)。
【0030】
以上説明したように、実施の形態にかかるモータ制御装置10は、回生発電によって生じる回生電流量を、通常時の回生発電量である推定回生電流量よりも少なくする回生抑制が行われる可能性がある場合に、回生抑制が行われる可能性がある旨を報知する。
よって、実際に回生抑制が行われる前に回生ブレーキがかかりにくい場合があることを運転者に認知させることができ、回生抑制に伴う違和感を軽減させることができる。
また、モータ制御装置10は、バッテリ劣化度Xが閾値劣化度XL以上の場合に回生抑制を行う。一般に、バッテリ劣化度Xが高まるとバッテリ抵抗値が高まり、高電流を流すと劣化につながる可能性がある。このため、バッテリ劣化時に回生抑制を行うことによって、バッテリ20の更なる劣化を防止することができる。
また、モータ制御装置10は、バッテリ20の充電率Sが高いほど閾値劣化度XLを低くしているので、バッテリ20の充電率Sが高く過充電が懸念される状況で回生抑制に移行しやすくすることができる。
また、モータ制御装置10は、閾値劣化度マップMPを用いて閾値劣化度XLを特定し、回生抑制を行うか否かを判断するので、数式等を用いて閾値劣化度を算出する場合と比較してモータ制御装置の処理負荷を軽減することができる。
また、モータ制御装置10は、バッテリ劣化度Xが、閾値劣化度XL以下に設定された報知劣化度XA以上となった場合に回生抑制が行われる可能性を報知するので、実際に回生抑制が行われ得る状態になる前に運転者に報知を行うことができ、報知の実効性をより向上させることができる。
また、モータ制御装置10において、報知劣化度XAを複数設定し、それぞれの報知劣化度XA以上となった場合に報知の内容を変更するようにすれば、回生抑制の度合いに連動した報知を行うことができ、報知の有効性を向上させることができる。