(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状のステータコアと、前記ステータコアに巻回されたコイルと、前記コイルの端部と接続されたコイル端子と、を備えるステータ部材を、熱硬化性の樹脂によりモールドすることによりステータを製造するステータ製造装置であって、
前記ステータ部材を収容する第1の金型と、
前記第1の金型と締結されて型締めが行われることにより前記樹脂が充填される空間を構成する第2の金型と、
前記第1の金型及び前記第2の金型のいずれか一方に設けられ、前記型締めが行われる時に前記コイル端子と接続し、前記コイル端子に電流を印加する電源端子と、を備える、
ことを特徴とするステータ製造装置。
筒状のステータコアと、前記ステータコアに巻回されたコイルと、前記コイルの端部と接続されたコイル端子と、を備えるステータ部材を、熱硬化性の樹脂によりモールドすることによりステータを製造するステータの製造方法であって、
前記ステータ部材を第1の金型に収容する収容工程と、
前記第1の金型と第2の金型とを、前記第1の金型又は前記第2の金型のいずれかに設けられた電源端子と前記コイル端子とを接続するように締結させて型締めを行う型締め工程と、
締結された前記第1の金型と前記第2の金型との間の空間に前記樹脂を射出し、前記電源端子を介して前記コイル端子に電流を印加し、前記樹脂を硬化させて前記ステータ部材をモールドするモールド工程と、
を備えることを特徴とするステータの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるステータ製造装置は、樹脂を用いてステータ部材をモールドすることでステータを製造する装置である。まず、モールドされる前のステータ部材の構成について、
図1A、及び、
図1Bを参照して説明する。
【0014】
図1Aは、中空の筒状のステータ部材の中心軸に沿った断面図である。
図1Bは、
図1AのA−Aに沿った断面図である。
【0015】
ステータ部材10は、積層鋼板からなる中空の円筒状のステータコア11と、ステータコア11に巻回されたコイル12とにより構成される。
【0016】
図1Bに示すように、ステータコア11は、内周面において軸方向に延在する複数の切り欠きが設けられることにより、中心軸に向かう方向に突出したティース13が形成されている。なお、このように形成された切り欠きは、スロット14と称される。
【0017】
コイル12は、導電性のワイヤを各ティース13に巻回することにより形成される。
図1Aに示されるように、コイル12は、ステータコア11の軸方向に延在してスロット14内に収容されるコイル中間部12Aと、ステータコア11の端面から突出するコイルエンド12Bにより構成される。また、コイル12には、コイル12への電流の印加に用いられるコイル端子12Cが設けられている。なお、各ティース13に巻回されたワイヤにおいては、U、V、Wの3相のいずれかで動作するように、同じ相で動作するワイヤ同士が接続される。
【0018】
コイルエンド12Bの端面は、ステータコア11の軸方向に対して直行する平坦面として構成される。また、コイルエンド12Bにおいては、ティース13に巻回されたワイヤ同士が、バスバーを用いて接続される。
【0019】
コイル端子12Cは、コイルエンド12Bの端部の一部からステータコア11の径方向外側に向かって延在するように設けられている。コイル端子12Cは、3つの端子部材により構成され、各端子部材が、U、V、W相のワイヤのそれぞれと接続される。
【0020】
次に、
図2を用いて、ステータ部材10をモールドすることによりステータを製造するステータ製造装置20の構成について説明する。
【0021】
図2は、ステータ製造装置20の概略構成図である。
図2においては、ステータ製造装置20の断面図が示されている。なお、以下においては、図面における上下左右の方向を用いて説明する。
【0022】
ステータ製造装置20は、固定部21と、上下方向に移動可能な可動部22と、固定部21と可動部22との間にて用いられる中空の筒状のハウジング23と、ハウジング23の中空部にて用いられる中実の円柱状の中子24と、電流を印加可能な電源機構25と、を備える。
【0023】
まず、固定部21の構成について説明する。
【0024】
固定部21は、全体が所定の場所に固定されており、固定ダイプレート211と、射出部212と、固定金型213と、端子用金型214とを備える。
【0025】
固定ダイプレート211は、板状の部材であり、上面に開口部211Aが、下面に開口部211Bが形成されている。開口部211Aには射出部212が設けられ、開口部211Bには固定金型213が設けられている。
【0026】
射出部212は、ポット212Aと、プランジャ212Bと、樹脂212Cとにより構成される。
【0027】
ポット212Aは、中空の筒状に構成されており、外周面が開口部211Aの側面と当接する。ポット212Aは、内部に熱硬化性の樹脂212Cを収容する。また、ポット212Aは、不図示の加熱機構を備える。
【0028】
プランジャ212Bは、上面に突出部を備える円柱状に構成されており、外周面がポット212Aの内周面と当接する。プランジャ212Bは、突出部が油圧シリンダやエアシリンダ等の押圧手段(不図示)と接続されており、ポット212A内にて上下方向に摺動可能に構成されている。
【0029】
樹脂212Cは、加熱されると硬化する性質を有する樹脂である。樹脂212Cは、例えば、不飽和ポリエステルやエポキシ等であり、所定の温度以上に加熱されると3次元架橋が行われて硬化する。また、樹脂212Cに、無機充填材や補強剤を混合してもよい。無機充填材には、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、タルク等がある。また、補強剤には、ガラス繊維、ビニロン繊維等がある。
【0030】
固定金型213は、工具鋼のSKS、SKD、SKT、SKHや、特殊用途鋼のSUS、SUHなどの金属材料を用いて円盤状に構成されており、外周面が開口部211Bの側面と当接する。なお、固定金型213の外径は、ハウジング23の上端面の内径よりも大きく、かつ、ハウジング23の上端面の外径よりも小さい。
【0031】
固定金型213の下面には、外周に沿って下方向に突出する環状突出部213Aが構成されている。なお、環状突出部213Aは、固定金型213の外周に沿って一部が途切れた環状すなわちC字状に設けられる。環状突出部213Aにおける環が途切れる位置には、固定ダイプレート211及び固定金型213を切欠いた切欠部213Bが形成されている。そして、切欠部213Bには、端子用金型214が設けられている。また、固定金型213には、上面から下面へと貫通する射出口213Cが形成されている。なお、固定金型213は、不図示の加熱機構を備える。
【0032】
環状突出部213Aの外径は、ハウジング23の上端面の外径よりも小さく、かつ、ハウジング23の上端面の内径よりも大きい。また、環状突出部213Aの内径は、ハウジング23の上端面の内径よりも小さく、かつ、中子24の外径よりも大きい。
【0033】
射出口213Cは、固定金型213の上面の中心から下面の中心へと貫通する貫通孔である。射出口213Cは、ポット212Aの内部の樹脂212Cを収容する空間と連通する。
【0034】
端子用金型214は、固定金型213と同じ材料を用いて、切欠部213Bに嵌り込むように固定金型213と一体となって構成される。また、端子用金型214は、下方向に突出する突出部214Aを有している。固定ダイプレート211及び端子用金型214には、端子用金型214の下面から固定ダイプレート211の上面へと貫通する貫通孔214Bが形成されている。
【0035】
突出部214Aは、固定金型213の外周に沿って下方向に突出するように構成されている。突出部214Aの固定金型213の径方向の幅は、環状突出部213Aの固定金型213の径方向の幅と同じである。そのため、突出部214Aは、環状突出部213Aと一体となって環状の突出部を構成する。なお、突出部214Aの固定金型213の下面からの突出長は、環状突出部213Aの突出長よりも短い。
【0036】
次に、可動部22の構成について説明する。
【0037】
可動部22は、可動ダイプレート221と、可動金型222と、イジェクトピン223とを備える。
【0038】
可動ダイプレート221は、板状の部材であり、不図示のアクチュエータによって下側から支持される。可動ダイプレート221は、このアクチュエータにより上下方向に移動可能に構成されている。また、可動ダイプレート221には、上面に開口部221Aが形成されている。なお、開口部221Aの径は、ハウジング23の下端面の外径よりも小さく、かつ、ハウジング23の下端面の内径よりも大きい。このように形成された開口部221Aに、可動金型222が設けられている。
【0039】
可動金型222は、固定金型213と同じ材料を用いて円盤状に構成されている。可動金型222は、可動ダイプレート221と一体となって構成されており、アクチュエータによって可動ダイプレート221が上下方向に移動されると、可動ダイプレート221の動きに伴って上下方向に移動する。可動金型222の外周面は、開口部221Aの側面と当接する。また、可動金型222の上面には、可動金型222の外周に沿って、環状の溝である環状溝222Aが形成されている。また、可動金型222の上面においては、環状溝222Aよりも内側の領域が円状領域222Bと称され、環状溝222Aよりも外側の領域が環状領域222Cと称されるものとする。
【0040】
環状溝222Aは、中心が可動金型222の上面の中心と同じであり、外周が可動金型222の外周から等距離となるように設けられる。また、環状溝222Aは、内径が中子24の径と同じであり、外径がハウジング23の下端面の内径よりも小さい。また、環状溝222Aの溝幅は、ステータ部材10(
図2において不図示)と比較すると、ステータ部材10の断面方向のステータコア11の厚さよりも短く、かつ、コイルエンド12Bの厚さよりも長い。
【0041】
円状領域222Bは、環状領域222Cに対して上側に突出している。環状領域222Cの上面は、可動ダイプレート221の上面と同一平面に存在する。また、可動ダイプレート221及び可動金型222には、可動ダイプレート221の下面から環状溝222Aの底部までを貫通するような、貫通孔222Dが形成されている。なお、貫通孔222Dは、環状溝222A内にて周方向に均等に、複数形成される。
【0042】
イジェクトピン223は、貫通孔222D内に設けられており、不図示のアクチュエータによって上下方向に摺動可能に構成される。
【0043】
次に、ハウジング23の構成について説明する。
【0044】
ハウジング23は、中空の筒状に構成されている。ハウジング23は、ステータを製造する際には、その中空部にステータ部材10が挿入される。また、ハウジング23は、ハウジング筒部231と、ハウジング筒部231の上面の一部に設けられた端子台232と、ハウジング筒部231の内部に設けられた温度調整機構233とを備える。
【0045】
ハウジング筒部231は、固定金型213及び可動金型222と同じ材料を用いて、中空の筒状に構成される。ハウジング筒部231の内径は、ステータ部材10の外径よりも僅かに小さく、かつ、中子24の径よりも大きい。また、ハウジング筒部231の上面の一部に、端子台232が設けられている。
【0046】
端子台232は、固定金型213、可動金型222、及び、ハウジング筒部231と同じ材料を用いて、ハウジング筒部231と一体となって構成されている。また、端子台232は、上方向に突出する突出部232Aを有している。
【0047】
ここで、端子台232の下面から突出部232Aの上端面までの高さと、コイル端子12Cの高さと、端子用金型214の突出部214Aの突出長の和は、固定金型213の環状突出部213Aの突出長と等しいものとする。すなわち、固定部21とハウジング23とが締結される時には、固定金型213の環状突出部213Aの下端面とハウジング23の上端面とが当接するとともに、端子用金型214の突出部214Aの下端面とハウジング23の突出部232Aの上端面との間に、コイル端子12Cが位置する。
【0048】
温度調整機構233は、ハウジング23の温度を調整する機能を備える。温度調整機構233は、ハウジング筒部231内に形成された空洞に温度調整可能な液体を循環させることにより、温度を調整する。
【0049】
次に、中子24の構成について説明する。
【0050】
中子24は、透磁率の比較的大きい軟磁性材料からなる中実の円柱状の部材である。中子24の径は、ステータコア11の内径よりも僅かに大きい。中子24の上面には、周に沿って突出する突出部24Aが形成されている。中子24の上面においては、突出部24Aに囲まれる領域は、平面部24Bと称される。
【0051】
ここで、多くの場合、中子は、固定金型213、可動金型222、及び、ハウジング筒部231などと同じように、工具鋼のSKS、SKD、SKT、SKHや、特殊用途鋼のSUS、SUHなどの金属材料にて構成される。なお、この金属材料の比透磁率は、おおよそ1から300までの値である。一方、本実施形態においては、中子24は、これらの金属材料よりも保磁力が小さく比透磁率が大きい軟磁性材料を用いて構成される。軟磁性材料には、例えば、珪素鉄、パーマロイ、スーパーマロイ、ソフトフェライト(Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Cu−Zn系フェライト等)、パーメンジュール、アモルファス磁性合金、ナノクリスタル磁性合金、センダストなどがある。
【0052】
次に、電源機構25の構成について説明する。
【0053】
電源機構25は、電流源251と、電源端子252と、電源ケーブル253とにより構成される。
【0054】
電流源251は、交流電流を印加可能に構成される。
【0055】
電源端子252は、固定ダイプレート211及び端子用金型214に設けられた貫通孔214B内における下側の端部にて、すなわち、端子台232の突出部232Aの上端面と対向するように設けられている。また、電源端子252は、電源端子252の下端面が端子用金型214の下端面と同一平面上に位置するように配置される。
【0056】
電源ケーブル253は、貫通孔214Bを通じて、電流源251と電源端子252とを接続する。このように構成されることで、電流源251から出力される交流電流が、電源端子252に印加される。
【0057】
次に、第1実施形態のステータ製造装置20を用いてステータを製造する工程を、
図3から
図9を用いて順に説明する。なお、
図3に示す工程の前に、
図1A、及び、
図1Bに示されたステータ部材10が予め用意されているものとする。また、
図3から
図9までにおいては、
図2と同様に、ステータ製造装置20の断面に沿った図が示されている。
【0058】
図3は、ステータの製造工程の1つである、ステータ部材10をハウジングするハウジング工程を説明するための図である。
図3には、ステータ部材10がハウジングされることにより構成されたワーク30が示されている。
【0059】
まず、ステータ部材10に、中子24が挿入される。上述のように中子24の径がステータコア11の内径よりも僅かに大きいため、この状態においては、ステータ部材10の内周面により中子24の外周面が押圧されている。そのため、中子24は、ステータ部材10に圧入されていることになる。また、コイルエンド12Bの上端面と中子24の突出部24Aの突出端とが同一平面に存在するように、ステータ部材10内に中子24が配置される。
【0060】
また、ステータコア11の内周面と中子24の外周面とは当接しているため、コイル中間部12Aを収容するスロット14(
図3において不図示)は、ステータコア11の径方向内側の開口部が中子24の外周面により閉じられる。したがって、スロット14は、上下方向すなわちステータコア11の軸方向の端部のみが開口した状態となる。
【0061】
そして、中子24が圧入されたステータ部材10が、ハウジング23に挿入される。上述のようにハウジング23のハウジング筒部231の内径がステータ部材10の外径よりも僅かに小さいため、この状態においては、ステータ部材10の外周面がハウジング23に押圧されている。したがって、ステータ部材10は、ハウジング23に圧入されていることになる。また、この状態において、端子台232の上端面とコイル端子12Cの下面とが当接する。
【0062】
このようにして、ステータ部材10、ハウジング23、及び、中子24からなるワーク30が構成される。
【0063】
次に、ステータの製造工程の1つである、ワーク30をステータ製造装置20の可動部22へ取り付ける、取り付け工程について説明する。
【0064】
図4は、取り付け工程を説明するための図である。
図4には、ワーク30が可動部22に取り付けられたステータ製造装置20が示されている。
【0065】
ワーク30は、ステータ製造装置20の可動部22の上側に取り付けられる。この状態においては、中子24の下面と可動金型222の円状領域222Bとが当接する。また、ハウジング筒部231の下面と、可動金型222の環状領域222Cの一部及び可動ダイプレート221の上面の一部とが当接する。また、環状溝222Aの底部とコイルエンド12Bの下端面とは、極めて短い距離だけ離間している。
【0066】
このように、ワーク30が可動部22の上に載置されると、可動金型222、ハウジング筒部231、及び、端子台232が一体となって第1の金型が構成される。一方、固定金型213及び端子用金型214が、第1の金型と締結される第2の金型となる。なお、この工程においてステータ部材10が第1の金型に収容されるため、この工程を収容工程と称してもよい。
【0067】
次に、ステータの製造工程の1つである、第1の金型と第2の金型を締結する型締めを行う工程について説明する。
【0068】
図5は、型締め工程を説明するための図である。
図5には、型締めを行った後のステータ製造装置20が示されている。
【0069】
可動部22が不図示のアクチュエータによって上方向すなわち固定部21に向かう方向に移動されると、固定部21とハウジング23とが接触する。
【0070】
この状態においては、固定金型213の環状突出部213Aの下端面と、ハウジング23のハウジング筒部231の上端面とが当接する。そして、固定金型213の環状突出部213Aの内周側に、コイルエンド12Bの上端部、及び、中子24の上端部が配置される。なお、コイルエンド12Bと固定金型213とは、極めて短い距離だけ離間している。
【0071】
また、端子用金型214の突出部214Aの下端面とコイル端子12Cの下面とが当接する。この状態において、コイル端子12Cは、端子台232に形成された電源端子252と接続される。このように接続されることにより、コイル12に電流を印加可能となる。なお、電源端子252は、コイル端子12CにおけるU、V、W相のワイヤと接続された端子部材の全てと接続されてもよいし、端子部材のうちの一部と接続されてもよい。
【0072】
このように型締めが行われることにより、固定金型213、端子用金型214、可動金型222、ハウジング筒部231、端子台232、及び、中子24によって囲まれる空間が、樹脂212Cが充填されるキャビティとして構成される。
【0073】
そして、型締めが行われると、加熱手段によってポット212Aの温度が30℃〜80℃に調整され、樹脂212Cは流動しやすい状態になる。固定金型213、可動金型222、及び、ハウジング23も、それぞれの加熱手段によって、30℃〜80℃に予備加熱される。
【0074】
次に、ステータの製造工程の1つである、キャビティ内に樹脂212Cを射出し、射出した樹脂212Cを加熱するモールド工程について説明する。
【0075】
図6は、モールド工程を説明するための図である。なお、
図6において、キャビティ内に充填される樹脂212Cにドットのハッチングが付されている。
【0076】
射出部212のプランジャ212Bが押圧手段により下方向に押圧されることにより、ポット212Aに収容されている樹脂212Cが、射出口213Cから押し出される。押し出された樹脂212Cは、固定金型213と中子24の平面部24Bとの間の空間を通り、突出部24Aに到達する。そして、樹脂212Cは、突出部24Aを乗り越え、固定金型213と突出部24Aとの間からキャビティ内へと流れ込む。
【0077】
キャビティ内のステータコア11よりも上側の空間においては、まず、樹脂212Cが、コイルエンド12Bよりも内周側の領域に充填される。そして、樹脂212Cは、コイルエンド12Bと固定金型213との間の隙間を通り、コイルエンド12Bよりも外周側の領域に充填される。
【0078】
上述のように、スロット14は、ステータコア11の軸方向の端部が開口している。そのため、樹脂212Cは、キャビティ内のステータコア11よりも上側の空間に充填された後に、スロット14に充填される。
【0079】
樹脂212Cは、スロット14に充填されると、次に、ステータコア11よりも下側の空間に充填される。樹脂212Cは、コイルエンド12Bよりも内周側の領域に充填されると、コイルエンド12Bと環状溝222Aの底部との隙間を通り、コイルエンド12Bよりも外周側の領域に充填される。このようにして、キャビティ内の全領域に樹脂212Cが充填されると、プランジャ212Bの加圧を停止し、樹脂212Cの射出を終了する。
【0080】
次に、固定金型213、可動金型222、及び、ハウジング23を、加熱手段を用いて120〜160℃に加熱する。そして、電流源251から、電源ケーブル253及び電源端子252を介してコイル端子12Cに交流電流を印加する。コイル端子12Cに電流が印加されると、コイル12が通電され加熱される。また、コイル12に印加された電流が交流電流であり、中子24が軟磁性材料により構成されているため、中子24の外周面において渦電流が発生し、中子24の外周面が誘導加熱される。
【0081】
このようにして、コイル12、固定金型213、可動金型222、ハウジング23、及び、中子24が加熱されると、キャビティに充填された樹脂212Cが硬化する。そして、樹脂212Cが十分に硬化した後に、温度調整機構233を用いてハウジング23を冷却すると、樹脂212Cが冷却される。このようにして、ステータ部材10が樹脂212Cによりモールドされたステータ60が製造される。
【0082】
次に、ステータの製造工程の1つである、第1の金型と第2の金型との締結を解く型開き工程について説明する。
【0083】
図7は、型開き工程を説明するための図である。
図7には、型開きを行った後のステータ製造装置20及びステータ60が示されている。
【0084】
キャビティに充填された樹脂212Cが硬化すると、可動部22は、ワーク30を固定した状態で、アクチュエータにより下方向すなわち固定部21から離れる方向に移動する。このようにして、ワーク30は、固定部21から分離される。
【0085】
そして、可動部22において、イジェクトピン223が、可動ダイプレート221及び可動金型222に対して上方向に移動すると、ワーク30は、可動部22から分離される。このようにして、キャビティが型開きされる。
【0086】
次に、ステータ60の製造工程の1つである、ステータ60から中子24を抜き取る中子抜き工程について説明する。
【0087】
図8は、中子抜き工程を説明するための図である。
図8には、中子24がステータ60から抜かれている途中の状態が示されている。
【0088】
まず、可動部22の可動ダイプレート221とハウジング23との間に、中空の円筒状の円筒治具81が介装される。また、中子24の平面部24Bと固定部21の固定金型213の下面との間に、中子24よりも径が小さい円柱状の円柱治具82が介装される。なお、円筒治具81、及び、円柱治具82は、ともに、軸方向の長さが中子24の軸方向の長さよりも長いものとする。
【0089】
そして、可動部22が、アクチュエータによって上方向に移動される。これにより、円柱治具82が、硬化した樹脂212Cを介して中子24を下方向に付勢する。
【0090】
ここで、ハウジング23がステータ60を圧入している力は、ステータ60が中子24を圧入している力よりも大きいものとする。また、中子24の上面にて硬化した樹脂212Cは、中子24の突出部24Aの先端部の近傍においては、幅が狭く強度が十分でない。そのため、中子24が円柱治具82によって下方向に付勢されると、樹脂212Cは、突出部24Aの先端部にて、コイルエンド12Bを囲む部分と、中子24の上面を覆う部分とに分離する。さらに可動部22を上方向に移動させると、中子24が、ステータ60から抜き取られる。
【0091】
次に、ステータの製造工程の1つである、ステータ60をハウジング23から抜き取るステータ抜き工程について説明する。
【0092】
図9は、ステータ抜き工程を説明するための図である。
図9に示すように、この工程においては、まず、中空の円筒状の円筒治具91が、ステータ60のコイルエンド12Bの上面と固定部21の固定金型213の下面との間に介装されている。
【0093】
そして、可動部22が、アクチュエータによって上方向に移動される。これにより、円筒治具91によって、ステータ60は、コイルエンド12Bにおいて下方向に付勢される。また、ステータ60を圧入しているハウジング23は、円筒治具81を介して下方向から可動部22に支持されている。このように、ステータ60が下方向に付勢されるとともに、ハウジング23が固定されているため、ステータ60はハウジング23内にて下方向に移動して、ハウジング23から抜き取られる。このようにして、ステータ60が製造され、全ての製造工程を終える。
【0094】
なお、本実施形態においては、電源端子252が固定部21に形成された貫通孔214Bに設けられたがこれに限らない。ハウジング23の端子台232に貫通孔を形成し、その貫通孔に電源端子252を設けてもよい。
【0095】
第1実施形態においては、以下に記載する効果を得ることができる。
【0096】
本実施形態のステータ製造装置20においては、
図5に示されるように、可動金型222、ハウジング筒部231、及び、端子台232により構成される第1の金型と、固定金型213及び端子用金型214により構成される第2の金型とが型締めされると、コイル端子12Cと端子用金型214とが接触する。ここで、電源端子252の下端面は、端子用金型214の下端面と同一平面に存在するため、コイル端子12Cと端子用金型214とが接触すると、コイル端子12Cと電源端子252も接触することになる。したがって、コイル端子12Cと電源端子252とを接続する工程を省略することができるため、ステータの製造に要する時間を短縮することができる。
【0097】
また、型締め工程を経て構成されたキャビティ内に樹脂212Cが充填された後に、第1及び第2の金型を加熱手段により加熱する。さらに、外部電源から電源ケーブル253及び電源端子252を介してコイル端子12Cに電流を印加することによって、コイル12が通電加熱される。このように、加熱手段による第1の金型及び第2の金型の加熱に加えて、コイル12が通電加熱されることにより、樹脂212Cの加熱時間を短縮することができる。したがって、樹脂212Cが硬化するまでに要する時間を短縮することができる。
【0098】
また、コイル端子12Cに印加される電流が交流電流であれば、軟磁性材料により構成された中子24の表面に渦電流が生じるため、中子24が誘導加熱される。中子24が誘導加熱されることにより、中子24を介して樹脂212Cの加熱を促進できるため、樹脂212Cが硬化するまでに要する時間をさらに短縮することができる。
【0099】
(第2実施形態)
第2実施形態のステータ製造装置20は、第1実施形態のステータ製造装置20と比較すると、電源機構25の構成が異なる。以下では、構成が異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0100】
図10Aは、本実施形態のステータ製造装置20における、電源機構25の電源端子252の近傍の概略構成図である。
図10Bは、型締め工程時の電源機構25の電源端子252の近傍の概略構成図である。
【0101】
図10Aに示すように、固定ダイプレート211及び端子用金型214に設けられた貫通孔214Bの上側の端部に、固定されたストッパ254が設けられている。電源端子252とストッパ254との間には、押圧部材であるバネ255が縮められた状態で収容されている。なお、貫通孔214Bは、第1の実施形態と同様に、コイル端子12Cと対向する位置に設けられている。
【0102】
電源端子252は、貫通孔214B内を上下方向に摺動可能に構成されており、端子用金型214の下端面に対して所定の突出長以上は突出しないように貫通孔214B内に収容されている。バネ255の上端がストッパ254により係止されているため、電源端子252は、バネ255の下端により押圧される。
【0103】
図10Bに示すように型締めが行われると、固定部21とハウジング24とが締結される。この状態においては、電源端子252がストッパ254に向かって押し込まれ、コイル端子12Cは、電源端子252の下端面と端子用金型214の下端面との両方と当接する。バネ255は、電源端子252が押し込まれた長さ、すなわち、所定の突出長だけ短くなることにより、コイル端子12Cを所定の力が押圧する。そのため、コイル端子12Cと電源端子252とが適切に接続される。
【0104】
なお、本実施形態においては、貫通孔214Bの中に、電源端子252、ストッパ254、及び、バネ255を設けたがこれに限らない。例えば、端子用金型214の突出部214Aの下端面に開口部を形成し、この開口部に、電源端子252及びバネ255を収容してもよい。このような場合には、例えば、この開口部と電源ケーブル253を収容するガイド孔とが連通しており、開口部内にて電源端子252と電源ケーブル253とが接続される。
【0105】
また、本実施形態においては、押圧手段として、バネ255を用いたがこれに限らない。押圧手段は、板バネや、弾性体などであってもよい。
【0106】
第2実施形態においては、以下に記載する効果を得ることができる。
【0107】
本実施形態のステータ製造装置20においては、型締めされて電源端子252とコイル端子12Cとが接触している時には、押圧部材であるバネ255によって電源端子252が押圧されているため、電源端子252はコイル端子12Cに向かって押圧される。したがって、コイル端子12Cと電源端子252との接続不良が発生しにくくなるため、型締め工程においてコイル端子12Cと電源端子252とを接続しなおす頻度が低減する。
【0108】
このように、本実施形態においては、接続工程を省略できることに加えて、コイル端子12Cと電源端子252とを接続しなおす頻度を低減させることができる。そのため、ステータの製造時間を短縮することができる。
【0109】
また、型締め工程の前においては、電源端子252が所定の突出長だけ端子用金型214に対して突出している。そして、型締め工程において、電源端子252がストッパ254にむかってに所定の突出長さだけ押し込まれると、すなわち、バネ255が所定の突出長だけ縮められると、バネ255は、所定の突出長に応じた所定の力でコイル端子12Cを押圧する。したがって、コイル端子12Cと電源端子252とは所望の押圧力にて適切に接続されるため、コイル端子12Cと電源端子252との接続不良がさらに発生しにくくなり、ステータの製造時間をさらに短縮することができる。
【0110】
なお、本発明の実施形態においては、電流源251は、交流電流を印可したがこれに限らない。電流源251は、直流電流を印可してもよい。電流源251から出力された直流電流が電源端子252に印加されると、コイル12に直流電流が流れるため、コイル12が通電加熱される。
【0111】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。