特許第6596947号(P6596947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596947
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】電極複合体および電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20191021BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20191021BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20191021BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20191021BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20191021BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20191021BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20191021BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20191021BHJP
【FI】
   H01M4/13
   H01M4/36 A
   H01M4/62 Z
   H01M4/131
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M10/0562
   H01M10/058
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-116403(P2015-116403)
(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-4705(P2017-4705A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100194102
【弁理士】
【氏名又は名称】磯部 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】横山 知史
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−110792(JP,A)
【文献】 特開2014−096350(JP,A)
【文献】 特開2010−218686(JP,A)
【文献】 特開2014−110240(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0030909(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/131
H01M 4/36
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 4/62
H01M 10/0562
H01M 10/058
H01M 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質部、固体電解質部および多孔質の複酸化物部を有する複合体と、
前記複合体に接合された集電体と、を備え、
多孔質の空隙部を含めて、前記複酸化物部と接触するように前記活質部が覆い、
前記活物質部の表面を前記固体電解質部が接触するように覆い、
前記複酸化物部が前記集電体に接触し、
前記活物質部は遷移金属酸化物で構成される活物質を含み、
前記固体電解質部はイオン伝導性を有する固体電解質を含み、
前記複酸化物部は下記式(1)で表される金属複酸化物およびその誘導体の少なくとも一方を含み、
前記複合体において、前記活物質部は、前記複酸化物部と前記固体電解質部との間に設けられることを特徴とする電極複合体。
LnLi0.50.5 ・・・ (1)
[式中、Lnは、ランタノイド、Mは、遷移金属を表す。]
【請求項2】
前記金属複酸化物は、LaLi0.5Co0.5、LaLi0.5Ni0.5、LaLi0.5Cu0.5、La1.5Sr0.5Li0.5Co0.5、NdLi0.5Ni0.5のいずれか一つを含む請求項1に記載の電極複合体。
【請求項3】
前記活物質部は、前記複酸化物部を覆うように層状に形成されている請求項1または2に記載の電極複合体。
【請求項4】
前記複酸化物部は、内部に複数の連通孔を有し、
前記活物質部は、前記連通孔の内部において前記複酸化物の表面を覆っている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電極複合体。
【請求項5】
電池を構成するための他の電極が接合される前記複合体の面の表面は、前記固体電解質部である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電極複合体。
【請求項6】
前記複酸化物部の電子伝導率は、前記活物質部の電子伝導率より高い請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電極複合体。
【請求項7】
前記遷移金属酸化物は、リチウムと、コバルト、マンガンおよびニッケルのうちの少なくとも1種とを含む請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電極複合体。
【請求項8】
前記固体電解質は、ガーネット型結晶構造またはガーネット型類似結晶構造を有する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の電極複合体。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の電極複合体と、
前記複合体の他の電極が接合される面に設けられた電極と、を有することを特徴とする電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極複合体および電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯型情報機器をはじめとする多くの電気機器の電源として、リチウム電池(一次電池および二次電池を含む)のような電池が利用されている。リチウム電池は、正極と負極と、これらの層の間に設置され、リチウムイオンの伝導を媒介する電解質層とを備える。
【0003】
近年、高エネルギー密度と安全性とを両立したリチウム電池として、電解質層の形成材料に、固体電解質を使用する全固体型リチウム電池が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−277997号公報
【特許文献2】特開2004−179158号公報
【特許文献3】特許第4615339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの全固体型リチウム電池は、長期に亘って安定的に、高出力かつ高容量であるものが求められているが、従来の全固体型リチウム電池は、これらの特性について充分に得られているとは言えなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の電極複合体は、
活物質部、固体電解質部および複酸化物部を有する複合体と、
前記複合体に接合された集電体と、を備え、
前記活物質部は遷移金属酸化物で構成される活物質を含み、
前記固体電解質部はイオン伝導性を有する固体電解質を含み、
前記複酸化物部は下記式(1)で表される金属複酸化物およびその誘導体の少なくとも一方を含み、
前記複合体において、前記活物質部は、前記複酸化物部と前記固体電解質部との間に接触して形成されていることを特徴とする。
【0007】
LnLi0.50.5 ・・・ (1)
[式中、Lnは、ランタノイド、Mは、遷移金属を表す。]
【0008】
かかる構成の電極複合体を電池に適用することで、電池は、長期に亘って安定的に、高出力かつ高容量を維持するものとなる。
【0009】
本発明の電極複合体では、前記活物質部は、前記複酸化物部を覆うように層状に形成されていることが好ましい。
【0010】
かかる電極複合体を電池に適用することで、電池は、長期に亘って安定的に、高出力かつ高容量を維持するものとなる。
【0011】
本発明の電極複合体では、前記複酸化物部は、内部に複数の連通孔を有し、
前記活物質部は、前記複数の連通孔の表面を覆っていることが好ましい。
【0012】
かかる構成の電極複合体を電池に適用することで、電池は、長期に亘って安定的に、高出力かつ高容量を維持するものとなる。
【0013】
本発明の電極複合体では、電池を構成するための他の電極が接合される前記複合体の面の表面は、前記固体電解質部であることが好ましい。
【0014】
かかる構成の電極複合体を電池に適用することで、活物質部および複酸化物部が他の電極に接していないことから安全性の高いものとすることができる。
【0015】
本発明の電極複合体では、前記複酸化物部の電子伝導率は、前記活物質部の電子伝導率より高いことが好ましい。
【0016】
かかる構成の電極複合体を電池に適用することで、電池は、長期に亘って安定的に、高出力かつ高容量を維持するものとなる。
【0017】
本発明の電極複合体では、前記遷移金属酸化物は、リチウムと、コバルト、マンガンおよびニッケルのうちの少なくとも1種とを含むことが好ましい。
【0018】
これにより、活物質部を、高い電子伝導性と、小さい充放電時体積変化率との双方の特性を併せ持つものとすることができる。その結果、リチウム二次電池の高容量化および長寿命化が図られる。
【0019】
本発明の電極複合体では、前記固体電解質は、ガーネット型結晶構造またはガーネット型類似結晶構造を有することが好ましい。
【0020】
ガーネット型結晶構造またはガーネット型類似結晶構造を有する固体電解質は、イオン伝導性が高く電気化学的に安定であることから固体電解質として好ましく用いられる。
【0021】
本発明の電池は、本発明の電極複合体と、
前記複合体の他の電極が接合される面に設けられた電極とを、有することを特徴とする。
【0022】
かかる構成の活物質成形体を備える電極複合体を有することで、電池は、長期に亘って安定的に、高出力かつ高容量を維持するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る縦断面図である。
図2】第1実施形態に係る電極複合体を用いたリチウム二次電池の縦断面図である。
図3図1に示すリチウム二次電池の製造方法を説明するための図である。
図4図1に示すリチウム二次電池の製造方法を説明するための図である。
図5図1に示すリチウム二次電池の製造方法を説明するための図である。
図6図1に示すリチウム二次電池の製造方法を説明するための図である。
図7】本発明の電池をリチウム二次電池に適用した第2実施形態を示す縦断面図である。
図8】本発明の電池をリチウム二次電池に適用した第3実施形態を示す縦断面図である。
図9】本発明の電池をリチウム二次電池に適用した第4実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態および実施例について、図面を用いて説明する。尚、説明に用いる図面は、説明のための便宜上のものであり、図示された構成要素の寸法や比率等は実際のものと異なる場合がある。また、図面の説明において、示された図の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0025】
(第1実施形態)
本実施形態は、電極複合体のひとつの実施形態と当該電極複合体を用いたリチウム二次電池について説明するものである。
【0026】
図1に、電極複合体10を示す。電極複合体10は、集電体1、活物質層2、複酸化物成形体5、および固体電解質層3を有する。
【0027】
図2に、電極複合体10を用いたリチウム二次電池100を示す。リチウム二次電池100は、構成要素として、電極複合体10および電極20を含む。このリチウム二次電池100は、いわゆる全固体型リチウム(イオン)二次電池である。
【0028】
まず、図1を用いて、電極複合体10について説明する。
ここで、活物質層2、固体電解質層3、および複酸化物成形体5を合わせて複合体4と呼ぶ。電極複合体10は、集電体1と複合体4とで構成される。活物質層2は、複酸化物成形体5を覆う形で設けられており、複酸化物成形体5は活物質層2を介して固体電解質層3に接している。
【0029】
集電体1は、複合体4の一面(一方の面)41に接して設けられている。
この集電体1は、活物質層2が正極活物質で構成される場合は、正極として機能し、活物質層2が負極活物質で構成される場合は、負極として機能する。
【0030】
集電体1の形成材料(構成材料)としては、例えば、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)およびパラジウム(Pd)からなる群から選ばれる1種の金属(金属単体)や、この群から選ばれる2種以上の金属元素を含む合金等が挙げられる。
【0031】
集電体1の形状は、特に限定されず、例えば、板状、箔状、網状等をなすものが挙げられる。また、集電体1の表面は、平滑なものであってもよく、凹凸が形成されていてもよい。
【0032】
活物質層2は、層状をなし、後述する複酸化物成形体5の空隙(連通孔)内において、複酸化物粒子51の表面を覆っている。なお、本実施形態では、複酸化物成形体5の空隙(連通孔)内において露出する複酸化物粒子51の表面が選択的に覆われており、複酸化物粒子51同士が接触する領域は、活物質層2で覆われてはいない。
【0033】
この活物質層2は、遷移金属酸化物としてリチウム複酸化物を含む無機物の電極活物質(活物質)を形成材料(構成材料)として含有しており、この形成材料の種類を適宜選択することで、集電体1は、正極にも負極にもなり得る。
【0034】
なお、本明細書において「リチウム複酸化物」とは、リチウムを必ず含み、かつ全体として2種以上の金属イオンを含む酸化物であって、オキソ酸イオンの存在が認められないものを言う。
【0035】
集電体1を正極とする場合のようなリチウム複酸化物としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiMn、LiNi0.8Co0.16Al0.04、LiFePO、LiFeP、LiMnPO、LiFeBO、Li(PO、LiCuO、LiFeF、LiFeSiO、LiMnSiO等が挙げられる。これらの中でも、リチウムと、コバルト、マンガンおよびニッケルのうちの少なくとも1種とを含む化合物を主材料として含有することが好ましく、具体的には、コバルト酸リチウム、ニッケル−マンガン−コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、およびニッケル−コバルト−アルミニウム酸リチウムからなる群から選択される化合物を主成分として含むことが好ましい。このようなリチウム複酸化物を含むことで、活物質層2は、その層中において電子の受け渡しを行い、活物質層2と固体電解質層3との間でリチウムイオンの受け渡しを行い、活物質としての機能を発揮する。これにより、活物質層2を、高い電子伝導性と、小さい充放電時体積変化率との双方の特性を併せ持つものとすることができる。その結果、リチウム二次電池100の高容量化および長寿命化が図られる。
【0036】
また、これらのリチウム複酸化物の結晶内の一部原子が他の遷移金属、典型金属、アルカリ金属、アルカリ希土類、ランタノイド、カルコゲナイド、ハロゲン等で置換された固溶体もリチウム複酸化物に含むものとし、これら固溶体も正極活物質として用いることができる。
【0037】
また、集電体1を負極とする場合の活物質層2の形成材料には、例えば、負極活物質として、LiTi12、LiTi等のリチウム複酸化物や、Si、SiO、Sn等のリチウムを吸蔵できる材料を用いることができる。
【0038】
活物質層2の平均膜厚は、複酸化物成形体5における表面積によっても異なるが、例えば、300nm以上10μm以下が好ましく、500nm以上5μm以下がより好ましい。このような平均膜厚を有することにより、電池反応に寄与する活物質層2として十分量の容積を確保することが可能となる。その結果、電極複合体10を用いたリチウム二次電池を高容量にしやすくなる。
【0039】
固体電解質層3は、リチウムイオン伝導性を有する形成材料含んで構成されている。固体電解質層3と活物質層2とは接しており、固体電解質層3は、複酸化物成形体5に形成されている空隙内にも存在する。複合体4は、電極20に接する他面42側では、活物質層2および複酸化物成形体5が露出することなく、固体電解質層3が単独で露出するように設けられている。これにより、集電体1と電極20との短絡を防止することができる。
【0040】
固体電解質の形成材料としては、特に限定されず、Li6.75LaZr1.75Nb0.2512、SiO−SiO−P−LiO、SiO−P−LiCl、LiO−LiCl−B、Li3.40.6Si0.4、Li14ZnGe16、Li3.60.4Ge0.6、Li1.3Ti1.7Al0.3(PO、Li2.88PO3.730.14、LiNbO、Li0.35La0.55TiO、LiS−SiS、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−P、LiN、LiI、LiI−CaI、LiI−CaO、LiAlCl、LiAlF、LiI−Al、LiF−Al、LiBr−Al、LiO−TiO、La−LiO−TiO、LiNI、LiN−LiI−LiOH、LiN−LiCl、LiNBr、LiSO、LiSiO、LiPO−LiSiO、LiGeO−LiVO、LiSiO−LiVO、LiGeO−ZnGeO、LiSiO−LiMoO、LiSiO−LiZrO、Li2+x1−x、LiBH、Li7−xPS6−xCl、Li10GeP12等の酸化物、硫化物、ハロゲン化物、窒化物、水酸化物が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの部分置換体の結晶質、非晶質(アモルファス)および部分結晶化ガラスの何れをも用いることができる。さらに、これらの固体電解質中にAl、SiO、ZrO等の絶縁物の微粒子が埋入されることで複合化された複合物を固体電解質の形成材料として用いることもできる。
【0041】
また、固体電解質としては、ガーネット型結晶構造またはガーネット型類似結晶構造を有するものであることが好ましい。ガーネット型結晶構造またはガーネット型類似結晶構造を有する固体電解質は、イオン伝導性が高く電気化学的に安定であることから固体電解質として好ましく用いられる。
【0042】
また、ガーネット型結晶構造またはガーネット型類似結晶構造は、結晶構造として正方晶を有する物質との間において、リチウムイオンの受け渡しを円滑に行うことができるという特徴がある。
【0043】
ガーネット型結晶構造またはガーネット型類似結晶構造を容易に有するものとすることができるものとしては、具体例として、一般式Li12で表されるものがある。これにより、固体電解質を、ガーネット型結晶構造またはガーネット型類似結晶構造を容易に有するものとすることができる。
【0044】
なお、Mとしては、ガーネット結晶を形成し得る任意の元素が選択されるが、中でも、イオン伝導率が高い結晶を形成するために、特に、Zr、Nb、Hf、Ta、Sn、W、SbおよびBiのうちの少なくとも1種を用いることが好ましい。また、Mとしては、Mとともにガーネット結晶を形成し得る、任意の元素が選択されるが、中でも、イオン伝導率が高い結晶を形成するために、特に、ランタノイド元素が好ましく、Laがより好ましく選択される。
【0045】
なお、これらの組成物の一部原子が他の遷移金属、典型金属、アルカリ金属、アルカリ希土類、ランタノイド、カルコゲナイド、ハロゲン等で置換された固溶体も、固体電解質として用いることができる。
【0046】
固体電解質層3のイオン伝導率は、1×10−5S/cm以上であることが好ましい。固体電解質層3がこのようなイオン伝導率を有することにより、活物質層2の表面から離れた位置の固体電解質層3に含まれるイオンも、活物質層2の表面に達し、活物質層2における電池反応に寄与することが可能となる。そのため、活物質層2における活物質の利用率が向上し、容量を大きくすることができる。
【0047】
なお、「固体電解質層3のイオン伝導率」とは、固体電解質層3を構成する上述の無機電解質自身の伝導率である「バルク伝導率」と、無機電解質が結晶質である場合における結晶の粒子間の伝導率である「粒界イオン伝導率」と、の総和である「総イオン伝導率」のことを言う。
【0048】
なお、固体電解質層3のイオン伝導率は、例えば、固体電解質粉末を624MPaで錠剤型によりプレス成型したものを大気雰囲気下700℃で8時間焼結し、スパッタリングにより直径0.5cm、厚み100nmのプラチナ電極をプレス成型体両面に形成して交流インピーダンス法を実施することにより測定することができる。測定装置には、例えば、インピーダンスアナライザ(ソーラトロン社製、型番SI1260)を用いる。
【0049】
次に、複酸化物成形体5について、説明する。
複酸化物成形体5は、多孔質の複酸化物粒子51が複数個、3次元的に連結して形成された成形体であり、複数の複酸化物粒子51が連結されることで形成された複数の細孔を有する。この複数の細孔は、複酸化物成形体5の内部で互いに網目状に連通した連通孔を形成している。すなわち、複酸化物成形体5は、連通孔からなる空隙を備える多孔質体である。
【0050】
複酸化物粒子51は粒子状であり、下記一般式(1)で表わされる金属複酸化物およびその誘導体の少なくとも一方を含む。
この化合物は、優れた電子の伝導性を有している。
【0051】
LnLi0.50.5 ・・・ (1)
[式中、Lnは、ランタノイド、Mは、遷移金属を表す。]
【0052】
このような上記一般式(1)で表わされる金属複酸化物およびその誘導体の少なくとも一方を含む化合物で複酸化物粒子51が構成されることで、複酸化物粒子51は、複数の複酸化物粒子51同士で電子の受け渡しを行い、複酸化物成形体5としての機能を発揮する。
【0053】
複酸化物粒子51の平均粒径は、300nm以上5μm以下が好ましく、450nm以上3μm以下がより好ましく、500nm以上1μm以下がさらに好ましい。
【0054】
リチウム二次電池100としてより高い性能を求めるためには、複酸化物成形体5が有する空隙内により多くの固体電解質層3が存在することが必要である。複酸化物粒子51の平均粒径が上記下限値未満であると、空隙を構成する細孔の半径が数十nmの微小なものになり易く、活物質層2および固体電解質層3を形成するための材料を浸入させることが困難となる場合がある。その結果、細孔の内部を活物質層2および固体電解質層3で満たすことが難しくなり、高容量のリチウム二次電池の形成が難しくなる。
【0055】
複酸化物粒子51の平均粒径が前記上限値を超えると、空隙を構成する細孔の半径はより大きくなるものの、形成される複酸化物成形体5の単位質量当たりの表面積である比表面積がより小さくなお、このため、活物質層2を介した複酸化物成形体5と固体電解質層3との接触面積がより小さくなり、リチウム二次電池としての容量は、より少なくなることになる。
【0056】
複酸化物粒子51が3次元的に複数連結して形成された多孔質体からなる複酸化物成形体5は、その空隙率が10%以上50%以下であることが好ましく、30%以上50%以下であることがより好ましい。複酸化物粒子51が上記の範囲の平均粒径であることで、複酸化物成形体の空隙率を上記のように設定することができる。これにより、電極複合体10を用いたリチウム二次電池の高容量化を図ることができる。
【0057】
なお、複酸化物粒子51の平均粒径は、例えば、複酸化物粒子51をn−オクタノールに0.1質量%〜10質量%の範囲の濃度となるように分散させた後、光散乱式粒度分布測定装置(日機装社製、ナノトラックUPA−EX250)を用いて、メジアン径を求めることにより測定することができる。
【0058】
空隙率は、例えば、(1)複酸化物成形体5の外形寸法から得られる、細孔を含めた複酸化物成形体5の体積(見かけ体積)と、(2)複酸化物成形体5の質量と、(3)複酸化物成形体5を構成する活物質の密度とから下記の式(I)に基づいて測定することができる。
【0059】
【数1】
【0060】
活物質層2が複酸化物成形体5を覆っていることで、複酸化物成形体5のリチウムイオン伝導率および電子伝導率がリチウム二次電池の高容量化および高出力化に寄与することになる。
【0061】
複酸化物成形体5は、複合体4において、複合体4の厚さ方向に対して、電子を伝導するパスとして機能して、集電体1に円滑に電子を供給することができる。そのため、複合体4における内部抵抗が低くなる。また、このように複酸化物成形体5を、電子を伝導するパスとしての機能を発揮させることができるため、活物質層2に用いる電極活物質の種類の選択の幅が広がる。また、複酸化物成形体5が、一面41において複合体4から露出して集電体1に接触することから、集電体1に対して、より円滑に電子を伝導することができる。
【0062】
リチウム二次電池が複酸化物成形体5を備えることで、活物質層2だけのときよりも電子の伝導性がより高くなり電位降下によるクーロン効率の低下が緩和される。これにより、リチウム二次電池100の出力および容量密度の向上を図ることができる。その結果、リチウム二次電池100は、長期に亘って安定的に、高出力かつ高容量を維持するものとなる。
【0063】
また、前述の通り、複酸化物成形体5は、上記一般式(1)で表わされる金属複酸化物およびその誘導体の少なくとも一方を含むものである。しかしながら、正方晶を形成する誘導体であれば、かかる誘導体を含む複酸化物成形体5も、上記一般式(1)で表わされる金属複酸化物を含む複酸化物成形体5と同様に優れた電子の伝導性を有する。すなわち、正方晶を形成する誘導体を含む複酸化物成形体5を活物質層2に接触して形成することで、前述した効果を得ることができる。
【0064】
さらに、上記一般式(1)で表わされる金属複酸化物およびその誘導体に含まれるMは、活物質層2に含まれる遷移金属と同一のものであることが好ましい。これにより、上記一般式(1)で表わされる金属複酸化物およびその誘導体の少なくとも一方を含む複酸化物成形体5を、活物質層2に対して優れた密着性を有するものとすることができる。その結果、かかる観点からも、複酸化物成形体5と活物質層2との間における電子の受け渡しを、より円滑に行うことができるようになる。
【0065】
また、上記一般式(1)中、Lnは、ランタノイドを表すが、中でも、La、PrおよびNdのうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0066】
さらに、上記一般式(1)中、Mは、遷移金属を表すが、中でも、Co、Ni、Mn、FeおよびCuのうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0067】
ランタノイドおよび遷移金属として、これらのものを選択することにより、複酸化物成形体5を、電子の伝導性により優れたものとすることができる。
【0068】
なお、上記一般式(1)で表わされる結晶が正方晶を形成する金属複酸化物の誘導体である例としては、LaLi0.5Co0.5、LaLi0.5Ni0.5、LaLi0.5Cu0.5、La1.5Sr0.5Li0.5Co0.5、NdLi0.5Ni0.5等が挙げられる。
【0069】
複酸化物成形体の電子伝導率が活物質層2の電子伝導率より高ければ、複酸化物成形体5を備えることで、複合体4における内部抵抗を確実に低くすることができる。
【0070】
このためには、複酸化物成形体5の電子伝導率は、1.2×10−5S/cm以上であることが好ましい。
【0071】
複合体4の一面41は、固体電解質層3から活物質層2および複酸化物成形体5が露出している。活物質層2および複酸化物成形体5を露出させるため、一面41に対し研磨工程が行われる場合がある。研磨加工を施した場合、一面41には、研磨加工の痕跡である擦過痕(研磨痕)が残されている。
【0072】
また、本実施形態の電極複合体10は、複酸化物成形体5を成形する際に、複酸化物粒子同士をつなぎ合わせるバインダー等の有機物を用いることなく成形することができ、この場合には、ほぼ無機物のみで構成されている。具体的には、本実施形態の電極複合体10においては、複合体4(活物質層2、固体電解質層3および複酸化物成形体5)を400℃で30分加熱した時の質量減少率が、5質量%以下となっている。質量減少率は、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、質量減少が観測されない、または誤差範囲であることが特に好ましい。複合体4がこのような質量減少率を有するため、複合体4には、所定の加熱条件で蒸発する溶媒や吸着水等の物質や、所定の加熱条件で燃焼または酸化されて気化する有機物が、構成全体に対して5質量%以下しか含まれないこととなる。
【0073】
なお、複合体4の質量減少率は、示差熱−熱重量同時測定装置(TG−DTA)を用い、複合体4を所定の加熱条件で加熱することで、所定の加熱条件による加熱後の複合体4の質量を測定し、加熱前の質量と加熱後の質量との比から算出することができる。
【0074】
また、本実施形態の電極複合体10においては、複合体4が上述のような構成であるため、複合体4に含まれるバインダー等の添加量が抑制されており、バインダー等を用いる場合と比べて、電極複合体10の単位体積あたりの容量密度が向上する。
【0075】
これらのことから、以下で説明する本実施形態の製造方法で製造された、上述した構成をなす電極複合体10は、電極複合体10を用いたリチウム二次電池の容量を向上させ、かつ高出力とすることができる。
【0076】
また、複合体4は、一面41で、活物質層2と固体電解質層3と複酸化物成形体5とが露出し、他面42で、固体電解質層3が単独で露出し、この状態で、一面41に集電体1が接合され、他面42に電極20が接合されている。かかる構成とすることで、リチウム二次電池100において、電極20と集電体1とが活物質層2および複酸化物成形体5を介して接続されるのを防止すること、すなわち短絡を防止することができる。すなわち、固体電解質層3は、リチウム二次電池100における短絡の発生を防止する短絡防止層としての機能をも発揮する。
【0077】
電極20は、複合体4の集電体1とは反対側の他面42に、活物質層2および複酸化物成形体5に接することなく固体電解質層3に接して設けられている。
【0078】
電極20は、活物質層2が正極活物質で構成される場合、負極として機能する。また、活物質層2が負極活物質で構成される場合、正極として機能する。
【0079】
電極20の形成材料(構成材料)としては、電極20が負極の場合、例えば、リチウム(Li)が挙げられ、電極が正極の場合、例えば、アルミニウム(Al)が挙げられる。
【0080】
電極20の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、20μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0081】
また、電極20が負極の場合、固体電解質層3と電極20との間には、負極活物質を主材料として含む負極層が介挿されていてもよい。
【0082】
負極活物質としては、例えば、Nb、V、TiO、In、ZnO、SnO、NiO、ITO(Snが添加された酸化インジウム)、AZO(アルミニウムが添加された酸化亜鉛)、GZO(ガリウムが添加された酸化亜鉛)、ATO(アンチモンが添加された酸化スズ)、FTO(フッ素が添加された酸化スズ)、TiOのアナターゼ相、LiTi12、LiTi等のリチウム複酸化物、Si、Sn、Si−Mn、Si−Co、Si−Ni等の金属および合金、炭素材料、炭素材料の層間にリチウムイオンが挿入された物質等が挙げられる。
【0083】
次に、電極複合体10およびリチウム二次電池100の製造方法について説明する。
まず、図3図6を用いて、電極複合体10の製造方法について説明する。
【0084】
まず、粒子状をなす複数の複酸化物粒子51を加熱することで、これらを3次元的に連結させて、多孔質体からなる複酸化物成形体5を得る(第1の工程)。
【0085】
複酸化物成形体5は、例えば、図3に示すように、成形型Fを用いて複数の複酸化物粒子51を圧縮して圧縮成形物を成形し(図3(a)参照)、その後、得られた圧縮成形物を熱処理(第1の加熱処理)することにより複数の複酸化物粒子51同士が3次元的に連結することで形成される(図3(b)参照)。
【0086】
この第1の加熱処理は、600℃以上900℃以下の温度条件で行うことが好ましく、650℃以上850℃以下の温度条件で行うことがより好ましい。これにより、複酸化物粒子51同士を焼結させて一体化された複酸化物成形体5を確実に得ることができる。
【0087】
また、第1の加熱処理は、5分以上36時間以下で行うことが好ましく、4時間以上14時間以下で行うことがより好ましい。
【0088】
上記のような熱処理を施すことで、複酸化物粒子51内の粒界の成長や、複酸化物粒子51間の焼結が進行するため、得られる複酸化物成形体5が形状を保持しやすくなり、複酸化物成形体5のバインダーの添加量を低減することができる。また、焼結により複酸化物粒子51間に結合が形成され、複酸化物粒子51間の電子の移動経路を形成することができる。
【0089】
また、複酸化物粒子51の形成に用いる形成材料として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリポリプロピレンカーボネート(PPC)などの有機高分子化合物をバインダーとして添加してもよい。これらのバインダーは、本工程の熱処理において、燃焼または酸化され、量が低減する。
【0090】
また、複酸化物粒子51の形成に用いる形成材料には、圧粉成形時に細孔の鋳型として高分子や炭素粉末を形成材料とする粒子状の造孔材を添加することが好ましい。これらの造孔材が混入することにより、活物質成形体の空隙率を制御することが容易となる。このような造孔材は、熱処理時に燃焼や酸化により分解除去され、得られる活物質成形体では量が低減する。このような造孔材の平均粒径は、好ましくは0.5μm〜10μmである。
【0091】
さらに、造孔材は、潮解性を有する物質を形成材料とする粒子(第1粒子)を含むことが好ましい。第1粒子が潮解することにより第1粒子の周囲に生じる水が、粒子状をなすリチウム複酸化物粒子をつなぎ合わせるバインダーとして機能するため、粒子状の複酸化物粒子を圧縮成形して熱処理するまでの間、形状を維持することが可能となる。そのため、他のバインダーを添加することなく、またはバインダーの添加量を低減させながら複酸化物成形体を得ることができ、容易に高容量な電極複合体とすることができる。潮解性を有する粒子としては、ポリアクリル酸を挙げることができる。
【0092】
また、造孔材は、潮解性を有さない物質を形成材料とする粒子(第2粒子)をさらに含むことが好ましい。第1粒子の周囲には水が生じるが、これが活物質成形体の空隙率が所望の設定値から乖離することの原因となる場合がある。このため、第2粒子を同時に含むことで、第1粒子のバインダーとしての機能を維持したまま空隙率の乖離を抑制することが可能となる。
【0093】
また、上記一般式(1)で表わされる金属複酸化物およびその誘導体の前駆体としては、例えば、以下の(A1)、(B1)、(C1)が挙げられる。
【0094】
(A1)上記一般式(1)で表わされる金属複酸化物およびその誘導体が有する金属原子を、その組成式に従った割合で含み、酸化により上記一般式(1)で表わされる金属複酸化物およびその誘導体となる塩を有する組成物。
(B1)上記一般式(1)で表わされる金属複酸化物およびその誘導体が有する金属原子を、その組成式に従った割合で含む金属アルコキシドを有する組成物。
(C1)上記一般式(1)で表わされる金属複酸化物およびその誘導体の微粒子、または上記一般式(1)で表わされる金属複酸化物およびその誘導体が有する金属原子を、その組成式に従った割合で含む微粒子ゾルを溶媒、または(A1)もしくは(B1)に分散させた分散液。
【0095】
なお、(A1)に含まれる塩には、金属錯体を含む。また、(B1)は、いわゆるゾルゲル法を用いて上記一般式(1)で表わされる金属複酸化物およびその誘導体を形成する場合の前駆体である。
【0096】
前駆体の焼成は、例えば、大気雰囲気下で行う。具体的には、焼成温度は、300℃以上700℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。これにより、焼成により前駆体から上記一般式(1)で表わされる金属複酸化物およびその誘導体が生成される。
【0097】
このような温度範囲で焼成することにより、上記一般式(1)で表わされる金属複酸化物およびその誘導体の結晶性が向上し、複酸化物の電子伝導性を向上させることができる。
【0098】
図4に示すように、複酸化物成形体5の連通孔の内部を含む、複酸化物成形体5の表面上に、固体電解質の前駆体を含む液状体3Xを塗布し(図4(a))、その後、焼成(加熱)することで、前駆体を無機固体電解質として粒状体31からなる固体電解質層3と、この固体電解質層3と複酸化物成形体5との間で、複酸化物粒子51の表面を覆う活物質層2を形成する(図4(b);第2の工程)。
【0099】
これにより、複酸化物成形体5の空隙(連通孔)内において露出する複酸化物粒子51の表面に、活物質層2と固体電解質層3とがこの順で積層された状態で形成され、その結果、活物質層2と固体電解質層3と複酸化物成形体5とを備える複合体4が形成される。
【0100】
液状体3Xは、前駆体の他に、前駆体が可溶な溶媒を含んでもよい。液状体3Xが溶媒を含む場合には、液状体3Xの塗布後、焼成の前に、適宜溶媒を除去するとよい。溶媒の除去は、加熱、減圧、送風など通常知られた方法の1種、または2種以上を組み合わせた方法を採用することができる。
【0101】
ここで、流動性を有する液状体3Xを塗布して粒状体31からなる固体電解質層3と活物質層2とを形成することから、微細な複酸化物成形体5の細孔の内部表面にも良好に固体電解質および活物質を形成することが可能となる。そのため、活物質層2と固体電解質層3との接触面積を拡大しやすく、活物質層2と固体電解質層3との界面の電流密度が低減され、その結果、大きな出力を容易に得ることができる。
【0102】
液状体3Xの塗布は、複酸化物成形体5の細孔の内部にまで液状体3Xが浸透する方法であれば、種々の方法により行うことができる。例えば、複酸化物成形体5を載置しておいたところに液状体3Xを滴下することで行ってもよく、液状体3Xを貯留しているところに複酸化物成形体5を浸漬させることで行ってもよく、液状体3Xを貯留しているところに複酸化物成形体5の端部を接触させ、毛管現象を利用して細孔内に含浸させることで行ってもよい。図4(a)では、上記のうち、ディスペンサーDを用いて液状体3Xを滴下する方法を示している。
【0103】
また、固体電解質の前駆体としては、例えば、以下の(A2)、(B2)、(C2)が挙げられる。
【0104】
(A2)無機固体電解質が有する金属原子を無機固体電解質の組成式に従った割合で含み、酸化により無機固体電解質となる塩を有する組成物。
(B2)無機固体電解質が有する金属原子を無機固体電解質の組成式に従った割合で含む金属アルコキシドを有する組成物。
(C2)無機固体電解質微粒子、または無機固体電解質が有する金属原子を無機固体電解質の組成式に従った割合で含む微粒子ゾルを溶媒、または(A2)もしくは(B2)に分散させた分散液。
【0105】
なお、(A2)に含まれる塩には、金属錯体を含む。また、(B2)は、いわゆるゾルゲル法を用いて無機固体電解質を形成する場合の前駆体である。
【0106】
前駆体の焼成は、通常、大気雰囲気下で行う。具体的には、焼成温度は、300℃以上700℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。これにより、焼成により前駆体から無機固体電解質が生成され、固体電解質層3が形成される。
【0107】
このような焼成を行うことにより、複酸化物粒子51の表面と固体電解質の前駆体との界面において、それぞれを構成する元素の相互拡散による固相反応が生じ、複酸化物粒子51に含まれるLaが引き抜かれることで、複酸化物粒子51の表面に活物質層2が形成される。そして、固体電解質の前駆体から粒状体31が生成されることで、活物質層2上に、この粒状体31からなる固体電解質層3が形成される。
【0108】
なお、複酸化物粒子51から、この複酸化物粒子51に含まれるLaを引き抜ぬくという観点からは、固体電解質の前駆体を、Lnを含有するものとし、この固体電解質の前駆体のLnは、複酸化物粒子51に含まれるLnと同一のものであることが好ましい。これにより、固体電解質の前駆体を用いて固体電解質層3を形成する際に、複酸化物粒子51に含まれるLaを確実に引き抜ぬくことができるため、複酸化物粒子51と固体電解質層3との間に確実に活物質層2を形成することができるとともに、活物質層2および固体電解質層3を複酸化物成形体5に対して優れた密着性を有するものとすることができる。なお、このような固体電解質層3の構成材料としては、例えば、LiLaZr12、Li6.75LaZr1.75Nb0.2512等が挙げられる。
【0109】
また、焼成は、1度の熱処理で行うこととしてもよく、前駆体を前記多孔質体の表面に被着させる第1の熱処理と、第1の熱処理の処理温度以上700℃以下の温度条件で加熱する第2の熱処理と、に分けて行うこととしてもよい。このような段階的な熱処理で焼成を行うことにより、固体電解質層3を所望の位置に容易に形成することができる。
【0110】
次いで、複合体4の一面41を研削・研磨することで、この一面41から、固体電解質層3と複酸化物成形体5との双方を露出させる(図5(a)参照)。
【0111】
さらに、この際、図5(a)のように、活物質層2も露出していることが好ましい。
また、この場合、一面41には、研削・研磨加工の痕跡である擦過痕(研削・研磨痕)が残される。
【0112】
なお、複合体4を形成した際に、一面41から活物質層2と複酸化物成形体5との双方が露出することがある。この場合は、複合体4の一面41における研削・研磨を省略することもできる。
【0113】
次いで、図5(b)に示すように、複合体4の一面41において集電体1を形成する(第3の工程)。
【0114】
これにより、活物質層2と固体電解質層3と複酸化物成形体5と集電体1とを備える電極複合体(本発明の電極複合体)10が形成される。
【0115】
集電体1の接合は、別体として形成した集電体を複合体4の一面41に接合することによって行ってもよく、複合体4の一面41に上述した集電体1を成膜形成することで行ってもよい。
【0116】
なお、集電体1の成膜方法は、各種の物理気相成長法(PVD法)および化学気相成長法(CVD法)を用いることができる。
上記の製造方法で電極複合体10を形成することができる。
【0117】
次いで、図5(c)に示すように、複合体4の他面42において電極20を接合する。電極20の接合は、別体として形成した電極を複合体4の他面42に接合することによって行ってもよく、複合体4の他面42に上述した電極20の形成材料を成膜することで行ってもよい。
【0118】
なお、電極20の成膜方法は、集電体1の成膜方法であげたのと同様の方法を用いることができる。
これにより、リチウム二次電池100が製造される。
【0119】
なお、複酸化物成形体5は、上述したように、複酸化物粒子51を圧縮して成形した後、加熱することで得る方法の他、複酸化物粒子51を溶媒に分散させたスラリーを加熱する方法がある。
【0120】
複酸化物粒子51を含有するスラリーを調製する調製工程と、スラリーを加熱して複酸化物成形体5を得る乾燥工程とを有する。
【0121】
次に、これらの工程について説明する。
まず、溶媒中にバインダーを溶解させ、そこに複酸化物粒子51を分散させスラリー26を調製する。なお、スラリー26中に、オレイルアミンのような分散剤が含まれていてもよい。
【0122】
その後、凹部F25を備える底部F21と蓋部F22とを有する成形型F2を用意し、底部F21の凹部F25に、スラリー26を滴下した後、底部F21を蓋部F22で蓋をする(図6参照。)。
【0123】
また、スラリー26中における複酸化物粒子51の含有量は、10wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、30wt%以上50wt%以下であるのがより好ましい。これにより、固体電解質の充填率の高い複酸化物成形体5が得られることとなる。
【0124】
さらに、バインダーとしては、特に限定されないが、ポリプロピレンカーボネート(PPC)のようなポリカーボネートの他、セルロース系バインダー、アクリル系バインダー、ポリビニルアルコール系バインダー、ポリビニルブチラール系バインダー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0125】
また、溶媒としては、特に限定されないが、例えば、非プロトン性の溶媒であることが好ましい。これにより、溶媒との接触による複酸化物粒子51の劣化を低減することができる。
【0126】
このような非プロトン性溶媒としては、具体的には、例えば、ブタノール、エタノール、プロパノール、メチルイソブチルケトン、1,4−ジオキサン、トルエン、キシレン等が挙げられ、この単溶媒または混合溶媒を溶媒として使用することができる。
【0127】
次に、複酸化物粒子51を含有するスラリー26を加熱することにより、スラリー26を乾燥させるとともに、スラリー26中に含まれる複酸化物粒子51同士を焼結させることで、複酸化物成形体5を得る。
【0128】
なお、複酸化物粒子51を含有するスラリー26を加熱する方法としては、特に限定されないが、例えば、スラリー26をスプレードライヤー等により噴霧乾燥することで加熱する方法等が挙げられる。
【0129】
また、スラリー26を加熱する際の加熱条件は、前述した圧縮成形物を熱処理する際の条件と同様に設定される。
【0130】
さらに、このスラリー26の加熱は、段階的に温度条件が上昇する多段階で行うことが好ましく、具体的には、室温で乾燥させた後、室温から300℃まで2時間、350℃まで0.5時間、1000℃まで2時間を掛けて昇温させ、その後、凹部F25を蓋部F22で蓋をして1000℃、8時間で焼成することが好ましい。このような条件で昇温することで、溶媒中に含まれるバインダーを確実に焼き飛ばすことができる。
以上のような工程を経ることによっても、複酸化物成形体5を得ることができる。
【0131】
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態で示したものとは異なる電極複合体について示すものである。尚、本実施形態を含め以下の実施形態もしくは実施例において、第1実施形態と同様の構成要素に関しては同じ番号を付与し、その説明を省略する場合がある。
【0132】
図7に、本実施形態における電極複合体10の縦断面図を示す。
電極複合体10は、第1実施形態における活物質層2とは異なるタイプの活物質層2Aを有する。
【0133】
活物質層2Aは、複酸化物粒子51のほぼ全面を覆うように形成されており、複酸化物成形体5は、複酸化物粒子51のほぼ全面が活物質層2Aで覆われた状態で、複数連結して形成されている。
【0134】
従って、第1実施形態における複酸化物成形体5は、複酸化物粒子51同士は直に接続されていたが、本実施形態における複酸化物成形体5では、複酸化物粒子51同士が活物質層2Aを介して接続されている。本実施形態における電極複合体10は、他の部分に関しては、第1実施形態における電極複合体10とは同様の構成を有する。
【0135】
本実施形態では、複酸化物成形体5の連結孔内部や複酸化物成形体5の周囲には、活物質層2Aを介して固体電解質層3が形成されている。活物質層2Aを有する複合体4Aの一面41は集電体1が形成されている。そして、図7に示すように、複合体4Aの他面42に電極20を形成することで、リチウム二次電池100Aが形成される。
【0136】
(第3実施形態)
図8は、本実施形態に係る電極複合体10を適用したリチウム二次電池100Cの縦断面図を示した図である。
【0137】
電極複合体10は、活物質層2、固体電解質層3、充填層30および複酸化物成形体5を有する複合体4Cと、集電体1と有する。複合体4Cは、充填層30を含むこと以外は複合体4と同じ構成要素を有する。
【0138】
充填層(第2の固体電解質層)30は、リチウムイオンを伝導し、室温で非晶質(ガラス質、アモルファス)である固体電解質で形成されている。充填層30は、例えば、リチウムイオン伝導性を備える、C、SiまたはBを含むリチウム酸化物により形成される。具体的には、充填層30は、LiCO、LiSiO4、Li2+x1−x(0.1<x<0.4)およびLiBOの少なくとも一つもしくは複数を含んでもよい。
【0139】
充填層30は、固体電解質層3だけでは空隙が形成されてしまう場合に当該空隙の容積を少なくするために用いられる。このため、充填層30の前駆体の加熱による体積の収縮が、固体電解質層3の前駆体の加熱による体積の収縮よりも小さいことが好ましい。
【0140】
このため、充填層30は、固体電解質層3の形成後に、充填層30の流動性を備える前駆体溶液、すなわち、室温で非晶質である固体電解質の前駆体溶液を、残存する空隙に、含浸させた後、加熱する方法を用いて形成することができる。
【0141】
また、充填層30は、固体電解質層3と同程度またはそれより低温で形成できるものであることが好ましい。これは、固体電解質層3と充填層30との相互拡散を抑制するためである。例えば固体電解質層3としてLiLaZr12を、充填層30としてLiBOを用いた場合を考える。この場合、固体電解質層3を形成する際の焼成温度は700℃程度であるが、充填層30を形成する際の形成温度が900℃を超えると、固体電解質層3と充填層30とで相互拡散が発生してしまうおそれがある。また、充填層30の前駆体としては固体電解質層3の前駆体と同様に(A2)〜(C2)いずれかのようにして用いればよい。これを溶媒(例えばアルコール系の化合物)で希釈して前駆体溶液を得る。この前駆体溶液を、残存する空隙に含浸させる。前駆体溶液を含浸させる方法は、固体電解質層3について説明したものと同様である。
【0142】
また、空隙に充填された前駆体溶液を加熱する加熱温度としては、例えば、300℃以上450℃以下に設定される。
【0143】
複合体4Cを有する電極複合体10を用いることで、リチウム二次電池100C特性の向上を図ることができる。
【0144】
(第4実施形態)
図9に、本実施形態に係るリチウム二次電池100Dの縦断面図を示す。リチウム二次電池100Dは構成要素として、複合体4Dを有する電極複合材、電極20、および電極複合体10と電極20との間に電解液含浸層35を含む。
【0145】
複合体4Dは、固体電解質層3の形成後に存在した空隙に電解液36を含浸させたものである。これにより、複酸化物成形体5が固体電解質層3に接していない部分は、電解液36が複酸化物成形体5に接することになる。
【0146】
リチウム二次電池100Dにおいて、複合体4Dは、空隙を備える多孔質体で構成される複酸化物成形体5と、複酸化物成形体5の空隙内で露出する複酸化物粒子51の表面を覆う活物質層2と、複酸化物成形体5の空隙内を含む複酸化物成形体5の表面に活物質層2を介して設けられた固体電解質層3と、固体電解質層3および活物質層2の形成により残存する空隙に充填された電解液36と、固体電解質層3と電極20との間にこれらの双方と接合する電解液含浸層35とを有している。換言すれば、複合体4Dは、前記第1実施形態の複合体4Dに残存している空隙に充填して設けられた電解液36と、複合体4Dと電極20との間に設けられた電解液含浸層35とを、さらに、有している。
【0147】
この複合体4Dでは、複合体4Dと電極20との間に電解液含浸層35が設けられており、この電解液含浸層35から残存する空隙に電解液36が供給されることで充填される。これにより、空隙において、活物質層2と固体電解質層3との接触面積の低下を招き、活物質層2と固体電解質層3との間での抵抗が増大することに起因して、活物質層2と固体電解質層3との間におけるイオン伝導率が低下するのを確実に防止することができる。
【0148】
また、通常、リチウム二次電池において充放電サイクルを繰り返すと、活物質層2または固体電解質層3の体積が変動する場合がある。これに対して、本実施形態では、例えば、体積が収縮して空隙が広がったとしても、電解液含浸層35からさらに電解液が浸み出し、空隙が電解液36で充填される。一方、体積が拡大して空隙が狭くなったとしても、空隙の電解液36が電解液含浸層35に浸み込まれる。このように、複合体4Dの空隙は体積変動を吸収する緩衝空間となり、電荷の伝導経路の確保につながる。すなわち、高出力のリチウム二次電池を得ることができる。
【0149】
なお、電解液36(電解液含浸層中のイオン液体)は少量かつ不揮発性であるため、液漏れおよび燃焼の問題はない。
【0150】
電解液含浸層35は、ポリマーゲル電解質の供給元として機能する膜である。この電解液含浸層35は、リチウムイオンを伝導する電解液を含浸させたフィルムである。すなわち、電解液含浸層35は、支持体と、ポリマーゲル電解質(電解液)とを含む。
【0151】
支持体は、電解液含浸層(PEGフィルム)35の構造を物理的に支えるためのものである。支持体は、不純物を析出せず、ポリマーゲル電解質等の他の材料と反応せず、イオン液体+Li塩+モノマーとの濡れ性が高いものが好ましい。不純物を析出したり化学反応を起こしてしまうと特性が変化してしまうおそれがある。また、濡れ性が悪いと支持体に高分子が均一に形成できないおそれがある。なお、支持体を用いずにポリマーゲル電解質中のポリマー成分の比率を上げて強度を改善することもできるが、ポリマー成分の比率を上げるとLiの伝導率の低下を招くので支持体を用いることが好ましい。支持体としては、例えば、長繊維セルロースや、疎水性のPVDF(ポリフッ化ビニリデン)が用いられる。
【0152】
ポリマーゲル電解質は、Liに対して化学的に安定で、ゲル化して電解液を抱えることができる特性を有することが要求される。通常のPEG(ポリエチレングリコール)系フ
ィルムは、Liに対して化学的に安定で電池動作の確認はできる。しかし、PEGフィルムではイオン伝導度が低く、電池としての実用的な出力は得られない。そこで本実施形態では、電解液が揮発しないポリマーゲル電解質を用いている。
【0153】
このような複合体4Dは、例えば、空隙が残存する活物質層2と固体電解質層3と複酸化物成形体5との複合体の一面に、電解液含浸層35を貼り付け、これにより、電解液含浸層35から電解液を空隙に供給させる方法を用いて形成することができる。
【0154】
電解液含浸層35は、例えば、支持体(基材)に電解液およびモノマーを含む前駆体溶液を含浸させ、これを光重合させることにより作製する。電解液は、イオン液体およびリチウム塩を含む。イオン液体としては、例えばP13−TFSI(N−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)が用いられる。リチウム塩としては、Li−TFSI(リチウムN,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)が用いられる。モノマーとしては、例えばポリエチレングリコールジアクリレート(TEGDA)が用いられる。以上の電解液に重合開始剤および炭酸エチレンを混合し、PGE作製溶液を得る。重合開始剤としては、例えばラジカル型光重合開始剤(例えば、BASF社製IRGACURE651、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)を用いる。重合開始剤は、例えば重量比で6:1の混合比率で混合される。炭酸エチレンは、SEI(Solid Electrolyte Interface)形成材料として用いられる。SEIは、Li電極表面を不活性化・安定化させる被膜である。SEIは電解液の還元的分解反応によって生成しており、最初のサイクルにおいて炭酸エチレンの分解反応で電荷が消費されることが確認されている。炭酸エチレンは、混合比率1で混合される。このPGE作製溶液を、支持体に含浸させる。支持体としては、例えば、MILLIPORE社製の疎水性PVDFメンブレンフィルターを用いる。PGE作製溶液を含浸させた支持体に所定の波長帯の光(例えば紫外光)を照射してモノマーを光重合させてポリマー化し、電解液含浸層35を得る。電解液含浸層35に含まれる電解液が、残存する空隙に充填されて電解液36として機能する。
【0155】
この電解液含浸層35に含まれる電解液は、酸化物固体電解質への濡れ性が良好であり、固体電解質層3を伝わって残存する空隙内に浸透し、電解液36が空隙内に充填される。これにより、活物質と電解質との接合がより好ましいものとなり、より特性が向上したリチウム二次電池100Dを得ることができる。
【0156】
以上、本発明に係る電極複合体およびリチウム二次電池の説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において広く適用が可能である。
【0157】
例えば、本発明の電極複合体および電池における各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0158】
また、本発明の電池は、前記各実施形態で説明したリチウム二次電池の他、リチウム一次電池にも適用できる。さらに、ナトリウムイオン電池や、マグネシム電池等にも適用できる。
【実施例】
【0159】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.複合体の製造
[実施例1]
<1>まず、La、LiCOおよびCoをイソプロピルアルコールに懸濁し、自動メノウ鉢で粉砕混合した。この混合物を800℃で大気焼成し、焼成後の凝集塊をメノウ鉢で粉砕してLaLi0.5Co0.5粉末(複酸化物粒子)を得た。次いで、LaLi0.5Co0.5粉末に、ポリプロピレンカーボネート(シグマアルドリッチジャパン社製)5重量部を添加し、メノウ鉢で混合したのち、内径10mmの排気ポート付きペレットダイスに充填して624MPaの圧力で一軸加圧し、離型してプレス成型体を得た。これを800℃の大気下で焼結し、嵩密度63%のLaLi0.5Co0.5からなる多孔性焼結体(複酸化物成形体)を得た。
【0160】
<2>次に、得られた多孔性焼結体に、LiNO、Zr(OCおよびNb(OCを2−ブトキシエタノールに溶解した溶液を浸透させた。そして、乾燥させた後、800℃で大気焼成を行った。
【0161】
これにより、多孔性焼結体の細孔内壁に堆積した固体電解質前駆体とLaLi0.5Co0.5との間で、La引き抜きをはじめとする固相反応を生じ、その結果、LaLi0.5Co0.5を芯材(複酸化物成形体)として、芯材表面に活物質層としてLiCoOを含み、固体電解質層としてLi6.75LaZr1.75Nb0.2512を含むものが、この順に積層された実施例1の複合体を得た。
【0162】
[比較例]
前記工程<2>において、さらに、La(NO・6HOが、添加された溶液を前駆体として用いたこと以外は、前記実施例と同様にして、活物質層の形成が省略された、比較例の複合体を得た。
【0163】
2.複合体の評価
実施例1および比較例それぞれの複合体について、以下に示すような充放電特性の評価を行った。
【0164】
すなわち、充放電特性は、マルチチャネル充放電評価装置(北斗電工社製、HJ1001SD8)を使用して測定した。測定は、電流密度0.1mA/cm、充電上限電圧4.2Vの定電流―定電圧、放電下限電圧3.0Vの定電流駆動の条件で行った。
【0165】
また、実施例1および比較例の複合体に、それぞれ、正極としてアルミニウムを、負極としてリチウムおよび銅を、それぞれ用いた。正極については、研磨面にアルミニウム板を張り付けて電極を形成した。負極については、まず電解質層を形成した。電解質層は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)(綜研化学社製)、LiTFSI(キシダ化学)、エチレンカーボネート(シグマアルドリッチ社製)、ジメチルカーボネート(シグマアルドリッチ社製)からなる液状組成物を塗布し、乾固させて形成した。さらに電解質層から順にリチウム金属箔、銅箔を積層し、これらを圧着して負極を形成した。こうして得られたリチウム二次電池に対し、充放電特性の評価を行った。
【0166】
その結果、各実施例では、比較例と比較して、良好な充放電特性を示した。すなわち、活物質成形体と固体電解質層との間に複酸化物層を形成することで、充放電特性が改善する結果が得られた。
【符号の説明】
【0167】
1……集電体
2、2A、2B……活物質層
3……固体電解質層
3X……液状体
4、4A、4B、4C、4D……複合体
41……一面
42……他面
5……複酸化物成形体
51……複酸化物粒子
10……電極複合体
20……電極
26……スラリー
30……充填層
31……粒状体
35……電解液含浸層
36……電解液
100、100A、100B、100C、100D……リチウム二次電池
D……ディスペンサー
F、F2……成形型
F21……底部
F22……蓋部
F25……凹部
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図9