特許第6596977号(P6596977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6596977画像形成装置、プログラムおよび画像形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596977
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】画像形成装置、プログラムおよび画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/01 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   G03G15/01 J
   G03G15/01 114A
   G03G15/01 Y
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-129066(P2015-129066)
(22)【出願日】2015年6月26日
(65)【公開番号】特開2017-15769(P2017-15769A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【弁理士】
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】中井 大介
【審査官】 田代 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−209367(JP,A)
【文献】 特開2013−205682(JP,A)
【文献】 特開2014−199410(JP,A)
【文献】 特開2012−093638(JP,A)
【文献】 特開2006−261819(JP,A)
【文献】 特表2013−511067(JP,A)
【文献】 特開2014−106340(JP,A)
【文献】 特開2006−050347(JP,A)
【文献】 特開2008−020782(JP,A)
【文献】 特開2014−106280(JP,A)
【文献】 特開2006−317633(JP,A)
【文献】 特開2006−317632(JP,A)
【文献】 特開2003−098858(JP,A)
【文献】 特開2002−062682(JP,A)
【文献】 特開2001−194821(JP,A)
【文献】 特開2008−064893(JP,A)
【文献】 特開2014−240951(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0116840(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/01
G03G 15/00
G03G 21/00
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平状であって金属色を呈する金属色トナーを用いて金属色トナー像を形成する第1像形成部と、
透明色を呈する透明色トナー像を形成する第2像形成部と、
記録材において前記金属色トナー像よりも上側に前記透明色トナー像が重畳するようにトナー像を記録材に転写する転写部と、
ベルト部材と当該ベルト部材に接触しながら回転するロール部材とが互いに押圧される箇所であって、当該ベルト部材の内側に設けられて当該ベルト部材を当該ロール部材に押し付ける第1部材によって形成される第1ニップ部と当該内側に設けられる第2部材によって形成されるとともに当該第1ニップ部とは曲率が異なる第2ニップ部とを有するニップ部に、トナー像が転写された記録材を通過させて当該トナー像を記録材に定着させる定着部と、
を備え
前記転写部は、記録材に形成される前記金属色トナー像の面積が予め定められた面積以上である場合に、当該金属色トナー像に前記透明色トナー像を重畳させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)およびK(黒)の何れかの色を呈する有色トナー像を形成する第3像形成部を備え、
記転写部は、記録材において前記金属色トナー像上に前記有色トナー像が重畳する部分に対しては、前記透明色トナー像を重畳しないことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
金属色を呈する金属色トナー像を形成する第1像形成部と、
透明色を呈する透明色トナー像を形成する第2像形成部と、
前記金属色トナー像が転写される記録材の枚数に基づいて、記録材において前記金属色トナー像よりも上側に前記透明色トナー像が重畳するようにトナー像を記録材に転写する転写部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
コンピュータに、
扁平状であって金属色を呈する金属色トナーを用いて金属色トナー像を形成する機能と、
透明色を呈する透明色トナー像を形成する機能と、
記録材に形成される前記金属色トナー像の面積が予め定められた面積以上である場合に、記録材において当該金属色トナー像よりも上側に前記透明色トナー像が重畳するようにトナー像を記録材に転写する機能と、
ベルト部材と当該ベルト部材に接触しながら回転するロール部材とが互いに押圧される箇所であって、当該ベルト部材の内側に設けられて当該ベルト部材を当該ロール部材に押し付ける第1部材によって形成される第1ニップ部と当該内側に設けられる第2部材によって形成されるとともに当該第1ニップ部とは曲率が異なる第2ニップ部とを有するニップ部に、トナー像が転写された記録材を通過させて当該トナー像を記録材に定着させる機能と、
を実現させるプログラム。
【請求項5】
扁平状であって金属色を呈する金属色トナーを用いて金属色トナー像を形成する段階と、
透明色を呈する透明色トナー像を形成する段階と、
記録材に形成される前記金属色トナー像の面積が予め定められた面積以上である場合に、記録材において当該金属色トナー像よりも上側に前記透明色トナー像が重畳するようにトナー像を記録材に転写する段階と、
ベルト部材と当該ベルト部材に接触しながら回転するロール部材とが互いに押圧される箇所であって、当該ベルト部材の内側に設けられて当該ベルト部材を当該ロール部材に押し付ける第1部材によって形成される第1ニップ部と当該内側に設けられる第2部材によって形成されるとともに当該第1ニップ部とは曲率が異なる第2ニップ部とを有するニップ部に、トナー像が転写された記録材を通過させて当該トナー像を記録材に定着させる段階と、
を備えることを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、プログラムおよび画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、感光体上に現像した金色トナー像と金色トナー像以外の他の色のトナー像とを像担持体に積層した後、定着して画像形成する画像形成装置であって、他の色のトナー像上に金色トナー像が像担持体に積層される画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−317632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金属色トナーを用いて画像形成を行う場合において、記録材に転写された金属色トナーを記録材に定着する際に、定着部が金属色トナーによって損傷する可能性があった。
【0005】
本発明は、金属色トナーを用いて画像形成を行う構成を採用した場合に、定着部の損傷を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、扁平状であって金属色を呈する金属色トナーを用いて金属色トナー像を形成する第1像形成部と、透明色を呈する透明色トナー像を形成する第2像形成部と、記録材において前記金属色トナー像よりも上側に前記透明色トナー像が重畳するようにトナー像を記録材に転写する転写部と、ベルト部材と当該ベルト部材に接触しながら回転するロール部材とが互いに押圧される箇所であって、当該ベルト部材の内側に設けられて当該ベルト部材を当該ロール部材に押し付ける第1部材によって形成される第1ニップ部と当該内側に設けられる第2部材によって形成されるとともに当該第1ニップ部とは曲率が異なる第2ニップ部とを有するニップ部に、トナー像が転写された記録材を通過させて当該トナー像を記録材に定着させる定着部と、を備え、前記転写部は、記録材に形成される前記金属色トナー像の面積が予め定められた面積以上である場合に、当該金属色トナー像に前記透明色トナー像を重畳させることを特徴とする画像形成装置である。
請求項2に記載の発明は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)およびK(黒)の何れかの色を呈する有色トナー像を形成する第3像形成部を備え、記転写部は、記録材において前記金属色トナー像上に前記有色トナー像が重畳する部分に対しては、前記透明色トナー像を重畳しないことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置である。
求項に記載の発明は、金属色を呈する金属色トナー像を形成する第1像形成部と、透明色を呈する透明色トナー像を形成する第2像形成部と、前記金属色トナー像が転写される記録材の枚数に基づいて、記録材において前記金属色トナー像よりも上側に前記透明色トナー像が重畳するようにトナー像を記録材に転写する転写部と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項に記載の発明は、コンピュータに、扁平状であって金属色を呈する金属色トナーを用いて金属色トナー像を形成する機能と、透明色を呈する透明色トナー像を形成する機能と、記録材に形成される前記金属色トナー像の面積が予め定められた面積以上である場合に、記録材において当該金属色トナー像よりも上側に前記透明色トナー像が重畳するようにトナー像を記録材に転写する機能と、ベルト部材と当該ベルト部材に接触しながら回転するロール部材とが互いに押圧される箇所であって、当該ベルト部材の内側に設けられて当該ベルト部材を当該ロール部材に押し付ける第1部材によって形成される第1ニップ部と当該内側に設けられる第2部材によって形成されるとともに当該第1ニップ部とは曲率が異なる第2ニップ部とを有するニップ部に、トナー像が転写された記録材を通過させて当該トナー像を記録材に定着させる機能と、を実現させるプログラムである。
請求項に記載の発明は、扁平状であって金属色を呈する金属色トナーを用いて金属色トナー像を形成する段階と、透明色を呈する透明色トナー像を形成する段階と、記録材に形成される前記金属色トナー像の面積が予め定められた面積以上である場合に、記録材において当該金属色トナー像よりも上側に前記透明色トナー像が重畳するようにトナー像を記録材に転写する段階と、ベルト部材と当該ベルト部材に接触しながら回転するロール部材とが互いに押圧される箇所であって、当該ベルト部材の内側に設けられて当該ベルト部材を当該ロール部材に押し付ける第1部材によって形成される第1ニップ部と当該内側に設けられる第2部材によって形成されるとともに当該第1ニップ部とは曲率が異なる第2ニップ部とを有するニップ部に、トナー像が転写された記録材を通過させて当該トナー像を記録材に定着させる段階と、を備えることを特徴とする画像形成方法である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1、およびの発明によれば、金属色トナーを用いて画像形成を行う構成を採用した場合に、定着部の損傷を抑制することが可能になる。
請求項2の発明によれば、透明色トナーの消費を減少させることができる。
求項の発明によれば、金属色トナーが形成される用紙の枚数に応じた透明色トナーによる被覆が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の画像形成装置の構成例を示した図である。
図2】本実施形態の定着ユニットの構成を説明するための断面構成図である。
図3】(A)および(B)は、用紙におけるトナーの積層状態の一例を示す図である。
図4】本実施形態の被覆処理のフローチャートである。
図5】用紙における金属色トナー、有色トナーおよび透明色トナーの関係を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
<画像形成装置の説明>
図1は、本実施形態の画像形成装置1の構成例を示した図である。
図1に示す画像形成装置1は、所謂タンデム型のカラープリンタであり、画像データに基づき画像形成を行う画像形成部10と、画像形成装置1全体の動作制御や例えばパーソナルコンピュータ等との通信、画像データに対して行う画像処理等を実行する主制御部50と、ユーザからの操作入力の受付やユーザに対する各種情報の表示を行うユーザインターフェース部30と、を備えている。
【0010】
<画像形成部の説明>
画像形成部10は、例えば電子写真方式により画像を形成する機能部であって、イエロー(Y)の画像形成ユニット11Y、マゼンタ(M)の画像形成ユニット11M、シアン(C)の画像形成ユニット11C、黒(K)の画像形成ユニット11K、透明色(T)の画像形成ユニット11T、および金属色(G)の画像形成ユニット11G、の6つの画像形成ユニットを備えている。
なお、以下の説明において、各画像形成ユニットを区別しないで説明する場合には「画像形成ユニット11」と総称する。
【0011】
各画像形成ユニット11は、例えば、静電潜像が形成され、その後に各色トナー像が形成される感光体ドラム12と、感光体ドラム12の表面を予め定められた電位で帯電する帯電器13と、帯電器13により帯電された感光体ドラム12を画像データに基づいて露光する露光器14と、感光体ドラム12上に形成された静電潜像を各色トナーにより現像する現像器15と、転写後の感光体ドラム12表面を清掃するクリーナ16と、を備えている。そして、各画像形成ユニット11は、現像器15に収容されるトナーを除いて略同様に構成されている。
【0012】
また、画像形成部10は、各画像形成ユニット11の感光体ドラム12に形成された各色トナー像が転写される中間転写ベルト20と、各画像形成ユニット11にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト20に転写(一次転写)する一次転写ロール21と、を備えている。さらに、中間転写ベルト20上に重畳して転写された各色トナー像を用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写ロール22と、二次転写された各色トナー像を用紙P上に定着させる定着ユニット60と、を備えている。
本実施形態では、二次転写ロール22が配置され、中間転写ベルト20上の各色トナー像が用紙Pに二次転写される領域を、以下、二次転写領域23という。
【0013】
なお、本実施形態では、中間転写ベルト20、一次転写ロール21および二次転写ロール22が、転写部の一例として機能する。
【0014】
また、本実施形態では、中間転写ベルト20の回転方向において、二次転写領域23を基準とし、下流側から上流側に向けて、金属色の画像形成ユニット11G、黒の画像形成ユニット11K、シアンの画像形成ユニット11C、マゼンタの画像形成ユニット11M、イエローの画像形成ユニット11Y、透明色の画像形成ユニット11Tの順に配置される。特に、中間転写ベルト20の回転方向において、二次転写領域23を基準として、最も下流側に金属色の画像形成ユニット11Gが配置されるようにしている。
【0015】
<定着ユニットの構成の説明>
次に、本実施の形態の画像形成装置1に用いられる定着ユニット60について説明する。
図2は、本実施形態の定着ユニット60の構成を説明するための断面構成図である。
定着ユニット60は、図2に示すように、用紙Pを加熱する定着ベルトモジュール61と、定着ベルトモジュール61に対して接離自在に構成された加圧ロール62と、後述の定着ベルト610を外側から張架しながら定着ベルト610を加熱する外部加熱ロール63とを備えて構成されている。
【0016】
定着ベルトモジュール61は、定着ベルト610と、定着ベルト610を張架しながら回転動作し、定着ベルトモジュール61と加圧ロール62とが圧接(互いに押圧されながら接触)する領域であるニップ部Nにて定着ベルト610を内側から加熱する定着ロール611とを備えている。
また、定着ベルトモジュール61は、定着ベルト610を加熱する内部加熱ロール612、を備えている。また、定着ベルトモジュール61は、定着ロール611と内部加熱ロール612との間(ニップ部Nの上流側)で定着ベルト610を張架する張架ロール614と、ニップ部N内の下流側領域であって定着ロール611の近傍位置に配置された剥離パッド64と、ニップ部Nの下流側において定着ベルト610を張架する張架ロール615と、を備えている。
【0017】
定着ベルト610は、例えばベース層と、ベース層の表面側(外周面側)に積層された弾性体層と、さらに弾性体層上に被覆された離型層とで構成されている。また、本実施形態では、定着ベルト610が、用紙P上に転写されたトナー像に対向する。なお、本実施形態の定着ベルト610は、無端状のベルトになっている。
【0018】
定着ロール611は、円筒状のロールである。そして、定着ロール611は、図示しない駆動モータからの回転駆動力を受け図中矢印方向に回転する。そして、定着ロール611の内部に配置されたハロゲンヒータ71により、定着ロール611は予め定められた温度に加熱される。
内部加熱ロール612は、円筒状のロールである。そして、内部に配置されたハロゲンヒータ72により、内部加熱ロール612は予め定められた温度に加熱される。
【0019】
外部加熱ロール63は、円筒状のロールである。そして、内部に配置された例えば3本のハロゲンヒータ73により、外部加熱ロール63は予め定められた温度に加熱される。このように、本実施の形態の定着ユニット60では、定着ロール611と内部加熱ロール612と外部加熱ロール63とによって定着ベルト610が加熱される構成を採用している。
【0020】
剥離パッド64は、断面が略円弧形状のブロック部材である。そして、加圧ロール62が定着ベルト610を介して定着ロール611に圧接される領域(以下、「ロールニップ部N1」)の下流側近傍位置にて、定着ロール611の軸方向全域に亘って固定配置されている。また、剥離パッド64は、定着ベルト610を介して加圧ロール62を予め定められた幅領域に亘って予め定められた荷重で均一に押圧するように設置され、ロールニップ部N1に連なる「剥離パッドニップ部N2」を形成している。
【0021】
次に、加圧ロール62は、円柱状のロールを基体として、基体側から順に、弾性層と、離型層とが積層されて構成されている。そして、加圧ロール62は、定着ベルトモジュール61に接離するように配置され、定着ベルトモジュール61を押圧しながら接触(圧接)するように設定された場合には、定着ベルトモジュール61の定着ロール611が矢印方向へ回転するのに伴い、定着ロール611に従動して矢印方向に回転する。
【0022】
続いて、本実施形態の各現像器15に収容されるトナーについて説明する。
本実施形態では、イエローのトナー、マゼンタのトナー、シアンのトナー、および黒のトナーのことを総称して有色トナーTymckと呼ぶ。
【0023】
また、透明色トナー(クリアトナー)Ttは、用紙Pに定着された際に、透明色を呈する。なお、本実施形態において、透明とは、少なくとも可視光に対して透明であることを意味する。そして、透明色トナーTtは、背後の用紙Pや他のトナーを反射した光を透過する。また、本実施形態では、透明色トナーTtは、光沢(グロス)を出すようにも機能する。
そして、本実施形態の透明色トナーTtは、結着樹脂および離型剤を必須とし、着色剤を実質的に含まないものである。なお、実質的に含まないとは、肉眼でその着色の程度が気にならない程度を意味する。
【0024】
金属色トナー(メタリックトナー)Tgは、用紙Pに定着された際に、金属色を呈する。ここで、金属色としては、例えば金色や銀色などを例示することができる。
そして、本実施形態の金属色トナーTgは、例えばスチレンやアクリル等の合成樹脂による結着樹脂や、着色剤、配合剤に加えて、銀粉末、金属アルミニウム粉等のような粒径が相対的に大きな金属顔料を配合したものである。また、銀粉末などの金属顔料は、扁平状、鱗片状、円盤状または球形状に形成されている。さらに、銀粉末などの金属顔料は、平均粒子径が、イエロー、マゼンタ、シアン、黒などの通常のトナーよりも相対的に大きく形成されている。
なお、金属色トナーTgとして、銀粉末や金属アルミニウム粉等のような金属顔料(粉体)を配合したものに限らず、薄片状無機結晶質基質上に二酸化チタンからなる薄膜を被覆させた鱗片状顔料を着色剤に配合したものや、金属自体を鱗状薄片にして配合したものなどを用いても良い。また、本実施形態では、金属色トナーTgとして、扁平状に形成され、平均粒子径が、有色トナーTymckに対して相対的に大きいものを用いることができる。
【0025】
なお、本実施形態では、金属色とは異なる色を呈するトナーである透明色トナーTt、イエローのトナー、マゼンタのトナー、シアンのトナー、および黒のトナーのことを総称して非金属色トナーと呼ぶ。
【0026】
ここで、金属色トナーTgは、単体で金属色(金色や銀色)を表現するように用いられる場合のほかに、金属色トナーTg上に有色トナーTymckを重畳させることで、有色であって金属色を呈するように用いられる場合もある。例えば、青みがかった金属色を表現する場合には、銀色の金属色トナーTg上にシアントナーを重畳させる。
なお、有色であって金属色を表現する場合に、金属色トナーTgの下側に有色トナーTymckを積層させることを除外するものではない。例えば、有色トナーTymck、金属色トナーTg、有色トナーTymckといったように積層しても構わない。
【0027】
なお、本実施形態では、金属色の画像形成ユニット11Gが第1像形成部の一例として機能する。イエローの画像形成ユニット11Y、マゼンタの画像形成ユニット11M、シアンの画像形成ユニット11C、黒の画像形成ユニット11K、および透明色の画像形成ユニット11Tが、非金属色トナー像を形成する第2像形成部の一例として機能する。さらに、イエローの画像形成ユニット11Y、マゼンタの画像形成ユニット11M、シアンの画像形成ユニット11C、黒の画像形成ユニット11K、および透明色の画像形成ユニット11Tが、有色トナー像を形成する第3像形成部の一例として機能する。
【0028】
<画像形成動作の説明>
次に、本実施の形態に係る画像形成装置1での基本的な画像形成動作について説明する。
画像形成部10の画像形成ユニット11各々は、上記の機能部材を用いた電子写真プロセスにより透明色、黒、シアン、マゼンタ、イエロー、金属色の各色トナー像を形成する。各画像形成ユニット11にて形成された各色トナー像は、一次転写ロール21により中間転写ベルト20上に順に一次転写され、各色トナーが重畳された合成トナー像を形成する。中間転写ベルト20上の合成トナー像は、中間転写ベルト20の移動(矢印方向)に伴って二次転写ロール22が配置された二次転写領域23に搬送される。
【0029】
用紙搬送系では、用紙収容容器40から繰出しロールにより繰り出された用紙Pは、搬送路に沿って搬送され、二次転写領域23に到達する。二次転写領域23では、二次転写ロール22により形成された転写電界によって、中間転写ベルト20上に保持された合成トナー像が用紙Pに一括して二次転写される。
その後、合成トナー像が転写された用紙Pは、中間転写ベルト20から分離され、搬送路に沿って定着ユニット60に搬送される。定着ユニット60に搬送された用紙P上の合成トナー像は、定着ユニット60によって定着処理を受けて用紙Pに定着される。
【0030】
また、両面印刷時には、上述した過程によって第1面に定着画像が形成された用紙Pは、搬送路に導かれて反転した後に、再び二次転写領域23に到達する。二次転写領域23では、第1面の場合と同様にして、二次転写ロール22により形成された転写電界によって、中間転写ベルト20上に保持された第2面の各色トナー像が用紙Pに一括して二次転写される。そして、第1面と同様に、定着ユニット60によって定着処理を受けて第2面に定着画像が形成される。
【0031】
図3は、用紙Pにおけるトナーの積層状態の一例を示す図である。
そして、本実施形態では、図3(A)に示すように、用紙Pに合成トナー像が転写された際に、記録材に対して金属色トナーTgよりも上側に、金属色トナーTgとは異なる他の色のトナーである非金属色トナーが重畳するようにしている。すなわち、用紙Pにおいて金属色トナーTgが、非金属色トナーによって覆われるようにする処理(以下、被覆処理と称する)を行っている。
【0032】
例えば、本実施形態では、用紙P上において金属色トナーTgよりも上側に透明色トナーTtを重畳させる。具体的には、金属色トナー像として描かれる像と同様の形状の像を透明色トナー像として形成する。そして、中間転写ベルト20上において金属色トナー像と透明色トナー像とが一致するように重ねて合成トナー像を形成する。
【0033】
<定着ユニットでの定着動作についての説明>
次に、本実施の形態の定着ユニット60での定着動作について説明する。
画像形成装置1の二次転写領域23(図1参照)において合成トナー像(未定着トナー像)が静電転写された用紙Pは、搬送路(図1参照)に沿って定着ユニット60のニップ部N(図2参照)に向けて搬送される。そして、ニップ部Nを通過する用紙P表面の未定着トナー像は、主としてロールニップ部N1に作用する圧力と熱とにより用紙Pに定着される。
【0034】
また、ロールニップ部N1を通過した後、用紙Pは、剥離パッドニップ部N2に搬送される。剥離パッドニップ部N2は、加圧ロール62に剥離パッド64が押圧されて、定着ベルト610が加圧ロール62に圧接するように構成されている。したがって、ロールニップ部N1は定着ロール611の曲率によって下に凸である湾曲した形状を有するのに対し、剥離パッドニップ部N2は加圧ロール62の曲率によって上に凸である湾曲した形状を有している。
そのため、ロールニップ部N1において定着ロール611の曲率のもとで加熱加圧された用紙Pは、剥離パッドニップ部N2において加圧ロール62による相反する方向に向いた曲率に進行方向が変化させられる。その際に、用紙P上のトナー像と定着ベルト610表面との間で微小なマイクロスリップが生じる。それによって、トナー像と定着ベルト610との付着力が弱められ、用紙Pは定着ベルト610から剥離され易い状態が形成される。
【0035】
本実施形態では、上述のとおり金属色トナーTgを用いている。そして、本実施形態の定着ユニット60を用いることによって、トナー像と定着ベルト610との表面との間で上記のマイクロスリップ(滑り)が生じることによって、扁形状の金属顔料にせん断力が掛かる。その結果、図3(A)に示すように用紙Pに転写されたときには用紙平面に対して切り立っていた金属顔料は、図3に(B)示すように、金属顔料が用紙平面に対して倒れる。つまり、金属顔料が用紙平面に沿った方向を向くようになる。その結果、本実施形態の定着ユニット60を用いた場合には、金属色トナーTgによる光輝度がより高まるようになっている。
【0036】
一方で、上述のとおり、用紙Pに金属色トナーTgが転写されたときには、金属色トナーTgの金属顔料は、用紙P上において切り立った状態となっている。従って、金属色トナーTgが転写された用紙Pに対して定着ベルト610と加圧ロール62とによって挟み込んで加圧した際に、定着ベルト610の表面に微細な傷が生じる可能性がある構成となっている。
これに対して、本実施形態では、金属色トナーTgの上に、例えば透明色トナーTtなどの金属色以外の非金属色トナーにより形成されたトナー像が重畳される。つまり、用紙P上において、金属色トナー像が非金属色トナー像によって被覆された状態になる。そのため、定着ベルト610が金属色トナーTgに圧力をかけた際に、定着ベルト610の表面に生じ得る損傷が抑制される。
【0037】
<被覆処理の説明>
続いて、被覆処理について詳しく説明する。
図4は、本実施形態の被覆処理のフローチャートである。
図5は、用紙Pにおける金属色トナーTg、有色トナーTymckおよび透明色トナーTtの関係を説明する概念図である。
なお、被覆処理は、主制御部50が画像形成ユニット11や中間転写ベルト20を制御することで実現する処理である。
まず、画像形成の対象である用紙Pに対して金属色を用いた画像形成が行われるか否かを判断する(ステップ(以下、Sと記載する)101)。金属色を用いた画像形成が行われなければ(S101でNo)、処理を終了する。
【0038】
次に、金属色を用いた画像形成が行われる場合には(S101でYes)、金属色トナーTgが転写される記録材の枚数に基づいて、金属色トナーTgに透明色トナーTtを重畳させるかを判断する。本実施形態では、金属色トナーTgが転写される用紙Pが予め定められた枚数以上連続するか否かを判断する(S102)。
そして、S102にて金属色トナーTgが形成される用紙Pが予め定められた枚数以上連続する場合には(S102でYes)、S104に進む。
【0039】
なお、金属色トナーTgが転写される記録材の枚数に基づく、透明色トナーTtによる被覆の有無の判断は、連続枚数に限らず、例えば画像形成が行われる一定数の用紙Pのうち、金属色トナーTgが転写される用紙Pの枚数に応じて定めても構わない。つまり、ある一定の期間において、金属色トナーTgが用いられる頻度が高い状況において、金属色トナーTgを透明色トナーTtにより被覆するようにしている。
上述したように、金属色トナーTgを定着する際に、定着ベルト610が金属色トナーTgにより損傷を受ける可能性がある。しかしながら、定着ベルト610においては、金属色トナーTgを含まないトナー像を定着することによって、定着ベルト610の表面における損傷が回復し易い。そこで、頻度が高い状況では透明色トナーTtによる被覆を行うようにしている。一方で、金属色トナーTgが用いられる頻度が低い状況では透明色トナーTtによる被覆は行わずに、透明色トナーTtの消費を抑制するようにしている。
【0040】
一方、S102にて金属色トナーTgが形成される用紙Pの連続枚数が、予め定めた枚数よりも少ない場合には(S102でNo)、用紙Pにおいて金属色トナーTgが形成される領域に基づいて、金属色トナーTgに透明色トナーTtを重畳させるかを判断する。本実施形態では、用紙Pにおける金属色トナーTgの面積が、予め定めた面積以上であるか否かを判断する(S103)。
そして、用紙Pにおける金属色トナーTgの面積が、予め定めた面積以上である場合には(S103でYes)、S104に進む。一方、用紙Pにおける金属色トナーTgの面積が、予め定めた面積よりも小さい場合には(S103でNo)、処理を終了する。
【0041】
まず、用紙Pにおける金属色トナーTgの面積が大きい場合には、その分、定着ユニット60の定着ベルト610が損傷を受ける範囲も大きくなる。また、定着ベルト610が損傷を受ける範囲が大きくなることで、その後に定着される他の画像に及ぼす影響も大きくなる。そこで、本実施形態では、用紙Pにおける金属色トナーTgの面積が大きい場合には、金属色トナーTgを透明色トナーTtによって被覆する。一方で、金属色トナーTgの面積が小さい場合には、金属色トナーTgを透明色トナーTtによって被覆せずに、透明色トナーTtの消費を抑制するようにしている。
【0042】
なお、金属色トナー像が形成される領域に基づく、透明色トナーTtの重畳の判断は、面積に限らず、例えば用紙Pにおける金属色トナー像の長さに基づいても構わない。特に、用紙Pの搬送方向における金属色トナー像の長さが、予め定めた長さ以上である場合に、金属色トナーTgを透明色トナーTtによって被覆するようにしても良い。
例えば、金属色トナーTgを用いて表彰状の金色の装飾枠を形成するような場合など、用紙Pにおいて一方向に金属色トナー像が連続して形成される。この場合、定着ユニット60においても金属色トナー像に対向する部分が特定箇所に集中するため、その特定箇所における負荷が大きくなる。そこで、金属色トナー像が一方向に予め定めた長さ以上となる場合には、金属色トナーTgを透明色トナーTtにより被覆する。
【0043】
次に、S102にて金属色トナーTgが形成される用紙Pが予め定められた枚数以上連続する場合には(S102でYes)、または、用紙Pにおける金属色トナー像の面積が、予め定めた面積以上である場合には(S103でYes)、金属色トナー像上に有色トナー像が重畳されるか否かを判断する(S104)。
そして、金属色トナー像上に有色トナー像が重畳する場合には(S104でYes)、処理を終了する。一方、金属色トナー像上に有色トナー像が重畳しない場合には(S104でNo)、金属色トナー像に対して透明色トナー像を重畳させる(S105)。
【0044】
有色トナーTymckによって金属色トナー像が被覆される場合には、定着ベルト610と金属色トナーTgとの間に有色トナーTymckが挟まれるため、有色トナーTymckによって定着ベルト610が保護される。そこで、図5に示すように、本実施形態では、金属色トナーTgが有色トナーTymckによって被覆される場合には、透明色トナーTtによる金属色トナーTgの被覆を行わずに、透明色トナーTtの消費を抑制するようにしている。一方、金属色トナーTgが有色トナーTymckによって被覆されない場合には、金属色トナーTgを透明色トナーTtによって被覆するようにしている。
【0045】
以上のように、本実施形態では、金属色トナーTgが転写される用紙Pの枚数や、用紙Pにおける金属色トナー像の面積、金属色トナー像に対する有色トナーTymckの重畳の有無、などの条件に基づいて、金属色トナーTgに対する透明色トナーTtによる被覆の有無を決定するようにしている。
なお、上述の例では、金属色トナーTgが転写される用紙Pの枚数、用紙Pにおける金属色トナー像の面積、金属色トナー像に対する有色トナーTymckの重畳の有無、の全てを条件としているが、個別の条件に基づいて、金属色トナーTgに対する透明色トナーTtによる被覆の有無を決定しても構わない。
【0046】
なお、金属色トナーTgに透明色トナーTtを重畳させる条件として、用紙Pにおける金属色トナー像の像密度または濃度を用いても構わない。具体的には、用紙Pに形成される金属色トナー像について、単位面積当たりに含まれる画素数である像密度が、予め定められた像密度以上である場合に、金属色トナーTgを透明色トナーTtによって被覆する。また、用紙Pに形成される金属色トナー像の濃度が、予め定められた濃度以上である場合に、金属色トナーTgを透明色トナーTtによって被覆する。
【0047】
また、例えば金属色トナーTgに対する有色トナーTymckの被覆量が予め定めた量よりも少ない場合には、有色トナーTymckによる被覆による定着ベルト610の保護作用を補完するかたちで、金属色トナーTgに対し、有色トナーTymckに加えて透明色トナーTtを重ねるようにしても良い。
【0048】
なお、本実施形態では、金属色トナーTgを透明色トナーTtによって被覆する際に、透明色トナー像の形状を金属色トナー像と一致させているが、これに限定されない。例えば、金属色トナー像の形状にかかわらず、用紙Pに対して全体的に透明色トナー像を形成するようにしても構わない。また、金属色トナー像に対して部分的に透明色トナーTtを用いて被覆するようにしても構わない。
【0049】
なお、本実施形態では、中間転写ベルト20に複数の色のトナー像を合成させ、その後に、用紙Pに一括転写する例を用いて説明しているが、この態様に限定されない。例えば、用紙Pに対して複数に色のトナーを順次転写するタイプの画像形成装置においても、上述した実施形態の内容を適用することができる。
【0050】
また、以上説明を行った本実施形態における画像形成の処理および被覆処理は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。即ち、画像形成装置1に設けられた主制御部50の図示しないCPUが、画像形成の処理および被覆処理の各機能を実現するプログラムを実行し、これらの各機能を実現させる。
【0051】
よって、コンピュータに、金属色を呈する金属色トナー像を形成する機能と、金属色とは異なる色を呈する非金属色トナー像を形成する機能と、用紙Pにおいて金属色トナー像よりも上側に非金属色トナー像が重畳するようにトナー像を用紙Pに転写する機能と、を実現させるプログラムとして捉えることもできる。
【0052】
なお、本実施形態を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…画像形成装置、11…画像形成ユニット、60…定着ユニット、Tg…金属色トナー、Tt…透明色トナー、Tymck…有色トナー、P…用紙
図1
図2
図3
図4
図5