(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記音声区間判定部によって音声区間でないと判定され、前記周期性雑音判定部によって周期性雑音信号を含むと判定されたとき、前記リファレンス信号記憶部が記憶するリファレンス信号を更新するよう制御するリファレンス信号更新制御部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の雑音低減装置。
前記出力信号決定部は、前記複数の雑音低減処理されたフレーム信号それぞれの二乗和信号と、振幅のばらつきを示す値との少なくとも一方を用いて、最も周期性雑音信号が低減されていると判断されるフレーム信号を選択することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の雑音低減装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施形態の雑音低減装置、雑音低減方法、雑音低減プログラムについて、添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1において、マイクロホン1は周囲の音を収音する。マイクロホン1は、無線機等の電子機器の筐体に設けられていてもよいし、電子機器とは別体で電子機器に装着されていてもよい。マイクロホン1が収音する音は、音声にサイレン音等の周期性雑音が混入した音である場合がある。
【0016】
マイクロホン1は、収音する音を電気信号に変換したアナログ信号Sig1をA/Dコンバータ2に供給する。
【0017】
A/Dコンバータ2は、入力されたアナログ信号Sig1をデジタル信号に変換する。マイクロホン1がA/Dコンバータを搭載してデジタル信号を出力する場合には、A/Dコンバータ2は不要である。A/Dコンバータ2(またはマイクロホン1)からフレーム生成部3へと供給されるデジタル信号が、雑音低減装置によって処理される入力信号Sig2である。
【0018】
図2は、入力信号Sig2の振幅が時間の進行に伴って変化している様子を示している。
図2に示すように、フレーム生成部3は、入力信号Sig2を所定のサンプル数単位で(即ち、所定の時間ごとに)フレーム化して、フレーム信号Sig31,Sig32,Sig33,…を順次生成する。フレーム信号Sig31,Sig32,Sig33,…をフレーム信号Sig3と総称する。
【0019】
入力信号Sig2のサンプリング周波数が比較的低い場合には、サンプル数が少ないと後述する相関値を正確に算出できないことがある。相関値を正確に算出して周期性雑音を低減させるために、フレーム信号Sig3の時間長を例えば0.03〜0.04秒とする。フレーム信号Sig3の時間長(サンプル数)は、入力信号Sig2のサンプリング周波数等の条件に応じて適宜設定すればよい。
【0020】
フレーム信号Sig3は、音声区間判定部4と、周期性雑音判定部5と、リファレンス信号記憶部7と、相関値算出部8と、雑音低減処理部10とに供給される。
【0021】
音声区間判定部4は、入力されたそれぞれのフレーム信号Sig3が音声を含む音声区間であるか否かを判定する。音声区間判定部4は、フレーム単位で音声区間か否かを判定してもよいし、音声を含むフレーム信号Sig3が所定のフレーム数継続した場合に音声区間であると判定してもよい。音声区間判定部4は、例えば、フレーム信号Sig3が人の声の周波数帯域の信号を含むか否かによって音声を含むか否かを判定することができる。音声区間判定部4は、特許文献2に記載されている音声区間の判定方法によって音声区間を判定してもよい。
【0022】
音声区間判定部4は、フレーム信号Sig3が音声区間であるか否かを示す音声区間判定情報Sig4をリファレンス信号更新制御部6に供給する。
【0023】
入力信号Sig2が周期性雑音信号を含むとき、入力信号Sig2は一例として
図3に模式的に示すように周波数が変化する。本実施形態においては、音声信号に混入して低減の対象とする周期性雑音信号を、
図3に示すような周波数変化が比較的速い周期性雑音信号であるとする。
【0024】
周期性雑音判定部5は、入力されたそれぞれのフレーム信号Sig3が周期性雑音信号を含むか否かを判定する。周期性雑音判定部5は、一例として次のようにしてフレーム信号Sig3が周期性雑音信号を含むか否かを判定すればよい。
【0025】
周期性雑音判定部5は、過去の複数のフレーム信号Sig3を記憶する。周期性雑音判定部5は、最新のフレーム信号Sig3と過去の複数のフレーム信号Sig3との相関値を算出する。フレーム信号Sig3が周期性雑音信号を含むと、相関値信号にはピークが周期的に現れる。周期性雑音判定部5は、相関値信号が周期的なピークを含むとき、フレーム信号Sig3が周期性雑音信号を含むと判定する。
【0026】
過去の複数のフレーム信号Sig3の時間長は、最新のフレーム信号Sig3の時間長と周期性雑音の周期との和よりも長い時間に設定するのがよい。また、過去の複数のフレーム信号Sig3の時間長は、周期性雑音の周期の2倍よりも短い時間長がよく、例えば1.5周期程度の時間長とすればよい。
【0027】
周期性雑音判定部5は、フレーム信号Sig3が周期性雑音信号を含むか否かを示す雑音判定情報Sig5を、リファレンス信号更新制御部6と、相関値算出部8と、相関候補位置決定部9と、雑音低減処理部10とに供給する。
【0028】
リファレンス信号更新制御部6は、音声区間判定情報Sig4と雑音判定情報Sig5とに基づいて、リファレンス信号記憶部7にリファレンス信号Sig7を記憶させるか否かを判定する。リファレンス信号記憶部7に既にリファレンス信号Sig7が記憶されている場合には、リファレンス信号更新制御部6は、音声区間判定情報Sig4と雑音判定情報Sig5とに基づいて、リファレンス信号Sig7を更新させるか否かを判定する。
【0029】
リファレンス信号記憶部7に記憶されているリファレンス信号Sig7は、フレーム信号Sig3から周期性雑音を除去するために用いられる。よって、リファレンス信号Sig7は、音声信号を含まず、周期性雑音信号のみを含むのがよい。
【0030】
そこで、リファレンス信号更新制御部6は、音声区間判定情報Sig4が、フレーム信号Sig3が音声区間でないことを示し、雑音判定情報Sig5が、フレーム信号Sig3が周期性雑音信号を含むことを示すとき、リファレンス信号記憶部7にリファレンス信号Sig7を記憶させるか、リファレンス信号Sig7を更新するための制御信号Sig6を生成する。
【0031】
リファレンス信号Sig7は、最新のフレーム信号Sig3を含まない過去のフレーム信号Sig3に基づいて生成されるのがよい。リファレンス信号更新制御部6には、出力信号決定部11が出力信号を出力させたタイミングを示すタイミング情報Sig111が入力される。
【0032】
リファレンス信号更新制御部6は、タイミング情報Sig111に基づいて、最新のフレーム信号Sig3を含まない過去のフレーム信号Sig3をリファレンス信号Sig7としてリファレンス信号記憶部7に記憶させるよう、制御信号Sig6をリファレンス信号記憶部7に供給する。
【0033】
リファレンス信号記憶部7は、複数のフレーム信号Sig3を巡回的に更新しながら一時記憶する。リファレンス信号記憶部7は、リファレンス信号更新制御部6より制御信号Sig6が入力されたとき、リファレンス信号Sig7が記憶されていなければ、巡回的な一時記憶を停止して、過去の複数のフレーム信号Sig3をリファレンス信号Sig7として保持する。
【0034】
リファレンス信号記憶部7は、リファレンス信号更新制御部6より制御信号Sig6が入力されたとき、リファレンス信号Sig7が既に記憶されていれば、巡回的な一時記憶を停止して、新たなリファレンス信号Sig7を上書きして更新する。
【0035】
リファレンス信号Sig7は、周期性雑音信号の少なくとも1周期の時間長を有する信号である。リファレンス信号Sig7は、周期性雑音信号の1周期を超える時間を有する信号とするのがよい。
【0036】
図4(a)及び(b)において、フレーム信号Sig3cは最新のフレーム信号Sig3であり、入力信号Sig2における太実線にて示す信号部分はリファレンス信号Sig7である。
【0037】
図4(a)に示す例では、最新のフレーム信号Sig3cの直前の信号部分がリファレンス信号Sig7として用いられている。
図4(b)に示す例では、最新のフレーム信号Sig3cの直前の信号部分よりも過去の信号部分がリファレンス信号Sig7として用いられている。
【0038】
図4(a)及び(b)に示すように、リファレンス信号Sig7は、例えば周期性雑音信号の1.5周期分程度の時間長とされている。
【0039】
音声区間判定情報Sig4が、フレーム信号Sig3が音声区間でないことを示し、雑音判定情報Sig5が、フレーム信号Sig3が周期性雑音信号を含むことを示せば、リファレンス信号Sig7は更新される。よって、
図4(a)に示すように、最新のフレーム信号Sig3cの直前の信号部分がリファレンス信号Sig7としてリファレンス信号記憶部7に記憶されて用いられる。
【0040】
音声区間判定情報Sig4が、フレーム信号Sig3が音声区間であることを示すか、雑音判定情報Sig5が、フレーム信号Sig3が周期性雑音信号を含まないことを示せば、リファレンス信号記憶部7に記憶されているリファレンス信号Sig7は更新されない。よって、
図4(b)に示すように、過去の信号部分がリファレンス信号Sig7として継続的に用いられる。
【0041】
ところで、リファレンス信号記憶部7には周期性雑音信号のみがリファレンス信号Sig7として記憶されることが望ましい。しかしながら、実際には、ロードノイズやエンジン音等の各種の雑音が周期性雑音に混入することがある。よって、周期性雑音信号は雑音成分を含むことがある。
【0042】
以上の説明より分かるように、リファレンス信号記憶部7は、リファレンス信号Sig7を生成するために複数のフレーム信号Sig3を一時的に記憶する記憶領域と、生成したリファレンス信号Sig7を保持するよう記憶する記憶領域とを含む。前者の記憶領域と後者の記憶領域とが別々のメモリに設けられていてもよい。
【0043】
上述した周期性雑音判定部5による周期性雑音信号を含むか否かの判定動作において、周期性雑音判定部5の代わりにリファレンス信号記憶部7が過去の複数のフレーム信号Sig3を記憶してもよい。周期性雑音判定部5は、リファレンス信号Sig7を生成するためにリファレンス信号記憶部7に記憶される複数のフレーム信号Sig3を用いて周期性雑音信号を含むか否かを判定してもよい。
【0044】
リファレンス信号記憶部7が記憶するリファレンス信号Sig7は、相関値算出部8と雑音低減処理部10とに供給される。
【0045】
相関値算出部8は、雑音判定情報Sig5が、フレーム信号Sig3が周期性雑音信号を含むことを示すとき、例えば式(1)に基づいて、入力されるフレーム信号Sig3とリファレンス信号Sig7との相関値A[m]を算出する。
【0046】
式(1)におけるxはリファレンス信号Sig7、yはフレーム信号Sig3、mは相関値信号Sig8におけるピークの位置を示す位相シフト量、tはフレーム信号Sig3のサンプル位置、nはフレーム信号Sig3のサンプル数を示す。
【0048】
リファレンス信号Sig7の全範囲で相関値A[m]を算出する場合、位相シフト量mの範囲は、Nをリファレンス信号Sig7のサンプル数として、0≦m<(N−n)である。
【0049】
相関値算出部8は、算出した相関値A[m]を示す相関値信号Sig8を相関候補位置決定部9に供給する。
【0050】
図5及び
図6を用いて、相関値算出部8及び相関候補位置決定部9の動作を具体的に説明する。
図5は、リファレンス信号Sig7に他の雑音成分が混入していない場合、
図6は、リファレンス信号Sig7に他の雑音成分が混入している場合を示している。
【0051】
図5(a)は、リファレンス信号Sig7の振幅が時間の進行に伴って変化している様子を示している。ここでは、他の雑音成分は混入していない。
図5(b)は、相関値算出部8に入力された最新のフレーム信号Sig3を示している。
【0052】
図5(b)に矢印で示しているように、相関値算出部8は、フレーム信号Sig3を1サンプルずつ位相シフトさせながら、リファレンス信号Sig7との相関値A[m]を算出する。すると、相関値A[m]は時間の進行に伴って
図5(c)に示すように変化し、相関値信号Sig8はピークP1を呈する。
【0053】
図5(c)に示す相関値信号Sig8は、相関候補位置決定部9に供給される。相関候補位置決定部9は、相関値信号Sig8におけるピークの位置を検出し、ピークの位置を、フレーム信号Sig3と相関するリファレンス信号Sig7の信号部分の候補となる相関候補位置と決定する。相関候補位置決定部9は、雑音判定情報Sig5が、フレーム信号Sig3が周期性雑音信号を含むことを示すとき、相関候補位置を決定する動作を実行させる。
【0054】
ここでは相関値信号Sig8におけるピークはピークP1の1つのみである。ピークP1のm1にて示す位置は、
図5(b)に示すフレーム信号Sig3が
図5(a)に示すリファレンス信号Sig7と最も相関値A[m]が高くなる位相シフト量を示している。
【0055】
即ち、フレーム信号Sig3を位相シフト量m1のサンプル数だけ位相シフトすると、フレーム信号Sig3と最も相関するリファレンス信号Sig7の信号部分になるということである。
【0056】
図6(a)に示すリファレンス信号Sig7は、雑音成分Signzを含んでいる。同様に、
図6(b)に矢印で示しているように、相関値算出部8は、フレーム信号Sig3を1サンプルずつ位相シフトさせながら、リファレンス信号Sig7との相関値A[m]を算出する。
【0057】
すると、相関値A[m]は時間の進行に伴って
図6(c)に示すように変化する。リファレンス信号Sig7が雑音成分Signzを含んでいることから、
図6(c)に示すように、相関値信号Sig8は2か所のピークP1及びP2を呈することがある。
【0058】
相関候補位置決定部9は、相関値信号Sig8におけるピークP1及びP2の位置を検出し、ピークP1及びP2の位置を、フレーム信号Sig3と相関するリファレンス信号Sig7の信号部分の候補となる複数の相関候補位置と決定する。
【0059】
ピークP1のm1にて示す位置は、
図6(b)に示すフレーム信号Sig3が
図6(a)に示すリファレンス信号Sig7と最も相関値A[m]が高くなる位相シフト量m1を示している。
【0060】
ピークP2はリファレンス信号Sig7が雑音成分Signzを含んでいることによって偶然に発生したものである。ピークP2のm2にて示す位置は、フレーム信号Sig3がリファレンス信号Sig7と最も相関値A[m]が高くなる位相シフト量m2を示しているわけではない。
【0061】
このように、相関値算出部8がフレーム信号Sig3とリファレンス信号Sig7との相関値A[m]を算出すると、相関値信号Sig8は雑音成分Signz等の影響によって複数のピークを呈することがある。
【0062】
相関候補位置決定部9は、相関値信号Sig8に基づき、相関値A[m]が相対的に高い複数箇所を選択して、フレーム信号Sig3と相関するリファレンス信号Sig7の信号部分の候補となる複数の相関候補位置を決定する。
【0063】
相関候補位置決定部9は、相関値A[m]を平滑化して微分し、微分値が正から負になるゼロクロス点をピークとして検出したり、相関値A[m]の高い上位の複数箇所をピークとして検出したりすればよい。相関候補位置決定部9がピークの位置を検出する方法は任意である。
【0064】
相関候補位置決定部9は、複数の相関候補位置それぞれを示す位置情報Sig9を雑音低減処理部10に供給する。相関候補位置決定部9は、
図6(c)に示す位相シフト量m1及びm2を位置情報Sig9とすることができる。
【0065】
雑音低減処理部10は、雑音判定情報Sig5が、フレーム信号Sig3が周期性雑音信号を含むことを示すとき、リファレンス信号Sig7における複数の相関候補位置それぞれの信号部分を用いて、フレーム信号Sig3に含まれる周期性雑音信号を低減させるよう処理する。
【0066】
具体的には、雑音低減処理部10は、式(2)に基づいて、フレーム信号Sig3に、リファレンス信号Sig7における相関候補位置の信号部分の逆位相の信号を加算して、加算信号B[t]を生成すればよい。
【0067】
B[t]=−x[m+t]+y[t] …(2)
【0068】
式(2)より分かるように、雑音低減処理部10は、フレーム信号Sig3を位相シフト量mだけ位相シフトした位置を開始位置とし、フレーム信号Sig3のサンプル数分に相当するリファレンス信号Sig7の信号部分の逆位相の信号を、フレーム信号Sig3に加算する。
【0069】
図6の例では、相関値信号Sig8は2か所のピークP1及びP2を呈するので、雑音低減処理部10は、mをm1とした加算信号B1[t]と、mをm2とした加算信号B2[t]とを生成する。
【0070】
雑音低減処理部10は、雑音低減処理された複数の候補出力信号Sig10を生成して、出力信号決定部11に供給する。
図6の例では、候補出力信号Sig10は、加算信号B1[t]及びB2[t]である。
【0071】
図7(a)は、周期性雑音信号を含む入力信号Sig2を示している。
図7(b)は、候補出力信号Sig10の1つである候補出力信号Sig102を示している。候補出力信号Sig102は、加算信号B2[t]に相当する。
【0072】
即ち、候補出力信号Sig102は、それぞれのフレーム信号Sig3において、フレーム信号Sig3と適切に相関しないリファレンス信号Sig7の信号部分で周期性雑音信号を低減させるよう処理した場合の信号波形を示している。
【0073】
図7(c)は、候補出力信号Sig10の他の1つである候補出力信号Sig101を示している。候補出力信号Sig101は、加算信号B1[t]に相当する。
【0074】
即ち、候補出力信号Sig101は、それぞれのフレーム信号Sig3において、フレーム信号Sig3と適切に相関するリファレンス信号Sig7の信号部分で周期性雑音信号を低減させるよう処理した場合の信号波形を示している。
【0075】
出力信号決定部11は、複数の候補出力信号Sig10(Sig101及びSig102)より最も周期性雑音信号が低減されている候補出力信号Sig10(Sig101)を出力信号Sig11と決定して出力する。
【0076】
出力信号決定部11は、次のようにして、最も周期性雑音信号が低減されている候補出力信号Sig10を選択すればよい。
【0077】
例えば、出力信号決定部11は、式(3)に基づき、それぞれの候補出力信号Sig10の二乗和信号Cを生成する。
【0079】
式(3)におけるB[t]は上記の加算信号B1[t]またはB2[t]である。B[t]が加算信号B1[t]であるときの二乗和信号CをC1、B[t]が加算信号B2[t]であるときの二乗和信号CをC2とする。
【0080】
出力信号決定部11は、二乗和信号C1とC2とのうちの小さい方が、周期性雑音信号がより低減されている候補出力信号Sig10と判断することができる。
【0081】
出力信号決定部11は、二乗和信号Cが最も小さい候補出力信号Sig10を選択する代わりに、振幅のばらつきを示す値が最も小さい候補出力信号Sig10を選択してもよい。振幅のばらつきを示す値として、例えば、振幅の分散値、振幅の最大値と最小値の差または比、振幅の平均値と中央値の差または比を用いることができる。
【0082】
出力信号決定部11は、二乗和信号Cと振幅のばらつきを示す値との双方を用いて、候補出力信号Sig10を選択してもよい。
【0083】
この場合、出力信号決定部11は、まず複数の候補出力信号Sig10それぞれの二乗和信号Cを比較して、二乗和信号Cに十分な差がある場合には二乗和信号Cが最も小さい候補出力信号Sig10を選択する。それぞれの二乗和信号Cが近接している場合には、出力信号決定部11は、振幅のばらつきを示す値が最も小さい候補出力信号Sig10を選択する。
【0084】
このように、出力信号決定部11は、複数の候補出力信号Sig10のうちからいずれか1つを選択するとき、二乗和信号Cの比較結果に基づいて選択することが好ましい。出力信号決定部11は、二乗和信号Cのみの比較で選択すると誤判定が生じる可能性が高い場合に、振幅のばらつきを示す値等の他の信号特性を考慮して候補出力信号Sig10を選択するのがよい。
【0085】
なお、フレーム信号Sig3が周期性雑音信号を含まない場合には、相関値算出部8及び相関候補位置決定部9は不動作である。雑音低減処理部10は入力されたフレーム信号Sig3をそのまま出力信号決定部11へと供給すればよく、出力信号決定部11は入力されたフレーム信号Sig3をそのまま出力すればよい。
【0086】
図1に示す構成において、A/Dコンバータ2から出力信号決定部11の各構成要素は、回路等のハードウェアによって構成されていてもよく、ソフトウェア(コンピュータプログラム)で構成されていてもよい。
【0087】
雑音低減装置の構成要素は、ハードウェアとソフトウェアとが混在していてもよい。ハードウェアとソフトウェアとの使い分けは任意である。
【0088】
例えば、フレーム生成部3から出力信号決定部11のうち、リファレンス信号記憶部7を除く部分を、コンピュータプログラム(雑音低減プログラム)で構成することができる。リファレンス信号記憶部7は、雑音低減装置とは別体の外部記憶部として設けられていてもよい。
【0089】
次に、
図8に示すフローチャートを用いて、本実施形態の雑音低減装置の動作、本実施形態の雑音低減方法の手順、本実施形態の雑音低減プログラムで実行される処理をさらに説明する。
【0090】
図8において、フレーム生成部3は、ステップS1にて、入力信号Sig2をフレーム化してフレーム信号Sig3を生成する。
【0091】
音声区間判定部4は、ステップS2にて、フレーム信号Sig3が音声信号を含む音声区間であるか否かを判定する。周期性雑音判定部5は、ステップS3にて、フレーム信号Sig3が周期性雑音信号を含むか否かを判定する。ステップS2とステップS3の順は逆であってもよく、同時であってもよい。
【0092】
ステップS11〜S13は、リファレンス信号更新制御部6によるリファレンス信号記憶部7へのリファレンス信号Sig7の記憶またはリファレンス信号記憶部7に記憶されているリファレンス信号Sig7の更新処理を示している。
【0093】
リファレンス信号更新制御部6は、ステップS11にて、ステップS2及びS3でのそれぞれの判定処理の結果、フレーム信号Sig3が音声区間ではなく、かつ、周期性雑音信号を含むか否かを判定する。
【0094】
フレーム信号Sig3が音声区間ではなく、かつ、周期性雑音信号を含めば(YES)、リファレンス信号更新制御部6は、ステップS12にて、タイミング情報Sig111が入力されたか否かを判定する。リファレンス信号更新制御部6は、タイミング情報Sig111が入力されなければ(NO)、ステップS12の処理を繰り返す。
【0095】
リファレンス信号更新制御部6は、タイミング情報Sig111が入力されれば(YES)、ステップS13にて、リファレンス信号記憶部7にリファレンス信号Sig7を記憶させる。リファレンス信号記憶部7に既にリファレンス信号Sig7が記憶されていれば、リファレンス信号Sig7は更新される。
【0096】
ステップS13の後、処理はステップS1へと戻され、ステップS1〜S3及びS11〜S13の処理が繰り返される。
【0097】
ステップS11にて、フレーム信号Sig3が音声区間ではないか、周期性雑音信号を含まなければ(NO)、リファレンス信号Sig7の記憶または更新の処理は実行されないので、処理はステップS1へと戻され、ステップS1〜S13の処理が繰り返される。
【0098】
ステップS21〜S27は、相関値算出部8〜出力信号決定部11によるフレーム信号Sig3から周期性雑音信号を低減させる低減処理を示している。
【0099】
相関値算出部8は、ステップS21にて、フレーム信号Sig3は周期性雑音信号を含むか否かを判定する。フレーム信号Sig3が周期性雑音信号を含めば(YES)、相関値算出部8は、ステップS22にて、リファレンス信号記憶部7にリファレンス信号Sig7が記憶されているか否かを判定する。
【0100】
リファレンス信号Sig7が記憶されていれば(YES)、相関値算出部8は、ステップS23にて、フレーム信号Sig3とリファレンス信号Sig7との相関値を算出する。相関候補位置決定部9は、ステップS24にて、相関値信号Sig8に基づいて、相関候補位置を決定する。
【0101】
雑音低減処理部10は、ステップS25にて、複数の相関候補位置それぞれを示す位置情報Sig9に基づいて、フレーム信号Sig3に含まれる周期性雑音信号を低減させるよう処理する。
【0102】
出力信号決定部11は、ステップS26にて、複数の候補出力信号Sig10より最も周期性雑音信号が低減されている候補出力信号Sig10を最終的な出力信号Sig11と決定する。出力信号決定部11は、ステップS27にて、出力信号Sig11及びタイミング情報Sig111を出力する。
【0103】
ステップS21にてフレーム信号Sig3が周期性雑音信号を含まなければ(NO)、周期性雑音信号の低減処理を実行させる必要はないので、処理はステップS27へと移行される。
【0104】
また、ステップS22にてリファレンス信号記憶部7にリファレンス信号Sig7が記憶されていなければ(NO)、周期性雑音信号の低減処理を実行させることができないので、同様に処理はステップS27へと移行される。
【0105】
このとき、雑音低減処理部10は、入力されたフレーム信号Sig3をそのまま出力信号決定部11へと供給し、出力信号決定部11は、ステップS27にて、フレーム信号Sig3及びタイミング情報Sig111を出力する。
【0106】
ステップS27の後、処理はステップS1へと戻され、ステップS1〜S3及びS21〜S27の処理が繰り返される。
【0107】
なお、雑音低減プログラムは、コンピュータに以上説明した各ステップの処理を実行させればよい。雑音低減プログラムは、非一時的な記録媒体に記録されていてもよく、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0108】
以上のように、本実施形態の雑音低減方法、雑音低減プログラムによれば、周期性雑音の周波数変化が比較的速くても、周期性雑音信号を効果的に低減させることができる。
【0109】
ここで、周波数変化が比較的速い周期性雑音であると、特許文献1に記載の雑音低減装置のような、入力信号を周波数領域の信号に変換して周期性雑音を検出し、周期性雑音信号を抑圧する方法を採用することができない理由を説明する。
【0110】
図9(a)は、
図3に示す周期性雑音信号よりも周波数変化が遅い周期性雑音信号を示している。
図9(a)において、実線は周期性雑音信号の基本波成分、一点鎖線は倍音成分を示している。この周期性雑音信号を周波数領域の信号に変換すると、
図9(b)に示すような波形となる。
【0111】
周波数変化が比較的遅い周期性雑音信号を周波数領域の信号に変換すると、
図9(b)に示すように周波数のピークが明確に現れる。よって、ピークが現れた周波数成分を減衰させることによって、周期性雑音信号を抑圧することが可能である。
【0112】
図10(a)は、
図3と同様の周波数変化が比較的速い周期性雑音信号を示している。
図10(a)において、実線は周期性雑音信号の基本波成分、一点鎖線は倍音成分を示している。この周期性雑音信号を周波数領域の信号に変換すると、
図10(b)に示すような波形となる。
【0113】
周波数変化が比較的速い周期性雑音信号を周波数領域の信号に変換すると、
図10(b)に示すように周波数のピークが明確に現れない。よって、ピークが現れた周波数成分を減衰させることによって、周期性雑音信号を抑圧する方法を採用することができない。
【0114】
本実施形態の雑音低減装置、雑音低減方法、雑音低減プログラムによれば、入力信号を周波数領域の信号に変換する構成ではなく、入力信号が
図10(a)に示すような周波数変化が比較的速い周期性雑音信号を含む場合であっても、周期性雑音信号を効果的に低減させることができる。
【0115】
勿論、本実施形態の雑音低減装置、雑音低減方法、雑音低減プログラムによれば、入力信号が
図9(a)に示すような周波数変化が比較的遅い周期性雑音信号を含む場合であっても、周期性雑音信号を効果的に低減させることができる。
【0116】
即ち、本実施形態の雑音低減装置、雑音低減方法、雑音低減プログラムは、周期性雑音信号の周波数変化の速度にかかわらず、周期性雑音低減の効果を発揮する。フレーム生成部3は、周期性雑音信号の周期に応じた時間長のフレーム信号Sig3を生成することが好ましい。フレーム生成部3は、周期性雑音信号の周期に応じて、フレーム信号Sig3の時間長を選択できる構成であることが好ましい。
【0117】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0118】
図1に示す構成では、リファレンス信号更新制御部6によってリファレンス信号記憶部7に記憶させるリファレンス信号Sig7を適宜更新するように構成している。リファレンス信号Sig7を更新させず、リファレンス信号記憶部7は固定のリファレンス信号Sig7を記憶する構成としてもよい。この場合、リファレンス信号更新制御部6は省略可能である。
【0119】
リファレンス信号Sig7を更新する構成では、周期性雑音信号の変化に応じたリファレンス信号Sig7とすることができるので、周期性雑音信号をより効果的に低減させることができる。よって、リファレンス信号Sig7を更新する構成が好ましい。