(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電流・電圧計測部において計測された電流値および電圧値の少なくとも一方と、指定充電器によって充電された際の計測結果とを保存する記憶部を、さらに備えている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のバッテリパック。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の車両機能許可システムでは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された車両機能許可システムにおいて、急速充電等の不適切な充電方式による充電方法をどのように検知して制限をかけるか、具体的に記載されていない。
【0006】
本発明の課題は、不適切な充電方式による充電を検知することが可能なバッテリパックおよびこれを備えたバッテリシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係るバッテリパックは、充電器によって充電されるバッテリパックであって、充電器から電流・電圧が印加される入力部と、入力部に入力された電流および電圧を計測する電流・電圧計測部と、を備えている。
ここでは、不適切な充電方式によって充電されたことを検知するために、充電器から電流・電圧が印加される入力部と、これらの電流・電圧を計測する電流・電圧計測部とを設けている。
【0008】
ここで、不適切な充電方式とは、例えば、急速充電や印加電圧が不安定な充電等のように、指定充電器による充電方式よりもバッテリパックに大きな負荷をかけて劣化させるおそれがある充電方式を意味している。
また、不適切な充電方式であるか否かの判定は、充電器から入力された電流・電圧の計測の結果を、予め分かっている指定充電器による適切な充電方式による充電時に印加される電流・電圧と比較して行われればよい。
【0009】
これにより、充電器から入力された電流・電圧を計測することで、急速充電等の不適切な充電方式によってバッテリパックに大きな負荷がかかっているか否かを、容易に検知することができる。
この結果、不適切な充電方式による充電によってバッテリパックに大きな負荷がかかったことを検知して、例えば、バッテリパックを貸し出す運用業者等へ通報することで、バッテリパックの使用可能年数が短縮されてしまう等の問題の発生を最小限に抑制することができる。
【0010】
第2の発明に係るバッテリパックは、第1の発明に係るバッテリパックであって、電流・電圧計測部における計測結果と、指定充電器によって充電された際の計測結果とを比較して、不適切な充電方式による充電であるか否かを判定する不正充電検知部を、さらに備えている。
ここでは、充電器から印加された電流値・電圧値等の計測結果を、指定充電器によって充電された際の電流値・電圧値等の計測結果と比較することで、充電方式の適否を判定する。
【0011】
ここで、不正充電検知部における判定は、充電器からバッテリパックに印加された電流値あるいは電圧値の一方あるいは双方、あるいは電流値を変換した周波数等を比較し、所定の閾値以内の誤差範囲であるか否かを確認することで実施することができる。
これにより、急速充電器等による不適切な充電方式による充電を容易に検知することができる。
【0012】
第3の発明に係るバッテリパックは、第2の発明に係るバッテリパックであって、不正充電検知部は、電流・電圧計測部における計測結果に基づいて、波形解析あるいは周波数解析を行う。
ここでは、不正充電検知部が、例えば、充電器から印加された電流値の波形解析、あるいは電流値をラプラス変換した周波数解析を用いて、不適切な充電方式であるか否かを判定する。
これにより、電流波形や周波数の波形等を比較することで、急速充電器等による不適切な充電方式による充電を容易に検知することができる。
【0013】
第4の発明に係るバッテリパックは、第2または第3の発明に係るバッテリパックであって、不正充電検知部は、指定充電器以外の充電器による急速充電の有無を検知する。
ここでは、不正充電検知部が、指定充電器以外の充電器を用いた急速充電を、不適切な充電方式として検知する。
【0014】
これにより、急速充電によってバッテリパックに大きな負荷がかかったことを検知して、例えば、バッテリパックを貸し出す運用業者等へ通報することで、バッテリパックの使用可能年数が短縮されてしまう等の問題の発生を最小限に抑制することができる。
【0015】
第5の発明に係るバッテリパックは、第2から第4の発明のいずれか1つに係るバッテリパックであって、不正充電検知部における検知結果を通信する通信部を、さらに備えている。
ここでは、通信部が、例えば、バッテリパックの貸し出しを行う運用業者やクラウドサービス等へ、電流・電圧計測部における計測結果、あるいは不正充電検知部における検知結果を送信する。
【0016】
これにより、不適切な充電方式によって充電された履歴を、運用業者やクラウドサービス等へ送信することで、不適切な充電方式による充電よってバッテリパックを劣化させた使用者等を認定することができる。
この結果、例えば、バッテリパックを劣化させた使用者等に警告を発したり、劣化に伴う使用可能年数の短縮を予測してバッテリパックの使用寿命を正確化したりすることができる。
【0017】
第6の発明に係るバッテリパックは、第1から第5の発明のいずれか1つに係るバッテリパックであって、電流・電圧計測部において計測された電流値および電圧値の少なくとも一方と、指定充電器によって充電された際の計測結果とを保存する記憶部を、さらに備えている。
ここでは、バッテリパックの内部に、電流・電圧計測部における計測結果と、指定充電器によって充電された際の計測結果とを蓄積して保存する。
これにより、例えば、不適切な充電方式によって充電されたバッテリパックが、指定充電器によって充電される際に、指定充電器によってその計測結果を読み出されて不適切な充電方式によってバッテリパックを劣化させた履歴があるか否かを容易に確認することができる。
【0018】
第7の発明に係るバッテリシステムは、第1から第6の発明のいずれか1つに係るバッテリパックと、バッテリパックに対して適切な充電方式によって充電を行う指定充電器と、を備えている。
ここでは、上述したバッテリパックと、適切な充電方式によって充電を行う指定充電器と、によってバッテリシステムを構成する。
【0019】
これにより、指定充電器から入力された電流・電圧を計測することで、過去に、急速充電等の不適切な充電方式によってバッテリパックに大きな負荷がかかっていたか否かを、容易に検知することができる。
この結果、過去に、不適切な充電方式による充電によってバッテリパックに大きな負荷がかかったことを検知して、例えば、バッテリパックを貸し出す運用業者等へ通報することで、バッテリパックの使用可能年数が短縮されてしまう等の問題の発生を最小限に抑制することができる。
【0020】
第8の発明に係るバッテリシステムは、第6の発明に係るバッテリパックと、指定充電器と、を備えている。指定充電器は、バッテリパック側の電流・電圧計測部における計測結果と、所定の指定充電器によって充電された際に計測される結果とを記憶部から受信して比較し、不適切な充電方式による充電であるか否かを判定する不正充電検知部を有する。
【0021】
ここでは、バッテリパック側の記憶部に保存された電流・電圧値を、指定充電器によって充電された際の電流・電圧値と比較し、充電方式の適否を判定する不正充電検知部を、指定充電器側に設けている。
ここで、不正充電検知部における判定は、充電器からバッテリパックに印加された電流値あるいは電圧値の一方あるいは双方、あるいは電流値を変換した周波数等を比較し、所定の閾値以内の誤差範囲であるか否かを確認することで実施することができる。
これにより、急速充電器等による不適切な充電方式による充電の履歴を、指定充電器側において容易に検知することができる。
【0022】
第9の発明に係るバッテリシステムは、第8の発明に係るバッテリシステムであって、不正充電検知部は、電流・電圧計測部における計測結果に基づいて、波形解析あるいは周波数解析を行う。
【0023】
ここでは、不正充電検知部が、例えば、充電器から印加された電流値の波形解析、あるいは電流値をラプラス変換した周波数解析を用いて、不適切な充電方式であるか否かを判定する。
これにより、指定充電器側において、電流波形や周波数の波形等を比較することで、急速充電器等による不適切な充電方式による充電を容易に検知することができる。
【0024】
第10の発明に係るバッテリシステムは、第8または第9の発明に係るバッテリシステムであって、不正充電検知部における検知結果を通信する通信部を、さらに備えている。
ここでは、通信部が、例えば、バッテリパックの貸し出しを行う運用業者やクラウドサービス等へ、電流・電圧計測部における計測結果、あるいは不正充電検知部における検知結果を送信する。
【0025】
これにより、不適切な充電方式によって充電された履歴を、運用業者やクラウドサービス等へ送信することで、不適切な充電方式による充電よってバッテリパックを劣化させた使用者等を認定することができる。
この結果、例えば、バッテリパックの使用可能年数予測を再計算したり、使用者に補償金を請求したりすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るバッテリパックによれば、不適切な充電方式による充電を検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施形態1)
本発明の一実施形態に係るバッテリパック10について、
図1〜
図5を用いて説明すれば以下の通りである。
バッテリパック10は、
図1に示すように、モビリティ20に対して電力を供給するための二次電池であって、モビリティ20に対して交換可能な状態で3本搭載されている。そして、バッテリパック10は、所定の充電ステーション等に設置された指定充電器を用いて充電されることで、繰り返し使用される。
【0029】
モビリティ20は、シート20aの下に搭載された3本のバッテリパック10から電力を供給されて走行する電動自動二輪車であって、前輪21および後輪(駆動輪)22を備えている。
前輪21は、モビリティ20の前部と路面との間に設けられた操舵輪であって、ハンドル20bの向きに連動して向きを変えることで、走行方向を切り替えることができる。
後輪22は、バッテリパック10が搭載されたモビリティ20の後部と路面との間に設けられた駆動輪であって、モータ(図示せず)によって回転駆動される。
【0030】
<バッテリパック10の構成>
本実施形態のバッテリパック10は、
図2に示すように、入力部11、電流・電圧計測部12、メモリ(記憶部)13、不正充電検知部14、通信部15、および表示部16を備えている。
【0031】
なお、
図2は、急速充電を行う不正充電器50と接続されたバッテリパック10が、例えば、所定の充電ステーション以外の場所に設置された充電器によって、不適切な充電方式による充電が行われている状態を示している。
ここで、本実施形態における不適切な充電方式とは、不正充電器50のように、通常の充電方式よりもバッテリパック10を劣化させやすい、いわゆる急速充電等の充電方式を意味している。
【0032】
入力部11は、不正充電器50の充電電圧印加部51から印加される急速充電用の電圧が入力される。
電流・電圧計測部12は、不正充電器50から入力部11に入力された電流・電圧の計測を行う。そして、電流・電圧計測部12は、メモリ13および不正充電検知部14に対して、計測結果を送信する。
【0033】
メモリ(記憶部)13は、電流・電圧計測部12における計測結果を保存するとともに、不適切な充電方式による充電であるか否かを判定する際の基準値となるデータを保存している。なお、本実施形態では、上記基準値となるデータとして、所定の指定充電器によって充電された際の電流値(電流波形)および電圧値(電圧波形)、周波数領域の分布図等のデータ(
図3および
図4参照)が、メモリ13に保存されている。
【0034】
なお、メモリ13に保存される波形は、電流値および電圧値のうちのいずれか1つであってもよい。
不正充電検知部14は、電流・電圧計測部12における計測結果と、予めメモリ13に保存されている指定充電器によって印加される電流値等のデータとを比較することで、不適切な充電方式によって充電が行われているか否かを判定する。
【0035】
具体的には、不正充電検知部14は、
図3に示すように、電流・電圧計測部12から受信した計測結果に基づく電流波形および電圧波形と、メモリ13から取り出した指定充電器を用いた充電時における電流値および電圧波形の特徴波形とを比較して、両者の一致度に応じて判定を行う。
ここで、
図3に示すグラフでは、指定充電器を用いた充電時における特徴波形(電流値および電圧値)を実線、不正充電器を用いた充電時における電流値および電圧値の波形を破線、指定充電器を用いた実際の充電時における電流値および電圧値の波形を一点鎖線によって、それぞれ示している。
【0036】
そして、不正充電検知部14では、電流・電圧計測部12から受信した計測結果に基づく電流波形と、メモリ13から取り出した指定充電器を用いた充電時における電流値および電圧値の特徴波形との誤差範囲が、所定の閾値(例えば、±5%)以内である場合には、適切な充電と判定する。
なお、電流・電圧計測部12から受信した計測結果に基づく電流波形および電圧波形は、例えば、最小二乗法等によって、線形あるいは非線形の波形化処理される。
【0037】
一方、両者の誤差範囲が、所定の閾値(例えば、±5%)を超える場合には、不正充電器50を用いた急速充電(不適切な充電方式による充電)と判定する。
本実施形態では、
図3に示すように、指定充電器の特徴波形(実線)と比較して、指定充電器によって実際に印加された電流値および電圧値の波形(一点鎖線)は誤差が小さくなっている。一方、不正充電器50によって印加された電流値および電圧値の波形(破線)は、指定充電器の特徴波形(実線)と比較して、充電開始からの期間等において誤差が大きくなっている。
【0038】
これにより、印加された電流値および電圧値の波形(破線)は、所定の誤差範囲を超えることから、不適切な充電方式による充電であると判定される。
また、不正充電検知部14は、不適切な充電方式による充電であるか否かの判定結果を、メモリ13に送信してするとともに、通信部15に送信する。
なお、メモリ13に送信された判定結果は、電流・電圧計測部12における計測結果と関連付けされた状態で、メモリ13に保存される。
【0039】
また、不正充電検知部14における判定は、上述した電流値および電圧値の波形の比較によって行う方法以外に、
図4に示す周波数解析波形を用いて行われてもよい。
具体的には、
図4に示すように、
図3に示す電流値および電圧値の入力波形を、フーリエ変換等を用いて周波数領域の分布図に変換し、この分布図におけるグラフの平均値誤差、あるいは分布の重複度合いに応じて判定を行ってもよい。
【0040】
この場合でも、
図4に示すように、指定充電器の特徴波形(実線)と比較して、指定充電器によって実際に印加された電流値および電圧値の波形の周波数領域の分布図(一点鎖線)は誤差が小さくなっている。一方、不正充電器50によって印加された電流値および電圧値の波形の周波数領域の分布図(破線)は、指定充電器の特徴波形(実線)に対する誤差が、明らかに大きくなっている。
【0041】
このように、周波数領域の分布図を比較して判定を行う場合には、電流値および電圧値の入力波形を比較する場合よりも安定性が高いため、一致度の比較をより容易に実施することができる。
通信部15は、メモリ13から電流・電圧計測部12における計測結果、不正充電検知部14から検知結果をそれぞれ受信して、バッテリパック10の運用業者60に設けられた通信装置(図示せず)等へ送信する。
【0042】
これにより、バッテリパック10の運用業者60は、急速充電等の不適切な充電方式によってバッテリパック10が劣化したおそれがあることを認識することができる。よって、運用業者60は、バッテリパック10の劣化の程度に応じて、例えば、バッテリパック10の使用者に警告を発したり、劣化による使用可能期間の短縮を予測してバッテリパックの使用寿命を正確に把握したりすることができる。
【0043】
表示部16は、例えば、バッテリパック10に関する各種情報を表示するインジケータや液晶表示パネルであって、バッテリパック10の表面に設けられている。そして、表示部16は、メモリ13からバッテリパック10へ印加された電流値・電圧値の計測結果を、不正充電検知部14から検知結果をそれぞれ受信して、各バッテリパック10に固有の番号等と関連付けて表示する。
これにより、急速充電等の不適切な充電方式によってバッテリパック10を劣化させた使用者等に対して、バッテリパック10の表示部16において不正充電の検知結果を表示することで、不正充電を行っていることを認識させることができる。
【0044】
<不正充電器50を用いて急速充電を行う際の不適切充電の検知方法>
本実施形態のバッテリパック10では、不正充電器50によって急速充電等の不適切な充電方式による充電が実施されたことを、
図5のフローチャートに示す手順によって検知する。
【0045】
すなわち、ステップS11では、不正充電器50側の充電電圧印加部51からバッテリパック10側の入力部11に対して充電が開始される。
次に、ステップS12では、バッテリパック10側の電流・電圧計測部12において、不正充電器50から印加された電流値および電圧値を計測する。
次に、ステップS13では、電流・電圧計測部12において計測された電流値および電圧値が、メモリ13へ保存される。
【0046】
次に、ステップS14では、不正充電検知部14において、メモリ13に保存された電流・電圧計測部12の計測結果と、予めメモリ13に保存されている判定の基準値となるデータとを比較する。
ここで、上記基準値となるデータとは、上述したように、指定充電器によって充電が行われた際に現れる電流値および電圧値の波形(
図3の実線参照)、あるいはその周波数領域の分布図(
図4の実線参照)を意味している。
【0047】
次に、ステップS15において、ステップS14における比較の結果、計測結果が判定の基準となるデータに対して、所定の誤差範囲を超えるか否かに応じて、不適切充電であるか否かを判定する。
ここで、不適切充電ではない、つまり計測結果が所定の誤差範囲内であると判定された場合には、ステップS16へ進む。一方、不適切充電である、つまり計測結果が所定の誤差範囲を超えると判定された場合には、ステップS18へ進む。
【0048】
次に、ステップS16では、ステップS15において不適切充電ではないと判定されたことから、充電を継続する。そして、ステップS17において、充電完了するまで充電器から電圧が印加される。
一方、ステップS18では、ステップS15において不適切な充電であると判定されたため、通信部15を介して、不適切充電の検知結果を計測結果とともにバッテリパック10の運用業者60へ送信する。
【0049】
これにより、バッテリパック10の運用業者60は、貸し出し中のバッテリパック10が急速充電等の不適切な充電方式による充電によって劣化したことを認識することができる。よって、急速充電等の不適な充電方式による充電によりバッテリパック10の使用可能年数を短縮させた使用者に対して警告する等の措置を採ることができる。
次に、ステップS19では、バッテリパック10の表示部16が、「不適切充電中」との警告表示を行う。これにより、不適切な充電方式による充電を行っていることを、バッテリパック10の使用者に報知することができる。
【0050】
なお、表示部16の警告表示は、文字情報として表示してもよいし、赤色の警告ランプを点灯あるいは点滅させる等、他の手段によって、使用者に報知するようにしてもよい。
本実施形態のバッテリパック10では、以上のように、不正充電器50から入力部11に印加された電流値等を、電流・電圧計測部12において計測することで、急速充電等の不適切な充電方式による充電が行われていることを検知する。
【0051】
これにより、急速充電等の不適切な充電方式による充電によって、バッテリパック10が劣化したおそれがあることを認識することで、使用者へ警告する等の措置を採ることができる。さらに、バッテリパック10の運用業者等は、バッテリパック10の寿命予測等の管理精度を向上させることができる。
(実施形態2)
本発明の他の実施形態に係るバッテリパック110およびこれを備えたバッテリシステム100について、
図6〜
図8を用いて説明すれば以下の通りである。
【0052】
本実施形態のバッテリシステム100は、
図6に示すように、指定充電器120によってバッテリパック10の充電を行う際に、過去に不適切な充電方式による充電が実施されたか否かを、指定充電器120側において検知する点で、上記実施形態1とは異なっている。
なお、上記実施形態1と同様の機能を有する構成については、同じ符号を付し、本実施形態における詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施形態のバッテリシステム100では、バッテリパック110は、入力部11と、電流・電圧計測部12と、メモリ13とを備えている。
一方、指定充電器120は、充電電圧印加部121と、不正充電検知部122と、通信部123とを備えている。
すなわち、本実施形態のバッテリシステム100では、過去に不適切な充電方式による充電が行われたか否かを、バッテリパック10側のメモリ13に保存されたデータ等を用いて、指定充電器120側の不正充電検知部122において判定する。
【0054】
具体的には、まず、現在、充電を行っている指定充電器120が適切な充電を行っているか否かの判定が、
図7のフローチャートに示す手順によって行われる。
すなわち、ステップS21では、指定充電器120の充電電圧印加部121から、バッテリパック110の入力部11に対して、充電が開始される。
次に、ステップS22では、バッテリパック110側の電流・電圧計測部12において、指定充電器120から印加された電流値および電圧値を計測する。
【0055】
次に、ステップS23では、電流・電圧計測部12において計測された電流値および電圧値が、メモリ13へ保存される。
次に、ステップS24では、指定充電器120側の不正充電検知部122が、バッテリパック110のメモリ13に保存された電流・電圧計測部12の計測結果と、予めメモリ13に保存されている電流波形等のデータとを取り出して比較する。
【0056】
ここで、上記基準値となるデータとは、上述したように、指定充電器120によって充電が行われた際に現れる電流値および電圧値の波形(
図3の実線参照)、あるいはその周波数領域の分布図(
図4の実線参照)を意味している。
次に、ステップS25において、ステップS24における比較の結果、計測結果が判定の基準となるデータに対して、所定の誤差範囲を超えるか否かに応じて、不適切充電であるか否かを判定する。
【0057】
本実施形態では、指定充電器120による充電中であるため、不適切充電ではない、つまり計測結果が所定の誤差範囲内であると判定され、ステップS26へ進む。
ステップS26では、ステップS25における判定の結果、指定充電器120による適切な充電方式による充電、すなわち急速充電等の不適切な充電方式による充電ではないことが認される。
【0058】
続いて、バッテリパック110のメモリ13に保存された過去の充電記録データを取り出して、過去に実施された不適切な充電方式による充電が実施されたか否かの判定が、
図8のフローチャートに示す手順によって行われる。
すなわち、ステップS31では、指定充電器120側の不正充電検知部122が、バッテリパック110側のメモリ13に保存された充電履歴を取り出す。
【0059】
次に、ステップS32では、不正充電検知部122において、メモリ13に保存されたそれぞれの充電時における計測結果(電流波形等)と、指定充電器120によって充電された際の電流波形等とを比較する。
次に、ステップS33において、過去の充電において、急速充電等の不適切な充電方式による充電が行われた履歴があるか否かを判定する。
【0060】
ここで、過去に、不適切な充電方式による充電の履歴がないと判定された場合には、ステップS34へ進む。一方、過去に、不適切な充電方式による充電の履歴があると判定された場合には、ステップS36へ進む。
ステップS34では、ステップS33において、過去に不適切な充電方式による充電が行われた履歴がないと判定されているため、そのまま充電が継続される。そして、ステップS35において、充電完了するまで充電器から電圧が印加される。
【0061】
一方、ステップS36では、ステップS33において、過去に不適切な充電方式による充電の履歴ありと判定されたため、通信部123を介して、不適切充電の履歴の検知結果を計測結果とともにバッテリパック110の運用業者60へ送信する。
これにより、上記実施形態1と同様に、バッテリパック110の運用業者60は、貸し出し中のバッテリパック110が急速充電等の不適切な充電方式による充電によって劣化したおそれがあることを認識することができる。よって、過去の使用履歴情報等を参照して、急速充電等の不適な充電方式による充電によりバッテリパック110の使用可能年数を短縮させた使用者に対して警告する等の措置を採ることができる。
【0062】
本実施形態のバッテリシステム100では、以上のように、過去に不適切な充電方式による充電が行われたことを、バッテリパック110のメモリ13に保存している。そして、指定充電器120によって適切な充電方式による充電が実施される際に、過去に不適切な充電方式による充電があったか否かを、メモリ13に保存された履歴等を参照して、指定充電器120において検知する。
【0063】
これにより、過去に実施された急速充電等の不適切な充電方式による充電によって、バッテリパック10が劣化したおそれがあることを検知することで、使用履歴等を参照して当該使用者へ警告する等の措置を採ることができる。また、バッテリパック110の運用業者等は、劣化したバッテリパック110の寿命予測等の管理精度を向上させることができる。
【0064】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0065】
(A)
上記実施形態1では、不正充電器50を用いて行われる急速充電を、不適切な充電方式の一例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、急速充電以外にも、バッテリパックに印加される電圧が急激に上昇・下降する不安定な充電器を用いた充電や、バッテリパックの満充電の上限値を超えた充電等のように、バッテリパックの劣化を早める充電方式も、不適切な充電方式に含まれる。
上記いずれの場合でも、バッテリパックに印加された電流波形あるいは電圧波形の解析や周波数解析等を行うことで、上記実施形態と同様に、不適切な充電方式による充電を検知することができる。
【0066】
(B)
上記実施形態2では、バッテリパック110側のメモリ13に保存された過去の充電履歴を取り出して、指定充電器120側の不正充電検知部122において不適切な充電方式による充電の有無を検知するバッテリシステム100を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
例えば、上記実施形態1と同様に、バッテリパック側に不正充電検知部を設け、不正充電検知部における判定結果をメモリへ保存する構成であってもよい。
この場合でも、指定充電器と接続された際に、メモリに保存された不正充電検知部における判定の結果を取り出すことで、上記実施形態2と同様の効果を得ることが可能なバッテリシステムを構築することができる。
【0068】
(C)
上記実施形態1では、バッテリパック10内にメモリ13が設けられた構成を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、
図9に示すように、通信部15を介してバッテリパック210と通信可能なクラウド213を、メモリの代わりに用いてもよい。
【0069】
この場合でも、通信部15を介して各種情報をクラウド213へ送ることで、クラウド213内の所定の領域に、電流・電圧計測部12における計測結果や不正充電検知部14における検知結果等を保存することができる。
よって、必要に応じて、クラウド213から必要な情報を取り出して、不適切な充電方式による充電を行った使用者等へ警告等を実施することができる。
なお、
図6に示すバッテリパック110の構成に含まれるメモリ13についても同様に、クラウド213に置き換えることが可能である。
【0070】
(D)
上記実施形態1では、電力消費体としての電動自動二輪車(モビリティ20)に、3本のバッテリパック10を搭載した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、電力消費体に搭載されるバッテリパックは、1本あるいは2本であってもよいし、4本以上であってもよい。
【0071】
また、電力消費体側にバッテリパックの装着部を複数設け、そのうち必要な電気容量分に相当する本数のバッテリパックを装着してもよい。
また、モビリティ20に搭載された3本のバッテリパック10が、シート20aの下に配置された構成を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、モビリティにおけるバッテリパックの搭載位置はシートの下以外であってもよい。
【0072】
(E)
上記実施形態1では、不適切な充電方式による充電であるか否かの検知結果を表示する表示部16を備えたバッテリパック10を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、表示部を備えていないバッテリパックであってもよい。
【0073】
この場合でも、不適切な充電方式による充電を検知した際に、通信部を介して、バッテリパックの運用業者に対して検知結果を送信することができる。
よって、バッテリパックを管理する運用業者は、不適切な充電方式による充電を実施した使用者等に対して、警告する、あるいは劣化による使用可能年数の短縮を予測してバッテリパックの使用寿命を正確化することが可能となる。
【0074】
(F)
上記実施形態1,2では、充電時に計測された電流波形あるいは電圧波形の解析、あるいは電流波形あるいは電圧波形をフーリエ変換した周波数解析によって、不適切な充電方式による充電であるか否かを判定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、電流波形あるいは電圧波形の解析と周波数解析とを組み合わせて、不適切な充電方式による充電であるか否かを判定してもよい。
【0075】
(G)
上記実施形態1では、本発明に係るバッテリパック10を、電動自動二輪車等のモビリティ20に搭載されるバッテリとして使用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
例えば、電動自動二輪車以外にも、電動一輪車、電動自転車、電気自動車(EV)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)等の他のモビリティ等に電力を供給するためのバッテリパックに対して本発明を適用してもよい。
あるいは、本発明のバッテリパックが搭載される構成としては、モビリティに限らず、交換可能なバッテリによって駆動される他の電気製品であってもよい。