(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の静電画像加湿装置は、トナー粒子を含む静電荷像現像用トナーを熱定着させた画像を有する用紙を加湿する静電画像加湿装置であって、
前記トナー粒子が、トナー母体粒子に少なくとも結晶性樹脂を含有し、
用紙を搬送する際に、当該用紙に加湿液を付与する加湿手段を有し、
当該加湿液が、少なくとも
陽イオン性界面活性剤
として、四級アンモニウム塩を含有することを特徴とする。この特徴は
各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0027】
本発明の実施態様としては、前記加湿手段が、前記用紙に前記加湿液を付与する加湿ローラーと、当該加湿ローラーに前記加湿液を供給する手段と、を有することが、前記用紙に対して、加湿液を均一に塗布でき、ひいては、貼り付きをより抑制できることから好ましい。
【0028】
本発明においては、前記加湿液が、前記界面活性剤として、陽イオン性界面活性剤を含有することが、より高い貼り付き抑制効果を望めるため好ましく、さらに、当該陽イオン性界面活性剤として、四級アンモニウム塩を含有することが、加湿液のpH及び加湿液中の金属イオン量の影響を受けにくいため、特に好ましい。
【0029】
本発明においては、加湿液が、少なくともアルコールを含有することが、濡れ性をより向上でき、ひいては、トナーを熱定着させた画像を有する用紙の貼り付きをより抑制できるため好ましい。
【0030】
本発明においては、前記加湿液中の前記界面活性剤の含有量が、0.1〜30質量%の範囲内であることが、本発明の効果を適切に発現でき、さらに、画像表面がべたつくことがないため好ましい。
【0031】
本発明においては、前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂であることが、トナーを熱定着させた画像を有する用紙の貼り付きをより抑制できるほか、低温定着性を実現できるため好ましい。
【0032】
本発明においては、前記結晶性樹脂が、前記トナー母体粒子中に1〜30質量%の範囲内含有されることが、トナーがブロッキングを起こすことなく、好適に効果を発現することができるため好ましい。
【0033】
本発明においては、前記用紙を下方又は上方に案内する鉛直な用紙搬送路、給液部、前記給液部から前記加湿液が供給される給液ローラーを有し、前記加湿ローラーが給液ローラーから加湿液を受け取ることが、前記用紙に対して、加湿液を均一に塗布でき、ひいては、貼り付きをより抑制できることから好ましい。
【0034】
本発明の静電画像加湿装置は、前記用紙に画像を形成する手段及び加熱により画像を定着する手段を有する画像形成装置に好適に採用できる。
【0035】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0036】
≪静電画像加湿装置の概要≫
本発明の静電画像加湿装置は、トナー粒子を含む静電荷像現像用トナーを熱定着させた画像を有する用紙を加湿する静電画像加湿装置であって、前記トナー粒子が、トナー母体粒子に少なくとも結晶性樹脂を含有し、用紙を搬送する際に、当該用紙に加湿液を付与する加湿手段を有し、当該加湿液が、少なくとも
陽イオン性界面活性剤
として、四級アンモニウム塩を含有することを特徴とする。
【0037】
なお、本発明の静電画像加湿装置は、後述の
図1、2等に示すような、用紙を下方又は上方に案内する鉛直な用紙搬送路、給液部、給液部から前記加湿液が供給される給液ローラーを有し、前記加湿ローラーが給液ローラーから加湿液を受け取る態様が好ましい。
本発明の静電画像加湿装置は、用紙に画像を形成する手段及び加熱により画像を定着する手段を有する画像形成装置に好適に採用できる。
なお、本発明において、「鉛直」とは水平面に対して90±5°の範囲以内であることをいう。
【0038】
[加湿手段]
本発明に係る加湿手段は、用紙を搬送する際に、当該用紙に加湿液を付与する。
なお、本発明に係る加湿手段は、用紙を搬送する際に、当該用紙に加湿液を付与できる手段であれば、特に限定されないが、後述するような、用紙に加湿液を付与する加湿ローラーと当該加湿ローラーに加湿液を供給する手段と、を有することが、トナーを熱定着させた画像を有する用紙に対して、加湿液を均一に塗布でき、ひいては、貼り付きをより抑制できることから好ましい。
また、用紙に付与する加湿液の量は特に限定されないが、用紙に対し0.01g/m
2〜0.50g/m
2の範囲内、より好ましくは0.03g/m
2〜0.10g/m
2の範囲内であることがべたつき等の画像品質低下を起こすことなく、好適に効果を発現できるため好ましい。
【0039】
<加湿液>
本発明に係る加湿液は、少なくとも界面活性剤を含有する。
なお、加湿液中の界面活性剤の含有量は、加湿液全体に対し、0.1〜30質量%の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、本発明の効果を適切に発現でき、さらに、画像表面がべたつくことがない。
加湿液は、上記界面活性剤のほか、溶媒を含有していることが好ましい。この溶媒は、特に限定されず、例えば、水並びにアルコール又はこれらの混合溶媒を使用できる。
なお、加湿液は、アルコールを含有することが、濡れ性をより向上でき、ひいては、トナーを熱定着させた画像を有する用紙の貼り付きをより抑制できるため好ましい。
【0040】
(アルコール)
アルコールは、公知のものを使用でき、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノールを使用できる。
【0041】
(界面活性剤)
本発明に係る界面活性剤は、その種類については限定されず、例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が使用できる。
【0042】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。
【0043】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0044】
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等、非イオン活性剤としては、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。
【0045】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
なお、一般的に、画像を形成するトナー粒子に含有される樹脂は負極性に帯電しやすいため、加湿液は陽イオン性界面活性剤を含有することが、より高い貼り付き抑制効果が得られるため好ましい。
さらに、陽イオン性界面活性剤として、四級アンモニウム塩を含有すれば、加湿液のpH及び加湿液中の金属イオン量の影響を受けにくいため特に好ましい。
【0046】
また、陽イオン性界面活性剤として、市販品を使用してもよく、例えば、株式会社日新化学研究所製のカプロンB−415、カプロンB−615、カプロンB−315、カプロンB−317S、カプロンC−30等や、ライオン株式会社製のライオンソフターEQなどが挙げられる。
【0047】
[用紙]
本発明に係る用紙は、トナーを熱定着させた画像を有することができるものであれば、特に限定されず、具体的には、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙や上質紙、アート紙やコート紙等の塗工処理がなされた印刷用紙等が挙げられる。
なお、トナーを熱定着させる方法は特に限定されないが、後述の定着手段8のような方法を好適に使用できる。
【0048】
[静電荷像現像用トナー]
本発明に係る静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、少なくともトナー粒子を含んで構成される。
なお、本発明において、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
【0049】
[トナー粒子]
本発明に係るトナー粒子は、トナー母体粒子に少なくとも結晶性樹脂を含有する。
本発明に係るトナー母体粒子には、結着樹脂及び着色剤が含有され、所望により離型剤が含有されてもよい。
ここで、本発明「トナー母体粒子」とは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有してなる粒子のことである。トナー母体粒子は、そのままでもトナー粒子として使用することができるが、通常、外添剤を添加したものをトナー粒子として使用することが好ましい。
また、本発明に係るトナー母体粒子を製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。
【0050】
<結晶性樹脂>
本発明において、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂である。明確な吸熱ピークとは、具体的には示差走査熱量測定(DSC)において、例えば昇温速度10℃/minで測定した際、吸熱ピークの半値幅が15℃以内となるピークを示すものを意味する。
なお、結晶性樹脂は、トナー母体粒子中に1〜30質量%の範囲内含有されることが好ましい。
結晶性樹脂のトナー母体粒子中における含有量が、1質量%以上であれば、好適に効果を発現することができる。また、結晶性樹脂のトナー母体粒子中における含有量が、30質量%以下であれば、トナーがブロッキングを起こすことを回避できる。
【0051】
結晶性樹脂は、特に限定されないが、低温定着性を実現するため結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂は、エステル結合を有するため、水分を吸着しやすく、これにより、電荷放出が、より促進され、ひいては、トナーを熱定着させた画像を有する用紙の貼り付きをより抑制できることからも好ましい。
【0052】
(結晶性ポリエステル樹脂)
ここで、結晶性ポリエステル樹脂とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸化合物)と、2価以上のアルコール(多価アルコール化合物)との重縮合反応によって得られる結晶性樹脂である。
【0053】
多価カルボン酸化合物とは1分子中にカルボキシ基を2個以上有する化合物であり、多価カルボン酸化合物のアルキルエステル、酸無水物及び酸塩化物を用いることができる。多価カルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p′−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などの2価のカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などの3価以上のカルボン酸と組み合わせてもよい。
【0054】
多価アルコール化合物とは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上有する化合物であり、多価アルコール化合物としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
【0055】
ポリエステル重合セグメントを合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができ、例えばエステル化触媒などを使用することができる。
エステル化触媒としては、酸化ジブチルスズ、2−エチルヘキサン酸スズ(II)等のスズ化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物と両反応性単量体成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。エステル化助触媒の使用量は、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物と両反応性単量体成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
【0056】
本発明で使用可能な結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸化合物及び多価アルコール化合物の組合せとしては、例えば、1,12−ドデカンジオール(炭素数12)及びセバシン酸(炭素数10)、エチレングリコール(炭素数2)及びセバシン酸(炭素数10)、1,6−ヘキサンジオール(炭素数6)及びドデカン二酸(炭素数12)、1,9−ノナンジオール(炭素数6)及びドデカン二酸(炭素数12)、1,6−ヘキサンジオール(炭素数6)及びセバシン酸(炭素数10)などが挙げられる。
【0057】
なお、結晶性ポリエステル樹脂粒子の融点Tmは、65〜90℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは70〜80℃の範囲内である。Tmが、65〜90℃の範囲内であれば、低温定着性を阻害することなく、また、耐熱保管性が向上する。
【0058】
(結晶性ポリエステル樹脂の融点測定法)
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、示差熱量分析装置(DSC)により測定することができる。
例えば、DSC−7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー製)を用いて行うことができる。具体的には、試料4.50mgをアルミニウム製パン(KITNo.0219−0041)に封入し、これを「DSC−7」のサンプルホルダーにセットし、リファレンスの測定には空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度0〜200℃で、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分の測定条件で、Heat−Cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを取得する。融点は、吸熱ピークのピークトップの温度とする。
なお、当該結晶性ポリエステル樹脂の融点測定法は、結晶性ポリエステル樹脂以外の結晶性樹脂の融点測定法としても同様に適用できる。
【0059】
(結晶性ポリエステル樹脂以外の結晶性樹脂)
なお、結晶性樹脂としては、上記結晶性ポリエステル樹脂以外にも、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂などが挙げられる。
【0060】
(結晶性ポリウレタン樹脂)
結晶性ポリウレタン樹脂は、ジオール成分とジイソシアネート成分とから合成されるものであることが好ましい。
【0061】
結晶性ポリウレタン樹脂を得るためのジオール成分としては、上述と同様のものを用いることができる。
【0062】
(ジイソシアネート成分)
結晶性ポリウレタン樹脂を得るためのジイソシアネート成分としては、炭素数6〜20(ただしNCO基中の炭素は除く)の芳香族ジイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート、及びこれらのジイソシアネートの変性物などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0063】
結晶性ポリウレタン樹脂を得るためのジイソシアネート成分としては、上記のジイソシアネートとともに3価以上のポリイソシアネートを用いてもよい。
【0064】
芳香族ジイソシアネートとしては、1,3−及び/又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4′−及び/又は4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4′,4″−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−及びp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0065】
脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
【0066】
脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−及び/又は2,6−ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0067】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、m−及び/又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α、α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0068】
ジイソシアネートの変性物としては、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレシイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基による変性物などが挙げられる。具体的には、ウレタン変性MDI、ウレタン変性TDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDIなどが挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0069】
これらの中でも、炭素数6〜15の芳香族ジイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネートを用いることが好ましく、特に好ましくはTDI、MDI、HDI、水添MDI、IPDIである。
【0070】
〔結晶性ポリアミド樹脂〕
結晶性ポリアミド樹脂は、ジアミン成分とジカルボン酸成分との反応から得られたものであることが好ましい。
【0071】
結晶性ポリアミド樹脂を得るためのジカルボン酸成分としては、上述と同様のものを用いることができる。
【0072】
(ジアミン成分)
結晶性ポリアミド樹脂を得るためのジアミン成分及びポリアミン成分としては、脂肪族ジアミン又は脂肪族ポリアミンを用いることが好ましく、芳香族ジアミンを用いることもできる。
【0073】
脂肪族ジアミン及び脂肪族ポリアミンとしては、以下のものが挙げられる。
【0074】
(1)直鎖型脂肪族ジアミン
エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンシアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの炭素数2〜6のもの。
【0075】
(2)脂肪族ポリアミン
ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの炭素数2〜6のもの。
【0076】
(3)分岐型脂肪族ジアミン
ジアルキル(炭素数1〜3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミン。
【0077】
(4)脂環式ジアミン
1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4′−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メレンジアミン)などの炭素数4〜15のもの。
【0078】
(5)複素環式ジアミン
ピペラジン、4−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカンなどの炭素数4〜15のもの。
【0079】
(6)芳香環含有脂肪族ジアミン
キシリレンジアミン、テトラクロロ−p−キシリレンジアミンなどの炭素数8〜15のもの。
【0080】
脂肪族ジアミン、脂肪族ポリアミンと併用することができる芳香族ジアミンしては、炭素数6〜20のものが挙げられ、具体的には、以下のものを用いることが好ましい。
【0081】
(7)非置換の芳香族ジアミン
1,2−、1,3−及び1,4−フェニレンジアミン、2,4′−及び4,4′−ジフェニルメタンジアミン、ポリフェニルポリメチレンポリアミン、ジアミノジフェニルスルホン、チオジアニリン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリアミン、ナフチレンジアミンなど。
【0082】
(8)炭素数1〜4のアルキル基により核置換された芳香族ジアミン
2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、エチルトリレンジアミン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジフェニルメタン、4,4′−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,4−ジイソプロピル−2,5−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4,3,3′,5.5′−テトラメチルベンジジン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジメチルジフェニルメタン、3,5−ジエチル−3′−メチル−2′,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジエチル−2.2′−アミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラエチル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′,5,5′−テトライソプロピル−4,4′−ジアミノジフェニルスルホン及びこれらの異性体の混合物など。
【0083】
上記(7)〜(8)の芳香族ジアミンのアミノ基の一部又は全部が−NH−R
1(ただし、R
1はメチル基、エチル基などの低級アルキル基)により置換されたもの、4,4′−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼンなど。
【0084】
また、結晶性ポリアミド樹脂を得るためのポリアミン成分としては、以下のその他のポリアミン成分を用いることもできる。
【0085】
(9)その他のポリアミン
ダイマー酸などのジカルボン酸と過剰(ジカルボン酸酸1モルに対して2モル以上)の脂肪族ポリアミンとの縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミン、ポリアルキレングリコールなどのポリオールのシアノエチル化物の水素化物などのポリエーテルポリアミンなど。
【0086】
(結晶性ポリウレア樹脂)
結晶性ポリウレア樹脂は、ジアミン成分とジイソシアネート成分との反応から得られたものであることが好ましい。
【0087】
結晶性ポリウレア樹脂を得るためのジアミン成分、ポリアミン成分としては、上述と同様のものを用いることができる。
【0088】
また、結晶性ポリウレア樹脂を得るためのジイソシアネート成分としては、上述と同様のものを用いることができる。
【0089】
(結晶性ポリエーテル樹脂)
結晶性ポリエーテル樹脂としては、結晶性ポリオキシアルキレンポリオールなどを用いることができる。
【0090】
結晶性ポリオキシアルキレンポリオールの製造に用いられるアルキレンオキサイド(AO)としては、炭素数3〜9のものが挙げられる。
【0091】
具体的には、炭素数3のアルキレンオキサイド(AO)としては、プロピレンオキサイド、1−クロロオキタセン、1,2−ジクロロオキタセン、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリンなどが挙げられる。
【0092】
炭素数4のアルキレンオキサイド(AO)としては、1,2−ブチレンオキサイド、メチルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0093】
炭素数5のアルキレンオキサイド(AO)としては、1,2−ペンチレンオキサイド、2,3−ペンチレンオキサイド、3−メチル−1,2−ブチレンオキサイドなどが挙げられる。
【0094】
炭素数6のアルキレンオキサイド(AO)としては、シクロヘキセンオキサイド、1,2−ヘキシレンオキサイド、2,3−へキシレンオキサイド、3−メチル−1,2−ペンチレンオキサイド、4−メチル−2,3−ペンチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0095】
炭素数7のアルキレンオキサイド(AO)としては、1,2−へブチレンオキサイドが挙げられる。
【0096】
炭素数8のアルキレンオキサイド(AO)としては、スチレンオキサイドが挙げられる。
【0097】
炭素数9のアルキレンオキサイド(AO)としては、フェニルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0098】
これらのアルキレンオキサイドのうち、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイドを用いることが好ましく、特にプロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイドを用いることが好ましく、重合速度が高いことから、最も好ましくはプロピレンオキサイドである。これらのアルキレンオキサイド(AO)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0099】
結晶性ポリオキシアルキレンポリオールの合成方法としては、従来公知の種々の方法を用いることができる。具体的には、Journal of the American Chemical Society 78,18,p.4787−4792(1956)に開示されるキラル体のアルキレンオキサイド(AO)を通常アルキレンオキサイド(AO)の重合で用いられる触媒を使用して開環重合する方法、特開平11−12353号公報に開示される立体的に嵩高いランタニド錯体と有機アルミニウムとを接触させた化合物を触媒として用いる方法、特表2001−521957号公報に開示されるバイメタルμ−オキソアルコキサイドとビロキシル化合物とをあらかじめ反応させる方法、Journal of the American Chemical Society 127,33,p.11566−11567(2005)に開示される高いアイソクティシティのポリオキシアルキレンポリオールを得る方法などが挙げられる。
【0100】
キラル体のアルキレンオキサイド(AO)を開環重合する方法においては、重合開始剤としてグリコール又は水を用いることによって、末端にヒドロキシル基を有するアイソタクティシティが50%以上のポリオキシアルキレングリコールが得られる。アイソタクティシティが50%以上であるポリオキシアルキレングリコールは、その末端がカルボキシ基に変性されていてもよい。通常、アイソタクティシティが50%以上であると、結晶性のものとなる。
【0101】
アイソタクティシティは、高シャープメルト性、耐ブロッキング性を得る観点から、70%以上であることがより好ましく、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0102】
アイソタクティシティは、Macromolecule,35,6,p.2389−2392(2002)に開示された方法によって測定されるものである。
【0103】
具体的には、測定試料30mgを直径5mmの
13C−NMR用試料管に秤量、0.5mlの重水素化溶媒(重水素化クロロホルム、重水素化トルエン、重水素化ジメチルホルムアミド、重水素化ジメチルスルホキシドなど、試料を溶解可能な溶剤を選択)を加えて溶解させ、
13C−NMRの三枝類のメチン基由来のシグナル、それぞれシンジオタクチック値:75.1ppm付近、ヘテロタクチック値:75.3ppm付近、アイソタクチック値:75.5ppm付近を観測し、下記式(a)から算出することができる。
【0104】
式(a):アイソタクティシティ(%)=[I/(I+S+H)]×100
【0105】
上記式(a)中、I:アイソタクチック値の積分値、S:シンジオタクチック値の積分値、H:ヘテロタクチック値の積分値である。
【0106】
以上の結晶性樹脂は、その2種以上がブロック共重合体として結合された構成を有していてもよい。
【0107】
<結着樹脂>
本発明に係るトナー粒子が粉砕法、溶解懸濁法などによって製造される場合には、トナー粒子を構成する結着樹脂として、例えば、スチレン系ポリマーやアクリル系ポリマー、スチレン−アクリル系コポリマー、ポリエステル、シリコーンポリマー、オレフィン系ポリマー、アミド系ポリマー及びエポキシポリマーなどが挙げられる。
【0108】
この中でも、溶融特性が低粘度で高いシャープメルト性を有するスチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、スチレン−アクリル系コポリマー、及びポリエステルが好適に挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0109】
また、本発明に係るトナー粒子が懸濁重合法、ミニエマルション重合凝集法、乳化重合凝集法などによって製造される場合には、トナー粒子を構成する各ポリマーを得るための重合性モノマーとして、例えばビニル系モノマーなどの公知の種々の重合性モノマーを挙げることができる。また、重合性モノマーとしては、イオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。さらに、重合性モノマーとしては、多官能性ビニル系モノマーを用いて架橋構造の結着樹脂を得ることもできる。
【0110】
<着色剤>
本発明のトナー母体粒子が含有する着色剤としては、公知の無機又は有機着色剤を使用することができる。着色剤としてはカーボンブラック、磁性粉のほか、各種有機、無機の顔料、染料等が使用できる。着色剤の添加量はトナー粒子に対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲とされる。
【0111】
<離型剤>
本発明に係るトナー母体粒子には、離型剤を添加することができる。離型剤としては、ワックスが好ましく用いられる。ワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスのような炭化水素系ワックス類、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニル、クエン酸ベヘニルなどのエステルワックス類などが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0112】
ワックスとしては、トナーの低温定着性及び離型性を確実に得る観点から、その融点が50〜95℃であるものを用いることが好ましい。ワックスの含有割合は、結着樹脂全量に対して2〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜18質量%、更に好ましくは4〜15質量%である。
【0113】
また、トナー粒子中におけるワックスの存在状態として、ドメインを形成することが離形性効果を発揮する上で好ましい。結着樹脂中にドメインを形成することで、それぞれの機能を発揮しやすくなる。
【0114】
ワックスのドメイン径としては300nm〜2μmが好ましい。この範囲であれば、十分に離形性の効果が得られる。
【0115】
<荷電制御剤>
また、本発明に係るトナー母体粒子には、必要に応じて荷電制御剤を添加することができる。荷電制御剤としては、種々の公知のものを使用することができる。
【0116】
荷電制御剤としては、水系媒体中に分散することができる公知の種々の化合物を用いることができ、具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第四級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩又はその金属錯体などが挙げられる。
【0117】
荷電制御剤の含有割合は、結着樹脂全量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%とされる。
【0118】
<外添剤>
トナーとしての帯電性能や流動性、又はクリーニング性を向上させる観点から、トナー粒子の表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子、滑材を外添剤として添加することできる。
無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウムなどによる無機微粒子を好ましいものとして挙げられる。
必要に応じてこれらの無機微粒子は疎水化処理されていてもよい。
有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機微粒子を使用することができる。
滑材は、クリーニング性や転写性を更に向上させる目的で使用されるものであって、滑材としては、例えば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩などの高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。これらの外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
外添剤の添加量は、トナー粒子100質量%に対して0.1〜10.0質量%の範囲内であることが好ましい。
【0119】
以上のような外添剤を、トナー母体粒子に添加混合することにより、静電荷像現像用トナーが得られる。外添剤の添加処理において、使用される混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミルなどの機械式の混合装置を使用することができる。
【0120】
[現像剤]
本発明に係る静電荷像現像用トナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、公知の種々のキャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
【0121】
キャリアの体積平均粒径としては20〜100μmであることが好ましく、更に好ましくは25〜80μmである。キャリアの体積平均粒径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0122】
≪本発明の静電画像加湿装置の具体的な一例≫
以下、
図1〜
図5に示す実施の形態により、上述の構成を有する本発明の静電画像加湿装置について具体的な一例を説明するが、本発明は当該実施の形態に限られない。
【0123】
図1は、本発明の実施の形態における静電画像加湿装置の断面図である。なお、この
図1〜
図5を用いて説明する静電画像加湿装置の例においては、後述するような、処理無しモード、第1カール矯正モード、加湿モード、第2カール矯正モードを選択可能に有する。
【0124】
画像形成装置(後に説明)において画像形成された用紙(すなわち、トナーを熱定着させた画像を有する用紙である。以下、単に「用紙S」ともいう。)Sは、入り口101から静電画像加湿装置Bの搬送路HR1に導入され、搬送路HR2、HR3を選択的に通過して処理され、静電画像加湿装置Bから排出される。
【0125】
用紙Sに対して、静電画像加湿装置Bによる処理を行わない処理無しモード及び用紙Sに対して、加湿を行わずカール矯正のみを行う第1カール矯正モードにおいては、用紙Sは搬送路HR1、HR2を通過する。
【0126】
用紙Sに対して、加湿のみを行う加湿モードと、加湿及びカール矯正を行う第2カール矯正モードにおいては、用紙Sは、搬送路HR1、HR3及びHR2の一部を通過する。搬送路HR2、HR3の選択は切換ゲート102により行われる。
【0127】
搬送路HR2には、カール矯正手段150、160が配置され、カール矯正手段150により下カール、即ち、中央部が谷となっているカールが矯正され、カール矯正手段160において、上カール、即ち、中央部が山となっているカールが矯正される。
【0128】
搬送路HR3には、加湿手段110が配置される。加湿手段110はレール120A、120Bの案内で、装置から引き出し可能にユニットに形成される。
【0129】
搬送路HR1においては、用紙SはローラーR1により搬送され、搬送路HR2においては、用紙SはローラーR2〜R5により搬送される。搬送路HR3において、用紙SはローラーR6〜R11により搬送される。
【0130】
加湿手段110の下方には、本発明に係る加湿液を収容するタンク130が配置され、タンク130はレール130A、130Bの案内で装置から引き出し可能なユニットに形成される。
【0131】
図2は加湿装置Bの要部の拡大図である。加湿装置Bは、加湿手段110とタンク130(
図1に示す。)とを有する。
【0132】
用紙搬送路HR3は、U字状に形成され、用紙Sは用紙搬送路HR1(
図1に示す。)から垂直に下方に進行し、Uターンして鉛直方向上方に進行するが、上方に進行する用紙搬送路HR3の部分に左右対称に加湿手段110が配置される。互いに接触するように加湿ローラー111A、111Bが配置される。
【0133】
加湿手段110は、一対の加湿手段、即ち、図の左方の加湿手段110Aと右方の加湿手段110Bからなる。
なお、本発明に係る加湿手段は、後述のように用紙に加湿液を付与する加湿ローラーと、加湿ローラーに加湿液を供給する手段とを有することが好ましい。
【0134】
加湿手段110Aは、加湿ローラー111Aと、加湿液を供給する手段118としての給液ローラー112A及び給液部としての給液槽114Aと、を有し、加湿手段110Bは加湿ローラー111B、給液ローラー112B及び給液部としての給液槽114Bを有する。
加湿ローラー111Aと111Bとは互いに接触し、矢印のように回転して用紙Sを搬送する際に、用紙Sに加湿液を付与して加湿を行う。なお、給液ローラー112A、112Bと給液槽114A、114Bとの間に中継ローラー(図示せず。)を介在させ、給液ローラー112A、112Bに加湿液を供給する給液部を給液槽と中継ローラーとで構成することもできる。
【0135】
上述のように、図示例においては、加湿液を供給する手段118は、給液ローラー112A及びB並びに給液槽114A及びBを有する。
加湿ローラー111Aには、給液ローラー112Aが、加湿ローラー111Bには給液ローラー112Bが、それぞれ接触し、給液ローラー112Aは給液槽114Aに収容されている加湿液Wに、給液ローラー112Bは給液槽114Bに収容されている加湿液Wにそれぞれ浸漬している。このようにして、給液ローラー112A及び112Bには、給液部である給液槽114A及びBから加湿液Wが供給される。
【0136】
113A及び113Bは、制御部材であり、給液ローラー112A及び112Bを押圧して、加湿液の量を規制する。
【0137】
加湿ローラー111A、111B、給液ローラー112A、112Bには発泡製でないソリッドゴム、発泡性ゴム等の弾性材料の単層若しくは複層構成のローラー又はゴムに繊維を巻き付けた複層構成のローラーが用いられる。
加湿ローラー111Aは、金属からなる軸芯111Aaと、その上に形成されたゴム層111Abとで構成されることが好ましい。
加湿ローラー111Bは、金属からなる軸芯111Baとその上に形成されたゴム層111Bbとで構成されることが好ましい。
給液ローラー112Aは、金属からなる軸芯112Aaとその上に形成されたゴム層112Abとで構成されることが好ましい。
給液ローラー112Bは、金属からなる軸芯112Baとその上に形成されたゴム層112Bbとで構成されることが好ましい。
【0138】
制御部材113A及び113Bには、回転又は固定の丸棒が用いられる。また、制御部材113A及び113Bとして、板状のブレードを用いることもできる。
【0139】
タンク130中の加湿液Wは、ポンプ(図示せず)により給液槽114A及び114Bに汲み上げられ、オーバーフローによって、オーバーフロー管116からタンク130に還流し、給液槽114A及び114Bにおける加湿液Wの水位は一定に維持される。なお、給液槽114Aと114Bとは連通しており、両者における水位は同一レベルに維持される。
【0140】
加湿処理において、加湿ローラー111A、111B、給液ローラー112A、112Bはそれぞれ矢印のように回転して、用紙Sの両面に加湿液を付与して、用紙Sを加湿する。
【0141】
加湿ローラー111A及び111B並びに給液ローラー112A及び112Bは、
図1及び
図2に示すように用紙搬送路HR3を中心に左右対称に配置されているので、給液槽114Aから加湿ローラー111Aに至る給液経路と、給液槽114Bから加湿ローラー111Bに至る給液経路とが、形状及び長さに関して同一になる。
【0142】
したがって、用紙Sの両側から均等な加湿が行われる。さらに、用紙Sは、垂直に上昇する用紙搬送路HR3において加湿が行われるので、用紙Sの厚さ方向に均等な量の加湿液が供給されて、用紙Sのフラットネスを良好に維持することができる。
【0143】
図3を参照し、加湿手段の加湿作用について説明する。
【0144】
加湿手段110Aにおいて、給液経路WH1は、給液ローラー112Aが加湿液Wの液面と接する位置p1から、給液ローラー112Aの表面及び加湿ローラー111Aの表面を経て加湿ローラー111Aが用紙Sに接触する加湿位置p2までに至る、加湿液Wの給液経路である。
加湿手段110Bにおいて、給液経路WH2は、給液ローラー112Bが加湿液Wの液面と接する位置p3から、給液ローラー112Bの表面及び加湿ローラー111Bの表面を経て、加湿ローラー111Bが用紙Sに接触する加湿位置p2までに至る、加湿液Wの給液経路である。
このような給液経路WH1及びWH2を経て、加湿ローラー111A及び111Bは、給液ローラー112A及び112Bから加湿液を受け取ることができる。
【0145】
加湿手段110において、給液経路WH1及び給液経路WH2の長さ及び形状は、同一である。したがって、加湿ローラー111A、111Bによって、用紙Sの両側に付与される加湿液の量は等しく、加湿ローラー111A、111Bや給液ローラー112A、112Bの状態が経時変化により多少変化しても両側における給液量の比率が変化することはほとんどない。
【0146】
よって、図示例の静電画像加湿装置では、長期間にわたって、用紙Sの両側に均等な量の加湿液が付与され、これによって、長期間安定した加湿が行われる。
【0147】
117A及び117Bは用紙Sの両面に乾燥風を吹き付けるファンであり、ファン117A、117Bで用紙Sに乾燥風を吹き付けることにより、加湿直後の用紙Sから余分な加湿液を蒸発させ、搬送ローラー等の用紙搬送路形成部材に加湿液が蓄積することを防止する。
【0148】
なお、図示例の静電画像加湿装置においては、用紙Sの鉛直方向上方に搬送する用紙搬送路に両側に加湿手段110A、110Bを設けたが、鉛直方向下方に用紙を搬送する用紙搬送路の両側に加湿手段を設けることもできる。また、一対の加湿手段は完全な対称配置ではなく、実質的に対称であれば対称配置から多少ずれてもよいことは勿論であり、例えば、左右の加湿手段の高さが異なってもよい。
【0149】
図4はカール矯正手段150及び160の拡大図である。
【0150】
カール矯正手段150は小径ローラー(例えば半径7mm)151、一対のベルト駆動ローラー152、153及びベルト駆動ローラー152、153に張架されたベルト154で構成される。155はバネかけ軸、156は小径ローラー151をベルト154に押圧する押圧バネである。
【0151】
157は用紙搬送路を切り替える切替ゲートであり、切替ゲート157は点線の位置にあるときは、カール矯正手段150を通らない用紙搬送路HR21が選択され、実線の位置にあるときはカール矯正手段150を通る用紙搬送路HR22が選択される。
【0152】
用紙搬送路HR21は図示のように大きな曲率半径(例えば、半径60mm。)を有するので、用紙Sが用紙搬送路HR21を通過するときは、カール矯正が行われない。これに対して、小径ローラー151とベルト154とにより形成される用紙搬送路HR22を通るときは、用紙Sは小径ローラー151とベルト154とによる曲げ力を受けてカール矯正が行われる。すなわち、中央部が谷となるようにカールし、用紙Sが矯正されて平板状になる。
【0153】
カール矯正手段160は、小径ローラー(例えば半径7mm)161と、一対のベルト駆動ローラー162及び163と、当該ベルト駆動ローラー162及び163に張架されたベルト164と、で構成される。165はバネかけ軸、166は小径ローラー161をベルト164に押圧する押圧ローラーである。
【0154】
167は用紙搬送路を切り替える切替ゲートである。
切替ゲート167が点線の位置にあるときは、カール矯正手段160を通らない用紙搬送路HR23が選択される。
一方、切替ゲート167が実線の位置にあるときは、カール矯正手段160を通る用紙搬送路HR24が選択される。
【0155】
用紙搬送路HR23は図示のように大きな曲率半径(例えば半径60mm)を有するので、用紙Sが用紙搬送路HR23を通過するときは、カール矯正が行われない。これに対して、用紙搬送路HR24を通るときは、用紙Sは小径ローラー161とベルト164とによる曲げ力を受けてカール矯正される。すなわち、中央部が山となるようにカールし、用紙Sが矯正されて平板状になる。
【0156】
上述のように、静電画像加湿装置Bは処理無しモード、加湿処理のみを行う加湿モード、カール矯正のみを行う第1カール矯正モード、加湿とカール矯正とを行う第2カール矯正モードが選択可能である。
【0157】
処理無しモードにおいては、切替ゲート102により用紙搬送路HR2が選択されるとともに、切替ゲート157及び167により、用紙搬送路HR21及びHR23がそれぞれ選択されて、用紙搬送が行われる。
【0158】
加湿処理のみを行うモードにおいては、切換ゲート102により用紙搬送路HR3が選択されるとともに、切替ゲート157及び167により用紙搬送路HR21及びHR23がそれぞれ選択されて、用紙Sは用紙搬送路HR1からHR3に進行し、加湿手段110により加湿処理された後にローラーR2の位置で用紙搬送路HR2に進行し、用紙搬送路HR21、HR23を通過して排紙される。
【0159】
カール矯正のみを行うモードには、下カール矯正を行うモードと上カール矯正を行うモードがある。
【0160】
下カール矯正を行うモードでは、切換ゲート102により用紙搬送路HR2が選択されるとともに、切替ゲート157により用紙搬送路HR22が選択され、切替ゲート167により用紙搬送路HR23が選択される。
【0161】
用紙Sは選択された用紙搬送路を通過し、カール矯正手段150により下カールを矯正されて排紙される。
【0162】
上カール矯正を行うモードでは、切換ゲート102により用紙搬送路HR2が選択されるとともに、切替ゲート157により用紙搬送路HR21が選択され、切替ゲート167により用紙搬送路HR24が選択される。
【0163】
用紙Sは選択された用紙搬送路を通過し、カール矯正手段160により上カールを矯正されて排紙される。
【0164】
加湿処理及びカール矯正を行うモードには、下カール矯正を行うモードと上カール矯正を行うモードがある。
【0165】
下カール矯正を行うモードでは、切換ゲート102により用紙搬送路HR3が選択されるとともに、切替ゲート157により用紙搬送路HR22が選択され、切替ゲート167により用紙搬送路HR23が選択される。
【0166】
用紙Sは用紙搬送路HR3を通過して、加湿手段110により加湿処理された後に、カール矯正手段150により下カールを矯正されて排紙される。
【0167】
上カール矯正を行うモードでは、切換ゲート102により用紙搬送路HR3が選択されるとともに、切替ゲート157により用紙搬送路HR21が選択され、切替ゲート167により用紙搬送路HR24が選択される。
【0168】
用紙Sは選択HR3を通過して、加湿手段110により加湿処理された後に、カール矯正手段160により上カール矯正されて排紙される。
【0169】
図5は画像形成装置Aと、静電画像加湿装置Bと、用紙後処理装置としての製本装置Cとを具備した本発明の実施の形態に係る画像形成システムの全体構成図である。
【0170】
画像形成装置Aは、用紙に画像を形成する手段として、回転する像担持体1の周囲に、帯電手段2、像露光手段(書き込み手段)3、現像手段4、転写手段5A、除電手段5B、及びクリーニング手段6を配置した画像形成部を有する。画像形成部は、帯電手段2によって像担持体1の表面に一様帯電を行った後に、像露光手段3のレーザビームによって原稿から読み取られた画像データに基づく露光走査を行って潜像を形成し、当該潜像を現像手段4により反転現像して像担持体1の表面にトナー像を形成する。
【0171】
用紙収納部7Aから給紙された用紙Sは転写位置へと送られる。転写位置において転写手段5Aにより前記トナー像が用紙S上に転写される。その後に、用紙Sは除電手段5Bにより裏面の電荷が消去されて像担持体1から分離され、搬送部7Bにより搬送され、引き続き定着手段8により加熱定着され、排紙ローラー7Cから排出される。
【0172】
定着手段8は、熱により画像を定着する手段である。
図示例において、加熱ローラー8A、加熱ローラー8Aに圧接する加圧ローラー8B及びヒーター8Cを有し、ヒーター8Cにより加熱された加熱ローラー8Aにより未定着トナー像を加熱し、トナーを溶融させてトナー像を用紙Sに定着する。
このようにして、トナーを熱定着させた画像を有する用紙Sが得られる。
【0173】
用紙Sの両面に画像形成を行う場合には、定着手段8により加熱定着された用紙Sを、用紙搬送路切替板7Dにより通常の排紙通路から分岐し、反転搬送部7Eにおいてスイッチバックして表裏反転した後、再び画像形成部を通過し、用紙Sの裏面に画像を形成し、定着手段8を経て、排紙ローラー7Cから装置外に排出される。排紙ローラー7Cから排出された用紙Sは、上述の静電画像加湿装置Bを経由し、糊付け製本装置Cに送り込まれる。
【0174】
像担持体1の画像処理後の表面は、クリーニング手段6により表面に残留している現像剤が除去され、次の画像形成に備える。
【0175】
静電画像加湿装置Bは前記に説明したように、処理を行うことなく、用紙Sを搬送するか又は加湿処理のみを行う加湿モード、カール矯正のみを行う第1カール矯正モード若しくは加湿とカール矯正とを行う第2カール矯正モードでの用紙処理を行う。
【0176】
これらのモードの選択は、画像形成装置Aの操作部(図示せず)における設定又はネットワークを介した外部機器からの指令により選択される。
【0177】
製本装置Cは、用紙搬送手段210、排紙手段220、表紙供給手段230、用紙束収容手段240、用紙束搬送手段250、糊塗布手段260、表紙貼付手段270、表紙折り曲げ手段280、冊子排出手段290、から構成されている。前記各手段は、糊付け製本装置本体内の垂直方向に縦列配置されている。
【0178】
用紙搬送が設定されると、用紙束収容手段240への用紙搬送路を遮断され、排紙手段220への用紙搬送路を開放する。
【0179】
製本モードが設定されると、用紙Sは用紙束収容手段240の所定位置に収容され順次積載されて、所定枚数の用紙Sから成る用紙束が形成される。用紙束収容手段240上の用紙束は用紙束保持手段250に送られ、用紙束保持手段250が回転して垂直になった状態で、糊塗布手段260により用紙束の底面に糊が塗布されて用紙束が束ねられる。
【0180】
束ねられた用紙束に対して、表紙貼付手段270から表紙が供給されて表紙が接合され、表紙折り曲げ手段280により表紙が折り曲げられて冊子が形成される。
【0181】
形成された冊子は、冊子排出手段290により製本装置Cから排出される。
【0182】
なお、製本装置Cは特開2003−209869号公報に記載されている。
【実施例】
【0183】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0184】
[トナー1の製造]
<結着樹脂粒子分散液1の調製>
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、液温75℃とし、
・スチレン 584質量部
・アクリル酸n−ブチル 160質量部
・メタクリル酸 56質量部
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下後、75℃にて2時間加熱、撹拌しながら重合を行うことにより、樹脂微粒子〔b1〕の分散液を調製した。
【0185】
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、80℃に加熱後、上記の樹脂微粒子〔b1〕42質量部(固形分換算)、マイクロクリスタリンワックス「HNP−0190」(日本精蝋社製)70質量部を、
・スチレン 239質量部
・アクリル酸n−ブチル 111質量部
・メタクリル酸 26質量部
・n−オクチルメルカプタン 3質量部
からなる単量体溶液に80℃にて溶解させた溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)により、1時間混合分散させることにより、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
【0186】
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を80℃にて1時間にわたって加熱撹拌して重合を行うことにより、樹脂微粒子〔b2〕の分散液を調製した。
【0187】
(第3段重合)
上記の樹脂微粒子〔b2〕の分散液に、さらに、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、80℃の温度条件下に、
・スチレン 380質量部
・アクリル酸n−ブチル 132質量部
・メタクリル酸 39質量部
・n−オクチルメルカプタン 6質量部
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却することにより、結着樹脂粒子分散液1を得た。
【0188】
<結晶性樹脂1の合成>
ポリエステル重合セグメントの材料の多価カルボン酸化合物としてのセバシン酸(分子量202.25)220質量部と、多価アルコール化合物としての1,12−ドデカンジオール(分子量202.33)298質量部を窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応容器に入れ160℃に加熱し、溶解させた。2−エチルヘキサン酸スズ(II)2.5質量部、没食子酸0.2質量部を加えて210℃に昇温し8時間反応を行った。さらに8.3kPaにて1時間反応を行い、結晶性樹脂1を得た。
【0189】
得られた結晶性樹脂1について、前述のようにして示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」((株)パーキンエルマージャパン製)を用い、昇温速度10℃/minの条件でDSC曲線を得、吸熱ピークトップ温度を測定する手法によって融点(Tm)を測定したところ、82.8℃、また、GPC「HLC−8120GPC」(東ソー社製)によって前述のようにして分子量を測定したところ、標準スチレン換算のMwが28000であった。
【0190】
<結晶性樹脂2の合成>
結晶性樹脂1の合成において、多価カルボン酸化合物としてのセバシン酸(分子量202.25)327質量部、多価アルコール化合物としての1,6−ヘキサンジオール(分子量118.17)191質量部を用いた以外は結晶性樹脂1の合成と同様にして、結晶性樹脂2を得た。融点は66.8℃、標準スチレン換算のMwは29000であった。
【0191】
<結晶性樹脂3の合成>
結晶性樹脂1の合成において、多価カルボン酸化合物としての1,18−オクタデカンジカルボン酸(分子量314.46)295質量部、多価アルコール化合物としての1,16−ヘキサデカンジオール(分子量258.44)223質量部を用いた以外は結晶性樹脂1の合成と同様にして、結晶性樹脂2を得た。融点は78.0℃、標準スチレン換算のMwは23000であった。
【0192】
<結晶性樹脂粒子分散液1の調製>
結晶性樹脂1を100質量部、酢酸エチル400質量部に溶解させた。次いで、5.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液25質量部を添加して、樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液を、撹拌装置を有する容器へ投入し、樹脂溶液を撹拌しながら、0.26質量%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液638質量部を30分間かけて滴下混合した。ラウリル硫酸ナトリウム水溶液の滴下途中、反応容器内の液が白濁し、さらに、ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を全量滴下後、樹脂溶液粒子を均一に分散させた乳化液が調製された。次いで、上記乳化液を40℃に加熱し、ダイヤフラム式真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用して、150hPaの減圧下で酢酸エチルを蒸留除去することにより、結晶性ポリエステル樹脂よりなる結晶性樹脂粒子分散液1を得た。
【0193】
<結晶性樹脂粒子分散液2及び3の調製>
結晶性樹脂1を結晶性樹脂2又は結晶性樹脂3にそれぞれ変更した以外は結晶性樹脂微粒子分散液1の調製と同様にして結晶性樹脂粒子分散液2及び結晶性樹脂粒子分散液3を得た。
【0194】
<トナー母体粒子1の製造>
(凝集・融着工程)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、結着樹脂粒子分散液1の分散液300質量部(固形分換算)と、結晶性樹脂微粒子分散液1の分散液60質量部(固形分換算)と、イオン交換水1100質量部と、着色剤微粒子分散液〔Cy〕40質量部(固形分換算)とを仕込み、液温を30℃に調整した後、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整した。次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間保持した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて85℃まで昇温し、85℃を保持したまま凝集し粒子成長反応を継続した。この状態で、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて凝集粒子の粒径を測定し、体積基準のメディアン径が6μmになった時点で、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水160質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、さらに、熟成工程として液温度80℃にて1時間にわたって加熱撹拌することにより粒子間の融着を進行させ、これにより、トナー母体粒子1の分散液を調整した。
【0195】
(洗浄・乾燥工程)
生成したトナー母体粒子をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40+M」((株)松本機械製作所製)で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで40℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」((株)セイシン企業製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥することにより、トナー母体粒子1を作製した。
【0196】
<トナー1の作製>
(外添剤添加工程)
トナー母体粒子1に、疎水性シリカ(体積平均粒径=12nm)1質量%及び疎水性チタニア(体積平均粒径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合することにより、トナー1を作製した。
【0197】
[トナー2〜7の製造]
トナー1の製造において、トナー母体粒子中における結晶性樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)量[%]を表1のようにしたほかは、同様にしてトナー2〜7を作製した。なお、トナー7には、結晶性樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)は含有されていない。
【0198】
本実施例において、トナー母体粒子中における結晶性樹脂量[%]は、下記式より算出した(いずれも固形分換算)。
トナー母体粒子中における結晶性樹脂量[%]=結晶性樹脂量[質量部]/(結着樹脂量[質量部]+結晶性樹脂量[質量部]+着色剤量[質量部])×100 [%]
【0199】
なお、トナー2〜7の製造において、トナー母体粒子中における結晶性樹脂量[%]の調整は、トナー1の製造における着色剤量[質量部]は変更せず、結着樹脂量[質量部]と結晶性樹脂量[質量部]の比率を変更して行った。
【0200】
[トナー8の製造]
トナー1の製造において、結晶性樹脂微粒子分散液1を結晶性樹脂微粒子分散液2に変更した以外は同様にしてトナー8を製造した。
【0201】
[トナー9の製造]
トナー1の製造において、結晶性樹脂微粒子分散液1を結晶性樹脂微粒子分散液3に変更した以外は同様にしてトナー9を製造した。
【0202】
【表1】
【0203】
≪評価≫
上記トナー1〜9を用い、次のようにして、本発明の静電画像加湿装置について評価した。
なお、静電画像加湿装置としては、
図1に示す静電画像加湿装置Bを使用した。
【0204】
(現像剤の製造)
上記トナー1〜9について、体積平均粒径60μmのフェライトキャリアとトナー濃度が6質量%となるようにして混合し現像剤を作製し以下の評価に用いた。混合機は、V型混合機を用いて、30分間混合した。
【0205】
(貼り付き力測定)
「bizhub PRO C7000(コニカミノルタ社製)」を用いて、定着温度設定を15℃下げた状態でベタ画像(トナー付着量:10.5g/m
2)を両面100枚出力した(紙種:OKトップコート紙(王子製紙社製) A3 157g/m
2)。画像を有する積載された用紙Sのうち、上から70〜80枚目の11枚を抽出し平坦なテーブルの上に置き、一番上の用紙短辺先端にテープTを貼り付け水平方向Xにゆっくり滑らせた。この際、上から2枚目以降の画像については動かないようにテーブルに固定しておく(
図6)。用紙を滑らせるのに要する力をばねばかりで測定した。この測定を上から順に10枚繰り返し、ばねばかりの示した力の平均値を貼り付き力とした。貼り付き力が1.5N以下となる場合に実用可能レベルとした。
【0206】
表2に示したとおりのトナーと、界面活性剤の種類、加湿液における界面活性剤の含有量及び溶媒の種類を表2に示したとおりに変更して調整した加湿液とを、静電画像加湿装置Bにセットし、上記測定を行い、実施例1〜
14、16〜23、
参考例15及び比較例1〜3とした。
なお、表2における混合溶媒1とは水とエタノールとを等量で混合させたものであり、混合溶媒2とは水90質量部に対しエタノール10質量部を混合させたものであり、混合溶媒3とは水10質量部に対しエタノール90質量部を混合させたものである。
【0207】
【表2】