(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
低沸点成分と、該低沸点成分より沸点が高い高沸点成分とを含んで構成される原料液を、該原料液より該低沸点成分が高濃度の留出流体と、該原料液より該高沸点成分が高濃度の缶出液とに分離する分離装置であって、
前記留出流体を排出する留出流体排出口が一端側に設けられ、前記缶出液を排出する缶出液排出口が他端側に設けられた気液接触流路と、
前記気液接触流路のうち前記留出流体排出口と前記缶出液排出口との間に設けられた原料液導入口を通じて、該気液接触流路に前記原料液を導入する原料液導入部と、
前記原料液導入口から前記缶出液排出口までの間に設けられ、前記気液接触流路中の液体を前記低沸点成分の沸点以上に加熱するリボイラと、
前記原料液導入口から前記留出流体排出口までの間に設けられ、前記気液接触流路中の気体を、前記低沸点成分の沸点未満に冷却するコンデンサと、
を備え、
前記気液接触流路の底面は、前記原料液導入口から前記缶出液排出口に向かって鉛直下方に傾斜しており、
前記気液接触流路における前記リボイラで加熱される加熱流路の前記缶出液排出口側の流路断面積は、前記原料液導入口側の流路断面積より小さいことを特徴とする分離装置。
前記気液接触流路の底面を構成する外壁から該気液接触流路内に立設するとともに、少なくとも前記原料液導入口側から前記缶出液排出口側に延在したリブを1または複数備え、
前記液体は、前記リブによって区画された流路である区画流路を流れることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の分離装置。
【背景技術】
【0002】
従来、アルコール飲料や石油化学製品等の蒸留、アンモニアの除去、二酸化炭素の回収のための装置として、円筒型の塔内に、鉛直方向に所定の間隔で複数の棚を設け、各棚間(段)で気体と液体との接触(気液接触)を段階的に行なわせるようにした棚段塔が開発されている(例えば、特許文献1)。棚段塔では、相対的に低沸点成分が多く含まれる気相が上の段に送られ、相対的に高沸点成分が多く含まれる液相が下の段へ流れ落ちるとともに、各段において気液平衡が成立するように構成されている。
【0003】
このような棚段塔においては、棚の構造上、棚間の距離(段の高さ)を、少なくとも数cm〜数十cm確保する必要があり、分離性能を向上させるために、段数を増加させると、装置自体が鉛直方向に高くなってしまうという課題がある。また、棚段塔は、塔内の構造が複雑で装置自体に多大なコストを要してしまうという課題もある。
【0004】
そこで、水平方向に延在した筺型の流路の底面に、金属で構成された多孔質シートを敷設しておき、流路の中央から多孔質シート内に原料液を導入するとともに、多孔質シートの一方を加熱し、他方を冷却することで、原料液を蒸留する技術が開示されている(例えば、非特許文献1)。かかる技術では、多孔質シートの上方に形成され、原料液が加熱されることで生成された気体が流通する気体層の高さを、数mm程度と、棚段塔よりも1/10程度短くするとともに、多孔質シートの表面で気液接触させることで、気液平衡に到達する時間を大幅に短縮することができ、棚段塔と比較して、装置を小型化したとしても、低沸点成分と高沸点成分の分離性能を維持、または、向上させることが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記非特許文献1の技術では、毛細管現象によってのみ、すなわち、原料液等の液体の表面張力によってのみ、液体が推進するため、液体の移動速度が遅く、棚段塔と比較して処理速度が遅いという課題があった。したがって、装置を小型化しつつ、処理速度を向上させた分離装置の開発が希求されている。
【0008】
そこで、一端から他端に向かって鉛直下方に傾斜した流路の一端側をコンデンサで冷却した冷却流路とするとともに、他端側をリボイラで加熱した加熱流路としておき、冷却流路と加熱流路との間に原料液を導入することで、原料液を蒸留する構成が考えられる。この構成においてリボイラは、加熱流路を構成する部材を加熱することで、加熱流路内を流れる原料液を加熱するため、原料液と部材とが接触する箇所において熱伝達が行われることとなる。
【0009】
しかし、加熱流路においては他端側に向かうに従って気体の生成量が増加するとともに、原料液の残量が減少する。そうすると、加熱流路を構成する部材において原料液と接触しない箇所が生じ、つまり、原料液を加熱しない箇所が生じ、加熱に要するエネルギーに無駄が生じてしまうという課題がある。
【0010】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、原料液の加熱に要するエネルギーの無駄を削減することが可能な分離装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の分離装置は、低沸点成分と、該低沸点成分より沸点が高い高沸点成分とを含んで構成される原料液を、該原料液より該低沸点成分が高濃度の留出流体と、該原料液より該高沸点成分が高濃度の缶出液とに分離する分離装置であって、前記留出流体を排出する留出流体排出口が一端側に設けられ、前記缶出液を排出する缶出液排出口が他端側に設けられた気液接触流路と、前記気液接触流路のうち前記留出流体排出口と前記缶出液排出口との間に設けられた原料液導入口を通じて、該気液接触流路に前記原料液を導入する原料液導入部と、前記原料液導入口から前記缶出液排出口までの間に設けられ、前記気液接触流路中の液体を前記低沸点成分の沸点以上に加熱するリボイラと、前記原料液導入口から前記留出流体排出口までの間に設けられ、前記気液接触流路中の気体を、前記低沸点成分の沸点未満に冷却するコンデンサと、を備え、
前記気液接触流路の底面は、前記原料液導入口から前記缶出液排出口に向かって鉛直下方に傾斜しており、前記気液接触流路における前記リボイラで加熱される加熱流路の前記缶出液排出口側の流路断面積は、前記原料液導入口側の流路断面積より小さいことを特徴とする。
【0012】
また、前記加熱流路の流路断面積は、前記原料液導入口から前記缶出液排出口に向かうに従って漸減しているとしてもよい。
【0013】
また、前記加熱流路の底面から上面までの距離は、前記原料液導入口側より前記缶出液排出口側の方が短いとしてもよい。
【0014】
また、前記気液接触流路の底面を構成する外壁から該気液接触流路内に立設するとともに、少なくとも前記原料液導入口側から前記缶出液排出口側に延在したリブを1または複数備え、前記液体は、前記リブによって区画された流路である区画流路を流れるとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原料液の加熱に要するエネルギーの無駄を削減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(分離装置100)
図1は、分離装置100の概略的な構成を説明するための図である。本実施形態の
図1では、垂直に交わるX軸(水平方向)、Y軸(水平方向)、Z軸(鉛直方向)を図示の通り定義している。また、
図1中、液体の流れを実線の矢印で、信号の流れを破線の矢印で示す。
【0019】
分離装置100は、低沸点成分(例えば、メタノール)と、低沸点成分より沸点が高い高沸点成分(例えば、水)とを含んで構成される原料液を、原料液より低沸点成分が高濃度の留出液(留出液、または、留出ガス)と、原料液より高沸点成分が高濃度の缶出液とに分離する装置である。ここでは、原料液を、留出液と缶出液とに分離する構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の分離装置100は、分離ユニット110と、原料液導入部120と、リボイラ130と、コンデンサ140と、留出液回収部150と、缶出液回収部160と、温度測定部170と、制御部180とを含んで構成される。
【0021】
分離ユニット110は、底壁210と、上壁212と、側壁214で外壁が構成されており、底壁210、上壁212、側壁214で区画された空間が気液接触流路Rとなる。すなわち、底壁210の内面が気液接触流路Rの底面210aとなり、上壁212の内面が気液接触流路Rの上面212aとなり、側壁214の内面が気液接触流路Rの側面214aとなる。ここで、底壁210、上壁212、側壁214は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。
【0022】
気液接触流路Rの底面210a(底壁210)の一端側には、留出液を排出する留出流体排出口220が設けられており、他端側には、缶出液を排出する缶出液排出口222が設けられている。また、気液接触流路Rのうち、底面210aにおける留出流体排出口220と缶出液排出口222との間には、原料液導入口224が設けられている。
【0023】
本実施形態において、分離ユニット110は、一端側から他端側(
図1中、左側から右側)に向かって鉛直下方に傾斜している。したがって、気液接触流路Rの上面212aは、留出流体排出口220から缶出液排出口222に向かって鉛直下方(
図1中、Z方向)に傾斜している。また、気液接触流路Rのうち、留出流体排出口220から原料液導入口224までの流路の底面210acは、原料液導入口224に向かって鉛直下方に傾斜している。さらに、気液接触流路Rのうち、原料液導入口224から缶出液排出口222までの流路の底面210ahは、底面210acより傾斜角が小さいものの、缶出液排出口222に向かって鉛直下方に傾斜している。したがって、分離ユニット110の原料液導入口224から気液接触流路Rに導入された原料液は、一端側から他端側に向かって、すなわち、缶出液排出口222に向かって流れることとなる。
【0024】
図2は、分離ユニット110の分解斜視図であり、
図3は、
図2において上壁212、側壁214を閉じたときのIII−III線断面図である。
【0025】
図2、
図3に示すように、分離ユニット110は、気液接触流路Rの底面210aを構成する外壁(底壁210)から気液接触流路R内に立設するとともに、留出流体排出口220側から缶出液排出口222側に延在したリブ230を複数備えている(ここでは、幅方向に6本並列させている)。したがって、原料液導入口224から気液接触流路Rに導入された原料液等の液体(
図3中、クロスハッチングで示す)は、
図3に示すように、リブ230によって区画された流路である区画流路DRを流れることとなる。つまり、区画流路DRにおいて、液体の層である液体層が形成されることとなる。また、気液接触流路R内の気体は、気体層となって液体層の上方を流れる。
【0026】
ここで、気液接触流路Rの寸法関係について説明すると、区画流路DRの底面の幅drb(リブ230同士の基端間の距離)は、例えば、1mm程度であり、区画流路DRの上面の幅drt(リブ230同士の先端間の距離)は、例えば、2mm程度であり、区画流路DRの高さdrh(リブ230の高さ)の最大値は、例えば、3mm程度である。また、リブ230の先端と上面212aとの距離shは、例えば、100μm〜10mm程度(ここでは、1mm)である。さらに、気液接触流路Rの流通方向の長さL(留出流体排出口220から缶出液排出口222までの長さ、
図2参照)は、例えば、300mmである。
【0027】
図1に戻って説明すると、原料液導入部120は、例えば、ポンプで構成され、原料液導入口224を通じて、原料液供給源122から気液接触流路Rに原料液を導入する。
【0028】
リボイラ130は、例えば、電気ヒータで構成され、気液接触流路Rを構成する外壁(底壁210、上壁212、側壁214)の外方であって、原料液導入口224から缶出液排出口222までの間に設けられる。リボイラ130は、後述する制御部180による制御指令に応じて、気液接触流路R中の気体および液体を低沸点成分の沸点以上に加熱する。
【0029】
コンデンサ140は、例えば、ファンで構成され、気液接触流路Rを構成する外壁の外方であって、原料液導入口224から留出流体排出口220までの間に設けられる。コンデンサ140は、気液接触流路R中の気体および液体を、低沸点成分の沸点未満に冷却する。
【0030】
留出液回収部150は、例えば、ポンプで構成され、留出流体排出口220を通じて、分離ユニット110(気液接触流路R)から留出液貯留部152へ留出液を送出する。
【0031】
缶出液回収部160は、例えば、ポンプで構成され、缶出液排出口222を通じて、分離ユニット110(気液接触流路R)から缶出液貯留部162へ缶出液を送出する。
【0032】
温度測定部170は、気液接触流路Rにおける、原料液導入口224から缶出液排出口222までの間の温度と、留出流体排出口220から原料液導入口224までの間の温度をそれぞれ測定する。
【0033】
制御部180は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して分離装置100全体を管理および制御する。本実施形態において、制御部180は、温度測定部170が測定した温度に基づいて、原料液導入口224から缶出液排出口222までの間の気液接触流路Rの温度が、低沸点成分の沸点以上となるようにリボイラ130を制御する。また、制御部180は、温度測定部170が測定した温度に基づいて、留出流体排出口220から原料液導入口224までの間の気液接触流路Rの温度が、低沸点成分の沸点未満になるようにコンデンサ140を制御する。さらに、制御部180は、原料液導入部120、留出液回収部150、缶出液回収部160を駆動制御する。
【0034】
(気液接触流路Rにおける液体および気体の流れ)
図4は、気液接触流路Rにおける液体および気体の流れについて説明する図である。
図4中、液体の流れを白抜き矢印で示し、気体の流れを黒い塗りつぶしの矢印で示す。なお、ここでは、理解を容易にするために、リブ230(区画流路DR)の記載を省略する。
【0035】
上述したように、気液接触流路Rのうち、原料液導入口224から缶出液排出口222までの流路の底面210ahは、缶出液排出口222に向かって鉛直下方に傾斜しているため、
図4(a)に示すように、原料液導入口224から導入された原料液は、自重で缶出液排出口222に向かって気液接触流路R(区画流路DR)を流れることとなる。
【0036】
原料液導入口224から缶出液排出口222の間にはリボイラ130が設けられているため、缶出液排出口222へ向かって流れる間に、原料液は、気液接触流路Rのうちリボイラ130で加熱される流路(以下、単に「加熱流路HR」と称する)を通過することとなる。そうすると、
図4(b)に示すように、原料液は、加熱流路HRを通過する際に、低沸点成分の沸点以上に加熱されることとなり、原料液から、低沸点成分を多く含む気体が生成されることとなる。
【0037】
加熱流路HRは、全域に亘ってリボイラ130によって加熱されているため、加熱流路HRにおいては、缶出液排出口222に向かうに従って気体の生成量が増加する。このため、加熱流路HRにおいて、原料液導入口224側と、缶出液排出口222側とで圧力差が生じる。つまり、加熱流路HRにおいては、缶出液排出口222側の方が、原料液導入口224側よりも圧力が高くなる。これにより、加熱流路HRにおいて生成された気体は、液体の流れと逆方向、すなわち、原料液導入口224(留出流体排出口220)に向かって流れることとなる。
【0038】
また、原料液導入口224から留出流体排出口220の間にはコンデンサ140が設けられているため、加熱流路HRから留出流体排出口220に向かって流れる気体は、気液接触流路Rのうちコンデンサ140で冷却される流路(以下、単に「冷却流路CR」と称する)を通過することとなる。そうすると、
図4(c)に示すように、気体は、冷却流路CRを通過する際に、低沸点成分の沸点未満に冷却されることとなり、低沸点成分および高沸点成分が凝縮して液体となる。そして、冷却流路CRで生成された液体は、
図4(d)に示すように、加熱流路HRに向かって流れることとなる。つまり、本実施形態にかかる分離装置100では、コンデンサ140によって凝縮された低沸点成分および高沸点成分が、加熱流路HRに戻ることとなるため、還流が遂行されることになり、低沸点成分と高沸点成分の分離性能を向上することが可能となる。
【0039】
そして、冷却流路CRのうち、留出流体排出口220が配される領域において凝縮された液体が留出液として留出流体排出口220を通じて外部に排出されることとなる。また、加熱流路HRにおいて蒸発しなかった液体が缶出液として缶出液排出口222を通じて外部に排出されることとなる。
【0040】
上記したように、加熱流路HRにおいては、缶出液排出口222に向かうに従って気体の生成量が増加する。つまり、加熱流路HRにおいては、缶出液排出口222に向かうに従って液体の残量が低減することとなる。したがって、仮に、加熱流路HRの流路断面積が一様であると、缶出液排出口222側においては、リブ230の一部に液体と接触しない箇所が生じ、つまり、液体の加熱に寄与しない箇所が生じ、加熱に要するエネルギーが無駄に生じることとなる。また、液体と接触しない箇所から放熱が生じてしまうおそれもある。
【0041】
そこで、本実施形態の分離装置100では、加熱流路HRの流路断面積が、原料液導入口224から缶出液排出口222に向かうに従って漸減するように構成している。
【0042】
図5は、加熱流路HRを説明する図である。
図5に示すように、本実施形態の加熱流路HRは、底面210ahから上面212aまでの距離が、原料液導入口224から缶出液排出口222に向かうに従って漸減するように構成されている。具体的に説明すると、加熱流路HRを構成するリブ230の底面210ahからリブ230の上端(上面)までの距離が、原料液導入口224から缶出液排出口222に向かうに従って漸減するように構成されている。また、リブ230における缶出液排出口222側の端部においては、区画流路DRの高さdrhがゼロとなるように構成されている。
【0043】
このように、加熱流路HRを構成するリブ230の底面210ahを傾斜させるだけといった容易な加工を施すだけで、加熱流路HR(区画流路DR)において、液体と接触しない箇所を低減することができる。したがって、液体の加熱に要するエネルギー、つまり、リボイラ130の消費エネルギーを削減することが可能となる。また、リブ230から外部への放熱を低減することができる。
【0044】
また、本実施形態では、気液接触流路Rの上面212aについても、留出流体排出口220から缶出液排出口222へ向かうに従って鉛直下方に傾斜している。すなわち、缶出液排出口222から留出流体排出口220へ向かうに従って鉛直上方に傾斜している。気体は上昇する性質を有するため、気液接触流路Rの上面212aを缶出液排出口222から留出流体排出口220へ向かうに従って鉛直上方に傾斜させることにより、加熱流路HRで生成された気体をスムーズに冷却流路CRに導くことが可能となる。
【0045】
また、上述したように、本実施形態では、原料液や冷却流路CRで凝縮された液体が、区画流路DRを流れるように構成している。気液接触流路Rにおいて液体が流れる流路幅が大きいと、液体の表面張力によって、気液接触流路Rの側面側を流れる液体の流速と、気液接触流路Rの中央側を流れる液体の流速との差が大きくなってしまう。そこで、リブ230を設け、気液接触流路Rを複数に分割して流路幅を短くした区画流路DRを形成することで、区画流路DRの側面側を流れる液体の流速と、区画流路DRの中央側を流れる液体の流速との差を小さくすることができ、流路内における流速の均一化を図ることが可能となる。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0047】
例えば、上記実施形態において、底面210ahから上面212aまでの距離が、原料液導入口224から缶出液排出口222に向かうに従って漸減するように構成された加熱流路HRを例に挙げて説明した。しかし、加熱流路HRは、原料液導入口224から缶出液排出口222に向かうに従って流路断面積が漸減していればよい。例えば、加熱流路HRにおける流路幅を原料液導入口224から缶出液排出口222に向かうに従って漸減させてもよい。
【0048】
また、上記実施形態において、原料液導入口224から缶出液排出口222に向かうに従って流路断面積が漸減する加熱流路HRを例に挙げて説明した。しかし、加熱流路HRは、少なくとも缶出液排出口222側の流路断面積が、原料液導入口224側の流路断面積より小さければよい。例えば、原料液導入口224から缶出液排出口222に向かうに従って段階的に流路断面積が小さくなるように構成してもよい。
【0049】
また、上記実施形態において、加熱流路HRの底面210ahが原料液導入口224から缶出液排出口222に向かうに従って鉛直下方に傾斜している構成を例に挙げて説明した。しかし、加熱流路HRの底面210ahは水平方向に延在していてもよいし、鉛直上方に傾斜していてもよい。
【0050】
また、上記実施形態において、冷却流路CRの流路断面積が一様である構成を例に挙げて説明した。しかし、冷却流路CRについても、コンデンサ140によって凝縮される液体の量に応じて流路断面積を変化させるように設計してもよい。例えば、冷却流路CRの底面210acが留出流体排出口220から原料液導入口224に向かうに従って鉛直下方に傾斜している場合や水平方向に延在している場合、留出流体排出口220側の流路断面積が、原料液導入口224側の流路断面積より小さくなるように構成してもよい。また、例えば、冷却流路CRの底面210acが原料液導入口224から留出流体排出口220に向かうに従って鉛直下方に傾斜している場合、留出流体排出口220側の流路断面積が、原料液導入口224側の流路断面積より大きくなるように構成してもよい。かかる構成により、コンデンサ140の冷却エネルギーを削減することができる。
【0051】
また、上記実施形態において、冷却流路CRの底面210acが留出流体排出口220から原料液導入口224に向かうに従って鉛直下方に傾斜している構成を例に挙げて説明した。しかし、冷却流路CRの底面210acは水平方向に延在していてもよいし、鉛直上方に傾斜していてもよい。
【0052】
また、上記実施形態において、気液接触流路Rの上面212aが、缶出液排出口222から留出流体排出口220へ向かうに従って鉛直上方に傾斜している構成について説明した。しかし、気液接触流路Rの上面は、必ずしも傾斜する必要はなく、水平方向に延在していてもよい。気液接触流路Rの上面が水平方向に延在していたとしても、加熱流路HRにおいて、原料液導入口224側と、缶出液排出口222側とで圧力差が生じるため、加熱流路HRにおいて生成された気体は、液体の流れと逆方向、すなわち、原料液導入口224(留出流体排出口220)に向かって流れることとなる。
【0053】
また、上記実施形態において、気液接触流路Rの寸法関係について説明したが、原料液における低沸点成分と高沸点成分との割合、目的とする分離性能、原料液導入部120による原料液の導入流速(処理速度)に基づいて、適宜設定すればよい。
【0054】
また、上記実施形態において、低沸点成分および高沸点成分が、常温常圧で液体である場合を例に挙げて説明した。しかし、低沸点成分は、常温常圧で気体であってもよく、留出液が気体(留出ガス)であってもよい。例えば、低沸点成分として、アンモニアや、二酸化炭素を含む原料液を分離する場合にも、上記実施形態の分離装置100を利用することができる。