特許第6597114号(P6597114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597114
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】塗布装置及び塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20191021BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20191021BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20191021BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B05C5/02
   B05C11/10
   B05D1/26 Z
   B05D3/00 D
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-187051(P2015-187051)
(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公開番号】特開2017-60910(P2017-60910A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 伸也
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−90298(JP,A)
【文献】 特開2010−63950(JP,A)
【文献】 特開2003−145007(JP,A)
【文献】 特開2004−81989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00−21/00
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックアップロールにより搬送される箔に塗料を吐出する吐出口と、
前記吐出口の開口の高さ幅を調整する調整手段と、
前記バックアップロールの面から計測手段までの距離を計測する前記計測手段と、
前記計測手段により計測された距離に基づいて、前記調整手段による前記吐出口の開口の高さ幅の調整を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記吐出口の幅方向に沿って複数設けられ、
これら複数の調整手段は、互いに独立して前記吐出口の幅方向における所定の位置の高さ幅を調整する、
ことを特徴とする請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記計測手段は、前記バックアップロールの軸方向に沿って複数設けられ、
これら複数の計測手段と複数の調整手段とは、各計測手段及び調整手段が対応した位置に設けられている、
ことを特徴とする請求項2記載の塗布装置。
【請求項4】
前記計測手段は、前記バックアップロールにおける前記箔が巻きつかない箇所を計測点とする、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記計測手段は、前記バックアップロールの面から前記計測手段までの初期状態の距離と所定時間経過後の距離とを計測し、
前記制御手段は、前記初期状態の距離と前記所定時間経過後の距離との差分に基づいて、前記吐出口の開口の高さ幅を調整するよう前記調整手段を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の塗布装置。
【請求項6】
バックアップロールにより搬送される箔に塗料を吐出口から吐出し、
前記吐出口の開口の高さ幅を調整し、
前記バックアップロールの面から計測手段までの距離を計測し、
計測した距離に基づいて、前記吐出口の開口の高さ幅を調整する制御を行う、
ことを特徴とする塗布方法。
【請求項7】
吐出口の幅方向における所定の位置の高さ幅を調整する、
ことを特徴とする請求項6記載の塗布方法。
【請求項8】
前記バックアップロールの面から前記計測手段までの距離の計測に際し、このバックアップロールの軸方向に沿って複数の箇所を計測し、
計測した複数の箇所に対応する吐出口の開口の高さ幅を調整する、
ことを特徴とする請求項6又は7記載の塗布方法。
【請求項9】
前記バックアップロールにおける前記箔が巻きつかい箇所を計測する、
ことを特徴とする請求項6乃至8の何れか一項に記載の塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置、塗布方法及び計測方法に関し、特に、箔に塗布膜を塗布する塗布装置、塗布方法及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
箔に塗布膜を塗布する一般的な塗布装置、塗布方法及び計測方法については、図5乃至図7に示す関連する塗布装置900が知られている。この関連する塗布装置900について、図5乃至図7を用いて説明する。図5及び図6は、関連する塗布装置900の構成を示す断面図及び斜視図である。図7は、関連する塗布装置900の塗布ダイ950の構成を示す斜視図である。
【0003】
塗布装置900は、貯蔵タンク901に貯蔵された塗料をポンプ903の圧力により送液配管902を通じて開閉弁904に送っている。この開閉弁904は、塗布ダイ950への塗料の流れを遮断及び開放している。そして、塗布装置900は、開閉弁904の開放時に塗布ダイ950の吐出口954からバックアップロール906にて搬送されている箔907に塗料を吐出する。このように、塗布装置900は、開閉弁904の遮断及び開放を繰り返して、箔907に塗布部と非塗布部とを作り出している。
【0004】
ここで、連続して箔に塗布膜を塗布していると、塗料の温度の影響を受けて、バックアップロール906が熱変形してしまうことが一般的に知られている。バックアップロール906が熱変形してしまうと、このバックアップロール906と吐出口954との距離がその幅方向で異なってしまう。これにより、幅方向で塗布膜の厚みが異なってしまう。図8乃至図10を用いて、バックアップロール906の変形により塗布膜の厚みが異なる概念を説明する。図8乃至図10は、関連する塗布装置900のバックアップロール906の三つの状態を示す概念図である。
【0005】
ここで、図8の状態は、箔に塗布膜の塗布を開始した直後であって、バックアップロール906の形状が変化する前の状態である。また、図9の状態は、箔に塗布膜を塗布した所定時間経過後であって、塗料の温度がバックアップロール906の温度よりも低く、バックアップロール906の中央部が凹み、バックアップロール906の形状がつつみ形状となった状態である。また、図10の状態は、箔に塗布膜を塗布した所定時間経過後であって、塗料の温度がバックアップロール906の温度よりも高く、バックアップロール906の中央部が膨らみ、バックアップロール906の形状が太鼓形状となった状態である。
【0006】
図8に例示されるように、初期状態では、バックアップロール906の形状は円筒形状となる。このため、塗布ダイ950とバックアップロール906との隙間は、その幅方向で均一となり、箔に塗布される塗布膜の厚みもその幅方向で均一となる。
【0007】
図9に例示されるように、塗料の温度がバックアップロール906の温度よりも低い場合は、塗料がバックアップロール906の熱を奪い、バックアップロール906が熱変形を起し、バックアップロール906の中央部が凹んだつつみ形状となる。これにより、塗布ダイ950の吐出口954とバックアップロール906との隙間は、中央部で広がってしまう。この場合において、吐出口954から吐出された塗料は、塗料内における中央部よりも他の部位の方が高圧となるため、中央部に寄り、箔に塗布される塗布膜は中央部で厚くなる。
【0008】
また、図10に例示されるように、塗料の温度がバックアップロール906の温度よりも高い場合は、塗料がバックアップロール906を加熱し、バックアップロール906が熱変形を起し、バックアップロール906の中央部が膨らんだ太鼓形状となる。これにより、塗布ダイ950の吐出口954とバックアップロール906との隙間は、中央部で狭まってしまう。この場合において、吐出口954から吐出された塗料は、塗料内における他の部位よりも中央部の方が高圧となるため、塗料が左右に寄り、箔に塗布される塗布膜は中央部で薄くなる。
【0009】
以上、述べたように、上記塗布装置900は、連続して箔に塗布膜を塗布していると、バックアップロール906の変形により塗布ダイ950の吐出口254とバックアップロール906との隙間がその幅方向で異なってしまう。これにより、上記塗布装置900は、塗布膜の幅方向における厚みの均一性を維持することができない。
【0010】
そこで、塗布膜の幅方向における厚みの均一性を維持するために、例えば、特許文献1には、板状材の塗工方法が開示されている。この特許文献1記載の技術は、塗膜上面との距離を測距手段で測長しており、測長した結果に基づいて、塗膜を形成している。これにより、特許文献1記載の技術は、塗膜の均一化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−183491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1記載の技術は、テーブルに塗布された塗布膜の膜面を基準として計測しており、テーブル面が湾曲しているか否かを計測していない。このため、上記特許文献1記載の技術は、塗布膜が平坦に塗布されると、塗布膜の膜面とセンサとの距離は均一であると判断してしまう。これにより、実際は、テーブル面が湾曲している部位の塗布膜の厚みは他の部位の厚みより厚くなっている場合であっても、塗布膜の厚みが均一であると判断してしまう。
【0013】
本発明の目的は、連続的に箔に塗布膜を塗布する際の塗布膜の幅方向の厚みの均一性を維持することが可能な塗布装置、塗布方法及び計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る塗布装置は、バックアップロールにより搬送される箔に塗料を吐出する吐出口と、前記吐出口の高さを調整する調整手段と、前記バックアップロールの面からの距離を計測する計測手段と、前記計測手段により計測された距離に基づいて、前記調整手段による前記吐出口の高さの調整を制御する制御手段とを備えて構成される。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る塗布方法は、バックアップロールにより搬送される箔に塗料を吐出口から吐出し、前記吐出口の高さを調整し、前記バックアップロールの面からの距離を計測し、計測した距離に基づいて、前記吐出口の高さを調整する制御を行っている。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る計測方法は、バックアップロールの面からの距離を計測する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、連続的に箔に塗布膜を塗布する際の塗布膜の幅方向の厚みの均一性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態(第1の実施形態)に係る塗布装置の構成を示す断面図である。
図2】本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係る塗布装置の構成を示す断面図である。
図3】本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係る塗布装置の塗布ダイの構成を示す斜視図である。
図4】本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係る塗布装置の塗布ダイの断面図である。
図5】関連する塗布装置の構成を示す断面図である。
図6】関連する塗布装置の構成を示す斜視図である。
図7】関連する塗布装置の塗布ダイの構成を示す斜視図である。
図8】関連する塗布装置のバックアップロールの第1の状態を示す概念図である。
図9】関連する塗布装置のバックアップロールの第2の状態を示す概念図である。
図10】関連する塗布装置のバックアップロールの第3の状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1を用いて、本発明の一実施形態(第1の実施形態)について説明する。図1は、本実施形態(第1の実施形態)に係る塗布装置100の構成を示す断面図である。
【0021】
図1に例示されるように、塗布装置100は、吐出口154、調整部160、計測部180及び制御部190を具備している。吐出口154は、バックアップロール106により搬送される箔107に塗料を吐出する。調整部160は、吐出口154の開口の高さ幅を調整する。計測部180は、バックアップロール106の側面との距離を計測する。制御部190は、計測部180により計測された距離に基づいて、調整部160による吐出口154の開口の高さ幅の調整を制御する。
【0022】
このように、塗布装置100は、計測部180により、この計測部180とバックアップロール106の面との距離を計測しているため、バックアップロール106の側面が変形したか否か(膨らんだか又は凹んだか)を把握することが可能となる。そして、塗布装置100は、計測部180により計測された距離に基づいて、制御部190にて、調整部160による吐出口154の開口の高さ幅の調整を制御している。このため、塗布装置100は、バックアップロール106と吐出口154との隙間にあわせて吐出口154の開口の高さ幅を調整し、吐出口154から吐出される吐出量を調整することが可能となる。
【0023】
よって、本実施形態によれば、連続的に箔107に塗布膜を塗布する際の塗布膜の幅方向の厚みの均一性を維持することができる。
【0024】
(第2の実施形態)
図2乃至図4を用いて、本発明の他の実施形態(第2の実施形態)について説明する。図2は、本実施形態(第2の実施形態)に係る塗布装置200の構成を示す断面図である。図3及び図4は、本実施形態(第2の実施形態)に係る塗布装置200の塗布ダイ250の構成を示す斜視図及び断面図である。
【0025】
本実施形態の塗布装置200は、貯蔵タンク(不図示)、送液配管(不図示)、ポンプ(不図示)、開閉弁204及びバックアップロール206を具備している。なお、これらについては、上述の塗布装置900の貯蔵タンク901、送液配管902、ポンプ903、開閉弁904及びバックアップロール906を採用することが可能であり、既知の技術であるため、その説明を省略する。
【0026】
また、塗布装置200は、塗布ダイ250、第1の吐出口高さ変更機構260、第2の吐出口高さ変更機構270、計測部280及び制御部290を具備している。そして、塗布装置200は、塗布ダイ250に第1の吐出口高さ変更機構260及び第2の吐出口高さ変更機構270を設けている。これにより、塗布装置200は、塗布ダイ250のリップ部255を押し込んだり又は引き込んだりすることで、吐出口254の開口の高さ幅を調整することが可能となる。
【0027】
また、塗布装置200は、計測部280により、この計測部280とバックアップロール206の側面との距離を測定し、制御部290により、第1の高さ変更機構260及び第2の吐出口高さ変更機構270を制御して吐出口254の開口の高さ幅を調整している。
【0028】
以下、これら塗布ダイ250、第1の吐出口高さ変更機構260、第2の吐出口高さ変更機構270、計測部280及び制御部290について説明する。まず、図3及び図4を用いて、塗布ダイ250、第1の吐出口高さ変更機構260及び第2の吐出口高さ変更機構270について説明する。
【0029】
図3及び図4に例示されるように、塗布ダイ250は、例えば、超硬合金を用いて構成され、上ダイ251及び下ダイ252を有している。また、塗布ダイ250は、これら上ダイ251及び下ダイ252の間にシム253を介在させている。また、塗布ダイ250は、上ダイ251と下ダイ252との間に吐出口254を有している。なお、本実施形態では、塗布ダイ250は、上述したように、超硬合金を用いて構成されるが、これに限定されず、例えば、吐出口254の近辺の部分の耐摩耗を考慮して超硬合金を用いて構成し、他の部分を耐食性に有利でかつ寸法精度の維持を考慮してステンレス材を用いて構成しても良い。
【0030】
塗布ダイ250には、上述したように、第1の吐出口高さ変更機構260及び第2の吐出口高さ変更機構270が配設されている。これら第1の吐出口高さ変更機構260及び第2の吐出口高さ変更機構270は、上下で対となって塗布ダイ250の幅方向に沿って複数配設されている。そして、これら第1の吐出口高さ変更機構260のモータ261b及び第2の吐出口高さ変更機構270のモータ271bを時計回りに回転させると、リップ部255は、モータ261b及びモータ271b側に引き込まれ、吐出口254の開口の高さ幅は増大する。吐出口254の開口の高さ幅が増大した分、この吐出口254から吐出される塗料の量が増加して塗布膜の厚みを厚く塗布することが可能となる。
【0031】
一方、モータ261b及びモータ271bを反時計回りに回転させると、リップ部255は、これらモータ261b及びモータ271b側とは反対に押し出され、吐出口254の開口の高さ幅は減少する。吐出口254の開口の高さ幅が減少した分、この吐出口254から吐出される塗料の量が減少して塗布膜の厚みを薄く塗布することが可能となる。このように、これら第1の吐出口高さ変更機構260及び第2の吐出口高さ変更機構270は、吐出口254の幅方向において、配設された各箇所の吐出口254の開口の高さ幅を調整している。ここで、上ダイ251及び下ダイ252は、上述したように、硬度な材料である超硬合金を用いて構成されている。このような硬度な材料を用いているため、吐出口254の開口の高さ幅を調整するためには、本実施形態では、リップ部255の肉厚を10[mm]程度の厚みとし、モータ261b及びモータ271bの瞬時最大トルクを10[N・m]としている。このように、リップ部255の肉厚を、モータ261b及びモータ271bの力で変形可能な厚みにし、吐出口254の開口の高さ幅の調整を可能にしている。
【0032】
なお、本実施形態では、上下で対となる三つの第1の吐出口高さ変更機構260a,260b,260c及び第2の吐出口高さ変更機構270a,270b,270cを有しているが、その数は限定されない。また、本実施形態では、上下で対となっているが、片方だけでも良い。そして、これら三つの第1の吐出口高さ変更機構260a,260b,260c及び第2の吐出口高さ変更機構270a,270b,270cは、同じ構成であるため、以下、第1の吐出口高さ変更機構260bについて説明し、他についてはその説明を省略する。
【0033】
第1の吐出口高さ変更機構260bは、既知の技術であるボールねじを有する機構を採用しており、モータ261b、カップリング263b、ベアリング264b、ねじ軸265b及びナット266bを有している。モータ261bは、例えば、既知の技術である減速機付サーボモータを用いて構成され、駆動源と、この駆動源の駆動力により軸方向で回転する軸262bと、を有している。なお、モータ261bのトルクは、吐出口254の開口の高さ幅を変形させることが可能な値であれば特に限定されない。この軸262bには、カップリング263bを介してねじ軸265bが連結されている。ベアリング264bは、ねじ軸265bに配設され、ねじ軸265bの回転運動を支持している。そして、ねじ軸265bには、ナット266bが螺合されている。これにより、軸262bが回転すると、この軸262bの回転に連動して、ねじ軸265bが回転し、ナット266bがねじ軸265bの軸方向に沿って移動する。ナット266bには、リップ部255が連結されている。これにより、ねじ軸265bの回転に連動して、ナット266bとともに、リップ部255が移動する。このようにリップ部255が移動することで、吐出口254の開口の高さ幅を変更している。例えば、モータ261bの軸262bを時計回り方向に回転させるとリップ部255は、モータ261b側に引き込まれ、塗布ダイ250の吐出口254の開口の高さ幅は増大する。一方、モータ261bの軸262bを反時計回り方向に回転させるとリップ部255は、モータ261b側とは反対に押し出され、塗布ダイ250の吐出口254の開口の高さ幅は減少する。
【0034】
なお、本実施形態の第1の吐出口高さ変更機構260bは、モータ261bの駆動力を利用して吐出口254の開口の高さ幅を変更しているが、この吐出口254の開口の高さ幅を変更可能であれば、特に限定されず、例えば、圧電素子、油圧シリンダ等を用いても良い。
【0035】
次に、図2に戻り、計測部280及び制御部290について説明する。計測部280は、既知の技術であるレーザセンサが採用され、レーザ光が対象物に反射して受光素子にて集光され、その結像位置における電流値の変化を計測し、バックアップロール206の側面との距離を計測している。なお、計測部280は、レーザセンサが採用されているが、これに限定されず、例えば、既知の技術である渦電流式変位センサを採用しても良い。
【0036】
また、計測部280は、バックアップロール206の側面のうち、箔207が巻きつかない側面との距離を計測している。このため、計測部280は、バックアップロール206自体の形状を把握することが可能となる。
【0037】
また、計測部280は、バックアップロール206の幅方向に沿って三つ配設される。そして、これら計測部280は、三つの第1の吐出口高さ変更機構260及び第2の吐出口高さ変更機構270にその幅方向で対応した位置に配設される。なお、本実施形態において、計測部280は、バックアップロール206の幅方向に沿って三つの計測部280を有しているが、数は限定されない。例えば、三つの計測部280にかえて、スライド機構を搭載した一つの計測部をバックアップロール206の幅方向に沿ってスライドさせ、バックアップロール206の形状を計測しても良い。
【0038】
そして、計測部280には、制御部290が接続され、計測部280にて計測された距離が制御部290へと出力される。なお、計測部280による計測は、バックアップロール206の回転中に連続して行うようにしても良いし、又は所定間隔ごとに行うようにしても良い。
【0039】
制御部290には、第1の吐出口高さ変更機構260及び第2の吐出口高さ変更機構270が接続されている。制御部290は、計測部280から入力された距離に基づいて、第1の吐出口高さ変更機構260及び第2の吐出口高さ変更機構270の制御量を算出し、この制御量をこれら第1の吐出口高さ変更機構260及び第2の吐出口高さ変更機構270に出力する。
【0040】
ここで、制御量の一例として、制御部290は、計測部280から入力された距離L1と距離L2との差分に基づいて、モータ261でナット266を押し出し又は引き込みする加力値を算出している。なお、この距離L1は、バックアップロール206の初動時の計測部280との距離である。また、距離L2は、所定時間経過後のバックアップロール206との距離である。ここで、所定時間経過後とは、バックアップロール206により搬送される箔207に塗布膜の塗布を開始したときから、塗料の温度の影響を受けてバックアップロール206が熱変形したまでをいい、例えば、箔207に塗布膜の塗布を開始したときから、一時間経過したときをいう。
【0041】
制御部290は、計測部280から出力された距離L1及び距離L2を対比し、距離L1<距離L2であった場合には、バックアップロール206の形状がつつみ形状であると判定する。また、制御部290は、距離L1と距離L2との差分を算出し、この算出した値に基づいて、塗布ダイ250の吐出口254の開口の高さ幅を減少させる。一方、制御部290は、距離L1>距離L2であった場合には、バックアップロール206の形状が太鼓形状であると判定する。そして、制御部290は、第1の吐出口高さ変更機構260及び第2の吐出口高さ変更機構270を制御して、距離L1と距離L2との差分から塗布ダイ250の吐出口254の開口の高さ幅を増大させる。
【0042】
ここで、図8乃至図9に示す、関連する塗布装置900は、上述したように、バックアップロール906の変形により吐出口954とバックアップロール906との隙間がその幅方向で異なってしまい、塗布膜の幅方向における厚みの均一性を維持することができない。
【0043】
これに対し、本実施形態では、バックアップロール206がつつみ状に変形した場合、真ん中の第1の吐出口高さ変更機構260b及び第2の吐出口高さ変更機構270bを制御して、吐出口254の中央部の開口の高さ幅を低くしている。このように、本実施形態では、吐出口254の開口の高さ幅を調整して、中央部に吐出される吐出量を少なくし、他の部分から流れる塗料とあわせて、他の部分との厚みを調整している。
【0044】
また、本実施形態では、バックアップロール206が太鼓状に変更した場合、真ん中の第1の吐出口高さ変更機構260b及び第2の吐出口高さ変更機構270bを制御して、吐出口254の中央部の開口の高さ幅を高くしている。このように、本実施形態では、吐出口254の開口の高さ幅を調整して、中央部に吐出される吐出量を多くし、他の部分に流れる塗料を補てんし、他の部分との厚みを調整している。
【0045】
このように、塗布装置200は、計測部280にて計測したバックアップロール206の側面との距離に基づいて、制御部290にて第1の吐出口高さ調整機構260及び第2の吐出口高さ調整機構270を制御して吐出口254の吐出高さを調整している。
【0046】
よって、本実施形態によれば、連続的に箔に塗布膜を塗布する際の塗布膜の幅方向の厚みの均一化を維持することができる。
【符号の説明】
【0047】
100 塗布装置
106 バックアップロール
107 箔
154 吐出口
160 調整部
180 計測部
190 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10