(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すように、操舵角に基づいて運転状態を判定する場合、道路の形状によっては、精度良く運転状態を判定することができないという問題があった。
【0005】
また、運転者の運転状態を判定する方法として、運転者の脳波や心電図といった生理情報に基づいて運転状態を判定する方法が考えられる。このような方法では、専用のセンサを運転者に装着すると、運転操作に支障がでるおそれがあるため、非接触方式で生理情報を取得する必要がある。しかしながら、非接触方式で生理情報を取得すると、生理情報を精度良く取得することができず、結果として、精度良く運転状態を判定することができないという問題が生じてしまう。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、運転者の運転状況を精度良く判定することができる運転状態判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の運転状態判定装置は、自車両と、前記自車両の前方を走行する先行車両との相対速度、及び前記自車両の加速度を測定する測定手段と、前記先行車両が通過した位置に前記自車両が到達する時間を示す車間時間を算出する第1算出手段と、前記車間時間、前記相対速度、及び前記自車両の加速度に基づいて、前記車間時間を維持する余裕度を算出する第2算出手段と、前記余裕度に基づいて、前記自車両の運転者の運転状態を判定する判定手段と、を備える。
【0008】
このようにすることで、運転状態判定装置は、車間時間を維持する余裕度に基づいて、運転者が、先行車両に適切に追従して走行しているか否かを判定することができるので、道路の形状に関係なく、運転者の運転状態を精度良く判定することができる。また、先行車両との相対速度、車間時間、自車両の加速度は、安定して取得することができることから、運転状態判定装置は、非接触方式で運転者の脳波や心電図といった生理情報を用いる場合に比べて、精度良く運転者の運転状態を判定することができる。
【0009】
前記運転状態判定装置は、前記余裕度に基づいて、前記車間時間の変化状況を検出する検出手段をさらに備え、前記判定手段は、前記検出手段が検出した前記変化状況に基づいて、前記運転者の運転状態を判定してもよい。
このようにすることで、運転状態判定装置は、例えば、車間時間の変化状況が、衝突リスクが高い車間時間よりも短い状況になったことを検出したことに応じて、運転者の運転状態が、覚醒度が低下した状態であると判定することができる。
【0010】
前記運転状態判定装置は、所定時間内に前記第2算出手段が算出した複数の前記余裕度の標準偏差を算出する第3算出手段をさらに備え、前記判定手段は、前記標準偏差に基づいて前記運転者の運転状態を判定してもよい。
標準偏差が大きい場合には、余裕度の変化が大きく、自車両と先行車両との車間時間が一定に保たれておらず、運転者が先行車両に適切に追従できていない可能性が高い。よって、運転状態判定装置は、標準偏差に基づいて、運転者の運転状態が、覚醒度が低下した状態であることを判定することができる。
【0011】
前記測定手段は、前記自車両の操舵角を測定し、前記判定手段は、前記余裕度と、前記操舵角の変化とに基づいて前記運転者の運転状態を判定してもよい。
このようにすることで、運転状態判定装置は、先行車両が存在しない場合においても、操舵角の変化に基づいて運転者の運転状態を判定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、運転者の運転状況を精度良く判定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[運転状態判定装置10の構成]
以下、本発明の一実施形態に係る運転状態判定装置10について説明する。
図1は、運転状態判定装置10の構成を示す図である。運転状態判定装置10は、例えば、定速走行・車間距離制御装置(ACC:Adaptive Cruise Control)を備える自車両1に搭載されており、自車両1を運転する運転者の運転状態を判定するコンピュータである。
【0015】
運転状態判定装置10は、
図1に示すように、矢印方向に走行する自車両1と、自車両1の前方を走行する先行車両2との相対速度、及び自車両1の加速度を測定するとともに、先行車両2が通過した位置に自車両1が到達する時間を示す車間時間を算出する。運転状態判定装置10は、ACCが動作していない場合に、当該車間時間、相対速度、及び自車両の加速度に基づいて、自車両1の運転者の運転状態を判定する。
【0016】
なお、本実施形態では、自車両1の運転者の運転状態が、覚醒度が低い状態(覚醒度低下状態)を判定するものとして説明するが、覚醒度低下状態には、脇見運転をしている状態や、集中力を欠いた状態も含まれるものとする。
【0017】
運転状態判定装置10は、
図1に示すように、速度センサ11と、加速度センサ12と、先行車両検出センサ13と、操舵角センサ14と、記憶部15と、制御部16とを備える。
速度センサ11は、自車両1の車速を検出し、検出した車速を制御部16に出力する。
加速度センサ12は、自車両1の加速度を検出し、検出した加速度を制御部16に出力する。なお、本実施形態において、加速度センサ12は、自車両1が加速した場合に、正の値を出力し、自車両1が減速した場合に、負の値を出力する。
【0018】
先行車両検出センサ13は、例えば、ミリ波レーダである。先行車両検出センサ13は、自車両1の前方にミリ波を照射し、自車両1の前方を走行する先行車両2が反射したミリ波(反射波)を受信することにより、先行車両2を検出する。
【0019】
また、先行車両検出センサ13は、照射したミリ波の周波数と受信した反射波の周波数とに基づいて、自車両1と先行車両2との相対速度を測定する。また、先行車両検出センサ13は、ミリ波を照射してから反射波を受信するまでの時間に基づいて、自車両1と先行車両2との相対距離を測定する。先行車両検出センサ13は、測定した相対速度及び相対距離を制御部16に出力する。また、先行車両検出センサ13は、先行車両2を検出していない場合には、先行車両2を検出していないことを示す非検出情報を制御部16に出力する。なお、本実施形態において、相対速度は、自車両1の車速が先行車両2の車速に比べて大きい場合、正の値を示し、自車両1の車速が先行車両2の車速に比べて小さい場合、負の値を示すものとする。
操舵角センサ14は、自車両1に設けられているハンドルの操舵角を検出し、検出した操舵角を制御部16に出力する。
【0020】
記憶部15は、例えばROMやRAMやハードディスクである。記憶部15は、制御部16を機能させるための各種のプログラムを記憶する。また、記憶部15は、制御部16が各種センサから取得した情報や、制御部16が自ら算出した情報を記憶する。
制御部16は、例えばCPUである。制御部16は、
図1に示すように、測定部161と、第1算出部162と、第2算出部163と、検出部164と、第3算出部165と、第4算出部166と、判定部167と、出力部168とを備える。
【0021】
測定部161は、速度センサ11、加速度センサ12、先行車両検出センサ13、及び操舵角センサ14から出力される各種情報を取得することにより、自車両1と先行車両2との相対速度、自車両1と先行車両2との相対距離、自車両1の車速、自車両1の加速度、及び自車両1の操舵角を測定する。測定部161は、定期的(例えば、10秒おき)に相対速度、相対距離、自車両1の車速、自車両1の加速度を測定する。
【0022】
第1算出部162は、先行車両2が通過した位置に自車両1が到達する時間を示す車間時間を算出する。具体的には、第1算出部162は、測定部161が測定した相対距離を自車両1の速度で除算することにより車間時間を算出する。
【0023】
第2算出部163は、第1算出部162が算出した車間時間、測定部161が測定した相対速度及び自車両1の加速度に基づいて、車間時間を維持する余裕度を算出する。第2算出部163は、以下の(1)式に基づいて車間時間を維持する余裕度を算出する。なお、以下の説明において、車間時間を維持する余裕度を単に「余裕度」という。また、(1)式において、それぞれの項を自車両1の車速で除算したときの値を余裕度としてもよい。
余裕度=−相対速度−車間時間×自車両1の加速度・・・(1)
【0024】
本実施形態において、自車両1の車速が先行車両2の車速に比べて小さい場合、すなわち、自車両1が先行車両2から遠ざかる場合、相対速度は負の値を示すことから、先行車両2の車速が自車両1の車速よりも大きくなればなるほど、余裕度が大きくなる。
【0025】
また、運転者がブレーキを操作すること等によって自車両1が減速している場合には、自車両1の加速度が負の値となり、余裕度が大きくなる。また、運転者がアクセルを操作することによって自車両1が加速している場合には、加速度が正の値となり、余裕度が小さくなる。
【0026】
また、相対速度が0であり、自車両1が等速走行している場合には、車間時間が変化せず、余裕度は0となる。また、余裕度が負の値である場合には、車間時間が短くなっていることを示し、余裕度が正の値である場合には、車間時間が長くなっていることを示す。
【0027】
検出部164は、第2算出部163が算出した余裕度に基づいて、車間時間の変化状況を検出する。例えば、余裕度が負の値を示す場合、車間時間が短くなり、衝突のリスクが増加していることを示している。このため、検出部164は、余裕度が負の値である場合に、車間時間が、衝突リスクが増加した状況(危険状況)に変化したことを検出する。
【0028】
第3算出部165は、所定時間(例えば、1分以内)内に第2算出部163が算出した複数の余裕度の標準偏差を算出する。
第4算出部166は、所定時間内に測定部161が測定した操舵角に対してFFT(高速フーリエ変換)を行い、操舵角のパワースペクトル密度(PSD:Power Spectral Density)を算出する。なお、第4算出部166は、所定時間内に測定部161が測定した操舵角に基づいて、操舵角のパワースペクトル密度を算出したが、これに限らず、所定時間とは異なる長さの時間に測定部161が測定した操舵角に基づいて、操舵角のパワースペクトル密度を算出してもよい。
【0029】
判定部167は、第2算出部163が算出した余裕度と、測定部161が測定した操舵角の変化とに基づいて、運転者の運転状態を判定する。
具体的には、判定部167は、ACCが動作しておらず、先行車両検出センサ13が先行車両2を検出している場合に、第2算出部163が算出した余裕度に基づいて、自車両1の運転者の運転状態を判定する。より具体的には、判定部167は、検出部164が検出した車間時間の変化状況に基づいて、自車両1の運転者の運転状態が、覚醒度低下状態であるか否かを判定する。例えば、判定部167は、検出部164が所定時間以内に、車間時間の変化状況が危険状況になったことを所定回数検出すると、自車両1の運転者の運転状態が覚醒度低下状態であると判定する。
【0030】
また、判定部167は、ACCが動作しておらず、先行車両検出センサ13が先行車両2を検出している場合に、第3算出部165が算出した標準偏差に基づいて、運転者の運転状態を判定する。具体的には、判定部167は、第3算出部165が算出した標準偏差が予め設定されている第1閾値よりも大きい場合、運転者の運転状態が覚醒度低下状態であると判定する。
【0031】
また、判定部167は、ACCが動作している場合、又は、先行車両検出センサ13が先行車両を検出していない場合に、測定部161が測定した操舵角の変化に基づいて、運転者の運転状態を判定する。例えば、判定部167は、第4算出部166が算出したパワースペクトル密度において、所定周波数帯域(例えば、0.05〜0.15Hz)のパワースペクトル密度が予め定められた第2閾値以上である場合に、運転者の運転状態が覚醒度低下状態であると判定する。
【0032】
なお、判定部167は、ACCが動作しておらず、先行車両検出センサ13が先行車両2を検出している場合においても、測定部161が測定した操舵角の変化に基づいて運転者の運転状態を判定してもよい。
【0033】
出力部168は、判定部167が、運転者の運転状態が覚醒度低下状態であると判定すると、警告情報を出力する。例えば、出力部168は、自車両1に設けられているスピーカ等の出音部(不図示)に、覚醒度が低下して危険な状態であることを示す警告音声を出力させる。出力部168は、運転者に休憩を促す旨の音声を出音部から出力させてもよい。
【0034】
[運転状態の判定に係るフローチャート]
続いて、運転状態判定装置10が実行する処理の流れについて説明する。
図2は、運転状態判定装置10が、運転状態を判定するときの処理の手順を示すフローチャートである。
【0035】
まず、測定部161は、自車両1と先行車両2との相対速度、自車両1と先行車両2との相対距離、自車両1の車速、自車両1の加速度、及び自車両1の操舵角を測定する(S10)。
【0036】
続いて、判定部167は、ACCが動作中であるか否かを判定する(S20)。判定部167は、ACCが動作中であると判定すると、S50に処理を移し、ACCが動作中ではないと判定すると、S30に処理を移す。
【0037】
S30において、判定部167は、先行車両検出センサ13の検出状況に基づいて、先行車両2が存在するか否かを判定する。判定部167は、先行車両2が存在すると判定すると、S40に処理を移し、先行車両2が存在しないと判定すると、S50に処理を移す。
S40において、判定部167は、余裕度に基づく判定処理を行う。この処理の詳細については後述する。
【0038】
S50において、第4算出部166は、現在時刻よりも所定時間前から、現在時刻までに、測定部161が測定した操舵角のパワースペクトル密度(PSD)を算出する。
続いて、判定部167は、所定周波数におけるパワースペクトル密度が予め定められた第2閾値以上であるか否かを判定する(S60)。判定部167は、パワースペクトル密度が予め定められた第2閾値以上であると判定すると、S70に処理を移し、運転者の運転状態が覚醒度低下状態であると判定する。
また、判定部167は、パワースペクトル密度が予め定められた第2閾値未満であると判定すると、S80に処理を移す。
【0039】
S80において、出力部168は、運転者の運転状態が覚醒度低下状態であると判定されたか否かを判定する。出力部168は、覚醒度低下状態であると判定されている場合には、S90に処理を移して警告情報を出力し、その後、S10に処理を移す。また、出力部168は、覚醒度低下状態ではないと判定されている場合には、S10に処理を移す。
【0040】
[余裕度に基づく判定処理に係るフローチャート]
続いて、余裕度に基づく判定処理の詳細について説明する。
図3は、余裕度に基づく判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0041】
まず、第1算出部162は、測定された相対距離を、測定された自車両1の車速で除算することにより、車間時間を算出する(S41)。
続いて、第2算出部163は、測定された相対速度と、測定された自車両1の加速度と、算出された車間時間とに基づいて、余裕度を算出する(S42)。
【0042】
続いて、検出部164は、算出された余裕度に基づいて、車間時間が、衝突リスクが増加した状況(危険状況)であるか否かを判定する(S43)。検出部164は、危険状況であると判定すると、S44に処理を移し、危険状況ではないと判定すると、S46に処理を移す。
【0043】
S44において、判定部167は、現在時刻よりも所定時間前から、現在時刻までにおける危険状況を所定回数以上検出したか否かを判定する。判定部167は、所定回数以上検出したと判定すると、S45に処理を移し、運転者の運転状態が覚醒度低下状態であると判定する。また、判定部167は、危険状況の検出回数が所定回数未満と判定すると、S46に処理を移す。
【0044】
S46において、第3算出部165は、第2算出部163が現在時刻よりも所定時間前から、現在時刻までに算出した複数の余裕度の標準偏差を算出する。
続いて、判定部167は、算出された標準偏差が予め定められた第1閾値以上であるか否かを判定する(S47)。判定部167は、第1閾値以上であると判定すると、S45に処理を移し、運転者の運転状態が覚醒度低下状態であると判定する。また、判定部167は、第1閾値未満と判定すると、本フローチャートに係る処理を終了する。
【0045】
[本実施形態における効果]
以上説明したように、運転状態判定装置10は、自車両1と先行車両2との相対速度、及び自車両1の加速度を測定する測定部161と、自車両1と先行車両2との車間時間を算出する第1算出部162と、車間時間、相対速度、及び自車両1の加速度に基づいて、車間時間を維持する余裕度を算出する第2算出部163と、余裕度に基づいて、自車両1の運転者の運転状態を判定する判定部167とを備える。
【0046】
このようにすることで、運転状態判定装置10は、車間時間を維持する余裕度に基づいて、運転者が、先行車両2に適切に追従して走行しているか否かを判定することができるので、道路の形状に関係なく、運転者の運転状態を精度良く判定することができる。また、先行車両2との相対速度、車間時間、自車両1の加速度は、安定して取得することができることから、運転状態判定装置10は、非接触方式で運転者の脳波や心電図といった生理情報を用いる場合に比べて、精度良く運転者の運転状態を判定することができる。
【0047】
また、運転状態判定装置10は、検出部164が検出した車間時間の変化状況に基づいて運転者の運転状態を判定するので、例えば、車間時間の変化状況が、衝突リスクが増加した状況(危険状況)になったことを検出したことに応じて、運転状態が覚醒度低下状態となったと判定することができる。
【0048】
また、運転状態判定装置10は、所定時間内に第2算出部163が算出した余裕度の標準偏差を算出する第3算出部165をさらに備え、判定部167は、標準偏差に基づいて運転者の運転状態を判定する。
標準偏差が大きい場合には、余裕度の変化が大きく、自車両1と先行車両2との車間時間が一定に保たれておらず、運転者が先行車両2に適切に追従できていない可能性が高い。よって、運転状態判定装置10は、標準偏差に基づいて、運転者の運転状態が、覚醒度低下状態であることを判定することができる。
【0049】
また、運転状態判定装置10は、余裕度と、操舵角の変化とに基づいて運転者の運転状態を判定するので、先行車両2が存在しない場合においても、操舵角の変化に基づいて運転者の運転状態を判定することができる。
【0050】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0051】
上述の実施形態では、運転状態判定装置10は、ACCを備える自車両1に搭載されているものとして説明を進めたがこれに限らない。運転状態判定装置10は、ACCを備えていない自車両1に搭載されていてもよい。この場合において、運転状態判定装置10は、先行車両2が存在しているときに、余裕度に基づく判定処理を常に行ってもよい。