特許第6597306号(P6597306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597306
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20191021BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20191021BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20191021BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20191021BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B32B27/36
   C08J7/04 KCFD
   B32B27/20 Z
   G02B5/02 C
   G02B5/08 A
   G02B5/08 E
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-537856(P2015-537856)
(86)(22)【出願日】2015年7月14日
(86)【国際出願番号】JP2015070153
(87)【国際公開番号】WO2016017416
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2018年5月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-155812(P2014-155812)
(32)【優先日】2014年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井澤 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正大
【審査官】 塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−075779(JP,A)
【文献】 特開2000−075134(JP,A)
【文献】 特開2010−211010(JP,A)
【文献】 特開2010−211027(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/029910(WO,A1)
【文献】 特開2006−328173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08J 7/04−7/06
G02B 5/00−5/136
5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリエステル層(A)およびポリエステル層(B)の2種類の層を有するポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(A)はポリエステルフィルムの少なくとも片側の表層を形成し、該表層の一方に粒子を含有する塗布層(C)が設けられ、塗布層(C)中に含有される前記粒子が不定形な多孔質有機系粒子であり、この粒子の体積平均粒子径が10μm以上30μm以下であり、当該多孔質有機系粒子を有する塗布層(C)表層における突起のそれぞれに対し、SEM断面写真を観察したとき、その頂部からポリエステル層(A)の最表面までの距離(突起高さ)dhの平均値Dhが10μm以上30μm以下であり、該突起におけるポリエステル層(A)と接する部分の長さ(突起底部の幅)dwの平均値Dwが10μm以上35μm以下であり、DhとDwの比であるDh/Dwが0.70以上1.00以下であり、ポリエステル層(A)の最表面からdh/2の高さにおける粒子のA層に平行な方向の粒子長さ(突起中央部の幅)dvの平均値Dvが10μm以上35μm以下であり、DhとDvの比であるDh/Dvが0.90以上1.00以下であり、DvとDwの比であるDv/Dwが0.80以上1.05以下であり、当該粒子がフィルム表面1mmあたり1000個以上2000個以下である、ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記多孔質粒子が有機粒子である、請求項1記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記多孔質粒子が6−ナイロンを主成分とする、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記塗布層(C)側表面における、平面磨耗試験後の60°光沢度変化値が30%未満である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルフィルムを用いた液晶ディスプレイ用反射フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムに関し、特に、液晶ディスプレイ用反射板として用いるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、パソコン、タブレット型端末など様々な電子機器に多用されている液晶ディスプレイは、画面表示のために、ディスプレイ後部にバックライトと呼ばれる光源を設置している。また、バックライトは、画面全体を均一に照射する必要がある。この特性を満たす方式として、サイドライト型及び直下型と呼ばれる面光源の構造がある。特に、薄型ディスプレイには、サイドライト型、つまり画面に対し側面から光を照射するタイプのバックライトが適用されている。一般的に、このサイドライト型では、導光板と呼ばれる、ある厚みを持ったアクリル板などの透明基材の片面に網点印刷やシボ加工など各種処理を施したシートが用いられる。側面の光源より導光板のエッジへ光を当てることで、照明光が上方に均一に分散され、均一な明るさを持った画面が得られる。また、エッジ部のみに照明を設置するため、光源を減らすことができ、低コスト化及び軽量化でき、直下型より薄型にできる。さらに、照明光の画面背面への逃げを防ぐため、導光板の下方に反射板が設けられており、これにより光源からの光のロスを少なくし、液晶画面を明るくできる。
【0003】
このような液晶画面用の面光源、特にサイドライト型に用いられる反射板には、薄膜及び軽量であることと同時に、高い反射性能はもちろんのこと、特に導光板との相性が求められる。従来、反射板としては、フィルムに白色顔料を添加したり、内部に微細な気泡を含有させ、この界面反射により高反射性能を達成し、表面層に無機粒子などを添加したり、エンボス加工したり、多孔質の無機粒子などをコートすることにより凹凸形状を付与して導光板との密着を防止してきた(特許文献1、2、3、4、5)。
【0004】
一方、上記のような方法にて凹凸形状を付与した反射フィルムでは、導光板の素材によっては、導光板の網点印刷やシボ加工など各種処理を施した面に傷がつきやすくなり、この傷や削りカスが画面ムラの原因となる場合がある。また、運搬時の振動や組み立て時に他部材に強く接触することにより、反射フィルムのコーティングが潰れたり剥がれたりすることにより傷が生じることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−98660号公報
【特許文献2】特開2004−126345号公報
【特許文献3】WO11/105294号公報
【特許文献4】特許第5218931号公報
【特許文献5】特開2011−75779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の検討では達成し得なかった高い反射性と優れたムラ消し作用及びフィルムの耐傷性を兼ね備えた白色ポリエステルフィルムを容易かつ安価に安定して提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような構成をとる。
(1)少なくともポリエステル層(A)(以下、A層とも言う)およびポリエステル層(B)(以下、B層とも言う)の2種類の層を有するポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(A)はポリエステルフィルムの少なくとも片側の表層を形成し、該表層の一方に粒子を含有する塗布層(C)が設けられ、塗布層(C)中に含有される前記粒子が不定形な多孔質有機系粒子であり、この粒子の体積平均粒子径が10μm以上30μm以下であり、多孔質有機系粒子を有する塗布層(C)表層における突起のそれぞれに対し、SEM断面写真を観察したとき、その頂部からポリエステル層(A)の最表面までの距離(以下、突起高さとも言う)dhの平均値Dhが10μm以上30μm以下であり、該突起におけるポリエステル層(A)と接する部分の長さ(以下、突起底部の幅とも言う)dwの平均値Dwが10μm以上35μm以下であり、DhとDwの比であるDh/Dwが0.7以上1.0以下であり、ポリエステル層(A)の最表面からdh/2の高さにおける粒子のA層に平行な方向の粒子長さ(以下、突起中央部の幅とも言う)dvの平均値Dvが10μm以上35μm以下であり、DhとDvの比であるDh/Dvが0.90以上1.00以下であり、DvとDwの比であるDv/Dwが0.80以上1.05以下であり、当該粒子がフィルム表面1mmあたり1000個以上2000個以下である、ポリエステルフィルム。
(2)前記粒子が有機粒子である(1)記載のポリエステルフィルム。
(3)前記粒子が6−ナイロンを主成分とする(1)又は(2)に記載のポリエステルフィルム。
(4)塗布層(C)側表面における、平面磨耗試験後の60°光沢度変化値が30%未満である(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステルフィルムを用いた液晶ディスプレイ用反射フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い反射性と優れた表面形状を兼ね備えたポリエステルフィルムを提供することができ、特にこのポリエステルフィルムを面光源内の反射板やリフレクターとして用いたとき、液晶画面を明るく照らし、液晶画像をより鮮明かつ見やすくすることができ、さらに、サイドライト型光源を使用したバックライトで問題となる、導光板との密着や削れ、及びフィルム自体の削れや傷つきを抑制することができ、ムラのない画面とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリエステルフィルムの構成]
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル層(A)とポリエステル層(B)とを有する。製膜の容易さと効果とを考慮すると、3層構成が好ましく、ポリエステル層(A)/ポリエステル層(B)/ポリエステル層(A)の3層構成であることがより好ましい。また、少なくとも片面に粒子を含有する塗布層(C)を有することが必要である。
本発明のポリエステル層(A)の厚みは2〜20μmであることが好ましい。ポリエステル層(A)の厚みが2μm未満であると、安定製膜できないことがある。ポリエステル層(A)の厚みが20μmを超えると、当該ポリエステルフィルムを反射フィルムとして用いた場合に、光がポリエステル層(B)まで届きにくくなり、後述する気泡とポリエステルとの界面で反射する成分が減少するなどにより、光反射率や輝度などの光学特性が低下することがある。
【0010】
[ポリエステル層(A)]
本発明のポリエステルフィルムのポリエステル層(A)は、ポリエステル(a)を主成分とすることが好ましく、適宜各種添加剤を含有させることもできる。
【0011】
[ポリエステル(a)]
ポリエステル層(A)を構成するポリエステル(a)は、1)ジカルボン酸成分もしくはそのエステル形成性誘導体(以下、「ジカルボン酸成分」と総称する)とジオール成分の重縮合、2)一分子内にカルボン酸もしくはカルボン酸誘導体骨格と水酸基を有する化合物の重縮合、および1)2)の組み合わせにより得ることができる。
【0012】
ポリエステル(a)を構成するジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されず、例えば多官能酸である、トリメリット酸、ピロメリット酸等も好適に用いることができる。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いてもよい。
【0013】
また、かかるポリエステル樹脂を構成するジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、等の脂肪族ジオール類、1,3−ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノールなどの芳香族ジオール類等のジオールなどが代表例としてあげられるがこれらに限定されない。また、これらは単独で用いても、複数種類用いてもよい。
【0014】
ポリエステル(a)は、上述の化合物を適宜組み合わせて重縮合させ、得ることができる。
【0015】
ポリエステル(a)は、結晶性でも非結晶性でも良いが、非結晶性ポリエステルを少なくとも1種含む方が、後述する表面形状形成のために好ましい。ここでいう非結晶性とは、結晶融解熱が1cal/g未満である樹脂を指す。
【0016】
ポリエステル(a)に好適に用いられるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略すことがある。)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0017】
ポリエステル(a)として、上述の樹脂を用いることにより、無着色性を維持しつつ、フィルムとしたときに高い機械強度を付与することができる。より好ましくは、安価でかつ耐水性、耐久性、耐薬品性が優れるという点で、PETが好ましい。
【0018】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル(a)の含有量は、ポリエステル層(A)に対して50質量%以上であることが好ましい。ポリエステル(a)の含有量が50質量%に満たないと、製膜できないことがあるうえ、製膜できてもフィルムの強度が低下することがあり好ましくない。
【0019】
[ポリエステル層(B)]
本発明のポリエステルフィルム層(B)は、ポリエステル(a)、気泡核剤(b)および気泡を含有することが、輝度や反射率などの光学特性の点で好ましい。これに加えて、後述するポリエステル(c)や分散剤を適宜用いることがより好ましい。ポリエステル(a)と、気泡核剤(b)を用いることにより、後述するような方法により容易に気泡核剤(b)を核とした気泡を含有させやすくなり、さらにポリエステル(c)や分散剤を用いることにより、その気泡がさらに微細かつ多量に生成しやすくなるため、軽量かつ、高い反射特性を有するポリエステルフィルムを製造しやすくなる。
【0020】
ポリエステル層(B)を構成する樹脂としては、上述したポリエステル層(A)に用いたポリエステル(a)を用いることが、無着色性を維持しつつ、フィルムとしたときに高い機械強度を付与することができるため好ましい。
【0021】
ポリエステル層(B)を構成するポリエステル(a)の含有量は、ポリエステル層(B)を基準として、少なくとも30質量%であることが、製膜性、光反射性能、耐熱性、耐久性が優れたポリエステルフィルムを得ることができるという点で、好ましい。ポリエステル(a)の含有量が30質量%未満であると、フィルム内部に後述する気泡核剤(b)などの周囲に気泡が十分に生成されず、白色性や光反射特性に劣ることがある。ポリエステル(a)の上限は90質量%以下であることが、製膜しやすさの観点から、好ましい。
【0022】
[気泡核剤(b)]
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル層(B)内部に気泡を有することが白色性、反射特性のために好ましく、ポリエステル層(B)を構成するポリエステル(a)と気泡核剤(b)を含有させ2軸延伸することによって、気泡を形成させることができる。
【0023】
気泡核剤(b)は無機粒子でも有機粒子でもよく、それらを併用することもできる。
【0024】
無機粒子の具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素(シリカ)等も用いることができる。これらの中で、長時間の製膜安定性、反射特性向上の観点から、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカが好ましく、粒子径が小さく、分散しやすいという点で酸化チタンが最も好ましい。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。また、多孔質や中空多孔質等の形態であってもよく、本発明の効果を阻害しない範囲内において、分散性を向上させるために、表面処理が施されていてもよく、表面処理剤として、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、シロキサンが好適に用いられる。
【0025】
有機粒子の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンなどのような直鎖状、分鎖状あるいは環状のポリオレフィンが挙げられる。このポリオレフィンは単独重合体であっても共重合体であってもよく、さらには2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性に優れ、かつ耐熱性に優れるという点で、結晶性ポリオレフィンとしては、ポリプロピレンやポリメチルペンテンなどが、非晶性ポリオレフィンとしては、シクロオレフィン共重合体(COCと記載することもある)などが好ましく用いられる。シクロオレフィン共重合体とは、シクロアルケン、ビシクロアルケン、トリシクロアルケン、テトラシクロアルケン及びペンタシクロアルケンからなる群から選ばれた少なくとも1種のシクロオレフィンと、エチレン、プロピレン等の直鎖オレフィンからなる共重合体である。ここでいう非晶性樹脂とは、結晶融解熱が1cal/g未満である樹脂を指す。
【0026】
シクロオレフィン共重合体におけるシクロオレフィンの代表例としては、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5,6−ジメチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン等がある。
【0027】
また、シクロオレフィン共重合体における直鎖オレフィンの代表例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等がある。
【0028】
また、有機粒子として、シクロオレフィン共重合体樹脂を用いる場合、直鎖オレフィン成分は、反応性の観点からエチレン成分が好ましい。さらに、シクロオレフィン成分も、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン(ノルボルネン)やその誘導体が生産性・透明性・高Tg化の点から好ましい。
【0029】
気泡核剤(b)の添加量は、ポリエステル層(B)の総質量を100質量%としたときに10〜50質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。気泡核剤(b)の含有量が10質量%未満であると、フィルム内部に気泡が十分に生成されず、白色性や光反射特性に劣ることがある。一方、気泡核剤(b)の含有量が50質量%を越えると、フィルムの強度が低下し、延伸時の破断が起こりやすくなる上、後加工の際に粉発生等の不都合を生じる場合がある。含有量をかかる範囲内にすることにより、十分な白色性・反射性・軽量性を発現せしめることができる。
【0030】
また、気泡核剤(b)として有機粒子を用いる場合、これを均一分散させるには、分散剤を添加することが有効である。本発明の場合、特にポリアルキレングリコール、中でもポリエチレングリコールが好ましい。また、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合体なども、有機粒子の分散性を向上させるために好ましく用いられる。添加量としては、ポリエステル層(B)の質量に対して3質量%以上20質量%以下が好ましく、特に好ましくは5質量%以上15質量%以下である。分散剤の添加量が少なすぎると、添加の効果が薄れ、多すぎると、フィルム母材本来の特性を損なう恐れがある。このような分散剤は、予めフィルム母材ポリマー中に添加してマスターポリマ(マスターチップ)として調整可能である。
【0031】
[ポリエステル(c)]
ポリエステル(c)は、1)ジカルボン酸成分もしくはそのエステル形成性誘導体とジオール成分の重縮合により得ることができる。
なお、本発明におけるジオール成分とは、ジオールとして存在している成分に限定されず、ポリエステルの構成成分、例えば共重合体として含有、またはこれら樹脂の混合物として含有する場合も含まれる。
【0032】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル(c)として1種以上のポリエステル樹脂を用いることができる。
【0033】
かかるポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体などが代表例として挙げられるが、これらに限定されず、例えば多官能酸である、トリメリット酸、ピロメリット酸およびそのエステル誘導体等も好適に用いることができる。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
【0034】
また、上述のジカルボン酸成分のカルボキシ末端に、l−ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類、およびその誘導体、そのオキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたジカルボキシ化合物も好ましく用いられる。
【0035】
また、かかるポリエステル樹脂を構成するジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロへキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロプロパンジメタノール、シクロブタンジメタノール、シクロペンタンジメタノール、シクロへキサンジメタノール、シクロヘプタンジメタノール、シクロオクタンジメタノールなどの炭素数4以上8以下の脂環式ジオール、ビスフェノールA、1,3−ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、などの芳香族ジオール類等が代表例としてあげられるが、これらに限定されない。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
【0036】
上記のジオールのうち、ポリエステル(c)としては、モノマー価格と、ポリエステル樹脂(特にPET)との混合が容易であるという点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)が特に好適に使用される。
【0037】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル(c)の含有量は、ポリエステル層(B)に対して1.2〜36質量%が好ましい。より好ましくは2.4〜26質量%である。ポリエステル(c)の含有量が1.2質量%に満たないと、気泡核剤(b)の微分散効果が低下し、反射性能が低下するため好ましくない。また36質量%を超えると、ポリエステルフィルムの耐熱性が低下し、高温下に曝されたときに寸法変化が大きくなることがあり好ましくない。本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル(c)の含有量を1.2〜36質量%とすることで、より製膜安定性、反射性及び寸法安定性を兼ね備えたポリエステルフィルムとすることができる。
【0038】
[塗布層(C)]
本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(A)の表面に塗布層(C)を有し、該塗布層は不定形な多孔質粒子(d)を含有していることが必要である。本発明に用いることができる多孔質粒子(d)の種類としては、他部材、特に導光板を傷つけにくいという観点から、有機系粒子が好ましい。例えば、アクリル系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、ナイロン系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、ポリエチレン系樹脂粒子、ポリアミド系樹脂粒子、ウレタン系樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子等、又はこれらの混合物等を用いることができるが、硬さを適宜調整できることから、ナイロン粒子が特に好ましい。
【0039】
なお、ここでいう不定形な多孔質粒子とは、粒子がそれぞれ一定の形に定まっていないもので、個々の粒子によりその形状が異なるもので、かつ、細孔を有する粒子を言う。細孔とは粒子に対し粒子内部へ向かって凹状に窪んだ部分のことである。例えば空洞形状であったり、針や曲線のように粒子内部や中心へ向かって窪んだ形状、またそれらが粒子を貫通した形状等が挙げられ、またその大きさや容積も大小様々でよく、特にこれらに限定されるものではない。このように細孔をもつ粒子を用いることで、特別な加工を施さなくとも、後述の平面磨耗試験後の60°光沢度変化値を30%未満とすることができる。細孔の有無及び粒子の形状については、フィルムサンプルを、日本ミクトローム研究所(株)製ロータリー式ミクロトームを使用し、ナイフ傾斜角度3°にてフィルム平面に垂直な方向に切断し、得られたフィルム断面を、トプコン社製走査型電子顕微鏡ABT−32を用いて、1つの粒子が実質的に視野領域全体に亘って写し出されるように、例えば観察倍率2500〜10000倍にて、また、画像のコントラストを適宜調節して観察し、細孔の有無及び粒子の形状を確認することができる。
【0040】
なお、細孔の有無の判断は、観察した画像にて、粒子中に斑点や斑模様が存在するか否かで判断し、斑点や斑模様が存在する場合を細孔有り、存在しない場合を細孔なしとする。不定形な多孔質粒子の例として、特開2006−328173号公報に記載されているような製法による粒子が挙げられる。
【0041】
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも片面の表層に塗布により設けられた凹凸形状を有し、該突起は、その突起の頂点からポリエステル層(A)の最表面までの距離dhの平均値であるDhが10μm以上30μm以下であることが必要であり、10μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。Dhが10μm未満の場合、エッジライト型バックライトにて、導光板等の他部材と当該フィルムが密着してしまい、輝度ムラが生じる。一方、30μmよりも大きい場合、フィルム本体への固着が難しくなり、突起が脱落してしまう。また、該突起におけるA層と接する部分の長さ(突起底部の幅)dwの平均値であるDwが10μm以上35μm以下であることが必要であり、10μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。10μm未満の場合、エッジライト型バックライトにて、導光板等の他部材と当該フィルムが密着してしまい、輝度ムラが生じる。さらには、後述する平面磨耗試験後の60°光沢度変化値を30%未満とすることができない。一方、35μmよりも大きい場合、フィルム本体への固着が難しくなり、突起が脱落してしまう。さらに、A層からdh/2の高さにおける粒子のA層に並行な方向の粒子長さ(突起中央部の幅)dvの平均値Dvが10μm以上35μm以下であることが必要であり、10μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。10μm未満の場合、エッジライト型バックライトにて、導光板等の他部材と当該フィルムが密着してしまい、輝度ムラが生じる。さらには、後述する平面磨耗試験後の60°光沢度変化値を30%未満とすることができない。一方、35μmよりも大きい場合、フィルム本体への固着が難しくなり、突起が脱落してしまう。
【0042】
また、当該突起が、フィルム表面1mmあたりの突起個数Nが1000個以上2000個以下であることが必要である。本発明のポリエステルフィルムを、エッジライト型バックライトの反射フィルムとして用いる場合、組み込みの際に傷がついても画面をムラなく表示するためには、ポリエステルフィルム上にDh、Dw、Dv、及びフィルム表面1mmあたりの個数Nを上述の範囲とすることが必要である。
【0043】
Dh,Dw及びDvを上記範囲とするためには、平均粒子径10μm以上30μm以下、好ましくは10μm以上20μm以下の多孔質粒子を用いる。さらに、水系の塗剤を用いることが好ましい。平均粒子径が10μm未満である場合、光沢度を先述した範囲内にすることが困難になるため、輝度ムラが生じることがある。一方、30μmより大きい場合、後述するようなバインダー厚みでは粒子が脱落してしまう上、製膜できても輝度が低くなることがあり、好ましくない。
【0044】
ここで言う水系の塗剤とは、塗剤の構成要素のうち、50質量%以上が水であることを示す。また、塗剤に含まれるバインダー成分について、乾燥濃度で5質量%〜20質量%とすることが好ましい。バインダー成分の乾燥濃度が5質量%未満の場合、粒子が脱落してしまう。一方、バインダー成分の乾燥濃度が20質量%を超える場合、突起がバインダーに埋もれるため、特にDhを上述の範囲とすることが困難になることがあり、さらにフィルム本体の光反射特性を損ねることがある。また、塗布した後に少なくとも雰囲気温度180℃以上で2秒以上の乾燥工程を経ることが好ましい。また、上記粒子を5〜20質量%含有させることにより、フィルム表面1mmあたりの個数Nを上述の範囲とすることができる。
【0045】
本発明にかかるバインダー樹脂層としては、特に限定されないが、有機成分を主体とする樹脂が好ましく、例えばポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、あるいは2種以上の共重合体もしくは混合物としたものを用いてもよい。中でもポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルもしくはメタクリル樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂が耐熱性、粒子分散性、塗布性、基材との屈折率差の点から特に好ましく使用される。
【0046】
前記バインダー樹脂層の厚みは0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。バインダー樹脂層の厚みが0.1μm未満である場合、先述したような平均粒子径の粒子を保持できず、粒子が脱落してしまう場合がある。一方、バインダー厚みが1μmよりも大きい場合、光沢度を先述した範囲内にすることが困難になるうえに、輝度などその他の光学特性にも悪影響となり、好ましくない。
【0047】
本発明のポリエステルフィルムは、平面磨耗試験後の60°光沢度変化値が30%未満であることが好ましく、より好ましくは10%未満である。ここで言う平面磨耗試験とは、平面磨耗試験機(株式会社大栄科学精器製作所製 PA−300A)において、1kgの荷重をかけた端面が1cm(1cm×1cm)の四角柱により当該フィルム表面を5cm、10往復擦る試験のことである。
【0048】
また、本発明における光沢度とは、デジタル変角光沢度計UGV−5B(スガ試験機(株)製)を用いて、光反射フィルムの塗布層がある場合は塗布層側より、ない場合は、ポリエステル(A)層側よりJIS Z−8741(1997)に準じて測定した値である。なお、ここで言う60°光沢度とは、測定条件を入射角=60°、受光角=60°としたときの値である。
【0049】
DhとDwの比であるDh/Dwが0.70以上1.00以下であることが、本発明のポリエステルフィルムには必要である。Dh/Dwが1.0より大きいと、突起は他部材との擦れにより突起が受ける力により、脱落しやすくなる場合がある、すなわち、上述した、フィルム表面を擦った後の60°光沢度変化値が30%未満とならない場合がある。Dh/Dwが0.70より小さいと、粒子は他部材を傷つける、もしくは、他部材に傷つけられる場合があり、いずれの場合においても、フィルム表面を擦った後の60°光沢度変化値が30%未満とならない場合がある。
【0050】
また、DhとDvの比であるDh/Dvが0.90以上1.00未満であることが、本発明のポリエステルフィルムには必要である。Dh/Dwが1.0より大きいと、突起は他部材との擦れにより突起が受ける力により、脱落しやすくなる場合がある、すなわち、上述した、フィルム表面を擦った後の60°光沢度変化値が30%未満とならない場合がある。Dh/Dvが0.90より小さいと、粒子は他部材を傷つける、もしくは、他部材に傷つけられる場合があり、いずれの場合においても、フィルム表面を擦った後の60°光沢度変化値が30%未満とならない場合がある。
【0051】
また、DvとDwの比であるDv/Dwが0.80以上1.05未満であることが、本発明のポリエステルフィルムには必要である。Dh/Dwが1.05より大きいと、突起は他部材との擦れにより突起が受ける力により、脱落しやすくなる場合がある、すなわち、上述した、フィルム表面を擦った後の60°光沢度変化値が30%未満とならない場合がある。Dv/Dwが0.80より小さいと、粒子は他部材を傷つける、もしくは、他部材に傷つけられる場合があり、いずれの場合においても、フィルム表面を擦った後の60°光沢度変化値が30%未満とならない場合がある。
60°光沢度変化値が30%以上であると、目視で傷が判別できるだけでなく、当該フィルムをバックライトとして組み込んだ場合、その傷が輝度ムラとなって画面に現れてしまうため、好ましくない。
【0052】
ここで、本発明における輝度とは、相対輝度であり、測定は以下のように行う。新品のハイセンスジャパン株式会社製32型液晶TV LHD32K15JPバックライト内に張り合わせてある反射フィルムを、本発明のポリエステルフィルムに変更し、点灯させた。その状態で1時間待機して光源を安定化させた後、液晶画面部をCCDカメラ(SONY製DXC−390)にて撮影し画像解析装置アイシステム製アイスケールで画像を取り込んだ。その後、撮影した画像の輝度レベルを3万ステップに制御し自動検出させ、輝度に変換した。輝度評価として、張り合わせてあった反射フィルムを基準サンプル(100%)とし、下記の式でフィルムサンプルの相対輝度を求めて、この数値を輝度とした。
輝度(%)=(フィルムサンプルの輝度(%))/(基準サンプルの輝度(%))×100。
【0053】
また、輝度ムラは、上記で自動検出した輝度最大値、輝度最小値、輝度平均値を用いて、下記の式で求めた。
輝度ムラ(%)=(輝度最大値−輝度最小値)/輝度平均値×100
前記塗布層を形成する方法として、特に限定されないが、各種の塗布方法、例えばインラインコーティング法、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、またはスプレーコート法を用いることができる。
【0054】
[製膜方法]
一例として、ポリエステル(a)の入手方法を説明するが、かかる例のみに限定されるものではない。ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を、ジオール成分としてエチレングリコールを用い、三酸化アンチモン(重合触媒)を、得られるポリエステルペレットに対してアンチモン原子換算で300ppmとなるように添加し、重縮合反応を行って、ポリエチレンテレフタレートペレット(ポリエステル(a))を得ることができる。
【0055】
気泡核剤(b)のうち、無機粒子は、無機粒子を含有するポリエステル(a)マスターペレットを調整し本発明の製造に使用することができる。
【0056】
気泡核剤(b)のうち、有機粒子の入手方法を説明するが、かかる例のみに限定されるものではない。有機粒子は、上述したシクロオレフィンとオレフィンを公知の方法(例えば特開昭61−271308、国際公開第2007/060723号パンフレット)により重合する、あるいは上市されている商品(例えば“TOPAS”(ポリプラスチックス(株)製))を購入することにより得ることができる。
【0057】
一例として、ポリエステル(c)の入手方法を説明するが、かかる例のみに限定されるものではない。ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を、ジオール成分として炭素数4以上8以下の脂環式ジオールを用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いてアンチモン原子換算で300ppmとなるように添加し重縮合反応を行って、炭素数4以上8以下の脂環式ジオールとテレフタル酸を共重合したポリエステル(c)を得ることができる。
【0058】
一例として、分散剤の入手方法を説明するが、かかる例のみに限定されるものではない。本発明に好ましく用いることができる分散剤はPBT(ポリブチレンテレフタレート)とPAG(主としてポリテトラメチレングリコール)のブロック共重合体であり、メルトインデックス(MI)が14(2.160g、240℃)である。なお、共重合比率は、ブチレンテレフタレート:アルキレングリコール=70mol%:30molである(例えば“ハイトレル”(東レデュポン(株)製))。
【0059】
一例として多孔質粒子(d)の入手方法を説明するが、かかる例のみに限定されるものではない。例えば特開2006−328173号公報に記載されているように、以下のような方法で得ることができる。すなわち、エチレングリコール(溶剤)にナイロン6のペレットを15重量%混ぜて生成される混合物を、撹拌機を備え、二酸化炭素で置換した混合槽内にて、ナイロン6が完全に溶解するまで185℃で撹拌した。得られた均一溶液を、図1に示すように一定温度で保持されたステンレススチール製ベルトコンベア上で冷却し、ナイロン6多孔質粒子を造粒した。このときステンレススチール製ベルトコンベアの温度は75℃で保持されており、そのベルトスピードは5.0m/分である。またこのベルトコンベアの表面上に均一溶液が1〜1.5mmの液膜を形成するようにした。こうして得られたナイロン6多孔質粒子とエチレングリコールの混合物をブレードによってベルトから分離し、さらに遠心分離機にかけてエチレングリコールを粗分離し、さらに、乾燥してナイロン6多孔質粒子粉末を得ることができる。このように粒子を得た後、その粒子粉末の一部をサンプリングし、トプコン社製走査型電子顕微鏡ABT−32を用いて、1つの粒子が実質的に視野領域全体に亘って写し出されるように、例えば観察倍率2500〜10000倍にて、また、画像のコントラストを適宜調節して観察し、細孔の有無及び粒子の形状を確認する。細孔の有無の判断は、観察した画像にて、粒子中に斑点や斑模様が存在するか否かで判断し、斑点や斑模様が存在する場合を細孔有り、存在しない場合を細孔なしとし、細孔有りの場合、該粒子は多孔質粒子であると特定する。
【0060】
次に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について、その一例を説明するが、本発明は、かかる例のみに限定されるものではない。
【0061】
ポリエステル層(A)については、ポリエステル(a)及び必要に応じて各種添加剤を含む混合物を、十分真空乾燥を行い、加熱された押出機に供給する。各種添加剤の添加は、事前に均一に溶融混練して作製されたマスターチップを用いても、もしくは直接混練押出機に供給してもよい。
【0062】
ポリエステル層(B)については、ポリエステル(a)と気泡核剤(b)、及び必要に応じてポリエステル(c)、分散剤を含む混合物を、十分真空乾燥を行い、加熱された押出機に供給する。気泡核剤(b)の添加は、事前に均一に溶融混練して作製されたマスターチップを用いても、もしくは直接混練押出機に供給してもよい。
【0063】
また、溶融押出に際してはメッシュ40μm以下のフィルターにて濾過した後に、Tダイ口金内に導入し押出成形により溶融シートを得ることが好ましい。
【0064】
この溶融シートを表面温度10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸A/B/Aの3層フィルムを作製する。該未延伸3層フィルムを70〜120℃、好ましくは70〜100℃に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に2〜4倍延伸し、20〜50℃の温度のロール群で冷却する。
【0065】
縦方向に延伸されたシートをコーティング装置に導き、バーコート方式にて前記樹脂粒子及び前記バインダー樹脂を含む塗布層(C)の元となる塗剤を塗布する。
【0066】
続いて、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、90〜150℃の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(幅方向)に2〜4倍に延伸する。この際、前記塗布層(C)から揮発成分が除かれ、塗布層(C)が完成すると考えられる。延伸倍率は、長手方向と幅方向それぞれ2〜4倍とするが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は4〜16倍であることが好ましく、8〜12倍であることがより好ましい。面積倍率が4倍未満であると、気泡及びフィルム強度が不十分となり高い反射特性が得られにくい。一方、面積倍率が16倍を超えると延伸時に破れを生じ易くなることがある。塗布層(C)は上述したようにインラインでコートされても良いし、後工程で設けられても良いが、インラインの方が、突起個数を前述の範囲に合わせやすく、かつ、安価なため好ましい。
【0067】
得られた2軸延伸フィルムの結晶配向を完了させて、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて150〜240℃の温度で1〜30秒間の熱処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却し、その後必要に応じて、他素材との密着性をさらに高めるためにコロナ放電処理などを行い、巻き取ることにより、本発明のポリエステルフィルムを得ることができる。上記熱処理工程中に、幅方向あるいは長手方向に3〜12%の弛緩処理を施すのが好ましい。
【0068】
尚、一般に熱処理温度が高いほど、熱寸法安定性も高くなるが、製膜工程において高温(190℃以上)で熱処理されることが好ましい。
【0069】
また、2軸延伸の方法は逐次あるいは同時のいずれでもよい。また2軸延伸後に長手方向、幅方向いずれかの方向に再延伸してもよい。
【0070】
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも片面の表層に塗布により設けられた凹凸形状を有し、かつフィルム内部に気泡が形成され高反射率であり、軽量であり、液晶ディスプレイ用反射板、特にLED直下型ディスプレイ用反射板として使用された場合に、他部材、特に導光板との相性が良く、かつ、画面ムラなく高い輝度を得ることができる。
【0071】
[物性の測定ならびに効果の評価方法]
測定方法
本発明の物性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
【0072】
A.輝度および輝度ムラ
新品のハイセンスジャパン株式会社製32型液晶TV LHD32K15JPバックライト内に張り合わせてある反射フィルムを、測定対象のポリエステルフィルムに変更し、点灯させた。このとき、塗布層(C)側が上面になるよう設置した。その状態で1時間待機して光源を安定化させた後、液晶画面部をCCDカメラ(SONY製DXC−390)にて撮影し画像解析装置アイシステム製アイスケールで画像を取り込んだ。その後、撮影した画像の輝度レベルを3万ステップに制御し自動検出させ、輝度に変換した。輝度評価として、張り合わせてあった反射フィルムを基準サンプル(100%)とし、下記の式でフィルムサンプルの相対輝度を求めて、この数値を輝度とした。
輝度(%)=(フィルムサンプルの輝度(%))/(基準サンプルの輝度(%))×100。
また、輝度ムラについては、上記で自動検出した輝度最大値、輝度最小値、輝度平均値を用いて、下記の式で求めた。
輝度ムラ(%)=(輝度最大値−輝度最小値)/輝度平均値×100
“AA”:優良 (2%未満)
“A”:良好 (2%以上5%未満)
“B”:劣る (5%以上10%未満)
“C”:非常に劣る (10%以上)
上記の”AA”および”A”を合格とした。
【0073】
B.突起サイズ(dh、Dh、dw、Dw、dv、Dv)
ミクロトームを用いてフィルムTD方向(横方向)と平行方向の断面を切り出し、白金−パラジウムを蒸着した後、日本電子(株)製電界放射走査型電子顕微鏡”JSM−6700F”で塗布層(C)側のフィルム表面付近を5000倍に拡大観察して得られた画像を用い、該画像上の各突起について、その頂部からA層最表面までの距離(突起高さ)dh、該突起におけるA層と接する部分の長さ(突起底部の幅)dw、A層からdh/2の高さにおける粒子のA層に平行な方向の粒子長さ(突起中央部の幅)dvをそれぞれ20個の突起について計測し、dhの平均値をDh、dwの平均値をDw、dvの平均値をDvとして算出した。
【0074】
C.フィルム表面1mmあたりの突起個数(N)
塗布層(C)側のフィルム表面に白金−パラジウムを蒸着した後、日本電子(株)製電界放射走査型電子顕微鏡”JSM−6700F”で2000倍に拡大観察して得られた画像を用い、フィルム表面の突起の個数(N)を計数し、これを画像サイズと倍率を勘案して1mmに換算した値を導き出した。測定数はn=5とし、その平均値を求めた。塗布されたフィルムの場合は、塗布された面を測定した。
【0075】
D.塗布層(C)の粒子の平均粒子径
ミクロトームを用いてフィルムを断面方向に切り出し、得られた断面に白金−パラジウムを蒸着した後、日本電子(株)製電界放射走査型電子顕微鏡”JSM−6700F”で塗布層(C)側のフィルム表面付近を5000倍に拡大観察して得られた画像から、以下の手順で粒子の平均粒子径(式中ではDとした)を求めた。
1)該画像中の断面内に観察される粒子全てについて、それぞれその断面積Sを求め、下記式(1)にて求められる粒子径dをそれぞれ求めた。
d=2×(S/π)1/2・・・(1)
(ただしπは円周率)
2)得られた粒子径dを用いて、下記式(2)において体積平均粒子径Dを求めた。
D=Σ[4/3π×(d/2)×d]/Σ[4/3π×(d/2)] ・・・(2)
3)上記1)〜2)を、5箇所場所を変えて実施し、その平均値でもって、平均粒子径とする。
【0076】
E.塗布層(C)のバインダー樹脂層厚み
ミクロトームを用いてフィルムを断面方向に切り出し、得られた断面に白金−パラジウムを蒸着した後、日本電子(株)製電界放射走査型電子顕微鏡”JSM−6700F”で塗布層(C)側のフィルム表面付近を20000倍に拡大観察して得られた画像から、該画像中の断面内に観察されるバインダー樹脂層厚みについて、任意の5箇所をスケール等により測定し、その平均値として求めた。
【0077】
F.製膜性
実施例・比較例において製膜した際に、フィルム破れが1回/日以下しか生じず、かつ粒子脱落などによる工程汚染ないものを”AA”、フィルム破れは1回/日以下しか生じないが、ロール表面への汚れの蓄積が肉眼で確認できるものを”A”、フィルム破れが2回/日以上3回/日以下発生するもの、あるいはロール表面への汚れの蓄積が肉眼で確認できるうえ著しいものを”B”、フィルム破れが4回/日以上発生するものを”C”とした。大量生産には”A”以上の製膜性が必要であり、”AA”であるとさらにコスト低減効果がある。
【0078】
G.平面磨耗試験後の60°光沢度変化値
平面磨耗試験機(株式会社大栄科学精器製作所製 PA−300A)において、1kgの荷重をかけた端面が1cm(1cm×1cm)の四角柱により当該フィルム表面を5cm、10往復擦る。その後、デジタル変角光沢度計UGV−5B(スガ試験機(株)製)を用いて、光反射フィルムの塗布層(C)がある場合は塗布層(C)側より、ない場合は、ポリエステル(A)層側よりJIS Z−8741(1997)に準じて測定した値である。なお、ここで言う60°光沢度とは、測定条件を入射角=60°、受光角=60°としたときの値である。平面磨耗試験後の部分と試験未実施部分の60°光沢度を測定して、その差を光沢度変化値とした。
【実施例】
【0079】
以下実施例等によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
(原料)
・ポリエステル(a)
酸成分としてテレフタル酸を、ジオール成分としてエチレングリコールを用い、三酸化アンチモン(重合触媒)を得られるポリエステルペレットに対してアンチモン原子換算で300ppmとなるように添加し、重縮合反応を行い、極限粘度0.63dl/g、カルボキシル末端基量40当量/トンのポリエチレンテレフタレートペレット(PET)を得た。
【0081】
・気泡核剤(b)無機粒子
酸化チタン及び硫酸バリウムはDIC(株)等が販売している、酸化チタンあるいは硫酸バリウムマスターペレットを使用した(基材樹脂はポリエステル(a)である)。
【0082】
・気泡核剤(b)有機粒子
ガラス転移温度が180℃であるシクロオレフィン系コポリマー“TOPAS”(ポリプラスチックス(株)製)を用いた(表にはCOCと記載した)。
【0083】
・ポリエステル(c)
酸成分としてテレフタル酸を、グリコール成分としてエチレングリコールを用い、三酸化アンチモン(重合触媒)を得られるポリエステルペレットに対してアンチモン原子換算で300ppmとなるように添加し、重縮合反応を行い、極限粘度0.63dl/g、カルボキシル末端基量40当量/トンのポリエチレンテレフタレートペレット(PET)を得た。また、PETと併せてCHDM(シクロヘキサンジメタノール)共重合PETを用いた。グリコール成分に対し、シクロヘキサンジメタノール60mol%を前述の方法で共重合したPETである(表にはTPA/EG/CHDMと略記した)。
【0084】
・分散剤
PBT−PAG(ポリブチレンテレフタレート−ポリアルキレングリコール)共重合体を用いた(東レデュポン(株)製、商品名:ハイトレル)。該樹脂はPBT(ポリブチレンテレフタレート)とPTMG(主としてポリテトラメチレングリコール)のブロック共重合体であり、メルトインデックス(MI)が14(2.160g、240℃)である。なお、共重合比率は、ブチレンテレフタレート:アルキレングリコール=70mol%:30mol%である(表にはPBT/PTMGと記載した)。
【0085】
・多孔質粒子(d) 多孔質ナイロン
エチレングリコール(溶剤)にナイロン6のペレットを15重量%混ぜて生成される混合物を、撹拌機を備え、二酸化炭素で置換した混合槽内にて、ナイロン6が完全に溶解するまで185℃で撹拌した。得られた均一溶液を、図1に示すように一定温度で保持されたステンレススチール製ベルトコンベア上で冷却し、ナイロン6多孔質粒子を造粒した。このときステンレススチール製ベルトコンベアの温度は75℃で保持されており、そのベルトスピードは5.0m/分である。またこのベルトコンベアの表面上に均一溶液が1〜1.5mmの液膜を形成するようにした。こうして得られたナイロン6多孔質粒子とエチレングリコールの混合物をブレードによってベルトから分離し、さらに遠心分離機にかけてエチレングリコールを粗分離し、さらに、乾燥してナイロン6多孔質粒子粉末を得ることができる。このように粒子を得た後、その粒子粉末の一部をサンプリングし、トプコン社製走査型電子顕微鏡ABT−32を用いて、1つの粒子が実質的に視野領域全体に亘って写し出されるように、例えば観察倍率2500〜10000倍にて、また、画像のコントラストを適宜調節して観察し、細孔の有無及び粒子の形状を確認する。細孔の有無の判断は、観察した画像にて、粒子中に斑点や斑模様が存在するか否かで判断し、斑点や斑模様が存在する場合を細孔有り、存在しない場合を細孔なしとし、細孔有りの場合、該粒子は多孔質粒子であると特定する。
【0086】
・球状粒子(d) PBT−PTMG粒子
PBT-PAG(ポリブチレンテレフタレート-ポリアルキレングリコール)共重合体(東レデュポン(株)製、商品名:ハイトレル)からなる球状粒子を用いた。該樹脂はPBT(ポリブチレンテレフタレート)とPTMG(主としてポリテトラメチレングリコール)のブロック共重合体であり、メルトインデックス(MI)が14(2.160g、240℃)である。なお、共重合比率は、ブチレンテレフタレート:アルキレングリコール=70mol%:30mol%である。
【0087】
・塗布層(C)中のバインダー樹脂
高松油脂株式会社製のポリエステル樹脂水分散液(ポリエステル樹脂25質量%、t−ブチルセロソルブ5質量%、水70質量%)を使用した。
【0088】
(実施例1〜15)
主押出機と副押出機を有する複合製膜装置において、表1のポリエステル層(B)として示した原料の混合物を180℃の温度で3時間真空乾燥した後、主押出機側に供給し、280℃の温度で溶融押出後、30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。一方、ポリエステル層(A)については、ポリエステル(a)99.5質量%及び平均粒子径2.0μmのSiO粒子0.5質量%からなるマスターペレットを180℃の温度で3時間真空乾燥した後、副押出機に供給し、280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。次いで、該Tダイ複合口金内で、副押出機より押出されるポリエステル層(A)が主押出機より押出されるポリエステル層(B)の両側に積層(A/B/A)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度20℃に保たれたドラム上に静電荷法で密着冷却固化させて未延伸積層フィルムを得た。続いて、該未延伸積層フィルムを常法に従い85℃に加熱したロール群で予熱した後、90℃の加熱ロールを用いて長手方向(縦方向)に延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却し、この1軸延伸フィルムをコーティング装置に導き、バーコート方式にてメタバー#8を使用して塗液を塗布し、前記樹脂粒子及び前記バインダー樹脂を含む塗布層(C)の元となる塗剤を塗布する。その後、塗布された1軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の95℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に105℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンにて200℃で20秒間の熱処理を施し、さらに180℃の温度で4%幅方向に弛緩処理を行った後、更に140℃の温度で1%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取って、ポリエステルフィルムを得た。なお、上述した塗液については、高松油脂株式会社製のポリエステル樹脂水分散液(表にはポリエステルバインダーと記載)、粒子、水を表1に示す比率で混合して作成した。また、各種特性もあわせて表1に示す。この工程において、多孔質ナイロン粒子は、塗液中にて分散された状態で存在するが、塗液中において、塗液を構成する水や樹脂分との吸着が起こると想定され、そのため、10μmを超える大きさの粒子を1〜2μmのバインダーで把持することが可能となる。これに、延伸・熱固定の工程において粒子に熱が加わることで、粒子は変形し、不定形の多孔質粒子を形成する。このように本発明のポリエステルフィルムは安定に製膜でき、傷をつけても光沢度変化が小さく、表面形状(輝度ムラ低減効果)に優れた特性を示した。
【0089】
(比較例1〜13)
主押出機と副押出機を有する複合製膜装置において、表2に示した原料の混合物と条件にて実施例1〜15と同様にポリエステルフィルムの製膜を試みたが、比較例8については、製膜できなかった。各種特性を表2に示す。製膜できた例については、傷つけずにバックライトに組み込んだ場合には輝度ムラが生じなかったとしても、傷つけた後のフィルムをバックライトに組み込むと、その部分の光沢度と周囲の光沢度が異なるため、輝度ムラが生じた。
【0090】
【表1-1】
【0091】
【表1-2】
【0092】
【表2-1】
【0093】
【表2-2】
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のポリエステルフィルムは、経済性、製膜性、反射性、表面形状に優れ、このポリエステルフィルムを用いることにより輝度特性及び他部材との相性に優れた面光源を安価に提供することができる。
【0095】
本発明のポリエステルフィルムは、白色性、反射性、隠蔽性が必要な用途に適用可能であるが、特に好ましい用途としては、光反射のために面光源に組込まれる板状材があげられる。具体的には、液晶画面用のエッジライトの反射板、直下型ライトの反射板、および冷陰極線管やLED照明周囲のリフレクターに好ましく用いられる。