(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記造形制御部は、前記第一造形層のうち前記第一ドットと前記第二ドットとが隣接した部分において前記第二造形層で覆うように立体物の造形を制御する、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の立体物造形装置。
第一の色の第一液体、及び、前記第一の色とは異なる第二の色の第二液体を含む複数種類の液体であってドットが形成される複数種類の液体を吐出するヘッドユニットを用い、硬化する前記ドットによる立体物を造形する立体物造形方法であって、
前記第一液体による第一ドット、及び、前記第二液体による第二ドットを少なくとも含む第一造形層と、
前記第一ドットと前記第二ドットとを接合するための第三液体による硬化した第二造形層であって前記第一造形層に含まれる前記第一ドットと前記第二ドットとを少なくとも接合した第二造形層と、
を少なくとも含み、且つ、前記第一造形層、前記第二造形層、前記第一造形層、及び、前記第二造形層を順に含むように立体物を造形する、立体物造形方法。
第一の色の第一液体、及び、前記第一の色とは異なる第二の色の第二液体を含む複数種類の液体であってドットが形成される複数種類の液体を吐出するヘッドユニットを備え、硬化する前記ドットによる立体物の造形を制御する立体物造形装置の制御プログラムであって、
前記第一液体による第一ドット、及び、前記第二液体による第二ドットを少なくとも含む第一造形層と、
前記第一ドットと前記第二ドットとを接合するための第三液体による硬化した第二造形層であって前記第一造形層に含まれる前記第一ドットと前記第二ドットとを少なくとも接合した第二造形層と、
を少なくとも含み、且つ、前記第一造形層、前記第二造形層、前記第一造形層、及び、前記第二造形層を順に含むように立体物の造形を制御する機能をコンピューターに実現させる、立体物造形装置の制御プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0013】
(1)本技術の概要:
まず、
図1〜15を参照して本技術の概要を説明する。尚、
図1〜15は模式的に示す図であり、各図は整合していないことがある。
【0014】
[態様1]
図1〜4等に例示される立体物造形装置1は、第一の色(例えばC(シアン)とM(マゼンタ))の第一液体LQ1、及び、前記第一の色とは異なる第二の色(例えばY(イエロー)とK(ブラック))の第二液体LQ2を含む複数種類の液体LQであってドットDTが形成される複数種類の液体LQを吐出するヘッドユニット3と、硬化する前記ドットDTによる立体物Objの造形を制御する造形制御部U1と、を備える。
図4等に例示するように、前記複数種類の液体LQは、前記第一液体LQ1による第一ドットDT1と、前記第二液体LQ2による第二ドットDT2と、を接合するための第三液体LQ3(例えばCL(クリア)インク)を含む。
図2等に例示するように、前記造形制御部U1は、前記第一ドットDT1、及び、前記第二ドットDT2を少なくとも含む第一造形層LY1と、前記第三液体LQ3による硬化した第二造形層LY2であって前記第一造形層LY1に含まれる前記第一ドットDT1と前記第二ドットDT2とを少なくとも接合した第二造形層LY2と、を少なくとも含み、且つ、前記第一造形層LY1、前記第二造形層LY2、前記第一造形層LY1、及び、前記第二造形層LY2を順に含むように立体物Objの造形を制御する。
【0015】
図15は、比較例として第二造形層が無い場合に造形層LY内において色が変わる境界部B1の強度が低下する様子を模式的に例示している。
図15の上段には、左半分にC(シアン)インクによって構成されるシアン色の領域を有し、右半分にY(イエロー)インクによって構成されるイエロー色の領域を有する立体物Objを模式的に示している。
図15の中段には、立体物Objの断面SECにおいて四角で囲った破線部分BL1を模式的に示している。
図15の下段には、造形層LYの太線部分を模式的に示している。
【0016】
造形層LY毎に紫外線硬化型インクのドットDTを形成して硬化ユニット61からの紫外線(UV)照射により硬化させると、立体物Objが形成される。
図15の下段に示すように、紫外線硬化型インクのドットDTにおける光重合は、硬化ユニット61側(
図15の上側)から進む。同時に重合した部分は、ポリマーが異なるインク間でも繋がって強度が高くなる。ここで、Yインクのドット(DT2)は、紫外線を吸収し易い色材が入っているため、硬化ユニット61とは反対側の重合が遅くなる。一方、Cインクのドット(DT1)は、含まれる色材が紫外線を吸収し難い(紫外線が透過し易い)ため、硬化ユニット61とは反対側の重合が速く進む。すなわち、CインクとYインクの硬化ユニット61による硬化速度は、異なる。そのため、同じ造形層LYにおいてCのドット(DT1)とYのドット(DT2)との境界部B1の内、硬化ユニット61側ではCインクとYインクのドット間で横に繋がったポリマーP3が形成されるものの、硬化ユニット61とは反対側ではCインクのポリマーP1とYインクのポリマーP2とが繋がらず強度が低くなる。異なる色のドット間で強度が低いと、境界部B1に亀裂、剥離、等が発生する可能性がある。
【0017】
一方、本技術の上記態様1では、
図8等に例示するように、第一造形層LY1に含まれる第一の色の第一ドットDT1と第二の色の第二ドットDT2とが第二造形層LY2の第三液体LQ3により接合される。このような状態で、立体物Objが第一造形層LY1、第二造形層LY2、第一造形層LY1、及び、第二造形層LY2を順に含む。従って、本態様は、造形層内において色が変わる境界部の強度低下を抑制可能な立体物造形装置1を提供することができる。
【0018】
ここで、第二造形層は、第一造形層の全体に重なってもよいし、第一造形層に対して部分的に重なってもよい。
【0019】
[態様2]
本立体物造形装置1は、前記ヘッドユニット3からの液体LQによるドットDTを硬化させる硬化ユニット61をさらに備えてもよい。前記第一液体LQ1の前記硬化ユニット61による硬化速度と、前記第二液体LQ2の前記硬化ユニット61による硬化速度と、は、異なってもよい。第一液体LQ1と第二液体LQ2の硬化速度が異なると、第一液体LQ1のドットDTと第二液体LQ2のドットDTとの境界部B1の強度が低下し易い傾向にある。従って、本態様は、造形層内において色が変わる境界部の強度低下を抑制する好適な技術を提供することができる。
ここで、硬化ユニットは、紫外線照射ユニット、可視光線照射ユニット、加熱ユニット、等を含む。
尚、第一液体の硬化速度と第二液体の硬化速度とが同じでも、第一液体の性質と第二液体の性質とが異なる等により、第一液体のドットと第二液体のドットとの境界部の強度が低下し易い傾向となることがある。このような場合にも、本技術を適用可能である。
【0020】
[態様3]
前記第三液体LQ3は、前記第一液体LQ1、及び、前記第二液体LQ2よりも色材成分が少ない、あるいはまったく色材を含まない液体LQでもよい。この態様は、良好な色再現を維持しながら造形層内において色が変わる境界部の強度低下を抑制可能な技術を提供することができる。前記第三液体LQ3は、無着色の液体(例えばCLインク)でもよい。
むろん、第三液体の色材成分が第一液体又は第二液体の色材成分以上あることも、本技術に含まれる。
【0021】
[態様4]
図2等に例示するように、前記造形制御部U1は、前記第二造形層LY2で前記第一造形層LY1を覆うように立体物Objの造形を制御してもよい。すると、第一造形層LY1に含まれる第一ドットDT1と第二ドットDT2とが第三液体LQ3により接合される。従って、本態様は、造形層内において色が変わる境界部の強度低下を簡易な制御で抑制可能な技術を提供することができる。
【0022】
[態様5]
また、
図9,12等に例示するように、前記造形制御部U1は、前記第一造形層LY1のうち前記第一ドットDT1と前記第二ドットDT2とが隣接した部分において選択的に前記第二造形層LY2で覆うように立体物Objの造形を制御してもよい。すると、第一造形層LY1のうち第一ドットDT1と第二ドットDT2とが隣接していない部分を第二造形層LY2で覆う必要が無い。従って、本態様は、造形層内において色が変わる境界部の強度低下を効率よく抑制可能な技術を提供することができる。
【0023】
[態様6]
図4等に例示するように、前記第三液体LQ3のドット(DT3)は、前記第一ドットDT1、及び、前記第二ドットDT2よりも小さくてもよい。この態様は、良好な色再現を維持しながら造形層内において色が変わる境界部の強度低下を抑制可能な技術を提供することができる。尚、第三液体のドットのサイズが第一ドット又は第二ドットのサイズ以上であることも、本技術に含まれる。
【0024】
[態様7]
図1に例示するように、前記造形制御部U1は、液体LQを吐出する前記ヘッドユニット3を造形中の立体物Objに対して走査方向D1へ相対移動させる駆動部U2を有してもよい。
図4,5に例示するように、前記ヘッドユニット3は、前記第一液体LQ1を吐出する第一ノズルNZ1を有してもよい。また、前記ヘッドユニット3は、前記第二液体LQ2を吐出する第二ノズルNZ2を有してもよい。さらに、前記ヘッドユニット3は、前記第一ノズルNZ1、及び、前記第二ノズルNZ2よりも前記走査方向D1において遡る側D1uに配置されて前記第三液体LQ3を吐出する第三ノズルNZ3を有してもよい。本態様は、1回の走査において第一造形層LY1と第二造形層LY2の両方を形成することができるので、立体物を造形する処理を高速化させることができる。
むろん、第三ノズルが第一ノズル及び第二ノズルよりも走査方向において遡る側に無く、該遡る側とは反対側にある場合も、本技術に含まれる。
ここで、ヘッドユニットを立体物に対して走査方向へ移動させることには、立体物を移動させないでヘッドユニットを移動させること、ヘッドユニットを移動させないで立体物を移動させること、及び、ヘッドユニットと立体物の両方を移動させることが含まれる。
【0025】
[態様8]
前記造形制御部U1は、前記走査方向D1の双方向の走査で立体物Objが造形されるように前記ヘッドユニット3から液体LQを吐出させてもよい。
図5に例示するように、前記第三ノズルNZ3は、前記走査方向D1において、前記第一ノズルNZ1、及び、前記第二ノズルNZ2を挟む両側にそれぞれ配置されてもよい。本態様は、往方向の走査において第一造形層LY1と第二造形層LY2の両方を形成することができ、復方向の走査においても第一造形層LY1と第二造形層LY2の両方を形成することができる。従って、本態様は、立体物を造形する処理を高速化させることができる。
【0026】
[態様9]
前記第一液体LQ1は、シアンインクとマゼンタインクの少なくとも一方を含んでもよい。前記第二液体LQ2は、イエローインクを含んでもよい。イエローインクは短波長側の光を比較的吸収し易いので、紫外線照射時の硬化速度が遅くなる傾向にある。一方、シアンインクとマゼンタインクは短波長側の光を比較的透過し易いので、紫外線照射時の硬化速度が速くなる傾向にある。そのため、第一造形層LY1に含まれるシアンインクのドットDTとマゼンタインクのドットDTとの境界部B1は、強度が比較的高くなる傾向にある。一方、第一造形層LY1に含まれるイエローインクのドットDTと、シアンインク又はマゼンタインクのドットDTと、の境界部B1は、強度が比較的弱くなる傾向にある。従って、本態様は、造形層内において色が変わる境界部の強度低下を抑制する好適な例を提供することができる。
さらに、前記第二液体LQ2は、イエローインクに加えてブラックインク等を含んでもよい。
【0027】
[態様10]
図1〜4等に例示される立体物造形方法は、前記第一造形層LY1と前記第二造形層LY2とを少なくとも含み、且つ、前記第一造形層LY1、前記第二造形層LY2、前記第一造形層LY1、及び、前記第二造形層LY2を順に含むように立体物Objを造形する。この態様は、造形層内において色が変わる境界部の強度低下を抑制可能な立体物造形方法を提供することができる。
【0028】
[態様11]
図1〜4等に例示される立体物造形装置1の制御プログラムPR0は、前記第一造形層LY1と前記第二造形層LY2とを少なくとも含み、且つ、前記第一造形層LY1、前記第二造形層LY2、前記第一造形層LY1、及び、前記第二造形層LY2を順に含むように立体物Objの造形を制御する機能をコンピューターに実現させる。この態様は、造形層内において色が変わる境界部の強度低下を抑制可能な制御プログラムを提供することができる。
【0029】
(2)立体物造形装置を含む立体物造形システムの具体例:
図1は、立体物造形装置を含むシステムの構成例として、立体物造形装置1とホスト装置9を備える立体物造形システム100の構成を示している。
図2は、立体物Objの造形例を模式的に示している。
図3は、立体物造形装置1の例を模式的に示している。
図2,3に示すYは、イエローの意味ではなく、Y方向を表す。尚、
図2,3に示すX,Y,Z方向は、互いに直交するものとするが、互いに交差していれば直交しない場合も本技術に含まれる。
図1に示す立体物造形装置1は、吐出した液体LQにより形成されるドットDTにより層状の第一造形層LY1と層状の第二造形層LY2の組合せを所定の厚さΔZで形成し、これら第一造形層LY1と第二造形層LY2の組合せを積層することで立体物Objを造形する。
図1に示すホスト装置9は、立体物Objの各第一造形層LY1の形状及び色彩を定める造形層データFDを生成する。
【0030】
ホスト装置9は、表示操作部91、モデルデータ生成部92、造形データ生成部93、図示しない記憶部、を備え、図示しないCPU(Central Processing Unit)により各部の動作が制御される。表示操作部91は、ディスプレイ、及び、キーボードやポインティングデバイスといった操作入力装置を含む。モデルデータ生成部92は、後述するモデルデータDatを生成する。造形データ生成部93は、モデルデータDatに基づいて造形層データFDを生成する。前記記憶部は、ホスト装置9の制御プログラム、立体物造形装置1のドライバープログラム、CAD(Computer Aided Design)ソフトといったアプリケーションプログラム、等を記憶する。ホスト装置9には、パーソナルコンピューターといったコンピューター等が含まれる。
【0031】
モデルデータDatは、立体物Objを表すモデルの形状及び色彩を示すデータであり、立体物Objの形状及び色彩を指定するためのデータである。尚、立体物Objの色彩には、立体物Objに複数色が付される場合における当該複数色の付され方、すなわち、立体物Objに付される複数色により表される模様、文字、その他の画像も含むこととする。モデルデータDatは、少なくとも立体物Objの外部形状を特定可能な情報を含むものであればよく、立体物Objの外部形状や色彩に加えて立体物Objの内部の形状や材料等を指定するものであってもよい。モデルデータDatのデータ形式には、AMF(Additive Manufacturing File Format)、STL(Standard Triangulated Language)、等を用いることができる。
モデルデータ生成部92は、例えば、CADアプリケーションで実現され、立体物造形システム100の利用者が表示操作部91を操作して入力した情報等に基づいて、立体物Objの形状及び色彩を指定するモデルデータDatを生成する。
【0032】
本具体例では、第一造形層LY1と第二造形層LY2の組合せがQ組(QはQ≧2を満たす自然数)積層された立体物Objを造形する方法を説明することにする。また、第一造形層LY1と第二造形層LY2を形成するQ回の積層処理のうちq回目(qは1≦q≦Qを満たす自然数)の積層処理で形成される第一造形層LY1を造形層LY1[q]と称し、q回目の積層処理で形成される第二造形層LY2を造形層LY2[q]と称し、第一造形層LY1[q]の形状及び色彩を定める造形層データFDを造形層データFD[q]と称する。尚、
図2に示す第二造形層LY2[q]は造形層データと無関係にCLインク(第三液体LQ3の例)で形成されるため、第二造形層LY2[q]の形状及び色彩を定める造形層データを生成する必要は無い。
【0033】
造形データ生成部93は、まず、モデルデータDatの示す三次元の形状を厚さΔZ毎にスライスして得られる断面の形状及び色彩を示す断面モデルデータを生成する。その上で、造形データ生成部93は、断面モデルデータの示す形状及び色彩に対応する第一造形層LY1[q]を形成するために、立体物造形装置1が形成すべきドットの配置を決定し、決定結果を造形層データFD[q]として出力する。造形層データFD[q]は、断面モデルデータの示す形状及び色彩を格子状の配置のボクセル(単位造形体)Vxに細分化することで、各ボクセルVxに形成すべきドットDTを指定する。ボクセルVxは、仮想の立体であり、本具体例では厚さがΔZで単位体積の直方体であるものとする。むろん、仮想のボクセルの形状は、直方体に限定されない。
図2に示す例では、第一造形層LY1のドット(第一ドットDT1又は第二ドットDT2)と第二造形層LY2の第三ドットDT3とがボクセルVxに形成されるものとする。一つのボクセルVxには、3個以上のドットが形成されてもよいし、後述するように1個のみドットが形成されてもよい。
【0034】
立体物造形装置1は、造形層データFD[q]に基づいて造形層LY1[q],LY2[q]の積層処理を行う。
図2には、造形層データFD[1]に基づいて第一造形層LY1[1]を形成し、第一造形層LY1[1]上に第二造形層LY2[1]を積層し、造形層データFD[2]に基づいて第一造形層LY1[2]を積層し、第一造形層LY1[2]上に第二造形層LY2[2]を積層する例を示している。立体物造形装置1は、造形層LY1[q],LY2[q]を順番に積層することにより立体物Objを造形する。
【0035】
尚、立体物Objを造形するためには、立体物Objが中実であることが好ましい。本具体例の造形データ生成部93は、モデルデータDatの指定する形状が中空形状である場合、モデルデータDatの示す形状の中空部分を補完して立体物Objが中実となるような造形層データFDを生成するものとする。また、中空部分を水溶性インク等といった、立体物造形後に容易に除去可能な材料で形成して該材料を除去してもよい。
【0036】
次に、
図1〜3等を参照して立体物造形装置1を説明する。
図1,3に示す立体物造形装置1は、造形台45、キャリッジ41、ヘッドユニット3、硬化ユニット61、位置変化機構7、記憶部60、制御部6、等を備える。造形台45は、造形層LY1,LY2の積載面を上面に有し、造形台昇降機構79aにより筐体40に対して昇降可能に設置されている。キャリッジ41は、ヘッドユニット3とインクカートリッジ(液体カートリッジ)48が搭載され、造形台45の上方に配置されている。ヘッドユニット3は、詳しくは後述するが、造形台45に向かって液滴(液体LQ)を吐出(噴射)する複数の吐出部Dを有する記録ヘッド30、及び、各吐出部Dへの駆動信号Vinを生成する駆動信号生成部31を備えている。尚、位置変化機構7と制御部6は、造形制御部U1の例である。
【0037】
硬化ユニット61は、造形台45の上に吐出された液体LQによるドットDTを硬化させる。硬化ユニット61には液体LQを硬化させるために適切な波長の光源、または熱源を用いる。例えば液体LQとして紫外線硬化インクを用いるなら硬化ユニット61には液体LQの硬化効率の良い波長をもった紫外線光源で構成する。液体LQとして可視光硬化型インクを用いるなら硬化ユニット61には可視光光源を用い、熱硬化型インクを用いるなら硬化ユニット61には赤外線ヒーターなどの熱源を用いる。硬化ユニット61は、例えば、造形台45の上側(+Z方向)に設置することができる。本具体例では、硬化ユニット61が波長395nmを中心波長とした近紫外線のLED光源であって造形台45の+Z方向に配置される場合について説明する。
【0038】
位置変化機構7は、駆動モーター71〜74、モータードライバー75〜78、等を備える。昇降機構駆動モーター71は、モータードライバー75で駆動されて造形台昇降機構79aを介して造形台45をZ方向(+Z方向及び−Z方向)へ移動させる。キャリッジ駆動モーター72は、モータードライバー76で駆動されてキャリッジ41をキャリッジガイド79bに沿ってY方向(+Y方向及び−Y方向)へ移動させる。尚、キャリッジ駆動モーター72とモータードライバー76は、駆動部U2の例である。キャリッジガイド駆動モーター73は、モータードライバー77で駆動されてキャリッジガイド79bをガイド79cに沿ってX方向(+X方向及び−X方向)へ移動させる。硬化ユニット駆動モーター74は、モータードライバー78で駆動されて硬化ユニット61をガイド79dに沿ってX方向(+X方向及び−X方向)へ移動させる。
【0039】
記憶部60は、不揮発性メモリーとRAM(Random Access Memory)を備える。不揮発性メモリーには、立体物造形装置の制御プログラムPR0等が記憶される。不揮発性メモリーには、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリーといったデータの書き換え可能な不揮発性半導体メモリー、ハードディスクといったデータの書き換え可能な不揮発性磁気メモリー、等を用いることができる。RAMには、不揮発性メモリーから展開された制御プログラムPR0、ホスト装置9からの造形層データFD、等が格納される。
【0040】
制御部6は、制御プログラムPR0等に従って立体物造形装置全体の制御処理を行うCPU等を備えている。制御部6は、ホスト装置9からの造形層データFDに基づいて、ヘッドユニット3及び位置変化機構7の動作を制御することにより、モデルデータDatに応じた立体物Objを造形する。例えば、制御部6は、造形層データFDに従って、吐出部Dを駆動させるためのアナログ駆動波形信号Comと波形指定信号SIを含む各種信号を生成し、これら生成した信号をヘッドユニット3へ出力する。また、制御部6は、造形層データFDに従って、モータードライバー75〜78の動作を制御するための各種信号を生成し、これら生成した信号を位置変化機構7へ出力する。
【0041】
図4は、ヘッドユニット3に含まれる記録ヘッド30のノズルNZ(
図1に示す吐出部Dの一部)の配置例を模式的に示している。
図4の上側には、記録ヘッド30において複数のノズル列32がY方向(走査方向D1)へ並べられたノズル面33を示している。
図4に示す記録ヘッド30は、移動していない造形台45に対して走査方向D1へ(遡る側D1uから反対側D1dへ)移動している最中にドット形成用の液体LQをノズルNZから吐出する単方向記録を行うものとする。複数のノズル列32は、走査方向D1の順に、CLの液滴を吐出する第三ノズルNZ3がX方向へ並んだノズル列32CL、Cの液滴を吐出する第一ノズルNZ1がX方向へ並んだノズル列32C、Mの液滴を吐出する第一ノズルNZ1がX方向へ並んだノズル列32M、Yの液滴を吐出する第二ノズルNZ2がX方向へ並んだノズル列32Y、及び、Kの液滴を吐出する第二ノズルNZ2がX方向へ並んだノズル列32Kを含んでいる。ここで、ノズルNZ1〜NZ3をノズルNZと総称する。CとMは第一の色の例であり、YとKは第二の色の例であり、CインクとMインクは第一液体LQ1の例であり、YインクとKインクは第二液体LQ2の例であり、CLインクは第三液体LQ3の例である。これらの液体LQ1〜LQ3を液体LQと総称する。CLインクは、色材を添加していないインクであり、CMYKのインクよりも色材成分が少ない液体である。また、
図4の下側に示すように、CLの液滴から第三ドットDT3が形成され、CとMの液滴から第一ドットDT1が形成され、YとKの液滴から第二ドットDT2が形成される。これらのドットDT1〜DT3をドットDTと総称する。単方向記録を行うと、同じボクセルVxに対してCMYKのいずれかのドットDT1,DT2の上にCLの第三ドットDT3が形成される。このようにして第二造形層LY2を形成するCLインクは、CとMの第一液体LQ1による第一ドットDT1と、YとKの第二液体LQ2による第二ドットDT2と、を接合するための第三液体LQ3の例である。
【0042】
各ノズル列32のノズルNZの配列は、ノズル面33内においてX方向からずれた方向でもよく、さらに、直線状のみならず、いわゆる千鳥状でもよい。
図1に示す吐出部Dは、ノズルNZに加えて、印加される駆動信号VinによりノズルNZから液滴を吐出させる駆動素子を有している。駆動素子には、ノズルNZに連通する圧力室内の液体LQに圧力を加える圧電素子、熱により圧力室内に気泡を発生させてノズルNZから液滴を吐出させるサーマル素子、等を用いることができるが、本実施形態ではピエゾ素子を圧電素子として駆動素子を構成する。前記圧力室には、インクカートリッジ48から液体LQが供給される。圧力室内の液体LQは、駆動素子によってノズルNZから造形台45に向かって液滴として吐出され、造形層LYに液滴のドットDTが形成される。記録ヘッド30と造形台45とが相対移動することにより、造形層データFDに対応した造形層LYが形成される。
【0043】
双方向記録を行う場合、
図5に示す記録ヘッド30を使用してもよい。この記録ヘッド30の複数のノズル列32は、往方向D2の順に、CLの液滴を吐出する第三ノズルNZ3がX方向へ並んだノズル列32CL1、ノズル列32C、ノズル列32M、ノズル列32Y、ノズル列32K、及び、CLの液滴を吐出する第三ノズルNZ3がX方向へ並んだノズル列32CL2を含んでいる。往方向D2の記録では、ノズル列32CL1を使用することにより、同じボクセルVxに対してCMYKのいずれかのドットDT1,DT2の上にCLの第三ドットDT3が形成される。復方向D3の記録では、ノズル列32CL2を使用することにより、同じボクセルVxに対してCMYKのいずれかのドットDT1,DT2の上にCLの第三ドットDT3が形成される。
【0044】
駆動信号生成部31には、ノズルNZから液滴を吐出させる駆動素子に駆動信号を印加する種々の公知の回路を使用可能である。
【0045】
図6は、大ドット相当の液滴の吐出、中ドット相当の液滴の吐出、小ドット相当の液滴の吐出、又は、液滴の非吐出を駆動信号Vinから生成する概念の一例を模式的に示している。尚、
図6に示す駆動信号Vinの波形PL1,PL2,PL3は、あくまでも模式的なものであり、実際の波形とは限らない。
【0046】
本例においてノズルNZから大ドット相当の液滴を吐出する場合、駆動信号生成部31は、制御部6から入力される駆動波形信号Comに基づいて所定の吐出単位期間に3個の波形PL1,PL2,PL3を駆動信号Vinとして吐出部Dに供給する。これにより、各波形PL1,PL2,PL3に合わせたタイミングでノズルNZから液滴が吐出され合体して大ドットが形成される。
【0047】
また、ノズルNZから中ドット相当の液滴を吐出する場合、駆動信号生成部31は、制御部6から入力される駆動波形信号Comに基づいて上記吐出単位期間に2個の波形PL1,PL2を駆動信号Vinとして吐出部Dに供給する。これにより、各波形PL1,PL2に合わせたタイミングでノズルNZから液滴が吐出され合体して中ドットが形成される。
【0048】
さらに、ノズルNZから小ドット相当の液滴を吐出する場合、駆動信号生成部31は、制御部6から入力される駆動波形信号Comに基づいて上記吐出単位期間に1個の波形PL1を駆動信号Vinとして吐出部Dに供給する。これにより、波形PL1に合わせたタイミングでノズルNZから液滴が吐出されて小ドットが形成される。
加えて、ノズルNZから液滴を吐出しない場合、駆動信号生成部31は、上記波形PL1,PL2,PL3のいずれも吐出部Dに供給しない、これにより、ノズルNZから液滴が吐出されずドットが形成されない。
【0049】
(3)立体物造形装置の第一処理例:
図7は、
図1に示す立体物造形装置1で行われる造形処理の例を示している。この処理は、制御部6が中心となって行う。制御部6は、ホスト装置9から造形層データFDを取得すると、ステップS102〜S108の造形処理において硬化するドットDTによる立体物Objの造形を制御する。以下、「ステップ」の記載を省略する。尚、立体物造形装置1は、マルチタスクにより複数の処理を並列して実行している。
【0050】
造形層データFDを取得した制御部6は、ドットDTを形成する造形層LY1[q],LY2[q]を設定する(S102)。この処理は、例えば、積層処理の実行回数を示す変数qにS102の処理回数(1,2,…,Q)を設定する処理とすることができる。次に、制御部6は、造形層LY1[q],LY2[q]を形成するためのZ方向における位置に造形台45を移動させるように、モータードライバー75に昇降機構駆動モーター71を駆動させる(S104)。例えば、
図2の造形層LY1[1],LY2[1]を形成する場合、制御部6は、造形台45を硬化ユニット61に近い所定の近接位置に上昇させる。
図2の造形層LY1[2],LY2[2]を形成する場合、制御部6は、造形台45を前記近接位置よりも厚さΔZ下降させる。
【0051】
造形台45の移動後、制御部6は、q層目の造形層データFD[q]に基づいて造形層LY1[q],LY2[q]が形成されるように、ヘッドユニット3、位置変化機構7、及び、硬化ユニット61の動作を制御する(S106)。この処理は、例えば、ヘッドユニット3を走査方向D1(Y方向)へ走査させながらインク滴(液体LQ)をノズルNZから吐出させてヘッドユニット3をX方向へ送ることを繰り返す処理とすることができる。例えば、制御部6は、ヘッドユニット3を走査方向D1へ移動させるようにモータードライバー76(駆動部U2に含まれる例)にキャリッジ駆動モーター72(駆動部U2に含まれる例)を駆動させる。また、制御部6は、ヘッドユニット3とともにキャリッジガイド79bをX方向へ移動させるようにモータードライバー77にキャリッジガイド駆動モーター73を駆動させる。ここで、CMYKのノズルNZ1,NZ2からは、造形層データFD[q]に応じてCMYKのインク(液体LQ1,LQ2)を吐出させ、所定サイズ(例えば大ドット)のドットDT1,DT2を形成させる。また、CLの第三ノズルNZ3からは、造形層データFD[q]とは無関係にCLインク(第三液体LQ3)を吐出させ、所定サイズ(例えば小ドット)の第三ドットDT3をドットDT1,DT2に重ねる。
図4,5で示したように、同じボクセルVxに対してCMYKのノズルNZ1,NZ2からのインク滴が着弾した後に、CLの第三ノズルNZ3からのインク滴が着弾する。このため、
図2,7,8に示すように、第一造形層LY1を形成するCMYKのドットDT1,DT2の上に、第二造形層LY2を形成するCLの第三ドットDT3が重ねられる。
【0052】
上側をヘッドユニット3が通り過ぎたドットDT1〜DT3には、硬化ユニット61からの紫外線(UV)が上から照射される。これにより、CMYK及びCLのインクに含まれる成分が重合し、ドットDT1〜DT3が硬化する。このようにして、第一造形層LY1[q]のドットDT1,DT2が硬化し、該第一造形層LY1[q]を覆う第二造形層LY2[q]の第三ドットDT3が硬化する。
【0053】
造形層LY1[q],LY2[q]の形成後、制御部6は、造形層LY1[q],LY2[q]を全て設定した否かを判断する(S108)。q<Qである場合、制御部6は、S102〜S108の処理を繰り返す。例えば、q=1である場合、次のS102の処理において造形層LY1[2],LY2[2]が設定される。q=Qである場合、制御部6は、造形処理を終了させる。これにより、第一造形層LY1[q]、第二造形層LY2[q]、第一造形層LY1[q+1]、及び、第二造形層LY2[q+1]の順に含むように形成された立体物Objが造形台45に載置された状態となる。
【0054】
図8は、第一造形層LY1の全体を第二造形層LY2で覆う例を模式的に示している。
図8の上段には、左半分にC(シアン)インクによって構成されるシアン色の領域を有し、右半分にY(イエロー)インクによって構成されるイエロー色の領域を有する立体物Objを模式的に示している。
図8の中段には、立体物Objの断面SECにおいて四角で囲った破線部分BL1を模式的に示している。
図8の下段には、造形層LY1,LY2の太線部分を模式的に示している。
【0055】
上述したように、第一造形層LY1[q]のドットDT1,DT2を形成し該第一造形層LY1[q]上に第二造形層LY2[q]の第三ドットDT3を形成して硬化ユニット61からの紫外線照射により硬化させることを繰り返すと、立体物Objが形成される。ヘッドユニット3の走査方向D1への走査毎に、第二造形層LY2[q]は、第一造形層LY1[q]よりも硬化ユニット61に近い側に形成される。
図8の下段に示すように、紫外線硬化型インクのドットDTにおける光重合は、硬化ユニット61側(
図8の上側)から進む。同時に重合した部分は、ポリマーが繋がって強度が高くなる。ここで、CLインクのドット(DT3)は、色材が入っていないため、紫外線が透過し易く、硬化ユニット61とは反対側の重合が速く進む。Yインクのドット(DT2)は、紫外線を吸収し易い色材が入っているため、硬化ユニット61とは反対側の重合が遅くなる。図示していないが、Kインクのドット(DT2)も、同様である。一方、Cインクのドット(DT1)は、含まれる色材が紫外線を吸収し難い(紫外線が透過し易い)ため、硬化ユニット61とは反対側の重合が速く進む。図示していないが、Mインクのドット(DT1)も、同様である。すなわち、YインクならびにKインクの硬化ユニット61による硬化速度と、CインクならびにMインクの硬化ユニット61による硬化速度と、が異なる。
【0056】
そのため、同じ第一造形層LY1においてCインクのドット(DT1)とYインクのドット(DT2)との境界部B1の内、硬化ユニット61側ではCインクとYインクのドット間で横に繋がったポリマーP3が形成されるものの、硬化ユニット61とは反対側ではCインク中のポリマーP1とYインク中のポリマーP2とが繋がらなくなる。しかし、第一造形層LY1上の第二造形層LY2において、硬化ユニット61とは反対側でもCLのポリマーP4が境界部B1を突き抜けて横に繋がる。これにより、接合用の第三液体LQ3による硬化した第二造形層LY2が第一造形層LY1に含まれる第一ドットDT1と第二ドットDT2とを少なくとも接合し、第一造形層LY1において色が変わる境界部の強度低下が抑制される。このような状態で、立体物Objが第一造形層LY1、第二造形層LY2、第一造形層LY1、及び、第二造形層LY2を順に含む。
【0057】
以上より、本具体例は、造形層内において色が変わる境界部の亀裂、剥離、等の強度低下を抑制可能な技術を提供することができる。
また、第二造形層LY2を形成するCLインクがCMYKのインクよりも色材成分が少ないあるいは全く含まない液体であるので、立体物Objの良好な色再現が維持される。第二造形層LY2におけるCLインクの第三ドットDT3が第一造形層LY1におけるCMYKのインクのドットDT1,DT2よりも小さいことによっても、立体物Objの良好な色再現が維持される。
さらに、
図4,5に示すヘッドユニット3はCMYKのノズルNZ1,NZ2よりも走査方向D1において遡る側D1uにCLインクを吐出する第三ノズルNZ3が配置されているので、1回の走査において第一造形層LY1と第二造形層LY2の両方を形成することができる。従って、本具体例は、立体物を造形する処理を高速化させることができる。
【0058】
(4)立体物造形装置の第二処理例:
図9に示すように、第一造形層LY1のうち第一ドットDT1と第二ドットDT2とが隣接した部分のみ第二造形層LY2で覆ってもよい。
図9の上側には、立体物Objの断面SECにおいて四角で囲った破線部分BL1を模式的に示している。
図9の下側には、造形層LY1,LY2の太線部分を模式的に示している。尚、本具体例において、ドットDT1,DT2が隣接する方向は、X方向とY方向であり、X方向及びY方向からずれて点接触する方向を含まない。
【0059】
図10は、第一造形層LY1のうちドットDT1,DT2の隣接部分のみ第二造形層LY2で覆う造形処理の例を示している。この処理において、造形層データFDを取得した制御部6は、上述のS102と同様、ドットDTを形成する造形層LY1[q],LY2[q]を設定する(S202)。次に、制御部6は、CLの第三ドットDT3を重ねるドットDT1,DT2の位置(x,y)を決めるため、ドットDT1,DT2を形成する全ドット位置の中から判定対象のドット位置(x,y)を設定する(S204)。例えば、X方向のドット位置xが1,2,…,XmaxのXmax箇所あり、Y方向のドット位置yが1,2,…,YmaxのYmax箇所ある場合、Xmax×Ymax箇所のドット位置の中から未設定であった1箇所のドット位置(x,y)が設定される。さらに、制御部6は、第一造形層LY1[q]においてCインクあるいはMインクの第一ドットDT1とYインクあるいはKインクの第二ドットDT2とが隣接することになるか否かを判断する(S206)。ドットDT1,DT2が隣接する場合、判定対象のドット位置(x,y)にCLの第三ドットが発生するように造形層データFD[q]を修正する(S208)。ドットDT1,DT2が隣接していない場合、S208の処理は行われない。制御部6は、ドットDT1,DT2を形成する全ドット位置を設定するまでS204〜S208の処理を繰り返す(S210)。
【0060】
図10の右側に例示するように、Cドット(DT1)とYドット(DT2)との隣接部分、Cドット(DT1)とKドット(DT2)との隣接部分、Mドット(DT1)とYドット(DT2)との隣接部分、及び、Mドット(DT1)とKドット(DT2)との隣接部分については、同じボクセルVxにCLドット(DT3)が発生するようにFD[q]は修正される。
【0061】
全てのドットでS204からS208の処理が終了したのち、制御部6は、S104と同様、造形層LY1[q],LY2[q]を形成するためのZ方向における位置に造形台45を移動させるように、モータードライバー75に昇降機構駆動モーター71を駆動させる(S212)。
【0062】
造形台45の移動後、制御部6は、q層目の造形層データFD[q]に基づいて造形層LY1[q],LY2[q]が形成されるように、ヘッドユニット3、位置変化機構7、及び、硬化ユニット61の動作を制御する(S214)。この処理は、例えば、ヘッドユニット3を走査方向D1(Y方向)へ走査させながらインク滴(液体LQ)をノズルNZから吐出させてヘッドユニット3をX方向へ送ることを繰り返す処理とすることができる。ここで、CMYKのノズルNZ1,NZ2からは、造形層データFD[q]に応じてCMYKのインク(液体LQ1,LQ2)を吐出させ、所定サイズ(例えば大ドット)のドットDT1,DT2を形成させる。また、第三ノズルNZ3からは、CLドット(DT3)を重ねるドット位置においてCLインク(第三液体LQ3)を吐出させ、所定サイズ(例えば小ドット)の第三ドットDT3をドットDT1,DT2に重ねる。
【0063】
上側をヘッドユニット3が通り過ぎたドットDT1〜DT3には、硬化ユニット61からの紫外線が上から照射される。これにより、第一造形層LY1[q]のCMYKのドットDT1,DT2が硬化し、該第一造形層LY1[q]においてドットDT1,DT2の隣接部分を覆う第二造形層LY2[q]のCLの第三ドットDT3が硬化する。
【0064】
造形層LY1[q],LY2[q]の形成後、制御部6は、造形層LY1[q],LY2[q]を全て設定した否かを判断する(S216)。q<Qである場合、制御部6は、S202〜S214の処理を繰り返す。q=Qである場合、制御部6は、造形処理を終了させる。これにより、第一造形層LY1[q]、第二造形層LY2[q]、第一造形層LY1[q+1]、及び、第二造形層LY2[q+1]の順に含むように形成された立体物Objが造形台45に載置された状態となる。
以上の処理により、
図9の下段に示すように、第一造形層LY1のうちドットDT1,DT2の隣接部分のみ第二造形層LY2で覆われる。尚、CLの第三ドットDT3が小ドットである一方、CMYKのドットDT1,DT2が大ドットである。従って、CLの第三ドットDT3が部分的に追加されても、造形層LY1[q],LY2[q]を合わせた厚さへの影響は少ない。むろん、造形層LY1[q],LY2[q]を形成するインク滴(液体LQ1〜LQ3)が着弾した直後に造形層LY1[q],LY2[q]を物理的に均して厚さを均一化する処理を行うユニットを立体物造形装置1に追加してもよいし、CLの第三ドットDT3と重なる位置にあるドットDT1,DT2については吐出量を低減させるなどして厚みが均一になるようにしてもよい。
【0065】
図11は、造形層データFD[q]を修正する例を模式的に示している。造形層データFD[q]において、第一造形層LY1のドットDT1,DT2にCLドット(DT3)が重ねられるドット位置にハッチングを付している。
例えば、ドット位置(x,y)=(2,2)のCインクのドット(DT1)は、(X方向及びY方向において)隣接することになるドットがCインクおよびMインクのドット(DT1)である。従って、ドット位置(2,2)にCLドット(DT3)は重ねられない。ドット位置(4,7)のCインクのドット(DT1)に隣接することになるドットはYインクおよびKインクのドット(DT2)であるので、ドット位置(4,7)にCLドット(DT3)が重ねられる。ドット位置(5,2)のKインクのドット(DT2)に隣接することになるドットはCインクおよびMインクのドット(DT1)であるので、ドット位置(5,2)にCLドット(DT3)が重ねられる。ドット位置(6,7)のKインクのドット(DT2)に隣接することになるドットはYインクおよびKインクのドット(DT2)であるので、ドット位置(6,7)にCLドット(DT3)は重ねられない。
【0066】
以上説明したように、本具体例は、第一造形層LY1のうち第一ドットDT1と第二ドットDT2とが隣接していない部分を第二造形層LY2で覆う必要が無い。従って、本具体例は、造形層内において色が変わる境界部の強度低下を効率よく抑制可能な技術を提供することができる。
【0067】
尚、S208において、造形層LY1[q],LY2[q]の厚さをほぼ一定にするために、CLドット(DT3)を重ねるボクセルVxのCMYKのドットDT1,DT2を小さくしてもよい。例えば、小ドットと中ドットを合わせた体積が大ドットの体積とほぼ同じである場合、CLドットが重ねられないボクセルVxのドットDT1,DT2を大ドットにすることにして、CLドットが重ねられるボクセルVxのドットDT1,DT2を大ドットから中ドットに変更してもよい。
【0068】
(5)立体物造形装置の第三処理例:
図12に例示するように、立体物Objの内部に所定の液体(例えばCLインク)を用いる場合にも、本技術を適用可能である。
図12の上側には、左半分にCとMとKの領域を有し、右半分にCとYの領域を有する立体物Objを模式的に示している。
図12の下側には、立体物Objの断面SECにおいて四角で囲った破線部分BL1を模式的に示している。
【0069】
図12に示す立体物Objの内部を形成するためのCLインクは、第一液体LQ1ではなく、第二液体LQ2でもなく、第三液体LQ3でもない。
図12に示す立体物Objにおいて、一番下の造形層LY1[1],LY2[1]と一番上の造形層LY1[Q],LY2[Q]とは、第二処理例と同様、第一造形層LY1のうちドットDT1,DT2の隣接部分のみ第二造形層LY2で覆われている。この場合も、立体物Objは、第一造形層LY1[1]、第二造形層LY2[1]、第一造形層LY1[Q]、及び、第二造形層LY2[Q]を順に含んでいる。従って、本具体例も、造形層内において色が変わる境界部の強度低下を効率よく抑制可能な技術を提供することができる。
【0070】
(6)立体物造形装置の第四処理例:
立体物造形装置1は、層状に敷き詰められた粉体を硬化性の液体LQにより固めることで造形層LYを形成し、形成された造形層LYを積層することで立体物Objを造形してもよい。この場合、立体物造形装置1は、造形台45上に粉体を所定の厚さΔZで敷き詰めて粉体層Pwを形成するための粉体層形成部(図示省略)、及び、立体物Objの形成後に立体物Objを構成しない粉体(液体LQにより固められた粉体以外の粉体)を廃棄するための粉体廃棄部(図示省略)を有するとよい。尚、造形層LY1[q],LY2[q]を形成するための粉体層Pwを粉体層Pw[q]と称する。
【0071】
図13は、粉体を利用する造形処理の例を示している。この処理は、
図7で示した処理と比べて、S106がS302〜S304に置き換わり、S306が追加されている。
図14は、粉体を利用する立体物Objの造形例を模式的に示している。
造形層データFDを取得した制御部6は、ドットDTを形成する造形層LY1[q],LY2[q]を設定し(S102)、造形層LY1[q],LY2[q]を形成するためのZ方向における位置に造形台45を移動させる(S104)。次に、制御部6は、粉体層形成部に粉体層Pw[q]形成させる(S302)。
図14の最上段には、まず、造形台45上に粉体層Pw[1]が形成された様子が示されている。q≧2の粉体層Pw[q]は、第二造形層LY2[q-1]上に形成される。
【0072】
粉体層形成後、制御部6は、q層目の造形層データFD[q]に基づいて粉体層Pw[q]に造形層LY1[q],LY2[q]が形成されるように、ヘッドユニット3、位置変化機構7、及び、硬化ユニット61の動作を制御する(S304)。この処理も、例えば、ヘッドユニット3を走査方向D1(Y方向)へ走査させながらインク滴(液体LQ)をノズルNZから吐出させてヘッドユニット3をX方向へ送ることを繰り返す処理とすることができる。
図4,5で示したように、同じボクセルVxに対してCMYKのノズルNZ1,NZ2からのインク滴が粉体層Pw[q]に着弾した後に、CLの第三ノズルNZ3からのインク滴が粉体層Pw[q]に着弾する。このため、
図14の上から2段目に示すように、粉体層Pw[q]において、第一造形層LY1を形成するCMYKのドットDT1,DT2の上に、第二造形層LY2を形成するCLの第三ドットDT3が重ねられる。
【0073】
上側をヘッドユニット3が通り過ぎたドットDT1〜DT3には、硬化ユニット61からの紫外線が上から照射される。これにより、CMYK及びCLのインクに含まれる成分が重合し、粉体層Pw[q]に染み込んだドットDT1〜DT3が硬化する。このようにして、第一造形層LY1[q]のドットDT1,DT2が硬化して粉体層Pw[q]を固め、該第一造形層LY1[q]を覆う第二造形層LY2[q]の第三ドットDT3が硬化して粉体層Pw[q]を固める。
【0074】
粉体層Pw[q]に造形層LY1[q],LY2[q]を形成した後、制御部6は、造形層LY1[q],LY2[q]を全て設定するまでS102〜S104,S302〜S304の処理を繰り返す(S108)。q=2である場合にS302では、
図14の上から3段目に示すように、粉体層Pw[1]上に粉体層Pw[2]が形成される。q=Qである場合、余分な粉体を含めて、第一造形層LY1[q]、第二造形層LY2[q]、第一造形層LY1[q+1]、及び、第二造形層LY2[q+1]の順に含むように形成された立体物Objが造形台45に載置された状態となる。この場合、制御部6は、立体物Objを構成しない粉体を粉体廃棄部に廃棄させ(S306)、造形処理を終了させる。
本具体例も、造形層内において色が変わる境界部の亀裂、剥離、等の強度低下を抑制可能な技術を提供することができる。
【0075】
(7)その他変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、Kの液体を使用しない立体物造形装置にも、本技術を適用可能である。この場合、Yのみが第二の色の例となる。むろん、Cの液体を使用しない立体物造形装置、Mの液体を使用しない立体物造形装置、等も、本技術を適用可能である。
CMYK以外の液体を使用する立体物造形装置にも、本技術を適用可能である。例えば、V(バイオレット)の液体は、CとMの液体とともに第一液体の例として本技術を適用してもよい。濃いW(ホワイト)の液体は、YとKの液体とともに第二液体の例として本技術を適用してもよい。紫外線を比較的通し易い薄いW(ホワイト)の液体は、CとMの液体とともに第一液体の例として本技術を適用してもよい。また、第一造形層に第一液体のドット及び第二液体のドット以外の液体のドットが含まれてもよい。
第三液体は、CLの液体以外にも、薄いWの液体等でもよい。また、複数種類の第三液体を組み合わせて立体物Objを形成してもよい。
ヘッドユニットから吐出される液体は、熱可塑性樹脂等といった熱可塑性の液体でもよい。この場合、ヘッドユニットは、液体を加熱して溶融状態で吐出してもよい。また、硬化ユニットは、立体物造形装置においてヘッドユニットからの液体によるドットが冷却されて固化する部位でもよい。本技術において、「硬化」は「固化」を含む。また、第一の液体、第二の液体、第三の液体でそれぞれ(あるいは一部)で異なった種類の硬化・固化プロセスを有する液体を用いても良い(例えば、第一の液体と第二の液体は紫外線硬化型樹脂であって、第三の液体は熱可塑性樹脂を用いるなど。)。
【0076】
第二造形層LY2[q]は、第一造形層LY1[q-1]上に直接形成される以外にも、別の造形層を介して第一造形層LY1[q-1]の上に形成されてもよい。
第一造形層の厚さは、均一でなくてもよい。第二造形層の厚さも、均一でなくてもよい。
【0077】
硬化ユニットは、キャリッジに搭載されてもよい。この場合、ノズルNZ1〜NZ3よりも走査方向D1において遡る側D1uに硬化ユニットが配置されると、ヘッドユニット3からの液体LQ1〜LQ3によるドットDT1〜DT3を速やかに硬化ユニットで硬化させることができるので、好ましい。
【0078】
モデルデータから造形層データを生成する造形データ生成部は、ホスト装置に無く、立体物造形装置に有ってもよい。モデルデータを生成するモデルデータ生成部も、ホスト装置に無く、立体物造形装置に有ってもよい。表示操作部も、ホスト装置に無く、立体物造形装置に有ってもよい。
【0079】
(8)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、造形層内において色が変わる境界部の強度低下を抑制可能な技術等を提供することができる。むろん、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる技術等でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。