特許第6596987号(P6596987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596987
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】粒子計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20191021BHJP
   G01N 21/53 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   G01N15/14 B
   G01N15/14 P
   G01N21/53 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-133395(P2015-133395)
(22)【出願日】2015年7月2日
(65)【公開番号】特開2017-15587(P2017-15587A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】武田 直希
(72)【発明者】
【氏名】小泉 和裕
(72)【発明者】
【氏名】浅野 貴正
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祥樹
【審査官】 素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/141994(WO,A1)
【文献】 特開昭60−214238(JP,A)
【文献】 特開昭53−017773(JP,A)
【文献】 特開昭59−104533(JP,A)
【文献】 特表2000−506272(JP,A)
【文献】 特開2004−151103(JP,A)
【文献】 特開2005−172465(JP,A)
【文献】 特開2007−046947(JP,A)
【文献】 米国特許第05608519(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00 − 15/14
G01N 21/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を2つの対向する反射鏡の間を往復させて、該レーザ光のエネルギーを増幅させた共振レーザ光を形成する光共振器と、
測定対象となるエアロゾルの粒子が、前記共振レーザ光の光路を横切るように移送する粒子移送手段と、
前記エアロゾルの粒子が前記共振レーザ光に照射された際に発する散乱光を受光する散乱光受光手段と、
前記散乱光受光手段により受光された受光信号を受信する処理装置と、を備え、
前記処理装置は、前記受光信号に基づいて受光パルスを出力し、前記受光パルスのうち時間的に隣り合うもののパルス間の時間幅、及び/又はその時間幅の複数サンプルにわたる頻度分布を導出して、前記導出されたパルス間の時間幅及び/又は前記導出されたパルス間の時間幅の複数サンプルにわたる頻度分布に基づいて、前記共振レーザ光の発振モードを判定するように構成されていることを特徴とする粒子計測装置。
【請求項2】
前記光共振器は、前記反射鏡を調整する反射鏡調整手段を備え、前記反射鏡調整手段は、前記処理装置による前記発振モードの判定に基づいて調整されるように構成されている請求項記載の粒子計測装置。
【請求項3】
前記測定対象となるエアロゾルの粒子が、前記光共振器で形成された共振レーザ光の光路を該光共振器内で横切るように構成されている請求項1又は2記載の粒子計測装置。
【請求項4】
前記光共振器には、前記反射鏡の一方の、前記共振レーザ光が形成される側とは反対面にレーザ発光体が設置され、前記レーザ発光体に所定の励起源を導入することにより発したレーザ光が、前記一方の反射鏡を通って前記光共振器に入射して前記共振レーザ光が形成されるように構成されている請求項1〜のいずれか1つに記載の粒子計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気などの気体中に浮遊する粒子(エアロゾル)を計測するのに適した粒子計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体の製造環境の監視や大気中の粒子状汚染物質の測定などの目的で使用される粒子計測装置として、空気などの気体中に浮遊する粒子(エアロゾル)をビーム状に形成して、その流路にレーザ光を照射して粒子を計測する粒子計測装置が知られている。この種の装置では、レーザー光が粒子にあたった際に発する散乱光を検出することにより粒子を評価するので、照射するレーザ光の光強度が高感度化のカギとなるが、レーザ光の生成の原理上、レーザ発光体で発せられたレーザ光を取り出す際には、その光強度の損失が免れない。
【0003】
このような問題に関し、例えば特許文献1には、外部鏡方式のレーザ共振器の内部に粒子の流路を配置して、エネルギー損失のないレーザ光を照射して粒子を計測するようにした光散乱式微粒子検出器が開示されている。また、例えば特許文献2には、レーザ共振器とは別に光共振器を設けて、その光共振器でエネルギーを増幅させた共振レーザ光を形成させると共に、その光共振器内に粒子の流路を配置して共振レーザ光を照射して粒子を計測するようにした微粒子検出装置が開示されている。また、例えば特許文献3には、特許文献2と同様の目的の外部光共振器を備え、その外部光共振器には、エネルギーを増幅させた共振レーザ光の波長を監視する検出器を設けて、検出された共振波長とレーザ発光部の波長との偏差に基づいて、その外部光共振器に備わる反射鏡間の距離を調整する機構を備えた粒子測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−104533号公報
【特許文献2】特公平6−21860号公報
【特許文献3】特開2005−172465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般にレーザ発振モードには、TEM00、TEM01、TEM02等のモードが存在し、それら発振モードによりレーザを断面で観測した際の強度分布が異なっている。通常パーティクルカウンタなどの粒子測定機能を持つ粒子計測装置では、粒子がレーザ光を横切る際に発せられる散乱光のパルスを計数して粒子の個数を計測するが、計測の途中で振動などにより発振モードが変化すると、粒子の個数と光散乱光パルス数が対応しなくなってしまう。また、発振モードが変化するとその光強度も変化するので、散乱パルス光強度との対応関係に基づいて粒子の大きさなどを計測する場合に、正常に計測することができなくなる。
【0006】
レーザ発振モードの監視には、光共振器の発振モードを直接測定できるような共振波長に感度のあるカメラ(アレイセンサ)等を設置する方法もあるが、これでは画像処理などの複雑な信号処理が必要になるうえ、上記のようなカメラを必要とするため、粒子計測装置のコストアップにつながる。
【0007】
以上のような課題に鑑み、本発明の目的は、粒子の計測に用いる共振レーザ光の発振モードやその変化を、簡便な装置構成で検知することができるようにした粒子計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の粒子計測装置は、レーザ光を2つの対向する反射鏡の間を往復させて、該レーザ光のエネルギーを増幅させた共振レーザ光を形成する光共振器と、測定対象となるエアロゾルの粒子が、前記共振レーザ光の光路を横切るように移送する粒子移送手段と、前記エアロゾルの粒子が前記共振レーザ光に照射された際に発する散乱光を受光する散乱光受光手段と、前記散乱光受光手段により受光された受光信号を受信する処理装置と、を備え、前記処理装置は、前記受光信号に基づいて受光パルスを出力し、前記受光パルスのうち時間的に隣り合うもののパルス間の時間幅を導出するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の粒子計測装置によれば、測定対象となるエアロゾルの粒子にレーザ光のエネルギーを増幅させた共振レーザ光を照射することにより、粒子を高感度に計測することができる。また、共振レーザ光が粒子にあたった際に発する散乱光に応じた受光パルスを出力し、その受光パルスのうち時間的に隣り合うもののパルス間の時間幅を導出することにより、共振レーザ光の発振モードやその変化を検知することができる。
【0010】
本発明においては、前記処理装置は、前記受光信号に基づいて受光パルスを出力し、前記受光パルスのうち時間的に隣り合うもののパルス間の時間幅を導出して、その時間幅の複数サンプルにわたる頻度分布を導出するように構成されていることが好ましい。これによれば、共振レーザ光の発振モードやその変化を、より高感度に精度よく検知することができる。
【0011】
また、前記処理装置は、前記導出されたパルス間の時間幅及び/又は前記導出されたパルス間の時間幅の複数サンプルにわたる頻度分布に基づいて、前記共振レーザ光の発振モードを判定するように構成されていることが好ましい。これによれば、粒子の計測に用いる共振レーザ光の発振モードが正常かどうか判別したり、その変化を監視したりすることによって、装置の精度を維持することができる。
【0012】
また、前記光共振器は、前記反射鏡を調整する反射鏡調整手段を備え、前記反射鏡調整手段は、前記処理装置による前記発振モードの判定に基づいて調整されるように構成されていることが好ましい。これによれば、共振レーザ光の発振モードに変化があった場合に、光共振器の反射鏡の角度等を調整することにより、共振レーザ光の発振モードを正常状態にもどすことができる。
【0013】
また、前記測定対象となるエアロゾルの粒子が、前記光共振器で形成された共振レーザ光の光路を該光共振器内で横切るように構成されていることが好ましい。これによれば、測定対象となるエアロゾルの粒子に光共振器で形成された共振レーザ光を直接照射することにより、粒子を高感度に計測することができる。
【0014】
また、前記光共振器には、前記反射鏡の一方の、前記共振レーザ光が形成される側とは反対面にレーザ発光体が設置され、前記レーザ発光体に所定の励起源を導入することにより発したレーザ光が、前記一方の反射鏡を通って前記光共振器に入射して前記共振レーザ光が形成されるように構成されていることが好ましい。これによれば、装置をよりコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の粒子計測装置によれば、測定対象となるエアロゾルの粒子にレーザ光のエネルギーを増幅させた共振レーザ光を照射することにより、粒子を高感度に計測することができる。また、共振レーザ光が粒子にあたった際に発する散乱光に応じた受光パルスを出力し、その受光パルスのうち時間的に隣り合うもののパルス間の時間幅を導出することにより、共振レーザ光の発振モードやその変化を検知することができる。よって、特別な検出器を備えるのに比べ、より簡便な装置構成で粒子計測装置の精度保証を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る粒子計測装置の第1の実施形態の概略構成を示す平面図である。
図2】シースエアノズルを模式的に表す断面図である。
図3】レーザ発振モードに対応した散乱光受光信号の例である。
図4】レーザ発振モードに対応したパルス間の時間幅の頻度分布の例である。
図5】本発明に係る粒子計測装置の第2の実施形態の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明を具体的に説明する。
【0018】
図1には、本発明の第1の実施形態に係る粒子計測装置100の概略構成を示す。この粒子計測装置100は光共振器1を備え、その光共振器1では2つの対向する反射鏡2a,2bの間をレーザ光が往復して、そのレーザ光のエネルギーが増幅した共振レーザ光3が形成されるようになっている。この光共振器1の基本構造をより詳細に説明すると、一方の反射鏡2aがレーザ光の一部を透過する部分透過性を有し、他方の反射鏡2bがレーザ光を完全にもしくはほぼ完全に反射する高反射性を有ている。そして、初期状態のレーザ光が部分透過性を有する反射鏡2aを通って光共振器1に入射すると、反射鏡2a,2b間の所定距離をレーザ光が往復して、定常波となり、干渉により特定波長以外のエネルギーが減じ、特定波長のエネルギーのみが蓄積される。このようにして上記共振レーザ光3が形成される。
【0019】
粒子計測装置100は、また、測定対象となるエアロゾルの粒子4を移送する粒子移送手段(図1中では24,25)を備えている。粒子移送手段は、導入したエアロゾルを、その粒子4の全てあるいはほぼ全てが共振レーザ光3に照射されるように、ビーム状に集束させつつ共振レーザ光3の光路を横切るように移送する。粒子移送手段の具体例としては、例えば特開2012−189483号公報に記載されている粒子測定装置のシースエアノズルなどが挙げられる。また、管状構造体の内部に内側に立設する絞り機構を備え、その管状構造体の内部に試料空気を通して粒子をビーム状に出射する構造となっているエアロダイナミックレンズなどであってもよい。更に、内径0.1〜1mm程度、長さ10mm程度の石英ガラス管に試料を通すことで所定の粒子ビーム径の条件を満たすようにした光透過性キャピラリなどであってもよい。
【0020】
図1に示す実施形態では、粒子移送手段としてシースエアノズルが用いられている。このシースエアノズルは、共振レーザ光3に直行する方向から粒子4を含む試料を吐出する試料吐出ノズル24と、その試料吐出ノズル24に対向配置され、粒子4を含む試料を回収する試料回収ノズル25とからなる。そして、吸引するポンプ5により、試料吐出ノズル24側から、試料回収ノズル25側へとエアロゾルの分散媒ごと粒子4を移送させるように構成されている。
【0021】
以下、図2を参照しつつシースエアノズルの特徴を更に詳細に説明する。図2に示されるシースエアノズル20の試料吐出ノズル24は、内部ノズル24aと、内部ノズル24aの外側に配置され内部ノズル24aの外径よりも大きい径を有する外部ノズル24bとの2重構造となっている。内部ノズル24aの一端(図2の上端側)には、試料21を導入するためのダクト(図示せず)が連結され、外部ノズル24bの一端(図2の上端側)には、シースエア22を導入するためのダクト(図示せず)が連結されている。そして、試料吐出ノズル24が装着される容器の内外圧力差等によって、内部ノズル24aの内部には試料21が流れるとともに、その外周部である内部ノズル24aと外部ノズル24bとの間の環状部分には、図示しない流量調整手段によって、試料21に対する流量比にして5〜10倍の流量のシースエア22が流れるようになっている。また、外部ノズル24bの他端(図2の下端側)はテーパ状に形成されている。このような構造により、試料21は、その外周を清浄な空気であるシースエア22で包み込まれ、非常に細い気流となって試料吐出ノズル24から吐出される。そして、その状態で分析領域を通過することで、試料21に含まれる粒子が、その分析領域においてビーム状に移送されることとなる。
【0022】
図2に示されるシースエアノズル20の試料回収ノズル25は、試料吐出ノズル24と概ね同じような2重構造となっており、内部ノズル25aと外部ノズル25bとから構成されている。内部ノズル25a及び外部ノズル25bの先端(図2の上端側)は、それぞれテーパ状に形成されている。そして、内部ノズル25aの先端の断面形状が、試料回収ノズル25に吸引される直前の試料21の流路断面形状と同等となっていることにより、内部ノズル25aの内部には試料吐出ノズル24から吐出された試料21が吸引され、その外周部である内部ノズル25aと外部ノズル25bとの間の環状部分には試料吐出ノズル24から吐出されたシースエア22が吸引されるようになっている。また、試料回収ノズル25の形状(各ノズル25a,25bの内径等)は、吸引される前後での試料21及びシースエア22の流速が大きく変化しないような形状とされている。このような構造により、試料21は、5〜10倍流量であるシースエア22により、その粒子数濃度が希釈されることがないので、必要に応じて次の分析領域にスムーズに移送させることが可能である。
【0023】
粒子計測装置100は、また、エアロゾルの粒子4が共振レーザ光3に照射された際に発する散乱光6を受光する散乱光受光手段7を備えている。散乱光受光手段は、共振レーザ光3を横切る粒子ごとにそれに対応する散乱光を受光できる手段であればよい。受光光学系により光学的に結合された光電子増倍管やフォトダイオードなどの検出素子とその駆動回路とから構成されている散乱光検出装置などが挙げられる。また、例えば特開昭61−14543号公報に記載されている光散乱式粒子計数装置では、粒子からの散乱光を複数位置で集光する集光光学系と、その集光光学系によって集光された光を電気信号に変換する光検出器とを備え、複数位置にわたる散乱光の強度に基づいて、粒子の数及び大きさ(もしくは粒径分布)を導出することができるようになっている。このように1つの粒子に対して複数の散乱光を受光できる機構であってもよい。
【0024】
粒子計測装置100は、また、散乱光受光手段7により受光された受光信号を受信する処理装置8を備えている。図1に示す実施形態では、散乱光受光手段7が、所定のケーブルからなる信号伝送手段9により処理装置8に接続されている。そして、粒子4が共振レーザ光3に照射された際に発する散乱光に対応した受光信号を、そのケーブルからなる信号伝送手段9を通じて処理装置8に送信して、それを処理装置8が受信するようになっている。受光信号の送受信の方式は、上記ケーブルのような態様に限られない。あるいは無線方式であってもよい。処理装置としてはマイクロコンピューター、マイクロプロセッサー、パーソナルコンピュータ等を用いることができ、処理装置が散乱光受光手段に電気を供給する電源供給手段を兼ねていてもよい。
【0025】
図1に示す実施形態では、光共振器1でエネルギーの増幅を受ける初期状態のレーザ光を、光共振器1の反射鏡2aの、共振レーザ光3が形成される側とは反対面に設置されたレーザ発光体10で形成させて、部分透過性を有する反射鏡2aを通じて光共振器1に入射するようにしている。このレーザ発光体10の基本構造をより詳細に説明すると、レーザ媒質と、そのレーザ媒質を挟む2つの対向する反射膜を有している。そして、励起源のエネルギーを受けて生じるレーザ媒質の誘導放出と、上記光共振器1と同様の共振のメカニズムにより、特定波長のエネルギーが両反射膜の間を往復して蓄積されたレーザ光が形成され、その一部が所定の部分透過性を有する一方の反射膜から射出するように構成されている。レーザ媒質に特に制限はなく、例えばNd:YVO4結晶やYAG結晶等が挙げられる。
【0026】
図1に示す実施形態では、また、上記レーザ光の励起源を生成する励起源生成手段11が、光ファイバケーブルからなる励起源移送手段12によりレーザ発光体10に接続されている。励起源生成手段11で生成した励起源は、その光ファイバケーブルからなる励起源移送手段12を通じてレーザ発光体10に導入されようになっている。励起源生成手段に特に制限はなく、市販のポンプレーザ等を用いることができる。レーザ媒質がNd:YVO4結晶やYAG結晶等であれば、波長800nm帯の半導体レーザを用いることが好ましい。励起源の導入の方式は、上記光ファイバケーブルのような態様に限られない。あるいは非接触方式であってもよい。
【0027】
図1に示す実施形態では、更に、光共振器1の反射鏡2bの、共振レーザ光3が形成される側とは反対側に、反射鏡2bの設置角度や反射鏡2aからの距離等を調整することを可能にする反射鏡調整手段13が設置されている。反射鏡調整手段としては、例えば、シグマ光機株式会社製のキネマティックミラーホルダなどを用いることができる。
【0028】
本発明に係る粒子計測装置は、以上に説明した粒子計測装置の基本構造において、上記処理装置が、上記散乱光受光手段により受光された受光信号に基づいて受光パルスを出力し、その受光パルスのうち時間的に隣り合うもののパルス間の時間幅を導出するように構成されている。より具体的には、上記処理装置が、例えば、(1)上記散乱光受光手段により受光された受光信号を受信し、記録したり、(2)その信号に基づいて散乱光強度を導出し、記録したり、(3)その導出された散乱光強度を予め格納したパルス認定のための閾値あるいは対照表と対比し、それが粒子からの散乱光に応じた受光パルスであると判定し、出力したり、(4)その出力された受光パルスのうち時間的に隣り合うもののパルス間の時間幅を導出し、記録したり、等の処理を実行することができる、メモリ等の記録手段やソフトウェアを備えることによって、粒子からの散乱光に応じた受光パルスのうち時間的に隣り合うもののパルス間の時間幅を導出するように構成されている。
【0029】
ここで「受光パルスのうち時間的に隣り合うもののパルス間の時間幅」とは、共振レーザ光が粒子にあたった際に発する散乱光に応じた受光パルスのうち時間的に隣り合う2つのパルス間の時間幅のことである。それは、基本的には、ある粒子が上記共振レーザ光を横切った後、次の粒子が上記共振レーザ光を横切るまでの時間幅に相当している。ただし、上述したように、一般にレーザ発振モードには、TEM00、TEM01、TEM02等のモードが存在し、それらモードによりレーザを断面で観測した際の強度分布が異なっている。例えば、発振モードTEM00では、図3(a)に示すように、レーザ光の強度分布はビーム中心から概ねガウス分布状となり、レーザ光を横切る1つの粒子からの散乱光強度は、図3(d)に示すように時間軸方向に1つのパルスを形成する。しかし、発振モードTEM01では、図3(b)に示すように、ビームが図面中の縦方向に2つに分離し、ガウス分布状の強度分布を2つ有しているので、図面中の縦方向に粒子が1つ横切った場合、図3(e)に示すように散乱光の受光信号は時間軸方向に2つのパルスとして観測される。同様に、発振モードTEM02では、図3(c)に示すように、ビームが図面中の縦方向に3つに分離し、ガウス分布状の強度分布を3つ有しているので、図面中の縦方向に粒子が1つ横切った場合、図3(f)に示すように散乱光の受光信号は時間軸方向に3つのパルスとして観測される。よって、「受光パルスのうち時間的に隣り合うもののパルス間の時間幅」とは、上記のような発振モードの変化にともない、粒子が1つ横切っただけでも複数のパルスとして観測される場合の、そのパルス間の時間幅に相当している場合がある。例えば、TEM00の発振モードのレーザ光を粒子が横切った時の1パルスの時間幅が10μs〜100μsである場合、レーザ発振モードの変化にともない、粒子が1つ横切っただけでも複数のパルスとして観測される場合の、そのパルス間の時間幅は通常0.1μs〜100μs程度と、粒子の個数に相当するパルス間の時間幅に比べて十分に短いため、それらを判別することができる。より具体的には、そのパルス間の時間幅が1.0μs〜100μs程度のものが出現したときに、更により具体的には、パルス間の時間幅があらかじめ定めた所定値以下、より現実的には10μs〜100μs程度以下のものが出現したときに、上記共振レーザ光の発振モードに変化が起こったことを検知することができる。
【0030】
このようなパルス間の時間幅の差異に基づいて、粒子の個数に相当するパルス間の時間幅か、レーザ発振モードの変化にともなうパルス間の時間幅か、それらを精度良く判別するためには、上記処理装置8は、高速な演算装置(例えば数十MHz以上の動作周波数を持つ)と、高速な記憶装置(例えば数十MHz以上の動作周波数を持つ)と、高速な電圧比較器(例えば数十MHz以上の動作周波数を持つ)とを備えた処理装置であることが好ましい。そして、その電圧比較器で所定閾値以上のパルスを検出し、その演算装置が検出した時刻を0.1μs以上の分解能で記憶装置に記録し、パルス間の時間幅を導出することなどによって、粒子の個数に相当するパルス間の時間幅か、レーザ発振モードの変化にともなうパルス間の時間幅か、それらを精度良く判別することが可能である。なお、分解能0.1μs以上で記録する場合には、演算時間を考慮すると、演算装置は一桁以上高速(例えば数百MHz〜数GHz)であることが好ましい。
【0031】
好ましい態様において、上記処理装置は、上記散乱光受光手段により受光された受光信号に基づいて受光パルスを出力し、その受光パルスのうち時間的に隣り合うもののパルス間の時間幅を複数サンプルにわたって導出して、その時間幅の頻度分布を導出するように構成されている。より具体的には、上記処理装置が、例えば、(1)上記散乱光受光手段により受光された受光信号を受信し、記録したり、(2)その信号に基づいて散乱光強度を導出し、記録したり、(3)その導出された散乱光強度を予め格納したパルス認定のための閾値あるいは対照表と対比し、それが粒子からの散乱光に応じた受光パルスであると判定し、出力したり、(4)その出力された受光パルスのうち時間的に隣り合うもののパルス間の時間幅を導出し、記録したり、(5)その時間幅の複数サンプルにわたる頻度分布を導出し、記録したり、等の処理を実行することができる、メモリ等の記録手段やソフトウェアを備えることによって、粒子からの散乱光に応じた受光パルスのうち時間的に隣り合うもののパルス間の時間幅を複数サンプルにわたって導出し、その時間幅の頻度分布を導出するように構成されている。
【0032】
ここで「時間幅の頻度分布」とは、共振レーザ光が粒子にあたった際に発する散乱光に応じた受光パルスのうち時間的に隣り合う2つのパルス間の時間幅の複数サンプルにわたる情報を積算して求めた頻度分布である。それは、基本的には、粒子が一定間隔で通過するなど特殊な条件でない限り、粒子がレーザ光をよぎるタイミングはランダムとなるはずである。そのため発振モードTEM00(図3a、d)の場合には、パルス間の時間幅の頻度分布は、図4(a)に示すようにピークをもたないか、比較的なだらかなピークしか観測されないはずである。しかし、発振モードTEM01(図3b、e)の場合には、粒子がレーザ光を通過する速度が一定であれば、レーザ光の強度分布に応じてパルス間の時間幅の頻度分布は、図4(b)に示すような顕著なピークをもつようになる。同様に、発振モードTEM02(図3c、f)の場合には、パルス時間幅の頻度分布は、レーザ光の強度分布が上下対称でなければ図4(c)に示すような2つの顕著なピークをもち、レーザ光の強度分布が上下対称であれば図4(b)に示すような1つの顕著なピークをもつようになる。そして、上述したように、例えば、TEM00の発振モードのレーザ光を粒子が横切った時の1パルスの時間幅が10μs〜100μsである場合、レーザ発振モードの変化にともない、粒子が1つ横切っただけでも複数のパルスとして観測される場合の、そのパルス間の時間幅は通常0.1μs〜100μs程度と、粒子の個数に相当するパルス間の時間幅に比べて十分に短いため、それらを判別することができる。より具体的には、パルス間の時間幅の頻度分布において、そのパルス間の時間幅が1.0μs〜100μs程度の位置にピークが出現したときに、更により具体的には、パルス間の時間幅があらかじめ定めた所定値以下の位置に、より現実的には10μs〜100μs程度以下の位置にピークが出現したときに、上記共振レーザ光の発振モードに変化が起こったことを検知することができる。なお、上記図3で説明されるような、粒子個々のパルスの情報に基づくよりも、上記図4で説明されるような、多数の粒子に関する情報が積算された頻度分布に基づくほうが、共振レーザ光の発振モードやその変化をより高感度に精度よく検知することができる。
【0033】
このようなパルス間の時間幅の頻度分布の差異に基づいて、粒子の個数に相当するパルス間の時間幅か、レーザ発振モードの変化にともなうパルス間の時間幅か、それらを精度良く判別するためには、上述と同様に、上記処理装置8は、高速な演算装置(例えば数十MHz以上の動作周波数を持つ)と、高速な記憶装置(例えば数十MHz以上の動作周波数を持つ)と、高速な電圧比較器(例えば数十MHz以上の動作周波数を持つ)とを備えた処理装置であることが好ましい。そして、その電圧比較器で所定閾値以上のパルスを検出し、その演算装置が検出した時刻を0.1μs以上の分解能で記憶装置に記録し、パルス間の時間幅及びその頻度分布を導出することなどによって、粒子の個数に相当するパルス間の時間幅か、レーザ発振モードの変化にともなうパルス間の時間幅か、それらを精度良く判別することが可能である。なお、分解能0.1μs以上で記録する場合には、演算時間を考慮すると、演算装置は一桁以上高速(例えば数百MHz〜数GHz)であることが好ましい。
【0034】
好ましい態様において、上記処理装置は、上記に説明したパルス間の時間幅及び/又はパルス間の時間幅の複数サンプルにわたる頻度分布に基づいて、上記共振レーザ光の発振モードを判定するように構成されている。より具体的には、上記処理装置が、例えば、(1)上記散乱光受光手段により受光された受光信号を受信し、記録したり、(2)その信号に基づいて散乱光強度を導出し、記録したり、(3)その導出された散乱光強度を予め格納したパルス認定のための閾値あるいは対照表と対比し、それが粒子からの散乱光に応じた受光パルスであると判定し、出力したり、(4)その出力された受光パルスのうち時間的に隣り合うもののパルス間の時間幅を導出し、記録したり、(5)その時間幅の複数サンプルにわたる頻度分布を導出し、記録したり、(6)その導出されたパルス間の時間幅及び/又はその頻度分布を予め格納した発振モード変化の認定のための閾値あるいは対照表と対比し、発振モードに変化があるかないかや、どの程度変化があるかを判定したり、等の処理を実行することができる、メモリ等の記録手段やソフトウェアを備えることによって、上記共振レーザ光の発振モードを判定するように構成されている。この場合、処理装置を例えばパーソナルコンピュータで構成して、上記判定に基づいてユーザーへの警告を表示するようにしてもよい。
【0035】
図5には、本発明の第2の実施形態に係る粒子計測装置200の概略構成を示す。この粒子計測装置200では、上記に説明した粒子計測装置100の構成において、更に、反射鏡調整手段13に電気信号を機械的な変位に変換できるアクチュエータ14が備わり、そのアクチュエータ14には、所定のケーブルからなる信号伝送手段15を通じて処理装置8からの調整信号が送信されるようになっている。そして、上記に説明した発振モードに変化があるかないかや、どの程度変化があるかなどの判定に基づいて、アクチュエータ14の動作を制御できるようになっている。より具体的には、上記処理装置が、例えば、(1)上記散乱光受光手段により受光された受光信号を受信し、記録したり、(2)その信号に基づいて散乱光強度を導出し、記録したり、(3)その導出された散乱光強度を予め格納したパルス認定のための閾値あるいは対照表と対比し、それが粒子からの散乱光に応じた受光パルスであると判定し、出力したり、(4)その出力された受光パルスのうち時間的に隣り合うもののパルス間の時間幅を導出し、記録したり、(5)その時間幅の複数サンプルにわたる頻度分布を導出し、記録したり、(6)その導出されたパルス間の時間幅及び/又はその頻度分布を予め格納した発振モード変化の認定のための閾値あるいは対照表と対比し、発振モードに変化があるかないかや、どの程度変化があるかを判定したり、(7)その判定の結果を予め格納したアクチュエータ作動の指令のための閾値あるいは対照表と対比し、アクチュエータに調整信号を送信したり、等の処理を実行することができる、メモリ等の記録手段やソフトウェアを備えることによって、アクチュエータ14の動作を制御できるように構成されている。この態様によれば、フィードバック制御をかけることにより、自動でレーザ発振モードを制御することができ、ユーザーの手を煩わすことなく、測定の精度を長期にわたって保証することが可能になる。
【符号の説明】
【0036】
1 光共振器
2a,2b 反射鏡
3 共振レーザ光
4 粒子
5 ポンプ
6 散乱光
7 散乱光受光手段
8 処理装置
9、15 信号伝送手段
10 レーザ発光体
11 励起源生成手段
12 励起源移送手段
13 反射鏡調整手段
14 アクチュエータ
20 シースエアノズル
21 試料
22 シースエア
24 試料吐出ノズル
24a、25a 内部ノズル
24b、25b 外部ノズル
25 試料回収ノズル
100、200 粒子計測装置
図1
図2
図3
図4
図5