特許第6597046号(P6597046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597046
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】高電子移動度トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20191021BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20191021BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20191021BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   H01L29/80 H
   H01L21/205
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-162602(P2015-162602)
(22)【出願日】2015年8月20日
(65)【公開番号】特開2017-41543(P2017-41543A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】中田 健
【審査官】 恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−256719(JP,A)
【文献】 特開2010−153493(JP,A)
【文献】 特開2001−274375(JP,A)
【文献】 特開2015−037105(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0267078(US,A1)
【文献】 特開2006−190991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 21/205
H01L 29/778
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaNチャネル層と、
前記GaNチャネル層上に設けられたInAlN電子供給層と、
前記InAlN電子供給層の表面に含まれる第1及び第2の領域上に設けられ、n型不純物がドープされたAlGaN層と、
前記InAlN電子供給層上であって前記第1の領域と前記第2の領域との間の領域上に設けられたゲート電極と、
前記第1の領域上の前記AlGaN層上に設けられたソース電極と、
前記第2の領域上の前記AlGaN層上に設けられたドレイン電極と、
を備え、
前記AlGaN層における前記InAlN電子供給層との界面を含む領域のAl組成が、20%以上であり、前記AlGaN層の前記界面とは反対側の表面を含む領域のAl組成よりも大き
前記AlGaN層は、前記界面を含む第1層と、前記第1層上に設けられ前記表面を含む第2層とを有し、
前記第1層のAl組成が、20%以上であり、前記第2層のAl組成よりも大きく、
前記第1層及び前記第2層の厚さが共に40nm以上である、高電子移動度トランジスタ。
【請求項2】
前記AlGaN層の厚さが100nm以下である、請求項に記載の高電子移動度トランジスタ。
【請求項3】
前記InAlN電子供給層の厚さが9nm以上12nm以下である、請求項1または請求項2に記載の高電子移動度トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電子移動度トランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電界効果トランジスタ及びその製造方法が記載されている。図5は、この文献に記載された電界効果トランジスタの構造を示す断面図である。同図に示されるように、この電界効果トランジスタ100は、サファイア基板101上に順に形成された、アンドープGaNバッファ層102、n型AlGaN電子供給層103、及びn型InAlGaNキャップ層104を備える。n型InAlGaNキャップ層104の上には、n型InAlGaNキャップ層104と接し且つソース電極及びドレイン電極となるTi/Alオーミック電極105が形成されている。n型AlGaN電子供給層103の一部はn型InAlGaNキャップ層104の開口から露出しており、その露出表面上には、n型AlGaN電子供給層103と接し且つゲート電極となるPd−Siショットキー電極106が形成されている。
【0003】
特許文献2には、InAlNを用いた半導体装置及びその製造方法が記載されている。図6は、この文献に記載された高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor;HEMT)の構造を示す断面図である。同図に示されるように、このHEMT200は、基板210上に形成されたGaN電子走行層221と、電子走行層221上に形成されたInAlN電子供給層222と、電子供給層222上に形成されたAlGaN上面層223と、上面層223の開口から露出した電子供給層222の表面上に形成されたゲート電極241と、上面層223上に形成されたソース電極242及びドレイン電極243とを備える。ソース電極242及びドレイン電極243が形成される領域の直下における上面層223及び電子供給層222には、Si等の不純物元素をイオン注入して形成された第1導電型領域220aが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−261642号公報
【特許文献2】特開2015−037105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GaNなどのIII族窒化物半導体は、広いバンドギャップを有すると共に、極めて大きな絶縁破壊電圧及び飽和電子速度を有するので、電子デバイスの高出力且つ高速な動作を実現するための材料として注目されている。特に、GaN層上にAlGaN層やInAlN層が積層されたいわゆるヘテロ接合構造においては、GaN層中のヘテロ接合界面近傍に電子が高濃度に蓄積し、いわゆる二次元電子ガスが形成される。この二次元電子ガスは高い電子移動度を示すので、HEMT構造に有用である。
【0006】
ところで、トランジスタの動作周波数を高めることは即ち遮断周波数(ft)を大きくすることであり、その為にはゲート容量を低減して相互コンダクタンス(gm)を増大させるとよい。相互コンダクタンスを増大させるためには、ソース−ゲート間のアクセス抵抗を低減することが効果的である。ソース−ゲート間のアクセス抵抗の低減のためには、電子供給層の厚さを薄くすること、及びソース電極のコンタクト抵抗を低減することが望ましい。
【0007】
電子供給層の厚さに関しては、例えば薄い膜厚で高い電子濃度を得ることができるInAlNを電子供給層に用いるとよい。これにより、電子供給層の厚さを薄くし、ソース−ゲート間のアクセス抵抗を低減することができる。
【0008】
これに対し、ソース電極のコンタクト抵抗の低減は容易ではない。例えば、GaAs系のHEMTでは、電子供給層(例えばAlGaAs)の上に形成された高濃度のn型GaAs層の上にソース電極を形成することにより、ソース電極のコンタクト抵抗を低減し得る。しかしながら、GaN系のHEMTにおいて、InAlN電子供給層の上に成長させた高濃度のn型GaN層の上にソース電極を形成した場合、n型GaN層と電子供給層とのヘテロ界面に逆ピエゾ電荷が生じ、伝導帯の底エネルギーEcとフェルミ準位エネルギーEfとの差が広がる。これにより、当該界面のバンド不連続量が大きくなってポテンシャルバリアが形成される。このことは、ソース電極のコンタクト抵抗を増大する方向に作用するので、ソース−ゲート間のアクセス抵抗の低減を妨げる要因となる。
【0009】
なお、特許文献1に記載されているように、n型GaN層ではなくn型InAlGaN層を電子供給層上に形成することも考えられる。しかし、n型InAlGaN層はInを含むので成長温度を低くしなければならず、炭素原子の混入(コンタミネーション)が増すので、n型不純物を高濃度でドープすることが難しいという問題がある。
【0010】
また、特許文献2に記載されているように、Si等の不純物をイオン注入することによってソース電極のコンタクト抵抗を低減することも考えられる。しかしながら、電子供給層とチャネル層との界面よりも深い領域に注入された不純物による低抵抗化がバッファリーク電流を増大させ、デバイスのピンチオフ特性を劣化させてしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、逆ピエゾ電荷による影響を抑えてソース電極のコンタクト抵抗を低減することが可能なGaN系の高電子移動度トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る高電子移動度トランジスタは、GaNチャネル層と、GaNチャネル層上に設けられたInAlN電子供給層と、InAlN電子供給層の表面に含まれる第1及び第2の領域上に設けられ、n型不純物がドープされたAlGaN層と、InAlN電子供給層上であって第1の領域と第2の領域との間の領域上に設けられたゲート電極と、第1の領域上のAlGaN層上に設けられたソース電極と、第2の領域上のAlGaN層上に設けられたドレイン電極とを備え、AlGaN層におけるInAlN電子供給層との界面を含む領域のAl組成が、20%以上であり、AlGaN層の界面とは反対側の表面を含む領域のAl組成よりも大きい。
【発明の効果】
【0013】
本発明による高電子移動度トランジスタによれば、逆ピエゾ電荷による影響を抑えてソース−ゲート間のアクセス抵抗を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態に係るHEMTの構成を示す断面図である。
図2図2は、n型AlGaN層の厚さとシート抵抗との関係の一例を示すグラフである。
図3図3は、第2実施形態に係るHEMTの構成を示す断面図である。
図4図4は、比較例、従来例、第1実施例、及び第2実施例における、シート抵抗、ゲート電極のコンタクト抵抗、ゲート−ソース間のアクセス抵抗、及び遮断周波数を示す図表である。
図5図5は、特許文献1に記載された電界効果トランジスタの構造を示す断面図である。
図6図6は、特許文献2に記載されたHEMTの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る高電子移動度トランジスタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る高電子移動度トランジスタ(HEMT)1Aの構成を示す断面図である。HEMT1Aは、基板11、窒化物半導体層12、ソース電極31、ドレイン電極32、及びゲート電極33を備える。窒化物半導体層12は、バッファ層13、GaNチャネル層14、InAlN電子供給層15、及びn型AlGaN層16がこの順に積層されて成る。このHEMT1Aは、絶縁性の表面保護膜41によって覆われている。
【0017】
基板11は、結晶成長用の基板である。基板11の構成材料としては、例えばSiCやサファイア等が挙げられる。バッファ層13は、基板11上にエピタキシャル成長した層である。バッファ層13の厚さは、例えば10nm以上30nm以下である。バッファ層13は、例えばAlN又はAlGaNといった、Alを含むIII族窒化物半導体からなる。GaNチャネル層14は、バッファ層13上にエピタキシャル成長した層である。GaNチャネル層14の厚さは、例えば400nm以上2000nm以下である。
【0018】
InAlN電子供給層15は、GaNチャネル層14上にエピタキシャル成長した層である。InAlN電子供給層15の厚さは、例えば9nm以上12nm以下である。HEMT1Aが動作する際には、GaNチャネル層14とInAlN電子供給層15との界面に2次元電子ガス(2 Dimensional Electron Gas;2DEG)が生じることにより、GaNチャネル層14におけるInAlN電子供給層15側の表面近傍に、チャネル領域が形成される。好適なIn組成は例えば15%以上19%以下であり、GaNチャネル層14との格子整合を考慮して定められる。一例では、InAlN電子供給層15のIn組成は17%である。
【0019】
n型AlGaN層16は、InAlN電子供給層15上にエピタキシャル成長した高濃度n型半導体層であって、InAlN電子供給層15の表面に含まれる第1の領域15a上に設けられた第1部分16aと、第2の領域15b上に設けられた第2部分16bとを含む。第1部分16aと第2部分16bとの間の部分はエッチングにより除去され、開口部16cが形成されている。n型AlGaN層16は、n型不純物(例えばSi)が高濃度でドープされたAlGaNからなる。n型AlGaN層16の厚さは例えば50nm以上100nm以下であり、n型不純物濃度は例えば1×1018cm-3以上5×1018cm-3以下である。
【0020】
ここで、本実施形態のn型AlGaN層16においては、InAlN電子供給層15との界面を含む領域のAl組成が20%以上である。このAl組成は、n型AlGaN層16の該界面とは反対側の表面(すなわち、後述するソース電極31との接触面)を含む領域のAl組成よりも大きい。例えば、n型AlGaN層16のAl組成は、InAlN電子供給層15との界面において最も大きく、該界面とは反対側の表面において最も小さい。一実施例を挙げると、InAlN電子供給層15との界面におけるAl組成は30%であり、該界面とは反対側の表面におけるAl組成は15%である。そして、n型AlGaN層16のAl組成は、該界面から該界面とは反対側の表面に近づくに従って次第に(連続的に)小さくなっている。
【0021】
ソース電極31、ゲート電極33、及びドレイン電極32は、窒化物半導体層12上においてこの順に並んで形成されている。ソース電極31はn型AlGaN層16の第1部分16a上に設けられて第1部分16aとオーミック接触を成し、ドレイン電極32はn型AlGaN層16の第2部分16b上に設けられて第2部分16bとオーミック接触を成す。なお、ソース電極31及びドレイン電極32それぞれは、第1部分16a及び第2部分16bそれぞれの一部がエッチングされて形成された凹部上に設けられてもよい。ゲート電極33は、InAlN電子供給層15上であって第1の領域15aと第2の領域15bとの間の領域(すなわち開口部16cから露出した領域)上に設けられ、InAlN電子供給層15と接している。
【0022】
表面保護膜41は、窒化物半導体層12及びゲート電極33を覆う絶縁性の無機膜である。表面保護膜41は、例えばSiN、SiO2、或いはSiONといったシリコン化合物からなる。
【0023】
以上の構成を備える本実施形態のHEMT1Aによって得られる効果について説明する。前述したように、GaN系のHEMTにおいて、InAlN電子供給層の上に高濃度のn型GaN層を成長させた場合、InAlN電子供給層とn型GaN層とのヘテロ界面に逆ピエゾ電荷が生じ、ソース−ゲート間のアクセス抵抗の低減を妨げてしまう。具体的には、InAlN電子供給層とn型GaN層とのヘテロ界面では、GaNチャネル層とInAlN電子供給層との界面と反対向きに、高濃度の負のピエゾ電荷が生成され、この負のピエゾ電荷がInAlN電子供給層とn型GaN層との界面の伝導帯準位を押し上げることとなり、n型GaN層とInAlN電子供給層との間のチャネル領域と、ソース電極31との間の障壁として作用する。
【0024】
これに対し、本実施形態では、n型GaN層に代えてn型AlGaN層16がInAlN電子供給層15上に設けられている。これにより、n型AlGaN層16のAl組成を十分に大きくすることでInAlN電子供給層15との格子定数差に起因した正のピエゾ電荷が発生し、負のピエゾ電荷と相殺することで、ヘテロ界面に生じる逆ピエゾ電荷を低減することが可能となる。
【0025】
また、このような作用を効果的に奏するためには、InAlN電子供給層15との界面近傍においてn型AlGaN層16が十分なAl組成を有することが望ましい。本実施形態では、n型AlGaN層16におけるInAlN電子供給層15との界面を含む領域のAl組成が20%以上とされている。このようなAl組成によれば、例えばIn組成17%といった通常のInAlN電子供給層15に対して、ヘテロ界面に生じる逆ピエゾ電荷を効果的に低減することができる。
【0026】
以上に説明したように、本実施形態のHEMT1Aによれば、逆ピエゾ電荷による影響を抑えてソース電極31のコンタクト抵抗を低減することが可能となる。言い換えれば、ソース電極31のコンタクト抵抗を増大させることなく、GaN系のHEMTにおいて高濃度n型半導体層を設けることが可能となる。
【0027】
なお、n型AlGaN層16のAl組成を更に大きくして例えばAlN(すなわちAl組成100%)に近づけることにより、上記の逆ピエゾ電荷を顕著に低減できる。しかしながら、この場合、n型AlGaN層16が絶縁体に近づいてしまうという問題がある。AlNは、窒化物半導体群の中で最大のバンドギャップを有する材料であり、一般には絶縁材料として用いられるからである。また、n型AlGaN層16のAl組成が大きくなるほど、GaNチャネル層14上にエピタキシャル成長したInAlN電子供給層15との格子不整合が増大することとなり、n型AlGaN層16にクラックが発生しやすくなり、n型AlGaN層16の厚さを十分に確保できなくなる。これらを鑑みて、n型AlGaN層16のAl組成は、40%以下であることが好ましい。
【0028】
また、ソース−ゲート間のアクセス抵抗は、ソース電極31のコンタクト抵抗だけでなく、n型AlGaN層16のシート抵抗値にも依存する。ここで、図2は、n型AlGaN層の厚さとシート抵抗との関係の一例を示すグラフである。なお、このグラフにおいて、n型AlGaN層16の平均Al組成は25%であり、Si濃度は3×1018cm-3である。図2に示されるように、n型AlGaN層16が厚くなるほどシート抵抗値は小さくなる。そして、例えば図中の破線Aで囲まれた範囲、すなわちn型AlGaN層16の厚さが50nm以上であれば、シート抵抗が265Ω/□以下となり、従来のHEMTと比較してシート抵抗を十分に低減できる。
【0029】
しかしながら、n型AlGaN層16の臨界膜厚は、Al組成に起因する内部応力により制限される。すなわち、n型AlGaN層16の臨界膜厚はAl組成が大きいほど小さくなるので、例えば20%以上といった大きなAl組成ではn型AlGaN層16の厚さが制限されてしまうという問題がある。そのため、n型AlGaN層の厚さは、例えば100nm以下といった厚さに制限されてしまう。
【0030】
上記の問題に対し、本実施形態では、n型AlGaN層16におけるInAlN電子供給層15との界面を含む領域のAl組成が、n型AlGaN層16の該界面とは反対側の表面(すなわちソース電極31との接触面)を含む領域のAl組成よりも大きい。言い換えれば、n型AlGaN層16のAl組成は、InAlN電子供給層15との界面からソース電極31との接触面に近づくほど小さくなっている。このような構成によれば、InAlN電子供給層15との界面における高いAl組成にかかわらず、n型AlGaN層16の総合的なAl組成を小さくすることができる。従って、n型AlGaN層16をより厚くすることができ、シート抵抗値を低減してソース−ゲート間のアクセス抵抗を小さくできる。
【0031】
また、n型AlGaN層16が例えば20%以上といった大きなAl組成を有することによって、n型AlGaN層16とInAlN電子供給層15との界面におけるAl組成差が50%以上と高くなる。従って、n型AlGaN層16をエッチングして開口部16cを形成する際に、InAlN電子供給層15をエッチング停止層として用いることができる。これにより、閾値電圧(Vth)の安定性を向上させることができる。
【0032】
また、特許文献1に記載された構成とは異なり、本実施形態ではn型AlGaN層16にInを含まない。従って、n型AlGaN層16の成長温度を高くする(例えば800℃以上1100℃以下)ことが可能となり、n型AlGaN層16のn型不純物(本実施形態ではSi)を高濃度にすることができる。これにより、ソース−ゲート間のシート抵抗を効果的に低減し、ソース−ゲート間のアクセス抵抗を更に低減できる。
【0033】
また、特許文献2に記載された構成とは異なり、本実施形態ではn型不純物をイオン注入することを要しない。従って、低抵抗化によるバッファリーク電流の増大を回避して、デバイスのピンチオフ特性の劣化を抑制できる。
【0034】
また、本実施形態のように、InAlN電子供給層15の厚さは9nm以上12nm以下であってもよい。このようにInAlN電子供給層15を薄くすることにより、ゲート−ソース間のアクセス抵抗を効果的に低減できる。
【0035】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態に係るHEMTについて説明する。図3は、本実施形態のHEMT1Bの構成を示す断面図である。このHEMT1Bは、第1実施形態のn型AlGaN層16に代えて、n型AlGaN層26を備える。なお、n型AlGaN層26を除く他の構成は、第1実施形態のHEMT1Aと同様である。
【0036】
n型AlGaN層26は、InAlN電子供給層15上に形成された高濃度n型半導体層であって、InAlN電子供給層15の表面に含まれる第1の領域15a上に設けられた第1部分26aと、第2の領域15b上に設けられた第2部分26bとを含む。第1部分26aと第2部分26bとの間の部分はエッチングにより除去され、開口部26cが形成されている。また、n型AlGaN層26は、第1層26d及び第2層26eを有する。第1層26dは、InAlN電子供給層15上にエピタキシャル成長した層であって、InAlN電子供給層15との界面を含む。第2層26eは、第1層26d上にエピタキシャル成長した層であって、n型AlGaN層26におけるInAlN電子供給層15との界面とは反対側の表面(すなわち、ソース電極31との接触面)を含む。第1層26d及び第2層26eは、n型不純物(例えばSi)が高濃度でドープされたAlGaNからなる。
【0037】
第1層26dのAl組成は第2層26eのAl組成よりも大きく、20%以上30%以下であり、一例では25%である。第2層26eのAl組成は例えば0%以上20%以下であり、一例では15%である。n型AlGaN層26の厚さは、第1実施形態と同様に、例えば50nm以上100nm以下である。但し、第1層26d及び第2層26eの厚さは、共に40nm以上であることが好ましい。第1層26dのn型不純物濃度は例えば1×1018cm-3以上5×1018cm-3以下である。第2層26eのn型不純物濃度は例えば1×1018cm-3以上5×1018cm-3以下である。
【0038】
以上の構成を備える本実施形態のHEMT1Bによれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。すなわち、本実施形態においてもn型AlGaN層26がInAlN電子供給層15上に設けられている。これにより、n型AlGaN層26のAl組成を適切に調整することでInAlN電子供給層15との格子定数差を小さくし、ヘテロ界面に生じる逆ピエゾ電荷を低減することが可能となる。本実施形態では、n型AlGaN層26の第1層26dのAl組成が20%以上とされている。このようなAl組成によれば、例えばIn組成17%といった通常のInAlN電子供給層15に対して、ヘテロ界面に生じる逆ピエゾ電荷を効果的に低減することができる。従って、本実施形態のHEMT1Bによれば、逆ピエゾ電荷による影響を抑えてソース電極31のコンタクト抵抗を低減することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態においても、n型AlGaN層26におけるInAlN電子供給層15との界面を含む領域(すなわち第1層26d)のAl組成は、n型AlGaN層26の該界面とは反対側の表面(すなわちソース電極31との接触面)を含む領域(すなわち第2層26e)のAl組成よりも大きい。このような構成によれば、InAlN電子供給層15との界面における高いAl組成にかかわらず、n型AlGaN層26の総合的なAl組成を小さくすることができる。従って、n型AlGaN層26をより厚くすることができ、シート抵抗値を低減してソース−ゲート間のアクセス抵抗を小さくできる。
【0040】
続いて、上記第1及び第2実施形態の実施例について説明する。なお、比較例として、高濃度n型半導体層をn型GaN層とした場合についても説明する。
【0041】
(第1実施例)
まず、半絶縁性のSiC基板上に、MOCVD法においてTMA(トリメチルアルミニウム)及びNH3(アンモニア)を原料とし、成長温度1080℃、圧力13.3kPaにて、バッファ層13としてのAlN層を成長させた。成長後のAlN層の厚さは、30nmであった。
【0042】
次に、TMG(トリメチルガリウム)及びNH3を原料とし、TMGの流量を120μmol/分とし、NH3の流量を0.5mol/分とし、成長温度1080℃、圧力13.3kPa、成長速度0.4nm/秒にて、バッファ層13の上にGaNチャネル層14を成長させた。成長後のGaNチャネル層14の厚さは600nmであった。
【0043】
続いて、TMA、TMI(トリメチルインジウム)及びNH3を原料として、成長温度800℃、圧力13.3kPaにて、GaNチャネル層14の上にInAlN電子供給層15を成長させた。成長後のInAlN電子供給層15の厚さは10nmであり、In組成はGaNに格子整合可能な17%である。
【0044】
続いて、TMA、TMG、及びNH3を原料として、成長温度900℃、圧力13.3kPaにて、n型不純物をドープしながらInAlN電子供給層15の上に高濃度n型AlGaN層16を成長させた。n型不純物はSiであり、その濃度は3×1018cm-3である。成長後のn型AlGaN層16の厚さは50nmであった。n型AlGaN層16のAl組成は、InAlN電子供給層15との界面で30%、該界面とは反対側の表面で15%とし、該界面から該表面に近づくに従って次第にAl組成を低くした。n型AlGaN層16の成長後、その一部をドライエッチングにより除去することによって、開口部16cを形成してInAlN電子供給層15を露出させた。
【0045】
続いて、n型AlGaN層16の上に、ソース電極31及びドレイン電極32としてそれぞれTi/Alからなるオーミック電極を形成した。また、開口部16cにおいて露出したInAlN電子供給層15の上に、Ni/Auからなるゲート電極33を形成した。その後、ソース電極31、ドレイン電極32、及びゲート電極33に接続される金属配線を通常のフォトリソグラフィ技術及びリフトオフ技術を用いて形成したのち、SiNからなる表面保護膜41を成膜することにより、本実施例のHEMT1Aを完成させた。なお、本実施例のHEMT1Aにおいて、高周波特性を実現する為にゲート長(Lg)を0.2μmとし、ソース−ドレイン電極間隔を3.0μmとし、開口部16cの幅を0.6μmとした。
【0046】
(第2実施例)
第1実施例と同様にして、半絶縁性のSiC基板上に、バッファ層13、GaNチャネル層14、及びInAlN電子供給層15をMOCVD法により成長させた。続いて、TMA、TMG、及びNH3を原料として、成長温度900℃、圧力13.3kPaにて、n型不純物をドープしながらInAlN電子供給層15の上にn型AlGaN層26の第1層26dを成長させた。n型不純物はSiであり、その濃度は3×1018cm-3である。成長後の第1層26dの厚さは40nmであった。第1層26dのAl組成を25%とした。続いて、TMA、TMG、及びNH3を原料として、成長温度900℃、圧力13.3kPaにて、n型不純物をドープしながら第1層26dの上にn型AlGaN層26の第2層26eを成長させた。n型不純物はSiであり、その濃度は3×1018cm-3である。成長後の第2層26eの厚さは40nmであった。第2層26eのAl組成を15%とした。第2層26eの成長後、n型AlGaN層26の一部をドライエッチングにより除去することによって、開口部26cを形成してInAlN電子供給層15を露出させた。
【0047】
続いて、第1実施例と同様にしてn型AlGaN層26の上にソース電極31及びドレイン電極32を形成し、開口部26cにおいて露出したInAlN電子供給層15の上にゲート電極33を形成した。その後、ソース電極31、ドレイン電極32、及びゲート電極33に接続される金属配線を形成したのち、SiNからなる表面保護膜41を成膜することにより、本実施例のHEMT1Bを完成させた。なお、本実施例のHEMT1Bにおいても、ゲート長(Lg)を0.2μmとし、ソース−ドレイン電極間隔を3.0μmとし、開口部26cの幅を0.6μmとした。
【0048】
(第1比較例)
第1実施例と同様にして、半絶縁性のSiC基板上に、バッファ層13、GaNチャネル層14、及びInAlN電子供給層15をMOCVD法により成長させた。そして、TMG及びNH3を原料として、成長温度900℃、圧力13.3kPaにて、n型不純物をドープしながらInAlN電子供給層15の上に高濃度n型GaN層を成長させた。n型不純物はSiであり、その濃度は3×1018cm-3である。成長後のn型GaN層の厚さは50nmであった。n型GaN層の成長後、n型GaN層の一部をドライエッチングにより除去することによって、開口部を形成してInAlN電子供給層15を露出させた。
【0049】
続いて、n型GaN層の上にソース電極31及びドレイン電極32を形成し、開口部において露出したInAlN電子供給層15の上にゲート電極33を形成した。その後、ソース電極31、ドレイン電極32、及びゲート電極33に接続される金属配線を形成したのち、SiNからなる表面保護膜41を成膜することにより、第1比較例に係るHEMTを完成させた。なお、第1比較例のHEMTにおいても、ゲート長(Lg)を0.2μmとし、ソース−ドレイン電極間隔を3.0μmとし、開口部の幅を0.6μmとした。
【0050】
(第2比較例)
第1実施例と同様にして、半絶縁性のSiC基板上に、バッファ層13、GaNチャネル層14、及びInAlN電子供給層15をMOCVD法により成長させた。そして、TMG、TMA及びNH3を原料として、成長温度900℃、圧力13.3kPaにて、n型不純物をドープしながらInAlN電子供給層15の上に高濃度n型AlGaN層を成長させた。n型不純物はSiであり、その濃度は3×1018cm-3である。成長後のn型AlGaN層の厚さは50nmであった。n型AlGaN層のAl組成を、厚さ方向に一定(20%)とした。n型AlGaN層の成長後、n型AlGaN層の一部をドライエッチングにより除去することによって、開口部を形成してInAlN電子供給層15を露出させた。
【0051】
続いて、n型GaN層の上にソース電極31及びドレイン電極32を形成し、開口部において露出したInAlN電子供給層15の上にゲート電極33を形成した。その後、ソース電極31、ドレイン電極32、及びゲート電極33に接続される金属配線を形成したのち、SiNからなる表面保護膜41を成膜することにより、第2比較例に係るHEMTを完成させた。なお、第2比較例のHEMTにおいても、ゲート長(Lg)を0.2μmとし、ソース−ドレイン電極間隔を3.0μmとし、開口部の幅を0.6μmとした。
【0052】
(実施例及び比較例の検証)
上記のようにして作製された第1実施例のHEMT1A、第1比較例及び第2比較例のHEMTの各ドレイン電極32に10Vの電圧を印加しつつ、ゲート電極33への印加電圧を調整することにより、ドレイン電流を200mA/mmに設定した。そして、Sパラメータの測定(高周波測定)を行った。高周波利得の値は測定周波数60GHzの結果を用いている。
【0053】
その結果、第1実施例のHEMT1Aでは、遮断周波数ft=115GHzならびに高周波利得(ゲイン)8.5dBを得た。これに対し、第1比較例のHEMTでは、遮断周波数ft=60GHzならびに高周波利得(ゲイン)5.0dBであった。また、第2比較例のHEMTでは、遮断周波数ft=90GHzならびに高周波利得(ゲイン)7.0dBであった。
【0054】
図4は、従来例(すなわち高濃度n型半導体層を備えないもの)、第1比較例、第2比較例、及び第1実施例における、シート抵抗、ゲート電極のコンタクト抵抗、ゲート−ソース間のアクセス抵抗、及び遮断周波数ftを示す図表である。図4に示されるように、シート抵抗に関しては、高濃度n型半導体層を設けない場合(従来例)では300Ω/□であったが、高濃度n型半導体層を設けた場合(第1比較例、第2比較例、及び第1実施例)では、200Ω/□に低減された。但し、第1比較例では、シート抵抗が低減されたにもかかわらず、逆ピエゾ電荷の影響によってゲート−ソース間のアクセス抵抗が大きくなり、その結果、遮断周波数ftが従来例よりも劣化している。これに対し、第2比較例および第1実施例では、高濃度n型半導体層がn型AlGaNからなることにより逆ピエゾ電荷が抑制された結果、シート抵抗の低下がそのままアクセス抵抗の低下に結び付いており、結果として遮断周波数ftの増加に繋がっている。
【0055】
具体的には、第2比較例では、遮断周波数ftが90GHzとなり、第1比較例の60GHzよりも向上している。これは、シート抵抗値が等しくても、高濃度n型半導体層がn型AlGaNからなることにより逆ピエゾ電荷が抑制された結果、アクセス抵抗値が0.51Ω/mmから0.26Ω/mmへ低減したことに因る。また、第1実施例では、遮断周波数ftが115GHzとなり、更に向上している。これは、シート抵抗値が等しくても、ソース電極31との接触面におけるAl組成が低いことにより、コンタクト抵抗が0.16Ωmm(第1実施例)から0.10Ωmm(第2実施例)へと改善したことに因る。
【0056】
本発明による高電子移動度トランジスタは、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した各実施形態を、必要な目的及び効果に応じて互いに組み合わせてもよい。また、第2実施形態では高濃度n型AlGaN層が第1層及び第2層からなる場合を例示したが、n型AlGaN層は3層以上によって構成されてもよい。その場合、InAlN電子供給層に接する層のAl組成が最も大きく、反対側の表面に近い層ほどAl組成が小さくなっていることが望ましい。
【符号の説明】
【0057】
1A,1B…HEMT、11…基板、12…窒化物半導体層、13…バッファ層、14…GaNチャネル層、15…InAlN電子供給層、15a…第1の領域、15b…第2の領域、16,26…n型AlGaN層、16a,26a…第1部分、16b,26b…第2部分、16c,26c…開口部、26d…第1層、26e…第2層、31…ソース電極、32…ドレイン電極、33…ゲート電極、41…表面保護膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6