(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第1の回転体の前記芯金の回転速度の周期的な変化と前記第2の回転体の前記芯金の回転速度の周期的な変化とが逆位相となる周波数で、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる、請求項3に記載の定着装置。
前記制御部は、前記第2の回転体の前記芯金の回転速度の周期的な変化が共振する周波数を中心値とした所要の範囲で、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を変動させる、請求項3または4に記載の定着装置。
前記制御部は、前記用紙が前記ニップ部において前記第2の回転体に対してずれる現象であるズリが発生しない振幅および周波数で、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる、請求項1〜6のいずれかに記載の定着装置。
前記制御部は、前記用紙の摩擦係数に応じて決定された振幅および周波数のうち少なくとも一方の条件で、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる、請求項1〜7のいずれかに記載の定着装置。
前記制御部は、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を前記用紙の摩擦係数にかかわらず一定とし、前記用紙の摩擦係数が大きいほど、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を大きくする、請求項8に記載の定着装置。
前記制御部は、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を前記用紙の摩擦係数にかかわらず一定とし、前記用紙の摩擦係数が大きいほど、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を大きくする、請求項8または9に記載の定着装置。
前記制御部は、前記用紙の坪量に応じて決定された振幅および周波数のうち少なくとも一方の条件で、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる、請求項1〜10のいずれかに記載の定着装置。
前記制御部は、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を前記用紙の坪量にかかわらず一定とし、前記用紙の坪量が大きいほど、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を大きくする、請求項11に記載の定着装置。
前記制御部は、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を前記用紙の坪量にかかわらず一定とし、前記用紙の坪量が大きいほど、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を大きくする、請求項11または12に記載の定着装置。
前記制御部は、前記定着装置のプロセス速度に応じて決定された振幅および周波数のうち少なくとも一方の条件で、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる、請求項1〜13のいずれかに記載の定着装置。
前記制御部は、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を前記定着装置のプロセス速度にかかわらず一定とし、前記定着装置のプロセス速度が速いほど、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を大きくする、請求項14に記載の定着装置。
前記制御部は、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を前記定着装置のプロセス速度にかかわらず一定とし、前記定着装置のプロセス速度が速いほど、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を大きくする、請求項14または15に記載の定着装置。
前記制御部は、前記定着装置に設定された定着温度に応じて決定された振幅および周波数のうち少なくとも一方の条件で、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる、請求項1〜16のいずれかに記載の定着装置。
前記制御部は、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を前記定着装置に設定された定着温度にかかわらず一定とし、前記定着装置に設定された定着温度が低いほど、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を大きくする、請求項17に記載の定着装置。
前記制御部は、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を前記定着装置に設定された定着温度にかかわらず一定とし、前記定着装置に設定された定着温度が低いほど、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を大きくする、請求項17または18に記載の定着装置。
前記制御部は、前記用紙の搬送方向前端が前記ニップ部を通過している間、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させ、前記用紙の搬送方向前端が前記ニップ部の通過を完了する時刻から前記用紙の搬送方向後端が前記ニップ部の通過を完了する時刻までの間のうち少なくとも一部の時間、前記第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させない、請求項1〜19のいずれかに記載の定着装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、上加圧ローラーは、離間時に定着ベルトを均熱化する目的でのみ回転駆動される。しかし、特許文献1の技術では、通紙時に、上加圧ローラーの表面速度と下加圧ローラーの表面速度とが設定された速度差となるように上加圧ローラーを回転駆動する必要がある。その結果、上加圧ローラーの駆動制御システムが従来よりも複雑化し、製造コストの増大を招く。一方で、特許文献1の技術では、駆動制御システムの複雑化および製造コストの増大を招くにもかかわらず、用紙の分離性が十分ではなかった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、用紙の分離性を効率的に改善することのできる定着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の局面に従う定着装置は、ニップ部で用紙を把持して搬送することにより、トナー像を用紙に定着する第1および第2の回転体と、少なくとも第1の回転体の回転を制御する制御部とを備え、制御部は、用紙がニップ部を通過する際に、用紙がニップ部を通過するのに要する時間よりも短い周期となる周波数で、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させ
、制御部は、用紙がニップ部を通過する際に、第1の回転体の回転速度にサイン波の速度変動分を重畳する。
【0010】
上記定着装置において好ましくは、第1および第2の回転体の各々は、芯金と、芯金の外周に設けられた粘弾性層とを含む。
【0011】
本発明の他の局面に従う定着装置は、ニップ部で用紙を把持して搬送することにより、トナー像を用紙に定着する第1および第2の回転体と、少なくとも第1の回転体の回転を制御する制御部とを備え、制御部は、用紙がニップ部を通過する際に、用紙がニップ部を通過するのに要する時間よりも短い周期となる周波数で、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させ、第1および第2の回転体の各々は、芯金と、芯金の外周に設けられた粘弾性層とを含み、制御部は、第2の回転体の芯金の回転速度の周期的な変化の位相が第1の回転体の芯金の回転速度の周期的な変化の位相に対して遅れる周波数で、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる。
【0012】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、第1の回転体の芯金の回転速度の周期的な変化と第2の回転体の芯金の回転速度の周期的な変化とが逆位相となる周波数で、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる。
【0013】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、第2の回転体の芯金の回転速度の周期的な変化が共振する周波数を中心値とした所要の範囲で、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を変動させる。
【0014】
上記定着装置において好ましくは、第2の回転体は芯金に取り付けられたフライホイールをさらに含む。
【0015】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、用紙がニップ部において第2の回転体に対してずれる現象であるズリが発生しない振幅および周波数で、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる。
【0016】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、用紙の摩擦係数に応じて決定された振幅および周波数のうち少なくとも一方の条件で、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる。
【0017】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を用紙の摩擦係数にかかわらず一定とし、用紙の摩擦係数が大きいほど、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を大きくする。
【0018】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を用紙の摩擦係数にかかわらず一定とし、用紙の摩擦係数が大きいほど、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を大きくする。
【0019】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、用紙の坪量に応じて決定された振幅および周波数のうち少なくとも一方の条件で、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる。
【0020】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を用紙の坪量にかかわらず一定とし、用紙の坪量が大きいほど、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を大きくする。
【0021】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を用紙の坪量にかかわらず一定とし、用紙の坪量が大きいほど、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を大きくする。
【0022】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、定着装置のプロセス速度に応じて決定された振幅および周波数のうち少なくとも一方の条件で、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる。
【0023】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を定着装置のプロセス速度にかかわらず一定とし、定着装置のプロセス速度が速いほど、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を大きくする。
【0024】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を定着装置のプロセス速度にかかわらず一定とし、定着装置のプロセス速度が速いほど、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を大きくする。
【0025】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、定着装置に設定された定着温度に応じて決定された振幅および周波数のうち少なくとも一方の条件で、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる。
【0026】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を定着装置に設定された定着温度にかかわらず一定とし、定着装置に設定された定着温度が低いほど、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を大きくする。
【0027】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を定着装置に設定された定着温度にかかわらず一定とし、定着装置に設定された定着温度が低いほど、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の振幅を大きくする。
【0028】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、用紙の搬送方向前端がニップ部を通過している間、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させ、用紙の搬送方向前端がニップ部の通過を完了する時刻から用紙の搬送方向後端がニップ部の通過を完了する時刻までの間のうち少なくとも一部の時間、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させない。
【0029】
上記定着装置において好ましくは、第2の回転体は、加熱ローラーと、定着ローラーと、加熱ローラーおよび定着ローラーに張架される無端状の定着ベルトとを含み、第1の回転体は、定着ベルトを介して定着ローラーに圧接され、定着ベルトとともにニップ部を形成する。
【0030】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、用紙がニップ部を通過する際に、第2の回転体を回転駆動しない。
【0031】
上記定着装置において好ましくは、制御部は、用紙がニップ部を通過する際に、第2の回転体を回転駆動する。
上記定着装置において好ましくは、制御部は、用紙の搬送方向前端がニップ部の通過を開始する時刻から用紙の搬送方向後端がニップ部の通過を完了する時刻までの間、用紙がニップ部を通過するのに要する時間よりも短い周期となる周波数で、第1の回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、用紙の分離性を効率的に改善することのできる定着装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施の形態における定着装置60が搭載される画像形成装置1の構成を示す断面図である。
図2は、本発明の一実施の形態における定着装置60が搭載される画像形成装置1の制御構成を示すブロック図である。
【0037】
図1および
図2を参照して、画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラーのMFPである。すなわち、画像形成装置1は、感光体上に形成されたC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写体に転写(一次転写)する。次いで、中間転写体上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に転写(二次転写)することにより、画像を形成する。
【0038】
また、画像形成装置1には、CMYKの4色に対応する感光体を中間転写体の走行方向に直列配置し、中間転写体に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0039】
画像形成装置1は、画像読取部10と、操作表示部20と、画像処理部30と、画像形成部40と、搬送部50と、定着装置60と、通信部71と、記憶部72と、制御部100とを備えている。
【0040】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103などを含んでいる。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、CPU101は、記憶部72に格納されている各種データを参照する。記憶部72には、各種データが格納されている。記憶部72は、たとえば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)や、ハードディスクドライブなどで構成されている。
【0041】
また制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)などの通信ネットワークに接続された外部の装置(たとえばPC(Personal Computer)など)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、たとえば外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙に画像を形成させる。通信部71は、たとえばLANカードなどの通信制御カードで構成されている。
【0042】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11と、原稿画像走査装置(スキャナー)12などを含んでいる。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿DTを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿DTの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0043】
操作表示部20は、たとえばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成されており、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、または各機能の動作状況などを表示する。操作部22は、テンキーやスタートキーなどの各種操作キーを含んでいる。操作部22は、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0044】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路などを含んでいる。画像処理部30は、たとえば制御部100の制御下で、入力画像データに対して、階調補正、色補正、またはシェーディング補正などの各種補正処理や、圧縮処理などを施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0045】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、およびK成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、および41Kと、中間転写ユニット42などを含んでいる。
【0046】
Y成分、M成分、C成分、およびK成分の画像形成ユニット41Y、41M、41C、および41Kは、トナーの色を除いて同様の構成を有する。図示および説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、Kを添えて示すこととする。
図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、および41Kの構成要素についての符号は省略されている。
【0047】
画像形成ユニット41Y、41M、41C、および41Kの各々は、露光装置411と、現像装置412と、感光体ドラム413と、帯電装置414と、ドラムクリーニング装置415と、滑剤塗布装置416などを含んでいる。
【0048】
感光体ドラム413は、たとえばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)および電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo−conductor)である。
【0049】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、たとえば半導体レーザーで構成されており、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0050】
現像装置412は、各色成分の現像剤(たとえば小粒径のトナーと磁性体とからなる二成分現像剤)を収容している。現像装置412は、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0051】
なお、現像装置412に収容されるトナーは、ここでは、トナー粒子内にワックスが分散含有されるワックス含有トナー(オイルレストナー)である。このトナーに含まれるワックスの融点は通常110℃以下程度と低い。このワックスには、たとえばパラフィン系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、これらの変性物(たとえば酸化物やグラフと処理物など)、高級脂肪酸、およびその金属塩、アミドワックス、エステル系ワックスなどの従来公知のワックスを用いることができる。また、より好ましいワックスとして、たとえば高級脂肪酸エステルワックスを適用してもよい。
【0052】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード(以下、DCLブレード)を含んでいる。一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーは、DCLブレードによって掻き取られ、除去される。
【0053】
滑剤塗布装置416は、感光体ドラム413の表面に摺接されるローラー状の滑剤塗布ブラシを含んでいる。感光体ドラム413が回転することに伴い、滑剤塗布ブラシに付着した滑剤が感光体ドラム413の表面に塗布される。
【0054】
中間転写ユニット42は、中間転写体となる中間転写ベルト421と、一次転写ローラー422と、二次転写ローラー423と、駆動ローラー424と、従動ローラー425と、ベルトクリーニング装置426などを含んでいる。
【0055】
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成されており、駆動ローラー424および従動ローラー425に張架されている。中間転写ベルト421は、駆動ローラー424の回転により矢印Yで示す方向に一定速度で走行する。一次転写ローラー422によって、中間転写ベルト421が感光体ドラム413に圧接されると、中間転写ベルト421に各色トナー像が順次重ねられて一次転写される。そして、中間転写ベルト421が二次転写ローラー423によって用紙Sに圧接されると、中間転写ベルト421に一次転写されたトナー像が用紙Sに二次転写される。
【0056】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接されるベルトクリーニングブレード(以下、BCLブレード)を有する。二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーは、BCLブレードによって掻き取られ、除去される。
【0057】
このようにして、用紙S上に未定着トナー像が形成される。
【0058】
未定着トナー像は、定着装置60により用紙Sに定着される。定着装置60は、搬送されてきた用紙Sを加熱、加圧することにより、用紙Sの未定着トナー像を定着させる。定着装置60は、ここではベルトニップの方式で用紙を定着するものであり、枠60a内に収容された定着ローラーとしての上加圧ローラー61と、加圧ローラーとしての下加圧ローラー64とを主に含んでいる。定着装置60の詳細な構成については後述する。
【0059】
搬送部50は、給紙部51と、搬送機構52と、排紙部53などを含んでいる。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cの各々には、用紙の坪量やサイズなどに基づいて識別された用紙(規格用紙、特殊用紙)Sが予め設定された種類ごとに収容される。
【0060】
給紙トレイユニット51a〜51cの各々に収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、レジストローラー52aなどの複数の搬送ローラーを備えた搬送機構52により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー52aが配設されたレジスト部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。
【0061】
そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着装置60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー53aを備えた排紙部53により機外に排紙される。
【0062】
このように、画像形成装置1は、光導電性を有する感光体ドラム413と、感光体ドラム413の表面を一様に帯電させる帯電装置414と、光照射により感光体ドラム413の表面に静電潜像を形成する露光装置411と、感光体ドラム413の表面にトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する現像装置412と、トナー像を中間転写ベルト421や用紙Sなどの転写体に転写する中間転写ユニット42とを備えている。
【0063】
図3は、定着装置60の構成を示す断面図である。
【0064】
図3を参照して、定着装置60は、2軸上ベルト方式の定着装置であり、下側加圧部60Aと、上側加圧部60Bとを含んでいる。下側加圧部60Aは、下加圧ローラー64(第1の回転体の一例)と、定着圧切替機構69と、モーターM1とを含んでいる。上側加圧部60Bは、上加圧ローラー61と、定着ベルト62と、加熱ローラー63と、張架部材68と、モーターM2とを含んでいる。
【0065】
下加圧ローラー64と、上加圧ローラー61および定着ベルト62(第2の回転体の一例)とは、ニップ部Nで用紙Sを把持して搬送することにより、トナー像を用紙Sに定着する。下加圧ローラー64は、定着ベルト62を介して上加圧ローラー61に圧接されている。
【0066】
下加圧ローラー64は、定着圧切替機構69により定着ベルト62を介して上加圧ローラー61に圧接されている。下加圧ローラー64は、定着ベルト62とともにニップ部Nを形成する。下加圧ローラー64は、モーターM1により矢印AR1で示す方向に回転駆動される。制御部100は、モーターM1の駆動制御(たとえば回転のオン/オフ、回転数、下加圧ローラー64に対する圧接/離間など)を行うことにより、下加圧ローラー64の回転を制御する。なお、下加圧ローラー64には、ハロゲンヒータなどの加熱源が内蔵されていてもよい。
【0067】
定着圧切替機構69は、下加圧ローラー64を上加圧ローラー61に対して付勢する。定着圧切替機構69は、画像形成に用いられる用紙Sの紙種、坪量、またはサイズなどに応じて、下加圧ローラー64を上加圧ローラー61に対して押圧する際の荷重を多段階で切替可能である。定着圧切替機構69の駆動制御は、制御部100によって行われる。
【0068】
また、定着圧切替機構69は、下加圧ローラー64の位置を変更する。これにより、上加圧ローラー61が、定着ベルト62の表面温度の上昇により熱膨張し外径が大きくなった場合でも、これに対応して下加圧ローラー64の位置と、張架部材68の位置とを変更する。これにより、ニップ部Nを好適な位置に移動させることができる。
【0069】
上加圧ローラー61および定着ベルト62は下加圧ローラー64に従動し、矢印AR2で示す方向に回転する。定着ベルト62は、無端状であり、加熱ローラー63、上加圧ローラー61、および張架部材68に張架されている。定着ベルト62は、トナー像が転写された用紙Sに接触して、この用紙Sを所定の温度で加熱する。ここで、所定の温度とは、用紙Sがニップ部Nを通過する際に、トナーを溶融するのに必要な熱量を供給しうる温度であり、画像形成される用紙の紙種などによって異なる。
【0070】
なお、定着ベルト62は、たとえば耐熱性のポリイミドからなるフィルム基材の外周面に、シリコーンゴム等からなる弾性層と、フッ素系樹脂からなる表面離型層とが順に積層した構成を有している。フッ素系樹脂は、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)のいずれかを含有する材料よりなっている。フッ素系樹脂は、PFA、PTFE、FEPのいずれかよりなることが好ましい。これにより、トナー樹脂やトナー粒子に含まれるワックスに対する定着ベルト62表面の離型性も向上し、定着時にトナーが定着ベルト62表面につきにくくなる。
【0071】
上加圧ローラー61は、たとえば鉄などからなる円柱状の芯金と、芯金の外周面に形成されたシリコーンゴムなどからなる弾性層とを含んでいる。上加圧ローラー61は、弾性層の外周面に形成されたフッ素系樹脂からなる表面離型層をさらに含んでいてもよい。
【0072】
加熱ローラー63は、ニップ部Nで挟まれる用紙Sが定着ベルト62によって所定の温度で加熱されるように、定着ベルト62を加熱する。加熱ローラー63は、たとえばアルミニウムなどからなる円筒状の芯金と、芯金の外周面に形成されたPTFEなどからなる樹脂層とを含んでいる。
【0073】
加熱ローラー63には、ハロゲンヒータなどの加熱源631が内蔵されている。加熱源631は、制御部100の制御により、加熱ローラー63の芯金および樹脂層を加熱し、その結果、定着ベルト62を加熱する。なお、定着ベルト62は、電磁誘導加熱(IH:Induction Heating)により加熱されてもよい。この場合の定着ベルト62の基体は、Ni(ニッケル)などの電磁誘導発熱可能な材料で構成されてもよい。
【0074】
張架部材68は、両端部を回転自在に支持されたローラーであり、両端部の外径が中央部部分よりも大きい逆クラウン形状をなしている。張架部材68は、張架部材68は移動可能に設けられ、移動することで、定着ベルト62の張力を調整する。また、張架部材68を固定するとともに加熱ローラー63を移動可能に構成することで、定着ベルト62の張力を調整するようにしてもよい。
【0076】
図4は、用紙Sがニップ部Nを通過する際の下加圧ローラー64の表面速度の時間変化を模式的に示すグラフである。
【0077】
図4を参照して、制御部100は、用紙Sがニップ部Nを通過する際に、下加圧ローラー64の回転速度に、細かな周期の(たとえばサイン波のような)速度変動分を重畳する。「細かな周期」とは、用紙Sがニップ部を通過するのに要する時間(ニップ時間)よりも短い周期という意味である。
【0078】
つまり、制御部100は、用紙Sがニップ部Nを通過する際に、用紙Sがニップ部を通過するのに要する時間(ニップ時間)よりも短い周期となる周波数で、下加圧ローラー64を回転駆動する速度を周期的に変化させる。ニップ時間は、画像形成装置のプロセス速度とニップ部Nの搬送方向の幅とから算出される。
【0079】
以降、回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させることを「回転体を回転振動させる」と記すことがある。回転体の回転速度の周期的な変化を「回転体の回転振動」と記すことがある。回転体を回転駆動する速度を周期的に変化させる際の周波数を「加振周波数」と記すことがある。
図4における下加圧ローラー64の回転振動の振幅は振幅Wであり、周期は周期Tである。加振周波数は周期Tの逆数となる。
【0080】
たとえば、プロセス速度が300mm/sであり、ニップ幅が15mmである場合、ニップ時間は0.05sとなる。この場合、下加圧ローラー64の回転振動の周期Tは0.05sより短く設定され、下加圧ローラー64の加振周波数は20Hzより大きく設定される。
【0081】
制御部100は、少なくとも用紙Sの搬送方向前端がニップ部Nを通過している間、下加圧ローラー64を回転振動させればよい。用紙Sの搬送方向前端がニップ部Nを通過している間とは、具体的には、用紙Sの搬送方向前端がニップ部Nの通過を開始する時刻tm1から、用紙Sの搬送方向前端がニップ部Nの通過を完了した時刻tm2の間である。
【0082】
制御部100は、時刻tm2から用紙Sの搬送方向後端がニップ部Nの通過を完了する時刻tm3までの間のうち少なくとも一部の時間、下加圧ローラー64を回転振動させず、一定の回転速度で下加圧ローラー64を駆動してもよい。
【0083】
また制御部100は、時刻tm1から時刻tm3までの間、下加圧ローラー64を回転振動させてもよい。
【0084】
さらに制御部100は、
図4に示すように、用紙Sの通過位置にかかわらず、画像形成中に下加圧ローラー64を常に回転振動させてもよい。
【0085】
一方、制御部100は、定着ベルト62が下加圧ローラー64から離間した状態で(ニップ離間時に)、加熱ローラー63で発生する熱で定着ベルト62および上加圧ローラー61を均一に温める目的で、上加圧ローラー61を回転駆動する。ニップ離間時の定着ベルト62の表面速度は、下加圧ローラー64の表面速度より遅く設定される。
【0086】
本実施の形態において、制御部100は、用紙Sがニップ部Nを通過する際、上加圧ローラー61の回転を制御せず(上加圧ローラー61を回転駆動せず)、定着ベルト62を下加圧ローラー64に圧接させる。これにより、上加圧ローラー61および定着ベルト62は、下加圧ローラー64に対して従動回転する。上加圧ローラー61の従動回転を容易にするために、モーターM2と上加圧ローラー61との間の駆動系にはワンウェイクラッチが設けられていてもよい。
【0087】
図3および
図4を参照して、上加圧ローラー61の代替的な制御方法として、制御部100は、用紙Sがニップ部Nを通過する際に、上加圧ローラー61の回転を制御してもよい(上加圧ローラー61を回転駆動してもよい)。具体的には、制御部100は、下加圧ローラー64に追従して回転する上加圧ローラー61に正回転とは逆側に回転するトルクを付与し、下加圧ローラー64の搬送方向への回転に対する制動力D2を発生させてもよい(ブレーキ制御)。また制御部100は、下加圧ローラー64に追従して回転する上加圧ローラー61を補助するトルクを付与し、上加圧ローラー61を搬送方向と同じ方向へ回転させる補助駆動力D1を発生させてもよい(アシスト制御)。上加圧ローラー61をブレーキ制御またはアシスト制御する場合には、用紙の分離性を改善することができるとともに、光沢メモリを改善することができる。
【0088】
図5は、上加圧ローラー61、定着ベルト62、および下加圧ローラー64の各々の内部の歪み方向を模式的に示す断面図である。なお説明の便宜のため、
図5における各層の厚みは実際のものと変えられている。また
図5(a)、
図5(b)、および
図5(c)のいずれも、用紙Sは
図5中左方向へ搬送されるものとする。
【0089】
図5を参照して、上加圧ローラー61は、モーターM2によって回転駆動される芯金61aと、芯金61aの外周側に形成されたゴム層61b(粘弾性層の一例)と、ゴム層61bの外周側に形成された表層61cとを含んでいる。定着ベルト62は、基材62aと、基材62aの外周側に形成されたゴム層62b(粘弾性層の一例)と、ゴム層62bの外周側に形成された表層62cとを含んでいる。下加圧ローラー64は、モーターM1によって回転駆動される芯金64aと、芯金64aの外周側に形成されたゴム層64b(粘弾性層の一例)と、ゴム層64bの外周側に形成された表層64cとを含んでいる。ゴム層61b、62b、および64bの各々は粘弾性を有している。用紙Sは表層62cと表層64cとの間に挟まれる。用紙Sの表層62c側の面にはトナー層TLが形成されている。
【0090】
下加圧ローラー64と上加圧ローラー61とが等速で回転している場合には、下加圧ローラー64が上加圧ローラー61から受ける回転負荷が限りなく小さくなる。この場合、
図5(b)に示すように、ゴム層61b、62b、および64bの各々には搬送方向の歪みが発生しない。
【0091】
下加圧ローラー64が上加圧ローラー61よりも速く回転している場合や、上加圧ローラー61に制動力D2(
図3)を発生させている場合には、下加圧ローラー64が上加圧ローラー61から受ける回転負荷は大きくなる。この場合、
図5(c)に示すように、ゴム層61b、62b、および64bの各々には搬送方向とは逆方向に傾斜させる形の歪みが発生する。その結果、用紙Sおよびトナー層TLを搬送方向とは逆方向に引っ張るようなせん断力がトナー層TLと定着ベルト62との間に発生する。
【0092】
下加圧ローラー64が上加圧ローラー61よりも遅く回転している場合(下加圧ローラー64が減速し、上加圧ローラー61が慣性力により高速回転を維持している場合)や、上加圧ローラー61に補助駆動力D1(
図3)を発生させている場合には、下加圧ローラー64が上加圧ローラー61から受ける回転負荷は大きくなる。この場合、
図5(a)に示すように、ゴム層61b、62b、および64bの各々には搬送方向に傾斜させる形の歪みが発生する。その結果、用紙Sおよびトナー層TLを搬送方向に引っ張るようなせん断力がトナー層TLと定着ベルト62との間に発生する。
【0093】
トナー層TLが表層62cから受ける力は、上加圧ローラー61の回転負荷や、ブレーキ/アシスト駆動制御によりコントロールすることが可能である。また、ゴム層61b、62b、および64bの各々は搬送方向(せん断方向)に粘弾性を有している。このため、下加圧ローラー64を回転振動させると、下加圧ローラー64の芯金64aの回転速度の変動が上加圧ローラー61の芯金61aに伝わるのに時間を要し、上加圧ローラー61の芯金61aの回転速度に位相遅れが発生する。その結果、トナー層TLと定着ベルト62との間にせん断力が働く。
【0094】
[下加圧ローラーから上加圧ローラーへの回転振動の伝達]
【0095】
図6は、下加圧ローラー64の芯金64aから上加圧ローラー61の芯金61aへ回転振動を伝達する構成を模式的に示すモデル図である。なお、
図6に示す構成はあくまでもモデルであり、実際の構成は
図6に示す構成よりも複雑である。
【0096】
図6を参照して、本実施の形態では、下加圧ローラー64の芯金64aが回転方向に振動し、その振動が上加圧ローラー61の芯金61aに伝達される。したがって、グラウンドGNDが下加圧ローラー64の芯金64aに相当し、錘WTが上加圧ローラー61の芯金61aに相当する。下加圧ローラー64の芯金64aと上加圧ローラー61の芯金61aとの間に存在するゴム層61b、62b、および64bの各々は、粘弾性特性を示すバネSPとダッシュポットDPに相当する。
【0097】
下加圧ローラー64の芯金64aから上加圧ローラー61の芯金61aへ回転振動を伝達する構成が、
図6に示すような1慣性型のモデルである場合、その振動伝達特性は、
図6で示すようなシンプルなものとなる。
【0098】
図7は、粘弾性特性を有する部材の振動伝達特性を示す表である。
図7の横軸は、下加圧ローラー64の芯金64aの加振周波数を示している。
図7の縦軸は、伝達倍率および位相を示している。伝達倍率は、下加圧ローラー64の芯金64aの回転振動の振幅に対し、上加圧ローラー61の芯金61aの回転振動の振幅が何倍になるかを示している。位相は、下加圧ローラー64の芯金64aの回転振動の位相に対する上加圧ローラー61の芯金61aの回転振動の位相の遅れを示している。
【0099】
図7を参照して、ここでは、横軸の加振周波数に沿って説明する。加振周波数がほぼ0に近い低周波数の場合、下加圧ローラー64の芯金64aの回転振動の振幅は、ほぼそのままの倍率で上加圧ローラー61の芯金61aに伝わる。上加圧ローラー61の芯金61aの位相遅れは小さく、上加圧ローラー61の芯金61aは下加圧ローラー64の芯金64aの回転振動にほぼ同期して回転振動する。
【0100】
加振周波数が増加すると、伝達倍率は徐々に大きくなり、ある周波数FC1でピークを迎える。周波数FC1は、上加圧ローラー61が共振する周波数である。加振周波数が周波数FC1である場合には、トナー層TLと用紙Sとの間には最も大きなせん断力が発生する。位相については、加振周波数が増加するに従って上加圧ローラー61の芯金61aの回転振動の位相の遅れは大きくなる。
【0101】
加振周波数が周波数FC1を超えて増加すると、伝達倍率は徐々に小さくなり、振動が伝わりにくくなる。位相については、加振周波数が増加するに従って、上加圧ローラー61の芯金61aの回転振動の位相の遅れはますます大きくなる。加振周波数が周波数FC2より大きくなると、上加圧ローラー61の芯金61aは、下加圧ローラー64の芯金64aの回転振動の位相とはほぼ逆の位相で振動をするようになる。
【0102】
つまり、下加圧ローラー64の芯金64aから上加圧ローラー61の芯金61aへの回転振動の振動伝達特性が予め分かっていれば、トナー層TLおよび用紙Sに大きなせん断力が働くように、加振周波数を伝達倍率が大きくなる周波数に設定することができる。また、上加圧ローラー61の芯金61aが下加圧ローラー64の芯金64aの回転振動と所定の位相差(好ましくは逆位相)で振動するような周波数に加振周波数を設定することができる。
【0103】
制御部100は、下加圧ローラー64の芯金64aから上加圧ローラー61の芯金61aへの回転振動の振動伝達特性に基づいて、上加圧ローラー61の芯金61aの回転振動の位相が下加圧ローラー64の芯金64aの回転振動の位相に対して遅れる周波数で、下加圧ローラー64を回転振動させてもよい。
【0104】
また制御部100は、下加圧ローラー64の芯金64aから上加圧ローラー61の芯金61aへの回転振動の振動伝達特性に基づいて、下加圧ローラー64の芯金64aの回転振動と上加圧ローラー61の芯金61aの回転振動とが逆位相となる周波数で、下加圧ローラー64を回転振動させてもよい。
【0105】
さらに制御部100は、下加圧ローラー64の芯金64aから上加圧ローラー61の芯金61aへの回転振動の振動伝達特性に基づいて、上加圧ローラー61の芯金61aの回転振動が共振する周波数を中心値とした所要の範囲で、下加圧ローラー64を回転振動させる際の周波数(言い換えれば、
図4に示す周期T)を変動させてもよい。定着システム、用紙の表面性、およびトナーの溶融特性の組合せによっては、下加圧ローラー64を回転振動させる際の周波数を一定とした場合に、画像上に細かい光沢スジが出現することがある。そのような場合は、上述の制御を行うことで、光沢スジの周期性が失われ、目立たなくなる効果あるいは発生しなくなる効果を得ることができる。
【0106】
上加圧ローラー61は、芯金61aの軸方向端部において芯金61aに取り付けられたフライホイール61d(
図3)をさらに含んでいてもよい。一般的に、上加圧ローラー61側(被加振側)の慣性が大きい方が、上加圧ローラー61が共振する周波数や、上加圧ローラー61の位相の遅れが大きくなる周波数が低周波数側に遷移する。そこで、加振周波数が低くても上加圧ローラー61を効果的に回転振動させたい場合には、上加圧ローラー61にフライホイール61dを設けることで、上加圧ローラー61にイナーシャを付加することが効果的である。
【0107】
なお、下加圧ローラー64の芯金64aの回転振動の振幅および加振周波数と、用紙Sと表層62cとの間の摩擦力との関係によっては、用紙がニップ部Nにおいて上加圧ローラー61および定着ベルト62に対してずれる現象であるズリが発生するおそれがある。ズリは画像乱れの発生の原因になるものである。このため、制御部100は、ズリが発生しない振幅および加振周波数で下加圧ローラー64を回転振動させることが好ましい。
【0108】
[下加圧ローラーの回転振動の振幅および加振周波数の設定]
【0109】
下加圧ローラー64の回転振動の振幅および加振周波数の最適値は、用紙Sの摩擦係数、用紙Sの坪量、定着装置60(画像形成装置1)のプロセス速度、または定着装置60に設定された定着温度などの条件により変化する。したがって、これらの条件のうち少なくともいずれか1つに応じて、下加圧ローラー64の回転振動の加振周波数および振幅が決定され、決定された加振周波数および振幅で下加圧ローラー64が回転振動されることが好ましい。
【0110】
始めに制御部100が、用紙Sの摩擦係数に応じて、下加圧ローラー64の回転振動の振幅および周波数のうち少なくとも一方の条件を決定する場合について説明する。
【0111】
図8は、用紙Sの摩擦係数または坪量の違いによる振動伝達関数の変化を模式的に示すグラフである。なお、
図8〜
図10の各々において、横軸は下加圧ローラー64の加振周波数を示しており、縦軸は伝達倍率を示している。
【0112】
図8を参照して、紙種A、紙種B、および紙種Cの各々についての振動伝達関数が示されている。ここでは、紙種Aの摩擦係数は小さく、紙種Bの摩擦係数は中程度であり、紙種Cの摩擦係数は大きいものとする。
【0113】
通紙する用紙Sの摩擦係数の違い(紙種の違い)によって振動伝達関数は異なる。このため、用紙Sの摩擦係数に応じて下加圧ローラー64の回転振動の振幅および加振周波数のうち少なくとも一方の条件を決定することにより、定着装置60が最適な条件で動作するようになる。
【0114】
ここで、下加圧ローラー64の回転振動の振幅が用紙Sの摩擦係数にかかわらず一定である場合を想定する。この場合、上加圧ローラー61を狙いの振幅(伝達倍率AM3)で回転振動させるための下加圧ローラー64の回転振動の加振周波数は、紙種A(摩擦係数:小)では周波数FQ1となり、紙種B(摩擦係数:中)では周波数FQ2となり、紙種C(摩擦係数:大)では周波数FQ3となる(FQ1<FQ2<FQ3)。この場合、上加圧ローラー61を狙いの振幅で回転振動させるために、制御部100は、用紙Sの摩擦係数が大きいほど、下加圧ローラー64の回転振動の加振周波数を大きくする。
【0115】
また、下加圧ローラー64の回転振動の加振周波数が用紙Sの摩擦係数にかかわらず一定の周波数FQ1である場合を想定する。この場合、伝達倍率は、紙種C(摩擦係数:大)では伝達倍率AM1となり、紙種B(摩擦係数:中)では伝達倍率AM2となり、紙種A(摩擦係数:小)では伝達倍率AM3となる(AM1<AM2<AM3)。この場合、上加圧ローラー61を狙いの振幅で回転振動させるために、制御部100は、用紙Sの摩擦係数が大きいほど、下加圧ローラー64の回転振動の振幅を大きくする。
【0116】
続いて制御部100が、用紙Sの坪量に応じて、下加圧ローラー64の回転振動の振幅および周波数のうち少なくとも一方の条件を決定する場合について説明する。
【0117】
図8は、用紙Sの坪量に応じた振動伝達関数としても見ることができる。この場合、紙種Aの坪量は小さく、紙種Bの坪量は中程度であり、紙種Cの坪量は大きいものとする。
【0118】
通紙する用紙Sの坪量の違い(紙種の違い)によって振動伝達関数は異なる。このため、用紙Sの坪量に応じて下加圧ローラー64の回転振動の振幅および加振周波数のうち少なくとも一方の条件を決定することにより、定着装置60が最適な条件で動作するようになる。
【0119】
ここで、下加圧ローラー64の回転振動の振幅が用紙Sの坪量にかかわらず一定である場合を想定する。この場合、上加圧ローラー61を狙いの振幅(伝達倍率AM3)で回転振動させるための下加圧ローラー64の加振周波数は、紙種A(坪量:小)では周波数FQ1となり、紙種B(坪量:中)では周波数FQ2となり、紙種C(坪量:大)では周波数FQ3となる(FQ1<FQ2<FQ3)。この場合、上加圧ローラー61を狙いの振幅で回転振動させるために、制御部100は、用紙Sの坪量が大きいほど、下加圧ローラー64の回転振動の加振周波数を大きくする。
【0120】
また、下加圧ローラー64の回転振動の加振周波数が用紙Sの坪量にかかわらず一定の周波数FQ1である場合を想定する。この場合、伝達倍率は、紙種C(坪量:大)では伝達倍率AM1となり、紙種B(坪量:中)では伝達倍率AM2となり、紙種A(坪量:小)では伝達倍率AM3となる(AM1<AM2<AM3)。この場合、上加圧ローラー61を狙いの振幅で回転振動させるために、制御部100は、用紙Sの坪量が大きいほど、下加圧ローラー64の回転振動の振幅を大きくする。
【0121】
続いて制御部100が、定着装置60のプロセス速度に応じて、下加圧ローラー64の回転振動の振幅および周波数のうち少なくとも一方の条件を決定する場合について説明する。
【0122】
図9は、定着装置60のプロセス速度の違いによる振動伝達関数の変化を模式的に示すグラフである。
【0123】
図9を参照して、定着装置60のプロセス速度が高速である場合、中速である場合、および低速である場合の各々についての振動伝達関数が示されている。
【0124】
定着装置60のプロセス速度の違いによって振動伝達関数は異なる。このため、定着装置60のプロセス速度に応じて下加圧ローラー64の回転振動の振幅および加振周波数のうち少なくとも一方の条件を決定することにより、定着装置60が最適な条件で動作するようになる。
【0125】
ここで、下加圧ローラー64の回転振動の振幅が定着装置60のプロセス速度にかかわらず一定である場合を想定する。この場合、上加圧ローラー61を狙いの振幅(伝達倍率AM3)で回転振動させるための下加圧ローラー64の回転振動の加振周波数は、定着装置60のプロセス速度が低速である場合には周波数FQ1となり、中速である場合には周波数FQ2となり、高速である場合には周波数FQ3となる(FQ1<FQ2<FQ3)。この場合、上加圧ローラー61を狙いの振幅で回転振動させるために、制御部100は、定着装置60のプロセス速度が速いほど、下加圧ローラー64の回転振動の加振周波数を大きくする。
【0126】
また、下加圧ローラー64の回転振動の加振周波数が定着装置60のプロセス速度にかかわらず一定の周波数FQ1である場合を想定する。この場合、伝達倍率は、定着装置60のプロセス速度が高速である場合には伝達倍率AM1となり、中速である場合には伝達倍率AM2となり、低速である場合には伝達倍率AM3となる(AM1<AM2<AM3)。この場合、上加圧ローラー61を狙いの振幅で回転振動させるために、制御部100は、定着装置60のプロセス速度が速いほど、下加圧ローラー64の回転振動の振幅を大きくする。
【0127】
さらに制御部100が、定着装置60に設定された定着温度に応じて、下加圧ローラー64の回転振動の振幅および周波数のうち少なくとも一方の条件を決定する場合について説明する。
【0128】
図10は、定着装置60の定着温度の違いによる振動伝達関数の変化を模式的に示すグラフである。
【0129】
図10を参照して、定着装置60の定着温度が通常よりも低温である場合、通常の温度(中温)である場合、通常よりも高温である場合の各々についての振動伝達関数が示されている。
【0130】
定着装置60の定着温度の違いによって振動伝達関数は異なる。このため、定着装置60の定着温度に応じて下加圧ローラー64の回転振動の振幅および加振周波数のうち少なくとも一方の条件を決定することにより、定着装置60が最適な条件で動作するようになる。
【0131】
ここで、下加圧ローラー64の回転振動の振幅が定着装置60の定着温度にかかわらず一定である場合を想定する。この場合、上加圧ローラー61を狙いの振幅(伝達倍率AM3)で回転振動させるための下加圧ローラー64の加振周波数は、定着装置60の定着温度が高温である場合には周波数FQ1となり、通常の温度である場合には周波数FQ2となり、低温である場合には周波数FQ3となる(FQ1<FQ2<FQ3)。この場合、上加圧ローラー61を狙いの振幅で回転振動させるために、制御部100は、定着装置60の定着温度が低いほど、下加圧ローラー64の回転振動の加振周波数を大きくする。
【0132】
また、下加圧ローラー64の回転振動の加振周波数が定着装置60の定着温度にかかわらず一定の周波数FQ1である場合を想定する。この場合、伝達倍率は、定着装置60の定着温度が低温である場合には伝達倍率AM1となり、通常の温度である場合には伝達倍率AM2となり、高温である場合には伝達倍率AM3となる(AM1<AM2<AM3)。この場合、上加圧ローラー61を狙いの振幅で回転振動させるために、制御部100は、定着装置60の定着温度が低いほど、下加圧ローラー64の回転振動の振幅を大きくする。
【0134】
上述の実施の形態によれば、用紙Sがニップ部Nを通過する際に、用紙Sおよびトナー層TLを搬送方向に引っ張るようなせん断力と、用紙Sおよびトナー層TLを搬送方向とは逆方向に引っ張るようなせん断力とが、トナー層TLと定着ベルト62との間に繰り返し加えられる。これらの互いに反対の方向のせん断力により、用紙Sが定着ベルト62から分離しやすくなる。またトナーに含まれるワックス成分が両方向のせん断力により潰され、ワックス成分の働きが向上する。これにより、上加圧ローラー61のブレーキ/アシスト機能を必須の機能とせずとも用紙の分離性を改善することができる。その結果、上加圧ローラー61の駆動制御システムを複雑化することなく、用紙の分離性を効率的に改善することができる。
【0135】
また、上加圧ローラー61、定着ベルト62、および下加圧ローラー64の各々がゴム層61b、62b、および64bを含んでいるので、下加圧ローラー64の回転振動が上加圧ローラー61に伝わる際に、加振周波数による伝達倍率の変化や位相の遅れが発生しやすくなる。これにより、せん断力をより効果的に発生させることができる。
【0137】
上述の実施の形態では、定着装置が搭載される画像形成装置がMFPである場合について説明したが、定着装置が搭載される画像形成装置は、MFPの他、ファクシミリ装置、複写機、またはプリンターなどであってもよい。
【0138】
定着装置は、上述の2軸上ベルト方式のものである代わりに、定着ローラーと加圧ローラーとでニップ部を構成する熱ローラー方式のものであってもよい。
【0139】
上述の実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。