(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多官能(メタ)アクリレート化合物(A)が、1分子中にウレタン結合と2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有するウレタン(メタ)アクリレート(A1)である、請求項1に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
前記多官能(メタ)アクリレート化合物(A)が、少なくとも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するネマチック液晶性化合物(A2)、および、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するカイラル剤(A3)である、請求項1または2に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[紫外線硬化型樹脂組成物]
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物(以下、単に「本発明の組成物」ともいう。)は、1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート化合物(A)と、(メタ)アクリル系ブロックポリマー(B)と、光重合開始剤(C)とを含有し、上記(メタ)アクリル系ブロックポリマー(B)が、ガラス転移温度が0℃以下となるブロック鎖(b1)と、ガラス転移温度が60℃以上となるブロック鎖(b2)とを有する、紫外線硬化型樹脂組成物である。
ここで、本明細書においては、「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、アクリロイルオキシ基(CH
2=CHCOO−)またはメタクリロイルオキシ基(CH
2=C(CH
3)COO−)を意味するものとする。同様に、「(メタ)アクリル系」とは、アクリル系またはメタクリル系を意味するものとする。
【0011】
本発明においては、上述した通り、多官能(メタ)アクリレート化合物(A)および(メタ)アクリル系ブロックポリマー(B)を含有する組成物を用いることにより、形成される硬化皮膜の硬度および耐屈曲性が良好となる。
これは、詳細には明らかではないが、(メタ)アクリル系ブロックポリマー(B)が有するガラス転移温度が0℃以下となるブロック鎖(b1)が硬化皮膜の柔軟性に寄与し、ガラス転移温度が60℃以上となるブロック鎖(b2)が硬化皮膜の剛性の維持に寄与するため、多官能(メタ)アクリレート化合物により発現する優れた硬度を阻害せずに、耐屈曲性を付与することができたためと考えられる。
このことは、後述する比較例に示すように、ガラス転移温度が0℃以下となる(メタ)アクリル系のホモポリマーや、ガラス転移温度が60℃以上となる(メタ)アクリル系のホモポリマーや、これらの混合物を配合した場合には得られない効果であることからも推察することができる。
以下に、多官能(メタ)アクリレート化合物(A)、(メタ)アクリル系ブロックポリマー(B)および光重合開始剤(C)ならびに他の任意成分について詳述する。
【0012】
〔多官能(メタ)アクリレート化合物(A)〕
本発明の組成物が含有する多官能(メタ)アクリレート化合物(A)は、1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。
ここで、多官能(メタ)アクリル化合物(A)が1分子中に有する(メタ)アクリロイルオキシ基の数は、本発明の組成物の塗工性が良好となり、硬化皮膜の硬度がより向上する理由から、3個以上が好ましく、4〜15個がより好ましい。
【0013】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物(A)としては、例えば、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、分子内にウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレート(A1)、ネマチック液晶性化合物(A2)、カイラル剤(A3)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
これらのうち、本発明においては、本発明の組成物の硬化性が良好となり、硬化皮膜の光学特性や硬度がより向上する理由から、ウレタン(メタ)アクリレート(A1)であるのが好ましい。
また、得られる硬化皮膜がブルーライト領域(385nm〜495nmの波長領域)の光の少なくとも一部を反射し、ブルーライトカット機能を発現する理由から、ネマチック液晶性化合物(A2)およびカイラル剤(A3)を併用するのが好ましい。なお、このようにブルーライト機能を発現する理由は、カイラル剤の添加に起因したネマチック液晶性化合物の所定の配向(ねじれ)状態により、硬化皮膜の表面に特定の凹凸パターンが形成され、ブルーライト領域(385nm〜495nmの波長領域)の光の少なくとも一部が反射したためと考えられる。また、このような反射によって、ブルーライトカット機能を有するにも関わらず、自然光における青色光の反射により、硬化皮膜の黄色味の強くなるという問題を軽減することも可能になったと考えられる。
【0015】
<多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル>
多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのような3官能系;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのような4官能系;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートのような5官能以上の系が挙げられる。
【0016】
<ウレタン(メタ)アクリレート(A1)>
ウレタン(メタ)アクリレート(A1)としては、例えば、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルとポリイソシアネート化合物との反応物が挙げられる。
ここで、ウレタン(メタ)アクリレートを製造する際に使用される、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、上述した多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルのうち、少なくとも1つのヒドロキシ基を有するものが挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートを製造する際に使用される、ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族系ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂肪族系ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート体、ビューレット体、アダクト体;等が挙げられる。
【0017】
<ネマチック液晶性化合物(A2)>
ネマチック液晶性化合物(A2)は、1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有するネマチック液晶性化合物であれば特に限定されず、後述するカイラル剤(A3)との組み合わせにおいて、ブルーライトカット機能を発現する化合物であるのが好ましい。
【0018】
このようなネマチック液晶性化合物としては、例えば、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する棒状液晶性化合物であるのが好ましく、具体的には、下記式(I)で表される化合物であるのが好ましい。
R
3−C
3−D
3−C
5−M−C
6−D
4−C
4−R
4 ・・・式(I)
(式中、R
3及びR
4は(メタ)アクリロイルオキシ基であり、それぞれ独立して(メタ)アクリル基、(チオ)エポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される基を表す。D
3及びD
4は単結合、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表す。C
3〜C
6は単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH
2−、−OCH
2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH
2COO−、及び−CH
2OCO−からなる群より選択される基を表す。Mはメソゲン基を表し、具体的には、非置換又は置換基を有していてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、フェニル類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の群から選択された2〜4個の骨格を、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH
2−、−OCH
2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH
2COO−、及び−CH
2OCO−等の結合基によって結合されて形成される。)
【0019】
上記式(I)で表されるネマチック液晶性化合物としては、後述するカイラル剤(A3)により配向(ねじれ)状態を調整しやすく、また、後述する光重合開始剤(C)を用いた重合が進行し易い理由から、下記式(2a)で表される化合物であるのが好ましい。
【化3】
(式(2a)中、nは2〜5の整数を表す。)
【0020】
上記式(2a)で表される化合物以外のネマチック液晶性化合物(A2)としては、具体的には、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
【化4】
【0021】
これらのうち、下記式(2b)で表される化合物、下記式(2c)で表される化合物であるのが好ましい。
【化5】
【0022】
<カイラル剤(A3)>
カイラル剤(A3)は、1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有するカイラル剤であれば特に限定されず、上述したネマチック液晶性化合物(A2)との組み合わせにおいて、ブルーライトカット機能を発現する化合物であるのが好ましい。
【0023】
このようなカイラル剤としては、例えば、イソソルビド骨格構造を有する化合物であるのが好ましく、具体的には、下記式(II)で表される化合物であるのが好ましい。
【化6】
(式中、P
1及びP
2は、それぞれ独立に、1,4−シクロヘキシレン基を1個含む炭素数が10〜20の炭化水素基を表し、基中にエーテル結合性の酸素原子またはエステル結合を有していてもよく、基中の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。但し、P
1及びP
2は、さらに(メタ)アクリロイルオキシ基を含む。)
【0024】
上記式(II)で表されるカイラル剤としては、上記式(2a)で表される液晶性化合物とともに硬化させた硬化皮膜のブルーライトカット機能がより良好となる理由から、下記式(3a)で表される化合物であるのが好ましい。
【化7】
(式(3a)中、mは2〜5の整数を表す。)
【0025】
上記式(3a)で表される化合物以外のカイラル剤(A3)としては、具体的には、例えば、下記式(3b)で表される化合物、下記式(3c)で表される化合物が好適に挙げられる。
【化8】
【0026】
上記式(3a)〜(3c)で表される化合物以外のカイラル剤(A3)としては、例えば、特開2005−289881号公報、特開2004−115414号公報、特開2003-66214号公報、特開2003-313187号公報、特開2003−342219号公報、特開2000−290315号公報、特開平6−072962号公報、米国特許第6468444号公報、WO98/00428号公報等に掲載されるものを適宜使用することができ、また、BASF社パリオカラーのLC756、ADEKA社キラコールのCNL617R、CNL−686Lなどの市販品も適宜使用することができる。
【0027】
本発明においては、硬化皮膜のブルーライトカット機能がより良好となる理由から、上記カイラル剤(A3)の含有量が、上記ネマチック液晶性化合物(A2)および上記カイラル剤(A3)の合計質量に対して1.0〜30.0質量%であるのが好ましい。
特に、上記ネマチック液晶性化合物(A2)として上記式(2)で表される化合物を用い、上記カイラル剤(A3)として上記式(3)で表される化合物を用いた場合には、上記カイラル剤(A3)の含有量が、上記ネマチック液晶性化合物(A2)および上記カイラル剤(A3)の合計質量に対して4.0〜6.5質量%であるのが好ましい。
【0028】
〔(メタ)アクリル系ブロックポリマー(B)〕
本発明の組成物が含有する(メタ)アクリル系ブロックポリマー(B)は、ガラス転移温度が0℃以下となるブロック鎖(b1)と、ガラス転移温度が60℃以上となるブロック鎖(b2)とを有する(メタ)アクリル系のブロックポリマーである。なお、本発明においては、上記多官能(メタ)アクリレート化合物(A)と上記(メタ)アクリル系ブロックポリマー(B)とは別々の化合物であり、(メタ)アクリル系ブロックポリマーが(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する場合は、(メタ)アクリル系ブロックポリマー(B)に該当するものとする。
ここで、「ガラス転移温度が所望の温度のブロック鎖」とは、該当するブロック鎖の繰返し単位を構成するモノマーを単独重合させたホモポリマーのガラス転移温度を有するブロック鎖のことをいう。
また、ガラス転移温度は、デュポン社製の示差熱分析計(DSC)を用い、ASTM D3418−82に従い、昇温速度10℃/minで測定した値である。
【0029】
本発明においては、得られる硬化皮膜の耐屈曲性がより良好となる理由から、上記ブロック鎖(b1)のガラス転移温度が−40〜−50℃を示すソフトセグメントであり、上記ブロック鎖(b2)のガラス転移温度が100〜120℃を示すハードセグメントであるブロックポリマーであるのが好ましい。
また、このような各セグメントを有するブロックポリマーは、少なくとも、上記ブロック鎖(b2)〔ハードセグメント〕、上記ブロック鎖(b1)〔ソフトセグメント〕および上記ブロック鎖(b2)〔ハードセグメント〕をこの順に有し、かつ、上記ブロック鎖(b2)〔ハードセグメント〕を合計して20質量%以上含有しているのが好ましい。
【0030】
このような(メタ)アクリル系ブロックポリマー(B)としては、2種以上の(メタ)アクリレートモノマーとともに、所望により他のエチレン系不飽和共重合性モノマーを用いて、リビングラジカル重合させることで調製されるブロックポリマーが挙げられる。
【0031】
上記(メタ)アクリレートモノマーのうち、上記ブロック鎖(b1)の繰返し単位を構成するモノマーとしては、具体的には、例えば、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリレートモノマーのうち、上記ブロック鎖(b2)の繰返し単位を構成するモノマーとしては、具体的には、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ミスチリル(メタ)アクリレート、イソミスチリル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ドコサニル(メタ)アクリレート、テトラコサニル(メタ)アクリレート、ヘキサコサニル(メタ)アクリレート、及びオクタコサニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
一方、任意のエチレン系不飽和共重合性モノマーとしては、具体的には、例えば、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン系単量体;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体;メチルビニルエ−テル、エチルビニルエ−テル、イソブチルビニルエ−テルなどのビニルエ−テル系単量体;フマル酸、フマル酸のモノおよびジアルキルエステル;マレイン酸;マレイン酸のモノおよびジアルキルエステル;イタコン酸;イタコン酸のモノおよびジアルキルエステル;(メタ)アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルケトン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾ−ル等のその他単量体;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
このようなモノマーを用いたリビングアニオン重合の重合方法は特に限定されず、活性化剤として遷移金属とその配位子を使用し、これらの存在下、重合開始剤を用いて、重合反応を進行させることができる。
なお、重合開始剤としては、臭素もしくは塩素をα位に有するエステルまたはスチレンの誘導体が好適である。例えば、2−ブロモ(もしくはクロロ)プロピオン酸誘導体もしくは塩化(もしくは臭化)1−フェニル誘導体が挙げられ、具体的には、2−ブロモ(もしくはクロロ)プロピオン酸メチル、2−ブロモ(もしくはクロロ)プロピオン酸エチル、2−ブロモ(もしくはクロロ)−2−プロピオン酸メチル、2−ブロモ(もしくはクロロ)−2−プロピオン酸エチル、塩化(もしくは臭化)1−フェニルエチル、2−ブロモイソ酪酸エチルから選ばれるハロゲン系化合物を用いることができる。
【0034】
本発明においては、上記(メタ)アクリル系ブロックポリマー(B)の含有量は、上記多官能(メタ)アクリレート化合物(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましく、1〜5質量部であるのがより好ましい。
【0035】
また、本発明においては、上記(メタ)アクリル系ブロックポリマー(B)の重量平均分子量は、本発明の組成物の塗工性や、得られる硬化皮膜の外観および光学特性などの観点、ならびに得られる硬化皮膜の耐屈曲性がより良好となり、硬度がより向上する理由から、20000〜200000であるのが好ましく、50000〜100000であることがより好ましい。
ここで、(メタ)アクリル系ブロックポリマー(B)の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0036】
本発明においては、このような(メタ)アクリル系ブロックポリマー(B)として市販品を用いることができ、その具体例としては、クラリティ LA−2250(重量平均分子量:85000、クラレ社製)、クラリティ LA−4285(重量平均分子量:85000、クラレ社製)、クラリティ LA2140e(重量平均分子量:80000、クラレ社製)等が挙げられる。
【0037】
〔光重合開始剤(C)〕
本発明の組成物が含有する光重合開始剤(C)は、光によって上記多官能(メタ)アクリレート化合物(A)を重合することができるものであれば特に限定されない。
光重合開始剤(C)としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、硫黄化合物、アゾ化合物、パーオキサイド化合物、ホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。
具体的には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4′−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
これらのうち、光安定性、光開裂の高効率性、表面硬化性、相溶性、低揮発、低臭気などの観点から、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンが好ましい。
【0039】
本発明においては、上記光重合開始剤(C)の含有量は、上記多官能(メタ)アクリレート化合物(A)100質量部に対して、0.1〜15質量部であるのが好ましく、1〜10質量部であるのがより好ましい。
【0040】
〔ナフタルイミド骨格を有する化合物(D)〕
本発明の組成物は、ブルーライト領域の中でも低波長側の領域(385〜420nm)を吸収でき、ブルーライトカット機能が全体としてより良好となる理由から、下記式(1)で表されるナフタルイミド骨格を有する化合物(D)を含有するのが好ましい。
【化9】
(式(1)中、R
1は、水素原子またはヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表し、R
2は、水素原子またはヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表し、複数のR
2は同一であっても異なっていてもよい。)
【0041】
上記式(1)中のR
1およびR
2で示されるヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられ、不飽和結合を有してもよい。
また、R
1で示される炭化水素基は、直鎖状または分岐状のアルキル基であるのが好ましく、炭素数は1〜12であるのが好ましい。
また、R
2で示される炭化水素基は、アルコキシ基であるのが好ましく、メトキシ基またはエトキシ基であるのがより好ましい。
【0042】
ナフタルイミド骨格を有する化合物(D)の含有量は、上記多官能(メタ)アクリレート化合物(A)100質量部に対して、0.1〜5質量部であるのが好ましく、0.5〜3.0質量部であるのがより好ましい。
【0043】
〔ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物(E)〕
本発明の組成物は、ブルーライト領域の中でも低波長側の領域(385〜430nm)を吸収でき、ブルーライトカット機能が全体としてより良好となる理由から、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物(E)を含有するのが好ましい。
【0044】
ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物(E)としては、例えば、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
【化10】
(式(4)中、R
3は、水素原子またはヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表す。)
【0045】
上記式(4)中のR
3で示されるヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられ、不飽和結合を有してもよい。
【0046】
このようなベンゾトリアゾール骨格を有する化合物(E)の市販品としては、例えば、チヌビン Carbo protect(BASF社製)、チヌビン 384−2(BASF社製)等が挙げられる。
【0047】
ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物(E)の含有量は、上記多官能(メタ)アクリレート化合物(A)100質量部に対して、0.1〜5質量部であるのが好ましく、0.5〜3.0質量部であるのがより好ましい。
【0048】
〔溶剤〕
本発明の組成物は、塗工性が良好となる観点から、更に、溶剤を含むのが好ましい。
溶剤は、上述した各成分を溶解することができるものであれば特に限定されない。例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチケトン(MIBK)、シクロヘキサノンのようなケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、イソプロピルアルコール(IPA)のようなアルコール;シクロヘキサンのようなシクロアルカン;トルエン、キシレン、ベンジルアルコールのような芳香族炭化水素化合物が挙げられる。なかでも、溶解性、乾燥性や塗装性に優れるという観点から、シクロヘキサノン、MIBKが好ましい。
溶剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
本発明においては、任意の溶剤の含有量は、塗工性の観点から、組成物の全量中、85〜5質量%であるのが好ましい。
【0050】
〔レベリング剤〕
本発明の組成物は、硬化皮膜のブルーライトカット機能がより良好となる理由から、更に、レベリング剤を含むのが好ましい。
レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、ビニル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤等が挙げられる。
これらのうち、硬化皮膜の均一性を高め、結果として、硬化皮膜の透明性が良好となるという理由から、アクリル系レベリング剤を用いるのが好ましい。
【0051】
本発明においては、任意のレベリング剤の含有量は、塗工性の観点から、組成物の全量中、0.01〜3質量%であるのが好ましい。
【0052】
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、紫外線吸収剤、充填剤、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、艶消し剤、光安定剤、染料、顔料のような添加剤を更に含有することができる。
【0053】
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、上述した多官能(メタ)アクリレート化合物(A)、(メタ)アクリル系ブロックポリマー(B)および光重合開始剤(C)ならびに任意の化合物(D)、化合物(E)、溶剤、レベリング剤および添加剤を均一に混合することによって製造することができる。
【0054】
[積層体]
本発明の積層体は、基材と、硬化皮膜とを有する積層体であって、上記硬化皮膜が、上述した本発明の組成物を用いて形成される積層体である。
本発明の積層体は、本発明の組成物を用いて形成される硬化皮膜を有するため、ブルーライトカット機能に優れる。
【0055】
次に、本発明の積層体の構成について、
図1を用いて説明する。
図1に示す積層体100は、基材102と、本発明の組成物を用いて形成される硬化皮膜104とを有する。
ここで、基材および硬化皮膜の厚さは特に制限されないが、基材の厚さは50〜300μm程度であるのが好ましく、硬化皮膜の厚さは0.1〜100μm程度であるのが好ましい。
【0056】
〔基材〕
上記基材は特に限定されず、その構成材料としては、例えば、プラスチック、ゴム、ガラス、金属、セラミック等が挙げられる。
ここで、プラスチックは、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれであってもよく、その具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィン系重合体(単独重合体、共重合体、水素添加物を含む。例えば、COPやCOC)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
また、上記基材は、例えば、コロナ処理のような表面処理がなされていてもよい。
また、上記基材の形態は特に限定されないが、フィルム状であるのが好ましい。
【0057】
ここで、COCは、テトラシクロドデセンとエチレン等のオレフィンとの共重合体(シクロオレフィンコポリマー)である。また、COPは、ノルボルネン類を開環重合し、水素添加して得られる重合体(シクロオレフィンポリマー)である。
以下に、COCおよびCOPの構造の例を示す。
【0059】
〔樹脂層〕
本発明の積層体は、上記硬化皮膜を構成する液晶性化合物の配向(ねじれ)状態が良好となり、上記基材との密着性も良好となる理由から、上記基材と上記硬化皮膜との間に、樹脂層を有しているのが好ましい。
本発明においては、上記樹脂層を設ける場合、上記樹脂層は、表面張力が32mN/m以上のアクリル系樹脂層であるのが好ましい。
ここで、表面張力は、硬化後のアクリル系樹脂層に、濡れペン(ペンナンバー30、32、34、36、38、40、42および44mN/mの8本セット、アルコテスト社製)を塗り、塗った後に2〜5秒経過した際にペン筋の状態を目視により確認し、インクがはじかない最も大きなペンナンバーを選定して判定する。
【0060】
このようなアクリル系樹脂層は、表面張力が32mN/m以上であれば、例えば、従来公知のハードコートに用いられる紫外線硬化型樹脂組成物(以下、「ハードコート用樹脂組成物」と略す。)を用いて形成されるアクリル系樹脂層であるのが好ましい。なお、表面張力の調整は、従来公知のレベリング剤を含有させることにより行うことができる。
ここで、上記ハードコート用樹脂組成物としては、例えば、後述する多官能(メタ)アクリレート(a)および光重合開始剤(b)等を含有する組成物を用いることができる。
【0061】
<多官能(メタ)アクリレート(a)>
上記多官能(メタ)アクリレート(a)は、本発明の組成物が含有する上記多官能(メタ)アクリレート化合物(A)と同様のものを適宜選択して用いることができる。
【0062】
<光重合開始剤(b)>
一方、上記光重合開始剤(b)は、光によって上記多官能(メタ)アクリレート(a)を重合することができるものであれば特に限定されず、本発明の組成物が含有する上記光重合開始剤(C)と同様のものを適宜選択して用いることができる。
【0063】
上記ハードコート用樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、紫外線吸収剤、充填剤、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、艶消し剤、光安定剤、染料、顔料のような添加剤を更に含有することができる。
レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、ビニル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤等が挙げられる。
【0064】
また、上記樹脂層の厚さは、上記基材と上記硬化皮膜との密着性がより良好となる理由から、0.1〜100μm程度であるのが好ましく、1〜5μmであるのがより好ましい。
【0065】
〔ハードコート層〕
本発明の積層体は、上記硬化皮膜の上記基材とは反対側の表面に、ハードコート層を有していてもよい。
ここで、ハードコート層は、上述した樹脂層において説明したハードコート用樹脂組成物を用いて形成されるアクリル系樹脂層であるのが好ましく、その形成方法は、上述した樹脂層の形成方法と同様の方法が挙げられる。
ハードコート層を有する場合、その厚さは特に限定されないが、0.01〜50μm程度であるのが好ましく、1〜10μmであるのがより好ましい。
【0066】
〔製造方法〕
本発明の積層体の製造方法は、例えば、フィルム状の基材(上記樹脂層を有する場合は上記樹脂層)上に、本発明の組成物を塗工し、乾燥し、紫外線を照射する工程を有する方法が挙げられる。
ここで、本発明の組成物を基材上に塗工する方法は特に限定されず、例えば、はけ塗り、流し塗り、浸漬塗り、スプレー塗り、スピンコート等の公知の塗布方法を採用できる。
また、塗工後に乾燥させる温度は、20〜110℃であるのが好ましい。
また、乾燥後の紫外線照射は、本発明の組成物を硬化させる際に使用する紫外線の照射量(積算光量)として、速硬化性、作業性の観点から、50〜3,000mJ/cm
2が好ましい。紫外線を照射するために使用する装置は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。硬化させるに際し加熱を併用してもよい。
なお、上記樹脂層の形成方法は、本発明の組成物と同様の方法で、基材上に塗工し、乾燥し、紫外線を照射する工程により形成することができる。
【0067】
本発明の積層体は、例えば、電子画像表示装置、眼鏡レンズ、照明(特に、LED照明)用の保護カバー、太陽電池モジュール部材等に使用することができる。
電子画像表示装置としては、例えば、パソコン、テレビ、タッチパネル、ウェラブル端末(例えば、眼鏡型、腕時計型などの身体に身につけることが可能なコンピューター端末)などのディスプレイ用途電子デバイス部品が挙げられる。
本発明の積層体を電子画像表示装置等に内蔵または後付け(例えば外部からの貼付等)することができる。本発明の積層体を電子画像表示装置等に内蔵する場合、例えば反射板以外の部分に適用することができる。具体的には例えば、レンズシート、拡散シート、導光板に適用することができる。
本発明の組成物を電子画像表示装置に直接適用して硬化皮膜を形成することができる。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
本明細書において、実施例1〜3、実施例12〜15を、それぞれ、参考例1〜3、参考例12〜15と読み替えるものとする。
【0069】
〔実施例1〜11および比較例1〜7〕
<組成物の調製>
下記第1表の各成分を、第1表に示す組成(質量部)で、撹拌機を用いて混合し、組成物を調製した。
<積層体の製造>
上記のようにして得られた各組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム(PET生地:商品名ルミラーU403、東レ社製、厚さ125μm)にバーコーターを用いて乾燥後の膜厚で1.5μmとなるようなクリアランス設定で塗布し、これを80℃の条件下で1分間乾燥させた後、これに川口スプリング製作所社製のGS UV SYSTEMを用いて紫外線(UV)を照射(UV照射条件:照度300mW/cm
2、積算光量300mJ/cm
2、UV照射装置は高圧水銀灯)して組成物を硬化させ、積層体を作製した。
【0070】
<試験体の製造>
積層体における硬化皮膜自体の評価に近づけるために、上記で作製した積層体と同じ条件で、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET生地:商品名ルミラーU403、東レ社製、厚さ125μm)上に、硬化後の硬化皮膜の膜厚が5μmまたは10μmとなるように、得られた各組成物を塗布し、硬化させたフィルム状の試験体を作製した。
作製した積層体または試験体を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0071】
<硬度(鉛筆硬度)>
JIS K5600−5−4:1999に準じて、750g荷重で、作製した試験体(厚み:5μm)の鉛筆硬度を測定した。
【0072】
<耐屈曲性(巻きつけ試験)>
作製した試験体(厚み:5μm,10μm)のPET基材側を円形容器に巻き付け、硬化皮膜に「ひび」が入る容器の直径の大きさを測定した。
その結果、容器の直径が10mm未満である場合を耐屈曲性に優れるものとして「○」と評価し、容器の直径が10mm以上である場合を耐屈曲性に劣るものとして「×」と評価した。なお、下記第1表中に示す括弧内の数値に関して、例えば、「≦6.0」は直径6.0mmの円形容器を用いた場合でも硬化皮膜に「ひび」が入らなかったことを示し、「6.0」は直径6.0mmの円形容器を用いた際に硬化皮膜に「ひび」が入ったことを示す。
【0073】
<ブルーライトの平均カット率>
上述のとおり製造した積層体に、装置として日立分光光度計3900Hを用いて800〜300nm領域の光を照射し、その385nm〜495nm領域における平均透過率(%)を測定した。測定結果を下記式に当てはめて積層体のブルーライトの平均カット率を算出した。
硬化皮膜のブルーライトの平均カット率(%)=100−(385〜495nm領域の平均透過率)
【0074】
<黄色味>
上述のとおり製造した積層体の色差(L*a*b*表色系)について、ハンディタイプの簡易型分光色差計CM−500(コニカミノルタ社製)を用い、JIS Z 8730:2009で規定されている方法で測定した。b*値の測定結果を下記第1表に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
第1表に示される各成分の詳細は以下のとおりである。
・ウレタン(メタ)アクリレートA1−1:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)とを反応させて得られるウレタンアクリレート(DPPA中の全活性水素基濃度に対するHDI中のイソシアネート基濃度の当量比(NCO/活性水素基)=0.6、重量平均分子量:944、1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数:8〜10個)
・ネマチック液晶性化合物A2−1:上記式(2a)で表される化合物(n=4)
・カイラル剤A3−1:上記式(3a)で表される化合物(m=4)
【0078】
・(メタ)アクリル系ブロックポリマーB−1:クラリティ LA−2250(重量平均分子量:85000、ブロック鎖(b1)のガラス転移温度:−40℃、ブロック鎖(b2)のガラス転移温度:105℃、ブロック鎖(b2)の含有量:23質量%、クラレ社製)
・(メタ)アクリル系ブロックポリマーB−2:クラリティ LA−4285(重量平均分子量:85000、ブロック鎖(b1)のガラス転移温度:−40℃、ブロック鎖(b2)のガラス転移温度:105℃、ブロック鎖(b2)の含有量:33質量%、クラレ社製)
・(メタ)アクリル系ブロックポリマーB−3:クラリティ LA2140e(重量平均分子量:80000、ブロック鎖(b1)のガラス転移温度:−40℃、ブロック鎖(b2)のガラス転移温度:105℃、ブロック鎖(b2)の含有量:20質量%、クラレ社製)
・PMMAホモポリマー:ポリメチルメタクリレート(デルペット72、ガラス転移温度:105℃、旭化成ケミカルズ社製)
・PMMA−PBAランダム共重合体:メチルメタクリレート(MMA)とアクリル酸ブチル(BA)のランダム共重合体(PX47−6、MMA/BA=67/33、ガラス転移温度:30℃、亜細亜工業社製)
・PBAホモポリマー:アクリル酸ブチル重合体(重量平均分子量:50000、ガラス転移温度:−40℃、合成品)
【0079】
・光重合開始剤C−1:イルガキュア184(BASF社製)
・化合物D−1:ナフタルイミド骨格を有する化合物(上記式(1)におけるR
1が、−CH
2CH(CH
2CH
2CH
3)
2であり、R
2が、−O−CH
3である化合物)
・化合物E−1:ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物(チヌビン Carbo protect、BASF社製)
・メチルエチルケトン:溶媒
・アニソール:溶媒
・酢酸エチル:溶媒
・シクロヘキサノン:溶媒
【0080】
第1表に示す結果から明らかなように、(メタ)アクリル系ブロックポリマーを配合しない場合は、硬度は良好であったが、耐屈曲性が劣ることが分かった(比較例1〜3)。
また、(メタ)アクリル系ブロックポリマーに代えて、ガラス転移温度が0℃以下となる(メタ)アクリル系のホモポリマーや、ガラス転移温度が60℃以上となる(メタ)アクリル系のホモポリマーや、ランダム共重合体を配合した場合には、硬度および耐屈曲性のいずれか一方が劣ることが分かった(比較例4〜6)。
更に、ガラス転移温度が0℃以下となる(メタ)アクリル系のホモポリマーと、ガラス転移温度が60℃以上となる(メタ)アクリル系のホモポリマーとをいずれも配合すると、硬度および耐屈曲性が劣ることが分かった(比較例7)。
【0081】
これに対し、多官能(メタ)アクリレート化合物とともに、所望のブロック鎖を有する(メタ)アクリル系ブロックポリマーを配合して調製した組成物を用いると、硬化皮膜の硬度および耐屈曲性がいずれも良好となることが分かった(実施例1〜11)。
特に、実施例1と実施例4〜6との対比から、ナフタルイミド骨格を有する化合物(D)、または、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物(E)を併用することにより、ブルーライトカット機能が発現することが分かった。
また、実施例1と実施例7〜9との対比から、多官能(メタ)アクリレート化合物としてネマチック液晶性化合物およびカイラル剤を用いることにより、ブルーライトカット機能が更に向上することが分かった。
また、実施例5と実施例10との対比から、ハードセグメントであるブロック鎖(b2)の含有量が20質量%以上であると、硬度および耐屈曲性がより良好となることが分かった。
【0082】
〔実施例12〜15〕
実施例1で調製した組成物を用いて、以下に示す方法で積層体Aおよび積層体Bを作製し、以下に示す方法で硬化皮膜の密着性を評価した。
【0083】
<積層体Aの製造−基材(PETフィルム)>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET生地:商品名U46、東レ社製、厚さ125μm)に、下記第2表に示す品番のアクリル系樹脂組成物(いずれも横浜ゴム社製)をバーコーターを用いて乾燥後の膜厚で1.5μmとなるようなクリアランス設定で塗布し、これを80℃の条件下で1分間乾燥させた後、これに川口スプリング製作所社製のGS UV SYSTEMを用いて紫外線(UV)を照射(UV照射条件:照度300mW/cm
2、積算光量300mJ/cm
2、UV照射装置は高圧水銀灯)して硬化させ、PET基材上にアクリル系樹脂層を形成した。形成したアクリル系樹脂層に、濡れペン(ペンナンバー30、32、34、36、38、40、42および44mN/mの8本セット、アルコテスト社製)を塗り、塗った後に2〜5秒経過した際にペン筋の状態を目視により確認し、インクがはじかない最も大きなペンナンバーを選定し、表面張力を決定した。
次いで、実施例1で調製した組成物を上記アクリル系樹脂層にバーコーターを用いて乾燥後の膜厚で1.5μmとなるようなクリアランス設定で塗布し、これを80℃の条件下で1分間乾燥させた後、これに川口スプリング製作所社製のGS UV SYSTEMを用いて紫外線(UV)を照射(UV照射条件:照度300mW/cm
2、積算光量300mJ/cm
2、UV照射装置は高圧水銀灯)して組成物を硬化させ、積層体を作製した。
【0084】
<積層体Bの製造−基材(シクロオレフィン)>
基材として、コロナ処理が施されたシクロオレフィンフィルム(COP生地:商品名ZF16−100、日本ゼオン社製、厚さ100μm)を用いた以外は、積層体Aと同様の方法により、積層体Bを作製した。
【0085】
<密着性>
作製した積層体AおよびBについて、JIS K5400に基づいた碁盤目剥離試験を行い、密着性を評価した。
具体的には、カッターを用いて各積層体の硬化皮膜の部分と樹脂層の部分のみに1mmピッチで切れ込みを入れ、基盤目を100個(10×10)を作り、基盤目上にセロハン粘着テープ(幅18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端を基板に対して直角に保ちながら瞬間的に引き離し、完全に剥がれないで残った基盤目の数を調べた。残った基盤目の数が75個以上の場合は密着性に優れるものとして「○」と評価し、75個未満の場合は密着性にやや劣るものとして「×」と評価した。結果を下記第2表に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
第2表に示す結果から、積層体として、基材と硬化皮膜との間に樹脂層を設ける場合、樹脂層を構成するアクリル系ポリマーの表面張力が32mN/m以上であると、基材と硬化皮膜との密着性が良好となることが分かった。