特許第6596834号(P6596834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596834
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20191021BHJP
   B41J 15/16 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B41J2/01 305
   B41J2/01 125
   B41J2/01 501
   B41J15/16
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-23891(P2015-23891)
(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-147379(P2016-147379A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100194102
【弁理士】
【氏名又は名称】磯部 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】竹中 亮太
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−030313(JP,A)
【文献】 特開2010−131998(JP,A)
【文献】 特開2012−135890(JP,A)
【文献】 特開2014−025008(JP,A)
【文献】 特開2013−151110(JP,A)
【文献】 特開2013−154612(JP,A)
【文献】 特開2000−296607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
B41J 11/00−11/70
B41J 15/00−15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を送る送り部と、
前記媒体に対してインクを付与することによって記録を行う記録部と、
前記記録部よりも前記媒体の送り下流側に設けられ、前記媒体を支持する媒体支持部と、を備え、
前記媒体支持部は、前記媒体と接触する側が凸となるように屈曲し且つ前記媒体の送り方向と交差する方向に延びる複数の屈曲部と、それぞれが複数の前記屈曲部と交互に並ぶ複数の平面部と、を有し、
複数の前記屈曲部それぞれの屈曲角度が、3°以上且つ16°以下であることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
複数の前記屈曲部は、前記媒体の送り方向に並んでおり、
複数の前記屈曲部の相互の間隔は、前記媒体の送り下流側に行くほど広いことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記媒体支持部を介して前記媒体を加熱する加熱部、をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録部は、前記インクとして昇華型インクを前記媒体に対して付与することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記媒体支持部よりも前記媒体の送り下流側に設けられ、前記媒体を巻き取る巻取り部、をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を支持する媒体支持部を備えた記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塩化ビニル系のフィルムを送るローラー対と、フィルムに対して溶剤インクを噴射することにより記録を行う液体噴射ユニットと、ローラー対よりもフィルムの送り下流側に設けられ、フィルムを支持する下流側支持部とを備えたインクジェット式プリンターが知られている。この下流側支持部は、フィルムの送り下流側へ向かうほど高さが低くなるように湾曲(屈曲)している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−154612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、以下の課題を見出した。
従来のインクジェット式プリンターのような記録装置において、媒体支持部が湾曲している場合には、媒体支持部に媒体が密接しやすい。このため、静電気によって媒体支持部に媒体が貼り付くおそれがある。また、媒体支持部が屈曲している場合には、媒体支持部に送られてくる媒体には、インクが付与されて膨潤することによりシワが生じていることがあり、そのシワが屈曲部の角部において扱かれて成長することにより、媒体の送り方向に沿った折れ筋が媒体に生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、媒体支持部に媒体が貼り付くことを抑制すると共に、媒体支持部において媒体に折れ筋が生じることを抑制することができる記録装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、媒体を送る送り部と、媒体に対してインクを付与することによって記録を行う記録部と、送り部よりも媒体の送り下流側に設けられ、媒体を支持する媒体支持部と、を備え、媒体支持部は、媒体と接触する側が凸となるように屈曲し且つ媒体の送り方向と交差する方向に延びる屈曲部、を有し、屈曲部の屈曲角度が、3°以上且つ16°以下であることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、媒体支持部が屈曲部を有することにより、媒体支持部に媒体が密接し難くなる。このため、静電気によって媒体支持部に媒体が貼り付くことが抑制される。また、屈曲部の屈曲角度が3°以上且つ16°以下と小さいため、媒体に生じたシワが屈曲部の角部において扱かれることが抑制される。これにより、媒体の送り方向に沿った折れ筋が媒体に生じ難くなる。したがって、記録装置は、媒体支持部に媒体が貼り付くことを抑制すると共に、媒体支持部において媒体に折れ筋が生じることを抑制することができる。
【0008】
この場合、媒体支持部は、屈曲部を複数有することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、媒体支持部に媒体がより密接し難くなる。このため、静電気によって媒体支持部に媒体が貼り付くことが、より効果的に抑制される。
【0010】
この場合、複数の屈曲部は、媒体の送り方向に並んでおり、複数の屈曲部の相互の間隔は、媒体の送り下流側に行くほど広いことが好ましい。
【0011】
この場合、媒体支持部を介して媒体を加熱する加熱部、をさらに備えたことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、媒体が媒体支持部を通過する際に、媒体の乾燥が促進される。
【0013】
この場合、記録部は、インクとして昇華型インクを媒体に対して付与することが好ましい。
【0014】
この場合、媒体支持部よりも媒体の送り下流側に設けられ、媒体を巻き取る巻取り部、をさらに備えたことが好ましい。
【0015】
媒体の送り方向に沿った折れ筋が媒体に生じると、巻取り部により媒体が巻き取られたロール体に巻きずれが発生しやすくなる。
これに対し、本構成によれば、上述したように、媒体に折れ筋が生じ難くなるため、巻取り部により媒体が巻き取られたロール体に巻きずれが発生することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る記録装置の概略構成図である。
図2図1に示した記録装置の制御ブロック図である。
図3図1に示した記録装置に備えられた媒体支持部を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
図4】比較例1の記録装置に備えられた媒体支持部を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
図5】比較例2の記録装置に備えられた媒体支持部を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
図6】(a)は図1に示した記録装置に備えられた媒体支持部において、転写用紙に折れ筋が発生していない状態を示す写真、(b)は比較例2の記録装置に備えられた媒体支持部において、転写用紙に折れ筋が発生した状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照し、本発明の一実施形態に係る記録装置1について説明する。この記録装置1は、転写用紙100に対し、昇華型インクをインクジェット方式で付与することにより画像を形成する。画像が形成された転写用紙100は、熱転写装置に供せされ、布帛等の染色対象物に重ねられた状態で加熱されることにより、転写用紙100に形成された画像が染色対象物に転写される。
【0018】
図1を参照して、記録装置1の概略構成について説明する。記録装置1は、媒体送り機構2と、プラテン3と、記録部5と、乾燥部6と、これらを支持する支持フレーム7とを備えている。また、図1では図示省略したが、記録装置1は、制御部9を備えている(図2参照)。
【0019】
媒体送り機構2は、連続紙である転写用紙100を、ロール・ツー・ロール方式で送る。媒体送り機構2は、繰出し部11と、送り部12と、巻取り部13とを備えている。
【0020】
繰出し部11には、転写用紙100がロール状に巻かれた繰出し側ロール体101がセットされる。繰出し部11は、繰出し側支持部14と、繰出しモーター15(図2参照)とを備えている。繰出し側支持部14は、繰出し側ロール体101を回転可能に支持する。繰出しモーター15は、繰出し側ロール体101を回転させる駆動源となる。繰出しモーター15が稼動すると、繰出し側ロール体101が繰出し方向に回転し、繰出し側ロール体101から転写用紙100が繰り出される。
【0021】
送り部12は、繰出し側ロール体101から繰り出された転写用紙100を、巻取り部13に向けて送る。送り部12は、ローラー対16と、送りモーター17(図2参照)とを備えている。なお、ローラー対16の個数は特に限定されるものではなく、転写用紙100の送り経路に沿って複数を並び設けてもよい。ローラー対16は、駆動ローラー18と従動ローラー19とを備えている。駆動ローラー18は、送りモーター17から動力が伝達されることにより回転する。従動ローラー19は、駆動ローラー18に対して従動回転する。駆動ローラー18と従動ローラー19との間に、転写用紙100が挟持される。送りモーター17は、駆動ローラー18を回転させる駆動源となる。送りモーター17が稼動すると、駆動ローラー18が回転し、駆動ローラー18に向かって押し当てられる従動ローラー19が駆動ローラー18に従動し回転する。これにより、駆動ローラー18と従動ローラー19との間に挟持された転写用紙100が、巻取り部13に向けて送り出される。
なお、駆動ローラー18には、ロータリーエンコーダーを有する送り側検出部21(図2参照)が設けられている。送り側検出部21から出力されるパルスに基づいて、駆動ローラー18の回転角度α1が検出される。
【0022】
巻取り部13は、送られてきた転写用紙100をロール状に巻き取る。本実施形態においては、巻取り部13は、転写用紙100を、記録部5により昇華型インクが付与された記録面100aが外側となり、昇華型インクが付与されていない非記録面100bが内側となるようにして、巻き取る。なお、記録部5により昇華型インクが付与された記録面100aが内側となり、昇華型インクが付与されていない非記録面100bが外側となるようにして、巻き取ってもよい。巻取り部13は、巻取り側支持部22と、巻取りモーター23(図2参照)とを備えている。巻取り側支持部22は、巻取り用の紙管24を回転可能に支持する。紙管24には、転写用紙100の先端部が取り付けられている。紙管24は、巻取りモーター23からギア列を介して動力が伝達されることにより回転する。巻取りモーター23は、紙管24を回転させる駆動源となる。巻取りモーター23が一方側に回転すると、紙管24が巻取り方向に回転し、紙管24に転写用紙100が巻き取られる。紙管24に転写用紙100が巻き取られることにより形成されたロール体を、巻取り側ロール体102という。巻取りモーター23が他方側に回転すると、紙管24が巻取り方向とは逆の逆回転方向に回転し、紙管24に巻き取られた転写用紙100が巻き解かれる。
なお、巻取りモーター23には、ロータリーエンコーダーを有する巻取り側検出部25(図2参照)が設けられている。巻取り側検出部25から出力されるパルスに基づいて、巻取りモーター23の回転角度α0が検出される。
【0023】
プラテン3は、ローラー対16よりも転写用紙100の送り下流側に設けられている。プラテン3は、上面を通過する転写用紙100を支持する。プラテン3の上面には、複数の吸引穴26が設けられている。吸引穴26は、図示省略した吸引ファンに連なっている。吸引ファンが稼動すると、吸引穴26に負圧が作用し、プラテン3の上面に転写用紙100が吸着される。これにより、プラテン3の上面から転写用紙100が浮き上がることが抑制され、転写用紙100が記録部5の記録ヘッド27(後述する)と干渉することが防止される。
【0024】
記録部5は、プラテン3の上面に対向して設けられている。記録部5は、キャリッジ28と、キャリッジ28に搭載された記録ヘッド27とを備えている。記録ヘッド27は、プラテン3の上面に吸着された転写用紙100に対して、昇華型インクを吐出する。記録ヘッド27が搭載されたキャリッジ28は、転写用紙100の送り方向と交差する方向に、往復移動可能に構成されている。
【0025】
乾燥部6は、記録部5よりも転写用紙100の送り下流側に設けられている。乾燥部6は、媒体支持部31と、媒体支持部31の裏面に設けられたヒーター線32とを備えている。ヒーター線32が発熱することで、昇華型インクが付与された転写用紙100が媒体支持部31の表面を通過する際に、転写用紙100の乾燥が促進される。媒体支持部31について後述する。
【0026】
支持フレーム7は、バー部材33を有している。バー部材33は、乾燥部6と巻取り部13との間において、転写用紙100の送り経路を構成している。
【0027】
以上のように構成された記録装置1は、媒体送り機構2による転写用紙100の間欠送りの停止時に、キャリッジ28が移動しながら記録ヘッド27から昇華型インクを吐出する動作と、媒体送り機構2が転写用紙100を間欠送りする動作とを、交互に繰り返し行う。これにより、転写対象物に転写される画像が転写用紙100に形成される。
【0028】
図2を参照して、記録装置1の制御系について説明する。制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えている。制御部9のCPUは、ROMからプログラムをロードしてRAMを用いて実行し、記録装置1の各部を制御する。また、制御部9には、図示しないホスト装置(例えばパソコン)が通信可能に接続されている。制御部9は、印刷画像を表す画像データを、ホスト装置などから取得する。制御部9は、画像データに基づいて、記録ヘッド27の吐出動作を制御する。
【0029】
制御部9は、設定トルクTに基づいて巻取りモーター23を制御する。これにより、転写用紙100に一定のテンションが掛かった状態で、転写用紙100が巻取り部13に巻き取られる。制御部9は、記録装置1の稼動開始時に初期化制御を実行することにより、設定トルクTを算出する。
【0030】
ここで、設定トルクTの算出方法について説明する。制御部9は、初期化制御を開始すると、まず、巻取りモーター23を停止した状態で、送りモーター17を回転させる。これにより、ローラー対16と巻取り部13との間で転写用紙100が弛んだ状態となる。制御部9は、転写用紙100が弛んだ状態で、巻取りモーター23を回転させる。これにより、制御部9は、巻取りモーター23のオフセットトルクT0を取得する。オフセットトルクT0は、静負荷時の巻取りモーター23を回転させる際に必要な電流値に基づいて取得される。
【0031】
続いて、制御部9は、ローラー対16と巻取り部13との間の転写用紙100にテンションが掛かった状態で、送りモーター17および巻取りモーター23を回転させる。制御部9は、このときに送られた転写用紙100の送り量である設定時送り量Lを、送り側検出部21により検出された駆動ローラー18の回転角度α1と、既知である駆動ローラー18のローラー半径rとの関係に基づいて、次式の関係から算出する。
L=r・α1
そして、制御部9は、巻取り側ロール体102のロール半径Rを、設定時送り量Lと、巻取り側検出部25により検出された巻取りモーター23の回転角度α2と、既知である、巻取りモーター23と紙管24との間のギア列の減速比Nとに基づいて、次式の関係から算出する。
R=(L/α2)・N
なお、減速比Nは、紙管24の回転角度をα0としたときに、N=α2/α0で与えられる値である。
【0032】
続いて、制御部9は、設定テンションFを設定する。制御部9は、例えば、転写用紙100の種類とテンションの値とが関連付けられたテーブルを記憶しており、そのテーブルを参照することにより、設定テンションFを設定する。
【0033】
制御部9は、このようにして取得したオフセットトルクT0と、ロール半径Rと、設定テンションFとに基づいて、巻取りモーター23の設定トルクTを、次式の関係から算出する。
T=(F・R−T0)/N
【0034】
制御部9は、このように、巻取り側ロール体102のロール半径Rに応じて設定した設定トルクTに基づいて、巻取りモーター23を制御する。これにより、例えば記録部5により記録を行う際に、制御部9が、巻取りモーター23を送りモーター17と同期して稼動させた場合にも、巻取り部13が転写用紙100を必要以上に巻き取ってしまったり、あるいは、巻取り量が足らなかったりすることを抑制することができる。
【0035】
図3を参照して、媒体支持部31について説明する。媒体支持部31は、アルミプレートを折曲加工したものであり、7つの屈曲部35を有している。なお、屈曲部35の個数は特に限定されるものではない。屈曲部35は、転写用紙100と接触する側が凸となるように屈曲している。転写用紙100と接する面が、屈曲面となっている。また、屈曲部35は、転写用紙100の送り方向と交差する方向に延びている。すなわち、媒体支持部31は、転写用紙100の送り方向と交差する方向に沿って折り曲げられて屈曲部35を形成している。7つの屈曲部35は、転写用紙100の送り方向に並んでおり、屈曲部35の相互の間隔は、送り下流側に行くほど広くなっている。
【0036】
屈曲部35の屈曲角度は、上流側の屈曲部35から順に、θ1=15.63°、θ2=6.74°、θ3=3.81°、θ4=4.82°、θ5=12.97°、θ6=4.58°、θ7=13.45°、となっている(以下、屈曲角度θ1〜θ7を区別する必要がない場合には、これらを総称して「屈曲角度θ」と総称する)。このように、屈曲部35の屈曲角度θは、3°以上且つ16°以下となっている。
【0037】
ここで、媒体支持部31の形状によっては、媒体支持部31に転写用紙100が密接し、静電気によって媒体支持部31に転写用紙100が貼り付くおそれがある。特に、上述したように、記録装置1の初期化制御時には、ローラー対16と巻取り部13との間で転写用紙100が弛んだ状態を作るために、巻取り部13による転写用紙100の巻取りが停止した状態で、送り部12により転写用紙100が送られることから、巻取り部13により転写用紙100が引っ張られておらず、媒体支持部31に転写用紙100が貼り付きやすい。
【0038】
これに対し、本実施形態の記録装置1によれば、媒体支持部31が屈曲部35を有するため、媒体支持部31に転写用紙100が密接し難くなる。このため、巻取り部13による転写用紙100の巻取りが停止した状態で、送り部12により転写用紙100が送られる際にも、静電気によって媒体支持部31に転写用紙100が貼り付くことが抑制される。
【0039】
一方、屈曲部35の屈曲角度θが大きいと、媒体支持部31に送られてくる転写用紙100には、昇華型インクが付与されて膨潤することによりシワが生じていることがあり、そのシワが屈曲部35の角部において扱かれて成長することにより、転写用紙100の送り方向に沿った折れ筋が転写用紙100に生じるおそれがある。特に、記録装置1の初期化制御終了後の記録時には、上述したように、巻取り部13が送り部12と同期して稼動し、転写用紙100に設定テンションFが掛った状態で転写用紙100が送られるため、転写用紙100に生じたシワが屈曲部35の角部において強く扱かれることになり、折れ筋が転写用紙100に生じやすい。
【0040】
折れ筋が転写用紙100に生じると、巻取り側ロール体102において端面が揃わない巻きずれが発生しやすくなる。巻取り側ロール体102の巻きずれは、熱転写装置において転写用紙100の蛇行等を引き起こす。また、折れ筋が転写用紙100に生じると、巻取り側ロール体102において、折れ筋が発生した箇所の記録面100aと、その外側に巻かれた転写用紙100の非記録面100bとが接触することにより、折れ筋が発生した箇所の記録面100aに付与された昇華型インクが、その外側に巻かれた転写用紙100の非記録面100bに移るおそれがある。このように巻取り側ロール体102において裏移りが発生すると、裏移り分だけ記録面100aに付与されている昇華型インクの量が減ってしまい、記録面100aの場所により、転写対象物に転写される色材の量にムラが生じるため、熱転写装置により転写対象物に転写された画像に色ムラが発生してしまう。さらに、媒体支持部31において生じた折れ筋が転写用紙100の送り上流側へと進展する場合もあり、その場合は、折れ筋が生じた箇所が転写用紙100の厚み方向に飛び出して転写用紙100が記録ヘッド27と干渉するおそれがある。
【0041】
これに対し、本実施形態の記録装置1によれば、屈曲部35の屈曲角度θが3°以上且つ16°以下と小さいため、転写用紙100に生じたシワが屈曲部35の角部において扱かれることが抑制される。これにより、転写用紙100の送り方向に沿った折れ筋が転写用紙100に生じ難くなる。その結果、巻取り側ロール体102における巻きずれの発生、巻取り側ロール体102における裏移りの発生、折れ筋と記録ヘッド27との干渉、といった不具合が抑制される。
【0042】
以下、実施例および比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1として、本実施形態の記録装置1を用いた。
比較例1として、上記した媒体支持部31に代えて図4に示す媒体支持部31Aを備えた点を除き、本実施形態の記録装置1と同様に構成された装置を用いた。媒体支持部31Aは、屈曲部35を備えておらず、転写用紙100と接する面が湾曲面となっている。
比較例2として、上記した媒体支持部31に代えて図5に示す媒体支持部31Bを備えた点を除き、本実施形態の記録装置1と同様に構成された装置を用いた。媒体支持部31Bは、上流側端部の位置と下流側端部の位置は、媒体支持部31と略同じであるが、屈曲部35の数が3個と少ない。その分、屈曲部35の屈曲角度が、送り上流側から順に、θa=22.36°、θb=23.33°、θc=16.31°と、屈曲角度θ1〜θ7より大きくなっている。つまり、屈曲角度θa〜θcは、いずれも16°を超えている。
なお、転写用紙100としては、Beaver Paper社の「Tex Print XPHR 44インチ幅」(坪量:105g/m2)を用いた。
【0043】
実施例および比較例について、初期化制御における転写用紙100の送り時に、媒体支持部31に転写用紙100が貼り付いたか否かを評価した。
実施例1では、転写用紙100の貼り付きは認められなかった。
比較例1では、転写用紙100の貼り付きが認められた。
比較例2では、転写用紙100の貼り付きは認められなかった。
【0044】
実施例および比較例について、初期化制御終了後の記録時おける転写用紙100の送り動作によって、媒体支持部31において転写用紙100に折れ筋が発生したか否かを評価した。
実施例1では、転写用紙100に折れ筋の発生は認められなかった(図6(a)参照)。
比較例1では、転写用紙100に折れ筋の発生は認められなかった。
比較例2では、転写用紙100に折れ筋の発生が認められた(図6(b)において楕円で囲んだ部分に折れ筋が認められる)。
【0045】
以上のように、本実施形態の記録装置1によれば、媒体支持部31に転写用紙100が貼り付くことを抑制すると共に、媒体支持部31において転写用紙100に折れ筋が生じることを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態の記録装置1によれば媒体支持部31が複数の屈曲部35を有することで、媒体支持部31に転写用紙100がより密接し難くなる。このため、静電気によって媒体支持部31に転写用紙100が貼り付くことが、より効果的に抑制される。
【0047】
なお、ヒーター線32は、「加熱部」の一例である。転写用紙100は、「媒体」の一例である。
本発明は上記した実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採用可能であることは言うまでもない。例えば、本実施形態は、以下のような形態に変更することができる。
【0048】
記録部5が吐出するインクは、昇華型インクに限定されるものではなく、例えば、水性インク、油性インク、溶剤インク、紫外線硬化型インクであってもよい。また、媒体の材質は特に限定されるものではなく、紙系、フィルム系など、種々の材質のものを用いることができる。なお、転写用紙100には、安価である薄手のもの(例えば、坪量が75g/m2以下)が用いられることが多い。その場合、転写用紙100は、静電気等により媒体支持部31に貼り付きやすい。また、インクを吸収することで膨潤し、シワがより易い。そのため、薄手の転写用紙100に対して、本発明は特に有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 :記録装置
5 :記録部
12 :送り部
13 :巻取り部
31 :媒体支持部
35 :屈曲部
100 :転写用紙
θ :屈曲角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6