(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記インバータの出力電力から前記計測部が計測した電力を差し引いた値を、前記DC/DCコンバータの出力電力目標値に設定し、前記インバータの出力電力から前記DC/DCコンバータの出力電力を差し引いた電力が最大となるよう、前記インバータを制御する請求項2に記載の電力変換装置。
前記制御部は、前記計測部で計測した電力が0になるように前記インバータの出力電力目標値を設定し、前記インバータの出力電力から前記DC/DCコンバータによる放電電力を差し引いた電力、又は、前記インバータの出力電力と前記DC/DCコンバータの充電電力とを足し合わせた電力が最大になるよう、前記DC/DCコンバータを制御する請求項2に記載の電力変換装置。
前記太陽光発電の出力を前記DCバスに接続する電路に、前記中間コンデンサから前記太陽光発電の出力電路に向かって流れようとする電流を阻止する逆流防止回路を備えた請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
前記太陽光発電の出力電路と前記DCバスとの間に、太陽光発電が行われているがその出力電圧が前記交流電路のピーク電圧より低いときにのみ昇圧動作を行い、それ以外は単に通電を行う太陽光発電用DC/DCコンバータを設けた請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の電力変換装置と、前記太陽光発電を行う太陽電池の集合体としての太陽光発電パネルと、前記蓄電池とを備えている電源システム。
交流電路のピーク電圧より高い電圧を出力可能な太陽光発電の出力電路と接続され、かつ、蓄電池とも接続されるDCバスと、前記DCバスの2線間に接続された中間コンデンサと、前記蓄電池と前記DCバスとの間に設けられたDC/DCコンバータと、前記DCバスと需要家内の交流電路との間に設けられたインバータと、前記DC/DCコンバータ及び前記インバータの動作制御を行う制御部と、を備え、直流/交流の電力変換を行う電力変換装置について、前記制御部によって実行される電力変換装置の制御方法であって、
第1運用モードでは、前記インバータの動作制御によって、前記交流電路へ電力を出力するとともに前記太陽光発電の最大電力点追従制御を行わせ、
第2運用モードでは、前記インバータの動作制御によって前記交流電路へ出力する電力を目標値に合わせるとともに、前記蓄電池を充電し又は放電させる前記DC/DCコンバータの動作制御によって前記太陽光発電の最大電力点追従制御を行わせ、かつ、
前記交流電路への供給電力が制限されていないときは前記第1運用モードを実行し、前記供給電力が制限されているときは前記第2運用モードを実行する、電力変換装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態の要旨]
本発明の実施形態の要旨としては、少なくとも以下のものが含まれる。
【0013】
(1)これは、複数種類の直流電源と需要家内の交流電路との間に設けられ、直流/交流の電力変換を行う電力変換装置であって、前記交流電路のピーク電圧より高い電圧を出力可能な太陽光発電の出力電路と接続され、かつ、蓄電池とも接続されるDCバスと、前記DCバスの2線間に接続された中間コンデンサと、前記蓄電池と前記DCバスとの間に設けられたDC/DCコンバータと、前記DCバスと前記交流電路との間に設けられたインバータと、前記DC/DCコンバータ及び前記インバータの動作制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記インバータの動作制御によって、前記交流電路へ電力を出力するとともに前記太陽光発電の出力制御を行わせる第1運用モード、及び、前記インバータの動作制御によって前記交流電路へ出力する電力を目標値に合わせるとともに、前記DC/DCコンバータの動作制御によって前記太陽光発電の出力制御を行わせる第2運用モードを有する電力変換装置である。
【0014】
このような電力変換装置の制御部は、例えば、交流電路への供給電力が特に制限されていない状態のときは、インバータでMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御を行わせることができる。一方、制御部は、交流電路への供給電力が制限されている場合は、供給電力を目標電力に合わせる制御をインバータに行わせるとともに、MPPT制御についてはDC/DCコンバータに行わせることができる。その結果、太陽光発電用DC/DCコンバータは省略可能となるので、複合型の電力変換装置におけるDC/DCコンバータの損失を低減することができる。
【0015】
(2)また、(1)の電力変換装置において、前記交流電路に接続された負荷と商用電力系統との間に設けられ、電力を計測する計測部、を備えていてもよい。
この場合、計測した電力に基づいて制御部によりフィードバック制御を行うことにより、逆潮流の電力を所望の値に制御することができる。
【0016】
(3)また、(2)の電力変換装置において、前記制御部は、前記インバータの出力電力から前記計測部が計測した電力を差し引いた値を、前記DC/DCコンバータの出力電力目標値に設定し、前記インバータの出力電力から前記DC/DCコンバータの出力電力を差し引いた電力が最大となるよう、前記インバータを制御することができる。
インバータの出力電力から計測部が計測した電力を差し引いた値とは、負荷の消費電力である。負荷の消費電力を、DC/DCコンバータの出力電力目標値に設定すれば、負荷の消費電力は、蓄電池の放電によって全て賄われる。従って、太陽光発電の電力は全て売電可能となる。そこで、インバータの出力電力からDC/DCコンバータの出力電力を差し引いた電力すなわち、太陽光発電の電力が最大となるようMPPT制御を行えば、太陽光発電によって発電し得る最大電力を売電に供することができる。
【0017】
(4)また、(2)の電力変換装置において、前記制御部は、前記計測部で計測した電力が0になるように前記インバータの出力電力目標値を設定し、前記インバータの出力電力から前記DC/DCコンバータによる放電電力を差し引いた電力、又は、前記インバータの出力電力と前記DC/DCコンバータの充電電力とを足し合わせた電力が最大になるよう、前記DC/DCコンバータを制御することができる。
計測部で計測した電力が0になるようにインバータの出力電力目標値を設定すれば、インバータの出力電力は全て、需要家内の負荷の電力として消費される。すなわち、売電も買電も0であり、需要家内で電力の自給自足の状態となる。この状態において、蓄電池の放電時には、インバータの出力電力からDC/DCコンバータによる放電電力を差し引いた電力が、太陽光発電の電力である。また、蓄電池の充電時には、インバータの出力電力とDC/DCコンバータの充電電力とを足し合わせた電力が、太陽光発電の電力である。そこで、これらの太陽光発電の電力が最大となるようMPPT制御を行えば、太陽光発電によって発電し得る最大電力を用いて自給自足の状態とすることができる。
【0018】
(5)また、(1)〜(4)のいずれかの電力変換装置において、前記太陽光発電の出力を前記DCバスに接続する電路に、前記中間コンデンサから前記太陽光発電の出力電路に向かって流れようとする電流を阻止する逆流防止回路を備えることができる。
この場合、太陽光発電が行われていない場合に、逆流防止回路により、太陽電池に電流が流れることを防止できる。
【0019】
(6)また、(5)の電力変換装置において、前記逆流防止回路は例えば、ダイオード、又は、ダイオードを並列に有する半導体スイッチである。
逆流防止回路としてのダイオードは、制御不要で最も簡素である。並列のダイオードを有する半導体スイッチは、制御が必要ではあるが、オン抵抗がダイオードより小さい利点がある。
【0020】
(7)また、(5)又は(6)の電力変換装置において、前記太陽光発電の出力電路と前記逆流防止回路との間の直流電路の2線間に大容量のコンデンサを配置して、前記中間コンデンサは小容量とし、前記太陽光発電が行われていないとき、前記蓄電池と前記交流電路との間で、交流半サイクルの間に前記DC/DCコンバータと、前記インバータとを交互に休止させて電力変換を行うようにしてもよい。
この場合、休止時間をとることにより損失を低減して、DC/DCコンバータの変換効率を高めることができる。中間コンデンサは小容量であるので、このような電力変換に適する。なお、大容量のコンデンサとは、直流電路の2線間に、単相交流電力を出力するための無効電力を供給するものであり、小容量の中間コンデンサとは半導体スイッチのスイッチングによって発生するリプルを平滑化する程度のものである。
【0021】
(8)また、(1)〜(4)のいずれかの電力変換装置において、前記太陽光発電の出力電路と前記DCバスとの間に、太陽光発電が行われているがその出力電圧が前記交流電路のピーク電圧より低いときにのみ昇圧動作を行い、それ以外は単に通電を行う太陽光発電用DC/DCコンバータを設けてもよい。
この場合、もし、太陽光発電の出力電圧が交流電路のピーク電圧より低い場合に、当該DC/DCコンバータを動作させて必要な昇圧を行うことができる。昇圧が不要となる場合は、DC/DCコンバータのハイサイドのスイッチング素子を常時閉路の状態とすればよい。昇圧が必要となる機会が少ないとすると、スイッチングを行う時間が少ない分、電力の損失は抑えられる。また、かかるDC/DCコンバータには、常時スイッチングするものと同等な性能は不要であり、昇圧に寄与せず単に通電するだけの直流リアクトルは磁気飽和してもよい。また、ローサイドのスイッチング素子は低電流容量で足りる。従って、性能を落として小型で安価なDC/DCコンバータを、太陽光発電用として限定的に使用することができる。すなわち、太陽光発電用DC/DCコンバータを設けたとしても、その損失を抑え、かつ、小型で安価な太陽光発電用DC/DCコンバータとすることができる。
【0022】
(9)また、(8)の電力変換装置において、前記太陽光発電の出力電路と前記太陽光発電用DC/DCコンバータとの間の直流電路の2線間に大容量のコンデンサを配置して、前記中間コンデンサは小容量とし、前記太陽光発電が行われているがその出力電圧が前記交流電路のピーク電圧より低いとき、前記太陽光発電の出力電路と前記交流電路との間で、交流半サイクルの間に前記太陽光発電用DC/DCコンバータと、前記インバータとを交互に休止させて電力変換を行い、前記太陽光発電が行われていないとき、前記蓄電池と前記交流電路との間で、交流半サイクルの間に前記蓄電池用の前記DC/DCコンバータと、前記インバータとを交互に休止させて電力変換を行うようにしてもよい。
この場合、休止時間をとることにより損失を低減して、太陽光発電用DC/DCコンバータ又は蓄電池用のDC/DCコンバータの変換効率を高めることができる。中間コンデンサは小容量であるので、このような電力変換に適する。
【0023】
(10)また、電源システムとしては、(1)〜(9)のいずれかの電力変換装置と、前記太陽光発電を行う太陽電池の集合体としての太陽光発電パネルと、前記蓄電池とを備えているものである。
このような電源システムは、太陽光発電パネルの出力に対して、DC/DCコンバータを接続しなくても、交流電路への供給電力が特に制限されていない状態のときは、インバータでMPPT制御を行わせることができる。交流電路への供給電力が制限されている場合は、供給電力を目標電力に合わせる制御をインバータに行わせ、MPPT制御についてはDC/DCコンバータに行わせることができる。こうして、太陽光発電パネルの出力を常に最大限に活用することができる。
【0024】
(11)方法の観点からは、交流電路のピーク電圧より高い電圧を出力可能な太陽光発電の出力電路と接続され、かつ、蓄電池とも接続されるDCバスと、前記DCバスの2線間に接続された中間コンデンサと、前記蓄電池と前記DCバスとの間に設けられたDC/DCコンバータと、前記DCバスと需要家内の交流電路との間に設けられたインバータと、前記DC/DCコンバータ及び前記インバータの動作制御を行う制御部と、を備え、直流/交流の電力変換を行う電力変換装置について、前記制御部によって実行される電力変換装置の制御方法であって、第1運用モードでは、前記インバータの動作制御によって、前記交流電路へ電力を出力するとともに前記太陽光発電の出力制御を行わせ、第2運用モードでは、前記インバータの動作制御によって前記交流電路へ出力する電力を目標値に合わせるとともに、前記DC/DCコンバータの動作制御によって前記太陽光発電の出力制御を行わせる、電力変換装置の制御方法である。
【0025】
このような電力変換装置の制御方法では、例えば、交流電路への供給電力が特に制限されていない状態のときは、インバータでMPPT制御を行わせることができる。一方、交流電路への供給電力が制限されている場合は、供給電力を目標電力に合わせる制御をインバータに行わせるとともに、MPPT制御についてはDC/DCコンバータに行わせることができる。その結果、太陽光発電用DC/DCコンバータは省略可能となるので、複合型の電力変換装置におけるDC/DCコンバータの損失を低減することができる。
【0026】
[実施形態の詳細]
以下、実施形態の詳細について図面を参照して説明する。
【0028】
《電力変換装置及びこれを含む電源システムの構成》
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置1を含む電源システム100の回路図の一例である。図において、電力変換装置1は、複数種類の直流電源と需要家内の交流電路との間に設けられ、直流/交流の電力変換を行う装置であり、一般に、パワーコンディショナと呼ばれる。この電力変換装置1は、例えば2種類の直流電源が接続されている。すなわち、ストリングを成す太陽電池2の集合体としての太陽光発電パネル3、及び、蓄電池4が、それぞれ、電力変換装置1に接続されている。蓄電池4としては例えば、リチウムイオン電池等の二次電池を使用することができる。
【0029】
また、電力変換装置1の交流側電路5の2線間には、需要家内の負荷6が接続され、さらに、商用電力系統7が接続されている。負荷6と商用電力系統7との間には、計測部8が設けられている。計測部8は、電流センサ81と、電圧センサ82とを備えている。
なお、計測部8は、物理的には電力変換装置1と離れて設けられるが、機能的には、電力変換装置1の一部でもある。
【0030】
電力変換装置1は、主回路要素として、太陽光発電パネル3から引き込まれた太陽光発電の出力電路10(2線)と、逆流防止回路11と、中間コンデンサ12と、DCバス13(2線)と、インバータ14と、交流リアクトル15と、交流側コンデンサ16と、直流側コンデンサ17と、DC/DCコンバータ18とを備えている。
【0031】
太陽光発電の出力電路10は、例えば4組の太陽電池2(ストリング)の出力を互いに並列に接続した電路である。太陽光発電の出力が充分に得られているときの出力電路10の2線間の電圧は、商用電力系統7の交流電圧のピーク電圧(波高値)より高い。従って、昇圧のためのDC/DCコンバータは、基本的には不要となる。
【0032】
図2は、逆流防止回路11の2つの例を示す回路図である。
図2の(a)に示すように、ダイオード110を用いた逆流防止回路11が最も簡素である。ダイオード110のアノードは、太陽光発電の出力電路10側にあり、カソードはDCバス13側にある。太陽光発電の出力が得られ、出力電路10の電圧がDCバス13より高いとき、ダイオード110は導通する。太陽光発電の出力が充分に得られなくなると、出力電路10の電圧がDCバス13より低くなり、ダイオード110は非導通となる。これにより、中間コンデンサ12(
図1)からの電流の逆流が阻止され、逆流により太陽電池2に電流が流れることを防止できる。
【0033】
図2の(a)の逆流防止回路11は簡素であり制御も不要である利点がある。但し、ダイオード110の順方向導通抵抗が、制御端子を有する半導体スイッチよりも大きい。そこで、
図2の(b)は、逆流防止回路11の他の例である。この場合、主回路上には半導体のスイッチ115が設けられている。スイッチ115は、例えばMOSFET(Metal-Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)であり、ボディダイオード115dを有している。従って、(a)のダイオード110と同じ向きのボディダイオード115dに並列にスイッチ素子が接続された形となる。この場合、(a)よりも、導通抵抗(オン抵抗)を小さくすることができる。従って、逆流防止回路11での電力損失を、より低減することができる。
【0034】
図2の(b)における逆流防止回路11は、スイッチ115の他、例えば、太陽光発電の出力電路10の電圧を引き込んで分圧する抵抗111,112と、コンパレータ113と、ドライバ114とを備えている。コンパレータ113は、抵抗111,112で分圧された電圧V
inと、一定の基準電圧V
refとを互いに比較する。V
in≧V
refであれば、ドライバ114はスイッチ115をオンにして逆流防止回路11を閉路する。V
in<V
refであれば、ドライバ114はスイッチ115をオフにして逆流防止回路11を開路する。すなわち、太陽光発電の発電電圧が一定値以上であれば逆流防止回路11は閉路され、また、発電電圧が一定値未満であれば逆流防止回路11が開路されることにより、中間コンデンサ12(
図1)からの電流の逆流を防止する。
【0035】
晴天のときは、通常、朝、一定の光量が得られるようになれば逆流防止回路11が閉路され、日没が近づいて一定の光量が得られなくなれば開路される。しかし曇天時には、昼間でも頻繁に開閉が繰り返されることもあるので、寿命の長い半導体のスイッチが好ましい。特に、高耐圧と低抵抗とを兼ね備えるSiC−MOSFETが好適である。太陽光発電中は電流がスイッチ115を流れ続けるので、オン抵抗は低いほど好ましい。
なお、半導体のスイッチ115の代わりにリレーを用いることも可能ではある。オン抵抗が小さいという点ではリレーの方が優れているが、開閉の耐久性に関しては半導体が圧倒的に優れている。
【0036】
図1に戻り、中間コンデンサ12は、大容量のコンデンサであり、例えば4並列の電解コンデンサによって合計数mFのキャパシタンスを有する。
インバータ14は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であるスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4をフルブリッジ接続したものであり、各スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4にはそれぞれ、ダイオードd1,d2,d3,d4が逆並列に接続されている。
【0037】
交流リアクトル15及び交流側コンデンサ16は、インバータ14が発生する高周波成分を除去するフィルタ回路を構成している。
DC/DCコンバータ18は、直流リアクトル20、IGBTであるスイッチング素子Q5,Q6、スイッチング素子Q5,Q6にそれぞれ逆並列に接続されたダイオードd5,d6を備えるチョッパ回路である。なお、このDC/DCコンバータ18は非絶縁型であるが、絶縁型のDC/DCコンバータを用いることも可能である。
【0038】
また、計測用の回路要素としては、DCバス13の2線間の電圧を検出する電圧センサ21と、交流リアクトル15に流れる電流を検出する電流センサ22と、交流側コンデンサ16の両端の電圧を検出する電圧センサ23と、直流側コンデンサ17の両端の電圧を検出する電圧センサ24と、DC/DCコンバータ18に流れる電流を検出する電流センサ25とを備えている。これらのセンサの計測出力信号は、制御部50に送られる。制御部50は、スイッチング素子Q1〜Q6を制御する。
【0039】
制御部50は例えばCPUを含み、ソフトウェア(コンピュータプログラム)をコンピュータが実行することで、必要な制御機能を実現する。ソフトウェアは、制御部50の記憶装置(図示せず。)に格納される。但し、コンピュータを含まないハードウェアのみの回路で制御部50を構成することも可能ではある。
【0040】
上記のように構成された電力変換装置1の動作について、以下、運用の形態別に説明する。
【0041】
《シングル発電》
ここで言うシングル発電とは、太陽光発電のみ又は蓄電池4のみを稼働させることである。
この運用では、太陽電池2による太陽光発電が行われているときには、蓄電池4には放電も充電も行わせない。従って、太陽光発電中は、DC/DCコンバータ18は停止している。インバータ14は、太陽光発電のMPPT制御を行う。
【0042】
一方、太陽光発電が行われていないとき(昼夜を問わず)には、逆流防止回路11が開路の状態となる。従って、太陽電池2は電源システム100から解列された状態である。
この状態で、蓄電池4には夜間料金の時間帯に充電を行う。このとき、インバータ14は、交流から直流への整流を行うDC/ACコンバータとして動作させる。
DC/DCコンバータ18は、スイッチング素子Q5がオフで、スイッチング素子Q6がオン・オフを所定のデューティで繰り返し、降圧を行う。充電は一定電力で行われる。
【0043】
充電された蓄電池4は、昼間料金の時間帯で放電させる。放電時は、計測部8で計測した受電点電力情報を制御部50に送り、制御部50は、蓄電池4の放電が負荷6の消費電力と一致するようにフィードバック制御を行う。
【0044】
《ダブル発電》
この運用は、太陽電池2が発電しているときに蓄電池4も放電を行う点でシングル発電の制御と異なる。この場合、制御部50は、蓄電池4の放電電力Pbが、需要家内の負荷6の消費電力と一致するようにフィードバック制御を行う。具体的には、以下の式(1)に示すように、放電電力Pbが、インバータ14の出力電力Paから計測部8で測定した電力Pmを差し引いた値と一致するように制御する。
Pb=Pa−Pm ・・・(1)
【0045】
太陽光発電パネル3の出力電力Ppは式(2)に示すように、インバータ14の出力電力Paから蓄電池4の放電電力Pbを差し引いた値である。この値が最大になるように、いわゆる山登り法により、出力電力Paの値を操作することによって、MPPT制御を行うことができる。蓄電池4の残量がないときにはDC/DCコンバータ18を停止させ、放電電力Pbは0になる。従って、太陽光発電の出力はインバータ14のみで制御する状態となる。
Pp=Pa−Pb ・・・(2)
太陽電池2が発電していないときの蓄電池4の制御は、シングル発電の場合と同じである。
【0046】
以上のように、負荷6の消費電力を、DC/DCコンバータ18の出力電力目標値(Pb)に設定すれば、負荷6の消費電力は、蓄電池4の放電によって全て賄われる。従って、太陽光発電の出力電力Ppは全て売電可能となる。そこで、インバータ14の出力電力PaからDC/DCコンバータ18の出力電力Pbを差し引いた電力すなわち、太陽光発電の出力電力Ppが最大となるようMPPT制御を行えば、太陽光発電によって発電し得る最大電力を売電に供することができる。
【0047】
《自給自足》
この運用では、太陽電池2の発電と負荷6の消費電力との多寡によって、蓄電池4に対する制御が変わる。インバータ14の出力電力Paは、負荷6の消費電力と一致し、計測部8が計測する電力Pmが0になるように制御する。すなわち、
Pm=0 ・・・(3)
である。
【0048】
太陽光発電パネル3の出力電力Ppは、蓄電池4の出力電力Pbの符号が正のときは放電、負のときは充電とすると、式(2)をそのまま適用できる。ただし、インバータ出力電力Paは、負荷6の消費電力と一致する値に固定され、MPPT制御はできない。そこで、MPPT制御は、蓄電池4の出力電力PbをDC/DCコンバータ18により操作することによって行う。蓄電池4の残量が0で太陽光発電が負荷6の消費電力に足りないときには充電もできないので、DC/DCコンバータ18を停止させる。この場合、シングル発電と同じく、太陽光発電の出力はインバータ14のみで制御する状態となる。
【0049】
以上のように、計測部8で計測した電力が0になるようにインバータ14の出力電力目標値(Pa)を設定すれば、インバータ14の出力電力Paは全て、需要家内の負荷6の電力として消費される。すなわち、売電も買電も0であり、需要家内で電力の自給自足の状態となる。この状態において、蓄電池4の放電時には、インバータ14の出力電力PaからDC/DCコンバータ18による放電電力Pbを差し引いた電力が、太陽光発電の出力電力Ppである。また、蓄電池4の充電時には、インバータ14の出力電力PaとDC/DCコンバータ18の充電電力Pbとを足し合わせた電力が、太陽光発電の出力電力Ppである。そこで、これらの太陽光発電の出力電力Ppが最大となるようMPPT制御を行えば、太陽光発電によって発電し得る最大電力を用いて自給自足の状態とすることができる。
【0050】
<第1実施形態のまとめ>
上記の各運用の形態(シングル発電、ダブル発電、自給自足)において、制御部50は、太陽光発電の出力制御(MPPT制御)の主体が何か、という観点から、第1運用モード、及び、第2運用モードを有していると言える。
すなわち、第1運用モードでは、太陽光発電の出力制御を行うのはインバータ14であり、制御部50は、インバータ14の動作制御によって、交流電路5へ電力を出力するとともに太陽光発電の出力制御を行わせる。
第2運用モードでは、太陽光発電の出力制御を行うのはDC/DCコンバータ18であり、制御部50は、インバータ14の動作制御によって交流電路5へ出力する電力を目標値に合わせるとともに、DC/DCコンバータ18の動作制御によって太陽光発電の出力制御を行わせる。
【0051】
このような電力変換装置1の制御部50は、例えば、交流電路5への供給電力が特に制限されていない状態のときは、インバータ14でMPPT制御を行わせることができる。一方、制御部50は、交流電路5への供給電力が制限されている場合は、供給電力を目標電力に合わせる制御をインバータ14に行わせるとともに、MPPT制御についてはDC/DCコンバータ18に行わせることができる。
【0052】
このような電力変換装置1は、太陽光発電用DC/DCコンバータが省略可能となるため、その分、電力の損失が低減され、効率が改善される。また、部品数が減るので小型軽量化が可能となると共に故障率も低減できる。さらに、製品コストを大幅に低減できる。
【0053】
また、交流電路5に接続された負荷6と商用電力系統7との間に、電力を計測する計測部8を備えていることによって、計測した電力に基づいて制御部50によりフィードバック制御を行うことができる。従って、交流電路5への供給電力が制限されている場合に、逆潮流の電力を所望の値に制御することができる。
【0055】
《電力変換装置及びこれを含む電源システムの構成》
図3は、第2実施形態に係る電力変換装置1を含む電源システム100の回路図の一例である。第1実施形態(
図1)との違いは、逆流防止回路11の太陽電池側に数ミリファラッドの大容量の直流側コンデンサ28を設け、中間コンデンサ27としては、100マイクロファラッド以下のフィルムコンデンサを設けた点であり、それ以外の回路構成は、第1実施形態と同様である。
【0056】
この場合、太陽電池2が発電していないときには、DC/DCコンバータ18及びインバータ14に対してスイッチングを交互に休止する制御(最小スイッチング変換方式と言う。)を行うことができる。この制御により、スイッチングに伴う、スイッチング素子Q1〜Q6並びに直流リアクトル20及び交流リアクトル15の損失が半減され、効率を改善することができる。
【0057】
《最小スイッチング変換方式の補足説明》
図4及び
図5は、最小スイッチング変換方式における、DC/DCコンバータ18及びインバータ14の動作の特徴を簡略に示す波形図である。両図は同じ内容を示しているが、
図4は特に、直流入力から交流出力までの振幅の関係が見やすいように表示し、
図5は特に、制御のタイミングが見やすいように表示している。
図4の上段及び
図5の左欄はそれぞれ、比較のために、最小スイッチング変換方式ではない伝統的なスイッチング制御を表す波形図である。また、
図4の下段及び
図5の右欄はそれぞれ、最小スイッチング変換方式の動作を示す波形図である。
【0058】
まず、
図4の上段(又は
図5の左欄)において、伝統的なスイッチング制御では、入力される直流電圧V
DCに対するDC/DCコンバータのスイッチング素子Q5,Q6及び直流リアクトル20の相互接続点での出力は、V
DCよりも高い値の等間隔のパルス列状である。この出力は中間コンデンサによって平滑化され、DCバスに、電圧V
Bとして現れる。これに対してインバータは、PWM(Pulse Width Modulation)制御されたスイッチングを半周期で極性反転しながら行う。この結果、最終的な平滑化を経て、正弦波の交流電圧V
ACが得られる。
【0059】
次に、
図4の下段の最小スイッチング変換方式では、交流波形の電圧目標値V
ACの絶対値の瞬時値と、入力である直流電圧V
DCとの比較結果に応じて、DC/DCコンバータ18とインバータ14とが動作する。すなわち、電圧目標値V
ACの絶対値においてV
AC<V
DC(又はV
AC≦V
DC)のときは、DC/DCコンバータ18は停止し(図中の「ST」)、V
AC≧V
DC(又はV
AC>V
DC)のときは、DC/DCコンバータ18が昇圧動作を行う(図中の「OP」)。DC/DCコンバータ18の出力は中間コンデンサ27により平滑化され、DCバス13に、図示の電圧V
Bとして現れる。
【0060】
ここで、中間コンデンサ27が小容量であることにより、交流波形の絶対値のピーク前後となる一部の波形が平滑化されずにそのまま残る。すなわち、平滑は、DC/DCコンバータ18による高周波のスイッチングの痕跡を消す程度には作用するが、商用周波数の2倍程度の低周波を平滑化することはできないように中間コンデンサ27が小容量になっている。
【0061】
これに対してインバータ14は、電圧目標値V
ACの絶対値と、直流電圧V
DCとの比較結果に応じて、V
AC<V
DC(又はV
AC≦V
DC)のときは、高周波スイッチングを行い(図中の「OP」)、V
AC≧V
DC(又はV
AC>V
DC)のときは、高周波スイッチングを停止する(図中の「ST」)。高周波スイッチングを停止しているときのインバータ14は、スイッチング素子Q1,Q4がオン、Q2,Q3がオフの状態と、スイッチング素子Q1,Q4がオフ、Q2,Q3がオンの状態のいずれかを選択することにより、必要な極性反転のみを行う。インバータ14の出力は交流リアクトル15及び交流側コンデンサ16により平滑化され、所望の交流出力が得られる。
【0062】
ここで、
図5の右欄に示すように、DC/DCコンバータ18とインバータ14とは、交互に高周波スイッチングの動作をしており、DC/DCコンバータ18が昇圧の動作をしているときは、インバータ14は高周波スイッチングを停止し、DCバス13の電圧に対して必要な極性反転のみを行っている。逆に、インバータ14が高周波スイッチング動作するときは、DC/DCコンバータ18は停止して、コンデンサ17の両端電圧が、直流リアクトル20及びダイオードd6を介してDCバス13に現れる。
【0063】
以上のようにして、DC/DCコンバータ18とインバータ14とによる最小スイッチング変換方式の動作が行われる。
【0065】
《電力変換装置及びこれを含む電源システムの構成》
図6は、第3実施形態に係る電力変換装置1を含む電源システム100の回路図の一例である。第1実施形態(
図1)との違いは、
図1の逆流防止回路11に代えて、太陽電池2と中間コンデンサ12との間に太陽光発電用のDC/DCコンバータ30及び直流側コンデンサ32を設けた点であり、それ以外の回路構成は、第1実施形態と同様である。
【0066】
DC/DCコンバータ30は、直流リアクトル31、IGBTのスイッチング素子Q7及び逆並列に接続されたダイオードd7、並びに、MOSFETのスイッチング素子Q8を備えている。
【0067】
例えば
図1の電力変換装置1において、日射が弱く、太陽光発電パネル3の出力電圧が交流電路5のピーク電圧(波高値)よりも低くなるときには、太陽光発電の電力を交流に変換することができない。この場合には、
図6に示すように太陽光発電用のDC/DCコンバータ30を設ける必要がある。この回路構成は、見かけ上は、従来の電力変換装置のように見えるが、DC/DCコンバータ30の仕様が異なる。
【0068】
すなわち、
図6のDC/DCコンバータ30は、日射が弱く太陽電池2の出力電圧が不足する場合にのみ昇圧の機能を果たせば良い点が、従来の電力変換装置とは異なる。ある程度以上の日射強度があって昇圧が必要ないときには、直流リアクトル31は飽和してもよい。また、ローサイドのスイッチング素子Q7の電流容量は小さくてもよい。従って、DC/DCコンバータ30を必要とするものの、直流リアクトル31とスイッチング素子Q7の電流容量は最低限に抑えることができる。そのため、DC/DCコンバータ30を小型化することができる。なお、太陽光発電の十分な出力が得られ、昇圧が不要な場合には、スイッチング素子Q8は、オンに保持すればよい。すなわち、このときのスイッチング素子Q8の役目は、
図1における逆流防止回路11と同じである。
【0070】
《電力変換装置及びこれを含む電源システムの構成》
図7は、第4実施形態に係る電力変換装置1を含む電源システム100の回路図の一例である。第3実施形態(
図6)との違いは、
図6における大容量の中間コンデンサ12を小容量の中間コンデンサ27に置き換え、大容量の直流側コンデンサ28を太陽電池2とDC/DCコンバータ30との間に設けた点である。それ以外の回路構成は、第4実施形態と同様である。
【0071】
図7における中間コンデンサ27は、例えば100マイクロファラッド以下のフィルムコンデンサである。これにより、DC/DCコンバータ30を動作させる場合に、DC/DCコンバータ30とインバータ14とのスイッチング動作を交互に休止させる最小スイッチング変換を行うことができる。これにより、スイッチング動作に伴う、スイッチング素子Q1〜Q4,Q7,Q8並びに直流リアクトル31及び交流リアクトル15の損失が半減され、効率を改善することができる。
なお、太陽光発電を行わないときは、第2実施形態(
図3)と同様に、蓄電池4用のDC/DCコンバータ18とインバータ14とで、最小スイッチング変換を行うことができる。
【0072】
<補記>
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
但し、明細書及び図面に開示した通りの全ての構成要素を備える電力変換装置及び電源システムも、本発明に含まれるものであることは言うまでもない。