(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画像合成部は、受信エネルギーの平均値Iavgと受信エネルギーの平均値の変化量の絶対値とに対する重み係数Wmaxの制御特性を示し、受信エネルギーの平均値Iavgが大きくなるほど重み係数Wmaxが小さくなる3次元の関数のうち、前記第2の合成画像データの受信エネルギーの平均値Iavgに対応する受信エネルギーの平均値の変化量の絶対値に対する重み係数Wmaxを示す2次元の関数を用いて、前記算出した受信エネルギーの平均値の変化量の絶対値に対応する重み係数Wmaxを算出する請求項8、10、11のいずれか一項に記載の超音波画像診断装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記輝度の最大値を用いる空間コンパウンドでは、異方性が強い部位の描出能力は向上したが、画素間で選択される輝度値の差が大きくなりぎらついた画像となってしまう。また、例えば動画表示としたときは、動画の超音波画像がとびとびの時間になるおそれがあった。
図13は、従来の空間コンパウンドにおける合成画像データの合成輝度値及び時間寄与度を示す図である。
【0009】
ここで、リニアの超音波探触子を用いて超音波画像データを生成し、ステア角度が0度の超音波画像データを超音波画像データFCとし、ステア角度が所定の負の角度(被検体から見て左方向)の超音波画像データを超音波画像データFLとし、ステア角度が所定の正の角度(被検体から見て右方向)の超音波画像データを超音波画像データFRとし、超音波画像データFC,FL,FRを合成して合成画像データを生成する場合を考える。動画表示する場合を例にとって考える。
【0010】
図13に示すように、超音波の送受信のシーケンスは、超音波画像データFC,FL,FRを順に循環して生成するものとし、それらの超音波送受信の時刻をT0,T1,T2,T3,T4,T5…とする。ここでは、超音波画像データFCを得るためのシーケンスをC、超音波画像データFLを得るためのシーケンスをL、超音波画像データFRを得るためのシーケンスをRとしている。先ず、時刻T0の超音波画像データFCと時刻T1の超音波画像データFLと時刻T2の超音波画像データFRとが合成され(これを第1の合成画像データとよぶ)、次いで、時刻T1の超音波画像データFLと時刻T2の超音波画像データFRと時刻T3の超音波画像データFCとが合成され(これを第2の合成画像データとよぶ)、というように順に合成され、それらの合成画像データが動画として表示される。なお、静止画の場合は時刻T0の超音波画像データFCと時刻T1の超音波画像データFLと時刻T2の超音波画像データFRとが合成されたものが表示される。
【0011】
超音波画像データFC,FL,FRの同一位置(被検体上の位置)の画素の輝度値をIc,Il,Irとする。単純平均法による空間コンパウンドでは、合成画像データの画素の輝度値である合成輝度値は、各合成画像データ(
図13の例では第1の合成画像データから第4の合成画像データ)で(Ic+Il+Ir)/3となり、合成画像データにおける時間寄与度は、第1の合成画像データから第4の合成画像データにおいて、それぞれ、(T0+T1+T2)/3,(T1+T2+T3)/3,(T2+T3+T4)/3,(T3+T4+T5)/3…となる。つまり、合成画像データの動画において、合成画像データが飛び飛びに表示されるような時間の乱れは発生しない。
【0012】
しかし、最大値選択法による空間コンパウンドでは、仮に超音波画像データFC,FL,FRのうち画素の輝度値の最大値がIrであるとすると、合成輝度値は、第1の合成画像データから第4の合成画像データでIrとなり、合成画像データにおける時間寄与度は、第1の合成画像データから第4の合成画像データにおいて、それぞれ、T2,T2,T2,T5…となる。つまり、時刻T2,T5の2種の超音波画像データの合成画像データのみが動画表示され、T0,T1,T3,T4の超音波画像データの合成画像データが表示されない。このように、飛び飛びの時間の合成画像データが動画表示される。最大値選択法では、空間コンパウンドの実効フレームレートは、最悪の場合、フレームレート/コンパウンド数となる。また、静止画において画素ごとに最大輝度値を選択するため、画素間での輝度値の差が大きくなりぎらついた画像となってしまう場合がある。
【0013】
本発明の課題は、空間コンパウンドの超音波画像データの表示において、異方性が強い部位の描出能力を高めるとともに、高画質で表示することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
被検体に向けて超音波の送受信を行う超音波探触子を備え、当該超音波探触子により得られた受信信号から超音波画像データを生成する超音波画像診断装置であって、
複数の異なるステア角度に対応する送信信号を前記超音波探触子に出力する送信部と、
前記超音波探触子から複数の異なるステア角度に対応する受信信号を受信する受信部と、
前記複数の異なるステア角度に対応する受信信号からそれぞれ超音波画像データを生成する画像生成部と、
前記複数の異なるステア角度に対応する複数の超音波画像データの受信エネルギーの平均値Iavg及び当該複数の超音波画像データの受信エネルギーの最大値Imaxに基づき、合成画像データを生成し、前記合成画像データを表示部へ出力する画像合成部と、
を備え
、
前記画像合成部は、時間的に連続する第1の合成画像データと第2の合成画像データを生成する際に、第2の合成画像データの受信エネルギーの最大値Imaxと第1の合成画像データの受信エネルギーの最大値との変化量の絶対値を算出し、変化量の絶対値に応じて平均値Iavgと最大値Imaxの重み係数を決定する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波画像診断装置において、
前記受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値の関数を用いて算出される重み係数をWmaxとし、合成後の受信エネルギーをIcompとし、
前記画像合成部は、以下の式に基づき算出される受信エネルギーIcompに基づき、前記合成画像データを生成する。
Icomp=Wmax×Imax+(1−Wmax)×Iavg
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1
又は2に記載の超音波画像診断装置において、
前記画像合成部は、前記複数の異なるステア角度に対応する複数の超音波画像データの前記被検体上の同一位置の画素の受信エネルギーの平均値Iavgと当該画素の受信エネルギーの最大値Imaxとに基づき、当該画素の合成画像データを生成する。
【0018】
請求項
4に記載の発明は、請求項
2に記載の超音波画像診断装置において、
前記関数は、受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値が大きくなるほど重み係数Wmaxが小さくなる関数である。
【0019】
請求項
5に記載の発明は、請求項
2又は4に記載の超音波画像診断装置において、
前記関数は、重み係数Wmaxの上限値及び下限値の少なくとも一つを有する。
【0020】
請求項
6に記載の発明は、請求項
2、4、5のいずれか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記画像合成部は、受信エネルギーの最大値Imaxと受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値とに対する重み係数Wmaxの制御特性を示し、受信エネルギーの最大値Imaxが大きくなるほど重み係数Wmaxが小さくなる3次元の関数のうち、前記第2の合成画像データの受信エネルギーの最大値Imaxに対応する受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値に対する重み係数Wmaxを示す2次元の関数を用いて、前記算出した受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値に対応する重み係数Wmaxを算出する。
【0021】
請求項
7に記載の発明は、
被検体に向けて超音波の送受信を行う超音波探触子を備え、当該超音波探触子により得られた受信信号から超音波画像データを生成する超音波画像診断装置であって、
複数の異なるステア角度に対応する送信信号を前記超音波探触子に出力する送信部と、
前記超音波探触子から複数の異なるステア角度に対応する受信信号を受信する受信部と、
前記複数の異なるステア角度に対応する受信信号からそれぞれ超音波画像データを生成する画像生成部と、
前記複数の異なるステア角度に対応する複数の超音波画像データの受信エネルギーの平均値Iavg及び当該複数の超音波画像データの受信エネルギーの最大値Imaxに基づき、合成画像データを生成し、前記合成画像データを表示部へ出力する画像合成部と、
を備え、
前記画像合成部は、時間的に連続する第1の合成画像データと第2の合成画像データを生成する際に
、第2の合成画像データの受信エネルギーの平均値Iavgと第1の合成画像データ
の受信エネルギー
の平均値との変化量の絶対値を算出し、
変化量の絶対値に応じて平均値Iavgと最大値Imaxの重み係数を決定する。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の超音波画像診断装置において、
前記受信エネルギーの平均値の変化量の絶対値の関数を用いて算出される重み係数をWmaxとし、合成後の受信エネルギーをIcompとし、
前記画像合成部は、以下の式に基づき算出される受信エネルギーIcompに基づき、前記合成画像データを生成する。
Icomp=Wmax×Imax+(1−Wmax)×Iavg
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の超音波画像診断装置において、
前記画像合成部は、前記複数の異なるステア角度に対応する複数の超音波画像データの前記被検体上の同一位置の画素の受信エネルギーの平均値Iavgと当該画素の受信エネルギーの最大値Imaxとに基づき、当該画素の合成画像データを生成する。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項
8に記載の超音波画像診断装置において、
前記関数は、受信エネルギーの平均値の変化量の絶対値が大きくなるほど重み係数Wmaxが小さくなる関数である。
【0023】
請求項11に記載の発明は、請求項
8又は10に記載の超音波画像診断装置において、
前記関数は、重み係数Wmaxの上限値及び下限値の少なくとも一つを有する。
【0024】
請求項12に記載の発明は、請求項
8、10、11のいずれか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記画像合成部は、受信エネルギーの平均値Iavgと受信エネルギーの平均値の変化量の絶対値とに対する重み係数Wmaxの制御特性を示し、受信エネルギーの平均値Iavgが大きくなるほど重み係数Wmaxが小さくなる3次元の関数のうち、前記第2の合成画像データの受信エネルギーの平均値Iavgに対応する受信エネルギーの平均値の変化量の絶対値に対する重み係数Wmaxを示す2次元の関数を用いて、前記算出した受信エネルギーの平均値の変化量の絶対値に対応する重み係数Wmaxを算出する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、空間コンパウンドの超音波画像データの表示において、異方性が強い部位の描出能力を高めることができるとともに、高画質で表示できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
添付図面を参照して本発明に係る第1、第2の実施の形態を順に詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0028】
(第1の実施の形態)
図1〜
図7を参照して、本発明に係る第1の実施の形態を説明する。先ず、
図1を参照して、本実施の形態の超音波画像診断装置100の全体構成を説明する。
図1は、本実施の形態の超音波画像診断装置100の外観図である。
【0029】
図1に示すように、超音波画像診断装置100は、超音波画像診断装置本体1と、超音波探触子2と、を備える。超音波探触子2は、図示しない生体等の被検体内に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体内で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波画像診断装置本体1は、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像データとして画像化する。
【0030】
超音波探触子2は、圧電素子からなる振動子2a(
図2参照)を備えており、この振動子2aは、例えば、方位方向(走査方向)に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、例えば、192個の振動子2aを備えた超音波探触子2を用いている。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2としてリニア電子スキャンプローブを用いて、リニア走査方式による超音波の走査を行うものとするが、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。超音波画像診断装置本体1と超音波探触子2との通信は、ケーブル3を介する有線通信に代えて、UWB(Ultrawideband)等の無線通信により行うこととしてもよい。
【0031】
次いで、
図2を参照して、超音波画像診断装置100の機能構成を説明する。
図2は、超音波画像診断装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0032】
図2に示すように、超音波画像診断装置本体1は、例えば、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、画像処理部15と、DSC(Digital Scan Converter)16と、画像合成部17と、表示部18と、制御部19と、を備える。
【0033】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンド、被検体の個人情報等のデータ、及び、超音波画像データを表示部18に表示するための各種パラメーターの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部19に出力する。
【0034】
送信部12は、制御部19の制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。また、送信部12は、例えば、クロック発生回路、遅延回路、パルス発生回路を備えている。クロック発生回路は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。遅延回路は、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束(送信ビームフォーミング)や、送信ビームのステア角度の設定(ステアリング)を行うための回路である。パルス発生回路は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。上述のように構成された送信部12は、例えば、超音波探触子2に配列された複数(例えば、192個)の振動子2aのうちの連続する一部(例えば、64個)を駆動して送信超音波を発生させる。そして、送信部12は、送信超音波を発生させる毎に駆動する振動子2aを方位方向にずらすことで走査(スキャン)を行う。また、送信部12は、送信ビームのステア角度を変更しながら走査を行うことで、ステア角度の異なる複数の走査領域において超音波の走査を行うことができる。
【0035】
受信部13は、制御部19の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号である受信信号を受信する回路である。受信部13は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。増幅器は、受信信号を、振動子2a毎に対応した個別経路毎に、予め設定された増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をアナログ−デジタル変換(A/D変換)するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。すなわち、整相加算回路は、振動子2a毎の受信信号に対して受信ビームフォーミングを行って音線データを生成する。
【0036】
画像生成部14は、受信部13からの音線データに対して包絡線検波処理や対数圧縮などを実施し、ダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換することにより、受信エネルギーとしての輝度値を有する画素からなるB(Brightness)モード画像データを生成することができる。すなわち、Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。ここでは、音線データに対して包絡線検波処理や対数圧縮などを施した音線データを受信エネルギーとよび、受信エネルギーには音線データに対して包絡線検波処理や対数圧縮などを施したものを輝度変換した輝度値も含まれるものとする。
【0037】
画像処理部15は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーによって構成された画像メモリー部15aを備えている。画像処理部15は、画像生成部14から出力されたBモード画像データをフレーム単位で画像メモリー部15aに記憶する。フレーム単位での画像データを超音波画像データ、あるいはフレーム画像データということがある。本実施の形態では、上述したようにして、ステア角度の異なる複数の走査領域のそれぞれについて超音波画像データを生成し、画像メモリー部15aに記憶する。この走査領域毎の超音波画像データをコンポーネント画像データということがある。この走査領域毎のコンポーネント画像データは、走査領域の一部又は全部が重複している。画像処理部15は、上述したようにして生成された画像データ(コンポーネント画像データ)を順にDSC16に出力する。
【0038】
DSC16は、画像処理部15より受信した画像データを座標変換し、テレビジョン信号の走査方式による画像データに変換し、画像合成部17に出力する。画像処理部15から入力された画像データは、全て画像が矩形であるが、そのうちステア角度が0度でない画像データは、実際の画像形状としては平行四辺形となる。DSC16は、ステア角度が0度でない場合に、矩形の画像データをステア角度に応じて座標変換し平行四辺形の画像データを生成する。
【0039】
画像合成部17は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーによって構成された画像メモリー部17aを備えている。画像合成部17は、DSC16から出力された画像データを画像メモリー部17aに記憶していき、空間コンパウンドの1つの合成画像データへの合成対象の複数の画像データが記憶されると、当該複数のコンポーネント画像データを画像メモリー部17aから読み出して合成し、合成画像データの画像信号を表示部18に出力する。
【0040】
表示部18は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。表示部18は、画像合成部17から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波画像データの静止画又は動画の表示を行う。なお、本実施の形態では、表示部18として、白色もしくはフルカラーLED(Light-Emitting Diode)のバックライトを備えた15インチのLCDが適用されている。この場合、例えば、超音波画像データを分析してLEDの輝度を調整するように構成されていてもよい。このとき、1画面を複数の領域に分割し、その領域毎にLEDの輝度調整を実施するようにしてもよい。また、画面全体でLEDの輝度調整を実施するようにしてもよい。また、表示部18に適用される画面サイズについては任意のものを適用することができる。
【0041】
制御部19は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備え、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波画像診断装置100の各部の動作を集中制御する。ROMは、半導体等の不揮発メモリー等により構成され、超音波画像診断装置100に対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、ガンマテーブル等の各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0042】
次いで、
図3を参照して、空間コンパウンドの概要を説明する。
図3は、空間コンパウンドの超音波画像データの合成を示す図である。
【0043】
図3に示すように、超音波画像診断装置100は、空間コンパウンドにより、例えば、被検体の部位OBを画像化する場合に、被検体から見て、ステア角度が0度の超音波画像データFCと、ステア角度の方向が左方向の超音波画像データFLと、ステア角度の方向が右方向の超音波画像データFRと、を生成し、合成して合成画像データFSを生成するものとする。超音波画像データFL,FC,FRの各ステア角度は、例えば、−8〜−12°、0°、+8〜+12°に設定される。被検体の部位OBを円形とした場合に、超音波画像データFCは、左右の部分が薄く見えづらくなっている。同様にして、超音波画像データFLは、左上及び右下の部分が薄く見えづらく、超音波画像データFRは、右上及び左下の部分が薄く見えづらい。これらに対し、合成画像データFSは、被検体の部位OBの円形が描出される。本実施の形態では、異方性が強い部位が単純平均法よりも明確に描出されるような描出能力が高い合成方法を採用し、その合成方法を後述する。
【0044】
また、超音波画像データFC,FL,FRは、それぞれスペックル(小斑点)パターンが現れている。スペックルパターンとは、超音波の波長に比べて十分小さな生体内の無数の反射体(群反射体)により、散乱波が様々な場所(位相)で生じ、これらの散乱波のうち超音波探触子に戻ってくる散乱波(後方散乱波)が干渉し、超音波画像に現れるランダムな小輝点群(まだらな点状の像)のパターンである。ステア角度が変化すると、スペックルパターンも変化している。このため、超音波画像データFC,FL,FRを合成すると、結果としてスペックルパターンが低減される。
【0045】
次に、
図4〜
図7を参照して、本実施の形態における画像合成部17の動作を説明する。
図4は、合成前の超音波画像データFC,FL,FRにおける受信エネルギー(輝度値)Ic,Il,Irを示す図である。
図5は、画像合成部17で実行される第1の画像合成処理を示すフローチャートである。
図6は、αブレンディングの空間コンパウンド(α Blending Compound)における合成画像データの合成受信エネルギー(合成輝度値)及び時間寄与度を示す図である。αブレンディングとは、2つの画像データを係数(α値)を用いて重みづけをして合成する方法である。
【0046】
送信部12及び受信部13は、超音波画像データFC用の超音波の送受信、超音波画像データFL用の超音波の送受信、超音波画像データFR用の超音波の送受信、を循環して繰り返し行う。画像生成部14は、受信部13から入力される音線データにより、画像データ(コンポーネント画像データ)を生成する。この画像データは、画像処理部15の記憶を介して、DSC16により、座標変換が行われ、超音波画像データFC,FL,FRとして、画像合成部17に出力される。画像合成部17は、DSC16から出力された画像データを画像メモリー部17aに3画像分貯まるまで記憶していき、3つの超音波画像データFC,FL,FRが貯まると、それらを読み出して合成し、合成した空間コンパウンドの合成画像データを表示部18に出力する。表示部18は、画像合成部17から次々に入力される空間コンパウンドの合成画像データを静止画又は動画として表示する。
【0047】
図4に示すように、DSC16により座標変換された超音波画像データFC,FL,FRの同一位置(被検体上の同一位置)の画素における輝度値を、それぞれ受信エネルギーIc,Il,Irと表す。
【0048】
図5に示すように、画像合成部17は、αブレンディングを用いた空間コンパウンドのアルゴリズムとしての第1の画像合成処理を行う。先ず、画像メモリー部17aに経時的に連続する超音波画像データFC,FL,FRが記憶されたことをトリガとして、画像合成部17は、記憶された超音波画像データFC,FL,FRを画像メモリー部17aから読み出し、読み出した超音波画像データFC,FL,FRで重複する画素のうち、同一位置に対応する未選択の1つの画素を選択する(ステップS1)。そして、画像合成部17は、全ステア方向(C,L,R)の超音波画像データFC,FL,FRの選択画素の受信エネルギーIc,Il,Irを取得する(ステップS2)。
【0049】
そして、画像合成部17は、次式(1)により、ステップS2で取得した選択画素の受信エネルギーIc,Il,Irから受信エネルギーの単純平均としての平均値Iavgを算出する(ステップS3)。
Iavg=(Ic+Il+Ir)/3 …(1)
【0050】
そして、画像合成部17は、次式(2)により、ステップS2で取得した選択画素の受信エネルギーIc,Il,Irから受信エネルギーの最大値Imaxを取得する(ステップS4)。
Imax=max(Ic,Il,Ir) …(2)
【0051】
そして、画像合成部17は、次式(3)、(4)により、ステップS3,S4で算出した受信エネルギーの平均値Iavg、最大値Imaxと、予め設定したα値としての重み係数Wmaxと、を用いて受信エネルギーのαブレンディングの加重平均値を算出し、合成画像データの選択画素の受信エネルギーIcompとする(ステップS5)。
Wmax=constant(但し、1>Wmax>0) …(3)
Icomp=Wmax×Imax+(1−Wmax)×Iavg …(4)
【0052】
そして、画像合成部17は、ステップS1で超音波画像データFC,FL,FRで重複する全ての画素が選択されたか否かを判別する(ステップS6)。全ての画素が選択されていない場合(ステップS6;NO)、画像合成部17は、ステップS1に移行する。全ての画素が選択された場合(ステップS6;YES)、画像合成部17は、受信エネルギーIcompの画素からなる合成画像データFSを生成して表示部18に出力し(ステップS7)、第1の画像合成処理を終了する。
【0053】
このアルゴリズムでは、予め設定した重み係数Wmaxを用いてαブレンディングを行うので、最大値選択法における輝度値より小さくなるが、1つの画素に対応する受信エネルギーIcompを合成する際に必ず異なるステア方向の超音波画像データの受信エネルギーの値が合成成分として含まれるため、隣り合う画素間での受信エネルギーの差を小さくすることができ、一つのフレーム画像データにおいてぎらつきを抑制することができる。
【0054】
図6に示すように、超音波の送受信のシーケンスは、超音波画像データFC,FL,FRを順に循環して生成するものとし、それらの超音波送受信の時刻をT0,T1,T2,T3,T4,T5…とする。ここでは、超音波画像データFCを得るためのシーケンスをC、超音波画像データFLを得るためのシーケンスをL、超音波画像データFRを得るためのシーケンスをRとしている。先ず、時刻T0の超音波画像データFCと時刻T1の超音波画像データFLと時刻T2の超音波画像データFRとが合成され(これを第1の合成画像データとよぶ)、次いで、時刻T1の超音波画像データFLと時刻T2の超音波画像データFRと時刻T3の超音波画像データFCとが合成され(これを第2の合成画像データとよぶ)、というように順に合成され、それらの合成画像データが順に動画として表示される。また、仮に時刻T0〜T5の超音波画像データFC,FL,FRのうち画素の受信エネルギーの最大値がIrであるとする。
【0055】
αブレンディングを用いた空間コンパウンド(加重平均コンパウンド)では、合成画像データの画素の合成受信エネルギーは、各合成画像データ(
図6の例では第1の合成画像データから第4の合成画像データ)でWmaxIr+(1−Wmax)((Ic+Il+Ir)/3)となる。合成画像データにおける時間寄与度は、第1の合成画像データから第4の合成画像データにおいて、それぞれ、WmaxT2+(1−Wmax)(T0+T1+T2)/3(第1の合成画像データの時間寄与度)、WmaxT2+(1−Wmax)(T1+T2+T3)/3(第2の合成画像データの時間寄与度)、WmaxT2+(1−Wmax)(T2+T3+T4)/3(第3の合成画像データの時間寄与度)、WmaxT5+(1−Wmax)(T3+T4+T5)/3(第4の合成画像データの時間寄与度)…となる。なお、時間寄与度とは、どの時間でとった画像データが合成画像データにどのくらいの割合で寄与するかを示すものである。
【0056】
このように、合成画像データにおける時間寄与度において、重み付け分の時間の乱れが発生する。しかし、重み係数Wmaxの値を大きくすることで、最大値選択法の描出能力に近づける一方で、最大値以外の値も合成画像データに混ぜることで時間乱れを軽減する。すなわち、最大値以外の値の画像成分も合成されるため、時間的に連続する合成画像データにおいて、コンパウンド送受信シーケンスのうち時間連続性のない受信エネルギー成分のみからなる画像が表示されるということがなくなる。
【0057】
上記合成画像データの動画表示の前に予め、表示される合成画像データの動画において、空間コンパウンドの描出能力の効果と、経時的な画像表示の滑らかさの効果と、の相反する要素を見ながら、設定者が操作入力部11への設定入力により、適宜重み係数Wmaxの設定を行う。重み係数Wmaxは、例えば、0.6〜0.8の値に設定される。また、合成画像データの静止画表示の場合にも、合成画像のぎらつきを抑えるように重み係数Wmaxが適切な値に設定される。
【0058】
図7(a)は、従来の単純平均法による棘上筋腱の合成画像データを表示部18に表示したときの画像(合成画像)である。
図7(b)は、重み係数Wmaxを0.75としたαブレンディング法による棘上筋腱の合成画像である。
図7(c)は、従来の最大値選択法による棘上筋腱の合成画像である。
【0059】
図7(a)に示すように、従来の単純平均法による棘上筋腱の合成画像では、描出能力が低く、囲い線の内部で見えなければならない部位の輝度が低いため、見えていない部分が存在する。
図7(b)に示すように、重み係数Wmaxを0.75とした本実施の形態のαブレンディング法による棘上筋腱の合成画像では、単純平均法の超音波画像よりも描出能力が比較的高く、囲い線の内部で見えなければならない部位が多く明確に視認できる。
図7(c)に示すように、従来の最大値選択法による棘上筋腱の合成画像は、Wmax=0.75のものよりもぎらついた画像となっていることがわかる。
【0060】
なお、重み係数Wmaxを0.75としたαブレンディング法による合成画像データの動画は、従来の最大値選択法による合成画像データの動画よりも、経時的な画像表示の滑らかさが向上する。
【0061】
以上、本実施の形態によれば、超音波画像診断装置100は、複数の異なるステア角度に対応する送信信号を超音波探触子2に出力する送信部12と、超音波探触子2から複数の異なるステア角度に対応する受信信号を受信する受信部13と、複数の異なるステア角度に対応する受信信号からそれぞれ超音波画像データを生成する画像生成部14と、複数の異なるステア角度に対応する複数の超音波画像データの受信エネルギーの単純平均の平均値Iavgを算出し、複数の超音波画像データの受信エネルギーの最大値Imaxを取得し、算出した平均値Iavgと、取得した最大値Imaxと、重み係数Wmaxと、を用いて、式(4)により、合成後の受信エネルギーIcompを算出し、受信エネルギーIcompからなる合成画像データを生成し、合成画像データを表示部18へ出力する画像合成部17と、を備える。
【0062】
このため、空間コンパウンドの超音波画像データの表示において、式(4)の複数の超音波画像データの受信エネルギーの最大値Imaxに対応する項により、異方性が強い部位の描出能力を高めることができるとともに、高画質で表示できる。また、空間コンパウンドの超音波画像データの動画表示において、式(4)の受信エネルギーの最大値Imaxに対応する項により、異方性が強い部位の描出能力を高めることができるとともに、式(4)の受信エネルギーの平均値Iavgに対応する項により、経時的に滑らかに表示できる。
【0063】
また、画像合成部17は、複数の異なるステア角度に対応する複数の超音波画像データの被検体上の同一位置の画素の受信エネルギーの平均値Iavgを算出し、当該画素の受信エネルギーの最大値Imaxを取得し、当該画素の合成後の受信エネルギーIcompを算出する。このため、被検体上の位置が正確に合成された空間コンパウンドの合成画像データを生成できる。
【0064】
また、重み係数Wmaxは、一定値である。このため、空間コンパウンドの超音波画像データの表示において、異方性が強い部位の描出能力を高める度合いを一定にすることができる。また、空間コンパウンドの超音波画像データの動画表示において、異方性が強い部位の描出能力を高める度合いと、経時的に滑らかにする度合いと、を一定にすることができる。また、空間コンパウンドの超音波画像データの動画表示において、異方性が強い部位の描出能力を高める度合いと、経時的に滑らかにする度合いと、の必要性に応じて、設定者が自在に重み係数Wmaxを予め設定できる。
【0065】
(第2の実施の形態)
図8〜
図12を参照して、本発明に係る第2の実施の形態を説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、超音波画像診断装置100を用いるものとする。超音波画像診断装置100において、画像合成部17のみが第1の実施の形態と異なる動作を行う。具体的には、画像合成部17における空間コンパウンドの超音波画像データの合成方法が第1の実施の形態と異なる。このため、当該異なる動作を主として説明し、他の要素の説明を省略する。
【0066】
図8〜
図12を参照して、本実施の形態における画像合成部17の動作を説明する。
図9は、受信エネルギー(輝度)の最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)に対する重み係数Wmaxの第1の制御特性を示す関数の図である。
図10は、受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)に対する重み係数Wmaxの第2の制御特性を示す関数の図である。
図11は、受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)に対する重み係数Wmaxの第3の制御特性を示す関数の図である。
図12は、受信エネルギーの最大値Imaxと受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)とに対する重み係数Wmaxの制御特性を示す関数の図である。
【0067】
図8に示すように、画像合成部17は、αブレンディングを用いた空間コンパウンドのアルゴリズムとしての第2の画像合成処理を行う。先ず、画像メモリー部17aに経時的に連続する超音波画像データFC,FL,FRが記憶されたことをトリガとして、画像合成部17は、記憶された超音波画像データFC,FL,FRを画像メモリー部17aから読み出し、読み出した超音波画像データFC,FL,FRで重複する画素のうち、同一位置に対応する未選択の1つの画素を選択する(ステップS11)。そして、画像合成部17は、全ステア方向(C,L,R)の超音波画像データFC,FL,FRの選択画素の受信エネルギー(輝度値)Ic,Il,Irを取得する(ステップS12)。
【0068】
そして、画像合成部17は、式(1)により、ステップS12で取得した選択画素の受信エネルギーIc,Il,Irから受信エネルギーの単純平均の平均値Iavgを算出する(ステップS13)。そして、画像合成部17は、式(2)により、ステップS12で取得した選択画素の受信エネルギーIc,Il,Irから受信エネルギーの最大値Imaxを取得する(ステップS14)。
【0069】
そして、画像合成部17は、ステップS14で算出した受信エネルギーの最大値Imaxを、次回の演算で利用するために、受信エネルギーの前回最大値Imaxprevとして画像メモリー部17aに記憶する(ステップS15)。ステップS15において、例えば、画像メモリー部17aには、選択画素の受信エネルギーの前回最大値Imaxprevが、前回最大値Imaxprevからなる合成画像データとして選択画素と対応付けて記憶される。そして、画像合成部17は、前回生成された合成画像データ(1つ前のフレームの合成画像データ)の生成時のステップS15において記憶された選択画素の受信エネルギーの前回最大値Imaxprevを画像メモリー部17aから読み出し、次式(5)により、ステップS14で算出した現在の受信エネルギーの最大値Imaxと、読み出した前回最大値Imaxprevとを用いて、受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)を算出する(ステップS16)。
Abs(Imax−Imaxprev)=|Imax−Imaxprev| …(5)
【0070】
そして、画像合成部17は、次式(6)により、ステップS16で算出した受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)の関数を用いて、重み係数Wmaxを算出する(ステップS17)。
Wmax=Func(Abs(Imax−Imaxprev)) …(6)
【0071】
そして、画像合成部17は、式(4)により、ステップS13,S14で算出した受信エネルギーの平均値Iavg、最大値Imaxと、ステップS16で算出した重み係数Wmaxと、を用いて受信エネルギーのαブレンディングの加重平均値を算出し、合成画像データの選択画素の受信エネルギーIcompとする(ステップS18)。
【0072】
そして、画像合成部17は、ステップS11で超音波画像データFC,FL,FRで重複する全ての画素が選択されたか否かを判別する(ステップS19)。全ての画素が選択されていない場合(ステップS19;NO)、画像合成部17は、ステップS11に移行する。全ての画素が選択された場合(ステップS19;YES)、画像合成部17は、受信エネルギーIcompの画素からなる合成画像データFSを生成して表示部18に出力し(ステップS20)、第2の画像合成処理を終了する。
【0073】
本実施の形態のアルゴリズムは、第1の実施の形態のアルゴリズムにおける重み係数Wmaxを適応的に変化させながら、αブレンディングを行う。重み係数Wmaxを適応的に変化させる引数には、現在の受信エネルギーの最大値Imaxと前回最大値Imaxprevとの変化量の絶対値(Abs(Imax−Imaxprev))を用いる。これは、超音波画像が変化する場合は、受信エネルギー(輝度)が変化する性質を用いている。また、超音波画像が変化する場合には、受信エネルギーの平均値を用いた方が時間の乱れを少なくでき、超音波画像が変化しない場合には、受信エネルギーの最大値を用いた方が異方性が強い部位の描出能力を向上できるといった両方の利点を包含することができる。
【0074】
式(6)の関数Func(Abs(Imax−Imaxprev))は、受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)が小さいほど重み係数Wmaxが大きい値をとり、受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)が大きいほど重み係数Wmaxが小さい値をとる関数とする。これは、超音波画像が動いた場合、受信エネルギーの最大値Imaxと前回最大値Imaxprevとの差が変化することになるが、大きく動いた場合には、受信エネルギーの最大値の変化量が大きくなり、あまり動かない場合には、受信エネルギーの最大値の変化量が小さくなる傾向があることを利用している。
【0075】
関数Func(Abs(Imax−Imaxprev))としては、例えば、
図9に示すグラフの関係を有する一次関数が使用される。画像合成部17は、
図9に示すグラフを反映したテーブルを予め画像メモリー部17aに記憶しておき、重み係数Wmaxの算出時に当該テーブルを読み出して使用する構成としてもよく、あるいは
図9に示すグラフの式を用いて重み係数Wmaxの算出をする構成としてもよい。
【0076】
また、画像データの合成において、関数Func(Abs(Imax−Imaxprev))として、
図10又は
図11に示すグラフの関係を有する関数を使用してもよい。
図10、
図11に示すグラフは、重み係数Wmaxの上限及び下限を設定することで、受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)がある範囲内である場合に、重み係数Wmaxを一定とすることが可能となる。例えば、
図10に示す重み係数Wmaxの上限(0≦重み係数Wmaxの上限値、下限値≦1.0)は、式(4)の受信エネルギーの最大値Imaxの項によるぎらつきを抑制する効果を奏する。
図10に示す重み係数Wmaxの上限及び下限は、超音波画像が動いた場合の受信エネルギーと超音波画像が動かない場合の受信エネルギーとの変化が極端にならないようにする効果を奏する。
図11に示す重み係数Wmaxの上限(Wmax=1.0)は、超音波画像に少々受信エネルギー変化が見られても安定して異方性が強い部位を描出することを可能とする。なお、関数Func(Abs(Imax−Imaxprev))は、重み係数Wmaxの上限値又は下限値を有する構成としてもよい。
【0077】
上記の
図9、
図10、
図11に示すグラフを用いた算出ポリシーでは、受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)と、重み係数Wmaxと、の2軸の関係のグラフを用いて重み係数Wmaxを算出したが、受信エネルギーの最大値Imaxと、受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)と、重み係数Wmaxと、の3軸の関係のグラフを用いてもよい。
【0078】
3軸の関係のグラフとして、
図12に示すグラフを使用してもよい。
図12に示すグラフでは、受信エネルギーの最大値Imaxが大きくなるほど重み係数Wmaxが小さくなる。画像合成部17は、
図12に示すグラフから、現在の受信エネルギーの最大値Imaxに対応する、受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)と、重み係数Wmaxと、の2軸の関係のグラフを抽出して、抽出したグラフを関数Func(Abs(Imax−Imaxprev))として、式(6)の算出を行う。
【0079】
受信エネルギーの最大値Imaxが比較的大きい値である場合には、受信エネルギーの平均値Iavgの比率を大きく(
図12のグラフのように重み係数Wmaxを小さく)しても、合成画像データの受信エネルギーIcompを超音波画像上識別できる輝度に保つことが可能となり、且つ動画の時間乱れを抑制することが可能となる。逆に受信エネルギーの最大値Imaxが比較的小さい値である場合には、受信エネルギーの平均値Iavgの比率を大きくしても、合成画像データの受信エネルギーIcompが超音波画像上識別できる輝度とならないので、受信エネルギーの最大値Imaxの比率を大きく(
図12のグラフのように重み係数Wmaxを大きく)することで、動画の時間乱れは大きくなるが、合成画像データの受信エネルギーIcompを超音波画像上識別できる輝度に保つことが可能となる。
【0080】
以上、本実施の形態によれば、送信部12は、複数の異なるステア角度に対応する送信信号を順次送信し、画像合成部17は、時間的に連続する第1の合成画像データと第2の合成画像データを生成する際に第2の合成画像データの受信エネルギーの最大値Imaxと第1の合成画像データを生成したときに算出した受信エネルギーの前回最大値との変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)を算出し、受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)に対する重み係数Wmaxの制御特性を示す関数Func(Abs(Imax−Imaxprev))を用いて、当該算出した受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)に対応する重み係数Wmaxを算出する。このため、空間コンパウンドの超音波画像データの動画表示において、超音波画像が変化する場合には、受信エネルギーの平均値Iavgを用いて、経時的に滑らかに表示でき、超音波画像が変化しない場合に、受信エネルギーの最大値Imaxを用いて、異方性が強い部位の描出能力を向上でき、両方の利点を包含できる。
【0081】
また、関数Func(Abs(Imax−Imaxprev))は、受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)が大きくなるほど重み係数Wmaxが小さくなる関数である。このため、超音波画像が大きく動いた場合に、受信エネルギーの最大値の変化量が大きくなり、受信エネルギーの平均値Iavgを用いて、経時的に滑らかに表示でき、あまり動かない場合に、受信エネルギーの最大値の変化量が小さくなり、異方性が強い部位の描出能力を向上できる。
【0082】
また、
図10、
図11のように、関数Func(Abs(Imax−Imaxprev))は、重み係数Wmaxの上限値及び下限値の少なくとも一つを有する。このため、空間コンパウンドの超音波画像データの動画表示において、重み係数Wmaxの上限値により、受信エネルギーの最大値成分によるぎらつきを抑制でき、重み係数Wmaxの上限値及び下限値により、超音波画像が動いた場合の受信エネルギーと超音波画像が動かない場合の受信エネルギーとの変化が極端にならないようにすることができる。
【0083】
また、画像合成部17は、受信エネルギーの最大値Imaxと受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)とに対する重み係数Wmaxの制御特性を示し、受信エネルギーの最大値Imaxが大きくなるほど重み係数Wmaxが小さくなる
図12のような3次元の関数のうち、現在の受信エネルギーの最大値Imaxに対応する受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)に対する重み係数Wmaxを示す2次元の関数Func(Abs(Imax−Imaxprev))を用いて、算出した受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)に対応する重み係数Wmaxを算出する。このため、空間コンパウンドの超音波画像データの動画表示において、受信エネルギーの最大値Imaxが比較的大きい値の場合に、合成画像データの受信エネルギーIcompを超音波画像上識別できる輝度に保つことができ且つ滑らかにでき、受信エネルギーの最大値Imaxが比較的小さい値の場合に、受信エネルギーの最大値Imaxの比率を大きくすることで、動画の時間乱れは大きくなるが、合成画像データの受信エネルギーIcompを超音波画像上識別できる輝度に保つことができる。
【0084】
なお、上記各実施の形態における記述は、本発明に係る好適な超音波画像診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。
【0085】
例えば、上記各実施の形態において、ステア角度が異なる3つの超音波画像データFC,FL,FRを合成して空間コンパウンドの合成画像データFSを生成する構成としたが、これに限定されるものではない。ステア角度が異なる2つ、又は3つ以上の超音波画像データを合成して空間コンパウンドの合成画像データを生成する構成としてもよい。例えば、ステア角度が異なる5つの超音波画像データを合成する場合に、各ステア角度は、例えば、−12°、−8°、0°、+8°、+12°に設定される。
【0086】
また、上記各実施の形態において、受信エネルギーの平均値Iavgは、単純平均(相加平均)の平均値として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、受信エネルギーの平均値Iavgは、相乗平均等、他の平均法の平均値としてもよい。
【0087】
また、上記各実施の形態において、画像合成部17が画像データの合成を行う構成としたが、これに限定されるものではない。画像合成部17に代えて、制御部19が、画像合成部17と同様の画像データの合成処理を行うための画像合成プログラムの実行により、DSC16から出力された超音波画像データの合成を行い、その合成画像データを表示部18に表示させる構成としてもよい。
【0088】
また、上記第2の実施の形態において、受信エネルギーの最大値Imaxと受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)と、を用いる構成としたが、これに限定されるものではない。受信エネルギーの最大値Imaxを受信エネルギーの平均値Iavg、受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)を受信エネルギーの平均値の変化量の絶対値Abs(Iavg−Iavgprev)、のように代える構成としてもよい。受信エネルギーの平均値の変化量の絶対値Abs(Iavg−Iavgprev)は、時間的に連続する第1の合成画像データと第2の合成画像データを生成する際に第2の合成画像データの受信エネルギーの平均値Iavgと第1の合成画像データを生成したときに算出した受信エネルギーの前回平均値との変化量の絶対値である。式(5)、(6)は、次式(7)、(8)に代えられる。
Abs(Iavg−Iavgprev)=|Iavg−Iavgprev| …(7)
Wmax=Func(Abs(Iavg−Iavgprev)) …(8)
【0089】
この構成によれば、受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Abs(Imax−Imaxprev)での結果が極端に変化する場合があった場合に、それと比べて、受信エネルギーの平均値Iavg、受信エネルギーの平均値の変化量の絶対値Iavgprevを利用することでちらつきをより緩和することができる。なお、受信エネルギーの最大値Imax、受信エネルギーの最大値の変化量の絶対値Imaxprevを用いる構成と同様、受信エネルギーの平均値Iavg、受信エネルギーの平均値の変化量の絶対値Iavgprevを用いても超音波画像が動いたことを検出できる。
【0090】
また、上記各実施の形態において、画像合成部17が、画像生成部14により生成されDSC16で変換された複数の超音波画像データの受信エネルギーとしての輝度値を合成する構成としたが、これに限定するものではない。画像合成部は、画像生成部14により包絡線検波処理、対数圧縮等が施された音線データから表示部18に入力する画像データまでのいずれかの段階の超音波画像のデータを受信エネルギーとして合成してもよい。例えば、画像合成部が、画像生成部14により包絡線検波処理、対数圧縮等が施された音線データを(合成後の画像データにおける同一位置の画素毎に)合成して合成音線データを生成し、画像生成部14が、当該生成された合成音線データを輝度変換することにより合成画像データを生成する構成としてもよい。
【0091】
また、以上の実施の形態における超音波画像診断装置100を構成する各部の細部構成及び細部動作に関して本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。