(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固形物の量は、固化し結晶化した後に前記活物質集合体上に層を形成することができる量であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電極複合体の製造
方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1ではゾルゲル法を用いて多孔体である固体電解質の孔に電池活物質を設置することが記載されている。すなわち、電池活物質の材料を溶媒に溶解させた活物質溶液を孔内に充填させ、その後加熱乾燥して溶媒を除去する。孔内では溶媒が除去されるので、電池活物質の膜が固体電解質の表面に形成されるが、孔内すべてを満たすことはできずに空洞となる部分が発生する。当該空洞部分はリチウムイオンが移動することができないことから、電池の容量を大きくするためには当該空洞となる部分をできるだけ少なくする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくともひとつを解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例にかかる電極複合体の製造方法であって、連通孔を有する活物質集合体を形成する第1の工程と、前記活物質集合体上にLi
2+XC
1-XB
XO
3(Xは0を超え1以下の実数を表す。)を含む固形物を設置する第2の工程と、前記固形物を溶融させる第3の工程と、前記固形物の溶融物を固化し結晶化させる第4の工程と、を含み、前記溶融物は、前記第3の工程において前記連通孔内に充填されていることを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、まず、第1の工程で連通孔を有する活物質集合体を形成する。そして、第2の工程で活物質集合体上にLi
2+XC
1-XB
XO
3を含む固形物を設置する。当該固形物は固体電解質を形成するためのものである。Xはホウ素Bの置換率であり、0を超え1以下の実数を表す。従って、固体電解質を形成するための固形物には、必ずホウ素Bが含まれ、Xが1のときにはLi
3BO
3が含まれることになる。次に、第3の工程で固体電解質を形成するための固形物を溶融させる。そして、溶融物を連通孔内に充填させる。次に、当該溶融物を徐冷して固化し結晶化させている。これにより、活物質集合体の連通孔内に結晶化された固体電解質を有する電極複合体を形成することができる。
【0010】
Li
2+XC
1-XB
XO
3を含む固形物は、加熱して溶融させることでよい。このため、連通孔内に充填した溶融物を充填するとき気化する物質の量が少ないので、固化するときの体積変化を小さくすることができる。従って、連通孔内を固体電解質が占める比率を高くし、連通孔内の空隙率を低下することができる。これにより、生産性良く固体電解質を活物質集合体の連通孔内に設置することができ、比較的に容量の大きな電池を構成することが可能な電極複合体を形成することができる。
【0011】
[適用例2]
上記適用例にかかる電極複合体の製造方法であって、前記第3の工程において、前記固形物を650℃以上900℃以下の温度で加熱することが好ましい。
【0012】
本適用例によれば、固体電解質を形成するための固形物を650度以上900度以下の範囲で加熱することが好ましい。加熱温度を650度以上にするとき固体電解質を形成するための固形物を溶融することができる。加熱温度を900度以上にするとき固体電解質の組成が変わるので電解質としての性能が低下する。従って、固体電解質の固形物を上記の範囲にすることにより、電解質としての性能を低下させずに固体電解質の固形物を溶融させることができる。
【0013】
[適用例3]
上記適用例にかかる電極複合体の製造方法において、前記Li
2+XC
1-XB
XO
3におけるXは、0.2以上0.6以下であることが好ましい。
【0014】
本適用例によれば、Li
2+XC
1-XB
XO
3におけるXの範囲は0.2以上0.6以下の実数であることが好ましい。このとき、固体電解質の好ましいLi伝導率を得ることができる。
【0015】
[適用例4]
上記適用例にかかる電極複合体の製造方法において、前記固形物の量は、固化し結晶化した後に前記活物質集合体上に層を形成することができる量であることが好ましい。
【0016】
本適用例によれば、固体電解質を形成するための固形物の量は、固化し結晶化した後に活物質集合体上に層を形成することができる量であることが好ましい。これにより、活物質集合体上に固形物が固化し結晶化した層を形成することができる。これにより、電極複合体において、活物質集合体が露出しない、結晶化した固体電解質のみが露出た面を形成することができる。固体電解質のみが露出した面を形成することで、電池を構成するときに一方の電極を固体電解質のみが露出した面に形成することで、活物質集合体が正極側と負極側との双方に接して発生する短絡を抑止することができる。
【0017】
[適用例5]
本適用例にかかる電極複合体であって、連通孔を有する活物資成形体と、少なくとも前記連通孔内に形成されたLi
2+XC
1-XB
XO
3(Xは0を超え1以下の実数を表す。)を含む結晶化された固体電解質と、を有することを特徴とする。
【0018】
本適用例によれば、電極複合体は連通孔を有する活物質集合体を備えている。この連通孔には結晶化された固体電解質が設置され、固体電解質はLi
2+XC
1-XB
XO
3を含んでいる。Xはホウ素Bの置換率であり、0を超え1以下の実数を表す。従って、固体電解質にはホウ素Bが必ず含まれる。
【0019】
[適用例6]
上記適用例にかかる電極複合体であって、前記活物質集合体を含む第1の層と前記活物質集合体を含まない第2の層とを有し、前記第1の層における前記固体電解質と前記第2の層における固体電解質は連続していることが好ましい。
【0020】
本適用例によれば、電極複合体は第1の層と第2の層とを有している。第1の層は活物質集合体と固体電解質とを有している。第2の層には活物質集合体がなく固体電解質を有している。そして、第1の層における固体電解質と第2の層における固体電解質は連続している。活物質集合体上に固体電解質の材料となる固形物を設置してから当該固形物を溶融し、その後結晶化させることで活物質集合体と固体電解質とを有する第1の層を得ることができ、このときの固体電解質の材料となる固形物の量を活物質集合体に充填される量を超える量とすることで、第1の層上に固体電解質の第2の層が形成される。このように形成された第1の層の固体電解質と第2の層の固体電解質は連続した結晶構造を有し、好ましいLiイオンの伝導度を有する電極複合体とすることができる。
【0021】
[適用例7]
本適用例にかかる電池は、上記に記載の電極複合体を有する電池であって、前記第1の層側に設置された第1電極と、前記第2層側に設置された第2電極と、を有することを特徴とする。
【0022】
本適用例によれば、電極複合体が第1電極と第2電極とに挟まれている。これにより、第1の層における固体電解質及び第2の層の固体電解質の内部をLiイオンが移動することで充電及び放電させることができる電池を構成することができる。また、電池内において、活物質集合体を有しない第2の層が第1電極と第2電極との間にあることで、電池内部での短絡を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態について図面に従って説明する。
尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
【0025】
(第1の実施形態)
本実施形態では、電極複合体を有するリチウム電池と、このリチウム電池を製造するリチウム電池の製造方法との特徴的な例について、図に従って説明する。リチウム電池の製造方法には電極複合体が含まれている。本実施形態に係る電極複合体について
図1に従って説明する。
図1は電極複合体の構造を示す要部模式側断面図である。
図1に示すように、電極複合体9は活物質集合体12を備えている。活物質集合体12は形成材料である活物質粒子13が複数連結した多孔質の成形体である。活物質粒子13同士の間には連通孔14が位置する。連通孔14では活物質粒子13間の空洞が網目状に連通して孔の形態になっている。
【0026】
連通孔14には結晶質の固体電解質15が設置されている。連通孔14が網目状に設置されているので、活物質集合体12と固体電解質15とが広い面積で接触する。この為、活物質集合体12と固体電解質15との間でリチウムイオンが移動し易くなっている。また、固体電解質15は活物質集合体12間の連通孔14を埋めている。従って、固体電解質15は網目状の連続した構成物になっている。固体電解質15内はリチウムイオンが移動する。そして、連通孔14に固体電解質15が網目状に充填されているので、活物質集合体12の隅々までリチウムイオンが移動可能な経路が確保されることになる。このため、リチウムイオンが移動し易くなっている。
【0027】
活物質粒子13の形成材料にはリチウム複酸化物を用いることができる。尚、リチウムを必ず含み2種以上の金属イオンを含む酸化物であり、オキソ酸イオンが存在しないものをリチウム複酸化物と称す。リチウム複酸化物としては、例えば、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4、Li
2Mn
2O
3、LiFePO
4、Li
2FeP
2O
7、LiMnPO
4、LiFeBO
3、Li
3V
2(PO
4)
3、Li
2CuO
2、LiFeF
3、Li
2FeSiO
4、Li
2MnSiO
4等が挙げられる。
【0028】
他にも、これらのリチウム複酸化物の結晶内の一部原子が他の遷移金属、典型金属、アルカリ金属、アルカリ希土類、ランタノイド、カルコゲナイド、ハロゲン等で置換された固溶体もリチウム複酸化物に含むものとし、これら固溶体も正極活物質として用いることができる。本実施形態では、例えば、活物質粒子13にLiCoO
2を用いている。
【0029】
活物質粒子13の平均粒径は、300nm以上5μm以下が好ましく、450nm以上3μm以下がより好ましく、500nm以上1μm以下がさらに好ましい。この平均粒径の活物質粒子13を用いるとき活物質集合体12に含まれる連通孔14の割合を、好ましい範囲内に設定することができる。これにより、活物質集合体12の表面積を相対的に広くすることができる為、活物質集合体12と固体電解質15との接触面積を広くすることができる。
【0030】
固体電解質15の材料にはLi
2+XC
1-XB
XO
3が用いられている。Xはホウ素Bの置換率であり、0を超え1以下の実数を表す。従って、固体電解質の固形物にXが0のときのLi
2CO
3は含まれず、Xが1のときのLi
3BO
3は含まれる。固体電解質15は結晶質である。
【0031】
次に、リチウム電池について
図2〜
図5に従って説明する。
図2はリチウム電池の外形を示す概略斜視図である。
図2に示すように、電池としてのリチウム電池1は有底円筒形の容器部2と蓋部3とを備えている。容器部2及び蓋部3の一方が正極になり他方が負極になる。リチウム電池1は蓄電可能な全固体型二次電池であるが一次電池として用いてもよい。リチウム電池1の内部に電極複合体9が用いられている。
【0032】
図3はリチウム電池1の構造を示す模式断面図である。
図3に示すように、容器部2内には円板状の電池としての電池ユニット4が4個重ねて設置されている。電池ユニット4は円柱状に重ねられている。各電池ユニット4に電極複合体9が用いられている。1つのリチウム電池1に設置される各電池ユニット4の個数は特に限定されない。1個〜3個でも良く、5個以上でも良い。電池ユニット4は約2.8v〜約4.2vの間で用いられる。複数の電池ユニット4の接続を並列接続及び直列接続で組み合わせることにより、リチウム電池1として必要な電圧値を調整することができる。
【0033】
重ねられた電池ユニット4の回りには円筒状の第1絶縁部5が設置されている。電池ユニット4及び第1絶縁部5の図中上側には蓋部3が設置され、蓋部3の外周側及び第1絶縁部5の側面側に第2絶縁部6が設置されている。第2絶縁部6は容器部2と蓋部3との間に位置し、容器部2と第1絶縁部5との間にも位置している。
【0034】
電池ユニット4が図中左右方向に移動しないように第1絶縁部5が電池ユニット4を固定する。さらに、第1絶縁部5は電池ユニット4の側面が容器部2と導通しないように絶縁する。第2絶縁部6は容器部2と蓋部3とを絶縁する。容器部2及び蓋部3の材料は導通性及び剛性があれば良く特に限定されないが耐食性のある金属や、表面に耐食性の表面処理おこなった金属を用いることができる。本実施形態では、例えば、容器部2及び蓋部3の材料にステンレスを用いている。第1絶縁部5及び第2絶縁部6の材料は絶縁性があれば良く特に限定されないが、樹脂材料を用いるのが加工し易いので好ましい。本実施形態では、例えば、第1絶縁部5及び第2絶縁部6の材料にアクリル樹脂を用いている。
【0035】
図4は電池ユニットの構造を示す模式側面図である。
図4に示すように、電池ユニット4は第1電極としての下部電極7を備えている。そして、下部電極7上にカーボンシート8、第1の層としての電極複合体9、第2の層としての分離膜10、第2電極としての上部電極11がこの順に重ねて設置されている。各部位の厚みは特に限定されないが、本実施形態では、例えば、下部電極7が約100μm、カーボンシート8が約100μm、電極複合体9が約300μm、分離膜10が約2μm、上部電極11が約2μmである。
【0036】
下部電極7は正極となる電極であり、構造を維持する基板として機能する。下部電極7の材料には、例えば、銅、マグネシウム、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、インジウム、金、白金、銀及びパラジウムからなる群から選ばれる1種の金属や、この群から選ばれる2種以上の金属を含む合金等を用いることができる。本実施形態では、例えば、下部電極7の材料に銅を用いている。カーボンシート8は下部電極7と電極複合体9との間で効率良く電流を流動させる炭素膜である。
【0037】
分離膜10は電極複合体9と上部電極11とが短絡することを防止する膜でありLBO(ほう酸三リチウム)、LCBO(ホウ酸炭素リチウム)等により構成された膜である。本実施形態では、例えば、分離膜10にLCBOを採用した。また、上部電極11は負極となる電極であり、リチウムの膜を用いた。
【0038】
リチウム電池1を充電するとき固体電解質15ではリチウムイオンが電極複合体9の活物質集合体12から上部電極11に移動する。上部電極11はリチウム膜の負極である。そして、放電するときには固体電解質15ではリチウムイオンが上部電極11から電極複合体9の活物質集合体12に移動する。
【0039】
図5は電池ユニットの構造を示す模式平面図である。
図5に示すように、電池ユニット4の平面形状は円形になっている。これに合わせる形で、本実施形態においては、下部電極7、カーボンシート8及び電極複合体9も円板状になっている。電池ユニット4の直径は特に限定されないが、本実施形態では、例えば、10mm〜20mmに設定している。
【0040】
次に上述したリチウム電池1の製造方法について
図6〜
図17にて説明する。
図6は、リチウム電池の製造方法のフローチャートであり、
図7〜
図16はリチウム電池の製造方法を説明するための模式図である。
図6のフローチャートにおいて、ステップS1は活物質シート形成工程である。この工程は、活物質粒子13とバインダーとを混成してシート状に加工する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は外形形成工程である。この工程は、活物質集合体12の中間製品の外形を形成する工程である。中間製品は完成に至る途中の製品を称す。次にステップS3に移行する。ステップS3は活物質焼成工程である。この工程は、活物質集合体12の中間製品からバインダーを除去し活物質粒子13を焼結する工程である。次にステップS4に移行する。
【0041】
ステップS4は電解質供給工程である。この工程は、活物質集合体12上に固体電解質15の材料を供給する工程である。次にステップS5に移行する。ステップS5は充填工程である。この工程は、固体電解質15の材料を加熱して活物質集合体12の連通孔14に充填させる工程である。次にステップS6に移行する。ステップS6は徐冷工程である。この工程は、固体電解質15の材料を充填させた活物質集合体12を徐冷する工程である。ステップS6で電極複合体9が完成する。ステップS1〜ステップS6が電極複合体9の製造方法を示している。次にステップS7に移行する。
【0042】
ステップS7は分離層設置工程である。この工程は、電極複合体9の一方の面に分離膜10を設置する工程である。次にステップS8に移行する。ステップS8は上電極設置工程である。この工程は、分離膜10に重ねて上部電極11を設置する工程である。次にステップS9に移行する。ステップS9は下電極設置工程である。この工程は、電極複合体9の他方の面にカーボンシート8及び下部電極7を設置する工程である。ステップS9で電池ユニット4が完成する。次にステップS10に移行する。ステップS10はパッケージ工程である。この工程は、容器部2に電池ユニット4、第1絶縁部5、第2絶縁部6及び蓋部3を設置して、容器部2で蓋部3を固定する工程である。以上の工程によりリチウム電池1が完成する。ステップS1〜ステップS3が第1の工程に相当し、ステップS4が第2の工程に相当する。ステップS5が第3の工程に相当する。ステップS6が第4の工程に相当する。
【0043】
次に、
図7〜
図17を用いて、
図6に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。
【0044】
図7はステップS1の活物質シート形成工程に対応する図である。ステップS1では活物質粒子13の原料粉末をバインダー等と混ぜてペースト状にする。そして、プラスチックのキャリアフィルム上に薄いシート状に延ばして乾燥する。乾燥されたシートをグリーンシートと称す。
【0045】
バインダーは活物質粒子13の原料粉末を接合し加熱により除去可能であれば良く特に限定されない。バインダーはポリカーボネートの他、セルロース系バインダー、アクリル系バインダー、ポリビニルアルコール系バインダー、ポリビニルブチラール系バインダー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
また、活物質シート形成工程において溶媒を用いてもよい。当該工程で用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ブタノール、エタノール、プロパノール、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の非プロトン性の溶媒を用いることができる。これにより、溶媒との接触による活物質粒子13の劣化を低減することができる。これらの溶媒を1つまたは複数組み合わせて使用することができる。本実施形態では、例えば、バインダーはポリカーボネートにジオキサンを加えて用いている。
【0047】
また、バインダーにはポリフッ化ビニリデンやポリビニルアルコール等の有機高分子化合物をくわえても良い。バインダーには連通孔14の大きさを調整するために粒子状の造孔材を添加してもよい。造孔材の平均粒径は特に限定されないが本実施形態では、例えば、0.5μm〜10μmに設定している。他にも、バインダーにはポリアクリル酸等の潮解性を有する物質を形成材料とする粒子を加えてもよい。粒子が潮解して粒子の周囲に生じる水が、粒子状のリチウム複酸化物をつなぎ合わせる。粒子状のリチウム複酸化物をつなぎ合わせるバインダーとして機能する。
【0048】
次に、
図7に示すように、圧延機16にグリーンシート17を設置する。圧延機16は第1円筒16aと第2円筒16bを備えている。そして、第1円筒16aの中心軸及び第2円筒16bの中心軸は図示しない回転機構の回転軸に接続されている。回転機構はモーター、減速機及び回転速度を制御する制御装置等により構成されている。回転機構により第1円筒16aは反時計回りに回転し、第2円筒16bは時計回りに回転する。第1円筒16aの外周と第2円筒16bの外周との距離は所定の距離に調整されている。
【0049】
第1円筒16aと第2円筒16bとの間にグリーンシート17を図中右側から挟む。第1円筒16a及び第2円筒16bが回転することによりグリーンシート17は所定の厚みに圧延されて図中左側に排出される。第1円筒16a及び第2円筒16bの表面が鏡面に加工されている。そして、圧延されたグリーンシート17には第1円筒16a及び第2円筒16bの表面が転写されるので、グリーンシート17の表面は平坦な面になる。
【0050】
図8はステップS2の外形形成工程に対応する図である。
図8に示すように、ステップS2において、グリーンシート17をプレス機18に設置する。プレス機18はダイプレート18a及びポンチ18bを備えている。そして、ダイプレート18aには円形の孔18cが設置され、ポンチ18bは円柱形状になっている。孔18cの直径とポンチ18bの直径は略同じ寸法になっている。
【0051】
操作者はダイプレート18a上にグリーンシート17を設置する。そして、プレス機18がポンチ18bを図中上下方向に移動させる。このとき、グリーンシート17はポンチ18bに押し出されてダイプレート18aの孔18cを通過する。そして、グリーンシート17が円板状に形成された活物質円板21が形成される。プレス機18はグリーンシート17を図中左側に移動してポンチ18bを上下動することにより活物質円板21を続けて形成する。
【0052】
図9はステップS3の活物質焼成工程に対応する図である。ステップS3の活物質焼成工程では、まず、活物質円板21からバインダーを除去する脱脂工程を行う。活物質円板21を還元ガス中に設置して150〜500℃程度の温度雰囲気内で0.1〜20時間程度加熱する。これにより、活物質円板21からバインダーを除去することができる。次に、活物質粒子13が溶融しない程度の温度まで加熱する。LiCoO
2の融点は1100℃であるので、1100℃未満の温度まで加熱する。加熱温度及び加熱時間は特に限定されないが本実施形態では、例えば、加熱温度を900〜950℃とし、加熱時間を4〜14時間程度にしている。その結果、
図9に示すように活物質粒子13が結合して活物質集合体12が完成する。活物質粒子13同士の間には連通孔14が設置される。連通孔14はバインダーが除去されてできた空洞であり、空洞が連なって連通孔14になっている。活物質集合体12には連通孔14が多く設置されているので多孔体や多孔質とも称される。
【0053】
図10はステップS4の電解質供給工程に対応する図である。
図10に示すように、ステップS4において、活物質集合体12上に活物質集合体12と接するように固体電解質15の材料である固形物としての固形の電解質22を供給する。固形の電解質22は固体電解質15の材料であり、固体電解質15の固形物である。固形の電解質22は特に限定されず、粉体、シート状、ブロック状の各種の形態で供給することができる。本実施形態では、例えば、固形の電解質22は紛体の状態で供給される。
【0054】
ホウ素Bの置換率であるXが0を超え1以下の実数とするとき、固形の電解質22はLi
2+XC
1-XB
XO
3を含む。Xは0を超えた実数であれば良く、例えば、Xが0.1のとき、Li
2+XC
1-XB
XO
3はLi
2.1C
0.9B
0.1O
3であり、Xが1のとき、Li
2+XC
1-XB
XO
3はLi
3BO
3である。
【0055】
図11及び
図12はステップS5の充填工程に対応する図である。
図11に示すように、ステップS5において、活物質集合体12を載置台23上に載置する。載置台23は耐熱性があり、1000度以上の高温に耐える。載置台23の材質にはアルミナや炭化ケイ素等のセラミックを用いることができる。
【0056】
次に、活物質集合体12及び固形の電解質22を加熱する。予め加熱された電気炉内に固形の電解質22が設置された活物質集合体12を投入する。電気炉内では固形の電解質22が加熱されて溶融する。固形の電解質22が溶融したものを溶融物と称す。
図12に示すように、溶融物には重力が作用するので、溶融物は活物質集合体12の連通孔14に充填される。さらに、毛管現象が作用し、溶融物は連通孔14内に容易に充填される。尚、載置台23は多孔質セラミック等の多孔質の構造体にしても良い。そして、活物質集合体12から溢れた固形の電解質22の溶融物を載置台23に吸着させても良い。
【0057】
固形の電解質22を充填させるとき溶媒を用いずに加熱して溶融させて液体にしている。連通孔14内に充填された固形の電解質22の溶融物が固化するとき気化する物質の量が少ないので、固形の電解質22の体積変化を小さくすることができる。従って、固形の電解質22の溶融物が固化した後の、連通孔14における空隙率の低下を図ることができる。
【0058】
固形の電解質22を溶融させるとき、固形の電解質22を650度以上900度以下の範囲で加熱する。加熱温度を650度以上にすることで固形の電解質22の固形物を溶融することができる。加熱温度を900度以上にするとき固形の電解質22の組成が変わるので電解質としての性能が低下する。従って、固形の電解質22の加熱温度を650度以上900度以下の範囲にすることにより、電解質としての性能を低下させずに固形の電解質22を溶融させることができる。
【0059】
さらには、固形の電解質22を溶融させるときの加熱温度は700度以上850度以下が好ましい。そして、固形の電解質22の加熱温度は固形の電解質22の組成に応じて変えるのが好ましい。固形の電解質22を溶解するにはLi
2+XC
1-XB
XO
3におけるホウ素置換率Xの値に応じて融点がかわるので加熱温度を変更するのが好ましい。
【0060】
固形の電解質22の加熱時間は固形の電解質22の量によって異なるので限定されない。加熱時間が長いと固形の電解質22の組成が変わるので加熱時間は短い方が好ましい。固形の電解質22が20mgのときの加熱時間は4分以上6分以下が好ましい。本実施形態では、例えば、固形の電解質22が20mgのときの加熱時間を5分に設定した。
【0061】
ステップS6の徐冷工程において、固形の電解質22が充填された活物質集合体12を徐冷する。これにより、固形の電解質22の溶融物が固化して結晶化する。徐冷するときの雰囲気温度が高いときには結晶の粒径が大きくなり、雰囲気温度が低いときには結晶の粒径が小さくなる。雰囲気温度を調整することで結晶粒径を制御することができる。固形の電解質22の溶融物が固化して固体電解質15になり、電極複合体9が完成する。尚、電極複合体9の両面を研磨して平坦にしても良い。電極との接触抵抗を低くすることができる。
【0062】
図13はステップS7の分離層設置工程に対応する図である。
図13に示すように、ステップS7において、活物質集合体12上に分離膜10を設置する。分離膜10はLCBOの膜である。分離膜10の成膜方法は特に限定されず、スパッタリング法、真空蒸着法等の気相成膜法の他、塗布法、噴霧法等の液相成膜法を用いることができる。本実施形態では、例えば、スパッタリング法を用いて分離膜10を成膜した。電極複合体9上に分離膜10が設置された形態を分離膜付電極複合体25とする。
【0063】
図14はステップS8の上電極設置工程に対応する図である。
図14に示すように、ステップS8において、分離膜10上に上部電極11を設置する。上部電極11はリチウムの膜である。上部電極11の成膜方法は分離膜10と同様の方法を用いることができ、成膜方法は特に限定されないが本実施形態では、例えば、真空蒸着法を用いて上部電極11を成膜した。
【0064】
図15はステップS9の下電極設置工程に対応する図である。
図15に示すように、ステップS9において、下部電極7上にカーボンシート8を設置する。下部電極7とカーボンシート8とは接着せずに接触していればよい。さらに、カーボンシート8上に電極複合体9を重ねて設置する。カーボンシート8と電極複合体9とは接着せずに接触していればよい。以上の工程により電池ユニット4が完成する。
【0065】
図16はステップS10のパッケージ工程に対応する図である。
図16に示すように、ステップS10において、電池ユニット4を4個重ねる。電池ユニット4を並列結合するときには、絶縁シートを電池ユニット4の間に設置し、各電池ユニット4を接続する配線を設置しておく。次に、第1絶縁部5の中央の孔に電池ユニット4を配置する。さらに、電池ユニット4の上に蓋部3を設置する。そして、蓋部3を電池ユニット4と接触させる。
【0066】
次に、蓋部3の外周及び第1絶縁部5の側面に沿って第2絶縁部6を挿入する。続いて、第2絶縁部6が挿入された蓋部3、電池ユニット4及び第1絶縁部5を容器部2の中に設置する。次に、容器部2の開放端を蓋部3側に折り曲げて硬く密着させる。これにより、各電池ユニット4は加圧されるので、下部電極7、カーボンシート8及び電極複合体9は電気的に接続する。以上の工程によりリチウム電池1が完成する。
【0067】
図17は固形の電解質のホウ素置換率Xと電極複合体のLi伝導率の関係を示すグラフである。
図17において、横軸はステップS4の電解質供給工程で設置した固形の電解質22のホウ素置換率Xを示す。ホウ素置換率XはLi
2+XC
1-XB
XO
3におけるXである。縦軸はステップS6の徐冷工程を経て完成した電極複合体9のLi伝導率を示す。Li伝導率推移線24はホウ素置換率Xに対するLi伝導率を示している。
【0068】
Li伝導率推移線24が示すように、ホウ素置換率Xが0.2より低いとき、ホウ素置換率Xに対するLi伝導率の変化が大きい。そして、ホウ素置換率Xが0.2のときに比べてLi伝導率が低い。Li伝導率が高い方がリチウム電池1の性能が良いので、ホウ素置換率Xは0.2未満に設定しない方が良い。
【0069】
同様に、ホウ素置換率Xが0.6より大きいとき、ホウ素置換率Xに対するLi伝導率の変化が大きい。そして、ホウ素置換率Xが0.6のときに比べてLi伝導率が低い。Li伝導率が高い方がリチウム電池1の性能が良いので、ホウ素置換率Xは0.6を超える数値に設定しない方が良い。従って、ホウ素置換率Xは0.2以上0.6以下の実数に設定するこが好ましい。このとき、ホウ素置換率Xが変動してもLi伝導率が高い状態を維持することができる。Li伝導率が高い電池はLi伝導率が低い電池に比べて短時間に充電することができる。そして、放電時には内部抵抗が低くなるので、電圧降下を低くすることができる。
【0070】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、Li
2+XC
1-XB
XO
3を固体電解質15にするとき溶媒を用いずに加熱して溶融して液体にしている。この為、連通孔14内に充填した固形の電解質22の溶融物が固化するとき気化する物質の量が少ないので、固形の電解質22の体積の変化を小さくできる。従って、固化した後の連通孔14における空隙率の低下を図ることができる。従って、1回の工程で溶融物を連通孔14内に充填させることができる為、生産性良く固体電解質15を活物質集合体12の連通孔14内に設置することができる。
【0071】
(2)本実施形態によれば、固形の電解質22を650度以上900度以下の範囲で加熱している。加熱温度を650度以上にするとき固形の電解質22を溶融することができる。加熱温度を900度以上にするとき固形の電解質22の組成が変わるので電解質としての性能が低下する。従って、固形の電解質22の加熱温度を上記の範囲にすることにより、電解質としての性能を低下させずに固形の電解質22の固形物を溶融させることができる。
【0072】
(3)本実施形態によれば、Li
2+XC
1-XB
XO
3におけるXの範囲は0.2以上0.6以下の実数である。このとき、ホウ素置換率Xが変動しても固体電解質のLi伝導率を安定して高い状態を維持することができる。
【0073】
(4)本実施形態によれば、電池ユニット4では電極複合体9が下部電極7と上部電極11とに挟まれている。そして、電極複合体9は生産性良く製造できる電極複合体9であるので、電池ユニット4は生産性良く製造できる電極複合体9を備えた電池とすることができる。
【0074】
(5)本実施形態によれば、リチウム電池1は電池ユニット4を4個備えている。そして、電池ユニット4は生産性良く製造できる電極複合体9を備えている。従って、本実施形態のリチウム電池1は生産性良く製造できる電極複合体9を備えた電池とすることができる。
【0075】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した電極複合体の一実施形態について
図18の電極複合体の構造を示す模式側断面図を用いて説明する。この実施形態が第1の実施形態と異なるところは、
図13に示した分離膜10が固体電解質15と同じ材質であり、連続している点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0076】
すなわち、本実施形態では、
図18に示すように、電極複合体としての分離膜付電極複合体27は第1の層としての電極複合体9の層及び第2の層としての分離膜28とを有し、電極複合体9における固体電解質15と分離膜28における固体電解質とは連続している。このように形成された固体電解質15と分離膜28は連続した結晶構造を有し、好ましいLiイオンの伝導度を有する分離膜付電極複合体27とすることができる。
【0077】
前記第1の実施形態では、ステップS3〜ステップS5で活物質粒子13の連通孔14に固体電解質15を充填した。次に、ステップS7で分離膜10を設置した。ステップS4において、活物質集合体12上に設置する固形の電解質22の量を、固化し結晶化した後に活物質集合体12上に分離膜10を形成することができる量に設定する。これにより、ステップS6の徐冷工程では活物質集合体12上に分離膜28が形成される。本実施形態ではステップS7を省略され、ステップS6の次にステップS8が行われる。従って、少ない工程で分離膜28が設置された電極複合体9を製造することができる。尚、本実施形態でもステップS1〜ステップS6が電極複合体の製造方法となっている。
【0078】
電極複合体9における活物質集合体12に固体電解質15の材料を充填して、続けて、電極複合体9の上に固形の電解質22を設置している。この方法では、電極複合体9と分離膜28とを続けて設置することができる。従って、分離膜付電極複合体27は生産性良く電極複合体9及び分離膜28を製造できる構造を有する分離膜付電極複合体27とすることができる。
【0079】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により種々の変更や改良を加えることも可能である。
(変形例1)
前記実施形態では、活物質円板21はグリーンシート17から形成した。活物質円板21は成形型に材料を投入して押圧して成形しても良い。
【0080】
(変形例2)
前記実施形態では、ステップS5の充填工程において電気炉を用いて固形の電解質22を加熱した。固形の電解質22を他の方法で加熱しても良い。例えば、レーザー光線、高周波電磁波を照射してもよい。他にも固形の電解質22を溶融して活物質集合体12に滴下しても良い。
【0081】
(変形例3)
前記実施形態では、活物質粒子13の連通孔14に固体電解質15を充填したものを電極複合体9とした。さらに、分離膜10を設置した状態を
図13に示す電極複合体としての分離膜付電極複合体25としても良い。
【0082】
(変形例4)
前記実施形態ではリチウム電池1の電池ユニット4では電極複合体9上に分離膜10が設置されていた。変形例3に示す分離膜付電極複合体25を上部電極11と下部電極7とで挟んだ電池ユニットにしてもよい。さらに、この電池ユニットを用いてリチウム電池にしても良い。さらに、生産性良く製造できるリチウム電池にすることができる。