特許第6597210号(P6597210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597210
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/22 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   B66B23/22 B
   B66B23/22 A
【請求項の数】7
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2015-221675(P2015-221675)
(22)【出願日】2015年11月11日
(65)【公開番号】特開2017-88336(P2017-88336A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100176016
【弁理士】
【氏名又は名称】森 優
(74)【代理人】
【識別番号】100185454
【弁理士】
【氏名又は名称】三雲 悟志
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(74)【代理人】
【識別番号】100199831
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】江▲崎▼ 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】多田 正彰
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 雅也
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−189540(JP,A)
【文献】 特開2014−177311(JP,A)
【文献】 特開2006−347650(JP,A)
【文献】 特開2001−261273(JP,A)
【文献】 特開平10−316347(JP,A)
【文献】 特開平10−095584(JP,A)
【文献】 実公昭46−28368(JP,Y1)
【文献】 米国特許第04646907(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00−31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環走行して乗客を搬送する無端搬送体の走行路に沿って立設された欄干パネルと、当該欄干パネルをその下端部でトラスに固定する固定器具とを有する乗客コンベアであって、
前記固定器具は、
前記欄干パネルを固定保持した状態で当該欄干パネルの前記下端部の前記走行路とは反対側の主面部分と対向する受け面を含み、前記トラスに固定された固定ブラケットと、
前記欄干パネルを固定保持した状態で、当該欄干パネルの前記下端部を介して前記受け面と対向し当該下端部を前記受け面に向かって圧接する圧接部材が取り付けられた対向部を含む可動ブラケットと、
を有し、
前記固定ブラケットと前記可動ブラケットとが、前記欄干パネルの下端縁よりも下方において当該下端縁と平行に設けられたシャフトにより、当該可動ブラケットが当該固定ブラケットに対しその軸心を中心として回動自在、かつ、前記軸心の方向における第1の位置と第2の位置との間でスライド自在に連結されていて、
前記欄干パネルを固定保持した状態において、前記可動ブラケットは前記第1の位置に在って、その一部が前記軸心と直交する仮想平面内で前記固定ブラケットの一部に当接して、前記対向部が前記受け面から離間する向きの、当該可動ブラケットの回動が規制され、
前記欄干パネルの固定が解除されて、前記可動ブラケットが前記第1の位置から前記第2の位置までスライドされると前記当接の状態が解消されて、当該可動ブラケットは前記対向部が前記受け面から離間する向きに回動して、前記欄干パネルの前記下端部の前記走行路側前方が開放されるように、前記可動ブラケットが前記固定ブラケットに取り付けられていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記固定ブラケットが前記欄干パネルの下端面を支持する支持部を含むことを特徴とする請求項に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
下方に開口された溝部を含み、当該溝部が前記欄干パネルの上端部に嵌め込まれた状態で、当該欄干パネルに固定された被固定部材を有し、
前記被固定部材の前記欄干パネルに対する固定が解除された状態において、当該被固定部材が前記欄干パネルの上端部に当該欄干パネルの厚み方向に遊びを持って嵌った状態となることを特徴とする請求項1または2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
くさび部材と、
締付ねじと、
を有し、
前記被固定部材の前記溝部は、前記欄干パネルの第1の主面に平行な第1の壁面と前記欄干パネルの第2の主面との間隔が下方程広くなるよう当該第2の主面に対し傾斜した第2の壁面とを含み、当該被固定部材には、雌ねじが上下方向に形成されており、
前記くさび部材は、前記第2の主面と前記第2の壁面との間に設けられ、当該第2の主面と対向する押圧面と当該第2の壁面に沿った斜面とを含み、上下方向に貫通するねじ挿通孔が開設されていて、
前記被固定部材には、前記ねじ挿通孔に対応する雌ねじが上下方向に形成されていて、
前記締付ねじは、前記ねじ挿通孔に下方から挿入され、前記雌ねじに螺合しており、当該締付ねじの締め付けにより、前記くさび部材の前記斜面が前記第2の壁面に案内されて、当該くさび部材が前記第2の主面に向かって押圧され、前記押圧面と前記第1の壁面とで、前記欄干パネルの上端部が締め付けられて、前記被固定部材が当該欄干パネルに固定されていることを特徴とする請求項に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
循環走行して乗客を搬送する無端搬送体の走行路に沿って立設された欄干パネルと、当該欄干パネルをその下端部でトラスに固定する固定器具とを有する乗客コンベアであって、
前記固定器具は、
前記欄干パネルを固定保持した状態で当該欄干パネルの前記下端部の前記走行路とは反対側の主面部分と対向する受け面を含み、前記トラスに固定された固定ブラケットと、
前記欄干パネルを固定保持した状態で、当該欄干パネルの前記下端部を介して前記受け面と対向し当該下端部を前記受け面に向かって圧接する圧接部材が取り付けられた対向部と前記欄干パネルの下端面を支持する支持部とを含む可動ブラケットと、
を有し、
当該可動ブラケットは、前記対向部が前記受け面と対向する第1の姿勢から、当該対向部が前記圧接部材と共に当該欄干パネルの下方へ揺動して、前記下端部の前記走行路側前方を開放すると共に、前記支持部が前記下端面から下方へ離間して前記欄干パネルの固定が解除された第2の姿勢となるよう、前記固定ブラケットに軸支されて取り付けられていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項6】
下方に開口された溝部を含み、当該溝部が前記欄干パネルの上端部に嵌め込まれた状態で、当該欄干パネルに固定された被固定部材を有し、
前記被固定部材の前記欄干パネルに対する固定が解除された状態において、当該被固定部材が前記欄干パネルの上端部に当該欄干パネルの厚み方向に遊びを持って嵌った状態となることを特徴とする請求項に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
くさび部材と、
締付ねじと、
を有し、
前記被固定部材の前記溝部は、前記欄干パネルの第1の主面に平行な第1の壁面と前記欄干パネルの第2の主面との間隔が下方程広くなるよう当該第2の主面に対し傾斜した第2の壁面とを含み、当該被固定部材には、雌ねじが上下方向に形成されており、
前記くさび部材は、前記第2の主面と前記第2の壁面との間に設けられ、当該第2の主面と対向する押圧面と当該第2の壁面に沿った斜面とを含み、上下方向に貫通するねじ挿通孔が開設されていて、
前記被固定部材には、前記ねじ挿通孔に対応する雌ねじが上下方向に形成されていて、
前記締付ねじは、前記ねじ挿通孔に下方から挿入され、前記雌ねじに螺合しており、当該締付ねじの締め付けにより、前記くさび部材の前記斜面が前記第2の壁面に案内されて、当該くさび部材が前記第2の主面に向かって押圧され、前記押圧面と前記第1の壁面とで、前記欄干パネルの上端部が締め付けられて、前記被固定部材が当該欄干パネルに固定されていることを特徴とする請求項6に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアに関し、特に、欄干パネルの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベア、例えば、エスカレータでは、環状に連結されて循環走行する踏段の両側に、踏段の走行方向に沿って列設されてなる複数の欄干パネルを構成部材とする欄干が設置されている。この欄干パネルには、近年においてデザイン性が重視される中、ガラス製のものが多く用いられている。ガラス製の欄干パネルは、強化板ガラスの片面に飛散防止フィルムが貼着されてなるものである。
【0003】
欄干パネルは、その下端部が、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されているようにトラスに固定されて設置されている。特許文献1,2に記載されたエスカレータは、横断面が「コ」字状をした溝を有し、トラスに固定されたパネル保持部材を有している。当該パネル保持部材は、前記溝の長手方向が、踏段の前記走行方向と平行になるように、前記トラスに固定されている。
【0004】
前記溝の両側壁の内、前記踏段に近い側の側壁(以下、「第1側壁」と言う。)には、その厚み方向に雌ネジが形成されている。当該雌ネジには、前記溝の外側からボルトが螺入されていて、当該ボルトの先端には、挟持片があてがわれている。
前記溝の両側壁の内、前記踏段から遠い側の側壁(以下、「第2側壁」と言う。)と前記挟持片との間に、前記欄干パネルの下端部が、当該溝の上方から挿入された状態で、前記ボルトを締め付けることにより、前記下端部が第2側壁と前記挟持片とで挟持され、欄干パネルは直立の姿勢で、前記トラスに取り付けられている。
【0005】
このようにして取り付けられた複数枚の欄干パネルの上端部には、例えば、特許文献3や特許文献4に記載されているように、移動手摺を案内する複数本のガイドレールが固定されている。なお、欄干パネルの枚数とその上に存するガイドレールの本数とは、必ずしも同数とは限らず、よって、欄干パネルとガイドレールとは、一対一の対応関係になっているとは限らない。
【0006】
特許文献3,4に記載されたガイドレールには、アルミの押出形材が用いられている。 当該ガイドレールの上端部には、幅方向両側に張り出した一対のフランジ部が形成されている。両フランジ部の間には、上方に開口し長さ方向に沿った上溝が形成されている。前記上溝の下には、下方に開口し同じく長さ方向に沿った下溝が形成されている。また、前記上溝の底面と前記下溝の天井面との間を貫通するねじ挿通孔が形成されている。
【0007】
前記下溝の一方の側面は鉛直面に形成され、もう一方の側面は下方に行くほど前記鉛直面から遠ざかる斜面に形成されている。前記下溝内には、台形の横断面を有するくさび部材が設けられている。当該くさび部材において前記斜面と対向する側の側面は当該斜面と平行な面に形成されており、前記斜面とは反対側の側面は前記鉛直面と平行な面に形成されている。前記くさび部材には、上下に貫通する雌ねじが形成されている。当該雌ねじには、前記ねじ挿通孔に前記上溝側から挿入されたねじが螺合している。
【0008】
前記くさび部材と前記鉛直面の間に前記欄干パネルの上端部が嵌められ、前記ねじが締め込まれることによって、前記くさび部材が引き上げられる。その結果、くさび効果により、当該くさび部材と前記鉛直面とで当該欄干パネルの前記上端部の側面が強固に把持されて、前記ガイドレールが欄干パネルに固定される。欄干パネルに固定されたガイドレールには、前記両フランジ部の間の前記上溝を塞ぐように、当該両フランジ部に移動手摺が取り付けられている。
【0009】
また、欄干パネルに、照明器具等の付属品が取り付けられる場合には、欄干パネルの上端部には、前記付属品が取り付けられた取付部材が固定されている(例えば、特許文献2の図6を参照)。
例えば、当該取付部材にも、アルミの押出形材が用いられる。取付部材の固定構造は、上記パネル保持部材の固定構造と類似している。すなわち、当該取付部材は、横断面が「コ」字状をし、下方に開口した溝に欄干パネルの上端部が嵌められている。当該溝の一方の側壁には、厚み方向に貫通する雌ねじが形成されており、当該雌ねじには、溝の外側からボルトが螺入されている。当該ボルトの先端には、挟持片があてがわれている。そして、前記ボルトを締め込むことにより、挟持片ともう一方の側壁とで欄干パネルの上端部が強固に挟持されて、取付部材が欄干パネルに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−173711号公報
【特許文献2】特開2007−62867号公報
【特許文献3】特開平5−162964号公報
【特許文献4】特開平5−201677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記した欄干パネルは、強化板ガラスが破損した場合や飛散防止フィルムが経年劣化した場合等には、新しいものとの交換がなされる。この交換作業は、エスカレータの運転を停止して行われるが、例えば、商業施設に設置されているエスカレータにあって、営業中に強化板ガラスが破損した場合には、特に速やかな交換が要求される。
当該交換に際し、前記欄干パネルを取り外す場合、先ず、欄干パネルの上端部に固定されている前記ガイドレールや前記取付部材の固定を解除する必要がある。ガイドレールは、前記くさび部材に螺合されているねじを弛めることで固定が解除され、取付部材は、前記溝の一側壁に形成された雌ねじに螺合されているボルトを弛めることで固定が解除される。固定が解除された状態で、前記ガイドレールや前記取付部材は、欄干パネルの上端部に当該欄干パネルの厚み方向に遊びを持って嵌った状態となる。
【0012】
しかし、特許文献1,2に記載の従来のエスカレータにおける欄干パネル下端部の取付構造では、当該欄干パネルは、最終的にその下端部を前記保持部材の上方へ抜き出して取り外す必要があるため、交換対象となる欄干パネルの上端部に嵌っている前記ガイドレールまたは前記取付部材を当該欄干パネルから上方へ抜き取る作業が必要となる。
このため、欄干パネルの交換作業に相当な時間を要するものとなっている。
【0013】
なお、上記した課題は、ガラス製の欄干パネルを有するエスカレータに限らず、ガラス以外の材質で構成された欄干パネルを有するエスカレータにも共通する。また、環状に連結された複数の踏段からなる無端搬送体によって乗客を搬送するエスカレータに限らず、他の形式の無端搬送体、例えば、ゴムベルト式の無端搬送体を有する乗客コンベアである動く歩道にも共通するものである。
本発明は、上記した課題に鑑み、上記従来の乗客コンベアよりも欄干パネルの交換に要する時間を可能な限り短縮できる乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明に係る乗客コンベアは、循環走行して乗客を搬送する無端搬送体の走行路に沿って立設された欄干パネルと、当該欄干パネルをその下端部でトラスに固定する固定器具とを有する乗客コンベアであって、前記固定器具は、前記欄干パネルを固定保持した状態で当該欄干パネルの前記下端部の前記走行路とは反対側の主面部分と対向する受け面を含み、前記トラスに固定された固定ブラケットと、前記欄干パネルを固定保持した状態で、当該欄干パネルの前記下端部を介して前記受け面と対向し当該下端部を前記受け面に向かって圧接する圧接部材が取り付けられた対向部を含む可動ブラケットと、を有し、前記欄干パネルの固定を解除した状態では、当該欄干パネルにおける前記下端部の前記走行路側前方が開放されるように、前記可動ブラケットが前記固定ブラケットに取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
また、前記固定ブラケットと前記可動ブラケットとが、前記欄干パネルの下端縁よりも下方において当該下端縁と平行に設けられたシャフトにより、当該可動ブラケットが当該固定ブラケットに対しその軸心を中心として回動自在、かつ、前記軸心の方向における第1の位置と第2の位置との間でスライド自在に連結されていて、前記欄干パネルを固定保持した状態において、前記可動ブラケットは前記第1の位置に在って、その一部が前記軸心と直交する仮想平面内で前記固定ブラケットの一部に当接して、前記対向部が前記受け面から離間する向きの、当該可動ブラケットの回動が規制され、前記欄干パネルの固定が解除されて、前記可動ブラケットが前記第1の位置から前記第2の位置までスライドされると前記当接の状態が解消されて、当該可動ブラケットは前記対向部が前記受け面から離間する向きに回動して、前記欄干パネルの前記下端部の前記走行路側前方が開放されるように、前記可動ブラケットが前記固定ブラケットに取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
あるいは、前記可動ブラケットは、前記固定ブラケットに着脱自在に取り付けられていて、当該可動ブラケットが前記固定ブラケットから脱着されることにより、前記欄干パネルにおける前記下端部の前記走行路側前方が開放されることを特徴とする。
【0017】
さらに、前記固定ブラケットが前記欄干パネルの下端面を支持する支持部を含むことを特徴とする。
【0018】
あるいは、また、前記欄干パネルを固定保持した状態で、前記可動ブラケットは、前記欄干パネルの下端面を支持する支持部を含み、当該可動ブラケットは、前記対向部が前記受け面と対向する第1の姿勢から、当該対向部が前記圧接部材と共に当該欄干パネルの下方へ揺動して、前記下端部の前記走行路側前方を開放すると共に、前記支持部が前記下端面から下方へ離間して前記欄干パネルの固定が解除された第2の姿勢となるよう、前記固定ブラケットに軸支されて取り付けられていることを特徴とする。
【0019】
さらに、下方に開口された溝部を含み、当該溝部が前記欄干パネルの上端部に嵌め込まれた状態で、当該欄干パネルに固定された被固定部材を有し、前記被固定部材の前記欄干パネルに対する固定が解除された状態において、当該被固定部材が前記欄干パネルの上端部に当該欄干パネルの厚み方向に遊びを持って嵌った状態となることを特徴とする。
【0020】
この場合に、くさび部材と、締付ねじと、を有し、前記被固定部材の前記溝部は、前記欄干パネルの第1の主面に平行な第1の壁面と前記欄干パネルの第2の主面との間隔が下方程広くなるよう当該第2の主面に対し傾斜した第2の壁面とを含み、当該被固定部材には、雌ねじが上下方向に形成されており、前記くさび部材は、前記第2の主面と前記第2の壁面との間に設けられ、当該第2の主面と対向する押圧面と当該第2の壁面に沿った斜面とを含み、上下方向に貫通するねじ挿通孔が開設されていて、前記被固定部材には、前記ねじ挿通孔に対応する雌ねじが上下方向に形成されていて、前記締付ねじは、前記ねじ挿通孔に下方から挿入され、前記雌ねじに螺合しており、当該締付ねじの締め付けにより、前記くさび部材の前記斜面が前記第2の壁面に案内されて、当該くさび部材が前記第2の主面に向かって押圧され、前記押圧面と前記第1の壁面とで、前記欄干パネルの上端部が締め付けられて、前記被固定部材が当該欄干パネルに固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記の構成からなる乗客コンベアは、欄干パネルを固定保持した状態で、当該欄干パネルの下端部を介して固定ブラケットの受け面と対向し前記下端部を前記受け面に向かって圧接する圧接部材が取り付けられた対向部を含む可動ブラケットが、前記欄干パネルの固定を解除した状態では、当該欄干パネルにおける前記下端部の走行路側前方が開放されるように、前記固定ブラケットに取り付けられている。これにより、欄干パネル上端部に設けられた被固定部材であるガイドレールや取付部材の当該欄干パネルに対する固定が解除されて、欄干パネルの上端部に前記被固定部材が当該欄干パネルの厚み方向に遊びを持って嵌った状態となっていれば、欄干パネルの下端部を前記走行路側に振って、下方へ移動させることにより、当該欄干パネルを前記被固定物および前記固定器具から取り外すことができる。
よって、欄干パネルの交換のために、交換対象となる欄干パネルの上端部に嵌っている被固定部材であるガイドレールまたは取付部材を当該欄干パネルから上方へ抜き取る作業を余儀なくされる固定器具を備えた上記従来の乗客コンベア(エスカレータ)と比較して、欄干パネルの交換に要する時間を可能な限り短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態1に係るエスカレータの概略構成を示す斜視図である。
図2】上記エスカレータを構成する欄干の概略構成を示す断面図である。
図3】上記欄干を構成する欄干パネルを固定保持する固定器具の、(a)は平面図を、(b)は正面図を、(c)は前記平面図に対する右側面図を、(d)は固定器具の構成部材であるシャフトの先端部分の拡大斜視図をそれぞれ示している。
図4】上記欄干パネルの交換作業途中における、上記固定器具の一状態を示す図である。
図5】上記欄干パネルの交換作業途中における、上記固定器具の一状態を示す図である。
図6】実施形態2に係るエスカレータを構成する欄干の概略構成を示す断面図である。
図7】実施形態2における欄干パネルの上端部に設けられた取付部材の、(a)は、前記上端部に固定された状態を、(b)は固定が解除された状態をそれぞれ示す断面図である。
図8】実施形態2での、欄干パネルの交換作業途中における、当該欄干パネルを固定保持する固定器具の一状態を示す図である。
図9】(a)は上記取付部材を上記欄干パネルに固定するくさび部材に引上げボルトが螺合した状態を、(b)は当該引上げボルトによって前記取付部材の固定が解除された状態をそれぞれ示す断面図である。
図10】実施形態3に係るエスカレータを構成する欄干の概略構成を示す断面図である。
図11】(a)は、図10におけるH部の拡大断面図であり、(b)は紙面に垂直方向における別の位置で切断し、H部と同じ向きに見た拡大断面図である。
図12】実施形態3における、(a)はくさび部材の正面図、(b)は同下面図、(c)は同左側面図、(d)はI-I線断面図、(e)はII-II線断面図、(f)はIII-III線断面図をそれぞれ示している。
図13】取付部材において、上記くさび部材が設けられる箇所の、(a)は上から見た図を、(b)は図11(a)におけるJ-J線断面図を、(c)はVI-VI線断面図を、(d)はV-V線断面図を、(e)はIV-IV線断面図をそれぞれ示している。
図14】欄干パネルに対する取付部材の固定が解除された状態における、(a)は図11(a)と同じ位置で切断した拡大断面図であり、(b)は図11(b)と同じ位置で切断した拡大断面図である。
図15】欄干パネルに対する取付部材の固定を解除する方法を説明するための図である。
図16】実施形態3における固定器具において、(a)は欄干パネルを固定保持した状態における斜視図であり、(b)は(a)に示す状態から可動ブラケットを固定ブラケットに対してスライドさせた状態を示す斜視図である。
図17】実施形態3における固定器具およびその近傍の拡大図である。
図18】実施形態3における固定器具において、欄干パネルの固定が解除された状態を示す斜視図である。
図19】実施形態4における固定器具において、(a)は欄干パネルを固定保持した状態における斜視図であり、(b)は欄干パネルの固定が解除された状態を示す斜視図である。
図20】実施形態5に係るエスカレータにおける欄干上端部を示す断面図である。
図21】(a)は、実施形態6における固定器具の一部の概略構成を示す斜視図であり、(b)は、当該固定器具の構成部材である可動ブラケットの概略構成を示す斜視図である。
図22】(a)は、実施形態6における固定器具において、固定が解除された状態を示す斜視図であり、(b)は、実施形態6の変形例に係る固定器具の構成部材である固定ブラケットの概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る乗客コンベアの実施形態について、エスカレータを例にとり、図面を参照しながら説明する。なお、図2図4図10図17においては、煩雑さを避けるため、断面であることを示すハッチングは省略している。
<実施形態1>
図1に示すように、実施形態1に係るエスカレータ10は、環状に連結されて循環走行し、乗客を搬送する無端搬送体である複数の踏段12を有する。踏段12の走行路RWの両側には、欄干14,16が設置されている。欄干14,16の各々は、走行路RWに沿って立設された複数の欄干パネル18を有する(図1において、欄干パネルは、片側の欄干14を構成する欄干パネル18のみに符号を付している。)。欄干パネル18は、例えば、ガラス製であり、強化板ガラスの片面に飛散防止フィルムが貼着されてなるものである。
【0024】
欄干パネル18の外周には、ガイドレール(図1では不図示)に案内され、踏段12と同じ向きに同じ速度で循環走行する無端ベルト状をした移動手摺20,22がそれぞれ設けられている。
エスカレータ10は、例えば、建築物内の階下のフロアDSと階上のフロアUSとの間に架け渡されて設置されている。エスカレータ10は、踏段12の走行の向きが切り替えられて、昇り用あるいは下り用として用いられ、踏段12に乗った乗客が、階下のフロアDSから階上のフロアUS、あるいは階上のフロアUSから階下のフロアDSへと搬送される。
エスカレータ10が昇り用として用いられる際に、踏段12によって搬送される乗客の進行方向に向かって右側となる移動手摺22とこれに近接して立体交差する階下の天井DC部分(交差部)には、法令で規定された保護板(固定保護板)24が設置されている。保護板24は、乗客の身体の一部が移動手摺22と天井DCとの間に挟みこまれてしまうといった事故を未然に防止する目的で設置されている。
【0025】
次に、欄干14,16について説明する。欄干14と欄干16とは、走行路RWを挟んで対称的に設置されていて、基本的には、同じ構成を有している。よって、欄干14を代表に説明し、欄干16についての説明は省略することとする。
図2に示すように、欄干14を構成する欄干パネル18の各々は、その下端部がそれぞれ、走行路RWに沿って設置された複数台(例えば、2台)の固定器具26よってトラス28に固定されている。固定器具26は、いずれも同様の構成なので、一の固定器具26について説明する。
【0026】
固定器具26は固定ブラケット30と可動ブラケット32とを有し、固定ブラケット30が締結部材であるボルト34B、ナット34Nによってトラス28に固定されて、固定器具26はトラス28に取り付けられている。なお、固定ブラケット30は、2組のボルト34B・ナット34Nでトラス28に固定されているのであるが、図2には、一方のボルト34B・ナット34Nのみが現れている。
固定ブラケット30には、ボルト・ナット36によって、外デッキ40が取り付けられている。また、踏段12と僅かな隙間をあけてスカートガード42が立設されており、スカートガード42の上端部と欄干パネル18の下部との間には、当該下部や固定器具26を覆う内デッキが設けられているのであるが、当該内デッキの図示については省略する。なお、内デッキ(不図示)は、例えば、ステンレス鋼の板体からなり、走行路RWに沿って複数枚が連設されている。
【0027】
続いて、固定器具26の詳細について、図3を参照しながら説明する。固定器具26は前述の通り、固定ブラケット30と可動ブラケット32とを有する。
固定ブラケット30は、トラス28(図2)に固定する際にボルト34B(図2)が挿通されるボルト挿通孔44を有する。固定ブラケット30には、トラス28に固定された状態で、垂直面をなす受け面46が形成されている。受け面46は、固定器具26で後述のように欄干パネル18を固定保持した状態(図2)で欄干パネル18の下端部の走行路RWとは反対側の主面部分と対向する面である。
【0028】
可動ブラケット32は、固定ブラケット30に対し、シャフト48によって、後述するように揺動可能に軸支されている。シャフト48は、円柱形の丸棒の両端に、いわゆる二面取り加工を施したものである。この二面取り加工により、シャフト48の両端(図3(d)では、一端のみを図示)には、平行な2面を有する板状部48Aが形成されている。シャフト48は、板状部48A以外の円柱部48Bが、図3(a)において、固定ブラケット30を上下方向に貫通する孔(不図示)に挿入されており、板状部48Aのみが、固定ブラケット30の両側面30Aから突出している。なお、シャフト48の円柱部48Bと固定ブラケット30に形成された前記孔(不図示)の各々には、対応するキー溝(不図示)が形成されており、シャフト48は、当該孔(不図示)に対し、円柱部48Bが不図示の平行キーによって、回転不能に取り付けられている。
【0029】
可動ブラケット32は、図3(a)における上下方向両端部において、左方向に延びる一対のアーム部50を有している。アーム部50各々の先端部には、前記上下方向に貫通するだるま穴52(図3(b)に、一方のみを図示)が開設されている。だるま穴52は、円形部52Aとこれに連通した長穴部52Bとからなる。長穴部52Bの幅は、シャフト48の板状部48Aがガタツクことなく係合する大きさとなっている。また、円形部52Aの直径は、シャフト48の円柱部48Bよりも僅かに大きい寸法となっている。
そして、両だるま穴52にシャフト48の板状部48Aが挿入されて、可動ブラケット32が固定ブラケット30に取り付けられている。板状部48Aがだるま穴52の長穴部52Bに係合している図3(b)に示す状態では、可動ブラケット32は、固定ブラケット30に対し、シャフト48の軸心周りに揺動不能となる。一方、可動ブラケット32が、矢印Aの向きに押し込まれて、だるま穴52の円形部52Aに板状部48Aが進入すると、可動ブラケット32は、シャフト48の軸心周りに揺動可能となる。
【0030】
ここで、板状部48Aが長穴部52Bに(その奥まで進入して)、係合している状態を、可動ブラケット32が固定ブラケット30に対し「固定状態」にあると言い、板状部48Aが長穴部52Bから外れて円形部52Aに存する状態を、可動ブラケット32が固定ブラケット30に対し「可動状態」にあると言うこととする。
可動ブラケット32は、固定状態で、欄干パネル18(図2)の下端面を後述するクッションパッド76,78を介して支持することとなる支持部54を有する。支持部54は、略長方形の板状をしている。上述した両アーム部50は、図3(a)において、支持部54の上下方向両端部から左方向に延出されている。
【0031】
可動ブラケット32は、支持部54において両アーム部50とは反対側の端部から垂直に立ち上がり、固定状態で、固定ブラケット30の受け面46と対向する対向部56,58を有する。対向部56,58の各々には、固定ブラケット30に対し可動ブラケット32が固定状態で、固定ブラケットの受け面46に垂直な方向に形成された2つの雌ねじ(合計で4つ、いずれも不図示)がそれぞれ形成されており、当該雌ねじの各々には、圧接部材である圧接ボルト60,62,64,66が螺入されている。また、圧接ボルト60,62,64,66の各々には、弛み止めナット68,70,72,74がそれぞれ螺合されている。
可動ブラケット32の支持部54の上面には、平板状をしたゴムなどの弾性部材からなるクッション部材であるクッションパッド76,78が貼着されている。
【0032】
図2に戻り、欄干パネル18の下端部と固定ブラケット30の受け面46との間には、長方形状をしたゴムなどからなる弾性部材であるクッションシート80が挟まれている。クッションシート80は、主面が受け面46と同じ形状をしており、受け面46に重ねた状態で、受け面46に貼着されている。
欄干パネル18の下端部と圧接ボルト60,62,64,66(図2には、2本のみが現れている)の先端と間には、圧接板82が挟まれている。圧接板82は、長方形をした鋼板と同じ長方形をしたゴムシートとが貼り合わされてなる2層構造をした板体(図には、当該2層構造を表していない)であり、欄干パネル18側にゴムシートがあてがわれる形で、挟みこまれている。
【0033】
欄干パネル18の下端面の一部は、クッションパッド76,78(図2では、クッションパッド76のみが現れている)上面と当接していて、前記下端面はクッションパッド76,78を介して可動ブラケット32の支持部54に支持されている。なお、クッションパッド76,78は、必須の構成部材ではなく、無くても構わない。その場合には、欄干パネル18は、その下端面が支持部54に当接して、支持部54に支持されることとなる。あるいは、クッションパッド76,78に代え、欄干パネル18の構成部材として、前記強化板ガラスの下端面に、当該強化板ガラスの厚みと同程度の幅を有するクッションテープ(不図示)を貼着しても構わない。
図2に示す状態で、受け面46と対向する対向部56,58の雌ねじ(不図示)に螺入された(取り付けられた)圧接ボルト60,62,64,66は、強く締め付けられていて、その先端が圧接板82を介して欄干パネル18の下端部を受け面46に向かって圧接することにより、欄干パネル18は、その下端部でトラス28に固定保持されている。そして、圧接ボルト60,62,64,66の弛みを防止するため、弛み止めナット68,70,72,74が締め付けられている。
【0034】
固定保持された欄干パネル18の上端部には、ゴム製のグリップ部材84を介して、ガイドレール86が上方から下方に向かって嵌め込まれて取り付けられている。ガイドレール86は、例えば、ステンレス鋼板を板金加工して作製されたものである。ガイドレール86には、移動手摺20が巻き掛けられており、移動手摺20は、ガイドレール86に案内されて、循環走行する。ガイドレール86は、走行路RWに沿って立設された複数の欄干パネル18の上端部に沿って複数本が連設されており、隣接するガイドレール86の端部同士が、ボルト・ナットその他の連結部材(不図示)によって連結されている。なお、欄干パネル18の枚数とその上に存するガイドレール86の本数とは、必ずしも同数とは限らず、よって、欄干パネル18とガイドレール86とは、一対一の対応関係になっているとは限らない。
【0035】
上記の構成からなる欄干14において、欄干パネル18が破損した場合等における交換手順について、以下に説明する。
(i)まず、破損した欄干パネル18下部に対応する(対向する)、一又は複数枚の内デッキ(不図示)を取り外す。
(ii)次に、弛み止めナット68,70,72,74(図2図3)を弛めた後、圧接ボルト60,62,64,66(図2図3)を弛め、さらに、圧接ボルト60,...,66を、その先端の各々が対向部56,58(図2図3)内に没入するまで、走行路RW側に螺進させて後退させる。
【0036】
(iii)そして、圧接板82を取り除き、可動ブラケット32を、図2の矢印Aの向きに押し込み、シャフト48の板状部48A(図3(d))がだるま穴52(図3)の円形部52Aに位置するようにする。すなわち、可動ブラケット32を固定ブラケット30に対し、「固定状態」から「可動状態」にする。
(i)〜(iii)の作業が終了した状態を図4に示す。
(iv)可動状態にある可動ブラケット32を、シャフト48を中心に矢印Cの向き(時計方向)に揺動させる。すなわち、可動ブラケット32を、シャフト48を中心に欄干パネル18の下方へ揺動させる。
可動ブラケット32の揺動後の固定器具26の状態を図5に示す。
(v)可動ブラケット32を上記のように揺動させることにより、可動ブラケット32は、対向部56,58(図3)が受け面46と対向する姿勢(図2図4)から、対向部56,58が圧接ボルト60,...,66と共に欄干パネル18の下方へ揺動して、欄干パネル18の下端部の走行路RW側前方(矢印Fで示す方向)を開放すると共に、支持部54が欄干パネル18下端面から下方へ離間して欄干パネル18の固定が解除された姿勢(図5)となる。
【0037】
(vi)図5に示す状態から、欄干パネル18を矢印Dの向き、すなわち、下方へ下げて、その上端部を当該上端部が嵌め込まれているガイドレール86から引き抜き、下部を矢印Sの向きに振ることにより、欄干パネル18を走行路RW側に取り外すことができる。
欄干パネル18の上端部が引き抜かれたガイドレール86は、上述した通り、これに隣接するガイドレールに前記連結部材(不図示)によって連結されており(連結されたままの状態であり)、当該隣接するガイドレールは対応する欄干パネルに支えられている。よって、欄干パネル18の上端部が引き抜かれた当該ガイドレール86は、脱落することはない。
【0038】
破損等した欄干パネル18の代わりとなる新たな欄干パネル18は、上記手順とは逆の手順で取り付けられる。
すなわち、図5に示す矢印Sとは反対向きに欄干パネル18の下部を振って、ガイドレール86の直下に欄干パネル18をもって来て、そのまま、上に持ち上げ、上端部をガイドレール86に嵌めこむ(挿入する)。可動ブラケット32を、シャフト48を中心に反時計方向に、対向部56,58が受け面46と対向する位置まで揺動させる。可動ブラケット32を、図2に示す矢印Aとは反対向きに走行路RW側へ引っ張り、だるま穴52の長穴部52Bにシャフト48の板状部48Aを嵌め込む。欄干パネル18の下端部と可動ブラケット32の対向部56,58との間に圧接板82をセットし、圧接ボルト60,...,66を締め込み、圧接板82と受け面46(クッションシート80)とで欄干パネル18の下端部を挟持させる。弛み止めナット68,...,74を締め付けて、欄干パネル18のトラス28への取り付けが完了する。後は、取り外していた内デッキ(不図示)を取り付けて、欄干パネル18の交換作業が完了する。
【0039】
以上、実施形態1に係るエスカレータ10によれば、交換対象となる欄干パネル18の上端部が嵌め込まれているガイドレール(以下、「対応ガイドレール」という。)を当該ガイドレールが連結されている他のガイドレールから取り外す(分解する)ことなく、欄干パネル18を交換することができる。すなわち、対応ガイドレールに隣接する他のガイドレールとの連結を解除した後、当該対応ガイドレールを欄干パネル18から上方へ抜き取る作業を要することなく欄干パネル18を交換することができる。これにより、対応ガイドレールの、欄干パネル上端部から上方への抜取作業を余儀なくされる従来のエスカレータよりも欄干パネルの交換に要する時間を可能な限り短縮できる。
【0040】
<実施形態2>
実施形態2に係るエスカレータ100では、欄干パネル18の上部に、移動手摺20に加えて、付属物である照明器具を設ける構成としている。実施形態2のエスカレータ100は、実施形態1のエスカレータ10とは、欄干パネル18のトラス28への固定構造は、基本的に同じである。よって、エスカレータ100においてエスカレータ10と同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明については、省略するか、必要に応じて言及するに止め、以下、異なる点を中心に説明する。
【0041】
実施形態2に係るエスカレータ100の欄干102は、図6に示すように、照明器具104を有している。照明器具104は、欄干パネル18の上端部に取付部材106を介して取り付けられている。取付部材106は、アルミニウムの押出形材からなり、欄干パネル18の上端縁に沿って、複数本が間隔を空けて列設されている。
照明器具104は、取付部材106にL字アングル部材108を介して取り付けられたホルダ110を有し、ホルダ110には、蛍光ランプ112が嵌め込まれている。
【0042】
取付部材106を覆うように、横断面が略「コ」字状をした長尺のフレーム114が、不図示のねじによって、取付部材106に取り付けられている。フレーム114は、ステンレス鋼板を板金加工したものである。
一本のフレーム114は、一本の取付部材106よりも長く、複数本の取付部材106に亘って、一本のフレーム114が取り付けられている。これにより、隣接する取付部材106は、両者に取り付けられたフレーム114によって連結されていることになる。
フレーム114の開口部には、蛍光ランプ112を覆うように、合成樹脂からなる半透明のランプカバー116が取り付けられている。
取付部材106上部には、フレーム114を介してガイドレール118が固定されている。ガイドレール118は、例えば、ステンレス鋼板を板金加工して作製されたものである。ガイドレール118は、取付部材106上面に対応する底板部118Aを有し、底板部118Aがスポット溶接(不図示)によりフレーム114に接合されている。ガイドレール118は、また、底板部118Aの両端縁から上方へ立ち上がった縦板部118B,118Cと、縦板部118B,118Cの上端から外方へ張り出したフランジ部118D,118Eとを有する。両フランジ部118D,118E間は、図6に示すように開口されている。
【0043】
ガイドレール118には、両フランジ部118D、118E間の開口部を塞ぐように、両フランジ部118D,118Eに移動手摺20が取り付けられている。
上記のようにして、照明器具104やガイドレール118が設けられた取付部材106の欄干パネル18上端部への取付態様について、図7を参照しながら説明する。
図7(a)に示すように、取付部材106は、下方に開口された溝部120を有し、溝部120が欄干パネル18の上端部に上方から嵌め込まれている。
【0044】
溝部120の第1側壁120Aは、欄干パネル18の一方の主面に沿うように形成されていると共に、第1側壁120Aに対向する第2側壁120Bは、欄干パネル18の他方の主面との間隔が下方程狭くなる斜面に形成されている。
欄干パネル18の上端部には、欄干パネル18を保護する保護部材122が被せられている。保護部材122は、横断面が略「コ」字状をした、ゴム材料からなる押出成形材である。
【0045】
欄干パネル18の前記他方の主面と第2側壁120Bとの間には、紙面に垂直な方向に細長いくさび部材124が設けられている。くさび部材124は、金属材料(例えば、ステンレス鋼)、または硬質の合成樹脂からなる。
底板部118Aとフレーム114の各々には、連通する貫通孔118F、貫通孔114Aが開設されている。また、取付部材106において、貫通孔118F,114Aに対応する位置には、上下に貫通する雌ねじ106Aが形成されている。
【0046】
雌ねじ106Aには、上部から押えボルト126が螺合している。押えボルト126が締め込まれて、押えボルト126の先端でくさび部材124が押し下げられ、くさび作用によって、欄干パネル18の上端部に取付部材106が固定されている。
取付部材106の欄干パネル18への固定を解除するには、押えボルト126を弛め、図7(a)において、矢印Gで示す隙間から押出し片(不図示)を挿入して、くさび部材124を押し上げることにより、図7(b)に示す状態となって、取付部材106の欄干パネル18への固定が解除される。固定が解除されると、欄干パネル18は、取付部材106から下方へと抜き取ることが可能となる。
下方へ抜き取り得る状態とした後における、欄干パネル18の交換手順は、実施形態1と同様なので、その説明については、省略する。
欄干パネル18が抜き取られた取付部材106は、上述した通り、これに隣接する取付部材にフレーム114によって連結されており、当該隣接する取付部材は対応する欄干パネルに支えられている。よって、欄干パネル18が抜き取られた取付部材106は、脱落することはない。
【0047】
なお、押えボルト126を弛める場合は、図8に示すように、押えボルト126およびその近傍の移動手摺20部分をガイドレール118から取り外す。
以上の通り、実施形態2に係るエスカレータ100よれば、欄干パネル18を取付部材106から下方へ抜き取る(取り外す)ためには、移動手摺20の一部をガイドレール118から取り外すだけで、ガイドレール118を分解する必要がない。加えて、取付部材106を欄干パネル18から上方へ抜き取る作業を要しない。これにより、取付部材の、欄干パネル上端部から上方への抜取作業を余儀なくされる従来のエスカレータよりも欄干パネルの交換に要する時間を可能な限り短縮できる。
【0048】
なお、上記の例では、矢印Gで示す隙間(図7(a))に押出し片(不図示)を挿入し、くさび部材124を押し上げて、くさび部材124を弛めたが(図7(b))、くさび部材124を弛める手段はこれに限らず、例えば、以下のような構成としても構わない。
図9に示すように、ナット128が螺合した引上げボルト130を用いる。くさび部材124上面の押えボルト126(図7)による押圧位置とは異なる位置には、雌ネジ(不図示)が形成されている。当該雌ねじに対応させて、底板部118A、フレーム114、取付部材106の各々には、連通する長孔118G、長孔114B、長孔106Bが開設されている。長孔118G、長孔114B、長孔106Bは、紙面に垂直な方向が幅方向となるように開設されており、当該幅は、引上げボルト130の呼び径よりも大きく、ナット128の二面幅よりも小さい長さに設定されている。
【0049】
上記の構成において、くさび部材124を弛めるときは、先ず、押えボルト126(図7)を弛め、さらに、その先端(下端)が雌ねじ106A内に進入するまで、上向きに螺進させる。
次に、図9(a)に示すように、引上げボルト130をくさび部材124に形成された雌ねじ(不図示)に螺合させる。そして、ナット128を矢印の向きに回して、ナット128を下向きに螺進させる。ナット128が底板部118Aの上面に当接した後もナット128を回すと、引上げボルト130がナット128に対し、相対的に上向きに螺進し、これに伴い、引上げボルト130が螺合しているくさび部材124が上向きに引き上げられる。このようにして、くさび部材124が弛められ、取付部材106の欄干パネル18への固定が解除される。
くさび部材124が、図9(b)に示す最大に引き上げられた状態では、取付部材106は、欄干パネル18の上端部に欄干パネル18の厚み方向に遊びを持って嵌った状態となる。
【0050】
<実施形態3>
実施形態1、2で、欄干パネル18は、図5に示すように、矢印Dの向きに下げた後、その下部を矢印Sの向きに振ることによって取り外した。しかしながら、実施形態1はともかく、実施形態2のように、取付部材106の固定が解除されると、取付部材106が欄干パネル18の上端部に欄干パネル18の厚み方向に遊びを持って嵌った状態になる場合には、図9(b)に一点鎖線で示すように、欄干パネル18は、下向きに下げることなく、その下部を振ることができる(全体を斜めの姿勢にすることができる。)。
この場合、欄干パネル18の取り外しに際し、その下端部を固定保持する固定器具による固定が解除された状態において、必ずしも欄干パネル18の下端面の支持までが解除される必要はなく、欄干パネル18の、踏段12の走行路RW側前方が開放されれば足りる。
【0051】
そこで、実施形態3および後述する実施形態4において、固定部材は、欄干パネルの固定を解除した状態においては、当該欄干パネルの下端面の支持を維持しつつ、欄干パネルの下端部の、踏段の走行路側前方が開放される構成とした。
また、実施形態2において、欄干パネル18に対する取付部材106の固定を解除するためには、移動手摺20の一部をガイドレール118から取り外す必要があったが、実施形態3では、移動手摺を取り外すことなく、取付部材の固定が解除できる工夫がなされている。
【0052】
以下、実施形態3に係るエスカレータ200について、図10図18を参照しながら説明する。なお、実施形態3において実施形態2と実質的に同じ構成部材については、同じ符号を付してその説明については、省略するか簡単に言及するに留める。なお、図10において、内デッキと外デッキの図示は省略している。
図10に示すように、エスカレータ200において、欄干202を構成する複数枚の欄干パネル18の各々は、その下端部が、固定器具204によってトラス206に固定されている。欄干パネル18の各々には、1枚に付き、そのサイズに応じた台数(2台〜4台)の固定器具204が用いられる。
【0053】
一方、複数枚の欄干パネル18の上端部には、被固定部材である取付部材208が複数本、列を成して固定され、取付部材208を介して照明器具104が取り付けられている。取付部材208は、アルミニウムの押出形材からなる。
取付部材208を覆うように、横断面が略「コ」字状をした長尺のフレーム210が、不図示のねじによって、取付部材208に取り付けられている。フレーム210は、ステンレス鋼板を板金加工したものである。
【0054】
取付部材208上部には、フレーム210を介してガイドレール212が固定されている。ガイドレール212は、例えば、ステンレス鋼板を板金加工して作製されたものである。ガイドレール212は、取付部材208上面に対応する底板部212Aを有し、底板部212Aがスポット溶接(不図示)によりフレーム210に接合されている。ガイドレール212は、また、底板部212Aの両端縁から上方へ立ち上がった縦板部212B,212Cと、縦板部212B,212Cの上端から外方へ張り出したフランジ部212D,212Eとを有する。
ガイドレール212において、両フランジ部212D,212Eに移動手摺20が取り付けられている。
【0055】
上記のようにして、照明器具104やガイドレール212が設けられた取付部材208の欄干パネル18上端部への固定構造について、図11を参照しながら説明する。なお、図11(a)は、後述する締付ねじ228の軸心を含む平面で切断した図であり、図11(b)は、後述する六角穴付ボルト230の軸心を含む平面で切断した図である。
図11に示すように、取付部材208は、下方に開口された溝部214を有し、溝部214が欄干パネル18の上端部に上方から嵌め込まれている。
【0056】
溝部214の第1壁面214Aは、欄干パネル18の第1主面18Aに平行に形成されていると共に、第1壁面214Aに対向する第2壁面214Bは、欄干パネル18の第2主面18Bとの間隔が下方程広くなるよう第2主面18Bに対し傾斜した面に形成されている。ここで、第2主面18Bが走行路RWに面している側の主面である(図10)。
【0057】
欄干パネル18の上端部には、欄干パネル18を保護する保護部材216が被せられている。保護部材216は、横断面が略「コ」字状をした、ゴム製の押出成形材からなるクッションゴム218とこれよりも一回り大きな略「コ」字状の横断面を有する薄板状の金属カバー220とからなる。金属カバー220には、例えば、ステンレス鋼が用いられる。
欄干パネル18の第2主面18Bと溝部214の第2壁面214Bとの間には、くさび部材222が設けられている。くさび部材222は、金属材料(例えば、ステンレス鋼)、または硬質の合成樹脂からなる。
【0058】
図12に示すように、くさび部材222は、全体的に直角三角形状をした横断面を有する棒状をしている。くさび部材222は、一つの取付部材208に対し、複数本が間隔を空けて用いられる。
くさび部材222は、図11に示す状態で、欄干パネル18の第2主面18Bと対向する押圧面222Aと、溝部214の第2壁面214Bに沿った斜面222Bとを含む。略直角三角形状をした両側面以外の残りの面を下面222Cと称することとする。
【0059】
図12に示すように、くさび部材222の長さ方向中央部には、上下方向に貫通するねじ挿通孔222Dが開設されている。ねじ挿通孔222Dは、図11に示す状態において、平面視で、欄干パネル18の厚み方向に長い長孔である。
くさび部材222の長さ方向において、ねじ挿通孔222Dの両側には、上下方向に貫通する雌ねじ222E、222Fが形成されている。
両雌ねじ222E,222Fのさらに両側には、後述する六角穴付ボルト230が挿入される挿通孔222G、222Hが開設されている。両挿通孔222G,222Hは、ねじ挿通孔222Dと同様の長孔である。
【0060】
上記の構成からなるくさび部材222が設けられる取付部材208部分について、図13を参照しながら説明する。
取付部材208には、くさび部材222のねじ挿通孔222D(図11(a)、図12)に対応させて、上下方向に雌ねじ208Aが形成されている。
取付部材208の長さ方向において、雌ねじ208Aの両側には、くさび部材222の挿通孔222G,222H(図11(b)、図12)に対応させて、上下方向に雌ねじ208B、208Cが形成されている。雌ねじ208B,208Cの上側の開口側には、図13(a)、(c)に示すように、深ざぐりがなされている。
【0061】
取付部材208の、くさび部材222が設けられる部分において、雌ねじ208A,208B,208Cが形成されている箇所以外は、V-V線断面図に代表されるように、第2壁面214Bは平坦な面になっている。なお、V-V線断面図は、くさび部材222の雌ねじ222E,222F(図12(a))に対応する位置で切断した断面図である。
【0062】
図11に戻り、欄干パネル18上端部への取付部材208の固定態様について説明する。図11(a)に示すように、平座金224、ばね座金226が嵌められた締付ねじ228が、くさび部材222のねじ挿通孔222Dに下側から挿入され、取付部材208の雌ねじ208Aに螺合している。締付ねじ228には、例えば、低頭六角穴付ボルトが用いられる。
【0063】
図11(a)、(b)は、締付ねじ228の締め付けにより、取付部材208が欄干パネル18に固定されている状態を示している。締付ねじ228が締め付けられると、くさび部材222は、その斜面222Bが取付部材208の第2壁面214Bに案内されて斜行し、欄干パネル18の第2主面18Bに向かって押圧される。これにより、くさび部材222の押圧面222Aと取付部材208の第1壁面214Aとで欄干パネル18の上端部が締め付けられて(挟持されて)、取付部材208が欄干パネル18に固定されることとなる。
【0064】
取付部材208の雌ねじ208B,208C(図13(a),(b),(c))の各々には、バー部材として六角穴付ボルト230(以下、単に「ボルト230」と言う。)がねじ込まれており、その頭部とは反対側のねじ部部分は、くさび部材222の挿通孔222G,222Hに挿入されている。
取付部材208に設けたボルト230とくさび部材222に開設された挿通孔222G,222Hとは、締付ねじ228を締め付ける際および後述するように弛める際に、くさび部材222が締付ねじ228の軸心周りに回転するのを規制する規制手段として機能する。
【0065】
締付ねじ228を回すと、締付ねじ228が螺入されているくさび部材222は、締付ねじ228との間に生じる摩擦力によって、締付ねじ228の軸心周りに回転しようとする。この場合、何らの手当てをしないと、くさび部材222両端が周囲の部材にぶつかって、当該部材を損傷するおそれがある。
そこで、周囲の部材にぶつかる迄回転する手前で、挿通孔222G,222Hの内壁にボルト230を当接させて、それ以上回転するのを規制しているのである。
なお、当該規制手段として用いるバー部材は、ボルト230に限らず、例えば、ピンを用いても構わない。
【0066】
取付部材208の欄干パネル18に対する固定は、締付ねじ228を弛めることによって解除される。締付ねじ228を弛めると、締付ねじ228は下方へ螺進する。その結果、締付ねじ228(の頭部)が、くさび部材222を第2壁面214Bに押圧する押圧力が解消され、ひいては、くさび部材222が欄干パネル18の第2主面18Bに向かって押圧される押圧力が解消される。これにより、くさび部材222は、手で引き落とすことができるようになる。
引き落とすと、図14(a)に示すように、くさび部材222は、その下面222Cが平座金224と当接するまで落下する。もっとも、締付ねじ228を雌ねじ208Aから抜き去ってしまうと、くさび部材222も取付部材208から取り外されることとなる。
【0067】
ところで、くさび部材222の保護部材216に対する食い込みの態様によっては、締付ねじ228を弛めても、手だけでは、くさび部材222を引き落とせない可能性がある。この場合、くさび部材222の左右の側面(紙面に垂直な方向における両端面)などを金属棒などで叩くなどすると、その衝撃でくさび部材222が弛んで、くさび部材222を落下させることができなくもないが、確実な方法とは言えない。
そこで、このような場合に、本実施形態では、弛めねじ232を用いる。弛めねじ232を用いた方法について、図15を参照しながら説明する。図15は、くさび部材222の雌ねじ222E(図12)の軸心を含む平面で切断したくさび部材222の横断面を含む断面図である。
【0068】
締付ねじ228(図11(a))を弛めた状態で、弛めねじ232を雌ねじ222Eの下側の開口部から螺合させる。弛めねじ232には、例えば、図示のような、比較的長めの六角穴付ボルトが用いられる。
弛めねじ232をねじ込んで行くと、弛めねじ232は上向きに螺進し、その先端が取付部材208の第2壁面214Bに当接する。当接後も弛めねじ232をねじ込むと、弛めねじ232はこれ以上螺進できないため、くさび部材222に対し相対的に下向きに螺進させようとする力が作用する。その結果、くさび部材222は、下向きに移動する。これによってくさび部材222が弛んだ場合、締付ねじ228が雌ねじ208Aから外れているときには、くさび部材222は、弛めねじ232がねじ込まれた状態で、取付部材208から取り外されることとなる。
なお、弛めねじ232は、くさび部材222に常時螺合されているものではなく、欄干パネル18を取り外すときだけに用いられるものである。
【0069】
以上のようにして、取付部材208の固定が解除されると、取付部材208は欄干パネル18の上端部に欄干パネル18の厚み方向に遊びを持って嵌った状態となる。このようになると、上述したように、欄干パネル18の下端部の固定が解除された状態で欄干パネル18下端部の、踏段12の走行路RW側前方が開放されていれば、欄干パネル18を取り外すことができる。
そのような固定構造とした固定器具204について説明する。図16に示すように、固定器具204は、固定ブラケット233と可動ブラケット235とを有する。
【0070】
固定ブラケット233は、受け部材234と後述する複数の(本例では、4個の)規制部材256,258,260,262とを含む
受け部材234には、本例ではZ形鋼が用いられる。受け部材234には支持板238が溶接(例えば、隅肉溶接)により接合されている(溶接ビードについては不図示)。
【0071】
図10に示すように、トラス206には、L形アングル材240がボルト242・ナット244によって固定されている。L形アングル材240には、図16に示すように、長孔240Aが開設されており、ボルト242は長孔240Aおよびトラス206に開設された貫通孔(不図示)に挿入されて、ナット244とでL形アングル材240をトラス206に固定している。なお、図16において、トラス206とボルト242・ナット244は図示していない。
【0072】
トラス206に固定されたL形アングル材240のトラス206から垂直に立ち上がった壁部240Bと支持板238とがボルト246・ナット(ナットは、図には現れていない)によって締結されている。
これにより、受け部材234(固定ブラケット233)は支持板238とL形アングル材240を介してトラス206に取り付けられている(固定されている。)。
【0073】
図16に戻り、受け部材234には、複数の(本例では、4個の)軸支部材248,250,252,254が溶接(例えば、隅肉溶接)により接合されている(溶接ビードについては不図示)。軸支部材248は、図10に示すように、L字状をした板体からなり、縦板部248Aにおいて受け部材234に接合されている。また、軸支部材248の横板部248Bの先端部分には、図16に示すように、その厚み方向に軸孔248Cが開設されている。
他の3個の軸支部材250,252,254は受け部材234の長手方向に間隔を空けて配されている。軸支部材250,252,254の各々は軸支部材248と略同様の形状をし、受け部材234に軸支部材248と同様に接合されている。すなわち、軸支部材250,252,254は、その縦板部(軸支部材250,252,254の縦板部は図に現れていない)において受け部材234に接合されており、横板部250B,252B,254Bの先端部分には、その厚み方向に軸孔250C,252C,254Cが開設されている。なお、4個の軸孔248C,250C,252C,254Cは同軸上に開設されている。
【0074】
軸支部材248,250,252,254の各々に隣接して、規制部材256,258,260,262がそれぞれ設けられている。規制部材256は、図17に示すように、軸支部材248(図10)において、その横板部248B(図10)を短縮したような形状をしている。図16に戻り、規制部材256,258,260,262の各々は、その縦板部256A,258A,260A,262Aが受け部材234に対し、軸支部材248と同様に接合されている。
規制部材256,258,260,262各々の横板部256B,258B,260B,262Bにおける先端面の各々は、後述する回動アーム300,302,304,306各々の回動を規制する規制面256C,258C,260C,262Cとなる(図16(b))。
【0075】
図18に示すように、受け部材234の下端部234Aの下面の長さ方向における両端部には、雌ねじ(不図示)が形成されたブロック部材268,270が接合されている。下端部234Aには、当該雌ねじに対応する貫通孔234B,234Cが開設されている。前記雌ねじには、下方から高さ調整ボルト272,274が螺入されていて、その先端が貫通孔234B,234Cから僅かに突出している。高さ調整ボルト272,274には、弛み止めナット276,278が螺合されている。
受け部材234の下端部234Aの上面の両端部には、平板状をしたゴムなどの弾性部材からなるクッション部材であるクッションパッド280,282が貼着されている。
【0076】
図16に戻り、可動ブラケット235は、対向部材236と後述する複数の(本例では、4個の)回動アーム300,302,304,306とを含む。
対向部材236には、本例ではL形鋼(不等辺山形鋼)が用いられる。
対向部材236の長辺部236Aには、その厚み方向に貫通する雌ねじ(不図示)が複数個、形成されており、当該雌ねじの各々には、圧接部材である圧接ボルト284,286,288,290が螺入されている。また、圧接ボルト284,286,288,290の各々には、弛み止めナット292,294,296,298がそれぞれ螺合されている。
【0077】
対向部材236には、また、規制部材256,258,260,262の各々に対応させて回動アーム300,302,304,306が接合されている。回動アーム300,302,304,306の各々は、略角棒状をしていて、全長の半分程度を対向部材236の長辺部236Aに重ねた状態で対向部材236に溶接(例えば、隅肉溶接)により接合されている(溶接ビードについては不図示)。
回動アーム300,302,304,306の対向部材236との接合部とは反対側の端部部分には軸孔300A,302A,304A,306Aが開設されている。4個の軸孔300A,302A,304A,306Aは、同軸上に開設されている。また、軸孔300A,302A,304A,306Aは、軸支部材248,250,252,254の軸孔248C,250C,252C,254Cと同じ径を有している。
【0078】
回動アーム300,302,304,306の各々において、軸孔300A,302A,304A,306Aの近傍には、後述するように、規制面256C,258C,260C,262Cと当接する当接面300B,302B,304B,306Bが形成されている。
軸支部材248,250の軸孔248C,250Cと回動アーム300,302の軸孔300A,302Aには、第1シャフト308が遊挿されており、軸支部材252,254の軸孔252C,254Cと回動アーム304,306の軸孔304A,306Aには、第2シャフト310が遊挿されている。第1シャフト308と第2シャフト310の両端部には、抜け止め用のE形止め輪312,314が嵌め込まれている(いずれも、一方の端部側のE形止め輪は、図に現れていない。)。第1シャフト308と第2シャフト310とは、図17に示すように、欄干パネル18の下端縁よりも下方において、図16(a)に示すように、当該下端縁と平行に設けられている。
【0079】
上記の構成により、可動ブラケット235は、固定ブラケット233に対し、第1および第2のシャフト308,310によって、その軸心を中心として回動自在、かつ、当該軸心の方向にスライド自在に連結されている。なお、本例では、可動ブラケット235と固定ブラケット233を2本のシャフト(第1および第2のシャフト308,310)で連結したが、これに限らず、1本のシャフトで連結しても構わない。すなわち、軸支部材248,250,252,254に開設された軸孔248C,250C,252C,254Cと回動アーム300,302,304,306に開設された軸孔300A,302A,304A,306Aの全てに1本のシャフトを遊挿して、可動ブラケット235と固定ブラケット233を連結しても構わない。
【0080】
可動ブラケット235は、固定ブラケット233に対し、少なくとも、図16(a)に示す第1の位置と図16(b)に示す第2の位置との間でスライド自在とされている。
第1の位置は、受け部材234に接合された規制部材256,258,260,262の規制面256C,258C,260C,262Cの各々に対向部材236に接合された回動アーム300,302,304,306の当接面300B,302B,304B,306B(図18)の各々が対向する位置である。
第2の位置は、固定ブラケット233に対し、第1の位置(図16(a))から可動ブラケット235が第1および第2のシャフト308,310の軸心方向、矢印Kの向きにスライドして、図16(b)に示すように、当接面300B,302B,304B,306Bの各々が規制面256C,258C,260C,262Cの各々に非対向となる位置である。
【0081】
第1の位置では、図17に示すように、可動ブラケット235の一部である当接面300Bが、第1シャフト308の軸心と直交する仮想平面(不図示)内で固定ブラケット233の一部である規制面256Cに当接していて、可動ブラケット235の第1シャフト308を中心とする時計方向の回動が規制される。残りの当接面302B,304B,306Bも同様に対応する規制面302B,304B,306Bに当接していて、これによっても、可動ブラケット235の回動が規制されている。
固定器具204は、可動ブラケット235が第1の位置にある状態で、欄干パネル18をトラス206に固定する。
【0082】
図10図17に示すように、欄干パネル18の下端部と固定ブラケット233の受け部材234における受け面234Dとの間には、長方形状をしたゴムなどからなる弾性部材であるクッションシート316が挟まれている。クッションシート316は、主面が受け面234Dと同じ形状をしており、受け面234Dに重ねた状態で、受け面234Dに貼着されている。
欄干パネル18の下端部と圧接ボルト284,286,288,290(図10図17には、2本のみが現れている)の先端と間には、圧接板318が挟まれている。圧接板318は、長方形をした鋼板と同じ長方形をしたゴムシートとが貼り合わされてなる2層構造をした板体(図には、当該2層構造を表していない)であり、欄干パネル18側にゴムシートがあてがわれる形で、挟みこまれている。
【0083】
欄干パネル18の下端面の一部は、クッションパッド280,282(図10図17では、クッションパッド280のみが現れている)上面または高さ調整ボルト272,274の先端と当接していて(本例では、高さ調整ボルト272,274の先端と当接している。)、前記下端面はクッションパッド76,78または高さ調整ボルト272,274を介して可動ブラケット235の受け部材234における支持部である下端部234Aに支持されている。
なお、高さ調整ボルト272,274は、以下の場合に用いられる。欄干パネル18をクッションパッド280,282に載せた状態で、欄干パネル18の高さが不足する場合には、高さ調整ボルト272,274を上向きに螺進させ、その先端を欄干パネル18の下端面に当接させて持ち上げることにより、欄干パネル18の高さを調整するのである。
【0084】
図10図17に示す状態で、受け面234Dと対向する対向部材236の雌ねじ(不図示)に螺入された(取り付けられた)圧接ボルト284,286,288,290(図16(a))は、強く締め付けられていて、その先端が圧接板318を介して欄干パネル18の下端部を受け面234Dに向かって圧接することにより、欄干パネル18は、その下端部でトラス206に固定保持されている。圧接ボルト284,286,288,290の締め付けにより、可動ブラケット235は固定ブラケット233に対して、スライド不能となっている。そして、圧接ボルト284,286,288,290の弛みを防止するため、弛み止めナット292,294,296,298(図16(a))が締め付けられている。
【0085】
欄干パネル18の固定器具204による固定は、以下のようにして解除される。
先ず、弛み止めナット292,294,296,298(図16(a))を弛めた後、圧接ボルト284,286,288,290(図16(a))を弛める。これにより、可動ブラケット235は、第1および第2シャフト308,310の軸心方向にスライド可能となる。
可動ブラケット235を、矢印Kの向きに、図16(b)に示す第2の位置までスライドさせる。次に、対向部材236が受け面234Dから遠ざかる向きに回動させ、図18に示す状態とする。すなわち、欄干パネル18の下端部の走行路RW側前方が開放される状態とする。
【0086】
欄干パネル18の上端部の取付部材208の固定が解除され、取付部材208が欄干パネル18の上端部に欄干パネル18の厚み方向に遊びを持って嵌った状態となっていれば、上述した通り、図18に一点鎖線で示すように、欄干パネル18は、その下部を走行路RW側へ振ることができる(全体を斜めの姿勢にすることができる。)。下部を走行路RW側に振った状態で、欄干パネル18をその主面に平行に下方へ移動させることにより、その上端部が取付部材208からも完全に外れて、欄干パネル18を固定器具204と取付部材208から取り外されることとなる。なお、欄干パネル18の取付けおよび取り外しの際には、取付け・取り外し対象の欄干パネル18に対応する内デッキ(不図示)とスカートガード42(図10図17)は、予め取り外される。
【0087】
以上の説明から明らかなように、実施形態3に係るエスカレータ200によれば、欄干パネル18上端部の被固定部材である取付部材208を欄干パネル18の上方へ抜き取ることなく、欄干パネル18を取付部材208と固定器具204から取り外すことができる。
なお、上記実施形態では、締付ねじ228と弛めねじ232として六角穴付ボルトを用いたが、これに限らず、六角ボルトを用いても構わない。あるいは、十字穴付ねじを用いても構わない。
【0088】
<実施形態4>
実施形態1〜3における固定器具26、204では、固定ブラケット30、233に対し、可動ブラケット32、235をシャフト48、第1および第2シャフト308,310で連結した。
これに対し、実施形態4における固定器具では、固定ブラケットに対し可動ブラケットを着脱自在に構成している。
実施形態4に係るエスカレータは、実施形態2、3とは、固定器具が異なる以外は、実質的に同じ構成である。よって、図19を参照しながら、固定器具400を中心に説明する。なお、固定器具400においても、固定器具204(図10図17)と同様、クッションシート316と圧接板318を有しているのであるが、これらについての図示は省略している。また、トラスの図示も省略している。
【0089】
図19に示すように、固定器具400は、固定ブラケット402と可動ブラケット404とを有する。
固定ブラケット402は、受け部材406と複数の(本例では、4個の)L字状をしたLブロック部材408,410,412,414を含む。
受け部材406には、本例ではZ形鋼が用いられる。Lブロック部材408,410,412,414の各々は、その長辺部(縦辺部)が、受け部材406に溶接(例えば、隅肉溶接)により接合されている。Lブロック部材408,410,412,414の短辺部(横辺部)の各々には、雌ねじ408A,410A,412A,414Aが形成されている。
【0090】
また、受け部材406には、第1支持板416と第2支持板418が溶接(例えば、隅肉溶接)により接合されている。
トラス(不図示)には、L形アングル材420が不図示のボルト・ナットによって固定されており、L形アングル材420と第1支持板416とが、不図示のボルト・ナットによって締結されている。
第2支持板418には、長孔418A,418Bが開設されており、長孔418A,418Bに挿入されたボルト(不図示)とナット(不図示)とで、第2支持板418がトラスに固定されている。
【0091】
すなわち、受け部材406は、第1支持板416およびL形アングル材420、並びに第2支持板418を介してトラス(不図示)に取り付けられている(固定されている)。
受け部材406において、欄干パネル18の下端面を支持する支持部となる下端部406Aの上面には、複数枚の(本例では、3枚の)クッションパッド422,424,426が貼着されている。
また、下端部406Aには、その厚み方向に雌ねじ406B,406C,406D,406Eが形成されており、その各々に高さ調整ボルト428,430,432,434が螺入されている。高さ調整ボルト428,430,432,434の機能および使い方は、実施形態3と同様なので、これ以上の説明については省略する。
【0092】
可動ブラケット404は、対向部材436と複数の(本例では、4個の)略四角柱状をした柱状ブロック部材438,440,442,444とを含む。
対向部材436には、本例ではL形鋼(不等辺山形鋼)が用いられている。
対向部材436の長辺部436Aには、その厚み方向に貫通する雌ねじ(不図示)が複数個、形成されており、当該雌ねじの各々には、圧接部材である圧接ボルト446,448,450,452,454,456,458が螺入されている。また、圧接ボルト446,...,458の各々には、弛み止めナット460,462,464,466,468,470,472がそれぞれ螺合されている。
【0093】
対向部材436の長辺部436Aには、柱状ブロック部材438,440,442,444が、その上側三分の二程度を重ねた状態で溶接(例えば、隅肉溶接)により接合されている(溶接ビードについては不図示)。
柱状ブロック部材438,440,442,444各々の下端部には、片側に深ざぐりが施されたねじ挿通孔438A,440A,442A,444Aが開設されている。
ねじ挿通孔438A,440A,442A,444Aの各々には、締付ボルト474,476,478,480が、それぞれ前記深ざぐり側から挿入され、Lブロック部材408,410,412,414に形成された雌ねじ408A,410A,412A,414Aに螺入される。そして、締付ボルト474,476,478,480を締め付けることにより、可動ブラケット404が固定ブラケット402に装着される。
【0094】
装着状態で、圧接ボルト446,...,458が強く締め付けられて、その先端が不図示の圧接板を介して欄干パネル18の下端部を受け部材406の受け面406Fに向かって圧接することにより、欄干パネル18は、その下端部で不図示のトラスに固定保持される。そして、圧接ボルト446,...,458が弛むのを防止するため、弛み止めナット460,...,472締め付けられる。
欄干パネル18の固定器具400による固定を解除するには、先ず、弛み止めナット460,...,472を弛めた後、圧接ボルト446,...,458を弛める。そして、締付ボルト474,476,478,480を弛めて、雌ねじ408A,410A,412A,414Aから取り外し、可動ブラケット404を固定ブラケット402から脱着する。
【0095】
可動ブラケット404が固定ブラケット402から脱着されると、欄干パネル18の下端部の走行路RW側前方が開放される。走行路RW側が開放されると、取付部材208が欄干パネル18の上端部に欄干パネル18の厚み方向に遊びを持って嵌った状態となっていれば、実施形態3と同様、図19に一点鎖線で示すように、欄干パネル18は、その下部を走行路RW側へ振ることができる(全体を斜めの姿勢にすることができる。)。
これにより、欄干パネル18上端部の被固定部材である取付部材208を欄干パネル18の上方へ抜き取ることなく、欄干パネル18を取付部材208と固定器具204から取り外すことができるのも、実施形態3と同様である。
【0096】
<実施形態5>
実施形態1において、移動手摺20を案内するガイドレール86は、ステンレス鋼板を板金加工したものであったが、これに限らず、アルミの押出形材からなるものを用いても構わない。
図20は、そのように構成したガイドレール502が設けられた欄干500の上端部を示す断面図である。なお、実施形態5に係るエスカレータは、実施形態1とは、移動手摺を案内するガイドレールの構成が異なる以外は、基本的に同じ構成である。よって、以下、ガイドレール502等の説明に留める。
【0097】
アルミの押出形材からなるガイドレール502の上端部には、幅方向両側に張り出した一対のフランジ部502A,502Bが形成されている。両フランジ部502A,502Bの間には、上方に開口し長さ方向に沿った上溝部504が形成されている。
フランジ部502A,502Bの各々から、上溝部504の壁面504A,504Bにかけて、摺接部材506,508が貼着されている。摺接部材506,508は、ナイロンの押し出し材からなる。
摺接部材506,508が設けられたフランジ部502A,502Bに、移動手摺510が嵌め込まれている。
【0098】
欄干パネル18上端部へのガイドレール502の固定方法は、実施形態3における取付部材208の欄干パネル18上端部への固定方法と実質的に同じである。よって、実施形態3と同じ構成部材については、同じ符号を付して、その説明については、省略するか簡単に説明するに留める。
上溝部504の下には、下方に開口し同じく長さ方向に沿った下溝部512が形成されており、下溝部512が欄干パネル18の上端部に上方から嵌め込まれている。
【0099】
下溝部512の第1壁面512Aは、欄干パネル18の第1主面18Aに平行に形成されていると共に、第1壁面512Aに対向する第2壁面512Bは、欄干パネル18の第2主面18Bとの間隔が下方程広くなるよう第2主面18Bに対し傾斜した面に形成されている。ここで、第2主面18Bが走行路RWに面している側の主面である。
【0100】
欄干パネル18の上端部には、クッションゴム218と金属カバー220とからなる保護部材216が被せられている。
欄干パネル18の第2主面18Bと下溝部512の第2壁面512Bとの間には、くさび部材222が設けられている。
くさび部材222には、ねじ挿通孔222Dが開設されている。一方、ガイドレール502には、ねじ挿通孔222Dに対応させて、上下方向に雌ねじ502Cが形成されている。
【0101】
平座金224、ばね座金226が嵌められた締付ねじ228が、くさび部材222のねじ挿通孔222Dに下側から挿入され、ガイドレール502の雌ネジ502Cに螺合している。
締付ねじ228の締め付けによる、ガイドレール502の欄干パネル18への固定態様や、欄干パネル18に対するガイドレール502の固定解除の方法などは、実施形態3における取付部材208の場合と同様なので、これ以上の説明については省略する。
なお、ガイドレール502は、複数本が欄干パネル18の上端縁に沿って列設されていて、隣接するガイドレール502は、その端部同士が不図示の連結部材によって連結されている。
【0102】
<実施形態6>
実施形態1、実施形態2における固定器具26では、固定ブラケット30に対し可動ブラケット32を最終的に回動させることにより、欄干パネル18の下端部の走行路側前方を開放した(図5図8等)。また、実施形態3における固定器具204でも、固定ブラケット233に対し可動ブラケット235を最終的に回動させることにより、欄干パネル18の下端部の走行路側前方を開放した(図18等)。
これに対し、実施形態6における固定器具では、固定ブラケットに対し可動ブラケットを最終的に下方へスライドさせることにより、欄干パネル18の下端部の走行路側前方を開放することとしている。
【0103】
実施形態6に係るエスカレータは、実施形態2、3とは、固定器具が異なる以外は、実質的に同じ構成である。よって、図21図22を参照しながら、実施形態6における固定器具600を中心に説明する。なお、図21図22において、欄干パネル18、実施形態2、3で示したクッションシート80(図6)、クッションシート316(図10等)、圧接板82(図6)、圧接板318(図10等)、クッションパッド76(図6)、クッションパッド280,282(図10図18)、圧接ボルト60,...,66(図6等)、および圧接ボルト284,...,290(図10図16)等に相当する部材の図示は省略している。
【0104】
図21(a)に示すように、固定器具600は、固定ブラケット602と可動ブラケット604とを有する。
固定ブラケット602は、ベンチ(長椅子)状をしており、不図示のトラスに固定されている。
【0105】
固定ブラケット602は、長手方向両端部に一対の脚部606,608を有している。脚部606,608の各々には、逆L字状をしたスリット610,612が開設されている。
ベンチ状をした固定ブラケット602において、座面に相当する部分が、欄干パネル(不図示)の下端面を支持する支持部614となる。また、背もたれに相当する部分が、受け面616となる。
【0106】
図21(b)に示すように、可動ブラケット604は、L字状の横断面をしたアングル材620を有する。アングル材620の長手方向における両端面からは、四角柱状をした突起618(片方のみ図に現れている)が突出している。突起618は、アングル材620に角穴を設け、当該角穴に角材を圧入することにより形成される。
アングル材620において、受け面616に対向する対向部となる縦板部620Aには、その厚み方向に複数個の(本例では、4個の)雌ねじ620B,620C,620D,620Eが形成されている。雌ねじ620B,...,620Eの各々には、不図示の圧接ボルトが螺合されている。
【0107】
固定ブラケット602の両脚部606,608の間に、アングル材620の横板部620Fがさし込まれ、突起618がスリット610に嵌め込まれて、固定ブラケット602に可動ブラケット604が連結されている(図に現れていない他方の突起もスリット612に嵌め込まれている。)。
スリット610において横方向に延びる部分の幅W1は、四角柱をした突起618の一辺の長さよりも僅かに大きいだけである。図21(a)に示す状態で、突起618は、ガタツクことなくスリット610に嵌っており、スリット610(固定ブラケット602)に対し回動不能となっている。
スリット610において縦方向に延びる部分の幅W2は、幅W1よりも若干大きくなっている。
【0108】
上記の構成からなる固定ブラケット602と可動ブラケット604を有する固定器具600において、図21(a)に示す状態で、支持部614上面に設けられた不図示のクッションパッドに不図示の欄干パネルが載置されている。なお、本実施形態においても、実施形態1〜5と同様、クッションパッドは必須の構成部材ではなく、用いなくても構わない。用いない場合には、欄干パネル(不図示)は、直に、支持部614に載置される。欄干パネル(不図示)の下端部と可動ブラケット604のアングル材620の縦板部620Aとの間には、不図示の圧接板が挿入されている。
そして、雌ねじ620B,620C、620D,620Eに螺入された(取り付けられた)不図示の圧接ボルトが締め付けられていて、その先端が圧接板(不図示)を介し欄干パネル(不図示)の下端部を受け面616に向かって圧接することにより、欄干パネル(不図示)は、その下端部で不図示のトラスに固定保持されている。
【0109】
上記のように固定器具600に固定された欄干パネルの固定解除は以下の手順で行われる。
先ず、雌ねじ620B,620C、620D,620Eに螺合している圧接ボルト(不図示)の各々を弛める。この場合、圧接ボルト(不図示)各々を、雌ねじ620B,...,620Eから取り外しても構わないが、少なくとも、圧接ボルト(不図示)各々の先端が雌ねじ620B,...,620E内に没入するまで弛めれば足りる。
【0110】
次に、不図示の圧接板を、固定ブラケット602の受け面616と可動ブラケット604のアングル材620の縦板部620Aの間から取り除く。
そして、可動ブラケット604を、図21(a)に示す矢印Xの向きに押し込んだ後、矢印Yの向き(すなわち、下向き)にスライドさせる。
【0111】
そうすると、可動ブラケット604は、固定ブラケット602に対して、図22(a)に示す状態となる。すなわち、欄干パネル(不図示)の下端部の走行路側前方(矢印Fで示す方向)が開放された状態となる。
これ以降における、欄干パネルの取外しの手順は、実施形態3、4、5の場合と同様なので、その説明については省略する。なお、欄干パネルの取り付けは、上記取外しとは逆の手順でなされる。
【0112】
(変形例)
上記実施形態では、欄干パネル(不図示)を固定した状態(図21(a))でも、固定を解除した状態(図22(a))でも、突起618がスリット610に嵌っている。すなわち、可動ブラケット604は、固定ブラケット602に常に連結されているが、これに限らず、可動ブラケットを固定ブラケットに着脱自在に取り付ける構成としても構わない。
そのような構成にした場合の固定ブラケット624を図22(b)に示す。固定ブラケット624は、固定ブラケット602(図21(a))の脚部606,608を短くし、かつ、スリット610,612において縦方向に延びる部分の下方を開放した形態としたものである。可動ブラケットには、上記実施形態の可動ブラケット604(図21(b))と同じものが用いられる。
【0113】
固定ブラケット624(図22(b))において、固定ブラケット602(図21(a)、図22(a))と実質的に同じ部分には、同じ符号を付して、その説明については省略する。
固定ブラケット624のスリット626の開放部から矢印Yとは逆向き(すなわち、上向き)に可動ブラケット604の突起618を進入させた後、矢印Xとは逆向き(すなわち、手前側に)引き寄せることにより、可動ブラケット604を固定ブラケット624に装着する(取り付ける)ことができる。
【0114】
可動ブラケット604を固定ブラケット624から脱着する(取り外す)ときは、可動ブラケット604を、図22(b)に示す矢印Xの向きに押し込んだ後、矢印Yの向き(すなわち、下向き)にスライドさせて、突起618をスリット626から抜き出す。
これにより、可動ブラケット604は、固定ブラケット624から、完全に分離されて、欄干パネル(不図示)の下端部の走行路側前方(図22(b)において矢印Fで示す方向)が開放された状態となる。
【0115】
以上、本発明に係る乗客コンベアを実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは、勿論であり、例えば、以下の形態としても構わない。
(1)実施形態2(図6図9)、実施形態3(図10図18)、実施形態4(図19)、実施形態5(図20)、および実施形態6(図21図22)では、欄干パネル18上端部の被固定部材である取付部材106(図6図9)、取付部材208(図10図11図13図15)、およびガイドレール502(図20)を、くさび部材124(図6図9)、または、くさび部材222(図10図15図20)を用いて固定する構成とした。
しかしながら、欄干パネル上端部への被固定部材の固定は、くさび部材に限らず、例えば、特許文献2の図6に開示されているように、ボルトを用いても構わない。
要は、下方に開口された溝部を有し、当該溝部が欄干パネルの上端部に嵌め込まれた状態で、欄干パネルに固定される被固定部材を固定するための構成が、当該被固定部材の前記欄干パネルに対する固定が解除された状態において、当該被固定部材が前記欄干パネルの上端部に当該欄干パネルの厚み方向に遊びを持って嵌った状態となるような構成であれば良いのである。
【0116】
(2)欄干パネル18の上端部に固定される被固定部材と欄干パネル18の下端部をトラスに固定する固定器具との組合せは、実施形態2、3、4、5および6で示した組合せに限らず、以下の組合せとしても構わない。
(i)取付部材106(図6)と固定器具204(図10)または固定器具400(図19)との組合せ
(ii)取付部材208(図10)と固定器具26(図6)との組合せ
(iii)ガイドレール502(図20)と固定器具204(図10)、固定器具400(図19)、または固定器具600(図21)との組合せ
【0117】
(3)実施形態1では、保護板24を建築物の天井DC部分に取り付けたが(図1)、実施形態2、3、4、6において、保護板24は、取付部材106(図6図8)、取付部材208(図10)に付属物として取り付けても構わない。
【0118】
(4)実施形態3では、別個に作製された受け部材234と規制部材256,...,262とを接合して固定ブラケット233を構成したが、これに限らず、固定ブラケットは、鋳造や切削加工により、これらが一体的に形成された一部材として構成しても構わない。さらに、軸支部材248,...,254も含めて一体的に形成された構成としても構わない。
また、実施形態3では、可動ブラケット235を、別個に作製された対向部材236と回動アーム300,...,306とを接合して構成したが、これに限らず、これらが一体的に形成された一部材として構成しても構わない。
【0119】
(5)上記実施形態では、本発明に係る乗客コンベアを、エスカレータに適用した例に基いて説明したが、本発明に係る乗客コンベアは、エスカレータに限らず、他の乗客コンベア、例えば、パレット式やゴムベルト式の動く歩道にも適用できる。すなわち、環状に連結された複数のパレットからなる無端搬送体やゴムベルトからなる無端搬送体を循環走行させて乗客を搬送する動く歩道にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明に係る乗客コンベアは、例えば、エスカレータや動く歩道に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0121】
10,100,200 エスカレータ
12 踏段
18 欄干パネル
26,204,400,600 固定器具
28,206 トラス
30,233,402,602,624 固定ブラケット
32,235,404,604 可動ブラケット
46,234D,406D,616 受け面
56,58 対向部
60,62,64,66,284,286,288,290,446,448,450,452,454,456,458 圧接ボルト
236,436 対向部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22