特許第6597071号(P6597071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597071
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】乗客コンベアの保護板
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/04 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   B66B29/04 F
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-172948(P2015-172948)
(22)【出願日】2015年9月2日
(65)【公開番号】特開2017-48012(P2017-48012A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100176016
【弁理士】
【氏名又は名称】森 優
(74)【代理人】
【識別番号】100185454
【弁理士】
【氏名又は名称】三雲 悟志
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(74)【代理人】
【識別番号】100199831
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 晃典
(72)【発明者】
【氏名】上垣 康司
(72)【発明者】
【氏名】江▲崎▼ 昌彦
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−139346(JP,A)
【文献】 特開平06−278982(JP,A)
【文献】 特開2015−105181(JP,A)
【文献】 特開2009−102161(JP,A)
【文献】 特開2009−132486(JP,A)
【文献】 特開2017−052584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00−31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環走行する無端搬送体および当該無端搬送体と同期して循環走行する移動手摺を有し、建築物の階下と階上の間に架け渡された第1の乗客コンベアに付設される保護板であって、
前記建築物または前記第1の乗客コンベアに隣接する第2の乗客コンベアにおいて、前記階下と前記階上との間で前記移動手摺と交差する交差部に、当該移動手摺と直交する水平方向に間隔を空け、鉛直方向に取り付けられる平板部と、
前記平板部の前記階下側端部から、前記移動手摺から水平方向に遠ざかる向きに延出された延出部と、
前記平板部の前記階下側に設けられ、前記第1の乗客コンベアによって階下から階上へと搬送される人または物の、前記間隔を越えて前記移動手摺からはみ出した部分が接触する前縁部と、
を有し、
前記前縁部は、前記延出部に、長さ方向が鉛直方向となる姿勢で取り付けられた円筒部材であり、
前記円筒部材における前記水平方向の幅である外径が前記平板部の厚みよりも大きく、当該円筒部材は、前記平板部の前記移動手摺に面する主面を含む仮想平面に対し、前記移動手摺とは反対側に、前記仮想平面に接する状態で設けられていることを特徴とする、乗客コンベアの保護板。
【請求項2】
前記円筒部材は、長手方向に開設されたスリットを有し、
当該円筒部材は、前記スリットから前記延出部が挿入された状態で、当該延出部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの保護板。
【請求項3】
前記円筒部材は、全長に亘り、その径方向中心に向かって窪んだ凹部を有し、
当該円筒部材は、前記凹部に前記延出部が差し込まれた状態で、当該延出部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの保護板。
【請求項4】
前記円筒部材は、その外周面に前記延出部の先端を当接させた状態で、接着剤により接着されて、当該延出部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの保護板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアの保護板に関し、特に、搬送される乗客や物が、乗客コンベアに隣接して交差する建築物の天井等との間に挟まれることを防止するため、当該乗客コンベアに付設される保護板に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物のある階(以下、「階下」と言う。)と当該階下よりも上の階(以下、「階上」と言う。)との間に、乗客コンベア、例えば、エスカレータが設置される場合において、当該エスカレータの移動手摺の外縁とこれに隣接して立体交差する階下の天井等または他のエスカレータの下部との間の水平距離(間隙)が50cm以下の場合には、前記天井等または前記他のエスカレータの下部が移動手摺と交差する近傍部分(以下、「交差部」と言う。)に保護板を設けなければならない旨、建築基準法に規定されている。
【0003】
従来の保護板は、特許文献1に記載されているように、一般的に、前記天井等に固定金具によって取り付けられる平板部材と当該平板部材の厚みよりも大きな内径を有する円筒部材とで構成されている。
【0004】
平板部材は鉛直方向に取り付けられる。取り付けられた状態で、平板部材は、その下縁が水平方向に対して斜交する移動手摺と平行で、その前端(昇りエスカレータとして使用される際に、走行する移動手摺の上流側の先端)が鉛直方向に平行となるような形状を有している。
【0005】
円筒部材には、その長手方向に前記平板部材の厚み程度の幅を有するスリットが開設されている。当該スリットに平板部材の前記前端部が挿入された状態で、円筒部材は平板部材に接着剤によって接着されている。
【0006】
上記の構成を有する従来の保護板が付設されたエスカレータにおいて、階下から階上へと搬送される乗客の体の一部が移動手摺から大きくはみ出した場合、当該体の一部が保護板の前記円筒部材に衝突する。これにより、乗客は、反射的に身を引いたり、あるいは何らかの事情で身を引かない場合でも、保護板に案内されて、エスカレータの踏段側に前記体の一部が誘導されたりするため、エスカレータと前記交差部との間に挟まれるのが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−105181号公報
【特許文献2】特開2014−141345号公報
【特許文献3】特開2013−216486号公報
【特許文献4】実開昭61−130587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、エスカレータの設置場所によっては、交差部と移動手摺との間の水平距離が非常に短くなってしまう場合がある。この場合でも、乗客がエスカレータと交差部との間に挟まれることは、保護板によって防止できるものの、移動手摺に置いた手が、少し外方にずれると、当該ずれた手が前記円筒部材に接触して、乗客に不快な思いをさせてしまう。
【0009】
これに対応するため、円筒部材を廃して、平板部材の前端を角の無い丸みを帯びた形状とすることが考えられる。これにより、円筒部材の外径の半分から平板部材の厚みの半分を引いた長さ分、移動手摺から保護板までの水平距離を長くすることができるため、移動手摺に置いた乗客の手が保護板に接触する頻度を低減することができる。
【0010】
しかしながら、乗客コンベアで搬送される乗客に対し、円筒部材が相対的に接近してくる場合と比較して、丸みを持たせたとはいえ、平板部材の前端(先端)が相対的に向かってくる場合は、乗客に与える安心感が損なわれてしまう。
【0011】
なお、上記した課題は、環状に連結された複数の踏段からなる無端搬送体によって乗客を搬送するエスカレータに限らず他の乗客コンベア、例えば、ゴムベルト式の無端搬送体を有する乗客コンベアにも共通する。
【0012】
本発明は、上記した課題に鑑み、上記従来の保護板よりも乗客の手等の接触頻度を低減でき、かつ、上記平板部材のみとした場合よりも安心感を与えられる、エスカレータの保護板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明に係る、乗客コンベアの保護板は、循環走行する無端搬送体および当該無端搬送体と同期して循環走行する移動手摺を有し、建築物の階下と階上の間に架け渡された第1の乗客コンベアに付設される保護板であって、前記建築物または前記第1の乗客コンベアに隣接する第2の乗客コンベアにおいて、前記階下と前記階上との間で前記移動手摺と交差する交差部に、当該移動手摺と直交する水平方向に間隔を空け、鉛直方向に取り付けられる平板部と、前記平板部の前記階下側に設けられ、前記第1の乗客コンベアによって階下から階上へと搬送される人または物の、前記間隔を越えて前記移動手摺からはみ出した部分が接触する前縁部と、を有し、前記前縁部における前記水平方向の幅が前記平板部の厚みよりも大きく、当該前縁部は、前記平板部の前記移動手摺に面する主面を含む仮想平面に対し、前記移動手摺とは反対側に設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、前記平板部の前記階下側端部から、前記移動手摺から水平方向に遠ざかる向きに延出された延出部を有し、前記前縁部は、前記延出部に、長さ方向が鉛直方向となる姿勢で取り付けられた筒状部材からなることを特徴とする。
【0015】
この場合に、前記筒状部材は、円筒部材であることを特徴とする。
【0016】
あるいは、前記保護板は、平坦部を有する1枚の板部材を含み、前記平板部は前記平坦部であり、前記前縁部は前記平坦部の前記階下側端部から前記移動手摺から水平方向に遠ざかる向きにカーブした曲成部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記の構成からなる、乗客コンベアの保護板によれば、人または物の、上記間隔を越えて前記移動手摺からはみ出した部分が接触する前縁部が、上記交差部に鉛直方向に取り付けられる上記平板部の、前記移動手摺に面する主面を含む仮想平面に対し、前記移動手摺とは反対側に設けられているため、上記従来の保護板のように前縁部となる円筒部材の一部が前記仮想平面と移動手摺との間に存する構成としたものと比較して、人または物が前縁部に接触する頻度を低減することができる。
【0018】
また、従来の円筒部材を廃して、平板部材の先端を丸めた場合と比較して、保護板の前縁部における移動手摺と直交する水平方向の幅が上記平板部材の厚みよりも大きいため、乗客に安心感を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態における保護板の付設位置の一例を示す図である。
図2】(a)は実施形態1に係る保護板の正面図であり、(b)は同平面図である。
図3】(a)は実施形態1に係る保護板が設置された状態における当該保護板およびその近傍を保護板の円筒部材側から水平方向に視た一部切断図であり、(b)は同保護板およびその近傍の一部切断右側面図であり、(c)は同保護板の円筒部材側先端部分の平面図である。
図4】(a)〜(e)は、それぞれ、実施形態1の変形例に係る保護板の平面図の一部を表した図である。
図5】(a)は実施形態2に係る保護板の正面図であり、(b)は同平面図である。
図6】(a)は実施形態2に係る保護板が設置された状態における当該保護板およびその近傍を保護板の曲成部側から水平方向に視た一部切断図であり、(b)は同保護板およびその近傍の一部切断右側面図であり、(c)は同保護板の曲成部側先端部分の平面図である。
図7】(a)〜(c)は、それぞれ、実施形態2の変形例に係る保護板の平面図の一部を表した図である。
図8】実施形態に係る保護板の付設位置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る乗客コンベアの保護板の実施形態について、エスカレータに付設される場合を例にとり、図面を参照しながら説明する。なお、全ての図において構成部材の尺度は統一していない。
【0021】
<実施形態1>
図1に示すように、エスカレータ10は、環状に連結されて循環走行し、乗客を搬送する無端搬送体である複数の踏段12を有する。踏段12の走行路RWの両側には、欄干14,16が設置されている。欄干14,16の各々は、走行路RWに沿って立設された複数の欄干パネル18を有する(図1において、欄干パネルは、片側の欄干14を構成する欄干パネル18のみに符号を付している。)。
【0022】
欄干パネル18の外周には、ガイドレール28(図1では不図示、図3(a)参照)に案内され、踏段12と同じ向きに同じ速度で同期して循環走行する無端ベルト状をした移動手摺20,22がそれぞれ設けられている。
【0023】
エスカレータ10は、例えば、建築物内の階下のフロアDSと階上のフロアUSとの間に架け渡されて設置されている。エスカレータ10は、踏段12の走行の向きが切り替えられて、昇り用あるいは下り用として用いられ、踏段12に乗った乗客が、階下のフロアDSから階上のフロアUS、あるいは階上のフロアUSから階下のフロアDSへと搬送される。
【0024】
エスカレータ10が昇り用として用いられる際に、踏段12によって搬送される乗客の進行方向に向かって左側となる移動手摺22とこれに近接して立体交差する階下の天井24部分(交差部)には、保護板(固定保護板)26が付設されている。保護板26は、乗客の身体の一部等が移動手摺22と天井24との間に挟みこまれてしまうといった事故を未然に防止する目的で設置されている。なお、図1は、保護板26の付設位置を示すことを目的としており、保護板26の正確な形状や保護板26の天井24部分への取付形態については表していない。
【0025】
保護板26の詳細について、図2を参照しながら説明する。
保護板26は、横向きの略台形状をした平板部30と平板部30の図2における左側端部から延出された延出部32とを含む本体部34を有する。本体部34は、合成樹脂板(例えば、アクリル板)からなる。平板部30の図2における上端に沿って、厚み方向に貫通する複数個の(本例では、4個の)貫通孔30Cが開設されている。
【0026】
延出部32は、図2(b)に示す平面視で、平板部30の一方の主面30Aを含む仮想平面IP1と角度θを成して斜めに延出されている。角度θは、例えば、30度から60度の範囲で設定される。なお、平板部30の二つの主面30A,30Bの内、主面30Aが、後述するように、保護板26が天井24に取り付けられた状態で、移動手摺22に面する方の主面である。
【0027】
延出部32には、筒状部材である円筒部材36が取り付けられている。円筒部材36は、合成樹脂(例えば、アクリル)製である。円筒部材36の内径は、本体部34の厚みよりも大きく設定されている。円筒部材36は、本体部34の厚みよりも若干小さい幅で、長手方向に開設されたスリット36Aを有する。
【0028】
スリット36Aから延出部32が、その先端32Aが円筒部材36の内周面に当接するまで挿入された状態で、接着剤(不図示)により、円筒部材36と延出部32とが接着されている。接着箇所は、延出部32の先端32Aとその近傍、およびスリット36において円筒部材36が延出部32を挟んでいる部分とその近傍である。
【0029】
円筒部材36が本体部34に取り付けられた状態で、円筒部材36は、図2(b)において、仮想平面IP1よりも上側に設けられている。円筒部材36が仮想平面IP1よりも上側に設けられている状態とは、図2(b)に示すように、円筒部材36の外周が仮想平面IP1に接する状態を含むものとする。円筒部材36が仮想平面IP1よりも上側の状態となるように、角度θ、円筒部材36の内径、および外径が設定されている。
【0030】
上記の構成からなる保護板26が、天井24(図1)の移動手摺22との交差部に、エスカレータ10に付属して設けられた(付設された)状態を図3に示す。なお、図3(a)において、エスカレータ10は切断した端面のみを表しておりその背景の図示は省略している。
【0031】
保護板26は、固定金具38で天井24に固定されている。固定金具38は、L字アングル部材40と短冊状をした板部材42とを有する。L字アングル部材40と板部材42とは、例えば、ステンレス鋼でできている。
【0032】
L字アングル部材40は、L字を成す二辺の内、一方の辺側部分が天井24に、不図示のアンカーボルト等によって固定されている。L字アングル部材40の他方の辺側部分には、長手方向に、複数の貫通孔30C(図2)の各々に対応させて貫通孔(不図示)が厚み方向に開設されている。また、板部材42にも、複数の貫通孔30C(図2)の各々に対応させて貫通孔(不図示)が厚み方向に開設されている。
【0033】
天井24に固定されたL字アングル部材40の前記他方の辺側部分に対し、保護板26の平板部30、および板部材42がこの順に、対応する貫通孔同士が連通するように重ねられている。この重なった状態で、連通する貫通孔毎に挿入されたボルト44とこれに螺合するナット46とで、L字アングル部材40、保護板26、および板部材42が締結されて、保護板26が天井24に固定されている。
【0034】
上記のようにして、天井24に、保護板26の平板部30は、移動手摺22と直交する水平方向に距離D1の間隔を空け、鉛直方向に取り付けられている。
【0035】
このように取り付けられた平板部30の階下側に設けられた円筒部材36が保護板26の前縁部となる。ここで、平板部(30)に対し、平板部(30)の主面(30A)と平行な水平方向において、エスカレータ10の階下に近い側を「階下側」と言い、階上に近い側を「階上側」と言うこととする。また、保護板における前縁部とは、エスカレータ10によって、階下から階上へと搬送される人または物の、(距離D1の)間隔を越えて移動手摺22からはみ出した部分が、先ず接触する部位を含む部材または一定範囲の領域を指すものとする。
【0036】
以上の構成からなる保護板26によれば、前縁部となる円筒部材36が、図3(a)に示すように、平板部30の移動手摺22に面する主面30Aを含む仮想平面IP1に対し、移動手摺22とは反対側に設けられているため、図3(a)、図3(c)に一点鎖線で一部を示す上記従来の保護板200と比較すると、少なくとも、円筒部材202の外径の半分弱に相当する距離D2分、前縁部と移動手摺22との間の水平距離を長くすることができる。これにより、階下から階上へ搬送される乗客の手等が保護板(前縁部)に接触する頻度を低減することができる。
【0037】
また、円筒部材202を廃して、平板部材204の先端を丸めた場合(この場合、平板部材204の先端が前縁部となる。)と比較して、保護板26の前縁部(円筒部材36)における移動手摺22と直交する水平方向の幅(円筒部材36の外径)が平板部材204の厚みよりも大きいため、乗客に安心感を与えることができる。
【0038】
なお、上記の例では、図3(a)、図3(c)に示すように、天井24の端から立ち上がった壁面24Aと平板部30の主面30Bとが同一平面上に位置するように、保護板26を取り付けたが、これに限らず、壁面24Aと主面30Aとが同一平面上に位置するように(壁面24Aと主面30Aが面一になるように)しても構わない。これは、L字アングル部材40の天井24に対する固定位置を平板部30の厚み分、ずらすことにより実現できる。
【0039】
また、延出部および円筒部材に関し、図4(a)〜図4(e)に示すような変形例としても構わない。なお、図4において、上記した実施形態と同じ構成部分等には、同じ符号を付して、その説明は省略するか、必要に応じて言及するに止め、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0040】
(変形例)
(1)図4(a)に示す変形例1では、平板部30からの延出部48の延出長さを延出部32(図2)よりも短くしている。この延出部48と平板部30とで本体部50が構成されている。また、延出部32(図2)に取り付けるため、円筒部材36(図2)ではスリット36A(図2)を開設したが、変形例1では、円筒部材52に、全長に亘り、その径方向中心に向かって窪んだ凹部52Aを形成した。凹部52Aに延出部32が差し込まれた状態で、不図示の接着剤により、円筒部材52が延出部48に固定されている。
【0041】
(2)円筒部材36(図2)にはスリット36A(図2)が形成され、円筒部材52(図4(a))には凹部52A(図4(a))が形成されていて、いずれも不完全な円筒形をしているが、図4(b)に示す変形例2では、円筒部材54を完全な円筒形とした。変形例2における延出部56は、延出部48(図4(a))よりも延出長さがさらに短くなっている。この延出部56と平板部30とで本体部58が構成されている。円筒部材54の外周面に延出部56の先端を当接させた状態で、当該当接箇所およびその近傍が不図示の接着剤によって接着されている。
【0042】
(3)実施形態1と変形例1,2では、延出部32,48,56(図2(b),図4(a),図4(b))を平板部30から真っ直ぐ斜めに延出させた構成としたが、図4(c)に示す変形例3では、延出部60を鉤状に延出させた構成とした。この延出部60と平板部30とで本体部62が構成されている。
【0043】
円筒部材36は、延出部60において平板部30と平行な端部部分60Aに取り付けられている。この取付態様は、実施形態1の場合と同様なので、その説明については省略する。
【0044】
(4)図4(d)に示す変形例4では、延出部64における端部部分64Aを延出部60の端部部分60A(図4(C))よりも短くしている。この延出部64と平板部30とで本体部66が構成されている。延出部64の端部部分64Aに円筒部材52が取り付けられている。円筒部材52の取付態様は、変形例1(図4(a))の場合と同様なので、その説明については省略する。
【0045】
(5)図4(e)に示す変形例5では、延出部68における端部部分68Aが、延出部64の端部部分64A(図4(d))よりもさらに短くなっている。この延出部68と平板部30とで本体部70が構成されている。延出部68の先端に円筒部材54が、変形例2(図4(b))と同様にして接着されている。
【0046】
(6)実施形態1とその変形例1〜5では、前縁部を筒状部材である円筒部材で構成したが、前縁部を構成する筒状部材は円筒部材に限らない。例えば、三角筒部材、四角筒部材、または五角以上の多角筒部材(いずれも不図示)としても構わない。あるいは、楕円筒部材としても良い。
【0047】
<実施形態2>
実施形態1およびその変形例1〜5は、平板部30の階下側に円筒部材36、円筒部材52、または円筒部材54を設けて、これを前縁部とした。これに対し、実施形態2に係る保護板72は、板部材の一端部を曲成し、当該曲成部を前縁部とした。
【0048】
保護板72の詳細について、図5図6を参照しながら説明する。
【0049】
図5に示すように、保護板72は、平板部74と曲成部76を有する。保護板72は平坦部を有する1枚の板部材からなる。当該板部材は、合成樹脂板(例えば、アクリル板)からなる。平板部74は、上記板部材の前記平坦部である。平板部74は、実施形態1に係る保護板26の平板部30(図2)と同様の形状をしている。平板部74には、平板部30と同様、図5(a)における上端に沿って、厚み方向に貫通する複数個の(本例では、4個の)貫通孔74Cが開設されている。
【0050】
曲成部76は、前記平坦部(平板部74)の階下側端部(図5においては、左側端部)から延出されている。曲成部76は、平板部74の主面74Aを含む仮想平面IP2から遠ざかる向きに、U字状にカーブして曲成された部分である。平板部74の二つの主面74A,74Bの内、主面74Aが、保護板72が天井24に取り付けられた状態で、移動手摺22に面する方の主面である。
【0051】
上記の構成からなる保護板72が、天井24(図1)の移動手摺22との交差部において付設された状態を図6に示す。なお、図6(a)において、エスカレータ10は切断した端面のみを表しておりその背景の図示は省略しているのは、図3(a)と同様である。
【0052】
保護板72は、L字アングル部材40と板部材42とを有する固定金具38で天井24に固定されている。固定金具38およびボルト44、ナット46による保護板72の天井24への取付態様は実施形態1と同様なので、その説明については省略する。
【0053】
保護板72が天井24に取り付けられた状態で、その平板部74は、実施形態1の保護板26の平板部30(図3)と同様、移動手摺22と直交する水平方向に距離D1の間隔を空け、鉛直方向に平行な姿勢となっている。
【0054】
保護板72における前縁部である曲成部76は、平板部74の階下側端部から移動手摺22から水平方位に遠ざかる向きにカーブしており、平板部74の移動手摺22に面する主面74Aを含む仮想平面IP2から、移動手摺22側にはみ出した部分がない。
【0055】
これにより、階下から階上へと搬送される乗客の手等が保護板(前縁部)に接触する頻度を低減することができるのは、実施形態1と同様である。
【0056】
また、保護板72の前縁部(曲成部76)における移動手摺22と直交する水平方向の幅Wが平板部30の厚みTよりも大きいため、乗客に安心感を与えることができるのも実施形態1と同様である。
【0057】
なお、図示例に限らず、平板部74の主面74Aが壁面24Aと同一平面上に位置するように(主面74Aと壁面24Aが面一になるように)、保護板72を天井24に取り付けても構わないのは、実施形態1の場合と同様である。
【0058】
また、曲成部に関し、図7(a)〜図7(c)に示すような変形例1〜3としても構わない。なお、図7において、上記した実施形態と同じ構成部分等には、同じ符号を付して、その説明は省略するか、必要に応じて言及するに止め、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0059】
(変形例)
(1)図7(a)に示すように、変形例1の曲成部78は、平板部74の階下側端部(図7においては、左側端部)から、円弧状にカーブして延出されてなる部分である。
【0060】
(2)図7(b)に示すように、変形例2の曲成部80は、平板部74の階下側端部(図7においては、左側端部)から、L字を成すようにカーブして延出されてなる部分である。
【0061】
(3)図7(c)に示すように、変形例3の曲成部82は、平板部74の階下側端部(図7においては、左側端部)から、当該階下側端部部分とでL字を成すようにカーブして延出されてなる部分である。なお、L字の角に相当する角部82Aは、図示のように大きな丸みがつけられている。
【0062】
以上、本発明に係る保護版を実施形態、およびその変形例に基いて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下のような形態としても構わない。
(1)上記実施形態では、本発明に係る保護板を、エスカレータがこれに隣接して立体交差する天井等における交差部に付設される例に基いて説明したが、本発明に係る保護板は、エスカレータがこれに隣接して立体交差する他のエスカレータにおける交差部に付設される保護板にも適用可能である。
【0063】
そのように配置されたエスカレータの配置例を図8に示す。
図8は、建築物の1階から4階において、上下に隣接する階毎に2基のエスカレータが近接状態で交差して配置された例である。図8において、右下がりに設置されたものを下から順に、エスカレータ101,103,105とする。また、エスカレータ101,103,105の奥側に在って、左下がりに設置されたものを下から順に、エスカレータ102,104,106とする。
【0064】
例えば、エスカレータ101に対しては、1階と2階の間で、エスカレータ102およびエスカレータ104が交差している。エスカレータ101が昇り用エスカレータの場合は、エスカレータ102,104の交差部に保護板A1,A2がそれぞれ付設される。保護板A1,A2の具体的な取付先は、エスカレータ102,104の外装下面である。
【0065】
同様に、エスカレータ103,105が昇り用エスカレータの場合は、エスカレータ103に対しては、エスカレータ104の交差部(外装下面)に保護板A3が付設され、エスカレータ106の交差部(外装下面)に保護板A4が付設される。また、エスカレータ105に対しては、エスカレータ106の交差部(外装下面)に保護板A5が付設される。
【0066】
一方、エスカレータ102,104,106が昇り用エスカレータの場合は、エスカレータ102に対しては、エスカレータ101、エスカレータ103の交差部(外装下面)に保護板B1、B2がそれぞれ付設される。また、エスカレータ104に対しては、エスカレータ103,105の交差部(外装下面)に保護板B3,B4がそれぞれ付設される。さらにエスカレータ106に対しては、エスカレータ105の交差部(外装下面)に保護板B5が付設される。
【0067】
保護板A1〜A5、B1〜B5には、上述した実施形態1,2およびその変形例に係るいずれのタイプの保護板を用いても構わない。但し、移動手摺と交差部の交差角度等に適合させて、平板部30(図2)や平板部74(図5)の形状を適宜変更する。例えば、実施形態1において平板部30は、図2に示したように、一方の脚が上底(階上側端縁)と下底(階下側端縁)とに対して垂直な台形状(不等脚台形状)をしているが、保護板A1〜A5、B1〜B5とする場合の平板部は等脚台形状とする。等脚台形状とした平板部は、短い方の上底が階上側、長いほうの下底が階下側となるように、交差部に設置される。
【0068】
(2)上記実施形態では、本発明に係る乗客コンベアの保護板をエスカレータに付設する例に基いて説明したが、本発明に係る保護板は、エスカレータに限らず、他の乗客コンベア、例えば、パレット式やゴムベルト式の傾斜型動く歩道の付設用としても適用できる。すなわち、環状に連結された複数のパレットからなる無端搬送体やゴムベルトからなる無端搬送体を循環走行させて乗客を搬送する傾斜型動く歩道の付設用にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る乗客コンベアの保護板は、例えば、エスカレータに付設される保護板として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
26,72 保護板
30,74 平板部
30A、74A 主面
36,52,54 円筒部材
76,78,80,82 曲成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8