(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596904
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの成形装置
(51)【国際特許分類】
B29D 30/24 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
B29D30/24
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-88029(P2015-88029)
(22)【出願日】2015年4月23日
(65)【公開番号】特開2016-203496(P2016-203496A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】津上 香代
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦
【審査官】
増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭45−038412(JP,B1)
【文献】
特開昭54−117848(JP,A)
【文献】
特開平07−195165(JP,A)
【文献】
特開昭62−048515(JP,A)
【文献】
特開2013−174317(JP,A)
【文献】
特開2012−086487(JP,A)
【文献】
実開昭53−138673(JP,U)
【文献】
特開平11−151763(JP,A)
【文献】
特開昭56−075848(JP,A)
【文献】
特開2001−341212(JP,A)
【文献】
特表2008−501549(JP,A)
【文献】
特開2010−284846(JP,A)
【文献】
特公昭40−001644(JP,B1)
【文献】
特公昭39−026265(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形ドラムと、この成形ドラムの外周面に配置された筒状のバンド部材に一対のビード部材が筒軸方向に間隔をあけて外挿された状態で前記バンド部材の筒軸方向両端部をターンアップするターンアップ機構とを備え、前記成形ドラムが、環状に配置された複数のセグメントと、これらセグメントをその環状中心に対して進退させる拡縮機構とを有するタイヤ成形装置において、
前記拡縮機構が、前記セグメントの内周側に取り付けられるホルダと、このホルダの内周側に配置されて前記成形ドラムのドラム軸方向に移動するスライド体と、前記スライド体をドラム軸方向に移動させるサーボモータとを備え、
前記ホルダおよび前記スライド体は、ドラム軸方向に沿った縦断面視で、互いに対向して組み合うドラム軸方向に対して傾斜する傾斜部と、前記傾斜部に連続してドラム軸方向に平行な平行部を有して、前記スライド体がドラム軸方向に移動して前記ホルダと前記スライド体の前記傾斜部どうしが摺接することにより、前記セグメントがその環状中心に対して進退して前記成形ドラムが拡縮し、前記ホルダと前記スライド体の前記平行部どうしが当接することにより、前記成形ドラムが拡径状態に固定され、前記成形ドラムに対して前記ターンアップ機構による押圧力が作用しない状態では前記成形ドラムを最小径と最大径の間の任意の拡径状態に維持することを可能にした構成にして、前記スライド体が前記平行部を含む円環体とこの円環体以外の部品とで構成され、互いを着脱可能にしたことを特徴とするタイヤ成形装置。
【請求項2】
前記ホルダおよび前記スライド体には、前記傾斜部および前記平行部がそれぞれドラム軸方向に複数配列されている請求項1に記載のタイヤ成形装置。
【請求項3】
前記ホルダおよび前記スライド体の前記傾斜部のドラム軸方向に対して傾斜する傾斜角度が20°以上75°以下に設定される請求項1または2に記載のタイヤ成形装置。
【請求項4】
前記ホルダおよび前記スライド体の前記傾斜部のドラム軸方向に対して傾斜する傾斜角度が30°以上60°以下、かつ、前記ホルダおよび前記スライド体の前記平行部のドラム軸方向の長さが40mm以上に設定される請求項1または2に記載のタイヤ成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの成形装置に関し、さらに詳しくは、簡素な構造でありながら、成形ドラムを円滑に拡縮できるとともに、バンド部材をターンアップする際のターンアップ機構による押圧力に対抗して成形ドラムを拡径状態に安定して固定できる空気入りタイヤの成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤはグリーンタイヤを加硫することにより製造される。このグリーンタイヤを成形する方法として、インナーライナの外周側にカーカス材が配置された筒状のバンド部材と、このバンド部材の筒軸方向両端部に配置された一対のビード部材とからなる中間グリーンタイヤを成形し、次いで、予め円筒状に成形されたベルト部材を中間グリーンタイヤに外挿するように配置して、中間グリーンタイヤの外周面に接合する方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
中間グリーンタイヤを成形する際には、例えば、拡縮する成形ドラムの外周面に配置したバンド部材の筒軸方向両端部を、ターンアップブラダを膨張させることによりターンアップさせて対向するバンド部材の部分に圧着させる。ターンアップブラダは、プッシャーリングによって外周側への膨張が規制されて、ターンアップしたバンド部材を強く圧着する。これにより、一対のビード部材をカーカス材で包み込んだ中間グリーンタイヤが成形される。
【0004】
成形ドラムは拡縮するが、この拡縮のために、環状の配置された複数のセグメントをリンク機構により環状中心に対して進退させる構造を採用すると構造が複雑になる。また、セグメント数が多くなると、リンク機構を配置するスペースも確保できなくなる。一方、ドラム支持軸に沿って移動するスライド体に傾斜するガイド面部を設け、このガイド面部にセグメントの内周側に設けられたローラを転動させて、成形ドラムを拡縮させる構造が提案されている(特許文献3参照)。また、成形ドラム内部にゴム製の空気袋を組み込み、この空気袋を膨張収縮させることによりセグメントを拡縮させる構造が知られている(特許文献4参照)。
【0005】
ターンアップ工程では、ターンアップブラダによって、セグメントが半径方向外側から内側に向かって強く押圧される。そのため、ターンアップブラダによる押圧力に対抗して成形ドラムを拡径状態に固定する必要がある。特許文献3に記載されている拡縮構造では、成形ドラムを拡径状態に固定する場合には、セグメントの縮径移動を確実に規制するために、例えばストッパが別途必要になる。特許文献4で提案されている成形ドラムでは、ターンアップブラダによって強く押圧されるセグメントの縮径移動を規制するためにストッパ部材が設けられている。そして、ターンアップブラダによる押圧力が大きくなる程、その押圧力に対抗するにはストッパも大掛かりになるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−106644号公報
【特許文献2】特開2012−86487号公報
【特許文献3】特開2010−284846号公報
【特許文献4】特開平6−55662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、簡素な構造でありながら、成形ドラムを円滑に拡縮できるとともに、バンド部材をターンアップする際のターンアップ機構による押圧力に対抗して成形ドラムを拡径状態に固定できる空気入りタイヤの成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の空気入りタイヤの成形装置は、成形ドラムと、この成形ドラムの外周面に配置された筒状のバンド部材に一対のビード部材が筒軸方向に間隔をあけて外挿された状態で前記バンド部材の筒軸方向両端部をターンアップするターンアップ機構とを備え、前記成形ドラムが、環状に配置された複数のセグメントと、これらセグメントをその環状中心に対して進退させる拡縮機構とを有するタイヤ成形装置において、前記拡縮機構が、前記セグメントの内周側に取り付けられるホルダと、このホルダの内周側に配置されて前記成形ドラムのドラム軸方向に移動するスライド体と
、前記スライド体をドラム軸方向に移動させるサーボモータとを備え、前記ホルダおよび前記スライド体は、ドラム軸方向に沿った縦断面視で、互いに対向して組み合うドラム軸方向に対して傾斜する傾斜部と、前記傾斜部に連続してドラム軸方向に平行な平行部を有して、前記スライド体がドラム軸方向に移動して前記ホルダと前記スライド体の前記傾斜部どうしが摺接することにより、前記セグメントがその環状中心に対して進退して前記成形ドラムが拡縮し、前記ホルダと前記スライド体の前記平行部どうしが当接することにより、前記成形ドラムが拡径状態に固定され
、前記成形ドラムに対して前記ターンアップ機構による押圧力が作用しない状態では前記成形ドラムを最小径と最大径の間の任意の拡径状態に維持することを可能にした構成にして、前記スライド体が前記平行部を含む円環体とこの円環体以外の部品とで構成され、互いを着脱可能にしたことを特徴と
する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、拡縮機構がセグメントの内周側に取り付けられるホルダと、このホルダの内周側に配置されるスライド体とを備え、前記ホルダおよび前記スライド体は、ドラム軸方向に沿った縦断面視で、互いに対向して組み合うドラム軸方向に対して傾斜する傾斜部と、前記傾斜部に連続してドラム軸方向に平行な平行部を有する仕様にしたので、成形ドラムを拡縮させる従来のリンク機構に比して簡素な構造になる。そして、前記スライド体がドラム軸方向に移動して前記ホルダと前記スライド体の前記傾斜部どうしが摺接することにより、前記セグメントがその環状中心に対して進退して前記成形ドラムが拡縮するので、円滑な拡縮を行うことができる。
また、前記ホルダと前記スライド体の前記平行部どうしが当接することにより、前記成形ドラムが拡径状態に固定される構成にしたので、バンド部材のターンアップ時にターンアップ機構によってセグメントが半径方向外側から内側に向かって強く押圧されても、当接する平行部どうしがこの押圧力に対して、安定的に十分対抗することができる。
【0010】
ここで、前記ホルダおよび前記スライド体には、前記傾斜部および前記平行部がそれぞれドラム軸方向に複数配列されている仕様にすることもできる。この仕様によれば、ターンアップ機構による押圧力に対して、複数箇所の平行部によって対抗することができるので、それぞれの平行部での負担を軽減することができる。また、ドラム軸方向に間隔をあけた位置の複数箇所の平行部によって押圧力に対抗するので、一段と安定して成形ドラムを拡径状態に固定することができる。
【0011】
前記ホルダおよび前記スライド体の前記傾斜部のドラム軸方向に対して傾斜する傾斜角度は例えば20°以上75°以下に設定される。傾斜角度この範囲に設定することにより、成形ドラムをより円滑に拡縮させることができる。
【0012】
前記スライド体が前記平行部を含む円環体とこの円環体以外の部品とで構成され、互いを着脱可能にした仕様にすることもできる。この仕様にすれば、スライド体の平行部が損耗した場合には、新たな円環体に取り替えることにより、スライド体の相対的に損傷が少ない部品を有効に使用することができる。或いは、前記スライド体の傾斜部がドラム軸心を中心にして周方向に間隔をあけて複数設けられて環状に配置される仕様にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の空気入りタイヤの成形装置を縦断面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1のセグメント、ホルダおよびスライド体を側面視で例示する説明図である。
【
図4】バンド部材をターンアップしている
図1の成形装置の上半分を縦断面視で例示する説明図である。
【
図5】
図4のセグメント、ホルダおよびスライド体を側面視で例示する説明図である。
【
図6】スライド体の変形例を縦断面視で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の空気入りタイヤの成形装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0015】
図1〜
図5に例示する本発明の空気入りタイヤの成形装置1(以下、成形装置1という)は、成形ドラム2と、ターンアップ機構8とを備えている。ターンアップ機構8は、
図4に例示するように、成形ドラム2のドラム軸方向Zの両端部にあるサイド部2aに配置されるターンアップブラダ9と、成形ドラム2の外周側に配置されるプッシャーリング10とで構成されている。ターンアップ機構8は、この実施形態に限定されず種々の機構を採用することができる。
【0016】
成形ドラム2は、環状に配置された複数のセグメント3と、これらセグメント3をその環状中心CLに対して進退させる拡縮機構4とを有している。尚、環状中心CLは、成形ドラム2のドラム軸心位置と実質的に同じである。拡縮機構4は、それぞれのセグメント3の内周側に取り付けられるホルダ5と、ホルダ5の内周側に配置されてドラム軸方向Zに移動するスライド体6とを備えている。セグメント3、ホルダ5およびスライド体6は、主に金属により形成されている。
【0017】
セグメント3とホルダ5とは、ボルト等によって固定されて一体化している。ホルダ5とスライド体6とは互いに分離している部品である。スライド体6は、成形ドラム2の中央部でドラム軸方向Zに延在する中心軸7に外嵌されていて、中心軸7に沿ってドラム軸方向Zに移動する。スライド体6は、例えばサーボモータ等によって移動させる。
【0018】
ホルダ5およびスライド体6はそれぞれ、ドラム軸方向Zに沿った縦断面視で、互いに対向して組み合ってドラム軸方向Zに対して傾斜する傾斜部5a、6aと、それぞれの傾斜部5a、6aに連続してドラム軸方向Zに平行な平行部5b、6bとを有している。この実施形態では、ホルダ5には傾斜部5aおよび平行部5bがそれぞれ2つ、ドラム軸方向Zに配列されている。スライド体6には傾斜部6aおよび平行部6bがそれぞれ2つ、ドラム軸方向Zに配列されている。傾斜部5a、6aおよび平行部5b、6bはそれぞれ、3つ以上配列することも1つ配列することもできるが複数配列することが好ましい。
【0019】
傾斜部5a、6aおよび平行部5b、6bは、互いに対向する相手と摺接するので、耐摩耗性に優れた材料を用いたり、耐摩耗性を向上させる材料表面処理を施すことが望ましい。或いは、互いの摺接面積を増大させることが望ましい。
【0020】
それぞれの傾斜部5a、6aのドラム軸方向Zに対する傾斜角度Aは実質的に同じである。この傾斜角度Aは例えば20°以上75°以下に設定されている。
【0021】
次に、この成形装置1を用いて中間グリーンタイヤGを成形する工程の一例を説明する。
【0022】
図1に例示するように、縮径状態の成形ドラム2に筒状のバンド部材11を外挿して、セグメント3の外周面に配置する。バンド部材11は、最内周に配置されたインナーライナの外周面にカーカス材が積層され、必要に応じてその他の部材が配置される。バンド部材11の筒軸方向両端部はセグメント3よりもドラム軸方向Zに突出している。
【0023】
次いで、スライド体6をドラム軸方向Zに移動させて、ホルダ5とスライド体6の傾斜部5a、6aどうしを摺接させてホルダ5とともにそれぞれのセグメント3を環状中心CLに対して離反するように後退させる。これにより成形ドラム2は拡径する。このバンド部材11の幅方向両端部に一対のビード部材12を外挿して筒軸方向に間隔をあけて配置する。それぞれのビード部材12は、セグメント3の両側面に沿うように配置され、成形ドラム2に対して、いわゆる横打ちした状態にする。
【0024】
次いで、ターンアップブラダ9を膨張させるとともに、膨張したターンアップブラダ9の外周側にプッシャーリング10をスライドさせる。この時に、ホルダ5とスライド体6の平行部5b、6bどうしは当接した状態になっている。即ち、
図4に例示するように平行部5b、6bどうしが面接触して、ホルダ5をスライド体6によって支えた状態になっている。この状態では、セグメント3は環状中心CLに対して近接するように前進できないので、成形ドラム2は拡径状態に固定される。
【0025】
そして、ターンアップブラダ9の膨張により、バンド部材11の筒軸方向両端部がそれぞれのビード部材12のビードリングを中心にして折り返される。そして、バンド部材11の折り返された部分は、プッシャーリング10により外周側への膨張が規制されたターンアップブラダ9によって、バンド部材11の対向する部分に圧着される。このようにして、バンド部材11のターンアップが完了し、中間グリーンタイヤGが成形される。
【0026】
成形された中間グリーンタイヤGの外周面には、次工程でベルト部材等が貼り付けられてグリーンタイヤが成形される。次いで、グリーンタイヤを加硫することにより空気入りタイヤが完成する。
【0027】
ターンタップ工程では、プッシャーリング10により外周側への膨張が規制されたターンアップブラダ9によって、セグメント3およびホルダ5には、成形ドラム2を縮径させる方向に強い押圧力が作用する。本発明では、拡縮機構4を上記したホルダ5とスライド体6とで構成したので、成形ドラム2を拡縮させる従来のリンク機構に比して簡素な構造にすることができる。それ故、セグメント3の数が多くても複雑な構造になることを回避できる。
【0028】
また、ホルダ5とスライド体6の傾斜部5a、6aどうしを摺接させて成形ドラム2を拡縮させるので、円滑な拡縮を行うことができる。加えて、ホルダ5とスライド体6の平行部5b、6bどうしを当接させて成形ドラム2を拡径状態に固定するので、ターンアップ機構8によってセグメント3が半径方向外側から内側に向かって強く押圧されても、面接触する平行部5b、6bどうしが押圧力に対して、安定的に十分対抗することができる。したがって、成形ドラム2を拡径状態に固定する特別なストッパは不要になる。
【0029】
この拡縮機構4では、成形ドラム2が拡径状態に安定して固定されるので、ターンアップさせたバンド部材11の筒軸方向両端部を、バンド部材11の対向する部分により強く圧着させることが可能になる。また、曲げ剛性の高いバンド部材11をターンアップさせるにも有利になる。
【0030】
また、本発明によれば、成形ドラム2の拡縮状態を適宜、調整できる。即ち、従来の成形ドラムでは、最小径の縮径状態と最大径の拡径状態の2つの状態しか維持することができなかったが、本発明では、ターンアップ機構8による押圧力が作用しなければ、最小径と最大径の間の任意の拡縮状態に成形ドラム2を維持することができる。そして、スライド体6のドラム軸方向Zの移動にサーボモータを用いると、成形ドラム2の拡縮状態を詳細に制御することができる。
【0031】
この実施形態のように、ホルダ5およびスライド体6に、傾斜部5a、6aおよび平行部5b、6bをそれぞれ複数配列すると、ターンアップ機構8による押圧力に対して、複数箇所の平行部5b、6bによって対抗することができる。それ故、それぞれの平行部5b、6bでの負担を軽減することができる。また、ドラム軸方向Zに間隔をあけた位置の複数箇所の平行部5b、6bによって押圧力に対抗するので、成形ドラム2を一段と安定して拡径状態に固定するには有利になる。
【0032】
成形ドラム2をより円滑に拡縮させるには、傾斜部5a、6aの傾斜角度Aを20°以上75°以下に設定するとよい。傾斜角度Aが75°超であると、スライド体6をドラム軸方向Zに移動させる際の抵抗が過大になる。一方、傾斜角度Aが20°未満であると、成形ドラム2を拡径状態にするためのスライド体6のドラム軸方向Zの移動量が過大になる。より好ましくは傾斜角度Aは30°以上60°以下に設定する。
【0033】
成形ドラム2を拡径状態に固定している状態の平行部5b、6bの面圧を過大にしないために、平行部5b、6bのドラム軸方向Zの長さは例えば20mm以上、より好ましくは40mm以上にするとよい。
【0034】
図6に例示するスライド体6は、平行部6bを含む円環体6Aと、円環体6A以外の部品とで構成されている。円環体6Aと、円環体6A以外の部品とは、互いに着脱可能になっている。この仕様にすれば、スライド体6の平行部6bが損耗した場合には、新たな円環体6Aに交換すればよく、スライド体6の相対的に損傷が少ない部品を有効に使用することができる。ホルダ5についても同様に、平行部5bを含む円環体と、その円環体以外の部品とで構成して、互いを着脱可能にすることもできる。
【0035】
上述した実施形態では、スライド体6の傾斜部6aが、ドラム軸心を中心にして周方向に連続して円環状になっているが、スライド体6の仕様はこれに限定されない。例えば、スライド体6の傾斜部6aを、ドラム軸心を中心にして周方向に複数に細分化することもできる。そして、これら複数の傾斜部6aを周方向にすき間をあけて環状に配置した構成にすることもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 成形装置
2 成形ドラム
2a サイド部
3 セグメント
4 拡縮機構
5 ホルダ
5a 傾斜部
5b 平行部
6 スライド体
6A 円環体
6a 傾斜部
6b 平行部
7 中心軸
8 ターンアップ機構
9 ターンアップブラダ
10 プッシャーリング
11 バンド部材
12 ビード部材
G 中間グリーンタイヤ
CL セグメントの環状中心
Z ドラム軸方向