(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱シールされたセパレータで正極箔が包装された個装セパレータ及び負極箔を、前記個装セパレータ及び前記負極箔それぞれが載置された搬送ステージから積層ステージへ積層ハンドラで搬送し、前記個装セパレータ及び前記負極箔を前記積層ステージ上で積層することで積層体を形成し、
前記積層ハンドラは、
水平方向に回転する駆動部と、
該駆動部に接続された2つのアーム部材と、
該2つのアーム部材にそれぞれ接続され、前記個装セパレータ及び前記負極箔を吸引保持するための2つの積層ヘッドと、
前記積層体の上部を押圧するためのクランプ爪と
を備えた積層装置であって、
前記積層ステージは、前記積層体の最上面が一定の高さになるよう調整可能な下降機構を有し、
前記2つの積層ヘッドは、それぞれ上下動させるためのシリンダが別個に搭載されており、
前記クランプ爪は、前記積層体を平面視した場合に、前記積層体の線対称となる位置を押圧するものであり、
前記クランプ爪は、前記積層体の最上面を押圧するための第1のクランプ爪と、
前記個装セパレータ及び前記負極箔を新たに前記積層体上に積層した後、前記第1のクランプ爪を前記積層体の新たな最上面を押圧するために移動させる間に、前記積層体の新たな最上面を押圧するための第2のクランプ爪と
で構成されていることを特徴とする積層装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
積載ステージには、積層ジグが設けられており、積層ジグ上にピックアップした正極の極板、負極の極板を交互に積層する。積層された正極の極板、負極の極板に位置ずれが生じないように、積層する都度クランプ爪により押さえつけて、所定の枚数に達した後、積層体を固定して排出している。
【0007】
しかし、特許文献1の第1移載アーム及び第2移載アームは、それぞれのアライメントステージの高さから積載ステージの任意の高さまでモータ制御で移動させる構成となっている。そのため、電池容量性能を向上させるために積層体の積層数が多くなればなるほど、第1移載アーム及び第2移載アームの高さ方向の移動時間が長くなり、結果として装置全体のタクトタイムが長くなるという問題点があった。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、装置全体のタクトタイムを短縮することができる積層装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係る積層装置は、熱シールされたセパレータで正極箔が包装された個装セパレータ及び負極箔を、前記個装セパレータ及び前記負極箔それぞれが載置された搬送ステージから積層ステージへ積層ハンドラで搬送し、前記個装セパレータ及び前記負極箔を前記積層ステージ上で積層することで積層体を形成し、前記積層ハンドラは、水平方向に回転する駆動部と、該駆動部に接続された2つのアーム部材と、該2つのアーム部材にそれぞれ接続され、前記個装セパレータ及び前記負極箔を吸引保持するための2つの積層ヘッドと、前記積層体の上部を押圧するためのクランプ爪とを備えた積層装置であって、前記積層ステージは、前記積層体の最上面が一定の高さになるよう調整可能な下降機構を有し、前記2つの積層ヘッドは、それぞれ上下動させるためのシリンダが別個に搭載されて
おり、前記クランプ爪は、前記積層体を平面視した場合に、前記積層体の線対称となる位置を押圧するものであり、前記クランプ爪は、前記積層体の最上面を押圧するための第1のクランプ爪と、前記個装セパレータ及び前記負極箔を新たに前記積層体上に積層した後、前記第1のクランプ爪を前記積層体の新たな最上面を押圧するために移動させる間に、前記積層体の新たな最上面を押圧するための第2のクランプ爪とで構成されていることを特徴とする。
【0010】
上記構成では、積層ステージは、積層体の最上面が一定の高さになるように調整することが可能な下降機構を有しているので、積層体の積層数が多くなった場合であっても、アーム部材の高さ方向の移動時間を短くすることができる。また、2つの積層ヘッドは、それぞれ上下動させるためのシリンダが別個に搭載されているので、2つの積層ヘッドを別個に上下動させることができる。したがって、積層ステージ上においてクランプ動作に時間を要した場合であっても、個装セパレータ又は負極箔を吸引保持した時点で積層ヘッドを搬送ステージ装置から離すことができ、搬送ステージ装置を次の個装セパレータ又は負極箔を吸引保持する工程へと移行することができる。よって、装置全体としてタクトタイムを短縮することが可能となる。
また、クランプ爪は、積層体を平面視した場合に、積層体の線対称となる位置を押圧するものであり、クランプ爪は、積層体の最上面を押圧するための第1のクランプ爪と、個装セパレータ及び負極箔を新たに積層体上に積層した後、第1のクランプ爪を積層体の新たな最上面を押圧するために移動させる間に、積層体の新たな最上面を押圧するための第2のクランプ爪とで構成されているので、第1のクランプ爪を移動させる間、第2のクランプ爪で積層された積層体(個装セパレータ及び負極箔)を押圧することができ、速やかに次の工程へと移行することができる。したがって、装置全体としてタクトタイムを短縮することが可能となる。また、第1のクランプ爪及び第2のクランプ爪により、積層体を平面視した場合に積層体の線対称となる位置を押圧しているので、積層体の積層ずれを抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る積層装置は、前記クランプ爪上面の周縁部が面取りされていることが好ましい。
【0012】
上記構成では、クランプ爪上面の周縁部が面取りされているので、クランプ爪の上に重ねられた個装セパレータ又は負極箔に折れ曲がり等の障害が発生する可能性を低減することが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る積層装置は、前記積層ヘッドは、それぞれ荷重センサを備え、積層時に前記個装セパレータ又は前記負極箔への押圧力を測定することが好ましい。
【0016】
上記構成では、積層ヘッドにそれぞれ荷重センサを備え、積層時に個装セパレータ又は負極箔への押圧力を測定するので、測定された押圧力を積層ヘッドの降下量にフィードバック制御することにより、過度の荷重が個装セパレータ及び負極箔にかかることを回避することが可能となる。
【0017】
また、本発明に係る積層装置は、前記積層ヘッドの降下速度は、積層されている前記個装セパレータ又は前記負極箔の表面から所定の距離まで接近した時点で減速されることが好ましい。
【0018】
上記構成では、積層ヘッドの降下速度は、積層されている個装セパレータ又は負極箔の表面から所定の距離まで接近した時点で減速されるので、クランプ爪による衝撃を緩和することができ、個装セパレータ及び負極箔の表面のダメージを低減することが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る積層装置は、前記クランプ爪は、前記熱シールの画像を撮像する位置に検査孔を設けてあることが好ましい。
【0020】
上記構成では、クランプ爪で積層体を押圧しながら、熱シールを行う位置を検査することができるので、積層体を構成する個装セパレータや負極箔のしわの発生、高さの変動等による誤認識の可能性を低減することができる。
【0021】
また、本発明に係る積層装置は、前記個装セパレータ及び前記負極箔それぞれが載置された前記搬送ステージにおいて、前記個装セパレータ及び前記負極箔の厚みを測定するセンサを前記積層ヘッドに備えることが好ましい。
【0022】
上記構成では、個装セパレータ及び負極箔それぞれが載置された搬送ステージにおいて、個装セパレータ及び負極箔の厚みを測定するので、積層された状態での各個装セパレータの収縮による厚み変動に左右されることなく、カメラで積層状態を監視することが可能となる。また、厚みを測定することで電極箔が2枚重なっている場合も検出することができ、積層不良を未然に防止することも可能となる。
【発明の効果】
【0023】
上記構成によれば、積層ステージは、積層体の最上面が一定の高さになるように調整することが可能な下降機構を有しているので、積層体の積層数が多くなった場合であっても、アーム部材の高さ方向の移動時間を短くすることができる。また、積層ヘッドは、それぞれ上下動させるためのシリンダが別個に搭載されているので、2つの積層ヘッドを別個に上下動させることができる。したがって、積層ステージ上においてクランプ動作に時間を要した場合であっても、個装セパレータ又は負極箔を吸引保持した時点で積層ヘッドを搬送ステージから離すことができ、搬送ステージを次の個装セパレータ又は負極箔を吸引保持する工程へと移行することができる。よって、装置全体としてタクトタイムを短縮することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る積層装置を含む積層型電池製造装置の構成の一部を示す上面から見た部分模式図であり、
図2は、本発明の実施の形態に係る積層装置を含む積層型電池製造装置の構成の一部を示す斜視図である。
【0026】
図1及び
図2に示すように、本実施の形態に係る積層装置を含む積層型電池製造装置の構成の一部は、積層ハンドラ100と、積層ハンドラ100の右側に配置された第1の搬送ステージ200と、積層ハンドラ100の左側に配置された第2の搬送ステージ300と、積層ハンドラ100の正面側に配置された第3の搬送ステージ400とを備えている。すなわち、積層ハンドラ100の周囲において、第1の搬送ステージ200、第3の搬送ステージ400、第2の搬送ステージ300の順でそれぞれ90度の角度で配置されている。
【0027】
第1の搬送ステージ200は、
図1に示すように、正極箔(正極の極板)Pの上下を熱シールされたセパレータSで包装した個装セパレータP’を連続して1枚ずつ搬送するベルトコンベアであり、正極箔PをセパレータSとともに積層ハンドラ100に順次搬送する。
【0028】
第2の搬送ステージ300は、
図1に示すように、負極箔(負極の極板)Nを連続して1枚ずつ搬送するベルトコンベアであり、負極箔Nを積層ハンドラ100に順次搬送する。
【0029】
第3の搬送ステージ400は、
図1に示すように、熱シールされたセパレータSで包装された正極箔(正極の極板)P及び負極箔(負極の極板)Nが所定枚数積載されてなる積層体Gを別工程に搬送するベルトコンベアであり、積層ハンドラ100が形成した積層体Gを順次別工程に搬送する。
【0030】
積層ハンドラ100は、第1の搬送ステージ200から搬送されてきたセパレータSで包装された正極箔Pと、第2の搬送ステージ300から搬送されてきた負極箔Nとを交互に順次積載して、正極箔(正極の極板)P及び負極箔(負極の極板)NをセパレータSを介して積載した積層体Gを形成し、積層体Gを第3の搬送ステージ400に順次送り出す。
【0031】
なお、本実施の形態では、正極箔(正極の極板)Pとして、例えばアルミニウム箔の両面にコバルト酸リチウム等の溶液を塗布したものを用いる。これにより、正極箔Pは、光を遮蔽する性質(遮光性)を有する。また、以下の説明においては、正極箔(正極の極板)Pを熱シールされたセパレータSで包装したものを「個装セパレータP’」という。なお、正極箔Pは、アルミニウム箔の両面にコバルト酸リチウム等の溶液を塗布していない部分として、タブを有している。
【0032】
また、負極箔(負極の極板)Nとして、例えば銅箔の両面に炭素材料等の溶液を塗布したものを用いる。これにより、負極箔Nも光を遮蔽する性質(遮光性)を有する。なお、負極箔Nは、銅箔の両面に炭素材料等の溶液を塗布していない部分として、タブを有している。
【0033】
また、セパレータSとしては、例えばPP(ポリプロピレン樹脂)、PE(ポリエチレン樹脂)等の絶縁フィルムを用いる。これにより、セパレータSは光を透過する性質(透光性)を有する。
【0034】
積層ハンドラ100は、
図2に示すように、第1の搬送ステージ(個装セパレータ用)200と、第2の搬送ステージ(負極箔用)300と、個装セパレータP’及び負極箔Nが積層される積層ステージ130と、正極用(個装セパレータP’用)の搬送ステージ装置110及び負極用(負極箔N用)の搬送ステージ装置120に載置された個装セパレータP’及び負極箔Nを交互に順次保持し、積層ステージ130に移送して積層ステージ130上において順次積層するアーム部140とを備える。積層ステージ130は、積層体Gの最上面が一定の高さになるように調整することが可能な下降機構を有している。
【0035】
アーム部140は、
図2に示すように、装置中心に垂直に立設された駆動部141と、駆動部141の周面に設けられた第1のアーム部材142及び第2のアーム部材143とで構成されている。
【0036】
駆動部141は、図示しない駆動モータにより90度の角度で回転する。駆動部141の回転に追随して、第1のアーム部材142及び第2のアーム部材143を回転させ、個装セパレータP’又は負極箔Nを個装セパレータP’用の搬送ステージ装置110又は負極箔N用の搬送ステージ装置120から積層ステージ130まで移動させる。
【0037】
図3は、本発明の実施の形態に係る積層装置のアーム部140の回転状態を示す上面から見た部分模式図である。
図3(a)に示すように、駆動部141が反時計方向に向かって回転した状態(第1状態)である場合、第1のアーム部材142が個装セパレータP’用の搬送ステージ装置110の正極用(個装セパレータP’用)アライメントステージ111の上方に位置し、第2のアーム部材143が積層ステージ130の積載ステージ131の上方に位置する。一方、
図3(b)に示すように、駆動部141が時計方向に向かって回転した状態(第2状態)である場合、第1のアーム部材142は積載ステージ131の上方に位置し、第2のアーム部材143は負極箔N用の搬送ステージ装置120の上方に位置する。
【0038】
第1のアーム部材142及び第2のアーム部材143は、互いに90度の角度で、かつ駆動部141から互いに直交する方向に接続されている。このため、第1のアーム部材142及び第2のアーム部材143は、駆動部141の回転に追随して水平方向に回転する。すなわち、駆動部141が第1状態から第2状態へと90度回転した場合、第1のアーム部材142は、個装セパレータP’用アライメントステージ111の上方位置から積載ステージ131の上方位置まで移動すると同時に、第2のアーム部材143は、積載ステージ131の上方位置から負極用(負極箔N用)アライメントステージ121の上方位置に移動する。また、駆動部141が第2状態から第1状態へと90度回転した場合、第2のアーム部材143は、負極箔N用アライメントステージ121の上方位置から積載ステージ131の上方位置まで移動すると同時に、第1のアーム部材142は、積載ステージ131の上方位置から個装セパレータP’用アライメントステージ111の上方位置に移動する。
【0039】
第1のアーム部材142は、駆動部141の径方向先端部において個装セパレータP’用アライメントステージ111の上面と対向するように設けられた第1の積層ヘッド142aを備えている。第1の積層ヘッド142aにより、個装セパレータP’用アライメントステージ111に載置された個装セパレータP’を吸引させて保持する。また、第1の積層ヘッド142aは、図示しない空気吸引装置の吸引を停止することにより吸引力を失い、個装セパレータP’の保持を解除して積層ステージ130の積載ステージ131に積載する。
【0040】
同様に、第2のアーム部材143は、駆動部141の径方向先端部において積層ステージ130の上面と対向するように設けられた第2の積層ヘッド143aを備えている。第2の積層ヘッド143aにより、個装セパレータP’の保持を解除して積層ステージ130の積載ステージ131に積載した後、負極箔N用アライメントステージ121に載置された負極箔Nを吸引して保持する。
【0041】
このように、第1のアーム部材142又は第2のアーム部材143は、個装セパレータP’用アライメントステージ111又は負極箔N用アライメントステージ121に載置された個装セパレータP’又は負極箔Nを吸引保持し、積層ステージ130の積載ステージ131まで移送したあと、積層ステージ130の積載ステージ131上に積載することを交互に繰り返すことにより、積載ステージ131上に正極箔Pと負極箔Nとを熱シールされたセパレータSを介して積層状態にした積層体Gを形成することができる。
【0042】
図4は、本発明の実施の形態に係る積層装置の概略構成を示す斜視図である。
図4に示すように、正極箔Pの上下を熱シールされたセパレータSで包装した個装セパレータP’及び負極箔Nを、個装セパレータP’用の搬送ステージ装置110及び負極箔N用の搬送ステージ装置120から積載ステージ131へと移送する積層ハンドラ100と、積層ハンドラ100の先端に装着した、互いに直交するよう設けられた第1のアーム部材142及び第2のアーム部材143にそれぞれ取り付けられており、個装セパレータP’及び負極箔Nを吸引保持しながら交互に移動して、積層ステージ130の積載ステージ131上に積載する第1の積層ヘッド142a、第2の積層ヘッド143aとを備えている。積層ハンドラ100は、図示しない駆動モータを備えており、第1のアーム部材142及び第2のアーム部材143を一体となって移動させる。
【0043】
図5は、本発明の実施の形態に係る積層装置の第1のアーム部材142(第2のアーム部材143)の概略構成を示す断面図である。
図5に示すように、第1(第2)のアーム部材142(143)は、先端部分に第1(第2)の積層ヘッド142a(143a)を備えている。積層ハンドラ100は、第1(第2)の積層ヘッド142a(143a)それぞれを別個に上下動させる第1(第2)のシリンダ142b(143b)を備えている。
【0044】
図5に示すように、第1(第2)のシリンダ142b(143b)は、第1(第2)の積層ヘッド142a(143a)の近傍に配置されていることが好ましい。第1(第2)のシリンダ142b(143b)が駆動部141の近傍に配置されているのに対して、第1(第2)のシリンダ142b(143b)の先に取り付けられた機構の重さが小さくなる。そのため、第1(第2)のシリンダ142b(143b)が、先端部分に取り付けられた機構の重さによって、上下に振動しにくくなる。その結果、第1(第2)の積層ヘッド142a(143a)の動作を精緻に制御することができる。
【0045】
なお、第1(第2)のシリンダ142b(143b)は、駆動部141から第1(第2)の積層ヘッド142a(143a)までの間であれば、いずれの場所に配置されていても良い。
【0046】
第1(第2)の積層ヘッド142a(143a)は、第1(第2)のシリンダ142b(143b)により、それぞれ独立して上下動することができる。そのため、例えば積載ステージ131上においてクランプ動作に時間を要した場合であっても、個装セパレータP’又は負極箔Nを吸引保持した時点で第1(第2)の積層ヘッド142a(143a)を第1(第2)の搬送ステージ200(300)から離すことができ、第1(第2)の搬送ステージ200(300)を次の個装セパレータP’又は負極箔Nを吸引保持する工程へと速やかに移行することができる。よって、装置全体としてタクトタイムを短縮することが可能となる。
【0047】
なお、積層ヘッド142a、143aのそれぞれに、図示しない荷重センサを備え、個装セパレータP’又は負極箔Nを積層する場合に押圧力を測定しても良い。この場合、例えば荷重センサで測定された押圧力を、積層ヘッド142a、143aの降下量にフィードバック制御することにより、過度の荷重が個装セパレータP’及び負極箔Nにかかることを未然に回避することが可能となる。
【0048】
また、後述するクランプ爪の降下速度は、積層されている個装セパレータP’又は負極箔Nの表面から所定の距離まで接近した時点で減速することが好ましい。これにより、後述するクランプ爪による衝撃を緩和することができ、個装セパレータP’及び負極箔Nの表面の損傷を低減することが可能となる。
【0049】
積層ステージ130の積載ステージ131の上には、第1の積層ヘッド142a又は第2の積層ヘッド143aにより吸引保持されて移送されてきた、個装セパレータP’及び負極箔Nが、交互に積層される。積層ステージ130の積載ステージ131上には、積層体Gを固定するための積層ジグ(
図8の81)が設けられており、積層ステージ130の積載ステージ131の上部及び両側面には、積層体Gを保持する一対のクランプ爪を備えている。
【0050】
図6は、本発明の実施の形態に係る積層装置の第1のクランプ爪及び第2のクランプ爪の構成を示す斜視図である。
図6に示すように、クランプ爪(第1のクランプ爪)61は、積層体Gを保持するためのものであり、積載ステージ131において、積層体Gの四隅を両側から保持するように、積層体Gを挟んで2基ずつ備えている。本実施の形態では、第1のクランプ爪61に加えて、第1のクランプ爪61の間にクランプ爪(第2のクランプ爪)62を積層体Gを挟んで備えている。
【0051】
図7は、本発明の実施の形態に係る積層装置の第1のクランプ爪61及び第2のクランプ爪62の構成を示す平面図である。
図7には、積層ジグ81(
図8参照)を挟んで両側に配置されている第1のクランプ爪61の片側を示している。
【0052】
積層ジグ81(
図8参照)を挟んで両側には、第1のクランプ爪61が2基ずつ配置されており、併せて4か所で積層体Gを保持することができる。そして、一対の第1のクランプ爪61の間に第2のクランプ爪62を備えている。
【0053】
第1のクランプ爪61とは別に第2のクランプ爪62を備えているので、第1のクランプ爪61を差し替える間、第2のクランプ爪62で積層体Gを押圧することができる。したがって、積層ヘッド142a、143aを速やかに次の工程へと移行することができる。これにより、装置全体としてタクトタイムを短縮することが可能となる。
【0054】
また、第2のクランプ爪62により積層体Gを押圧していない間は、複数の第1のクランプ爪61により、積層体G上部の4つの角を線対称に押圧している。第2のクランプ爪62で押圧し、第1のクランプ爪61を差し替えている間も、複数の第2のクランプ爪62により、積層体G上部を線対称に押圧している。そのため、押圧による積層体Gの積層ずれを抑制することが可能となる。なお、積層される個装セパレータP’及び負極箔Nのタブを除いた、両面にコバルト酸リチウム等の溶液や炭素材料等の溶液を塗布している部分(塗工部)を線対称に押圧できていれば、位置ずれを抑制することができる。なぜなら、タブの部分は、正極箔P全体に対して小さく、タブの位置が塗工部の線対称からずれた位置に配置されるような商品構造であっても、積層時の位置ずれを抑制することができるからである。
【0055】
なお、第1のクランプ爪61上面の周縁部が面取りされていることが好ましい。
図7では、第1のクランプ爪61の周縁部に、積層体Gを保持する面に向かってテーパ71が設けられている。これにより、第1のクランプ爪61の上に積載された個装セパレータP’又は負極箔Nに傷、折れ曲がり等の障害が発生する可能性を低減することが可能となる。
【0056】
また、
図7に示すように、第1のクランプ爪61の熱シール位置(検査する基準位置)73に検査孔72を設けている。検査孔72を通して図示しないカメラで積層状態を検査することにより、熱シールにより生じたしわ、あるいは高さ変動等の影響を受けることがなく、高い精度で検査することが可能となる。なお、第2のクランプ爪62の熱シール位置(検査する基準位置)に、検査孔72を設けても良い。また、回転方向の位置ずれを測定するには、少なくとも2箇所以上の熱シール位置をカメラで測定する必要があり、それらの距離が離れている方が高い精度で測定することができる。
【0057】
積層ジグ81は、積層ジグ81専用のクランプ爪により積層ステージ130に着脱可能となっている。これにより、一定量の個装セパレータP’又は負極箔Nが積層された積層体Gを、第3の搬送ステージ400へ容易に送り出すことができる。
図8は、本発明の実施の形態に係る積層装置の積層ジグ81の取り付け状態を説明するための斜視図である。
【0058】
図8に示すように、積層ジグ81は、積層ステージ130の突起部130aに誘導穴84を嵌入して固定される。積層ステージ130には、積層ジグ81の検査孔と対応する位置に貫通孔93を設けてある。検査孔及び貫通孔93を用いてクランプ爪82の位置を確認する光センサを設けても良い。
【0059】
図9は、本発明の実施の形態に係る積層装置の積層ジグ81の状態を示す模式図である。
図9(a)は、クランプ爪82により積層体Gが固定されている場合の平面図を、
図9(b)は、クランプ爪82により積層体Gが固定されている場合の断面図を、
図9(c)は、クランプ爪82を開いた場合の平面図を、
図9(d)は、クランプ爪82を開いた場合の断面図を、それぞれ示している。
【0060】
図9(a)に示すように、クランプ爪82を矢印方向に回転させることにより、
図9(b)に示すように、積層体Gをクランプ爪82で保持することができる。また、摩擦の大きい弾性体92を敷くことにより、積層ジグ81と積層体Gとが密着しやすく、取り扱い時の振動等により積層体Gの位置ずれが生じにくくなる。
【0061】
この場合、検査孔83はクランプ爪82により光を遮られることがないので、センサ91によりクランプ爪82が検査孔83上に位置していない、すなわちクランプ爪82が閉じられた状態であると判断することができる。
【0062】
一方、
図9(c)に示すように、クランプ爪82を矢印方向に回転させることにより、
図9(d)に示すように、積層体Gを開放することができる。この場合、検査孔83はクランプ爪82により光を遮られるので、センサ91によりクランプ爪82が検査孔83上に位置する、すなわちクランプ爪82が開かれた状態であると判断することができる。
【0063】
このようにクランプ爪82の状態をセンサ91で判断することができるので、例えばクランプ爪82が閉じている状態で積層体Gが搬送された場合であっても、積載することを停止することができるので、誤動作により積層体Gが損傷する等のトラブルを未然に回避することができる。
【0064】
なお、
図8に示すように、積層ジグ81に、例えばRF−ID85を貼付して、RF−ID85の識別番号をトレー情報に対応付けて記憶するようにしても良い。RF−ID85を用いることにより、作業履歴、その場合の搭載精度等をログデータとして対応付けて記憶することにより、多様なデータを取得することができる。
【0065】
また、積層ジグ81に付与された基準マーク86に基づいて、積層ジグ81が搭載された位置を第1の搬送ステージ200及び/又は第2の搬送ステージ300にフィードバックして、位置ずれを補正しても良い。積層ジグ81が積層ステージ130の積載ステージ131に搭載される位置にも経時的な位置ずれが生じるので、積層ジグ81に対して電極が正しい位置からオフセットされてずれた位置に積層されるおそれがあるからである。
【0066】
この場合、積層ジグ81の基準マーク86を図示しない上部のカメラ(撮像手段)で撮像した画像から検出し、積層ジグ81を搭載した場合の正極箔P又は負極箔Nの位置ずれ量を算出する。算出した位置ずれ量に基づいて位置を補正することで、積層ジグ81に対する積層位置のオフセットを解消することができる。
【0067】
また、第1(第2)の搬送ステージ200(300)において、個装セパレータP’及び負極箔Nの厚みを測定しても良い。個装セパレータP’及び負極箔Nの厚みを測定するので、積層された状態での各個装セパレータP’及び負極箔Nの収縮による厚み変動に左右されることなく、カメラで積層状態を監視することが可能となる。また、厚みを測定することで電極箔(正極箔、負極箔)が2枚重なっている場合も検出することができ、積層不良を未然に防止することも可能となる。
【0068】
以上のように本実施の形態によれば、第1(第2)の積層ヘッド142a(143a)は、第1(第2)のシリンダ142b(143b)により、それぞれ独立して上下動することができる。そのため、例えば積載ステージ131上においてクランプ動作に時間を要した場合であっても、個装セパレータP’又は負極箔Nを吸引保持した時点で第1(第2)の積層ヘッド142a(143a)を第1(第2)の搬送ステージ200(300)から離すことができ、第1(第2)の搬送ステージ200(300)を次の個装セパレータP’又は負極箔Nを吸引保持する工程へと速やかに移行することができる。よって、装置全体としてタクトタイムを短縮することが可能となる。
【0069】
その他、上述した実施の形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができることは言うまでもない。