(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被処理物体の設計データに基づいて、酸素を含む処理気体の雰囲気中で複数の紫外線発光素子がアレイ状に配置された光源部から発せられた紫外線が照射される処理領域を特定する工程と、
前記複数の紫外線発光素子の出力を個別に制御し、特定された前記処理領域に紫外線を照射する工程と、を含み、
前記被処理物体は配線基板材料であり、
前記処理領域を特定する工程では、前記設計データに含まれる前記配線基板材料に形成されるビアホールの位置データに基づいて、前記配線基板材料における前記ビアホールが形成された領域を前記処理領域として特定することを特徴とする紫外線処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、紫外線を基板全体に照射している。そのため、ビアホールが形成されていない領域にまで紫外線を照射することになり、光の利用効率が低下する。また、ビアホールが形成されていない基板表面に紫外線が過剰に照射されると、基板表面において不所望のアッシングを生じてしまう場合もある。
そこで、本発明は、紫外線照射処理が必要な領域に適切に紫外線を照射し、光の利用効率を向上させることができる紫外線処理装置および紫外線処理方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る紫外線処理装置の一態様は、複数の紫外線発光素子がアレイ状に配置された光源部と、被処理物体が保持されて、酸素を含む処理気体の雰囲気中で前記光源部から発せられた紫外線が照射される処理領域を有する処理部と、前記被処理物体の設計データに基づいて、前記処理領域を特定する領域特定部と、前記複数の紫外線発光素子の出力を個別に制御し、前記領域特定部により特定された前記処理領域に紫外線を照射する光源制御部と、を備え
、前記被処理物体は配線基板材料であり、前記領域特定部は、前記設計データに含まれる前記配線基板材料に形成されるビアホールの位置データに基づいて、前記配線基板材料における前記ビアホールが形成された領域を前記処理領域として特定する。
ここで、「処理気体」とは、被処理物体を処理する気体であって、紫外線が照射されることで処理能力を得る気体である。代表例としては、酸素がある。酸素に紫外線が照射されると、酸素ラジカル(活性種)やオゾンが発生する。
本発明に係る紫外線処理装置によれば、個別に出力を制御可能な複数の紫外線発光素子がアレイ状に配置された光源部を用いて、紫外線照射処理が必要な領域に適切に紫外線を照射することができるので、光の利用効率を向上させることができる。また、紫外線照射処理が必要な領域を、被処理物体の設計データ(例えば、CADデータ)に基づいて特定するので、さまざまな設計(種類)の被処理物体について、適切な紫外線照射処理が可能である。
【0006】
また、ビアホールが形成された領域のみを、紫外線照射処理が必要な領域として特定して紫外線を照射することができる。これにより、配線基板の製造工程においてビアホールの底部表面などに生じたスミアを除去するデスミア処理を行うことができる。また、ビアホールが形成されていない領域については、紫外線を照射しないようにすることができ、不所望なアッシングを防止することができる。
【0007】
さらに、上記の紫外線処理装置において、前記ビアホールのサイズデータと前記ビアホールに対する前記紫外線の照射条件とを対応付けて記憶する記憶部と、前記設計データに含まれる前記配線基板材料に形成される前記ビアホールのサイズデータと前記記憶部に記憶された前記照射条件とに基づいて、前記領域特定部により特定された前記処理領域の前記照射条件を、前記ビアホールのサイズに応じて決定する照射条件決定部と、をさらに備え、前記光源制御部は、前記領域特定部により特定された前記処理領域に、前記照射条件決定部により決定された前記照射条件で前記紫外線を照射してもよい。
このように、ビアホールのサイズに応じて紫外線の照射条件を決定するので、1枚の配線基板材料にサイズの異なるビアホールが形成されている場合であっても、ビアホールごとに適切な紫外線照射処理を行うことができる。
【0008】
また、上記の紫外線処理装置において、前記ビアホールのサイズデータは、前記ビアホールの形状、径、および深さの少なくとも1つに関する情報を含んでもよい。ビアホールのサイズ(形状、径、深さ)が異なると、ビアホールに生じるスミアの量も異なるため、デスミア処理を適切に行うための紫外線の照射条件も異なる。ビアホールのサイズデータに形状、径、深さに関する情報が含まれることで、ビアホールごとに適切な紫外線照射処理を行うことができる。
さらにまた、上記の紫外線処理装置において、前記照射条件は、前記紫外線の照射強度および照射時間の少なくとも1つに関する情報を含んでもよい。この場合、ビアホールごとに紫外線の照射光量を変えることができる。したがって、照射光量が不足していることに起因するデスミア処理不足や、照射光量が過剰であることに起因する不所望なアッシングの発生を抑制することができる。
【0009】
また、上記の紫外線処理装置において、前記被処理物体の表面に沿って前記処理気体を流す気体給排部をさらに備え、前記領域特定部は、前記気体給排部により流された前記処理気体が、前記被処理物体が保持された領域に到達する前の領域を前記処理領域として特定してもよい。この場合、紫外線が照射されて処理能力を得た処理気体を、被処理物体が保持された領域へ供給することができる。したがって、被処理物体への紫外線照射処理を効果的に行うことが可能となる。
さらに、上記の紫外線処理装置において、前記光源部と前記処理部において保持された前記被処理物体との位置合わせを行うアライメント機構をさらに備えてもよい。この場合、被処理物体の設計データに基づいて特定された処理領域に対応する紫外線発光素子を容易且つ適切に特定することができ、紫外線照射処理が必要な処理領域に対して確実に紫外線を照射することができる。
【0010】
また、上記の紫外線処理装置において、前記光源部が前記アライメント機構を有し、前記アライメント機構は、前記複数の紫外線発光素子と前記被処理物体との位置合わせを行ってもよい。この場合、被処理物体における紫外線照射処理が必要な処理領域に対して確実に紫外線を照射することができる。
また、本発明に係る紫外線処理方法の一態様は、被処理物体の設計データに基づいて、酸素を含む処理気体の雰囲気中で複数の紫外線発光素子がアレイ状に配置された光源部から発せられた紫外線が照射される処理領域を特定する工程と、前記複数の紫外線発光素子の出力を個別に制御し、特定された前記処理領域に紫外線を照射する工程と、を含
み、前記被処理物体は配線基板材料であり、前記処理領域を特定する工程では、前記設計データに含まれる前記配線基板材料に形成されるビアホールの位置データに基づいて、前記配線基板材料における前記ビアホールが形成された領域を前記処理領域として特定する。
これにより、紫外線照射処理が必要な領域に適切に紫外線を照射することができ、光の利用効率を向上させることができる。また、紫外線照射処理が必要な領域を、被処理物体の設計データ(例えば、CADデータ)に基づいて特定するので、さまざまな設計(種類)の被処理物体について、適切な紫外線照射処理が可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紫外線照射処理が必要な領域に適切に紫外線を照射し、光の利用効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の紫外線処理装置100の構成例を示す図である。本実施形態では、紫外線処理装置100の一例として、例えばフォトデスミア装置への適用例について説明する。フォトデスミア装置は、ある一定温度に加熱された基板に対し、酸素を含む雰囲気下で紫外線を照射することにより、基板に形成されたビアホール内のスミアを除去する装置である。
(紫外線処理装置の構成)
図1に示すように、紫外線処理装置100は、光源部である光照射部10と、被処理物体である基板(ワーク)Wを保持する処理部20とを備える。光照射部10は、デスミア処理に必要な、例えば波長220nm以下、好ましくは波長190nm以下の紫外線(真空紫外線)を放射する光源11を内部に収納し、処理部20が保持するワークWに光源11からの紫外光を照射する。ここで、光源11が放射する紫外線の波長を220nm以下としたのは、紫外線の波長が220nmを超える場合には、樹脂などの有機物質に起因するスミアを分解除去することが困難となるためである。
【0014】
光源11は、例えば上記紫外線を放射するLEDやLDなどの小型の発光素子(紫外線発光素子)を、複数縦横できるだけ密になるようにアレイ状に並べた構成を有し、複数の発光素子を選択的に点灯制御可能なものを用いることができる。
図2に光源11の構成例を示す。光源11は、発光ダイオードを組み込んだ発光ブロック11(1,1)を横方向にn個、縦方向にm個密に並べた面状発光体である。並べる個数n,mは単一の素子の大きさと、所望の発光面積から決定される。光源11の大きさは、ワークWの大きさを十分に覆う大きさであってもよいし、ワークWの大きさよりも小さくてもよい。例えば、ワークWの縦横1/2ずつの大きさ(ワークの面積の1/4の大きさ)の光源を使って、ワーク全体を4回に分けて照射してもよい。光源11の発光ブロックには、個々の発光素子を点灯制御するための電源(P/S)31が接続されている。電源31は制御部40により制御され、光源11を構成する複数の発光素子の出力をそれぞれ個別に制御する。
なお、光源11は、局所的に紫外線を放射するよう点灯制御可能な構成であればよく、LEDやLDなどの小型の発光素子を並べた構成に限定されない。例えば、プラズマディスプレイパネルは、微小な多数のセルが縦横平面状に形成され、個々のセルが放電により発光するものであるが、この原理を応用した光源を用いてもよい。この場合、個々のセルが一個の発光素子に相当する。
【0015】
光照射部10は、例えば紫外線を透過する石英ガラス等の窓部17を下方に有する箱型形状のケーシング12を備える。光源11は、ケーシング12の内部に光源支持体18に担持されて配置されている。ケーシング12の内部は、例えば窒素ガス等の不活性ガスが供給されることで、不活性ガス雰囲気に保たれている。光照射部10内の光源11の上方(背面)には、発光素子を冷却するための水冷配管13とチラー32とを含んで構成される冷却機構が設けられている。水冷配管13はチラー32に接続され、その内部には、例えば循環冷却水が流されている。
【0016】
また、光照射部10は、ワークWに形成されているアライメントマークの位置を検出するアライメントカメラ14を備え、アライメントカメラは光源11と同様に光源支持体18に担持されている。アライメントカメラ14は、少なくとも2台設けられる。アライメントカメラ14により検出されたアライメントマークの位置情報は、制御部40に送られる。
処理部20は、紫外線照射処理(デスミア処理)を行うワークWを吸着して保持するステージ21を備える。ステージ21は、光照射部10の窓部に対向して配置されている。ステージ21には、ワークWを吸着するために例えば吸着孔(不図示)が穿たれている。このステージ21は、平坦性や吸着孔の精度を確保するため、例えばアルミニウム材で形成されている。
【0017】
ステージ21表面の外周部分には、外周溝21aが形成されている。この外周溝21aと光照射部10の窓部との間にOリング22が挟まれることで、光照射部10と処理部20とが気密に組み付けられる。
ステージ21には、ワークWが載置されて光照射部10からの紫外線が照射される処理領域をワークWごと加熱するヒータ23が組み込まれている。ヒータ23としては、例えば、シースヒータやカートリッジヒータなどの加熱機構を用いることができる。ヒータ23には、処理領域の加熱温度を所定の設定温度に制御するヒータ制御器(不図示)が接続されている。
ステージ21の一方(
図1の右側)の側縁部には、デスミア処理を行うための処理用ガス(処理気体)を処理領域に供給するための給気路24が形成されている。給気路24にはバルブ33aを介してガス供給部33が接続されている。ガス供給部33の動作は、制御部40により制御される。また、ステージ21の他方(
図1の左側)の側縁部には、デスミア処理後の排ガスを含む処理用ガスをステージ部21外に排気するための排気路25が形成されている。排気路25にはバルブ33bを介して不図示の排気装置が接続されている。
【0018】
ここで、処理用ガスとしては、例えば、酸素、オゾン、酸素とオゾンや水蒸気との混合ガス、これらのガスに不活性ガスなどを混合したガスなどが考えられる。処理用ガスは、ワークWに対して光照射部10からの紫外線が照射されている間、給気路24を通って処理領域に供給され、排気路25を通ってステージ部21外部に排出される。すなわち、処理用ガスは、光照射部10の窓部とワークWとの間の処理領域を、
図1の右から左へと流れていくこととなる。すなわち、給気路24、排気路25およびガス供給部33によって、ワークWの表面に沿って処理用ガスを流す気体給排部を構成している。
【0019】
また、光照射部10には、光源支持体18をX方向(
図1の左右方向)、Y方向(
図1の紙面垂直方向)方向、およびθ方向(XY平面に垂直なZ軸の周りの回転方向)に移動可能な光源部移動機構35がアーム36を介して取り付けられている。光源部移動機構35の動作は制御部40により制御される。
光源部移動機構35は、
図3に示すように、光源支持体18をX方向に移動可能なX方向移動機構35aと、光源支持体18をY方向に移動可能なY方向移動機構35bとを含んで構成されている。また、アーム36は、X方向移動機構35aに取り付けられたアーム36aと、Y方向移動機構35bに取り付けられたアーム36bとを含んで構成されている。なお、光源部移動機構35は、X方向移動機構35aおよびY方向移動機構35bとは別に、不図示のθ方向移動機構を含んで構成されていてもよいし、X方向移動機構35aまたはY方向移動機構35bによって、光源支持体18をθ方向に回転移動させる構成であってもよい。例えば、X方向移動機構35aによって光源支持体18をθ方向に回転移動させる場合、X方向移動機構35aはX方向に延在する2本のアームを備え、その2本のアームを互いにX方向における逆方向に進退させることで、光源支持体18をθ方向に回転移動させてもよい。
【0020】
また、処理部20には、処理部20をZ方向(
図1の上下方向)に移動可能な処理部移動機構34が取り付けられている。処理部移動機構34の動作は制御部40により制御される。処理部20が処理部移動機構34により下降すると、光照射部10と処理部20との間には隙間が形成され、この隙間を利用して、処理部20に対してワークWを出し入れすることが可能になる。デスミア処理を行う際には、処理部20は処理部移動機構34により上昇され、Oリング22が光照射部10の窓部と接触する。これにより処理部20の、ワークWを載置したステージ21上の空間が密閉される。
【0021】
(基板構造)
本実施形態において、紫外線処理装置100の処理対象であるワークWは、半導体集積回路素子等の半導体素子を搭載するための多層配線基板を製造する途中の中間的な配線基板材料である。多層配線基板は、例えばコア基板上に導電層(配線層)と絶縁層とを積層してなる。コア基板は、例えばガラスエポキシ樹脂などによって構成することができる。導電層(配線層)を構成する材料としては、例えば、銅、ニッケル、金などを用いることができる。
絶縁層は、例えば無機物質よりなる粒状フィラーが含有された樹脂などによって構成することができる。このような樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂などを用いることができる。また、粒状フィラーを構成する材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、珪酸塩、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化チタンなどを用いることができる。
【0022】
多層配線基板においては、一の配線層と他の配線層とを電気的に接続するため、1つのもしくは複数の絶縁層を厚み方向に貫通して伸びるビアホールが形成される。多層配線基板の製造工程においては、
図4に示すように、絶縁層61と配線層62とが積層されてなる配線基板材料に、例えばレーザ加工を施して絶縁層61の一部を除去することにより、ビアホールVHが形成される。レーザ加工の方法としては、CO
2レーザを用いる方法や、UVレーザを用いる方法などを利用することができる。なお、ビアホールVHを形成する方法は、レーザ加工に限定されるものではなく、例えばドリル加工などを用いてもよい。
【0023】
このようにしてビアホールVHを形成すると、ビアホールVHの底部や内壁面(サイドウォール)の表面、絶縁層61の表面におけるビアホールVHの周辺領域には、絶縁層61や配線層62を構成する材料に起因するスミア(残渣)Sが付着する。このスミアSが付着したままの状態でビアホールVH内にメッキ処理を施すと、配線層間の接続不良を引き起こすことがある。このため、ビアホールVHが形成された配線基板材料(ワークW)に対して、ビアホールVHに付着したスミアSを除去するデスミア処理が行われる。
ワークWが
図1に示すステージ21上に載置される際には、ビアホールVHの開口が光照射部10に向くように、即ちスミアSに光源11からの紫外線が照射されるように載置される。そして、本実施形態では、制御部40により光源11を構成する複数の発光素子を個別に点灯制御し、
図4に示すように、ビアホールVHが形成されている領域のみに紫外線UVを照射することでスミアSを除去する。
【0024】
(制御部の構成)
図1に示すように、制御部40は、紫外線処理装置100が設置される工場等の総合システム管理部200に接続されている。制御部40は、総合システム管理部200から、ワークWの設計データ(例えば、CAD/CAMデータ)を入力する。なお、この設計データの中には、ワークWに形成するビアホールの位置データやサイズデータも含まれている。また、この設計データは、他の装置、例えばビアホールを形成するレーザ加工装置にも送られ、ワークWにビアホールを形成するためにも使用される。
図5は、制御部40の具体的構成を示すブロック図である。
制御部40は、設計データ入力部41、データ変換部42、光量入力部43、記憶部44、比較演算部45および光源点灯制御部46を備える。設計データ入力部41は、総合システム管理部200からのワークWの設計データを入力し、入力した設計データをデータ変換部42に出力する。データ変換部42は、設計データ入力部41から入力した設計データに基づいて、ビアホールが形成されている位置データを紫外線照射位置データに変換し、変換した紫外線照射位置データを光源点灯制御部46に出力する。また、データ変換部42は、設計データ入力部41から入力した設計データに含まれるビアホールのサイズデータを比較演算部45に出力する。
【0025】
光量入力部43は、紫外線処理装置100の使用者が入力したビアホールのサイズデータと光量データとを入力し、これらを対応付けて記憶部44に記憶する。ここで、ビアホールのサイズデータは、ビアホールの形状(アスペクト比)や径、深さに関するデータを含む。また、光量データは、紫外線の照射条件を示すデータであり、紫外線の照射強度や照射時間を含む。この光量データは、予め実験等により求める。なお、ビアホールのサイズデータと光量データとの組は、
図5の実線に示すように使用者が制御部40に直接入力してもよいし、
図5の破線に示すように総合システム管理部200を介して入力してもよい。
【0026】
比較演算部45は、記憶部44を参照し、データ変換部42から入力したビアホールのサイズデータに対応する光量データを取得する。そして、比較演算部45は、取得した光量データを光源点灯制御部46に出力する。
光源点灯制御部46は、データ変換部42から入力した紫外線照射位置データに基づいて、対応する位置の光源11の発光素子を点灯させる。このとき、光源点灯制御部46は、比較演算部45から入力した光量データ(照射強度、照射時間)に基づいて光源11から照射する光量を制御する。これにより、ワークW上のビアホールが形成された領域にのみ、ビアホールのサイズに応じた光量の紫外線が照射され、デスミア処理される。
なお、
図5において、設計データ入力部41およびデータ変換部42が、処理部20において紫外線が照射される処理領域を特定する領域特定部に対応し、比較演算部45が、ビアホールのサイズに応じて照射条件を決定する照射条件決定部に対応し、光源点灯制御部46および電源31が、複数の紫外線発光素子の出力を個別に制御し、処理領域に紫外線を照射する光源制御部に対応している。
【0027】
(製造プロセス)
図6は、多層配線基板の製造プロセスの一部を示す図である。
紫外線処理装置100は、レーザ加工装置によりレーザビア加工を施した配線基板材料(ワークW)に対して、デスミア処理を行う。ここで、レーザビア加工は、総合システム管理部200が備えるCADデータストレージ201が保持する設計データ(CAD/CAMデータ)に基づいて行われる。レーザビア加工が施されたワークWは、紫外線処理装置100へ搬送される。このとき、紫外線処理装置100の処理部20は、処理部移動機構34により下降した状態となっている。そして、処理部20の外から、ワークWが処理部20の中に搬送され、ステージ21の上に載せられる。ワークWは、真空吸着などによりステージ21に保持される。また、このとき総合システム管理部200は、紫外線処理装置100の制御部40に対して、デスミア処理するワークWの設計データ(CAD/CAMデータ)を送信する。
【0028】
ワークWがステージ21上に載置されると、ステージ21に接続された真空ポンプが動作し、ワークWが吸着され、ステージ21上で固定される。処理部20は処理部移動機構34により上昇し、Oリング22が光照射部10の下面と接触して処理部20の空間は密閉される。すると、制御部40は、ガス供給部33を動作させ、処理部20の内部に処理用ガスを供給する。
処理用ガスの供給は連続でも断続でもよい。樹脂の酸化分解に必要な量が供給されれば、酸化剤不足のために分解反応が低下することはない。
【0029】
次に、
図3に示す光源支持体18に設けられたアライメントカメラ14a〜14dは、ワークWに形成されているアライメントマークMa〜Mdをそれぞれ検出し、検出したアライメントカメラ14a〜14dの位置情報を制御部40に送信する。制御部40は、アライメントカメラ14a〜14dから取得したワークWのアライメントマークMa〜Mdの位置情報に基づき、光源11の位置とワークWの位置とが合うように、移動信号を光源部移動機構35に送信する。この移動信号に基づき、光源部移動機構35は、光源支持体18をXYθ方向に移動させる。なお、制御部40には、光源11の各発光素子の位置情報が記憶されているものとする。アライメントカメラ14a〜14dおよび光源部移動機構35によって、アライメント機構を構成している。
なお、本実施形態の紫外線照射装置100では、供給ガスを密閉させるため、ステージ21にシール機構が必要であり、シール部が窓部17に接触した後は、ステージ21を動かすことはできない。ステージ21を動かすと、シール材が変形して供給ガスがリークしてしまうためである。
【0030】
(点灯させる光源ブロックの位置データ)
ワークWと光源11との位置合せが終了すると、次いで、制御部40は、光源11を点灯させデスミア処理を開始する。具体的には、制御部40は、
図5の設計データ入力部41において取り込んだワークWの設計データを、データ変換部42に送る。上述したように、設計データの中には、ビアホールがワークWのどの位置に形成されているのかを示すビアホールの位置データが含まれている。データ変換部42は、ビアホールの設計データからビアホールの位置データを抜き出し、ビアホールの形成位置が、光源11を構成する個々の発光素子のどの位置に相当するかという、紫外線照射位置データに変換する。紫外線照射位置データは光源点灯制御部46に送られる。
【0031】
(点灯させる光源ブロックの光量データ)
また、データ変換部42は、ビアホールの設計データからビアホールのサイズデータを抜き出し、抜き出したサイズデータを比較演算部45に送る。比較演算部45は、ビアホールのサイズデータをもとに、それに紐付けされた光量データを記憶部44から呼び出す。そして、呼び出したビアホールのサイズに応じた光量データを光源点灯制御部46に送る。
具体的に説明すると、基本ビアサイズに対応する必要光量データは、予め実験により求めることができる。
【0032】
例えば、レーザ加工装置によって開口された口径100μmのブラインドビアホールを有する25μmの絶縁フィルムが形成されたガラスエポキシ基板に、ワーク面照度(ビア底ではなく、ビアのトップ面)100mW/cm
2の紫外線を適宜時間照射し、スミアを分解する。そして、ビア底の銅面が見えるまで紫外線を照射し、スミアの残留をSEM/EDX(走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法)を用いて目視確認する(Cu面が現れるのでよくわかる。)。この方法により、EDXは開口100μm程度のビアの中央部は精度良く元素の定量分析ができる。理由は電子ビーム、特性X線の検出器に対して、ビアの開口径が十分大きいからである。ビア底のC(カーボン量)を定量分析すると、銅に対するカーボン量は少なくなり、あるところでサチレーションする。この照射量を予め実験で求めておく。
ビアの底のエッジのスミア量を計測することは極めて難しいが、中央部の分析値をもとに算出することができる。例えば、開口径100μmのブラインドビアホールにおいて、ビア底の中央のスミアを除去するために100秒の照射が必要であるとする場合、表1をもとに、ビア底のエッジ部の必要時間は 85/57=1.49倍の時間、すなわち149秒の時間が必要であることがわかる。
【0034】
なお、表1の数値は、基板表面照度を100%としている。
上記表1のとおり、ビアの開口径が小さくなると到達率が低くなるため、照射時間は長くなる。
このように、光源点灯制御部46は、ワークWに形成されているビアホールに対応する位置の発光素子を、当該ビアホールのサイズに応じた光量(照射強度、照射時間)の条件で点灯させる信号を電源31に送る。電源31は、光源点灯制御部46から送信された信号に基づいて、ビアホールが形成された位置の上にある発光素子のみを点灯する。
これにより、ワークWのビアホールが形成されている領域にのみ紫外線が照射されデスミア処理がなされる。ワークWのデスミア処理が終了すると、制御部40は、電源31を制御して光源11の紫外線照射を停止すると共に、ガス供給部33を制御して処理部20への処理用ガスの供給を停止する。次に、制御部40は、処理部移動機構34により処理部20を下降する。デスミア処理後のワークWは、ステージ21上から取り除かれて処理部20の外に搬出される。
【0035】
デスミア処理後のワークWは、超音波洗浄装置へ搬送され、物理的振動処理として超音波振動処理(超音波洗浄(US洗浄)処理)が施される。超音波振動処理における超音波の周波数は、例えば20kHz以上70kHz以下であることが好ましい。超音波の周波数が70kHzを超えると、無機物質に起因するスミアを破壊して配線基板材料から離脱させることが困難となるためである。
このような超音波振動処理においては、超音波の振動媒体として、水などの液体および空気などの気体を用いることができる。
具体的に説明すると、振動媒体として水を用いる場合には、配線基板材料を、例えば水中に浸漬し、この状態で、当該水を超音波振動させることにより、超音波振動処理を行うことができる。超音波の振動媒体として液体を用いる場合には、超音波振動処理の処理時間は、例えば10秒間〜600秒間である。
【0036】
また、振動媒体として空気を用いる場合には、圧縮空気を超音波振動させながら配線基板材料に吹きつけることにより、超音波振動処理を行うことができる。ここで、圧縮空気の圧力は、例えば0.2MPa以上であることが好ましい。また、圧縮空気による超音波振動処理の処理時間は、例えば5秒間〜60秒間である。
上記の紫外線照射処理工程および物理的振動処理工程は、この順でそれぞれ1回ずつ行ってもよいが、紫外線照射処理工程および物理的振動処理工程を交互に繰り返して行うことが好ましい。ここで、紫外線照射処理工程および物理的振動処理工程の繰り返し回数は、各紫外線照射処理工程における紫外線の照射時間などを考慮して適宜設定されるが、例えば1回〜5回である。
【0037】
以上のように、紫外線照射処理において波長220nm以下の紫外線を、酸素を含む処理気体に照射することによりオゾンや活性酸素が生じ、有機物質に起因するスミアSは、オゾンや活性酸素によって分解されてガス化される。その結果、有機物質に起因するスミアSは、その大部分が除去される。このとき、無機物質に起因するスミアSは、有機物質に起因するスミアSの除去により露出し、さらに、紫外線が照射されることによって脆いものとなる。
【0038】
そして、その状態で物理的振動処理を施すことにより、露出した無機物質に起因するスミアSや有機物質に起因するスミアSの残部は、振動による機械的作用によって破壊され、除去される。或いは、無機物質に起因するスミアSの収縮や、各スミアSに紫外線を照射したときに発生する熱膨張の差などによって、スミア間にわずかな隙間が生じ、無機物質に起因するスミアSは、物理的振動処理を施すことにより配線基板材料から離脱する。その結果、配線基板材料から無機物質に起因するスミアSと、有機物質に起因するスミアSとが完全に除去される。
このように、紫外線照射処理と物理的振動処理とを行うフォトデスミア処理によれば、廃液処理が必要となる薬品を用いずにデスミア処理することができる。なお、フォトデスミア処理に関する処理情報は、総合システム管理部200が備える照射データストレージ202に記憶される。
【0039】
フォトデスミア処理が完了すると、必要に応じてマスクピーラー装置による保護膜を除去する処理が行われ、その後、ワークW表面にシード層を形成する処理が行われる。その後は、シード層の上にレジストが塗布された後、露光処理、現像処理を経て、シード層の上にレジストパターンが形成される。そして、ビアホール内からレジストパターンの開口部にかけて、めっき層が形成された後、レジストが剥離され、めっき層をマスクにしてシード層が除去(シードエッチング)される。
以上のように、本実施形態における紫外線処理装置100は、比較的小さく、独立して点灯と消灯との切替制御が可能な発光素子をマトリクス状に並べた光源11により、紫外線照射処理が必要な箇所に、必要な光量(強度、時間)だけ紫外線を照射することができる。
【0040】
一方、光源としてエキシマランプのような紫外線ランプを用いた紫外線処理装置(デスミア処理装置)では、ビアホールが形成された基板全体に紫外線を照射することが想定されている。デスミア処理装置において、紫外線を基板全体に照射する理由は次の通りである。基板には、ビアホールが形成されている領域と形成されていない領域とがあり、それらの領域の位置は、基板に形成する回路パターンの設計により異なる。紫外線を基板全体に照射するようにしておけば、ビアホールが形成されている領域がどのような位置にあっても処理ができる。つまり、さまざまな設計(種類)の基板について、デスミア処理を行うことができる。
【0041】
しかしながら、基板全体に光を照射する方法については、次のような問題が考えられる。基板上のビアホールが形成されていない領域には、本来、紫外線の照射は不要である。そのため、デスミア処理装置において、基板全体に紫外線を照射する構成にすると、ビアホールが形成されていない領域にまで紫外線を照射することになり、光の利用効率が低下する。特に、近年、基板は大型化しており、大型の基板でビアホールの形成されている領域の面積が小さい場合、光の利用効率は著しく低下する。さらに、ビアホールが形成されていない領域に紫外線が過剰に照射されると、その表面において不所望のアッシングを生じてしまう場合がある。
【0042】
また、一枚の基板に形成されるビアホールのサイズ(形状、径、深さ)は、一種類ではなく多種類に及ぶ場合がある。ビアホールのサイズが異なると、ビアホールに生じるスミアの量も異なるため、デスミア処理を適切に行うための処理条件(紫外線の照射光量)も異なることになる。しかしながら、基板全体に一様に紫外線を照射する構成の場合、基板の場所によって処理条件を変化させることは困難である。このように一枚の基板に複数のサイズのビアホールが存在する場合、処理不足のビアホールが残らないように、処理に必要な光量が最も多いビアホールに処理条件を合わせて基板全体を照射することになる。そのため、必ず紫外線の照射量が過剰になる領域が生じてしまう。
【0043】
これに対して、本実施形態では、紫外線処理装置100は、ビアホールが形成された領域にのみ紫外線を照射することができるので、光の利用効率を上げることができる。その結果、光源11の寿命を延ばすことができる。また、紫外線処理装置100は、ビアホールが形成されていない領域には紫外線を照射しないようにすることができるので、不所望のアッシングを防ぐことができる。
一般的な露光装置の場合、光学系が固定されている。そして、マスクパターンを使用してワーク上に露光部、非露光部を作っておき、光をシャッターで遮り、ワークを移動させた後、シャッターを開け露光する。次にシャッターを閉じてワークの次の露光エリアに合わさるようにステージを移動させる。次にシャッターを開けて・・・という動作を順次繰り返して露光する。露光から露光までの時間は、光源は点灯動作しており、また、光の制御はマスクで遮蔽しているだけなので、実際にレジストの露光に使用される光はごく僅かである。つまり、ワークには必要な箇所にのみ光を当てることができるが、不必要な箇所にも光のパワーが使われてしまう。
【0044】
これに対して、本実施形態では、光源11を構成する複数の発光素子の出力をそれぞれ個別に制御するので、不必要な箇所に光のパワーが使われることを防止し、光の利用効率を上げることができる。
さらに、紫外線処理装置100は、ビアホールのサイズに合わせて、必要な光量の紫外線を、必要な領域に照射することができる。したがって、一枚の基板にサイズの異なるビアホールが形成されていたとしても、それぞれのビアホールに対して、適切な光量の紫外線を照射することができる。その結果、必要以上の光量を照射する領域が生じることを防ぐことができる。
【0045】
紫外線処理装置100は、ワークWに形成するビアホールの位置データやサイズデータが含まれる設計データ(CAD/CAMデータ)を取得し、取得した設計データに基づいて、ビアホールが形成されている位置データを紫外線照射位置データに変換する。そして、紫外線処理装置100は、変換した紫外線照射位置データに基づいて、光源11の対応する位置の発光素子を点灯させる。このように、ワークWの設計データを用いることで、ワークWごとにビアホールが形成されている位置が異なる場合であっても、ビアホールが形成されている位置、即ち、紫外線照射処理の必要箇所を適切に特定することができる。
【0046】
また、個別に出力を制御可能な複数の発光素子がアレイ状に配列された光源11を用いることで、必要箇所のみを選択的に発光させる点灯制御を容易に行うことができる。したがって、例えばマスク等を用いることなく、必要箇所のみにピンポイントで紫外線を照射することができる。また、必要最小限の紫外線を照射することができるため、光源11の冷却機構を小さくすることができる。
さらに、紫外線処理装置100は、ビアホールが形成された領域に紫外線を照射する場合、ビアホールのサイズに応じた光量の紫外線を照射する。紫外線処理装置100は、ビアホールのサイズ(直径、深さ、形状など)に対して予め実験等で求めた適切な光量(照射強度や照射時間)を、ビアホールのサイズデータと対応付けて記憶しておき、取得した設計データに含まれるビアホールのサイズデータに基づいて、ビアホールのサイズに応じた光量を取得する。このように、ワークWの設計データを用いることで、ワークWに形成されたビアホールのサイズを適切に把握することができる。したがって、例えば、1枚のワークW上に径の異なるビアホールが混載されている場合や、CO
2レーザを用いて形成されたCO
2ビアとUVレーザを用いて形成されたレーザビアとが混載されている場合などであっても、各ビアホールにそれぞれ適した処理条件で紫外線照射処理を行うことができる。
【0047】
また、紫外線処理装置100は、光源11とワークWとの位置合わせを行うためのアライメント機構を備える。具体的には、紫外線処理装置100は、光照射部10に設けられたアライメントカメラ14によって、ワークWに形成されたアライメントマークMを検出することで、ワークWの位置を読み取る。そして、紫外線処理装置100は、光源11に対するワークWの位置ずれ量に応じて、光源11をワークWに対して相対的に移動し、光源11とワークWとの位置合わせを行う。このように、アライメント機構により光源11とワークWとの位置合わせを行うことで、ワークWの設計データをもとに演算された紫外線照射位置データをもとに光線11の点灯制御を行った場合に、所望の位置に適切に紫外線を照射することができる。
【0048】
(変形例)
上記実施形態においては、光源11とワークWとの位置合わせにおいて、光源支持体18をXYθ方向に移動させる場合について説明したが、処理部20またはステージ21をXYθ方向に移動させることで光源11とワークWとの位置合わせを行ってもよい。また、この位置合わせにおいては、ワークWに形成されたアライメントマークを検出して行う、高精度の位置合わせを例に示した。しかしながら、ワークWをステージ21に設けた複数のピンに押し当てて位置合わせを行うような方法を採用してもよい。
また、上記実施形態においては、ビアホールが形成された領域を紫外線照射処理の必要領域とする場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、紫外線照射処理の必要領域は、ビアホール以外のワークW表面であってもよいし、ワークWの外側の領域(例えば、処理用ガスが、ワークWが保持された領域に到達する前の準備領域)であってもよいし、これらの組合せであってもよい。
【0049】
紫外線照射処理の必要領域が、ビアホールが形成された領域とビアホールが形成されていないワークW表面とを含む場合、ビアホールが形成されていないワークW表面には、ビアホールとは異なるドーズ(インパクト)で紫外線を照射してもよい。つまり、ワークW全体を紫外線照射処理の必要領域とし、ビアホールが形成されている領域とビアホールが形成されていない領域とで、紫外線の照射光量を変化させるようにしてもよい。これにより、ビアクリーンネスとワークW表面の粗さ調整とを分けてコントロールすることができる。
さらに、上記実施形態においては、光源11の異常を検出する異常検出部を設けてもよい。異常検出部により光源11に非発光部分があることを検出した場合、光源移動機構35により光源11をずらし、正常な発光部分を用いて紫外線照射処理を行うようにしてもよい。この場合、プロセスの冗長性を実現することができ、光源11の交換、メンテナンスを少なくすることができる。