特許第6597328号(P6597328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597328
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】接点装置及びこれを使用した電磁接触器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/54 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   H01H50/54 B
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-5612(P2016-5612)
(22)【出願日】2016年1月14日
(65)【公開番号】特開2017-126503(P2017-126503A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】中 康弘
(72)【発明者】
【氏名】高谷 幸悦
(72)【発明者】
【氏名】足立 日出央
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 友樹
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 裕也
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/115059(WO,A1)
【文献】 特開2010−010056(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/165433(WO,A1)
【文献】 実開平07−027725(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/00 〜 45/14
H01H 50/00 〜 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の固定接触子と、
前記一対の固定接触子に接離可能な可動接触子と、
前記可動接触子の軸方向中央部に形成された貫通孔を貫通し、前記可動接触子の前記一対の固定接触子との対向面が接触する第1固定部と、前記可動接触子の前記一対の固定接触子とは反対側の面に接触する接触スプリングの他端を固定する第2固定部とを有する可動軸とを備え、
前記第2固定部は、前記可動軸に可動自在に装着されたスプリング受け部と、該スプリング受け部の前記接触スプリングとは反対側の面が接触する前記可動軸に固定された止め輪とで構成され、
前記スプリング受け部の前記止め輪側に当該止め輪抜け止め部が形成されているとともに、
前記スプリング受け部は、前記接触スプリングの内側に挿入される係合凸部が形成され、当該係合凸部を含めた高さと前記接触スプリングの密着高さとの和が、前記可動軸の前記可動接触子の前記接触スプリングの当接面から止め輪装着部までの長さより長く設定されていることを特徴とする接点装置。
【請求項2】
前記係合凸部は、外周が前記接触スプリングの端部内側と接触することを特徴とする請求項1に記載の接点装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の接点装置を備え、前記か可動軸に連結される可動プランジャを有する電磁石ユニットを備えたことを特徴とする電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流路の開閉を行う接点装置及びこれを使用した電磁接触器に関する。
【背景技術】
【0002】
電流路の開閉を行う接点装置として、従来、例えば、特許文献1に記載されたものが提案されている。
特許文献1に記載された接点装置は、所定間隔を保って配置された一対の固定接点端子に対して可動接点を有する可動接触片が下方側から接離可能に配置されている。可動接触片には中央部に可動軸が挿通され、この可動軸の上端に抜け止めリングがカシメ固定され、可動接触片の下面側が接触スプリング(接点ばね)を介して可動軸に組み付けた止め輪(Eリング)で支持されている。
【0003】
そして、可動軸が電磁石部及び復帰スプリングによって上下に可動されることにより、可動接触片の可動接点が、一対の固定接点端子に対して接触する閉極状態と、一対の固定接点端子から離間する開極状態に駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−187333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この特許文献1に記載された接点装置にあっては、可動接触片が一対の固定接点端子に接触する際に所定の接触圧を得るために接触スプリングを配置し、この接触スプリングを圧縮した状態で止め輪を可動軸に嵌め込んで支持するようにしている。
この場合、抜け止めリングは可動軸にカシメ固定されるので、脱落する可能性は殆どないが、止め輪は可動軸に嵌め込んでいるだけであるので、止め輪の嵌め込みが十分でない場合や長期の使用による劣化によって脱落する可能性が高い。
【0006】
この止め輪の脱落が生じると、可動軸に可動接触片を支持することができず、可動接触片が固定接点端子に接触できなくなって、接点機能を発揮できなくなるという問題点がある。
そこで、本発明は、上記従来例の問題点に着目してなされたものであり、接触スプリングを支持する止め輪の脱落を確実に防止することができる接点装置及びこれを使用した電磁接触器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る接点装置は、一対の固定接触子と、一対の固定接触子に接離可能な可動接触子と、可動接触子の軸方向中央部に形成された貫通孔を貫通し、可動接触子の一対の固定接触子との対向面が接触する第1固定部と、可動接触子の前記一対の固定接触子とは反対側の面に接触する接触スプリングの他端を固定する第2固定部とを有する可動軸とを備え、第2固定部は、可動軸に可動自在に装着されたスプリング受け部と、スプリング受け部の接触スプリングとは反対側の面が接触する可動軸に固定された止め輪とで構成され、スプリング受け部の止め輪側に止め輪抜け止め部が形成されている、とともに、スプリング受け部は、接触スプリングの内側に挿入される係合凸部が形成され、係合凸部を含めた高さと接触スプリングの密着高さとの和が、可動軸の可動接触子の接触スプリングの当接面から止め輪装着部までの長さより長く設定されている。

【0008】
また、本発明の一態様に係る電磁接触器は、上記構成を有する接点装置を備え、前記可動軸に連結される可動プランジャを有する電磁石ユニットを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、可動軸に可動接触子を可動自在に支持する際に、可動接触子との間に接触スプリングを介在させて支持するスプリング受け部に止め輪の脱落を防止する止め輪抜け止め部を形成したので、可動軸からの止め輪の脱落を確実に防止することができる。したがって、接点機能を確実に維持することができる。
また、本発明の一態様によれば、上記接点機構を利用して電磁接触器を構成するので、接点機能を確実に維持することができる電磁接触器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る電磁接触器を示す断面図である。
図2図1の接点装置の分解斜視図である。
図3】可動接触子及び可動軸の分解斜視図である。
図4】第1実施形態の可動軸への可動接触子の取り付け手順を示す説明図である。
図5】可動接触子の第2実施形態を示す斜視図である。
図6】第2実施形態の分解斜視図である。
図7】第2実施形態の可動軸への可動接触子の取り付け手順を示す説明図である。
図8】第2実施形態の電磁接触器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の一実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
また、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
以下、本発明に係る接点装置を含む電磁接触器の実施形態について説明する。
【0013】
(第1実施形態)
電磁接触器1は、図1図3に示すように、接点装置2と、接点装置2を駆動する電磁石ユニット3を備えている。
接点装置2は、接点機構4を収納する接点収納部5を備えている。この接点収納部5は、金属製の角筒体6と、この角筒体6の上端を閉塞する平板状の例えばセラミック製の絶縁板7とを備えている。角筒体6は、下端部に外方に突出するフランジ部6aを有する。このフランジ部6aが接点収納部5を構成する後述の磁気ヨーク8の上面にシール接合されている。絶縁板7には、一対の貫通孔7a、7bが所定間隔をあけて形成されている。角筒体6の内周面には有底絶縁筒体14が配置されている。
【0014】
接点機構4は、絶縁板7に一対となる第1導体部21及び第2導体部22を介して固定されている一対となる第1固定接触子23及び第2固定接触子24と、これら第1固定接触子23及び第2固定接触子24に対して接離可能に配置されている可動接触子25とを備えている。
第1導体部21は、絶縁板7の貫通孔7aに挿通されて固定されている。第2導体部22は、絶縁板7の貫通孔7bに挿通されて固定されている。
【0015】
ここで、第1固定接触子23は、導電体金属部からなる側面視C字形状の導電板であり、絶縁板7の下面に沿って外側に延長する上板部23aと、上板部23aの外側端部から下方に延長する中間板部23bと、中間板部23bの下端部から上板部23aと平行に内側に延長する下板部23cとを備えている。下板部23cは、可動接触子25の下方に延び、その上面に可動接触子25の第1接点部が接触する第1接点部23dを備えている。
【0016】
一方、第2固定接触子24も、第1固定接触子23と面対称となる導電体金属部からなる側面視C字形状の導電板である。この第2固定接触子24は、絶縁板7の下面に沿って外側に延長する上板部24aと、上板部24aの外側端部から下方に延長する中間板部24bと、中間板部24bの下端部から上板部24aと平行に内側に延長する下板部24cとを備えている。下板部24cは、可動接触子25の下方に延び、その上面に可動接触子25の第2接点部が接触する第2接点部24dを備えている。
【0017】
第1固定接触子23及び第2固定接触子24は、第1導体部21及び第2導体部22の下端面に突出形成されたピンに固定されている。第1導体部21と第1固定接触子23及び第2導体部22と第2固定端子24の固定方法としては、ろう付け、螺合等があげられる。
また、第1固定接触子23の中間板部23bの内側面及び第2固定接触子24の中間板部24bの内側面を覆うように、平面から見てコの字状の磁性体板28が装着されている。これにより、中間板部23b、24bを流れる電流によって発生する磁場をシールドすることができる。
【0018】
さらに、第1固定接触子23には、アークの発生を規制する合成樹脂製の絶縁カバー26が装着されている。第2固定接触子24にも、アークの発生を規制する合成樹脂製の絶縁カバー27が装着されている。これにより、第1固定接触子23の内周面では下板部23cの上面側の第1接点部23dのみが露出される。また、第2固定接触子24の内周面では下板部24cの上面側の第2接点部24dのみが露出される。
【0019】
そして、可動接触子25は、導電性金属を材料とした図1の左右方向に長尺な導電板である。この可動接触子25は、第1固定接触子23及び第2固定接触子24内に両端部を配置するように配設されている。この可動接触子25は、電磁石ユニット3の後述する可動プランジャ35に固定された可動軸37に支持されている。可動接触子25の中央部には、可動軸37を挿通する貫通孔25aが形成されている。
【0020】
可動軸37の上下方向略中央部には、フランジ部で構成される第1固定部37aが半径方向に外方に向けて突出形成されている。可動接触子25は、その貫通孔25aに可動軸37を下方から挿通して第1固定部37a上に載置される。そして、可動軸37の上方から接触スプリング39を挿通し、この接触スプリング39を所定の接触圧を付与するように圧縮した状態で、第2固定部40によって固定されている。
【0021】
第2固定部40は、接触スプリング39の上端を受けるスプリング受け部41と、このスプリング受け部41の接触スプリング39とは反対側を固定する止め輪42とを備えている。
スプリング受け部41は、図3及び図4に示すように、ステンレス材をプレス成型することにより形成されている。スプリング受け部41は、中心部に可動軸37を挿通する貫通孔41aが形成されている。このスプリング受け部41は、円環状板部41bと、この円環状板部41bの下面から下方に突出する円環状の係合凸部41cと、円環状板部41bの上面に凹部として形成された止め輪抜け止め部41dとを有する。係合凸部41cの外周面は下端に行くほど外径が細くなるテーパー面とされている。
【0022】
また、スプリング受け部41の円環状板部41b及び係合凸部41cを含めた厚みと、接触スプリングの密着高さとの和が第1固定部37aに接触した可動接触子25の上面から止め輪42を嵌合する円環状溝37bの下端までの長さより長くなるように設定されている。
止め輪42は、E形止め輪またはC形止め輪で構成され、可動軸37に形成された円環状溝37bに嵌め込まれる。
【0023】
可動接触子25を可動軸37に取り付けるには、図4に示す順序で組み立てを行なう。すなわち、先ず、図4(a)に示すように、可動接触子25の貫通孔25a内に下側から可動軸37の上端を挿通し、第1固定部37aを可動接触子25の下面に当接させる。
次いで、可動軸37の上端から接触スプリング39を挿通し、次いでスプリング受け部41を係合凸部41cが接触スプリング39側となるように挿通し、係合凸部41cを接触スプリング39の上端の内径側に係合させる。
【0024】
次いで、スプリング受け部41を上方から押圧して接触スプリング39を、可動軸37の円環状溝37bがスプリング受け部41の円環状板部41bの上面より上方側に露出するように圧縮する。
次いで、図4(b)に示すように、露出した円環状溝37bに止め輪42を嵌合させる。次いで、図4(c)に示すように、スプリング受け部41の押圧を解除して、止め輪42をスプリング受け部41の止め輪抜け止め部41d内に収納する。
【0025】
このとき、止め輪42がスプリング受け部41の止め輪抜け止め部41d内に収納され、スプリング受け部41は接触スプリング39によって上方側に付勢されている。したがって、止め輪42がスプリング受け部41内から上方に飛び出すことはなく、止め輪抜け止め部41d内に保持される。この止め輪抜け止め部41d内では止め輪42の外周面が止め輪抜け止め部41dの内周面に対向しており、止め輪42の半径方向の移動が確実に阻止される。
【0026】
そして、可動接触子25は、釈放状態で、両端の第1接点部及び第2接点部がそれぞれ第1固定接触子23の第1接点部23d及び第2固定接触子24の第2接点部24dのそれぞれと所定間隔を保って離間した状態となる。また、可動接触子25は、投入位置で、両端の第1接点部及び第2接点部がそれぞれ第1固定接触子23の第1接点部23d及び第2固定接触子24の第2接点部24dのそれぞれに、接触スプリング39による所定の接触圧で接触する。
【0027】
また、電磁石ユニット3は、図1に示すように、側面から見てU字形状の下部磁気ヨーク31を有し、この下部磁気ヨーク31の底板部の中央部に固定プランジャ32が配置されている。そして、固定プランジャ32の外側にスプール33が配置されている。
スプール33は、図1に示すように、固定プランジャ32を挿通する中央円筒部33aと、中央円筒部33aの下端部から半径方向外側に突出する下フランジ部33bと、中央円筒部33aの上端部から半径方向外側に突出する上フランジ部33cとを備えている。そして、図1乃至図3に示すように、スプール33の中央円筒部33a、下フランジ部33b、及び上フランジ部33cで構成される収納空間に励磁コイル34が巻装されている。
【0028】
また、下部磁気ヨーク31の開放端となる上端には、板状の磁気ヨーク8が固定されている。この磁気ヨーク8の中央部には、可動プランジャ貫通孔8aが形成されている。
また、スプール33の中央円筒部33a内に配置された固定プランジャ32の上部には、有底筒状に形成されたキャップ9が配置され、このキャップ9の開放端に設けられた半径方向外側に突出するフランジ部9aが、磁気ヨーク8の下面にシール接合されている。これにより、接点収納部5及びキャップ9が磁気ヨーク8の可動プランジャ貫通孔8a介して連通される密封した接点装置2が形成されている。
【0029】
そして、このキャップ9の内部には、可動プランジャ35が上下方向に移動可能に収容されている。この可動プランジャ35は、キャップ9の内部に上下方向に移動可能に収容される円筒部35aと、この円筒部35aの上端に設けられた半径方向外側に突出する周鍔部35cとを備えている。可動プランジャ35の円筒部35aは、磁気ヨーク8の可動プランジャ貫通孔8aを上下方向に挿通し、可動プランジャ35の周鍔部35cは可動プランジャ貫通孔8aよりも大きな外径を有して磁気ヨーク8の上方に配置されている。
【0030】
可動プランジャ35の円筒部35aには、その下端面から上方に延びる復帰スプリング収容凹部35bが形成されている。キャップ9の底部と復帰スプリング収容凹部35bの上端面との間には、可動プランジャ35を上方に付勢する復帰スプリング36が配設されている。
また、磁気ヨーク8の上面には、図1及び図2に示すように、外形が方形で円形の中心開口を有して環状に形成された永久磁石11が可動プランジャ35の周鍔部35cを囲むように固定されている。永久磁石11は、上下方向即ち厚み方向に上端側を例えばN極、下端側をS極とするように着磁されている。
【0031】
そして、永久磁石11の上面には、永久磁石11と同一外形で可動プランジャ35の周鍔部35cよりも小さい内径の貫通孔12aを有する補助ヨーク12が固定されている。可動軸37は、貫通孔12aを上下方向に挿通している。
さらに、補助ヨーク12の上面には、弾性を有する板状の異物侵入防止部材13が固定されている。
【0032】
そして、可動プランジャ35を上下方向に挿通する可動プランジャ貫通孔8aを有する板状の磁気ヨーク8と、磁気ヨーク8の上面に接合され、内部に接点機構4を収納する接点収納部5と、磁気ヨーク8の下面に接合され、内部に可動プランジャ35を収容するキャップ9とにより、接点機構4、可動軸37及び可動プランジャ35を収容する密封された接点収納部5を構成している。密封された接点収納部5内には、例えば水素などのアーク消弧用ガスが封入されている。
【0033】
次に、第1実施形態の電磁接触器1の動作を説明する。
先ず、第1固定接触子23に接続された第1導体部21が例えば大電流を供給する電力供給源に接続され、第2固定接触子24に接続された第2導体部22が負荷に接続されているものとする。
このとき、電磁石ユニット3における励磁コイル34が非励磁状態にあって、電磁石ユニット3で可動プランジャ35を下降させる励磁力を発生していない釈放状態にあるものとする。
【0034】
この釈放状態では、可動プランジャ35が復帰スプリング36によって、磁気ヨーク8から離れる上方向に付勢される。これと同時に、永久磁石11の磁力による吸引力が補助ヨーク12に作用し、可動プランジャ35の周鍔部35cが吸引される。このため、可動プランジャ35の周鍔部35cの上面が補助ヨーク12の下面に接触している。
したがって、可動プランジャ35に可動軸37を介して連結されている接点機構4の可動接触子25の第1接点部及び第2接点部が、第1固定接触子23の第1接点部23d、第2固定接触子24の第2接点部24dに対して上方に所定距離だけ離間している。このため、第1固定接触子23及び第2固定接触子24の間の電流路が遮断状態にあり、接点機構4が開極状態となっている。
【0035】
この釈放状態から、電磁石ユニット3の励磁コイル34に通電すると、この電磁石ユニット3で励磁力が発生し、可動プランジャ35を復帰スプリング36の付勢力及び永久磁石11の吸引力に抗して下方に押し下げる。この可動プランジャ35の下降が、周鍔部35cの下面が磁気ヨーク8の上面に当たることで停止する。
このように、可動プランジャ35が下降することにより、可動プランジャ35に可動軸37を介して連結されている可動接触子25も下降し、接点機構4の可動接触子25の第1接点部及び第2接点部のそれぞれが、第1固定接触子23の第1接点部23d及び第2固定接触子24の第2接点部24dのそれぞれに対して接触スプリング39の接触圧で接触する。
【0036】
このため、電力供給源の大電流が、第1固定接触子23、可動接触子25、第2固定接触子24を通じて負荷に供給される閉極状態となる。
そして、接点機構4の閉極状態から、負荷への電流供給を遮断する場合には、電磁石ユニット3の励磁コイル34への通電を停止する。
励磁コイル34への通電を停止すると、電磁石ユニット3で可動プランジャ35を下方に移動させる励磁力がなくなることにより、可動プランジャ35が復帰スプリング36の付勢力によって上昇し、周鍔部35cが補助ヨーク12に近づくに従って永久磁石11の吸引力が増加する。
【0037】
この可動プランジャ35が上昇することにより、可動軸37を介して連結された可動接触子25が上昇する。これに応じて接触スプリング39で接触圧を与えているときは、可動接触子25の第1接点部及び第2接点部のそれぞれが、第1固定接触子23の第1接点部23d及び第2固定接触子24の第2接点部24dのそれぞれに接触している。その後、接触スプリング39の接触圧がなくなった時点で、可動接触子25が第1固定接触子23及び第2固定接触子24から上方に離間する開極状態となる。
【0038】
このような開極状態となると、可動接触子25の第1接点部及び第2接点部と、第1固定接触子23の第1接点部23d及び第2固定接触子24の第2接点部24dとの間にアークが発生し、アークによって電流の通電状態が継続されることになる。
そして、可動接触子25の第1接点部及び第2接点部と、第1固定接触子23の第1接点部23d及び第2固定接触子24の第2接点部24dとの間に発生したアークは、これらアークの電流の流れと、図示しないアーク消弧用永久磁石で発生した磁束との関係からフレミング左手の法則により発生したローレンツ力によって引き延ばされるとともに、接点収納部5に封入されたアーク消弧用ガスによって冷却されて消弧される。
【0039】
その後、可動プランジャ35の釈放動作が終了すると、可動プランジャ35の周鍔部35cの上面が補助ヨーク12の下面に接触し、開極終了となる。
このように、電磁接触器1では、開極状態から閉極状態となり、再度開極状態に復帰させる一連の動作で負荷に供給する電流の通電及び遮断を行なう。この際、可動軸37の上下動によって、可動接触子25は第1固定接触子23及び第2固定接触子24との接離を繰り返すことになる。
【0040】
この際に、可動接触子25は可動軸37に対して接触スプリング39によって第1固定部37a側に押し付けられており、その反力がスプリング受け部41に絶えず作用している。このため、スプリング受け部41は、止め輪42側に絶えず押圧されており、止め輪42がスプリング受け部41の止め輪抜け止め部41dから上方に露出されることはない。したがって、止め輪42はスプリング受け部41の止め輪抜け止め部41dに留まることになり、半径方向への移動が規制された状態を維持し、止め輪42の抜け止めを確実に行なうことができる。
【0041】
また、スプリング受け部41の円環状板部41b及び係合凸部41cを含めた厚みと、接触スプリングの密着高さとの和が第1固定部37aに接触した可動接触子25の上面から止め輪42を嵌合する円環状溝37bの下端までの長さより長くなるように設定されている。このため、可動軸37への可動接触子25の装着時に、図4(d)に示すように、スプリング受け部41が係合凸部41cを上方とする逆方向に挿通された誤取り付けが行なわれた場合に、スプリング受け部41を上方から押圧して、接触スプリング39を密着高さまで圧縮した状態で、可動軸37の円環状溝37bがスプリング受け部41によって塞がれて外部に露出しない状態となる。
【0042】
このため、止め輪42を可動軸37の円環状溝37bに嵌合させようとしても、円環状溝37bが露出していないので、嵌合させることができず、作業者に誤取り付け状態であることを意識させることができる。したがって、スプリング受け部41の誤取り付けを確実に防止して、止め輪42をスプリング受け部41止め輪抜け止め部41d内に確実に収納することができる。
【0043】
さらに、スプリング受け部41の係合凸部41cが接触スプリング39の内側に係合されるので、接触スプリング39の位置決めを正確に行なうことができる。
なお、上記第1の実施形態では、可動軸37にフランジ部となる第1固定部37aを一体に形成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第1固定部37aを別部材として可動軸37にカシメやロウ付け、焼き嵌め等の固定手段で固定するようにしてもよい。
【0044】
また、可動接触子25の形状は、中央部の高さに対して両端部の高さを高くして段部を形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、平坦面とすることもでき、可動接触子25は任意の形状とすることができる。
次に、本発明に係る接点装置の第2実施形態について図5及び図6を伴って説明する。
この第2実施形態は、可動接触子が固定接触子に対して下側から接離するようにしたものである。なお、図5では、可動接触子と固定接触子との関係のみを模式的に表している。
【0045】
すなわち、第2実施形態では、図5に示すように、可動軸37に可動接触子25が第1固定接触子23及び第2固定接触子24に対して下方向から接離するように配置されている。
この第2実施形態では、図5及び図6に示すように、可動軸37の先端に第1固定部37aが形成されている。この可動軸37が下端側から可動接触子25の貫通孔25aに挿通されて可動接触子25の上面が第1固定部37aに当接されている。そして、可動軸37の下端側から接触スプリング39が挿通され、この接触スプリング39を圧縮するように同様に可動軸37の下端側から第2固定部40を挿通して固定している。可動軸37には、軸方向の略中央部に円環状溝37bが形成されている。
【0046】
ここで、第2固定部40は前述した第1実施形態と同様の形状を有するスプリング受け部41と止め輪42とで構成されており、第1実施形態と同一構成には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
この第2実施形態では、可動軸37への可動接触子25の装着が図7に示すように行なわれる。
【0047】
すなわち、先ず、図7(a)に示すように、可動接触子25の貫通孔25a内に可動軸37を下端側から挿通し、第1固定部37aを可動接触子25の上端に接触させる。次いで、可動軸37の下端から接触スプリング39を挿通し、さらにスプリング受け部41を係合凸部41cが上側に向くように可動軸37の下端側から挿通する。そして、スプリング受け部41を上方に押圧して接触スプリング39を圧縮することにより、スプリング受け部41の円環状板部41bの下面から可動軸37の円環状溝37bを露出させる。
【0048】
次いで、図7(b)に示すように、円環状溝37bに止め輪42を嵌合させた状態でスプリング受け部41の上方への押圧を解除する。これにより、接触スプリング39の弾発力によってスプリング受け部41が下降し、図7(c)に示すように、スプリング受け部41の止め輪抜け止め部41d内に止め輪42が収容された状態で、スプリング受け部41の下降が停止される。これによって、可動軸37への可動接触子25の装着が完了する。
【0049】
この第2実施形態では、可動接触子25の可動方向が第1実施形態と逆方向となることにより、電磁石ユニット3の構成が図8に示すように変更されている。
すなわち、キャップ9内に固定プランジャ32と可動プランジャ35とが上下逆関係に配置されているとともに、固定プランジャ32の下面と可動プランジャ35の上面との間に復帰スプリング36が介挿されている。
【0050】
この第2実施形態では、開極状態では、図5及び図7に示すように、可動接触子25が第1固定接触子23及び第2固定接触子24から下方に離間しており、第1固定接触子23及び第2固定接触子24間の電流路が遮断されている。
この開極状態から前述した第1実施形態とは逆に電磁石ユニット3で励磁コイル34に通電して可動プランジャ35を第1実施形態とは逆に上昇させることにより、可動軸37を上昇させる。これにより、可動接触子25が第1固定接触子23及び第2固定接触子24に接触スプリング39の接触圧で接触し、閉極状態となる。この閉極状態では、第1固定接触子23及び第2固定接触子24間に可動接触子25を介して電流路が形成され、通電状態となる。
【0051】
その後、電磁石ユニット3の励磁コイル34の通電を停止させることにより、復帰スプリング36によって可動プランジャ35が下降し、これに応じて可動軸37が下降して、接触スプリング39による接触圧が解除された時点で、第1固定接触子23及び第2固定接触子24から可動接触子25が離間し、アークが発生する。
このアークは図示しない永久磁石によって引き伸ばされるとともに、アーク消弧用ガスによって冷却されて消弧され、開極状態に復帰する。
【0052】
電磁接触器1では、開極状態から閉極状態となってから開極状態となることを繰り返すことになるが、この間に、可動接触子25と可動軸37との連結関係は前述した第1実施形態と上下関係が逆方向となっていることを除いては同一関係となる。すなわち、可動接触子25が第1固定部37aに接触し、接触スプリング39が圧縮された状態でスプリング受け部41を下方に押圧し、スプリング受け部41の止め輪抜け止め部41d内に止め輪42が収納された状態を維持する。
【0053】
したがって、前述した第1実施形態と同様に、止め輪42がスプリング受け部41の止め輪抜け止め部41dで半径方向すなわち軸直角方向の移動が確実に規制されて、止め輪42の脱落が確実に阻止される。また、スプリング受け部41の係合凸部41cが接触スプリング39の下端内側に係合されているので、接触スプリング39の位置決めを正確に行なうことができる。
【0054】
また、可動軸37に可動接触子25を装着する際に、図6(d)に示すように、スプリング受け部41を逆方向すなわち係合凸部41cを下側として挿通した場合には、前述した第1実施形態と同様に、スプリング受け部41によって可動軸37に形成された円環状溝37bが覆われてしまい、止め輪42を嵌合できない状態となる。したがって、作業者にスプリング受け部41の誤装着を意識させることができるとともに、スプリング受け部41の誤装着を確実に防止することができる。
【0055】
以上、本発明の第1及び第2実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、スプリング受け部41に形成した止め輪抜け止め部41dは凹部形状に限定されるものではなく、凹部を形成する円環状部を円周方向に複数に分割するようにしたり、円環状部に代えて止め輪42の外周面に接触する3本以上のピンで形成したりすることができる。要は、止め輪42の半径方向すなわち軸直角方向への移動を規制できればよい。
【0056】
また、例えば、接点収納部5は、角筒体6と絶縁板7とで構成する場合に限らず、セラミック等の絶縁体で桶状に一体形成するようにしてもよい。
また、上記第1実施形態及び第2実施形態では、接点装置2を電磁接触器1に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、継電器、開閉器等の接点装置として適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…電磁接触器、2…接点装置、3…電磁石ユニット、4…接点機構、5…接点収納部、8…磁気ヨーク、23…第1固定接触子、24…第2固定接触子、25…可動接触子、35…可動プランジャ、37…可動軸、37a…第1固定部、37b…円環状溝、39…接触スプリング、40…第2固定部、41…スプリング受け部、41a…貫通孔、41b…円環状板部、41c…係合凸部、41d…止め輪抜け止め部、42…止め輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8