(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッド部に、タイヤ赤道の両側でタイヤ周方向に連続してのびる一対のセンター主溝と、該センター主溝のタイヤ軸方向外側でタイヤ周方向に連続してのびる一対のミドル主溝と、該ミドル主溝のタイヤ軸方向外側でタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー細溝と、前記センター主溝間を横切る複数本のセンター横溝と、前記センター主溝と前記ミドル主溝との間を横切る複数本のミドル横溝と、前記ミドル主溝と前記ショルダー細溝との間を横切る複数本の内側ショルダー横溝と、前記ショルダー細溝とトレッド端との間を横切る複数本の外側ショルダー横溝とが設けられることにより、
前記センター主溝間で複数個のセンターブロックがタイヤ周方向に並ぶセンターブロック列、
前記センター主溝と前記ミドル主溝との間で複数個のミドルブロックがタイヤ周方向に並ぶ一対のミドルブロック列、
前記ミドル主溝と前記ショルダー細溝との間で複数個の内側ショルダーブロックがタイヤ周方向に並ぶ一対の内側ショルダーブロック列、及び、
前記ショルダー細溝の外側で複数個の外側ショルダーブロックがタイヤ周方向に並ぶ一対の外側ショルダーブロック列が設けられ、
前記センターブロック、前記ミドルブロック、前記内側ショルダーブロック、及び、前記外側ショルダーブロックは、それぞれ異なる形状を有し、
前記センターブロック、前記ミドルブロック、前記内側ショルダーブロック、及び、前記外側ショルダーブロックを含むブロックの中には、踏面の面積が最も大きい最大ブロックと、踏面の面積が最も小さい最小ブロックとが含まれ、
前記最大ブロックの踏面の面積Smaxと、前記最小ブロックの踏面の面積Sminとの比Smax/Sminが1.0〜1.2であり、
前記各ブロックは、それぞれ、少なくとも1本のサイピングが形成され、
前記ブロックの中には、タイヤ軸方向に投影されたエッジ成分の総和である総和エッジ成分が最も大きい最大エッジブロックと、前記総和エッジ成分が最も小さい最小エッジブロックとが含まれ、
前記最大エッジブロックの総和エッジ成分Emaxと、前記最小エッジブロックの総和エッジ成分Eminとの比Emax/Eminが1.0〜1.3であり、
前記ミドルブロックには、一端が前記センター主溝で開口しかつ他端が前記ミドル主溝で開口するサイピングが設けられ、
前記ミドルブロックに設けられた前記サイピングは、前記他端での深さが前記一端での深さより大きいことを特徴とする空気入りタイヤ。
前記ミドルブロックは、前記略台形状の中央ブロック片のタイヤ周方向の長さがタイヤ軸方向の外側に向かって漸減する第1ミドルブロックと、前記略台形状の中央ブロック片のタイヤ周方向の長さがタイヤ軸方向の内側に向かって漸減する第2ミドルブロックとを含み、
前記ミドルブロック列は、前記第1ミドルブロックと、前記第2ミドルブロックとがタイヤ周方向に交互に配されている請求項4記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1は、例えば、冬用の重荷重用空気入りタイヤとして好適に利用される。タイヤ1のトレッド部2には、タイヤ赤道Cの両側でタイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびる一対のセンター主溝3、3と、該センター主溝3のタイヤ軸方向外側でタイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびる一対のミドル主溝4、4とが設けられる。
【0017】
図2には、
図1のA−A断面図が示される。
図2に示されるように、センター主溝3、3の溝幅W1(溝の中心線と直角な溝幅を意味する。)及び溝深さD1、並びに、ミドル主溝4の溝幅W2及び溝深さD2は、慣例に従って種々定められる。しかしながら、これらの溝幅又は溝深さが小さい場合、雪路での走行性能が悪化するおそれがある。逆に、これらの溝幅又は溝深さが大きい場合、トレッド部2の接地面積や剛性が低下し、操縦安定性が悪化するおそれがある。このため、センター主溝3の溝幅W1及びミドル主溝4の溝幅W2は、例えば、トレッド接地幅TW(
図1に示す)の3〜7%が望ましい。センター主溝3の溝深さD1及びセンター主溝3の溝深さD2は、例えば、14.5〜24.5mmが望ましい。
【0018】
トレッド接地幅TWは、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填されたタイヤ1を、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側のトレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離を意味する。
【0019】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"を意味する。
【0020】
「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とする。
【0021】
「正規荷重」とは、規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。
【0022】
なお、本明細書では、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法は、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の正規状態において特定される値とする。
【0023】
図1及び
図2に示されるように、トレッド部2には、さらに、ミドル主溝4のタイヤ軸方向外側でタイヤ周方向に連続して直線状にのびる一対のショルダー細溝5、5が設けられる。
【0024】
図2に示されるように、ショルダー細溝5の溝幅W3及び溝深さD3は、トレッド部2のタイヤ軸方向の両端部の剛性を確保する観点から、センター主溝3の溝幅W1及び溝深さD1よりも小さく設定される。ショルダー細溝5の溝幅W3は、例えば、トレッド接地幅TWの0.8〜2.0%に設定されるのが望ましい。ショルダー細溝5の溝深さD3は、例えば、11.5〜21.5mmに設定される。
【0025】
図1に示されるように、トレッド部2には、さらに、センター主溝3、3間を横切る複数本のセンター横溝6、センター主溝3とミドル主溝4との間を横切る複数本のミドル横溝7、ミドル主溝4とショルダー細溝5との間を横切る複数本の内側ショルダー横溝8、及び、ショルダー細溝5とトレッド端Teとの間を横切る複数本の外側ショルダー横溝9が設けられる。
【0026】
図1及び
図2に示されるように、センター横溝6の溝幅W4、ミドル横溝7の溝幅W5、及び、内側ショルダー横溝8の溝幅W6は、例えば、センター主溝3の溝幅W1の0.95〜1.05倍に設定される。また、センター横溝6の溝深さD4、ミドル横溝7の溝深さD5、及び、内側ショルダー横溝8の溝深さD6は、例えば、センター主溝3の溝深さD1の0.65〜0.85倍に設定される。これらの各横溝は、タイヤ軸方向に対して5〜10°の小角度θ1で傾斜して略直線状にのびる。このような各横溝は、トレッド部2の剛性を維持しつつ、排水性を確保する。
【0027】
外側ショルダー横溝9は、一定の溝幅W7でタイヤ軸方向にのびる第1外側ショルダー横溝10と、溝幅がタイヤ軸方向外側に向かって漸増する拡幅部59を有する第2外側ショルダー横溝11とが、タイヤ周方向に交互に設けられる。外側ショルダー横溝9の溝深さD7は、例えば、9.5〜19.5mmに設定される。このような外側ショルダー横溝9はウェット性能及び排水性能を向上させる。
【0028】
図1に示されるように、トレッド部2には、タイヤ赤道C上に、センターブロック列20が設けられる。センターブロック列20は、一対のセンター主溝3、3及び、センター横溝6で区分された複数個のセンターブロック21からなる。各センターブロック21は、互いに同一形状である。
【0029】
トレッド部2には、センターブロック列20のタイヤ軸方向の両側に、一対のミドルブロック列30、30が設けられる。ミドルブロック列30は、センター主溝3、ミドル主溝4、及び、ミドル横溝7で区分された複数個のミドルブロック31からなる。本実施形態のミドルブロック31は、タイヤ周方向のブロック長さがタイヤ軸方向外側に向かって漸減する第1ミドルブロック32と、タイヤ周方向のブロック長さがタイヤ軸方向外側に向かって漸増する第2ミドルブロック33とが、タイヤ周方向に交互に設けられる。
【0030】
トレッド部2には、ミドルブロック列30のタイヤ軸方向の外側に、一対の内側ショルダーブロック列40、40が設けられる。内側ショルダーブロック列40は、ミドル主溝4、ショルダー細溝5、及び、内側ショルダー横溝8に区分された複数個の内側ショルダーブロック41からなる。各内側ショルダーブロック41は、互いに同一形状である。
【0031】
トレッド部2には、内側ショルダーブロック列40のタイヤ軸方向の外側に、一対の外側ショルダーブロック列50、50が設けられる。外側ショルダーブロック列50は、ショルダー細溝5及び外側ショルダー横溝9で区分される複数個の外側ショルダーブロック51からなる。外側ショルダーブロック51は、例えば、形状が異なる第1外側ショルダーブロック52及び第2外側ショルダーブロック53が、タイヤ周方向に交互に設けられる。
【0032】
トレッド部2に設けられた各ブロック13は、それらの形成位置により、最適な形状が異なる。このため、本発明のセンターブロック21、ミドルブロック31、内側ショルダーブロック41、及び、外側ショルダーブロック51は、それぞれ異なる形状を有する。これにより、各ブロック13が、それぞれの配置に応じた形状とされ、ドライ路性能及び雪路性能と氷路性能とが両立する。
【0033】
ブロック13の中には、踏面の面積が最も大きい最大ブロック14と、踏面の面積が最も小さい最小ブロック15とが含まれる。本実施形態のタイヤ1では、第2ミドルブロック33が最大ブロック14である。また、センターブロック21が最小ブロック15である。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0034】
本発明のタイヤ1は、最大ブロック14の踏面の面積Smaxと、最小ブロック15の踏面の面積Sminとの比Smax/Sminが1.0〜1.2である。このようなタイヤ1は、各ブロックが発揮する摩擦力の差が小さく、接地している各ブロック全体で有効な摩擦力を発揮する。前記比Smax/Sminが1.2よりも大きい場合、相対的に踏面の面積が小さなブロックが有効な摩擦力を発揮せず、タイヤ全体としての摩擦力が低下する。
【0035】
上述した効果をさらに発揮させるために、比Smax/Sminは、好ましくは1.15以下、より好ましくは1.10以下、さらに好ましくは1.05以下である。
【0036】
本発明のブロック13は、夫々少なくとも1本のサイピングが設けられる。本実施形態の各ブロック13には、夫々2本のサイピングが形成される。このようなブロック13は、サイピングのエッジ効果により、大きな摩擦力を発揮する。
【0037】
ブロック13の中には、タイヤ軸方向に投影されたエッジ成分の総和である総和エッジ成分が最も大きい最大エッジブロック16と、前記総和エッジ成分が最も小さい最小エッジブロック17とが含まれる。本実施形態では、最大エッジブロック16は、センターブロック21であり、最小エッジブロック17は、外側ショルダーブロック51である。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0038】
図11に示されるように、ブロックaが、タイヤ軸方向Cに対してαで傾斜した長さL5の端縁bを有する場合、該端縁bのタイヤ軸方向に投影されたエッジ成分とは、L5cosαで特定される。総和エッジ成分は、ブロックaの端縁全体について、タイヤ軸方向に投影されたエッジ成分の総和である。ブロックaにサイピングcが設けられている場合、ブロックa全体の総和エッジ成分は、ブロックaの端縁の総和エッジ成分に、サイピングcの端縁d、dのタイヤ軸方向に投影されたエッジ成分が加算されて算出される。
【0039】
図1に示されるように、本発明のタイヤ1は、最大エッジブロック16の総和エッジ成分Emaxと、最小エッジブロック17の総和エッジ成分Eminとの比Emax/Eminが1.0〜1.3である。このようなタイヤ1は、各ブロック13が発揮するエッジ効果による摩擦力の差が小さく、接地している各ブロック全体で有効な摩擦力を発揮する。比Emax/Eminが1.3より大きくなると、相対的に総和エッジ成分の小さいブロックが、有効な摩擦力を発揮せず、タイヤ全体としての摩擦力が低下する。
【0040】
上述の効果をより一層発揮させるために、比Emax/Eminは、好ましくは1.15以下、より好ましくは1.10以下、さらに好ましくは1.05以下である。
【0041】
トレッド部2のランド比Lrは、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上であり、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下である。これにより、ドライ路での操縦安定性を維持しつつ、氷路及び雪路での走行性能が向上する。なお、「ランド比」とは、トレッド接地端Te、Te間において、各溝及びサイピングを全てを埋めた仮想接地面の全面積Saに対する、実際の合計接地面積Sbとの比Sb/Saである。
【0042】
タイヤ1全体での総和エッジ成分Etは、好ましくは30000mm以上、より好ましくは32000mm以上であり、好ましくは35000mm以下、より好ましくは33000mm以下である。前記総和エッジ成分Etが小さい場合、氷路及び雪路での走行性能が低下するおそれがある。逆に、前記総和エッジ成分Etが大きい場合、ドライ路での操縦安定性が低下するおそれがある。
【0043】
各ブロック列に含まれるブロック個数Nは、好ましくは70個以上、より好ましくは、75個以上であり、好ましくは85個以下、より好ましくは80個以下である。各ブロック列のブロック個数Nが小さい場合、エッジ成分を確保できないおそれがある。逆にブロック個数Nが大きい場合、トレッド部2の剛性が低下して、操縦安定性が低下するおそれがある。
【0044】
各ブロック13のうち、タイヤ周方向の剛性が最も大きい最大周方向剛性ブロック18のタイヤ周方向の剛性Fmaxと、タイヤ周方向の剛性が最も小さい最小周方向剛性ブロック19のタイヤ周方向の剛性Fminとの比Fmax/Fminは、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.1以上であり、好ましくは、1.3以下、より好ましくは1.2以下である。本実施形態では、第1ミドルブロック32が最大周方向剛性ブロック18であり、センターブロック21が最小周方向剛性ブロック19である。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0045】
ブロックのタイヤ周方向の剛性Fは、単位変形量当たりのタイヤ周方向の荷重で示される。具体的には、
図12に示されるように、ブロックaの踏面bの全面に接着される当て板(図示しない)を用いて、縦荷重0の状態においてタイヤ周方向Dの荷重fを与えたとき、ブロックaの踏面bのタイヤ周方向Dの位置ずれ量tが測定される。ブロックのタイヤ周方向の剛性Fは、タイヤ周方向の荷重fと位置ずれ量tとの比f/t(N/mm)で特定される。
【0046】
上述の効果をより一層発揮させるために、比Fmax/Fminは、好ましくは1.15以下、より好ましくは1.10以下、さらに好ましくは1.05以下である。
【0047】
図3には、センターブロック列20の部分拡大図が示される。
図3に示されるように、センターブロック21は、例えば、タイヤ周方向の中央部付近に最大幅を有する略六角形状で形成される。
【0048】
センターブロック21のタイヤ軸方向の最大のブロック幅W8は、例えば、トレッド接地幅TW(
図1に示す)の0.12〜0.14倍に設定される。センターブロック21の最大のブロック長さL1は、例えば、ブロック幅W8の1.0〜1.3倍に設定される。このようなセンターブロック21は、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向にバランス良くエッジ効果を発揮する。
【0049】
センターブロック21には、両端が一対のセンター主溝3、3にそれぞれ開口する2本のサイピング22、22が設けられる。これにより、センターブロック21は、中央ブロック片23と、そのタイヤ周方向両側に配された一対の端ブロック片24、24とに区分される。このようなセンターブロック21は、タイヤ軸方向にのびるエッジ成分を増加させ、とりわけ氷路でのトラクション性能及び制動性能を向上させる。
【0050】
中央ブロック片23は、例えば、センターブロック21のタイヤ周方向の中央部に位置し、センターブロック21のタイヤ軸方向の最大幅部21eを含んだ略矩形状に形成される。このような中央ブロック片23は、センターブロック21のタイヤ軸方向の剛性を維持しつつ、タイヤ軸方向にのびるエッジ成分を増加させる。従って、タイヤの氷路でのトラクション性能及び操縦安定性能が向上する。
【0051】
一対の端ブロック片24、24は、例えば、ブロックのタイヤ周方向の両外側に向かってタイヤ軸方向の幅が漸減する略台形状に形成される。このような端ブロック片24は、エッジ成分を増加させながら、センターブロック21の剛性の低下を抑制し、ドライ路及び雪路での走行性能を維持しつつ、氷路での走行性能を向上させる。
【0052】
サイピング22は、例えば、タイヤ軸方向に5〜10°の角度θ2で傾斜している。2本のサイピング22は、タイヤ軸方向に互いに平行にのびる。各サイピング22は、夫々ジグザグにのびる。このようなサイピング22は、タイヤ周方向の荷重がセンターブロック21に作用したとき、中央ブロック片23と端ブロック片24とを噛み合わせてセンターブロック21の剛性を高める。これにより、氷路での操縦安定性が向上する。
【0053】
図4(a)に示されるように、サイピング22の深さd1は、例えば、センターブロック21のブロック高さh1の0.35〜0.45倍に設定されるのが望ましい。
【0054】
図4(b)に示されるように、サイピング22の深さd1は、中央部よりもタイヤ軸方向外側で大きいのが望ましい。このようなサイピング22は、センターブロック21のタイヤ軸方向の中央部の剛性を確保するため、ドライ路及び氷路での操縦安定性を向上させる。
【0055】
図3及び
図4(a)に示されるように、サイピング22のタイヤ周方向両側には、サイピング22よりも小さい深さでタイヤ軸方向にのびる副サイピング25が設けられるのが望ましい。このような副サイピング25は、サイピング22のエッジ効果を補完し、氷路及び雪路での走行性能を向上させる。
【0056】
図5には、ミドルブロック列30の部分拡大図が示される。
図5に示されるように、ミドルブロック列30は、複数のミドルブロック31がタイヤ周方向に設けられる。
【0057】
ミドルブロック31のタイヤ軸方向の最大のブロック幅W9は、例えば、トレッド接地幅TW(
図1に示す)の0.12〜0.14倍に設定される。また、ミドルブロック31のタイヤ周方向の最大のブロック長さL2は、例えば、ブロック幅W9の1.0〜1.3倍に設定される。これにより、ドライ路及び雪路での走行性能と、氷路での走行性能が両立する。
【0058】
ミドルブロック31は、一端がセンター主溝3で開口しかつ他端がミドル主溝4で開口する2本のサイピング34、34が設けられることにより、サイピング34、34間の中央ブロック片35と、該中央ブロック片35のタイヤ周方向両側の一対の端ブロック片36、36とに区分される。このようなミドルブロック31は、氷路でのトラクション性能を向上させる。
【0059】
ミドルブロック31の中央ブロック片35は、例えば、踏面のタイヤ周方向の長さがタイヤ軸方向の一方側から他方側に向かって漸減する略台形状である。このようなミドルブロック31は、エッジの方向を多様化でき、雪路や氷路での走行性能を高めるのに役立つ。
【0060】
ミドルブロック31の一対の端ブロック片36、36は、例えば、中央ブロック片35の中心線35cで互いに線対称の略矩形状に形成されるのが望ましい。このような端ブロック片36は、ドライ路、氷路及び雪路でのトラクション性能及び制動性能をバランス良く向上させる。
【0061】
ミドルブロック31は、形状の異なる第1ミドルブロック32及び第2ミドルブロック33を含む。第1ミドルブロック32及び第2ミドルブロック33は、タイヤ周方向に交互に設けられる。
【0062】
第1ミドルブロック32は、例えば、タイヤ周方向のブロック長さがタイヤ軸方向外側に向かって漸減する多角形状である。第1ミドルブロック32のタイヤ軸方向内側でタイヤ周方向にのびる端縁32iは、センター主溝3に対して凸となる曲線又は円弧で形成される。さらに、第1ミドルブロック32のタイヤ軸方向外側でタイヤ周方向にのびる端縁32oは、ミドル主溝4に対して凹となる曲線又は円弧で形成される。また、第1ミドルブロック32の中央ブロック片35は、踏面のタイヤ周方向の長さが、タイヤ軸方向内側Aから外側Bに向かって漸減する。このような第1ミドルブロック32は、タイヤ軸方向内側の剛性を高め、ドライ路及び雪路での操縦安定性を向上させる。
【0063】
第2ミドルブロック33は、例えば、タイヤ周方向のブロック長さがタイヤ軸方向外側に向かって漸増する多角形状である。また、第2ミドルブロック33のタイヤ軸方向内側でタイヤ周方向にのびる端縁33iは、略ジグザグ状に形成される。また、第2ミドルブロック33のタイヤ軸方向外側でタイヤ周方向にのびる端縁33oは、ミドル主溝4に対して凹となる曲線又は円弧で形成される。また、第2ミドルブロック33の中央ブロック片35は、踏面のタイヤ周方向の長さが、タイヤ軸方向外側Bから内側Aに向かって漸減する。このような第2ミドルブロック33は、第1ミドルブロック33と相俟って、多方向にのびるエッジ成分を増加させ、氷路での操縦安定性を向上させる。
【0064】
本実施形態の2本のサイピング34、34は、例えば、タイヤ軸方向に5〜10°の角度θ3で傾斜してタイヤ軸方向にジグザグにのびる第1サイピング34aと、該第1サイピング34aと逆向きに傾斜してタイヤ軸方向にジグザグにのびる第2サイピング34bとを含む。このようなサイピング34は、ミドルブロック31にタイヤ周方向の荷重が作用したとき、中央ブロック片35のタイヤ軸方向の剛性を向上させる。このため、とりわけ氷路での操縦安定性が向上する。
【0065】
図6(a)に示されるように、サイピング34の深さd2は、例えば、ミドルブロック31のブロック高さh2の0.35〜0.45倍に設定されるのが望ましい。
【0066】
図6(b)に示されるように、サイピング34の深さd2は、タイヤ軸方向内側Aよりもタイヤ軸方向外側Bで大きいのが望ましい。このようなサイピング34は、吸水した水分を効果的にタイヤ軸方向外側に排出し、かつ、ミドルブロック31のタイヤ軸方向内側の剛性を維持する。このため、氷路及び雪路での走行性能が向上しつつ、ドライ路での操縦安定性が向上する。
【0067】
図5及び
図6(a)に示されるように、サイピング22のタイヤ周方向両側には、サイピング22よりも小さい深さでタイヤ軸方向にのびる副サイピング37が設けられるのが望ましい。このような副サイピング37は、サイピング22のエッジ効果を補完し、氷路及び雪路での走行性能を向上させる。
【0068】
図7には、内側ショルダーブロック列40の部分拡大図が示される。内側ショルダーブロック41のタイヤ軸方向の最大のブロック幅W10は、例えば、トレッド接地幅TWの0.11〜0.13倍に設定される。また、内側ショルダーブロック41のセンターブロックの最大のブロック長さL3は、例えば、ブロック幅W10の1.0〜1.3倍に設定される。このような内側ショルダーブロック41は、ドライ路及び雪路での走行性能と、氷路での走行性能を両立させる。
【0069】
本実施形態の内側ショルダーブロック41のタイヤ軸方向内側でタイヤ周方向にのびる端縁41iは、ミドル主溝4に対して凹となる曲線又は円弧で形成される。また、内側ショルダーブロック41のタイヤ軸方向外側でタイヤ周方向にのびる端縁41oは、タイヤ周方向に平行に略直線状にのびる。このような端縁41i、41oを有する内側ショルダーブロック41は、雪路走行時、端縁41iが雪を押し固めるため、雪路での操縦安定性が向上する。
【0070】
本実施形態の内側ショルダーブロック41は、一端がミドル主溝4で開口しかつ他端がショルダー細溝5で開口する2本のサイピング42、42が設けられることにより、サイピング42、42間の中央ブロック片43と、該中央ブロック片43のタイヤ周方向両側の一対の端ブロック片44、44とに区分される。このような内側ショルダーブロック41は、ドライ路及び雪路での操縦安定性を向上させる。
【0071】
内側ショルダーブロック41の中央ブロック片43は、例えば、隣合う端ブロック片44よりもタイヤ軸方向の幅が小さい略矩形状である。また、内側ショルダーブロック41の端ブロック片44は、例えば、タイヤ軸方向の幅が中央ブロック片43側から内側ショルダー横溝8側に向かって漸増する略矩形状である。このような中央ブロック片43及び端ブロック片44、44を含む内側ショルダーブロック41は、タイヤ軸方向にのびるエッジ成分を増やしつつ、タイヤ周方向の両側の剛性を向上させ、氷路でのトラクション性能及び制動性能を向上させる。
【0072】
内側ショルダーブロック41に設けられた2本のサイピング42、42は、例えば、タイヤ軸方向に5〜10°の角度θ4で傾斜してタイヤ軸方向に互いに平行にのびる。また、本実施形態のサイピング42は、ジグザグ状にのびる。このようなサイピング42は、タイヤ周方向の荷重が内側ショルダーブロック41に作用したとき、中央ブロック片43と端ブロック片44とを密着させて内側ショルダーブロック41の剛性を高めるため、とりわけ氷路での操縦安定性を向上させる。
【0073】
図8(a)に示されるように、サイピング42の深さd3は、例えば、内側ショルダーブロック41のブロック高さh3の0.35〜0.45倍に設定されるのが望ましい。
【0074】
図8(b)に示されるように、サイピング42の深さd3は、タイヤ軸方向内側Aよりもタイヤ軸方向外側Bで大きいのが望ましい。このようなサイピング42は、吸収した水分を効果的にタイヤ軸方向外側に排出し、かつ、内側ショルダーブロック41のタイヤ軸方向側の剛性を維持する。このため、氷路及び雪路での走行性能が向上しつつ、ドライ路での操縦安定性が向上する。
【0075】
図7及び
図8(a)に示されるように、サイピング22のタイヤ周方向両側には、サイピング22よりも小さい深さでタイヤ軸方向にのびる副サイピング45が設けられるのが望ましい。このような副サイピング45は、サイピング22のエッジ効果を補完し、氷路及び雪路での走行性能を向上させる。
【0076】
図9には、外側ショルダーブロック列50の部分拡大図が示される。
図9に示されるように、外側ショルダーブロック列50には、互いに形状が異なる第1外側ショルダー横溝10及び第2外側ショルダー横溝11がタイヤ周方向に交互に設けられる。第1外側ショルダー横溝10は、例えば、一定の幅でタイヤ軸方向に略平行かつ直線状にのびる。また、第2外側ショルダー横溝11は、ショルダー細溝5に連なり、かつ、第1外側ショルダー横溝10よりも大きい溝幅でタイヤ軸方向に直線状にのびる直線部58と、該直線部58に連なり、タイヤ周方向の幅を漸増させてタイヤ軸方向外側にのびる拡幅部59とを含む。このような第1外側ショルダー横溝10及び第2外側ショルダー横溝11は、外側ショルダーブロック列50の剛性を維持しつつ、排水性を向上させる。
【0077】
図2に示されるように、外側ショルダー横溝9には、溝底9dの一部を隆起させたタイバー57が設けられるのが望ましい。本実施形態のタイバー57は、第1外側ショルダー横溝10に設けられる。このようなタイバー57は、外側ショルダーブロック列50のタイヤ周方向の剛性を向上させ、とりわけドライ路での操縦安定性を向上させる。
【0078】
外側ショルダーブロック51は、それぞれ異なる形状を有する第1外側ショルダーブロック52及び第2外側ショルダーブロック53が、タイヤ周方向に交互に設けられる。
【0079】
外側ショルダーブロック51のタイヤ軸方向の最大のブロック幅W11は、例えば、トレッド接地幅TW(
図1に示す。)の0.10〜0.12倍に設定される。また、外側ショルダーブロック51の最大のブロック長さL4は、例えば、ブロック幅W11の1.0〜1.3倍に設定される。このような外側ショルダーブロック51は、ドライ路及び雪路での走行性能と、氷路での走行性能を両立させる。
【0080】
本実施形態の外側ショルダーブロック51のタイヤ軸方向内側でタイヤ周方向にのびる端縁51iは、タイヤ周方向に平行に略直線状にのびる。また、外側ショルダーブロック51のタイヤ軸方向外側の端縁51oは、屈曲しながらタイヤ周方向にのびる。このような端縁51i、51oを有する外側ショルダーブロック51は、ワンダリング性能を向上させつつ、エッジ成分を増加させ、氷路での操縦安定性を向上させる。
【0081】
本実施形態の外側ショルダーブロック51は、一端がタイヤ軸方向外側の端縁51oに連なり、他端が外側ショルダーブロック51内で途切れるサイピング54が設けられる。これにより、外側ショルダーブロック51のタイヤ軸方向内側Aの剛性が維持されつつ、エッジ成分が増大する。
【0082】
サイピング54は、例えば、形状の異なる第1サイピング54a及び第2サイピング54bを含む。第1サイピング54aは、端縁51oからタイヤ軸方向に5〜10°の角度θ5で傾斜して端縁51iに向かって直線状にのび、外側ショルダーブロック51内部でタイヤ周方向に沿って屈曲し、かつ、外側ショルダーブロック51内部で途切れる。第2サイピング54bは、タイヤ軸方向に対して第1サイピング54aと逆向きに傾斜して直線状にのび、かつ、第1サイピング54aとは逆向きにタイヤ周方向に屈曲し、外側ショルダーブロック51内部で途切れる。また、第1及び第2サイピング54a、54bは、タイヤ軸方向内側に向かって互いに接近しながら直線状にのび、かつ、途中で互いに離間しながら屈曲する。このようなサイピング54は、端縁51oを変形し易くし、ワンダリング性能を向上させる。
【0083】
図10(a)に示されるように、サイピング54の踏面での開口部54oには、踏面51sと、サイピング54の溝壁54wを切り欠いた面取り部55が形成されるのが望ましい。このような面取り部55は、サイピング54の吸水性を向上させ、とりわけ雪路性能を向上させる。
【0084】
サイピング54の深さd4は、例えば、外側ショルダーブロック51のブロック高さh4の0.35〜0.45倍に設定されるのが望ましい。
【0085】
図10(b)に示されるように、サイピング54の深さd7は、タイヤ軸方向内側から外側に向かって漸増するのが望ましい。このようなサイピング54は、吸水した水分を効果的にタイヤ軸方向外側に排出し、かつ、外側ショルダーブロック51のタイヤ軸方向内側の剛性を維持する。このため、氷路及び雪路での走行性能が向上しつつ、ドライ路での操縦安定性が向上する。
【0086】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施しうるのはいうまでもない。
【実施例】
【0087】
表1の仕様に基づくサイズ11R22.5の重荷重用空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。また、各試供タイヤの氷路でのトラクション性能、並びに、ドライ路及び雪路での走行性能がテストされた。
タイヤの共通仕様及びテスト方法は以下の通りである。
ランド比Lr=75.0%
タイヤ全体での総和エッジ成分Et=32000mm
【0088】
<氷路でのトラクション性能>
下記テスト車両を用いて、氷路でのトラクション性能のテストが行われた。トラクション性能は、氷路のテストコース上で、停止状態のテスト車両を急発進させ、一定距離走行させたときの走行時間が計測された。結果は、比較例1の走行時間の逆数を100とする指数であり、数値が大きい程、氷路でのトラクション性能が大きいことを示す。
テスト車両:10tトラック
試供タイヤ装着位置:全輪に装着
積載量:標準積載量の50%
【0089】
<ドライ路及び雪路での走行性能>
上記テスト車両を用いて、ドライ路及び雪路のテストコースを走行したときの、操縦安定性、乗り心地性、旋回性等を含めた総合的な走行性能が、ドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点であり、数値が大きい程、走行性能が優れていることを示す。
テスト結果が表1に示される。
【0090】
【表1】
【0091】
表1から明らかなように、実施例の空気入りタイヤは、ドライ路及び雪路での走行性能を維持しつつ、氷路での走行性能が有意に向上していることが確認できた。