(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な積層セラミックコンデンサは、例えば、
図7に示すように、誘電体層であるセラミック層101を介して複数の内部電極102a,102bが積層されたチップ110の一対の端面104a,104bに、内部電極102a,102bと導通するように一対の外部電極105a,105bが配設された構造を有している。
【0003】
そして、このような積層セラミックコンデンサは、通常、
(1)セラミックグリーンシートと内部電極層を積層して積層シートを形成する工程、
(2)積層シートをカットして、個々の未焼成のチップに分割する工程、
(3)個々の未焼成の積層チップを焼成することで積層体を形成する工程、
(4)積層体に外部電極を形成する工程
を経て製造されている。
【0004】
ところで、近年、積層セラミックコンデンサの大容量化を一層進めるため、
図8に示すように、内部電極102a,102bと、セラミック層101が積層され、内部電極102a,102bが交互に逆側の端面に引き出されたチップ110であって、側面を被覆するセラミック部を有さず、内部電極102a,102bが側面から露出した状態の未焼成のチップを形成し、このチップの側面に被覆用のセラミックシート(セラミックグリーンシート)を貼り付けることで、側面を被覆するセラミック部の厚さ寸法が小さく、製品の体積に対して、取得容量の大きい積層セラミックコンデンサが得られるようにした積層セラミックコンデンサの製造方法が開発されており、そのような方法で製造された積層セラミックコンデンサが実用されるに至っている。
【0005】
そして、特許文献1には、側面を被覆するセラミック部を有しないチップを形成し、その側面に、被覆用のセラミックシートを貼り付けた後、焼成する工程を経て、小型かつ大容量で、信頼性の高い積層セラミックコンデンサを歩留まりよく製造することを可能にした積層セラミックコンデンサの製造方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように、側面に被覆用のセラミックシートを貼り付ける工程を有する積層セラミックコンデンサの製造方法の場合、従来の一般的な積層セラミックコンデンサの製造方法に比べて、製造工程が多くなり、生産性が低下するという問題点があり、生産性の向上が課題となっているのが実情である。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、内部電極が露出した側面に、被覆用のセラミックシートを付与する工程を経て作製される電子部品を製造する場合などにおいて、シートを付与するのに好適に用いることが可能なシート付与装置、および、それを用いて信頼性の高い電子部品を効率よく製造することが可能な電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のシート付与装置は、
巻かれた長尺状のシートが装着され、前記シートを供給するシート供給部と、
チップを保持するチップ保持部と、前記シート供給部から供給された前記シートを支持するシート支持部とを含み、前記シート支持部に支持された前記シートの一部と、前記チップ保持部に保持された前記チップとを当接させることにより、前記シートの一部が前記チップに移行するように構成されたシート切取部と、
前記シート支持部の上流に位置し、前記シートが搬送されるときには前記シートと接触せず、前記シートが停止して前記シートの一部が前記チップに移行する際に前記シートに接触して、前記シートにテンションを与える第1バーと、前記シート支持部の下流に位置し、前記シートが搬送されるときには前記シートと接触せず、前記シートが停止して前記シートの一部が前記チップに移行する際に前記シートに接触して、前記シートにテンションを与える第2バーと、一部を前記チップに移行させた残りのシートを回収するシート回収部と
を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明のシート付与装置においては、前記シート切取部を経た前記シートを送るロールであって、軸方向の端から中央に近づくにつれて直径が小さくなるロールをさらに備えることが好ましい。
【0011】
シートの、テンションロールの中央に対応する領域、すなわち、長尺状のシートの長手方向に直交する幅方向中央領域は、シートの一部がチップに付与されて、シートの存在しない領域が含まれることになるため、大きな力で搬送すると幅方向中央領域でシートが伸びてしまい、平坦な状態でシートを搬送することが困難になる。
これに対し、上述のように、シート切取部を経た前記シートを送るロールであって、軸方向の端から中央に近づくにつれて直径が小さくなるロールをさらに備えるように構成した場合、シートの存在しない領域を含まないか、またはシートの存在しない領域の少ない幅方向両端側領域が大きい力で搬送され、シートの上記幅方向中央領域は小さい力で搬送されることになるため、一部をチップに移行させた後の残りのシートを平坦に保ちつつ確実に回収することが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0012】
また、前記巻かれた長尺状のシートは、フィルムに貼りつけられており、
前記シート供給部より
下流で前記シート支持部より
上流に位置し、前記フィルムから前記シートを剥離する剥離機構と、
前記シートが剥離された前記フィルムを回収するフィルム回収部と、
をさらに備えていること
が好ましい。
【0013】
長尺状のシートが、フィルムに貼りつけられており、シート供給部より
下流でシート支持部より
上流に位置し、フィルムからシートを剥離する剥離機構と、シートが剥離されたフィルムを回収するフィルム回収部とをさらに備えた構成とすることにより、シートがフィルムに貼り付けられて安定した状態で、シート切取部の手前までシートを搬送することが可能になり有意義である。
【0014】
また、前記シート支持部は、前記シートの一方側に位置し、前記チップ保持部と前記フィルム回収部は、前記シートの他方側に位置することが好ましい。
シートの、フィルムに貼り付けられていた面は、フィルムに貼り付けられていない露出している面よりも異物が付着している可能性が低く、上記構成を備えている場合には、シートのフィルムに貼り付けられていた、異物が付着している可能性の少ない面をチップに貼り付けることが可能になる。
【0015】
また、チップ保持部とフィルム回収部が一方側に位置し、シート支持部が他方側に位置するように構成することにより、シートの剥離を確実に行うことが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0016】
前記シート供給部は、前記フィルムに貼り付けられたシートを供給し、
前記シート支持部は、前記フィルムに貼り付けられた前記シートの一部と、前記チップ保持部に保持されたチップとを当接させて、前記シートの一部を前記チップに移行させ、
前記シート回収部は、一部を前記チップに移行させた残りの、フィルムに貼り付けられたシートを回収すること
が好ましい。
【0017】
上記構成を備え、シート回収部が、一部をチップに移行させた残りの、フィルムに貼り付けられたシートを回収するようにした場合にも、シートを確実にチップに付与することが可能なシート付与装置を提供することが可能になる。
【0018】
また、本発明の電子部品の製造方法は、上記本発明のシート付与装置を用い、前記シート支持部に支持させた前記シートと、前記チップ保持部に保持させた前記チップとを互いに当接させることにより、前記シートの一部を前記チップに付与する工程と、
前記シートの一部が付与された前記チップを焼成して、電子部品の本体を得る工程と
を具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明のシート付与装置は、長尺状のシートを繰り出すシート供給部と、チップ保持部と、繰り出されたシートを支持するシート支持部とを含み、シート支持部に支持されたシートの一部と、チップ保持部に保持されたチップとを当接させて、シートの一部をチップに移行させるシート切取部と、
シート支持部の上流に位置し、シートが搬送されるときにはシートと接触せず、シートが停止してシートの一部がチップに移行する際にシートに接触して、シートにテンションを与える第1バーと、シート支持部の下流に位置し、シートが搬送されるときにはシートと接触せず、シートが停止してシートの一部がチップに移行する際にシートに接触して、シートにテンションを与える第2バーと、一部をチップに移行させた残りのシートを回収するシート回収部とを備えているため、長尺状のシートを用い、シートを連続的に供給搬送するとともに、シートを確実にチップに付与し、残りのシートを連続的に回収することが可能になる。
【0020】
その結果、効率的にシートをチップに付与することができるようになる。例えば、側面を被覆するセラミック部を有しないグリーンチップを形成し、その側面に、被覆用のセラミックシートを貼り付ける工程を経て、積層セラミックコンデンサを製造するような場合に、積層セラミックコンデンサを生産性よく製造することが可能になる。
【0021】
また、第1バーおよび第2バーによって、シートが弛んで、しわが発生したり、搬送しにくくなったりすることを抑制、防止することが可能になるため、シートを確実に搬送することが可能になり、有意義である。
【0022】
また、シートが搬送している間に第1バーおよび第2バーがシートに接触せず、シートが過度に大きな力を受けることがないため、必要なときにだけシートにテンションを与えることが可能になり、シートを確実に搬送することが可能になる。
【0023】
また、本発明の電子部品の製造方法は、上述の本発明のシート付与装置を用い、シート支持部に支持させたシートと、チップ保持部に保持させたチップとを互いに当接させることにより、シートの一部をチップに付与する工程と、シートの一部が付与されたチップを焼成して電子部品の本体を得る工程とを備えているので、例えば、側面を被覆するセラミック部を有しないグリーンチップを形成し、その側面に、被覆用のセラミックシートを貼り付ける工程を経て、積層セラミックコンデンサを製造するような場合に、積層セラミックコンデンサを生産性よく製造することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
この実施形態では、
図4(a),(b)に示すような、電子部品の一つである積層セラミックコンデンサを製造する場合に用いられるシート付与装置を例にとって説明する。
【0026】
図4(a),(b)に示す積層セラミックコンデンサは、セラミック層101を介して複数の内部電極102(102a,102b)が積層されたチップ110の一対の側面103(103a,103b)に、絶縁層としてセラミック層111が貼り付けられ、一対の端面104(104a,104b)に、内部電極102(102a,102b)と導通するように一対の外部電極105(105a,105b)が配設された構造を有している。
【0027】
この積層セラミックコンデンサは、
図5に示すように、マザー積層体Mをカットして分割することにより得られるチップ110から作製される。チップ110は、互いに対向する一対の端面104に、積層方向に隣り合う内部電極層102(102a,102b)が交互に引き出され、かつ、互いに対向する一対の側面103(103a,103b)に、セラミック層101と交互に積層された各内部電極層102のいずれもが露出した構造を有する。チップ110の一対の側面103に、
図6に示すように未焼成のセラミックシート111を貼り付け、焼成した後、
図4(a),(b)に示すようにチップ110の両端部に外部電極105を形成することにより積層セラミックコンデンサが作製される
【0028】
そして、本発明の一つの好ましい実施形態として、上述のチップ110の一対の側面103に、セラミックシート111を貼り付ける工程で用いられるシート付与装置を説明する。
【0029】
<1>シート付与装置
この実施形態にかかるシート付与装置は、
図1に示すように、(a)シート111を供給するシート供給部5と、(b)シート111の一部をチップ110に付与するためのシート切取部10と、(c)一部をチップ110に移行させた残りのシート111を回収するシート回収部20とを備えている。
【0030】
なお、実施形態にかかるシート付与装置では、
図1に示すように、チップ110が所定の間隔をおいてマトリックス状に整列して粘着保持された、面方向に拡張可能な材料からなるシート状の保持治具13を、チップ保持部11の下面に吸引保持することにより、チップ111がチップ保持部11に保持されるように構成されている。
【0031】
また、シート支持部12は、その表面にシリコンラバーを用いた弾性層12aを介してシート111を支持するように構成されている。
【0032】
この実施形態のシート付与装置において、上記(a)のシート供給部5は、巻かれた長尺状のシート111を繰り出すシート繰り出しロール5aを備えている。
【0033】
上記(b)のシート切取部10は、チップ110を保持するチップ保持部11と、繰り出されたシート111を支持するシート支持部12とを備える。シート切取部10は、シート供給部5から供給され、シート支持部12に支持されたシート111の一部と、チップ保持部11に保持されたチップ110とを当接させることにより、シート111の一部がチップ110に移行するように構成されている。すなわち、この実施形態のシート付与装置では、チップ保持部11により保持されたチップ110と、シート支持部12により支持されたシート111とを圧接させることにより、シート111の一部がチップ110に打ち抜かれて、チップに転写される。換言すれば、シート111の一部がチップ110に打ち抜かれることによって、シート111が切り取られる。なお、シート111が切り取られる態様は、打ち抜きによる方法に限らず、他の既知の手段が用いられてもよい。
【0034】
なお、チップ110を保持するチップ保持部11と、シート111を支持するシート支持部12とを備え、シート支持部12に支持されたシート111の一部を、チップにより打ち抜いて、シート111の一部をチップに付与する機構は、上述の特許文献1(特開2015−026721号公報)にも記載されているところである。
【0035】
また、上記(c)のシート回収部20は、一部をチップ110に移行させた残りのシート111を回収する機構であり、シート巻き取りロール20aを備えている。
【0036】
また、この実施形態のシート付与装置は、シート111と当接し、シート111を保持するとともに、シート111にテンションを与えながら、シート111をチップ保持部11とシート支持部12との間を通過するとともに、チップ保持部11に保持されたチップ110に、シート支持部12により支持されたシート111の一部を付与するシート付与工程において、シート111にテンションを与えるテンションロール15、その下流側に配設され、シート付与工程を経たシート111を支持する支持ロール25を備えている。テンションロール15と支持ロール25は、シート切取部を経たシート111を送るロールである。そして、シート切取部を経たシート111を送るロールの少なくとも1つは、軸方向の端から中央に近づくにつれて直径が小さくなるように構成されている。本実施形態においては、テンションロール15が、軸方向の端から中央に近づくにつれて直径が小さくなるように構成されている。
【0037】
なお、テンションロール15の、軸方向の端から中央に向かっての直径の変化率は例えば、2〜3%とすることが好ましい。なお、変化率が2〜3%であるということは、端の直径が100である場合に、中央の直径が97〜98となるような変化の状態をいう。
また、テンションロール15の近傍には、シート111の高さを規定するための高さ調整用の補助ロール15aが設けられている。
なお、支持ロール25が、軸方向の端から中央に近づくにつれて直径が小さくなるように構成されていてもよい。
【0038】
また、この実施形態のシート付与装置は、シート支持部12の上流および下流に位置し、チップ保持部11に保持されたチップ110に、シート支持部12により支持されたシート111の一部を付与するシート付与工程で、シート111に当接してシート111にテンションを与えるバー16a,16b
(第1バー16a、第2バー16b)を備えている。
そして、このバー16a,16bは、シート111が搬送されるときにはシート111と接触せず、シート111が停止してシート111の一部がチップ110に移行する際にシート111に接触し、シート111にテンションを与えるように構成されている。
【0039】
また、テンションロール15は、シート付与工程で、チップ110に付着したシート111の、チップに付与された部分以外の残りの部分を剥離させるように機能させることも可能である。
【0040】
また、この実施形態のシート付与装置では、シート111が、フィルム2に貼り付けられた状態でシート供給部5から供給されるように構成されており、シート供給部5とシート支持部12との間には、フィルム2からシート111を剥離する機能を果たす剥離機構23が配設されている。
【0041】
剥離機構23は、シート剥離用のロール21,22を備えており、フィルム2に貼り付けられた状態のシート111はロール21と、ロール22の間を搬送されるように構成されている。そして、シート111がロール21を介してテンションロール15に引き渡され、フィルム2がロール21を介してフィルム巻き取りロール30aに巻き取られるように構成されている。
【0042】
そして、この実施形態のシート付与装置では、上述のフィルム巻き取りロール30aが、シート111が剥離された後のフィルム2を回収するフィルム回収部30を構成している。ただし、フィルム回収部30は、回収ボックスなどであってもよく、ロールを用いた構成のものに限られるものではない。
【0043】
また、この実施形態のシート付与装置では、シート111で隔てられた一方の領域A1を一方側、他方の領域A2を他方側とした場合に、チップ保持部11とフィルム回収部22は、他方側の空間A2に位置し、シート支持部12は、一方側の空間A1に位置するように構成されている。すなわち、シート111の、フィルム2に貼り付けられていた面111aは、フィルム1に貼り付けられていなかった面111bよりも異物が付着している可能性が低く、上記構成を備えている場合には、異物が付着している可能性が少ない面(フィルム2に貼り付けられていた面)111aがチップ110に対向し、フィルム2に貼り付けられていなかった面111bがシート支持部12と対向することになる。したがって、シート111のフィルム2に貼り付けられていた清浄な面111aがチップ110に貼り付けられることになり、製品の信頼性を確保することが可能になる。
【0044】
また、この実施形態にかかるシート付与装置は、さらにシートの搬送を確実に行うために、ロール26,27などを備えているが、場合によっては省略することも可能である。
【0045】
また、本発明のシート付与装置では、上述の剥離機構23や、フィルム回収部30を備えず、シート111がフィルム2に貼り付けられた状態で、シート付与工程に供された後、フィルム上に残ったシートをフィルムとともにシート回収部20にて回収するような構成とすることも可能である。
【0046】
<2>チップへのシートの付与方法
次に、上述のように構成されたシート付与装置を用いて、チップにシートを付与する方法およびその際の動作について説明する。
【0047】
(1)まず、シート繰り出しロール5aとフィルム巻き取りロール30aを回転させて、フィルム2に貼り付けられた状態のシート111の供給を開始する。
シート111が搬送され、シート剥離用のロール21,22に達すると、上述のように、シート111とフィルム2とが剥離される。
剥離されたシート111は、テンションロール15、その下流側に配設された支持ロール25を経て、シート回収部20を構成するシート巻き取りロール20aの回転により巻き取られる。
【0048】
(2)次に、テンションロール15を、
図1に示す、シート切取部10よりも上流側の位置から、
図2に示す、シート切取部10よりも下流側の位置に移動させて、チップ保持部11に保持されたチップ110とシート111との距離が短くなるように高さ調整を行う。
なお、剥離用のロール21とテンションロール15とは同じ高さであるが、両者と下流側の搬送用の支持ロール25とでは高さが異なっており、ロール21およびテンションロール15の方が、下流側の支持ロール25よりも高い位置に配設されている。
【0049】
したがって、テンションロール15を上流側と下流側との間で移動させた場合にも、ロール21とテンションロール15と間に保持されるシート111は水平に保たれる。
また、テンションローラの近傍には、高さ調整用の補助ロール15aが配設されているので、補助ロール15aと下流側の支持ロール25と間に保持されるシート111は水平に保たれる。
【0050】
そして、上述のように、テンションロール15は、ロール21と高さが同じであることから、テンションロール15が
図2に示すように、シート切取部10よりも下流側の位置に移動することで、水平に保たれたシート111がチップ保持部11に、面方向に拡張可能な材料からなるシート状の保持治具13を介して保持されたチップ110に接近する。
【0051】
(3)その後、シート支持部12が上昇して、シート支持部12に支持されたシート111がチップ110の下面に押し当てられる(
図3参照)ことにより、シート111の一部、すなわち、チップ110の下面に押し当てられた部分がチップ110に付与される。
【0052】
なお、シート111がチップ110に付与される工程で、シート支持部12が上昇することで、シート支持部12およびチップ保持部11の上流および下流に位置するバー16a,16bが、シート111に当接してシート111に適切なテンションが加わる。
【0053】
そして、シート支持部12がさらに上昇することで、適切なテンションが与えられたシート111がチップ110の下面に当接し、さらに、表面にシリコンラバーからなる弾性層12aを備えたシート支持部12がシート111をチップ110の下面に押圧することにより、シート111の、チップ110の下面に押圧された部分が打ち抜かれ、チップ110に確実に付与される。この方法によれば、長尺状のシート111がテンションをかけられた状態で、シート111の一部が切り取られることになる。そして、シート111の搬送、シート111の一部の切り取りおよび残りのシート111の回収を一連の動作で行うことができる。また、本実施形態においては、チップ110が上方に位置し、シート111の一部が貼りつけられるチップ110の面が下方を向いている。したがって、シート111の一部が貼りつけられるチップ110の面にゴミ等の不純物が載りにくい。
【0054】
(4)その後、シート支持部12を下降させ、一部がチップ110に付与された、シート111の残り部分をシート支持部12とともに下降させる。このとき、シート111の残り部分とバー16a,16bは離間する。
【0055】
(5)それから、テンションロール15を、
図3に示す、シート切取部10よりも下流側の位置から、
図1に示す、シート切取部10よりも上流側の位置に移動させ、次のシート付与工程に備える。なお、テンションロール15をシート切取部10よりも下流側の位置から、シート切取部10よりも上流側の位置に移動させるときには、シート111の搬送は行われないように構成されている。
【0056】
上述の(1)〜(5)の工程を繰り返すことにより、チップ110へのシート111の付与を連続的に確実に行うことができる。
【0057】
<3>電子部品の製造方法
次に、上述のシート付与装置を用いて電子部品(この実施形態では積層セラミックコンデンサ)を製造する方法について説明する。
この実施形態では、上述のシート付与装置を用いて、チップ110にシート111を付与する工程を経て、
図4〜6に示した積層セラミックコンデンサを製造する場合を例にとって説明する。
【0058】
なお、この積層セラミックコンデンサを製造する工程は、順に、
(1)個々のチップの集合体である積層ブロックを作製する工程(工程S1)と、
(2)積層ブロックを切断して個々のチップに分割する工程(工程S2)と、
(3)チップの側面を被覆するためのセラミックシート(セラミックグリーンシート)をチップの側面に付与する工程(工程S3)と、
(4)セラミックシートを側面に貼り付けたチップを焼成する工程(工程S4)と、
(5)焼成済みのチップに外部電極を形成する工程(工程S5)と
を主として備えている。
【0059】
以下、各工程について順に説明する。
(工程S1)積層ブロックの作製
セラミックス粉末、バインダおよび溶剤を含むセラミックスラリーを準備する。このセラミックスラリーを、ダイコータやグラビアコータなどを用いてキャリアフィルム上にシート状に成形することにより、セラミックグリーンシートを製作する。
次に、このセラミックグリーンシートに、スクリーン印刷やグラビア印刷などの方法で導電ペーストを印刷して、セラミックグリーンシートの表面に所定の形状の電極パターンを形成する。
それから、この電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートおよび電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシートを、所定の順序に従って複数枚積層し、熱圧着することにより、積層ブロックを作製する。
【0060】
(工程S2)積層ブロックの切断
上述のようにして作製した積層ブロックを行列状に切断して、個々のチップに分割する(
図5参照)。なお、積層ブロックは、一方向にのみ分断されて、棒状のチップに個片化されるようにしてもよい。
なお、切断刃による押し切りの方法で積層ブロックを複数箇所で切断して分割する場合、切断面と、積層ブロックの一対の主面の一方のなす角度が90°を僅かに下回るように切断されるようにすることが好ましい。
【0061】
(工程S3)被覆用のセラミックシートのチップへの付与
(S3−1)積層ブロックを切断して個片化した複数のチップを、粘着性を有し、面方向に拡張させることが可能な保持治具上に保持させた状態で、保持治具を面方向に拡張し、隣り合うチップどうしの間隔を大きくし、各チップの切断面が上面となるように、各チップを転動させる。
そして、各チップ110を保持した保持治具13を、上記<1>のシート付与装置のチップ保持治具11(
図1〜3参照)に保持させる。
【0062】
(S3−2)そして、上記<2>のチップへのシートの付与方法に従って、チップ110の切断面(
図5における側面103aに被覆用のセラミックシート111(
図6参照)を貼り付ける。
【0063】
(S3−3)それから、各チップをさらに転動させ、反対側の切断面(
図5における側面103b)を上面側に向けて露出させ、切断面(
図5における側面103b)に被覆用のセラミックシート111を貼り付ける。
【0064】
なお、チップが、上述の棒状のチップであっても同様にして、被覆用のセラミックシートを貼り付けることができる。
ただし、棒状のチップの場合、被覆用のセラミックシートが貼り付けられた後、棒状のチップを切断することにより個片としてのチップに分割される。
【0065】
チップに被覆用のセラミックシートを付与する際に、シート支持部12(
図3参照)を上昇させて、チップ保持部11に保持されたチップ110にシート111を押し付ける際の速度を大きくすることにより、セラミックシートを伸びにくくして、破断起点を形成しやすくすることができる。
【0066】
チップ110にシート111を押し付け始めてから、シート111に破断起点が生じるまでのシート110の移動速度(チップとシートの相対的な移動速度))は、0.6mm/s以上、1mm/s以下であることが好ましく、破断起点が生じた後、さらに、シートが打ち抜かれるまでの、両者の相対的な移動速度は、押し付けの開始から破断起点が生じるまでの移動速度より小さく、0.2mm/s以上、0.4mm/s以下であることが好ましい。
【0067】
また、チップ110にシート111を押し付ける際の、シート111とチップ110の温度を制御することで、破断起点を形成しやすくすることができる。
【0068】
具体的には、チップ110の温度は、シート111に含まれる樹脂成分のガラス転移温度より低いことが好ましい。例えば、シート111のガラス転移温度が40℃の場合、10℃以上の差を設けて、チップ110の温度を10℃以上、30℃以下とすることが好ましい。チップ110は、例えば、チップ保持部11に備え付けた冷却器により冷却して、その温度を上述の温度範囲とすることができる。
【0069】
また、チップ110と、被覆用のシート111の接着には、有機溶剤を使用するが、有機溶剤を多量に使用すると、被覆用のシート111が伸びやすくなり、破断起点が形成されにくくなる。したがって、破断起点を形成しやすくする見地からは、有機溶剤の使用量を減らすことが望ましい。また、有機溶剤の使用量が少なくても接着性を確保することが可能なシート111を用いることが望ましい。
【0070】
また、被覆用のシートは、通常ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムにセラミックスラリーを塗工することにより形成されるが、PETフィルムの種類、塗工時の乾燥条件によって、シートに含まれる樹脂成分をPETフィルム側に偏析させ、PETフィルムを剥離して、シートのPETフィルムが貼り付けられた方の面をチップと接合させることで、少ない有機溶剤の使用量でも、チップとシートを確実に接着することが可能になる。
【0071】
また、
図1〜3に示すシート支持部12は、その表面にシリコンラバーを使用した弾性層12aを備えているが、弾性層12aはチップ110と被覆用のシート1の接着に用いる有機溶剤で膨潤し、硬度が低下する。そして、硬度が低下すると、被覆用のシート111に必要な応力を与えることが困難になり、シート111に破断起点を形成しにくくなる。したがって、この対策として、シリコンラバーを使用した弾性層12aを、自動でかつ定期的に交換できるように構成することが好ましい。
【0072】
また、有機溶剤がシリコンラバーを使用した弾性層12a内に浸透し、弾性層12a内の未架橋成分をその表面に追い出したり、弾性層12aの膨潤が飽和して有機溶剤が弾性層12aの表面に溜まったりする場合がある。そして、そのような場合、未架橋成分や残留溶剤は粘着成分を含んでいるため、シート111の一部がチップ110に付与された後の段階において、チップ110が弾性層12aの表面に接着し、チップ保持部11から脱落するという問題がある。
【0073】
この対策としては、例えば、弾性層12aの未架橋成分を、溶剤を用いたり、加圧したりして除去する処理を実施することが好ましい。
また、弾性層12aの表面の残留溶剤を定期的に掻き取り、除去することが好ましい。
【0074】
(S3−4)その後、側面に、被覆用のシートが貼り付けられたチップを所定の条件で焼成する。これにより焼結済みのチップが得られる。
【0075】
(S3−5)それから、焼成後のチップの両端側に、例えば、導電ペーストを塗布して焼き付ける方法などの方法により外部電極を形成する。これにより、
図4(a),(b)に示すような構造を有する積層セラミックコンデンサが得られる。
【0076】
上記実施例の方法で積層セラミックコンデンサを製造することにより、小型、大容量で、信頼性の高い積層セラミックコンデンサを効率よく製造することが可能になる。
【0077】
なお、上記実施形態では、積層セラミックコンデンサを製造する場合を例にとって説明したが、本発明は、積層セラミックコンデンサに限らず、積層バリスタ、積層LC複合部品、多層基板など、他の電子部品を製造する場合にも広く適用することが可能である。
【0078】
本発明は、さらにその他の点に置いても上記実施形態に限定されるものではなく、チップ保持部、シート支持部、シート切取部の構成などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。